説明

光学フィルムおよびその製造方法、偏光板、液晶表示装置

【課題】少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を含み、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好である光学フィルムの提供および該光学フィルムの製造コストの低減された製造方法の提供。
【解決手段】全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式を満たす光学フィルム。
|A−B|×(b/a)≦0.13
(式中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度;Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度;aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比;bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルムおよびその製造方法、偏光板、液晶表示装置に関する。特に、総アシル基の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を用いた光学フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光板用保護フィルムとして、セルロースアシレート樹脂を主成分とするフィルムが用いられており、これらの一般的なセルロースアシレート樹脂を含む光学フィルムは溶液製膜法によって製膜されている(特許文献1〜3)。近年、様々なモードの液晶セルが開発されてきたことに伴い、液晶表示装置の偏光板保護用の光学フィルムに求められる光学発現性も多様化してきている。また、このような光学フィルムについてもさらなる製造コストの低減が求められてきている。そこで、様々な光学特性を有する多種多様な光学フィルムの、全般的な製造コストの低減方法が求められている。
【0003】
ここで、一般的なセルロースフィルムの製造コストの低減方法としては、原料として用いるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度のバラツキを大きく許容する方法や、流延製膜時におけるフィルム端材を再利用する方法が知られている。
【0004】
前者の方法としては、中心全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂同士をブレンドする方法などが知られている(特許文献1および2参照)。さらに、このようなブレンドにより、例えば、特許文献1によれば、置換度や置換基の異なるセルロースアシレートを混合することにより、面内方向のリターデーション値と厚み方向のリターデーション値等の光学特性が最適された二軸性光学フィルムを得られ、この光学フィルムを用いることで、高い視野角改善効果を示す液晶表示装置を提供できることが記載されている。
【0005】
後者の方法としては、原料として、酢化度61.0%のセルロースアセテート樹脂と、酢化度61.0%のセルロースアセテートフィルムを破砕して回収した材を用い、溶液流延する方法などが知られている(特許文献3参照)。この方法では、セルロースアセテートフィルムの破砕品を原料全体の10〜70質量%使用できることが記載されているものの、原料に用いられるセルロース系樹脂の酢化度は常に一定であった。すなわち、該文献では、全アシル置換度が異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を用いた場合については、検討がなされていなかった。
【0006】
一方、近年では、面内方向のリターデーション値と厚み方向のリターデーション値等の光学特性を調製する観点から、低置換度(全アシル置換度2.5未満)のセルロースアシレート樹脂を積極的に用いることが検討されてきている。しかしながら、一般的に、このような低置換度のセルロースアシレート樹脂を原料として用いたフィルムを溶液流延しようとすると、金属支持体からの剥離特性が悪化する傾向があることが知られている。例えば、金属支持体としてSUSを用いた場合、低置換度のセルロース樹脂は末端−OH基がフィルム表面に出現しているため、SUSとの相互作用を起こし、剥離性が悪化することとなることが予想されている。そのため、低置換度(全アシル置換度2.5未満)のセルロースアシレート樹脂を積極的に用いた光学フィルムおよびその製造方法については、いまだ実用上不満が残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−73485号公報
【特許文献2】特開2007−146190号公報
【特許文献3】特開2007−256982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、本発明者が特許文献1および2に記載の方法を検討したところ、任意の全アシル置換度の中心値が異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を、何ら基準を設けずに選択して同時に使用すると、溶液流延して得られたフィルムが多くの場合において白化してしまうことがわかった。また、特許文献3に記載の方法を、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂が原料ドープ中に含まれるような態様に応用したところ、回収材を用いたフィルムは白化してしまい、酢化度が同一のセルロースアシレート樹脂を単純に回収材として用いた場合と比較してさらなる検討が求められることがわかった。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決することを目的としたものである。すなわち、本発明の課題は、少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を含み、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好である光学フィルムを提供すること、および、該光学フィルムの製造コストの低減された製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂に対し、全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂を併用し、かつ、特定の基準内に用いるセルロースアシレート樹脂の割合を制御することにより、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好である光学フィルムを、低い製造コストで提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下の手段により上記課題を解決した。
【0011】
[1] 全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含む光学フィルムであって、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[2] 全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[3] 光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[4] 光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
[5] フィルム両表面からフィルム厚み方向に20%以上離れたフィルム中央部が、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[6] 前記フィルム中央部に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする[5]に記載の光学フィルム。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[7] 前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことを特徴とする[5]または[6]に記載の光学フィルム。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[8] 前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことを特徴とする[5]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
[9] 前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] 前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11] 少なくとも2層からなり、最も膜厚の厚い層に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(7):2.1<Z<2.5
[12] 少なくとも2層からなり、フィルムの少なくとも片側の最外層が、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート層であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[13] 少なくとも3層からなり、フィルムの両最外層が、前記全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート層であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[14] リン酸エステル系化合物、または、非リン酸エステル系のポリエステル系化合物を含むことを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[15] 前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテートであることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[16] 接着剤または粘着剤を含まないことを特徴とする[1]〜[15]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[17] 全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を溶媒に溶解してドープを調製する工程と、該ドープを金属支持体上に流延して製膜する工程を含み、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度が2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度が2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、前記ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[18] 前記ドープ中に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする[17]に記載の光学フィルムの製造方法。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[19] 前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことを特徴とする[17]または[18]に記載の光学フィルムの製造方法。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[20] 前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことを特徴とする[17]〜[19]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
[21] 前記ドープとして、少なくとも1種の最外層用ドープと少なくとも1種のコア層用ドープを用い、該最外層用ドープが少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することを特徴とする[17]〜[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[22] さらに、前記最外層用のドープが前記金属支持体に接しない側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することを特徴とする[21]に記載の光学フィルムの製造方法。
[23] 前記コア層用ドープが、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、前記コア層用ドープに含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことを特徴とする[21]または[22]に記載の光学フィルムの製造方法。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[24] 前記コア層用ドープが全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、
