説明

光学フィルムの製造方法及び光学フィルム

【課題】 防眩性に優れた光学フィルムを製造することを目的とする。
【解決手段】 樹脂フィルム基材、又はハードコート層が形成された樹脂フィルム基材に対して、常温常圧下でドライアイスからなるブラスト材を吹き付ける。これにより、樹脂フィルム基材の表面、又はハードコート層の表面が削られて凹凸状となり、粗面化する。ドライアイスは、常温常圧下で昇華して気体となるため、粗面化処理後の樹脂フィルム基材10の表面にはブラスト材が残留することがない。従って、この樹脂フィルム基材10を用いることで、防眩性に優れた光学フィルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、CRT等に代表される各種表示装置の画面上に設けることに好適な防眩フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマディスプレイなどの各種表示装置において、画面に外部から光が入射し、この光が画面表面に映り込み、表示画像を見づらくする欠点があった。特に、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、画面への外光の映り込み(ギラツキ)の防止(以下、防眩と称する)が重要な課題になっている。これに対して従来においては、サンドブラスト法により表面を凹凸にして反射光を散乱させる防眩層(光学フィルム)が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。このサンドブラスト法は、樹脂からなる透明な光学フィルムの表面に砥粒(研削粉末粒子)を吹き付けて、砥粒の衝突力により樹脂を削って表面を粗面化するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平4−249145号公報
【特許文献2】特開平11−183710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記サンドブラスト法によると、吹き付けた砥粒が光学フィルムの表面に突き刺さったまま残存する場合がある。例えば、図10に示す光学フィルムの断面図のように、サンドブラスト法を施した後の光学フィルム50の表面には吹き付けた砥粒51が残存する。この光学フィルム50を防眩フィルムとして使用する場合、砥粒51が突き刺さった状態では、その砥粒51が光を遮ったり、その砥粒51で光が反射してギラツキの原因となったりする。
【0005】
また、砥粒が突き刺さった状態の光学フィルムに反射防止層などの機能層を設ける場合、その砥粒が存在する箇所が面欠陥となり、液晶表示装置やプラズマディスプレイなどに用いる光学フィルムとしては不適切なものとなってしまう。さらに、反射防止層などの機能層を設ける際に、光学フィルムから脱落した砥粒が加工装置内を汚染してしまうため、装置を破損するおそれもある。
【0006】
さらに、サンドブラスト法により表面を粗面化した光学フィルムには、砥粒や削り取られた樹脂片が付着している。そして、砥粒と光学フィルムとの間で摩擦が生じることで静電気が発生するため、付着した砥粒や削り取られた樹脂片を光学フィルムから除去することが困難となる。また、サンドブラスト法により光学フィルムを粗面化すると削り取られた樹脂片に砥粒が混在することになるため、樹脂片と砥粒とを分離することが困難となり、その結果、それぞれを分けて廃棄することが困難となる。
【0007】
また、光学フィルムの表面は高い硬度が要求されているため、樹脂フィルム基材の上に硬度が高いハードコート層が形成される。そして、そのハードコート層にサンドブラストのような硬い砥粒を吹き付けると、ハードコート層が部分的に割れてしまい、安定した表面を得ることが困難となってしまう。その結果、防眩フィルムとして用いるのに好適な光学フィルムを作製することが困難であった。
【0008】
この発明は上記の問題を解決するものであり、常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材を光学フィルムの表面に吹き付けて表面を粗面化することにより、上記サンドブラスト法による問題点を解決し、防眩性に好適な光学フィルムを製造することが可能な光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材を、光透過性フィルムの少なくとも一方の面に吹き付け、前記少なくとも一方の面を粗面化することを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【0010】
ブラスト材には、例えば、二酸化炭素を冷却固体化したドライアイスを用いる。形成すべき凹凸の大きさに合わせて、ドライアイスを所定の大きさに成形してブラスト材を生成する。ドライアイスからなるブラスト材を、常温常圧下で光透過性フィルムの表面に吹き付けることにより、光透過性フィルムの表面を削り、また、表面を凹ませて凹凸にする(粗面化する)。吹き付けられたブラスト材は、常温常圧下で昇華するため、サンドブラスト法のように砥粒が光透過性フィルムの表面に残留することがない。なお、この発明の「光透過性フィルム」には、溶融流延製膜法又は溶液流延製膜法により作製された樹脂フィルム基材の他、ハードコート層が形成された樹脂フィルム基材が含まれる。また、この発明の「フィルム」は、シート状のものを含む意味である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材を複数回に分けて前記光透過性フィルムに吹き付けることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記吹き付けの回数が増えるに従って小さいブラスト材を吹き付けることを特徴とするものである。
【0013】
この発明は、ブラスト材の大きさを変えて光透過性フィルムの表面を粗面化するものである。例えば、1回目の吹き付けで用いるブラスト材の大きさよりも、2回目の吹き付けで用いるブラスト材の大きさを小さくする。このように、吹き付けの回数を複数回として、ブラスト材の大きさを徐々に小さくすることにより、大きさが異なる凹凸を光透過性フィルムの表面に形成することが可能となり、また、凹凸の形状や大きさを制御することができるため、所望の防眩性を有する光透過性フィルムを容易に製造することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材を吹き付ける前に、前記光透過性フィルムに対して風を吹き付けて前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材を吹き付ける前に、前記光透過性フィルムを支持部材に支持させることで前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光透過性フィルムの一方の面を支持部材により支持し、前記支持の反対側の面に対して前記ブラスト材を吹き付けることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記支持部材は、前記光透過性フィルムを巻きつけるロール部材、又は、前記光透過性フィルムを載置するベルト部材からなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、除電装置により前記光透過性フィルムを除電することを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記除電装置により前記光透過性フィルムを除電することにより、前記ブラスト材を吹き付けた直後の前記光透過性フィルムの帯電量を1[kV]以下にすることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材は、二酸化炭素を含むことを特徴とするものである。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至請求項10に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材は、ドライアイスからなることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ブラスト材を減圧下で前記光透過性フィルムに吹き付けることを特徴とするものである。
【0024】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、エアー式ウェブクリーナー、粘着式ウェブクリーナー又はブラシ式ウェブクリーナーのうち、少なくとも1つのクリーナーにより、前記光透過性フィルム上の付着物を除去することを特徴とするものである。
【0025】
請求項15に記載の発明は、請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光透過性フィルムは、部分的に硬度が異なることを特徴とするものである。
【0026】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光透過性フィルムは、周囲の材料よりも硬い複数の微粒子を含んでいることを特徴とするものである。
【0027】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記複数の微粒子は、粒径が異なる複数の種類からなることを特徴とするものである。