前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする[21]〜[23]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[25] 前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことを特徴とする[21]〜[24]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(6)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
[26] 前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことを特徴とする[21]〜[25]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
[27] 前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[17]〜[26]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[28] 前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項17〜26のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[29] 前記コア層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことを特徴とする[21]〜[28]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(7):2.1<Z<2.5
[30] 前記最外層用ドープのうち、少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成する最外層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[21]〜[29]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[31] フィルムの両最外層を形成する前記最外層用ドープが、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする[21]〜[30]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[32] 前記ドープが、リン酸エステル系の化合物、または、非リン酸エステル系オリゴマー系の化合物を含むことを特徴とする[17]〜[31]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[33] 前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテートであることを特徴とする[17]〜[32]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[34] 前記セルロースアシレート樹脂として、セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を含むことを特徴とする[17]〜[33]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[35] 前記コア層用ドープ中の前記セルロースアシレート樹脂として、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材を用いることを特徴とする[34]に記載の光学フィルムの製造方法。
[36] 前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材が、[1]〜[16]のいずれか一項に記載の光学フィルムの回収材であることを特徴とする[34]または[35]に記載の光学フィルムの製造方法。
[37] 前記ドープ中の全セルロースアシレート樹脂に対する、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材の使用率が、10質量%を超え、80質量%以下であることを特徴とする[34]〜[36]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[38] 前記金属支持体がSUSであることを特徴とする[17]〜[37]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[39] [17]〜[38]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
[40] [1]〜[16]および[39]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[41] [1]〜[16]および[39]のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは[40]に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を含み、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好である光学フィルムを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、該光学フィルムの製造コストの低減された製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【図2】共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造の積層セルロースアシレートフィルムを流涎するときの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含む光学フィルムであって、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
以下、本発明のフィルムについて説明する。
【0016】
<セルロースアシレート樹脂>
本発明に用いられるセルロースアシレート樹脂は、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを少なくとも用い、前記式(1)を満たしていれば、その他については特に定めるものではない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0017】
(セルロースアシレート)
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.3〜2.5が好ましく、より好ましくは2.35〜2.5であり、特に好ましくは2.35〜2.50である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.08〜0.66が好ましく、より好ましくは0.15〜0.60、さらに好ましくは0.20〜0.45である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は全アシル置換度に対する6位のアシル置換度の割合であり、以下「6位のアシル置換率」とも言う。
【0018】
本発明のフィルムに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明のフィルムは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。2位、3位および6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基のプロピオニル基またはブチリル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.3〜2.6であることが好ましい。DSA+DSBの値は2.35〜2.55、かつDSBの値は0.10〜1.70であることがより好ましく、さらに好ましくはDSA+DSBの値は2.40〜2.50、かつDSBの値は0.5〜1.2である。DSAとDSBの値を上記の範囲にすることで環境湿度によるRe値、Rth値の変化の小さいフィルムが得ることができ好ましい。
すなわち、本発明のフィルムに用いられるセルロースアシレート樹脂は、セルロースアセテートであることが、自然への還元性および環境負荷の観点から、好ましい。
さらにDSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0019】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル基、ブタノイル基である。
【0020】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0021】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0022】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0023】
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0024】
(2種以上のセルロースアシレート樹脂の混合)
本発明のフィルムは、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含む光学フィルムであって、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たす。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、下記式(11)を満たすことがより好ましい。
式(11):|A−B|×(b/a) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(21)を満たすことが特に好ましい。
式(21):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10。
【0025】
本発明のフィルムは、セルロースアシレート樹脂として、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を、全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂と併用することにより、溶液流延時における金属支持体からの剥離性を改善することができる。
【0026】
本発明のフィルムは、前記式(1)で表される基準を採用することで、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を混合する場合の、全アシル置換度と質量比とを加味したセルロースアシレート樹脂どうしの相溶性を向上させることができる。これにより、特に全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂を混合した場合にも、本発明のフィルムは白化しない。
【0027】
前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂は、全アシル置換度が2.2以上2.5未満であることが好ましく、2.35〜2.5であることがより好ましく、2.35〜2.45であることが特に好ましい。
前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂は、全アシル置換度が2.5以上2.9以下であることが好ましく、2.55〜2.9であることがより好ましく、2.6〜2.85であることが特に好ましい。
【0028】
本発明のフィルムは、前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることが、金属基板からの剥離性の観点からより好ましい。
また、本発明のフィルムは、前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることが特に好ましい。
【0029】
ここで、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂中の、各セルロースアシレート樹脂の質量存在比は、任意の公知の方法で測定することができる。セルロースアシレート樹脂の質量存在比の測定方法としては、例えば、後述のHPLC−CAD法においてピーク面積を測定する方法などを用いることができるが、HPLC−CAD法に限定されるものではない。
前記HPLC−CAD法では、各セルロースアシレート樹脂の質量存在比は、面積(ピーク面積)の値と比例関係にあるため、セルロースアシレート樹脂の質量存在比の測定および決定をすることができる。
本発明では、全アシル置換度分布を測定するときの正確性の観点から、後述するHPLC−CAD法によって各セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度とその質量存在比を測定する。
【0030】
本発明のフィルムは、全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることが、より好ましい。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、下記式(12)を満たすことがより好ましい。
式(12):|A−C|×(c/a) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(22)を満たすことが特に好ましい。
式(22):|A−C|×(c/a) ≦ 0.11。
本発明のフィルムは、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことがより好ましい。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、下記式(13)を満たすことがより好ましい。
式(13):|A−D|×(d/a) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(23)を満たすことが特に好ましい。
式(23):|A−D|×(d/a) ≦ 0.11。
本発明のフィルムは、光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことが好ましい。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
本発明のフィルムは、下記式(1A)を満たすことがより好ましい。
式(1A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(2A)を満たすことが特に好ましい。
式(2A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.11。
【0031】
さらに、本発明のフィルムが全アシル置換度の異なる4種以上のセルロースアシレート樹脂を含む場合は、全セルロースアシレートに対する質量存在比が2.5%以上である全てのセルロースアシレート樹脂の任意の2種間において、|2種のセルロースアシレート樹脂間の置換度の差|×(2種のセルロースアシレート樹脂間の質量存在比の商)≦0.13を満たすことが好ましい。但し、2種のセルロースアシレート樹脂間の質量存在比の商は、質量存在比の大きい方のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を分母とする。
この場合、本発明のフィルムは、|2種のセルロースアシレート樹脂間の置換度の差|×(2種のセルロースアシレート樹脂間の質量存在比の商)≦0.1を満たすことがより好ましく、|2種のセルロースアシレート樹脂間の置換度の差|×(2種のセルロースアシレート樹脂間の質量存在比の商)≦0.08を満たすことが特に好ましい。
【0032】
なお、本発明では、全セルロースアシレートに対する質量存在比が2.5%未満のセルロースアシレート樹脂については、相溶性やフィルム白化に大きな影響を与えないことから、ノイズとして扱い、式(1)〜式(6)における計算では考慮しないことが好ましい。
【0033】
本発明のフィルムは、フィルム両表面からフィルム厚み方向に20%以上離れたフィルム中央部が、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことが、本発明の光学フィルムの製造方法において、後述する回収材を利用して製造コストを下げることができる観点から好ましい。また、フィルムの特性も、力学特性が長手方向に安定するため好ましい。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂が下記式(14)を満たすことがより好ましい。
式(14):|A−B|×(b/a) ≦ 0.08。
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂が下記式(24)を満たすことが特に好ましい。
式(24):|A−B|×(b/a) ≦ 0.06。
【0034】
本発明のフィルムは、同様に、前記フィルム中央部に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることが好ましい。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂が、下記式(15)を満たすことがより好ましい。
式(15):|A−C|×(c/a) ≦ 0.08。
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂が、下記式(25)を満たすことが特に好ましい。
式(25):|A−C|×(c/a) ≦ 0.07。
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことがより好ましい。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(6)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明のフィルムは、下記式(16)を満たすことがより好ましい。
式(16):|A−D|×(d/a) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(26)を満たすことが特に好ましい。
式(26):|A−D|×(d/a) ≦ 0.11。
本発明のフィルムは、前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことが好ましい。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
本発明のフィルムは、下記式(1B)を満たすことがより好ましい。
式(1B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.12。
本発明のフィルムは、下記式(2B)を満たすことが特に好ましい。
式(2B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.11。
【0035】
(HPLC−CAD法)
HPLC−CAD法とは、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と、コロナ荷電化粒子検出器を組み合わせることにより、セルロースアシレートフィルムサンプルに含まれる全アシル置換度の異なる各セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度ピークとそのピーク面積を計算する方法である。この方法では、セルロースアシレートドープのみならず、セルロースアシレートフィルム自体の成分解析を行うことができる。そのため、セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を原料として用いる際に、好ましく各セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度と、その質量存在比を測定することができる。
【0036】
前記HPLC−CAD法で全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレートフィルムサンプルを測定して得られるチャートでは、複数のピークが観測される。ここで、前記チャート中、横軸は全アシル置換度を表し、縦軸はその全アシル置換度のセルロースアシレート樹脂の電荷量表し、また、各ピークのピーク面積を計算することができる。
ここで、本発明では、あるピークによって示されるセルロースアシレート樹脂について、その縦軸の最大値を示す全アシル置換度の値がそのセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度に相当するとみなした。同様に、全ピークのピーク面積合計に対する、あるピークのピーク面積が、そのピークが示すセルロースアシレート樹脂の質量存在比に相当するとみなした。
なお、複数のピークが一部重複している場合は、それぞれのピーク面積を、重複しているピーク面積を正規のガウス分布に近似できることを前提に近似曲線を作製し、分割して、各ピークのピーク面積を算出する。
【0037】
本発明においてHPLC−CAD法に用いることができる装置については、特に制限はなく、セルロースアシレート樹脂の総アシル置換度と質量存在比を検出できればよい。
HPLCとしては、例えば、島津製作所社製、型番LC−2010HTなどを挙げることができる。
CADとしては、例えば、Corona社製、型番CADTM HPLC Detectorなどを挙げることができる。
【0038】
本発明においてHPLCに用いられる溶媒、逆相/順相の分配モード、カラム、流速等の好ましい条件としては、例えば、以下の条件を挙げることができる。
溶媒CHCl3/MeOH(90/10(v/v)):MeOH・H2O(8/1(v/v))=20/80から、CHCL3・MeOH(9/1)への30minでのリニアグランジェント検出器。
順相の分配モード。
カラム:Novapak Phenyl(Waters) 3.9Φx150mm。
流速1.0ml/min。
本発明においてCADによる好ましい検出条件としては、例えば、以下の条件を挙げることができる。
カラム温度:30℃。
試料濃度0.002質量%。
注入量50μL。
【0039】
本発明において、HPLC−CAD法に用いることができるセルロースアシレート樹脂の形状としては、セルロースアシレート樹脂を有機溶媒に溶解したドープの他、一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を挙げることができる。前記回収材としては、一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムを破砕したチップ、一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムを有機溶媒に溶解した溶液などを挙げることができる。近年、液晶表示装置の大型化が進んでおり、それに伴い、偏光板をパネルに貼り合わせる際の貼り合せミスによるパネルの損失が問題になってきている。これは偏光板のリワーク性と呼ばれる、貼り合わせをミスしても容易にパネルから剥がすことができる性能を付与すれば改善できる問題である。そのため、大型の液晶表示装置に使用する偏光板を中心にリワーク性の付与が強く要望されている。ところが、リワークする際に、何回かに1回は、光学補償シートの光学異方性層がガラス基板に剥げ残ってしまうという問題点があった。本発明では、一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を用い、本発明のフィルムを製膜することで、リサイクル時におけるリワーク性が大幅に向上するため好ましい。ここで、本明細書中、リワーク性とは、再利用等を目的として液晶セルのガラス基板からセルロースアシレート樹脂含有フィルム(セルロースアシレート樹脂含有フィルムを備えた偏光板全体であってもよい)を剥離させるときの剥離性を意味する。
HPLCカラムに供する前には、有機溶媒に溶解した溶液の形状に前処理することが好ましい。なお、前記セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材の製造方法については、後述する。
前記前処理における好ましい条件としては、例えば、以下の条件を挙げることができる。
前記有機溶剤として、CHCl3/MeOH(90/10(v/v)):MeOH・H2O(8/1(v/v))=20/80を用意し、フィルムを0.002質量%になるように溶解させる。
次に、同様にCHCL3・MeOH(9/1)溶液を用意し、フィルムを0.002質量%になるように溶解させる。
【0040】
なお、本発明において、フィルム両表面からフィルム厚み方向に20%以上離れたフィルム中央部(すなわち、フィルム厚み方向中央部60%の部分)についてのHPLC−CAD法の測定に供するサンプルは、以下の方法によって調製した。
最初に光学顕微鏡にて、フィルム断面方向の厚さを測定する。
このフィルムにたいして、フィルム表面をカッターナイフにて削り落とし、再び断面光学顕微鏡にて観察。この時の膜厚が初期表面より、20%よりも内側まで削り落とせていることを確認する。
その後再び、逆表面に関しても同様にカッターナイフにて削り落とし、再び断面光学顕微鏡にて観察。この時の膜厚が初期表面より、20%よりも内側まで削り落とせていることを確認する。
【0041】
(セルロースアシレートフィルムの層構造)
本発明のフィルムは、1層からなっていても、2層以上からなっていてもよい。また、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、本発明のフィルムが1層からなる場合は、いわゆるブレンドの態様であることが必須である。すなわち、この場合、本発明のフィルムは1層中に、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含む。
【0042】
一方、本発明のフィルムが2層以上からなる場合は、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、少なくともフィルムの一方の最外層が全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂を含むことが、溶液流延時に金属支持体からの剥離性を向上させる観点から好ましい。
フィルムの一方の最外層が全アシル置換度2.6〜2.9のセルロースアシレート樹脂を含むことがより好ましく、全アシル置換度2.65〜2.85のセルロースアシレート樹脂を含むことが特に好ましい。
【0043】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、最も膜厚の厚い層(以下、コア層とも言う)に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことが特に好ましい。
式(7):2.1<Z<2.5
ここで、ある1層の中に含まれるセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値の計算方法は、各セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度と、ある1層の中に含まれる全てのセルロースアシレート樹脂に対する質量存在比の割合の積の合計値を意味する。
前記コア層に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zは、2.2〜2.5であることがより好ましく、2.3〜2.48であることが特に好ましい。