【0028】
この発明は、複数の微粒子が混入された光透過性フィルムに対してブラスト材を吹き付けて粗面化するものである。微粒子は、光透過性フィルム内において周囲の材料よりも硬度が高いものを用いる。この光透過性フィルムに対してブラスト材を吹き付けると、表面は削られるが微粒子は削られず、表面に突出した状態で残存する。この微粒子が光透過性フィルムの表面で凸部を形成することになり、表面は凹凸状態となる。微粒子の径や硬さを変えることにより、凹凸の大きさや形状を制御することができるため、所望の防眩性を有する光透過性フィルムを製造することが可能となる。
【0029】
請求項18に記載の発明は、常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材が、光透過性フィルムの少なくとも一方の面に吹き付けられ、前記少なくとも一方の面が粗面化されたことを特徴とする光学フィルムである。
【発明の効果】
【0030】
この発明によると、常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材を用いるため、光透過性フィルム表面に吹き付けられたブラスト材は、常温常圧下で昇華し、サンドブラスト法のように砥粒が光透過性フィルム表面に残留することがない。そのことにより、防眩性に好適な光透過性フィルムを製造することが可能となる。
【0031】
また、削られたフィルム片が、昇華による気体の圧力により光透過性フィルム表面から吹き飛ばされるため、比較的容易にフィルム片を回収することができる。さらに、サンドブラスト法のように砥粒が混在することがないため、フィルム片のみを回収することができ、回収したフィルム片を再利用することも可能となる。
【0032】
さらにこの発明によると、吹き付けを複数回にわたって行い、除々に小さいブラスト材を吹き付けることにより、大きさや形状が異なる凹凸を光透過性フィルム表面に形成することができ、凹凸の形状や大きさを制御することができるため、所望の防眩性を有する光透過性フィルムを容易に製造することが可能となる。
【0033】
さらにこの発明によると、微粒子が混入された光透過性フィルムに対してブラスト材を吹き付けることにより、凹凸の形状や大きさを制御することができるため、所望の防眩性を有する光透過性フィルムを容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について説明する。まず、光学フィルムの構成材料について説明する。この実施形態に係る光学フィルムには樹脂フィルム基材が用いられ、この樹脂フィルム基材は、製造が容易であること、活性線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であることが好ましい。ここで、「透明」とは、可視光の透過率が60%以上であることを意味し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0035】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく用いられる。特にセルロースエステルフィルム(例えば、コニカタック 製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR(コニカ(株)製))が、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜法で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜法で製造されたフィルムであってもよい。基材フィルムの膜厚は、特に制限はなく、10μm〜10mmのシート状のものであれば更に良い。
【0036】
この実施形態においては、セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム(PCフィルム)、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム及びポリスルホン系フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点など好ましく、特にセルロースエステルフィルム(TACフィルム)及びPCフィルムが、それらの中でも、製膜性が容易で加工性に優れているため好ましく用いられ、特にTACフィルムを使用するのが好ましい。
【0037】
この実施形態に係る樹脂フィルム基材として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
【0038】
セルロースエステルの数平均分子量は70,000〜250,000とすることが、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0039】
ここで、溶液流延製膜法によりセルロースエステルからなる樹脂フィルム基材を製造する方法について簡単に説明する。セルロースエステルは、セルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造される。
【0040】
図1を参照しつつ溶液流延製膜法について更に詳しく説明する。図1に示すように、一般的に、回転金属製エンドレスベルトからなる支持体1上にダイ2によりセルロールエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延させ、ウェブW(ドープ膜)を形成する。そして、剥離ローラ3により支持体1からウェブWを剥離し、その剥離されたフィルムFとする。フィルムFは、テンター(フィルム幅手方向延伸装置)4により、延伸され、更に乾燥させられる。そして、フィルムFは、複数の搬送ローラ6を経由させて搬送しながら乾燥装置5により乾燥させられる。乾燥により得られたセルロースエステルフィルムFは、巻取ローラ7に巻き取られる。
【0041】
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0042】
また、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させるときに、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0043】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライドあるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。
【0044】
上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし、流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0045】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
【0046】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
【0047】
なお、残留溶媒量は下記の式により表される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブ(溶媒を含有したセルロースエステルフィルム)の任意時点における質量、NはMのウェブを110℃で3時間乾燥させた場合の質量である。
【0048】
また、溶融流延製膜法によりセルロールエステルからなる樹脂フィルム基材を製造する方法について簡単に説明する。溶融流延製膜法は、溶媒を用いずにセルロースエステルを、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを金属ベルト又はドラム上に押し出して成膜する方法である。
【0049】
この実施形態においては、セルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0050】
また、後述するハードコート層の支持体としてセルロースエステルフィルムを用いる場合には、可塑剤や紫外線吸収剤などを含有させることが好ましい。セルロースエステルと溶剤の他に必要な可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0051】
この実施形態で用いることができる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0052】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性などの観点から、セルロースエステルに対して1重量%〜20重量%が好ましく、3重量%〜15重量%が特に好ましい。
【0053】
また、支持体としての樹脂フィルム基材には紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0054】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
また、上記の樹脂フィルム基材上には活性線硬化樹脂層が塗設される。この活性線硬化樹脂層は、ハードコート層として用いられる。ハードコート層は、画像表示装置の画面に物が接触することで生じる傷を防止するための層である。
【0056】