【0044】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、前記コア層は、前記式(4)を満たすことが好ましく、さらに前記式(5)、前記式(6)、前記式(B)を満たすことが、後述する回収材を利用して製造コストを下げる観点から、より好ましい。
【0045】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合、各層の間に接着剤または粘着剤を含まないことが、製造プロセスの削減の観点から好ましく、このような層構造の光学フィルムは後述する積層流延法によって製造することができる。
なお、接着剤または粘着剤を介して接着された複層構造のフィルムを製造するときに用いられる接着剤や粘着剤としては、例えば特開平11−295527号公報に記載がある。
【0046】
本発明のフィルムは、3層以上の積層構造を有している態様も、光学補償フィルムとして所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。
さらに、本発明のフィルムは、少なくとも3層からなり、フィルムの両最外層が、前記全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート層であることが好ましい。本発明のフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
なお、本発明のフィルムが3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に金属支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
本発明のフィルムはスキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。
【0047】
(膜厚)
本発明の光学フィルムの厚さは、用いる偏光板の種類等によって適宜定めることができるが、好ましくは30〜60μmであり、より好ましくは35〜55μmである。フィルムの厚さを60μm以下とすることにより、コストを下げることができ好ましい。
【0048】
本発明のフィルムが2層以上からなる場合における各層の膜厚は、フィルムの全膜厚(最外層の膜厚+コア層の膜厚)に対する、前記最外層の膜厚の膜厚比が0.005〜0.20であることが好ましく、0.005〜0.15であることがより好ましく、0.01〜0.10であることが特に好ましい。
また、本発明のフィルムが3層以上からなる場合における両最外層の膜厚の合計は、30〜120μmであることが好ましく、35〜100μmであることがより好ましく、40〜80μmであることが特に好ましい。
【0049】
<添加剤>
本発明のフィルム中には、添加剤として、非リン酸エステル系の化合物;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);フタル酸エステル、リン酸エステル系の化合物などの可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;マット剤などの添加剤を加えることもできる。
この中でも、本発明のフィルムは、リン酸エステル系の化合物または非リン酸エステル系のポリエステル系の化合物を含むことが、湿熱耐久性時にフィルムから添加剤が泣き出す現象を抑えるため好ましい。以下、本発明のフィルムに用いることができる添加剤について詳細に説明する。
【0050】
(非リン酸エステル系の化合物)
本発明のフィルムは、前記低置換度層中に、非リン酸エステル系の化合物を含むことが好ましい。このような非リン酸エステル系の化合物を含むことにより、本発明のフィルムは白化しにくくなるという効果を奏する。
また、本明細書中、「非リン酸エステル系の化合物」とは、「エステル結合を有する化合物であって、該エステル結合に寄与する酸がリン酸以外である化合物」のことを言う。すなわち、「非リン酸エステル系の化合物」は、リン酸を含まず、エステル系である、化合物を意味する。
また、前記非リン酸エステル系の化合物は、低分子化合物であっても、ポリマー(高分子化合物)であってもよい。以下、ポリマー(高分子化合物)である非リン酸エステル系の化合物のことを、非リン酸エステル系ポリマーとも言う。
【0051】
前記非リン酸エステル系の化合物としては、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤および低分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロース系樹脂に対して、1〜35質量%であることが好ましく、4〜30質量%であることがより好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明のフィルムに非リン酸エステル系の化合物として用いられる高分子量添加剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700〜10000のものが好ましい。高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
【0053】
ここで、本発明における非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
以下、本発明に用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる非リン酸エステル系の化合物である高分子量添加剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
【0054】
非リン酸エステル系の化合物である高分子系添加剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル化合物であることがより好ましい。
【0055】
前記脂肪族ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0056】
本発明で好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0057】
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
【0058】
前記高分子量添加剤に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
【0059】
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0060】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0061】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics) レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
【0062】
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
本発明のポリエステル添加剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0063】
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
【0064】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
【0065】
かかる前記高分子量添加剤の合成は、常法により上記脂肪族ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0066】
前記芳香族ポリエステル系ポリマーは、前記ポリエステルポリマーに芳香環を有するモノマーを共重合することによって得られる。芳香環を有するモノマーとしては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のモノマーである。
炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。これらの中でも好ましい芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
【0067】
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
【0068】
本発明では、芳香族ポリエステル系ポリマーは前述のポリエステルに芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールのそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。本発明においては、前述のように、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量添加剤であることが好ましく、封止には前述の方法を使用することができる。
【0069】
本発明では非リン酸エステル系の化合物以外のレターデーション低減剤として、例えば、リン酸エステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知のエステル系以外の化合物を広く採用することができる。
【0070】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0071】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0072】
非リン酸エステル系以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0073】
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0074】
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0075】
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0076】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0077】
(可塑剤)
本発明に用いられる可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステル系化合物またはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステル系化合物の例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
【0078】
(レターデーション発現剤)
本発明では、レターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0079】
レターデーション発現材としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
【0080】
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
【0081】
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
【0082】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0083】
(炭水化物誘導体)
本発明のフィルムは、炭水化物誘導体を含んでいてもよい。炭水化物誘導体をセルロースアシレートフィルムに添加することにより、光学特性の発現性を損なわず、かつヘイズを上昇させることなく、フィルムの含水率を大幅に低減できる。
さらに、該セルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして用いることにより、高温高湿下での偏光子の性能劣化を大幅に改良できる。
【0084】
本発明に用いられる炭水化物誘導体は、用いられる置換基を含め、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1)
(OH)p−G−(L1−R1q(L2−R2r
一般式(1)中、Gは単糖残基または、多糖類残基を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に−O−、−CO−、−NR3−のいずれか一つを表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または一価の置換基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は芳香環を有することが好ましい。p、qおよびrはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、qおよびrの少なくとも一方は1以上の整数であり、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。
【0085】
前記Gの好ましい範囲は、後述する構成糖の好ましい範囲と同様である。
【0086】
前記L1およびL2は、−O−または−CO−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。前記L1およびL2が−O−である場合は、エーテル結合またはエステル結合由来の連結基であることが特に好ましく、エステル結合由来の連結基であることがより特に好ましい。
また、前記L1およびL2がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
前記R1、R2およびR3は、一価の置換基であることが好ましい。特に、前記L1およびL2が−O−である場合(すなわち前記炭水化物誘導体中のヒドロキシル基にR1、R2およびR3が置換している場合)、前記R1、R2およびR3は置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアリール基、あるいは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換または無置換のアルキル基、あるいは、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、前記R1、R2およびR3がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
前記pは0以上の整数を表し、好ましい範囲は後述する単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数の好ましい範囲と同様である。
前記qおよび前記rはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、少なくとも一方は1以上の整数を表す。前記qおよびrの一方が0であることが好ましい。
また、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しいため、前記p、qおよびrの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
【0089】
前記炭水化物誘導体の置換基の好ましい例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。
【0090】
このうち、前記少なくとも一つの芳香環を有する置換基としては、2重結合を有する官能基(カルボニル基等)との間で共役していない芳香環を有する置換基を含む炭水化物誘導体を挙げることができる。2重結合を有する官能基との間で共役していない芳香環を有する置換基の好ましい具体例としてはベンジル基、フェニルアセチル基等があげられる。
一方、前記2重結合を有する官能基との間で共役している芳香環を有する置換基の好ましい具体例としては、例えば、ベンゾイル基を挙げることができる。
本発明に用いられる炭水化物誘導体は、波長230nm〜700nmのモル吸光係数の最大値を30×103以下にするため観点から、2重結合を有する官能基との間で共役している芳香環を有する置換基を含む炭水化物誘導体が好ましく、ベンゾイル基で置換された炭水化物誘導体であることが特に好ましい。
【0091】
−単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数−
また、本発明に用いられる炭水化物誘導体中の単糖ユニット当たりのヒドロキシル基の数(以下、ヒドロキシル基含率とも言う)は、1以下であることが好ましい。ヒドロキシル基含率を前記範囲に制御することにより、高温高湿経時における炭水化物誘導体の偏光子層への移動およびPVA-ヨウ素錯体の破壊を抑制でき、高温高湿経時における偏光子性能の劣化を抑制する点から好ましい。
【0092】
−構成糖−
本発明に用いられる炭水化物誘導体は、単糖または2〜5個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であることが好ましく、単糖または2個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であることがより好ましい。
【0093】
前記炭水化物誘導体を好ましく構成する単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が少なくとも2種の置換基で置換されており、かつ前記置換基のうち少なくとも1種が少なくとも一つの芳香環を有する置換基で置換されていることを特徴とする。
前記単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0094】
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
【0095】
前記炭水化物誘導体の入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
【0096】
本発明のフィルムは、延伸されてなることが好ましく、延伸は、インライン(一貫)で製膜することが好ましい。また、必要に応じて、一旦巻き取ってから別工程で延伸してもよい。さらに、インラインで延伸した後、一旦巻き取り、さらに別工程で延伸してもよい。このような手段によって延伸することにより、ヘイズの低いフィルムを作製することができ、Nzファクターの値が低いフィルムを作製することができる。
【0097】
[偏光板]
また、本発明のフィルムは、本発明のフィルムを少なくとも一枚用いる偏光板に応用することができる。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することが好ましい。本発明の光学補償フィルムと同様、前記偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
前記偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
本発明の偏光板は、特に本発明のフィルムとして回収材を用いたフィルムを用いたときに、リワーク性が良好となり、好ましい。
【0098】
[液晶表示装置]
本発明のフィルムは、前記偏光板を有する液晶表示装置に応用することができる。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
前記液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば図1に記載の構成とした例を採用することができる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
本発明の液晶表示装置は、特に本発明のフィルムとして回収材を用いたフィルムを用いたときに、リワーク性が良好となり、好ましい。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶セルが、ガラス基板であるときに、特にリワーク性が良好となり、好ましい。
【0099】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を溶媒に溶解してドープを調製する工程と、該ドープを金属支持体上に流延して製膜する工程を含み、前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度が2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度が2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、前記ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
なお、前記式(1)の好ましい範囲は前記式(11)の範囲であり、より好ましい範囲は前記式(21)の範囲である。
以下、本発明の製造方法について、説明する。
【0100】
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記ドープ中に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることが好ましい。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことが好ましい。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
なお、前記式(2)、(3)および(A)の好ましい範囲は前記式(12)、(13)および(1A)の範囲であり、より好ましい範囲は前記式(22)、(23)および(2A)の範囲である。
【0101】
前記光学フィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造される。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の公報を参考にすることができる。
【0102】
<ドープの調製>
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0103】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0104】
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。前記セルロースアシレート樹脂は、本発明の光学フィルムにおける好ましい範囲と同様であり、セルロースアセテートであることが好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、本発明の光学フィルムに好ましく添加できる添加剤として挙げた添加剤の中から、任意の添加剤を添加しておいてもよい。また、本発明の製造方法では、前記ドープが、ン酸エステル系の化合物、または、非リン酸エステル系オリゴマー系の化合物を含むことが好ましい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
【0105】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0106】
(セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材の使用)
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレート樹脂として、セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を含むセルロースアシレート樹脂原料を用いることが、製造コストを低減させる観点から好ましい。
このようなセルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材は、一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムそのものを用いてもよいが、一般的に従来の製造方法ではカットされていた溶液流延時の耳部や、その他、面状故障の出たバルクロールや他社にて使用した残存フィルムのような態様の部分を回収して、前記セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材として用いることができる。
【0107】
一度製膜したセルロースアシレート樹脂含有フィルムそのものを用いる場合、フィルムクラッシャーを用いて粉砕する方法などで好ましいサイズに調製することができる。
【0108】
溶液流延時の耳部を用いる場合、好ましいサイズに調製することができる。サイズは10mm角以上が好ましく、より好ましくは、6mm角以下に粉砕することが好ましい。
【0109】
これらの中でも、本発明の製造方法においてセルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を用いる場合、耳部の部分を用いることが、材料使用量の削減、環境負荷軽減の観点から好ましい。
【0110】
前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材は、コア層用ドープに用いても、最外層用ドープに用いてもよい。可能であれば、フィルムのコア層と最外層を切り分け、その後、コア層だった部分はコア層用ドープに、最外層であった部分は最外層ドープに用いることができる。
【0111】
前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材は、本発明の光学フィルムの回収材であっても、本発明以外のセルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材であってもよい。
本発明の製造方法では、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材が、本発明の光学フィルムの回収材であることが、セルロースアシレート樹脂の総アシル置換度の分布を安定させ、フィルムの白化を抑える観点から好ましい。
本発明の製造方法では、複数の層を有するセルロースアシレートフィルムを回収材として用いる場合、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材を前記コア層用ドープ中の前記セルロースアシレート樹脂として用いることが、フィルム白化の観点から好ましく、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムのコア層のみを回収材として用い、前記コア層用ドープ中の前記セルロースアシレート樹脂として用いることがより好ましい。
また、本発明の製造方法では、1層であって2種以上の全アシル置換基の異なるセルロースアシレート樹脂を有するフィルムを回収材として用いる場合、
その置換度を考慮して、使用量の適正値を本発明に乗っ取って添加することが好ましい。
【0112】
本発明の製造方法では、前記ドープ中の全セルロースアシレート樹脂に対する、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材の使用率が、10質量%を超え、80質量%以下であることが材料使用量の削減、環境負荷軽減の観点から好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることが特に好ましい。
【0113】
<流延方法>