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でも良い。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0057】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば特開昭59−151110号公報参照)。
【0058】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号公報参照)。
【0059】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることができる(例えば、特開平1−105738号公報参照)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することができる。
【0060】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0061】
上記に挙げた樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0062】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチルジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステルなどを挙げることができる。
【0063】
紫外線硬化型樹脂の具体例としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ;KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B、(以上、旭電化工業社製)あるいはコーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業社製)、あるいはセイカビーム PHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業社製)、あるいはKRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー社製)、あるいはRC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業社製)、あるいはオーレックスNo.340クリヤ(中国塗料社製)、あるいはサンラッド H−601(三洋化成工業社製)、あるいはSP−1509、SP−1507(昭和高分子社製)、あるいはRCC−15C(グレース・ジャパン社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成社製)あるいはこの他の市販のものから適宜選択して利用することもできる。
【0064】
活性線硬化樹脂層の塗布組成物は、固形分濃度が10〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0065】
活性線硬化型樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線、電子線、γ線等で、防眩性付与組成物である活性光線硬化型樹脂を活性化させる光源であれば制限なく使用できるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は1mJ/cm以上が好ましく、更に好ましくは、20mJ/cm〜10000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cm〜2000mJ/cmである。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることも出来る。
【0066】
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0067】
活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒として前述の樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいは混合されて利用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0068】
紫外線硬化型樹脂組成物塗布液の樹脂フィルム基板上への塗布方法としては、公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。塗布速度は好ましくは10〜60m/minで行われる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロールーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号)により形成することができる。2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0069】
紫外線硬化型樹脂組成物は塗布後、速やかに乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化型樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
【0070】
また、活性線硬化樹脂層の代わりに樹脂フィルム基材上に熱硬化性樹脂を設けても良い。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド等を挙げることができる。
【0071】
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Brでブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合する等した反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウム等を添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂などがある。
【0072】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0073】
ビニルエステル樹脂としては、例えば、普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーをスチレンなどのモノマーに溶解した物である。また、分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としてはビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。
【0074】
フェノール樹脂は、フェノール類とフォルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
【0075】
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド・O,O′−ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂など、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミドなどがある。
【0076】
また、上述した活性光線硬化型樹脂の一部も、熱硬化性樹脂として用いることができる。
【0077】
加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール、サーマルヘッド、熱風を吹き付けるなどの方法を使用するのが好ましい。加熱温度としては、使用する熱硬化性樹脂の種類により一概には規定できないが、透明基材への熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30〜200℃が好ましく、更に50〜120℃が好ましく、特に好ましくは70〜100℃である。
【0078】
次に、上記の樹脂フィルム基材及びハードコート層を用いて防眩性を有する光学フィルムを製造する方法について説明する。
【0079】
[第1の実施の形態]
まず、この発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について、図2を参照しつつ説明する。図2は、この発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムの断面図である。この第1の実施形態においては、樹脂フィルム基材に対してドライアイスブラスト材を吹き付け、樹脂フィルム基材の表面を粗面化する。その後、上記ハードコート層を設けて防眩性を有する光学フィルムを作製する。
【0080】
上記の溶融流延製膜法又は溶液流延製膜法で製膜された樹脂フィルム基材の少なくとも1つの面に対してブラスト材を吹き付けて、粗面化する。ブラスト材は、常温常圧下で気体又は液体となる物質を冷却固体化することにより作製される。例えば、二酸化炭素を冷却固体化することによりドライアイスを作製し、そのドライアイスをクラッシャーにより砕いたり、一旦、ペレタイザーでペレット状にしたものを砕いたりしてドライアイス粒を作製し、そのドライアイス粒をブラスト材とする。そして、そのブラスト材をコンプレッサーエアーにより、ガン又はノズルから樹脂フィルムの表面に吹き付ける。このドライアイスからなるブラスト材は、公知のドライアイスブラスト装置により作製することができる。また、コンプレッサーエアーは、露点−50℃程度にしておくと良い。ドライアイスの温度は−78℃程度であるため、樹脂フィルム基材表面の結露を防止するためである。