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0114】
本発明の製造方法では、前記低置換度層用のセルロースアシレート溶液の25℃における粘度が、前記高置換度層用のセルロースアシレート溶液の25℃における粘度より10%以上高いことが、積層フィルム層の幅方向分布および積層フィルムの製造適性の観点から好ましい。
【0115】
(共流延)
本発明のフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、同時共流延法および逐次流延法がより好ましく、同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
【0116】
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、まず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。
本発明の製造方法では、前記ドープとして、少なくとも1種の最外層用ドープと少なくとも1種のコア層用ドープを用い、該最外層用ドープが少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することが好ましい。
【0117】
さらに、本発明の製造方法では、前記最外層用のドープが前記金属支持体に接しない側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することがより好ましい。
【0118】
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープが、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、前記コア層用ドープに含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
なお、前記式(4)の好ましい範囲は前記式(14)の範囲であり、より好ましい範囲は前記式(24)の範囲である。
【0119】
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープが全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることがより好ましい。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことが好ましい。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(6)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことが好ましい。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
なお、前記式(5)、(6)および(B)の好ましい範囲は前記式(15)、(16)および(1B)の範囲であり、より好ましい範囲は前記式(25)、(26)および(2B)の範囲である。
【0120】
本発明の製造方法では、前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることが好ましい。
【0121】
本発明の製造方法では、前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることが好ましい。
【0122】
本発明の製造方法では、前記コア層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことが好ましく、より好ましい範囲は本発明の光学フィルムの説明における式(7)の好ましい範囲と同様である。
式(7):2.1<Z<2.5
【0123】
本発明の製造方法では、前記最外層用ドープのうち、少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成する最外層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることが好ましい。
【0124】
本発明の製造方法では、フィルムの両最外層を形成する前記最外層用ドープが、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることがより好ましい。
【0125】
共流延法(重層同時流延)では、流延用金属支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(2層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に金属支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用金属支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
【0126】
逐次流延法は、流延用金属支持体の上にまず前記最外層用のドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用(コア層用)の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に金属支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
【0127】
一方、塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0128】
本発明のフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたSUS(ステンレス)ベルト(バンドといってもよい)を用いることが好ましい。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0129】
<延伸処理>
本発明の製造方法では、製膜されたセルロースアシレート積層フィルムをフィルム全体の質量に対して残留溶媒を5質量%以上含んだ状態で、Tg−30℃以上の温度で延伸する工程を含むことが好ましい。前述の通り、本発明の光学補償フィルムは波長分散特性が改善されていることを特徴とするが、延伸処理によってこのような光学性能を付与しやすくなり、さらにセルロースアシレートフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向(巾方向)のいずれでも好ましいが、フィルム搬送方向に直交する方向(幅方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
【0130】
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0131】
本発明のフィルムの延伸倍率は、5%以上200%以下が好ましく、10%以上100%以下がさらに好ましく、20%以上50%以下が特に好ましい。
【0132】
セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよいが、本発明の製造方法では残留溶媒を含んだ状態で延伸を行うため、製膜工程の途中で延伸することが好ましい。
【0133】
<乾燥>
本発明の製造方法では、セルロースアシレート積層フィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースアシレート積層フィルムをTg−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
【0134】
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0135】
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0136】
<巻き取り>
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0137】
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下および色味付きが顕著となるので、本発明のフィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の光学補償フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の光学補償フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0139】
本発明では、下記の測定方法により測定を行った。
【0140】
(HPLC−CAD法による評価)
得られたフィルムについて、全フィルム中における質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の下記式(1)の左辺の計算値を求めた。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す)
同様に、フィルム両表面からフィルム厚み方向に20%以上離れたフィルム中央部サンプルを、カッターナイフにて削り出す方法で調製し、この中央部サンプルについて、下記式(4)の左辺の計算値を求めた。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
これらの計算値について、下記表に記載した。
なお、本発明においてHPLC−CAD法で用いたHPLC装置は、島津製作所社製、型番LC−2010HTであり、HPLCの条件は下記のとおりとした。
溶媒CHCl3/MeOH(90/10(v/v)):MeOH・H2O(8/1(v/v))=20/80から、CHCL3・MeOH(9/1)への30minでのリニアグランジェント検出器。
順相の分配モード。
カラム:Novapak Phenyl(Waters) 3.9Φx150mm。
流速1.0ml/min。
【0141】
また、本発明においてHPLC−CAD法で用いたCADはCorona社製、型番CADTM HPLC Detectorであり、CADによる検出条件は、以下のとおりとした。
カラム温度:30℃。
試料濃度0.002質量%。
注入量50μL。
【0142】
(剥離性)
得られたフィルムの剥離性を下記の方法で測定した。
25℃に温度調整された、SUS上に固形分濃度20質量%で調整したドープを乾燥後80μmになるように流延し、フィルムを120秒間保持した後にフィルムを剥離した。剥離する際、フィルムにかかる荷重をロードセルにて検出し、その値を測定した。
その結果を下記の基準にしたがって評価し、その結果を下記表に記載した。
○: 0以上70gf/cm未満。
×: 70gf/cm以上。
【0143】
(フィルム白化)
得られたフィルムの白化を下記の方法で測定した。
ヘイズ測定および、内部ヘイズ測定を行った。各ヘイズの測定は、試料40mm×80mmをフィルム両面に流動パラフィンを塗布してガラス板で挟みこんだ後に、25℃相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定した。フィルムをはさみこまない流動パラフィンのみとガラス板の測定値をブランクとした。その結果を下記の基準にしたがって評価し、その結果を下記表に記載した。
○: ヘイズ;1.0以下。内部ヘイズ;0.1未満。
△: ヘイズ,1.5以下,内部ヘイズ;0.15未満。
×: ヘイズ;1.5以上。内部ヘイズ;0.15以上。
【0144】
(光学発現性)
得られたフィルムの光学発現性を下記の方法で測定した。
まず乾燥させたフィルムをバイブロンにて測定し、フィルムのtanδピーク温度を見積もった。
そのtanδピーク温度−10℃の温度でフィルム搬送方向と垂直に固定端一軸延伸にて1.3倍延伸を実施した。そのときの面内のレターデーションReを前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて3次元複屈折測定を行って求め、膜厚方向のレターデーションRthは傾斜角を変えてReを測定することで求めた。
ReをA、膜厚方向のレターデーションRthをBとしてその結果を下記の基準にしたがって評価し、その結果を下記表に記載した。
○: A>45nm、B>100nm。
△: 30<A≦45nm、80<B≦100nm。
×: 30nm≧A、80≧Bnm。
【0145】
(リワーク試験)
セルロースアシレートフィルムを用いて、下記の浸漬鹸化を行った。塗布鹸化を行った場合も同様の結果が得られた。
【0146】
(1−1)浸漬鹸化
鹸化液として60℃に調温した1.5mol/LのNaOH水溶液を用いて、その中にセルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
【0147】
(1−2)塗布鹸化
イソプロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5mol/Lとなるように溶解し、60℃に調温したものを鹸化液として用いた。この鹸化液を60℃のセルロースアシレートフィルム上に10g/m2で塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水を10L/m2・分で1分間スプレーして洗浄した。
【0148】
(2)偏光膜の作成
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し厚み20μmの偏光膜を調製した。
【0149】