【0081】
例えば、膜厚が30μm〜150μmになるように樹脂フィルム基材を製造する。ブラスト材としてドライアイス粒子を用いる場合は、粒子の平均粒径をφ1μm〜φ15mmとする。ブラスト材としてペレット状のものを用いる場合は、径をφ3mm程度のものとし、長さを1mm〜10mmとする。また、ブラスト材の吹き付ける速度を、例えば100m/sec程度にして樹脂フィルム基材表面に吹き付ける。樹脂フィルム基材に吹き付けた後に、ドライアイスブラスト材が昇華するような温度及び圧力下でブラスト材を吹き付ける。例えば、常温常圧下でブラスト材を樹脂フィルム基材に吹き付けることにより、樹脂フィルム基材に吹き付けられた後のブラスト材は昇華して気体となる。なお、この発明において、樹脂フィルム基材の膜厚や、ブラスト材の寸法及び形状は上記の値及び形状に限定されるものではない。ブラスト材の寸法、形状や吹き付ける速度などの条件を変えることにより、樹脂フィルム基材の凹凸の大きさや形状を変えることができるため、要求される凹凸の大きさ及び形状に合わせてブラスト材の寸法、形状又は吹き付ける速度を変えて樹脂フィルム基材の表面に吹き付ける。
【0082】
また、ガン又はノズルからドライアイスブラスト材を噴出させて樹脂フィルム基材に吹き付けるまでの間の空気中で、そのドライアイスブラスト材の大きさを制御しても良い。常温常圧下ではドライアイスブラスト材は昇華するため、固体化されたブラスト材は小さくなる。従って、ガン又はノズルから樹脂フィルム基材まので距離を長くするほど、樹脂フィルム基材に到達するブラスト材の大きさは小さくなる。このように、ガン又はノズルから樹脂フィルム基材までの距離を変えることにより、光学フィルムに到達するブラスト材の大きさを変えることができるため、距離を変えることでブラスト材の大きさを制御して吹き付け後の樹脂フィルム基材表面の凹凸の大きさ及び形状を制御することができる。従って、距離を変えるだけで、所望の防眩性を有する光学フィルムを作製することができる。
【0083】
ブラスト材を吹き付けて粗面化された樹脂フィルム基材を図2(a)に示す。ドライアイスからなるブラスト材を表面に吹き付けることにより、樹脂フィルム基材の表面を削り、また、表面を凹ませる。これにより、樹脂フィルム基材10の表面は凹凸となり、粗面化する。また、ドライアイス粒の粒径を変えることにより、樹脂フィルム基材10の表面の凹凸の大きさを変えることができる。なお、粗面化の度合いとして、JIS B 0601で規定されている中心線平均粗さRaが0.02μm〜2μmとなるように、表面を粗面化することが好ましい。つまり、表面平均粗さRaが0.02μm〜2μmとなるように、ブラスト材の大きさ及び吹き付ける速度を選択し、その条件でブラスト材を樹脂フィルム基材表面に吹き付ける。
【0084】
ドライアイスは常温常圧下で昇華するため、図10に示す、従来のサンドブラスト法のように砥粒が樹脂フィルム機材表面に残留することがない。その結果、砥粒が原因となっていた光の遮りや、反射によるギラツキを防止することが可能となる。
【0085】
また、ドライアイスの昇華時の冷却作用により樹脂フィルム基材表面が適度に硬くなり、表面の粗面化を効率的に実施することが可能となる。
【0086】
さらに、昇華により気体となった二酸化炭素の圧力により、削り取られたフィルム片が樹脂フィルム基材表面から吹き飛ばされるため、従来のサンドブラスト法と比べて容易にフィルム片を回収することができる。そして、砥粒が残留していないため、フィルム片のみを回収することができ、回収した樹脂を再利用することも可能となる。
【0087】
そして、樹脂フィルム基材表面の粗面化処理が終了すると、図2(b)に示すように、粗面化された樹脂フィルム基材10の表面に、上述した活性線硬化樹脂又は熱効果性樹脂からなるハードコート層11を形成し、防眩フィルムを作製する。このとき、硬化後のハードコート層11の膜厚を0.5μm以下にすることが好ましい。
【0088】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は、この発明の実施形態に係る光学フィルムの製造工程を説明するための図である。図4は、この発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムの断面図である。この第2の実施形態においては、樹脂フィルム基材上にハードコート層を形成し、そのハードコート層に対してドライアイスブラスト材を吹き付け、ハードコート層の表面を粗面化する。
【0089】
例えば、紫外線硬化樹樹脂によりハードコート層を形成する場合は、図3に示すように、塗布部13にて、紫外線硬化樹脂組成物塗布液を樹脂フィルム基材F上に塗布する。その後、ドライヤー14にて乾燥し、紫外線照射部15にてハードコート層に紫外線を照射することにおりハードコート層を硬化する。そして、ブラスト部16にてドライアイスブラスト材をハードコート層に吹き付け、表面を粗面化する。その後、クリーニング部17にてフィルムを洗浄し、ローラ12bにフィルムを巻き付ける。
【0090】
上記ブラスト部16における粗面化処理について図4を参照しつつ詳しく説明する。まず、上記の溶融流延製膜法又は溶液流延製膜法で製膜された樹脂フィルム基材18上にハードコート層を形成する。活性線硬化樹脂を用いる場合は、照射部15により活性線を照射することにより硬化させて樹脂フィルム基材上にハードコート層を形成する。熱硬化性樹脂を用いる場合は、加熱処理することにより硬化させて樹脂フィルム上にハードコート層を形成する。そして、そのハードコート層に対してブラスト部16によりドライアイスブラスト材を吹き付けて粗面化する。粗面化処理の条件は第1の実施形態と同じである。ブラスト材を吹き付けて粗面化されたハードコート層を図4に示す。図4に示すように、樹脂フィルム基材18上にハードコート層19を形成し、ドライアイスからなるブラスト材をハードコート層19の表面に吹き付けることにより、ハードコート層19の表面を凹凸にし、粗面化する。これにより、表面が粗面化された防眩フィルムが製造される。従来のようにサンドブラスト材のような硬度が高いものをハードコート層に吹き付けると、ブラスト材の粒径、衝突速度、粒子の形状によっては、ハードコート層にひびが発生することがある。これに対して、ドライアイスからなるブラスト材は、サンドブラスト材(研磨砥粒)よりも柔らかいため、ドライアイスブラスト材をハードコート層19に吹き付けても、ハードコート層13にひびが生じるおそれがない。
【0091】
ハードコート層19についても、第1の実施形態と同じ効果が得られる。つまり、ドライアイスは常温常圧下で昇華するため、従来のサンドブラスト法のように砥粒が樹脂フィルム機材表面に残留することがない。その結果、砥粒が原因となっていた光の遮りや、反射によるギラツキを防止することが可能となる。
【0092】
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について、図5を参照しつつ説明する。図5は、この発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。この第3の実施形態においては、樹脂フィルム基材上に微粒子を含むハードコート層を形成し、そのハードコート層に対してドライアイスブラスト材を吹き付け、ハードコート層の表面を粗面化する。
【0093】
ここで「微粒子」について説明する。この実施形態においては、無機又は有機の微粒子が用いられる。例えば、金属化合物、金属酸化物、樹脂、架橋構造を有する樹脂などが用いられる。この微粒子として、ハードコート層よりも硬いものを用いる。これにより、ハードコート層は、部分的に硬度が異なって構成されることになる。
【0094】
具体的には、無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどを挙げることができる。また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン系樹脂微粒子などを挙げることができる。
【0095】
また、上記微粒子の平均粒径は、0.01μm〜5μmであることが好ましいが、この発明はその値の範囲に限定されず、平均粒径を変えることにより、凹凸の大きさ及び形状を変えることができる。なお、微粒子の硬度は樹脂からなるハードコート層よりも硬ければ良い。
【0096】
図5(a)に示すように、樹脂フィルム基材20の上に、粒径が等しい微粒子22を混入させたハードコート層21を形成し、そのハードコート層21に対してドライアイスブラスト材を吹き付けて粗面化する。粗面化処理の条件は、第1の実施形態と同じである。そして、ハードコート層21の表面近辺に混入された微粒子22の一部がハードコート層21の表面から突出するまで、ハードコート層にブラスト材を吹き付け、ハードコート層の表面を剥離する。ブラスト材を吹き付けて粗面化されたハードコート層を図5(b)に示す。微粒子22の一部分はハードコート層23の表面から突出し、その部分が凸部となる。微粒子22はその周辺のハードコート層23よりも硬いため、ドライアイスブラスト材を吹き付けても削られず、表面から突出した部分は凸部となる。つまり、硬度が高い微粒子22を含ませたことにより、ハードコート層23は部分的に硬度が異なる構造となり、柔らかい部分(微粒子22が存在しない部分)が削られ、硬い部分(微粒子22)は削られず残存することになる。これにより、ハードコート層23の表面に凹凸が形成されることになり、これらの凹凸はそれぞれ比較的同じ形状を有することになる。また、微粒子の大きさ又は形状を変えることにより、凹凸の大きさ又は形状を変えることができる。このように、微粒子を含ませることにより、所望の大きさ及び形状を有する凹凸を形成することができ、防眩性に優れた光学フィルムを作製することが可能となる。
【0097】
なお、樹脂フィルム基材に微粒子を混入させ、その樹脂フィルム基材の表面にドライアイスブラスト材を吹き付けて表面を粗面化しても良い。この場合もハードコート層の場合と同様に、樹脂フィルム基材の表面に所望の大きさ及び形状を有する凹凸を形成することができる。
【0098】
[第4の実施の形態]
次に、この発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について、図6を参照しつつ説明する。図6は、この発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。この第4の実施形態においては、樹脂フィルム基材上に微粒子を含ませたハードコート層を形成し、そのハードコート層に対してドライアイスブラスト材を吹き付け、ハードコート層の表面を粗面化する。この実施形態においては、粒径が異なる微粒子をハードコート層に含ませている。
【0099】
図6(a)に示すように、樹脂フィルム基材24上に、粒径が異なる微粒子26a、26bを混入させたハードコート層25を形成する。微粒子26aは、微粒子26bの粒径よりも大きい。また、複数ある微粒子26bのうち、一部の微粒子26bは部分的にハードコート層25から突出するようにハードコート層25に混入されている。その突出の度合いも個々の微粒子26bにより異なり、僅かに表面から突出しているものの他、大半が表面から突出しているものもある。
【0100】
このように2種類の微粒子26a、26bが混入されたハードコート層25に対してドライアイスからなるブラスト材を吹き付けて、表面を粗面化する。粗面化処理の条件は、第1の実施形態と同じである。ブラスト材を吹き付けて粗面化されたハードコート層27を図6(b)に示す。粒径が異なる微粒子を混入させることにより、凸部と凹部とを混在させた表面を容易に形成することができる。ハードコート層25内に完全に埋もれている微粒子26a、26bがある部分においては、ブラスト材を吹き付けてハードコート層25の表面を削ることにより、その部分は凸部となる。つまり、ハードコート層25の表面が削れて微粒子26a、26bが部分的に表面から突出することで、その突出した部分が凸部となる。また、大半がハードコート層25の表面から突出している微粒子26bについては、表面から微粒子26bを脱離させることにより、その部分は凹部となる。このように、粗面化処理後のハードコート層27の表面は、凸部と凹部とが混在したものとなり、防眩性に優れた光学フィルムを作製することができる。
【0101】
なお、この実施形態においては、粒径の大きさが2種類の微粒子を混入させているが、3種類以上の微粒子を混入させても構わない。また、微粒子の粒径の大きさ又は形状を変えることにより、凹凸の形状及び大きさを制御することが可能となるため、所望の防眩性フィルムを容易に作製することが可能となる。さらに、複数種の微粒子を混入させる場合、硬さが異なる微粒子を混入させても構わない。これによっても、凹凸の形状及び大きさを制御することができ、所望の防眩性フィルムを作製することが可能となる。
【0102】
なお、樹脂フィルム基材に粒径が異なる微粒子を混入させ、その樹脂フィルム基材の表面にドライアイスブラスト材を吹き付けて表面を粗面化しても良い。この場合もハードコート層の場合と同様に、樹脂フィルム基材の表面に所望の大きさ及び形状を有する凹凸を形成することができる。
【0103】
[第5の実施の形態]
次に、この発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの製造方法について、図7及び図8を参照しつつ説明する。この第5の実施形態においては、ドライアイスブラスト法による処理を複数回に分けて実施する。図7は、この発明の第5の実施気体に係る光学フィルムの製造方法における複数回処理を説明するための図である。図8は、この発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。
【0104】
まず、図7を参照しつつ複数回に分けてブラスト材を吹き付ける処理について説明する。溶融流延製膜法又は溶液流延製膜法により作製された樹脂フィルム基材、又は樹脂フィルム基材上に形成されたハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付ける。この実施形態においては、3回に分けてブラスト材を吹き付ける例について説明する。
【0105】
図7に示すように、ドライアイスブラスト装置30には、第1のブラスト部31a、第2のブラスト部31b、及び第3のブラスト部31cが設けられている。各ブラスト部31a、31b、31cによりドライアイスブラスト材が生成され、それぞれ、ガン又はノズルを有してドライアイスブラスト材を光学フィルム33に吹き付ける。光学フィルム33は、支持部材としての複数のロール部材32によって支持され、図中の矢印の方向に移動させられる。この光学フィルム33は、樹脂フィルム基材、又はハードコート層が形成された樹脂フィルム基材からなる。各ブラスト部31a、31b、31cにおいては、光学フィルム33は一方の面にロール部材32が接触することで支持され、他方の面にブラスト材が吹き付けられて粗面化される。
【0106】
そして、ロール部材32を回転させることで、光学フィルム33を矢印の方向に移動させながら各ブラスト部31a、31b、31cからブラスト材を光学フィルム33の表面に吹き付け、表面を粗面化する。このとき、各ブラスト部31a、31b、31cから噴出される各ブラスト材の形状及び大きさは、互いに同じものであっても異なるものであっても良い。
【0107】
例えば、各ブラスト部31a、31b、31cから、同じ粒径のドライアイス粒を光学フィルム33の表面に吹き付ける。各ブラスト部は、ドライアイスブラスト材を生成する量に限度があるため、使用すべきドライアイスブラスト材の量が多い場合は、この実施形態のように複数のブラスト部を設けて処理を行った方が良い。つまり、1つだけブラスト部を設けて処理を行おうとすると、ブラスト材の生成量が足りず、良好に粗面化することができないおそれがある。従って、この実施形態のように複数のブラスト部を設け、複数回に分けて粗面化することで、所望の防眩性を有する光学フィルムを作製することが可能となる。
【0108】
また、それぞれの回において大きさを変えたドライアイスブラスト材を、光学フィルム23に吹き付けても良い。この処理について図8を参照しつつ説明する。
【0109】
例えば、3回にわたってドライアイスブラスト材を吹き付ける場合について説明する。図7に示すように、第1のブラスト部31a、第2のブラスト部31b、及び第3のブラスト部31bからブラスト材を吹き付ける。ブラスト材の大きさを変えて吹き付ける場合には、第1回目の吹き付けに用いられるブラスト材の大きさよりも、第2回目の吹き付けに用いられるブラスト材の大きさを小さくし、更に、第2回目の吹き付けに用いられるブラスト材の大きさよりも、第3回目の吹き付けに用いられるブラスト材の大きさを小さくする。例えば、粒子からなるブラスト材を吹き付ける場合、第1のブラスト部31aから吹き付けられるブラスト材(粒子)の粒径をd1とし、第2のブラスト部31bから吹き付けられるブラスト材(粒子)の粒径をd2とし、第3のブラスト部31cから吹き付けられるブラスト材(粒子)の粒径をd3とした場合、d1>d2>d3の関係が成立する条件で、ブラスト材を吹き付けて光学フィルム表面を粗面化する。そして、上述したように、図7中矢印の方向に光学フィルム33を移動させながら各ブラスト部31a、31b、31cからブラスト材を吹き付ける。なお、ブラスト材の大きさが大きいほど、吹き付ける速度を遅くし、大きさが小さくなるほど、吹き付ける速度を速くすることが好ましい。
【0110】
各ブラスト部31a、31b、31cにより粗面化される状態を図8に示す。図8(a)に、粗面化処理前の光学フィルム33を示す。この光学フィルム33は、樹脂フィルム基材そのものであっても良く、樹脂フィルム基材上にハードコート層を形成したフィルムであっても良い。
【0111】
そして、その光学フィルム33に対して第1のブラスト部31aにより粒径がd1のブラスト材を吹き付け、図8(b)に示す光学フィルム34のように表面を粗面化する(第1回目の吹き付け)。第1回目の吹き付けには、粒径が大きいブラスト材を用いたため、光学フィルム34の表面に形成される凹凸部34aはそのブラスト材の粒径に応じて大きいものとなる。
【0112】