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜と、上記鹸化処理したフィルムとを、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3質量%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が45度となるように張り合わせた。このようにして作成した偏光板を光学補償シートが液晶表示装置のガラス面側となるように、粘着剤を介して液晶表示装置のガラス板と貼り合わせ、50℃、5気圧で6時間エイジングを行った。この偏光板を25℃、相対湿度60%の条件下で、ガラス面より剥離した。この操作を100サンプル行った。そのときの剥げのこりの状況を下記の基準にしたがって評価し、その結果を下記表に記載した。
○:剥げのこりが一切発生しない。
△:剥げのこりが発生する部分有り。
【0150】
[A:共流延フィルムのチップ回収によるブレンド]
(1)合成によるセルロースアシレート樹脂の調製
表1に記載のアシル置換度のセルロースアシレートを調製した。触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量および熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0151】
(2)得られたセルロースアシレートフィルムのチップ回収によるセルロースアシレート樹脂の調製
下記の方法にしたがって、下記表1に記載の全アシル置換度のセルロースアシレートフィルムのチップを回収材として回収した。
フィルム延伸後の端部から、クリップ把持部を含むフィルムとして200mm裁断し、フィルムクラッシャー(カッター刃)で粉砕した。粉砕されたフィルムのサイズはほぼ均一に、5mm角であった。
なお、回収材の種類として、本発明の光学フィルムを回収したものを用いたか、その他のセルロースアシレートフィルムであって下記表1に記載の全アシル置換度を満たすものを用いたかについて、下記表1に記載した。
また、コア層用ドープおよび最外層用ドープにそれぞれ用いたセルロースアシレート樹脂中における回収材の割合を下記表1に記載した。
【0152】
(3)ドープ調製
<3−1>コア層用セルロースアシレートドープ
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1のコア層用セルロースアシレートドープ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.41、回収材種類、
回収材割合は下記表1に記載のとおり) 100.0質量部
・化合物A 18.5質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0153】
下記の表1に示したようにセルロースアシレートの置換度、回収材種類、回収材割合、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は比較例1のコア層用セルロースアシレートドープと同様にして、その他のコア層用セルロースアシレートドープを調製した。なお、添加剤A〜Eについては後述する表3に記載のものを用いた。
添加剤FはTPP/BDP可塑剤をそれぞれ示している。
添加剤G
【化1】

前記添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部である。
【0154】
<3−2>最外層用セルロースアシレートドープ
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1の最外層用セルロースアシレートドープ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.41、回収材種類、
回収材割合は下記表2に記載のとおり) 100.0質量部
・化合物A 11.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
下記表1に示したようにセルロースアシレートの置換度、回収材種類、回収材割合、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は比較例1の最外層用セルロースアシレートドープと同様にして、その他の最外層用セルロースアシレートドープを調製した。
【0156】
(共流延)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液と、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を下記表1に記載の膜厚比のコア層および最外層にそれぞれなるように、同時共流延した。なお、バンドはSUS製であった。得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が30〜5%の状態のときに固定端一軸延伸の条件でテンターを用いて横延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた。このとき、延伸後の膜厚が表1に記載の膜厚(単位:μm)になるように、流延膜厚を調整した。表1に示した組成のフィルムを作製し、その製造適性を判断する目的で、ロール幅1280mm、ロール長2600mmのロールを上記条件で最低24ロール作製した。連続で製造した24ロールの中の1ロールについて100m間隔で長手1mのサンプル(幅1280mm)を切り出して各測定を行った。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0157】
【表1】

【0158】
表1より、本発明の光学フィルムは、少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を含み、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好であることがわかった。また、本発明の光学フィルムの製造方法では、回収材を用いているときに本発明の光学フィルムの製造コストも低減され、リワーク試験評価も良好となることがわかった。
また、表1に記載した本発明のフィルムは、前記式(2)、(3)および前記式(A)を満たすことを確認した。
さらに、表1に記載した本発明のフィルムは、フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂が、前記式(5)、(6)および前記式(B)を満たし、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを確認した。
また、表1に記載した本発明のフィルムは熱耐久性や湿熱耐久性についても向上することを確認した。
【0159】
[B:1層からなるセルロースアシレート樹脂フィルムのチップ回収によるブレンド]
(1)合成によるセルロースアシレート樹脂の調製
表2に記載のアシル置換度のセルロースアシレートを調製した。触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量および熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0160】
(2)得られたセルロースアシレートフィルムのチップ回収によるセルロースアシレート樹脂の調製
下記の方法にしたがって、下記表2に記載の全アシル置換度のセルロースアシレートフィルムのチップを回収材として回収した。
フィルム延伸後の端部から、クリップ把持部を含むフィルムとして200mm裁断し、フィルムクラッシャー(カッター刃)で粉砕した。粉砕されたフィルムのサイズはほぼ均一に5mm角であった。
なお、回収材の種類として、本発明の光学フィルムを回収したものを用いたか、その他のセルロースアシレートフィルムであって下記表2に記載の全アシル置換度を満たすものを用いたかについて、下記表2に記載した。
また、セルロースアシレート樹脂ドープ1および2にそれぞれ用いたセルロースアシレート樹脂中における回収材の割合を下記表2に記載した。
【0161】
(3)ドープ調製
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例101のセルロースアシレート樹脂ドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースプロピオネート(置換度2.41、回収材種類、
回収材割合は下記表2に記載のとおり) 100.0質量部
・化合物A 10.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記表2に示したようにセルロースアシレートのアシル基の種類と置換度、回収材種類、回収材割合、添加剤種類や添加剤添加量を変更した以外は比較例101のセルロースアシレート樹脂ドープ1と同様にして、その他の各実施例および比較例のセルロースアシレート樹脂ドープ1および2を調製した。
【0162】
(流延)
上述のドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお、バンドはSUS製であった。バンド上の給気温度80℃〜130℃(排気温度は75℃〜120℃)で乾燥させた後、残留溶剤量が25〜35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、給気温度140℃(排気温度は90℃〜125℃の範囲)のテンターゾーンで、10%〜50%の延伸倍率で幅方向に延伸して、セルロースアシレートフィルムを製造した。このとき、延伸後の膜厚が表2に記載の膜厚(単位:μm)になるように、流延膜厚を調整した。表2に示した組成のフィルムを作製し、その製造適性を判断する目的で、ロール幅1280mm、ロール長2600mmのロールを上記条件で最低24ロール作製した。連続で製造した24ロールの中の1ロールについて100m間隔で長手1mのサンプル(幅1280mm)を切り出して各測定を行った。
得られた結果を下記表2に記載した。
【0163】
【表2】

【0164】
表2より、本発明の光学フィルムは、少なくとも全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂を含み、溶液流延時に金属支持体からの剥離性が良好であり、白化せず、光学発現性が良好であることがわかった。また、本発明の光学フィルムの製造方法では、回収材を用いているときに本発明の光学フィルムの製造コストも低減され、リワーク試験評価も良好となることがわかった。
また、表2に記載した本発明のフィルムは、前記式(2)、(3)および前記式(A)を満たすことを確認した。
さらに、表2に記載した本発明のフィルムは、フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂が、前記式(5)、(6)および前記式(B)を満たし、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを確認した。
また、表2に記載した本発明のフィルムは熱耐久性や湿熱耐久性についても向上することを確認した。
【0165】
【表3】

【符号の説明】
【0166】
1 最外層用ドープ
2 コア層用ドープ
3 共流延ギーサ
4 流延用支持体
11 偏光子
12 偏光子
13 液晶セル
14 各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム
15 光学異方性フィルム(フジタックTD80UL)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含む光学フィルムであって、
前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、
光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項2】
全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、
光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、
前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項3】
光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項4】
光学フィルムに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
【請求項5】
フィルム両表面からフィルム厚み方向に20%以上離れたフィルム中央部が、
全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、
前記フィルム中央部に含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項6】
前記フィルム中央部に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、
前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、
前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルム。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項7】
前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことを特徴とする請求項5または6に記載の光学フィルム。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項8】
前記フィルム中央部に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
【請求項9】
前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
少なくとも2層からなり、最も膜厚の厚い層に含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(7):2.1<Z<2.5