次に、光学フィルム34に対して第2のブラスト部31bにより粒径がd2(<d1)のブラスト材を吹き付け、図8(c)に示す光学フィルム35のように表面を粗面化する(第2回目の吹き付け)。第1回目に用いられたブラスト材の粒径よりも小さい粒径のブラスト材を用いているため、光学フィルム35の表面に形成される凹凸部35aはそのブラスト材の粒径に応じて、凹凸部34a(図中、破線で示す)よりも小さい凹凸となる。この凹凸部35aは、第1回目の吹き付けにより形成された凹凸部34aの上に形成されることになる。
【0113】
そして、光学フィルム35に対して第3のブラスト部31cにより粒径がd3(<d2)のブラスト材を吹き付け、図8(d)に示す光学フィルム36のように表面を粗面化する(第3回目の吹き付け)。第2回目に用いられたブラスト材の粒径よりも更に小さい粒径のブラスト材を用いているため、光学フィルム36の表面に形成される凹凸部36aはそのブラスト材の粒径に応じて、凹凸部35aよりも小さい凹凸となる。この凹凸部36aは、第2回目の吹き付けにより形成された凹凸部35aの上に形成されることになる。
【0114】
以上のように、粗面化処理を複数回(この実施形態では3回)に分け、各回に用いるブラスト材の大きさ(粒径)を変え、除々に大きさ(粒径)が小さいブラスト材で粗面化することにより、表面の凹凸の形状及び大きさの制御が容易になり、防眩性に優れた所望の光学フィルムを容易に作製することが可能となる。
【0115】
また、上述した第1の実施形態から第5の実施形態において、光学フィルムを一方の面から支持部材により支持し、支持されている反対側の面に対してブラスト材を吹き付けても良い。例えば、図7に示すように、ロール部材に光学フィルムを接触させ、その状態で、接触している面の反対側の面にブラスト材を吹き付ける。また、ベルト部材の上に光学フィルムを載置し、ベルト部材の反対側の面に対してブラスト材を吹き付ける。光学フィルムは支持部材により支えられているため、ブラスト材による力が効率良く光学フィルム表面に伝わる。そのことにより、効率的に光学フィルム表面を粗面化することができる。また、光学フィルムを支持部材で支持することで、光学フィルムを平面に保つことができる。
【0116】
また、光学フィルムの表面が結露することを防止するために、光学フィルムの温度を室温以上にする。例えば、雰囲気の露点を10℃以下とし、光学フィルムの表面温度を20℃〜120℃にする。なお、溶融流延製膜法で作製された樹脂フィルムについては、溶融しない温度に維持する必要がある。このように、光学フィルムの表面温度を20℃〜120℃にすることにより、ドライアイスブラスト材が吹き付けられた際に、光学フィルムの温度低下を防止することができ、結露を防止することが可能となる。
【0117】
具体的には、ドライアイスブラスト材を光学フィルムに吹き付ける前に、ドライヤー等により光学フィルムに風を吹き付け、光学フィルムの表面温度を20℃〜120℃に維持する。
【0118】
また、別の手段として、ドライアイスブラスト材を光学フィルムに吹き付ける前に、光学フィルムを搬送するロール部材やベルト部材などの支持部材を加熱することにより、その支持部材に接している光学フィルムを加熱しても良い。例えば、光学フィルムの表面温度よりも高い温度の支持部材により光学フィルムを加熱し、光学フィルムの表面温度が20℃〜120℃になるように支持部材の温度を調整する。これにより、光学フィルムが冷却され過ぎることを防止することができ、表面を粗面化する工程及びその後の工程において、光学フィルムへの結露を防止することが可能となる。支持部材を加熱する方法として、ロール部材内に温水などを流しても良く、電気製のジャケットロールをロール部材として用いても良い。
【0119】
また、ドライアイスにより冷却されて結露が生じるおそれがあるため、粗面化処理前、粗面化処理中、粗面化処理後などにおいて、雰囲気の露点を下げておくことが好ましい。例えば、10℃以下に露点を下げることが望ましい。具体的には、粗面化処理をチャンバー内などで行い、そのチャンバー内に昇華した二酸化炭素ガスや窒素ガス等を充満させて、露点を下げる。また、例えば露点が−60℃のドライエアーをチャンバー内に充満させても良い。
【0120】
また、光学フィルム表面に削られたフィルム片が付着するのを防止するために、除電装置を用いて光学フィルムの表面を除電しながら表面を粗面化しても良い。また、粗面化処理を行う前に、除電を行っても良い。例えば、ドライアイスブラスト材を吹き付けた後の光学フィルムの帯電量が1[kV]以下になるように除電の条件を決めて除電を行う。帯電量が1[kV]以下になるまで除電することにより、削られたフィルム片が光学フィルムに再付着するのを防止できる。具体的な手段として、ドライアイスブラスト材を吹き付けるノズル内にイオン発生用の電極を設け、ブラスト材を吹き付けるとともに光学フィルム表面を除電する。
【0121】
さらに、そのノズルに吸引口を設け、削り取られたフィルム片をその吸引口で吸い込んで光学フィルム表面からフィルム片を除去する。そして、粗面化処理後に光学フィルムをクリーニングする。このクリーニングには公知の方法が採用され、例えば、エアー式ウェブクリーナー、粘着式ウェブクリーナー、又はブラシ式ウェブクリーナーなどが用いられる。
【0122】
また、光学フィルム表面を粗面化する際に、光学フィルムを密封されたチャンバー内に格納し、そのチャンバー内を外部よりも減圧して粗面化処理を行っても良い。例えば、チャンバー外部の圧力よりも10Pa程度、減圧する。このように減圧下で粗面処理することにより、粗面化処理により削り取られたフィルム片が樹脂フィルム表面に再付着することを防止することができ、更に、削り取られたフィルム片をチャンバー外に出ないようにチャンバー内に閉じ込めることができる。なお、10Pa程度減圧しても、ドライアイスブラス材は衝突後、瞬時に昇華して気体となるので、ドライアイスブラスト法の効果が損なわれることはない。
【0123】
また、粗面化処理後の光学フィルムを洗浄することが好ましい。例えば、水を入れた水槽中に粗面化処理後の光学フィルムを浸漬し、光学フィルムに付着したフィルム片を除去する。さらに、洗浄剤を用いて光学フィルムを洗浄すると、より効果的にフィルム片を除去することができる。洗浄液を光学フィルムに高速で吹き付けてフィルム片を除去しても良い。また、超音波洗浄器を用いて光学フィルムに超音波を照射すること、より効果的にフィルム片を除去することができる。また、洗浄の代わりに、鹸化しても良い。また、ベルト部材に載置して搬送している状態の光学フィルムや、ロール部材に巻き付けられている状態の光学フィルムに水などの洗浄剤を吹き付けてフィルム片を除去しても良い。また、洗浄液はフィルターを通すことにより異物がない状態で用い、洗浄後、光学フィルム上の洗浄液を乾燥する。
【0124】
[実施例]
次に、この発明の具体的な実施例について図9に示す表を参照しつつ説明する。この実施例では、セルロールトリアセテートフィルム(TACフィルム)からなる樹脂フィルム基材上にハードコート層を塗設し、ドライヤーで乾燥し、その後硬化したハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付けて、粗面化した。
【0125】
[ハードコート層の作製]
TACフィルムからなる樹脂フィルム基材上に、下記のハードコート層(紫外線硬化樹脂層)用塗布液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液を調整し、これをマイクログラビアコーターにより塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を80mJ/cmとして塗布層を硬化させ、厚さ7μmのハードコート層を形成した。そして、下記に示すドライアイスブラスト条件で、ドライアイスブラスト材を吹き付けた。なお、樹脂フィルム基材には、コニカミノルタ製のTACフィルム 8UXを用いた。
【0126】
<ハードコート層用塗布液>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:100重量部
光反応開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製):5重量部
酢酸エチル:120重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル:120重量部
シリコン化合物:0.4重量部
【0127】
<ドライアイスブラスト条件>
ドライアイスの形状及び大きさ:平均粒子径φ3×2mmのペレット状のブラスト材
供給エアー圧:6kg/cm
この条件で、未硬化状態のハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付け、表面を粗面化した。
【0128】
[反射防止層の作製]
粗面化処理後、ハードコート層を硬化し、そのハードコート層上に下記に示す反射防止層(AR層)を塗布にて形成し、生産性、AR層の塗布ムラ、平面性、点状故障について評価した。
【0129】
硬化後のハードコート層の上に、下記中屈折率層用塗布液をバーコーターにより塗布し、70℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.72、膜厚85nm)を形成した。その上に、下記高屈折率層用塗布液をバーコーターにより塗布し、70℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率1.9、膜厚68nm)を形成した。更にその上に、下記低屈折率層用塗布液をバーコーターにより塗布し、70℃で乾燥させ、熱処理により硬化して低屈折率層(屈折率1.42、膜厚100nm)を形成し、可視光の反射率が0.5%以下の反射防止フィルムを作製した。
【0130】
〈中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の作製〉
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子質量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30質量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬(株)製)4.5質量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人(株)製)0.3質量部及びメチルエチルケトン65.2質量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0131】
(中屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン151.9g及びメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14g及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。更に、上記の二酸化チタン分散物6.1g及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、中屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液をセルロースエステルフィルムに塗布乾燥し紫外線硬化後の屈折率を測定したところ、屈折率1.72の中屈折率層が得られた。
【0132】
(高屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン1152.8g及びメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。更に、上記の二酸化チタン分散物及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)の二酸化チタン分散物の比率を増加させ、高屈折率層の屈折率となるように量を調節して、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、高屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液を、セルロースエステルフィルムに塗布、乾燥し紫外線硬化後の屈折率を測定したところ、屈折率1.9の高屈折率層が得られた。
【0133】
(低屈折率層用塗布液の調製)
下記の混合物を20分間室温で攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。これを、バーコーターを用いて乾燥膜厚が0.1μm(屈折率n=1.42)になるように塗工し、120℃の熱風式乾燥機中で30分間加熱処理を行い屈折率1.42の低屈折率層を形成した。
【0134】
<低屈折率層用塗布液>
含フッ素系共重合体(ポリジメチルシロキサンユニットを有するフルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体)を含む塗料(固形分3%)(JSR(株)製、JN−7215):30重量部
コロイダルシリカ分散液(平均一次粒径50nm、固形分15%、イソプロピルアルコール分散液):1.5重量部
1−メトキシ−2−プロパノール:6重量部
【0135】
[比較例1]
TACフィルムからなる樹脂フィルム基材上に防眩層を形成し、これを比較例1とした。TACフィルムからなる樹脂フィルム基材上に、下記の防眩層(紫外線硬化樹脂層)用塗布液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して防眩層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターにより塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を80mJ/cmとして塗布層を硬化させ、厚さ3μmの防眩層を形成した。さらに、その防眩層のうえに上記反射防止層を形成した。
【0136】
<防眩層用塗布液>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:100重量部
光反応開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製):5重量部
酢酸エチル:120重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル:120重量部
シリコン化合物:0.4重量部
架橋ポリスチレン粒子(綜研化学製SX350H 粒径3.5μm):10重量部
酸化珪素微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)):5重量部
【0137】
[比較例2]
TACフィルムからなる樹脂フィルム基材上に上記ハードコート層を形成し、硬化した状態で回転羽根式噴射装置によりサンドブラスト材を吹き付けた。この粗面化されたフィルムを比較例2とした。サンドブラスト材を吹き付ける条件を下記に示す。さらに、粗面化処理後、ハードコート層上に上記反射防止層(AR層)を塗布にて形成した。
周速:50m/sec
投射砂:珪砂(平均粒径85.2μm)
【0138】
上記の実施例、比較例1、2について、生産性、AR層塗布むら、平面性、点状故障について評価した。その評価結果を図9の表に示す。
【0139】
実施例においては、条件1〜条件10の条件下でドライアイスブラスト材をハードコート層に吹き付けた。条件2〜条件9においては、支持部材により一方の面からフィルムを支持し、その反対の面にブラスト材を吹き付けた。条件1〜条件10で、樹脂フィルム基材の温度を変えた。例えば、条件1では、支持部材による支持がなく、樹脂フィルム基材の温度が30℃の状態で、ハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付け、粗面化し、その後、反射防止層を形成した。また、条件2では、支持部材によりフィルムを支持し、樹脂フィルム基材の温度が10℃の状態で、ハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付け、粗面化し、その後、反射防止層を形成した。このように、樹脂フィルム基材の温度を変えてブラスト材を吹き付けた。また、条件8の条件下では、上述した第6の実施形態のように、ドライアイスブラスト材を2段階に分けて吹き付けた。また、条件9の条件下では、除電装置による除電効果を他の条件よりも強化した状態で、ドライアイスブラスト材を吹き付けた。また、条件10の条件下では、二酸化炭素の雰囲気中でドライアイスブラスト材を吹き付けた。
【0140】
<生産性>
表面粗さが異なるハードコート層(実施例、比較例2)又は防眩層(比較例1)を、製膜条件を切り換えて生産する際に、その切り換えに要する時間を記録し、10回の切り替えの平均値を求めた。
◎:切り換えは30分以内に行うことができた
○:切り換えは30分〜1時間以内で行うことができた
△:切り換えは1時間〜2時間以内で行うことができた
×:切り換えに2時間以上を要した
図9の表に示すように、実施例(条件1〜条件10)では全て「○」となり、30分〜1時間以内に切り替えて生産を行うことができたが、比較例1及び比較例2では「×」となり、切り換えに2時間以上を要した。以上の結果から、この発明の実施形態によると、従来よりも生産性を向上させることができることが分かった。
【0141】
<反射防止層の塗布むら>
上記反射防止層を塗設した面の反対側の面(裏面)に黒色スプレーを塗布し、裏面の反射を抑制し、反射光の色むらとして認められる塗布むらを目視にて観察し、以下の評価基準で評価を行った。
◎:塗布むらは認められない
○:光学フィルムの端部にわずかに反射光の色の変化が認められる
△:幅方向全体で僅かに反射光の色の変化が認められる
×:幅方向全体ではっきりと反射光の色の変化が認められる
この基準において、評価が「◎」、「○」、「△」であれば防眩性の光フィルムとして実用上問題なく使用できる。「○」、「◎」であることが好ましい。図9の表に示すように、実施例(条件1〜条件10)では「◎」、「○」、「△」となり、実用上問題がないレベルとなっている。それに対して、比較例1及び比較例2では「×」となり、実用的なレベルとなっていない。また、条件2〜条件10では、「◎」又は「○」となっているため、更に良好な結果となっている。
【0142】
<平面性>
上記反射防止層を塗設した面の反対側の面(裏面)を上にし、反射防止層を塗設した面を下にして光学フィルムを平坦な机の上に置き、蛍光灯から光学フィルムに斜めの光を当て、光学フィルムに反射する蛍光灯の輪郭の見え具合を評価した。蛍光灯として、40Wの直管蛍光灯を4本、10cm間隔に配置したものを使用した。
◎:表面に波打ち状のむらは全く認められない
○:表面に僅かに波打ち状のむらが認められる