【請求項12】
少なくとも2層からなり、フィルムの少なくとも片側の最外層が、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート層であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項13】
少なくとも3層からなり、フィルムの両最外層が、前記全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート層であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項14】
リン酸エステル系化合物、または、非リン酸エステル系のポリエステル系化合物を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテートであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項16】
接着剤または粘着剤を含まないことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項17】
全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を溶媒に溶解してドープを調製する工程と、
該ドープを金属支持体上に流延して製膜する工程を含み、
前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度が2.5未満のセルロースアシレート樹脂と全アシル置換度が2.5以上のセルロースアシレート樹脂とを含み、かつ、
前記ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(1)を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(1):|A−B|×(b/a) ≦ 0.13
(式(1)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項18】
前記ドープ中に全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、
前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(2)を満たし、
前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする請求項17に記載の光学フィルムの製造方法。
式(2):|A−C|×(c/a) ≦ 0.13
(式(2)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項19】
前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項17または18に記載の光学フィルムの製造方法。
式(3):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(3)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項20】
前記ドープ中に含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(A)を満たすことを特徴とする請求項17〜19のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(A):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(A)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
【請求項21】
前記ドープとして、少なくとも1種の最外層用ドープと少なくとも1種のコア層用ドープを用い、
該最外層用ドープが少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することを特徴とする請求項17〜20のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項22】
さらに、前記最外層用のドープが前記金属支持体に接しない側のフィルム最外層を形成するように逐次流延または同時共流延してセルロースアシレート積層フィルムを製膜することを特徴とする請求項21に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項23】
前記コア層用ドープが、全アシル置換度の異なる2種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、かつ、
前記コア層用ドープに含まれるセルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項21または22に記載の光学フィルムの製造方法。
式(4):|A−B|×(b/a) ≦ 0.10
(式(4)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Bは質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、bは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項24】
前記コア層用ドープが全アシル置換度の異なる3種以上のセルロースアシレート樹脂を含み、
前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と、質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂が、下記式(5)を満たし、
前記質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比が2.5%以上であることを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(5):|A−C|×(c/a) ≦ 0.10
(式(5)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Cは質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、cは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が三番目に多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項25】
前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と質量存在比が2.5%以上である全てセルロースアシレート樹脂との間において、下記式(6)を満たすことを特徴とする請求項21〜24のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(6):|A−D|×(d/a) ≦ 0.13
(式(6)中、Aは質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、Dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、aは全セルロースアシレート樹脂に対する質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、dは質量存在比が2.5%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表す。)
【請求項26】
前記コア層用ドープに含まれる全セルロースアシレート樹脂のうち、質量存在比が20%以上である全てセルロースアシレート樹脂の間において、下記式(B)を満たすことを特徴とする請求項21〜25のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(B):|P−Q|×(q/p) ≦ 0.13
(式(B)中、PおよびQはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の全アシル置換度を表し、pおよびqはそれぞれ質量存在比が20%以上である任意のセルロースアシレート樹脂の質量存在比を表し、p≧qである。)
【請求項27】
前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂と前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂のいずれか一方が、前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、もう一方が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項17〜26のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項28】
前記質量存在比が一番多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5未満のセルロースアシレート樹脂であり、前記質量存在比が二番目に多いセルロースアシレート樹脂が前記全アシル置換度2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項17〜26のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項29】
前記コア層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度の平均値Zが下記式(7)を満たすことを特徴とする請求項21〜28のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(7):2.1<Z<2.5
【請求項30】
前記最外層用ドープのうち、少なくとも前記金属支持体に接する側のフィルム最外層を形成する最外層用ドープに含まれる前記セルロースアシレート樹脂が、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項21〜29のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項31】
フィルムの両最外層を形成する前記最外層用ドープが、全アシル置換度の平均値2.5以上のセルロースアシレート樹脂であることを特徴とする請求項21〜30のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項32】
前記ドープが、リン酸エステル系の化合物、または、非リン酸エステル系オリゴマー系の化合物を含むことを特徴とする請求項17〜31のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項33】
前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテートであることを特徴とする請求項17〜32のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項34】
前記セルロースアシレート樹脂として、セルロースアシレート樹脂含有フィルムの回収材を含むことを特徴とする請求項17〜33のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項35】
前記コア層用ドープ中の前記セルロースアシレート樹脂として、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材を用いることを特徴とする請求項34に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項36】
前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材が、請求項1〜16のいずれか一項に記載の光学フィルムの回収材であることを特徴とする請求項34または35に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項37】
前記ドープ中の全セルロースアシレート樹脂に対する、前記セルロースアシレート樹脂を含むフィルムの回収材の使用率が、10質量%を超え、80質量%以下であることを特徴とする請求項34〜36のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項38】
前記金属支持体がSUSであることを特徴とする請求項17〜37のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項39】
請求項17〜38のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項40】
請求項1〜16および39のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項41】
請求項1〜16および39のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは請求項40に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116941(P2011−116941A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208014(P2010−208014)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】