△:表面に細かい波打ち状のむらがやや認められる
×:表面に細かい波打ち状のむらが認められる
図9の表に示すように、実施例(条件1〜条件10)では「△」、「○」、「◎」となった。特に、条件7〜条件10では「◎」となり、良好な結果が得られた。
【0143】
<点状故障>
上記反射防止層を形成した後、その反射防止層上の点状の故障(直径100μm以上)をカウントし、下記の基準で評価を行った。
◎:1個/m以下
○:2〜5個/m
△:6〜10個/m
×:11個m以上
この基準において、評価が「◎」、「○」であれば実用上問題がないレベルになる。図9の表に示すように、条件1及び条件2では「○」となり、条件3〜条件10では「◎」となった。これにより、実施例では良好な結果が得られ、実用上問題がないレベルであることが分かった。比較例1及び比較例2では「△」、「×」となり、実用的なレベルとはならなかった。
【0144】
なお、樹脂フィルム基材については、塑性変形可能な状態でドライアイスブラスト材を吹き付けても構わない。溶液流延製膜法により樹脂フィルム基材を作製する場合は、溶媒が含有している状態でブラスト材を吹き付ける。溶媒が含まれている状態では、含まれていない状態に比べて、基材が軟らかいため、吹き付けられたブラスト材により基材表面が凹み、そのことにより表面が凹凸になり、粗面化される。粗面化した後は、溶媒を乾燥させることで樹脂フィルム基材を作製する。これにより、表面が粗面化された樹脂フィルム基材が作製される。例えば、残留溶媒量を5重量%以上にすることで、吹き付けられたブラスト材により基材表面が凹み、粗面化される。
【0145】
また、溶融流延製膜法により樹脂フィルム基材を作製する場合は、樹脂フィルム基材の温度をガラス転移温度以上にすることで溶融状態になるため、その状態でブラスト材を吹き付ける。溶融状態では基材は軟らかくなっているため、吹き付けられたブラスト材により基材表面が凹み、そのことにより表面が凹凸となり、粗面化される。
【0146】
また、ハードコート層として活性線硬化樹脂を用いる場合は、未硬化状態やハーフキュアした状態でドライアイスブラスト材を吹き付けても構わない。この状態では、ハードコート層は完全に硬化していないため、フルキュアされた状態と比べて、層が軟らかいため、吹き付けられたブラスト材により層表面が凹み、そのことにより表面が凹凸になり、粗面化される。粗面化した後は、フルキュアし、ハードコート層を作製する。これにより、表面が粗面化されたハードコート層が作製される。
【0147】
ハードコート層として熱硬化性樹脂を用いる場合は、熱硬化前の未硬化状態でドライアイスブラスト材を吹き付けても構わない。未硬化状態では、層が軟らかいため、吹き付けられたブラスト材により層表面が凹み、そのことにより表面が凹凸になり、粗面化される。粗面化した後は、熱硬化し、ハードコート層を作製する。これにより、表面が粗面化されたハードコート層が作製される。
【0148】
塑性変形可能な状態の樹脂フィルム基材、又は未硬化状態のハードコート層にドライアイスブラスト材を吹き付けると、基材又は層の表面は削られず、凹まされて凹凸状になる。このように表面が凹まされるため、削られる場合と比べて、凹凸が滑らかになり、更にギラツキを防止することができ、防眩性に優れた光学フィルムを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】この発明の実施形態に係る光学フィルムの製造工程を説明するための図である。
【図2】この発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムの断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの製造工程を説明するための図である。
【図4】この発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムの断面図である。
【図5】この発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。
【図6】この発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。
【図7】この発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの製造方法における複数回処理を説明するための図である。
【図8】この発明の第5の実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するためのフィルムの断面図である。
【図9】この発明の具体的な実施例の評価結果を示す表である。
【図10】従来技術に係るサンドブラスト法により粗面化処理を行った後の光学フィルムの断面図である。
【符号の説明】
【0150】
10、18、20、24 樹脂フィルム基材
11、19、21、23、25、27 ハードコート層
22、26a、26b 微粒子
30 ブラスト部
31a 第1のブラスト部
31b 第2のブラスト部
31c 第3のブラスト部
32 ロール部材(支持部材)
33、34、35、36 光学フィルム(樹脂フィルム基材、又はハードコート層が形成された樹脂フィルム基材)
34a、35a、36a 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材を、光透過性フィルムの少なくとも一方の面に吹き付け、前記少なくとも一方の面を粗面化することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ブラスト材を複数回に分けて前記光透過性フィルムに吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記吹き付けの回数が増えるに従って小さいブラスト材を吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ブラスト材を吹き付ける前に、前記光透過性フィルムに対して風を吹き付けて前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ブラスト材を吹き付ける前に、前記光透過性フィルムを支持部材に支持させることで前記光透過性フィルムの表面温度を20〜120℃にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記光透過性フィルムの一方の面を支持部材により支持し、
前記支持の反対側の面に対して前記ブラスト材を吹き付けることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記支持部材は、前記光透過性フィルムを巻きつけるロール部材、又は、前記光透過性フィルムを載置するベルト部材からなることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
除電装置により前記光透過性フィルムを除電することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記除電装置により前記光透過性フィルムを除電することにより、前記ブラスト材を吹き付けた直後の前記光透過性フィルムの帯電量を1[kV]以下にすることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ブラスト材は、二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ブラスト材は、ドライアイスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記ブラスト材を減圧下で前記光透過性フィルムに吹き付けることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
エアー式ウェブクリーナー、粘着式ウェブクリーナー又はブラシ式ウェブクリーナーのうち、少なくとも1つのクリーナーにより、前記光透過性フィルム上の付着物を除去することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記光透過性フィルムは、部分的に硬度が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記光透過性フィルムは、周囲の材料よりも硬い複数の微粒子を含んでいることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記複数の微粒子は、粒径が異なる複数の種類からなることを特徴とする請求項16に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項18】
常温常圧下で気体又は液体となる冷却固体化したブラスト材が、光透過性フィルムの少なくとも一方の面に吹き付けられ、前記少なくとも一方の面が粗面化されたことを特徴とする光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−317629(P2006−317629A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138858(P2005−138858)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】