説明

光学フィルム及びその製造方法

【課題】700mm幅以上の広幅成形で、厚みが100μm以下の薄肉成形でも配向がほとんどなく、かつ透明性の高いポリプロピレン系樹脂製光学フィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程、該バブルの外周面に空気を吹き付け冷却する空冷工程、次いで冷却水により冷却固化させる水冷工程、該バブルを折りたたみフィルムを得る工程、該フィルム表面の水分を除去する乾燥工程、及び折りたたまれたフィルムを分離する工程を含む、水冷式インフレーション法による光学フィルムの製造方法であって、前記水冷工程において、バブルの外面を冷却水を含有する吸水性材料を巻いて冷却することを特徴とする光学フィルムの製造方法、及びポリプロピレン系樹脂から構成され、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度で測定した位相差が20nm以下である光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及びその製造方法に関し、詳しくは偏光子の保護膜として有用な熱可塑性樹脂製光学フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の構成部材である偏光子保護膜や位相差板等の光学フィルムに対しては、コントラストや視野角の向上のために、高い光学的均質性が求められている。
ここで、偏光子保護膜は、分子が同じ方向に且つ同じ程度に配向するように無配向のフィルムを押出し成形することで製造される。従って、偏光子保護膜はフィルムそのものにフィッシュアイやブツ、あるいはダイラインと呼ばれるスジ等の欠陥がないこと、透明性が高いこと、厚み偏差が少ないこと、無配向であることが要求される。
【0003】
そこで、従来、溶融状態の環状オレフィン樹脂などの溶融樹脂との剥離強度が75N以下となる特殊な材料でTダイの吐出口(リップ)をメッキし、当該Tダイからフィルム状に吐出された溶融樹脂を、該環状オレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)となるように設定されたキャスティングロールと、キャスティングロールの温度に比べて、同温〜50℃低く設定されたタッチロールとにより挟圧することで、冷却固化させる環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法が知られている(特許文献1、段落0056、0065、0072参照)。
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載された方法では、溶融樹脂との接触時間が長いキャスティングロールの表面温度の方が、溶融樹脂との接触時間が極めて短いタッチロールの表面温度よりも高くなっているため、製造されたフィルムの透明性が損なわれてしまうという問題があった。
これに対し、溶融樹脂をTダイから180〜300℃で押し出し、成形された溶融樹脂シートを、表面温度が−5〜30℃とされた冷却ロールと、表面温度が80〜150℃とされた弾性変形可能な金属ロールとによって挟圧することで、冷却固化させる工程を備えるフィルムの製造方法が提案されている(特許文献2、特許請求の範囲参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−280315号公報
【特許文献2】特開2009−90652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献2に開示されるようなTダイを用いて得られるポリプロピレン系フィルムは、透明性に関しては優れているものの、面内位相差については、従来使用されるトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに対して大きな値を示し、位相差については良好とはいえなかった。
また、Tダイ押出し成形では、700mm幅以上の広幅成形を行なうと、例えば、ポリプロピレン樹脂を使用した場合、100μm以下の薄肉成形では、厚み精度のバラツキがでて、テンションコントロールが不安定になるという問題点があった。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、本発明の目的は、700mm幅以上の広幅成形で、厚みが100μm以下の薄肉成形でも配向がほとんどなく、かつ透明性の高い熱可塑性樹脂製光学フィルム、及び該フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の水冷式インフレーション法を用いて製造される光学フィルムが、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程、該バブルの外周面に空気を吹き付け冷却する空冷工程、次いで冷却水により冷却固化させる水冷工程、該バブルを折りたたみフィルムを得る工程、該フィルム表面の水分を除去する乾燥工程、及び折りたたまれたフィルムを分離する工程を含む、水冷式インフレーション法による光学フィルムの製造方法であって、前記水冷工程において、バブルの外面を、冷却水を含有する吸水性材料を巻いて冷却することを特徴とする光学フィルムの製造方法、及び
(2)ポリプロピレン系樹脂から構成され、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度で測定した位相差が20nm以下である光学フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配向がほとんどなく、かつ透明性の高い光学フィルム及びその効果的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法を説明する模式図である。
【図2】実施例1で得られた光学フィルムの共焦点レーザー顕微鏡の観察像である。
【図3】比較例1で得られた光学フィルムの共焦点レーザー顕微鏡の観察像である。
【図4】実施例及び比較例の光学フィルムにおける入射角と位相差の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶融された熱可塑性樹脂を用い、水冷式インフレーション法によって光学フィルムを得る光学フィルムの製造方法である。以下、図1を用いて詳細に説明する。
(インフレーション工程)
図1は本発明の水冷式インフレーション法による光学フィルムの製造方法を示す説明図である。本発明の方法は、まず、溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程(インフレーション工程)を有する。なお、膨張した管状体をバブルという。
すなわち、溶融された熱可塑性樹脂は、原料ホッパー1より供給され、押出機2により、環状ダイ4から下方向に押し出される。該押し出しにより得られる管状体の先端をピンチロール15で挟んで、その中に一定量の空気3を吹き込んで、所定の大きさに膨張させバブル5とする。
環状ダイによる下向きのインフレーション成形法を用いることで、管状に成形された溶融樹脂を巻き取る前に、配向が発生しにくくなり、位相差が小さく、かつ、幅方向において位相差にムラがほとんどない光学フィルムを製造することが可能となる。
【0011】
ここで、押出機2は、原料ホッパー1より供給された熱可塑性樹脂を溶融、混練しつつ押し出して、溶融混練した熱可塑性樹脂を環状ダイ4へと搬送するものである。また、環状ダイ4としては、インフレーション成形に用いられる各種の環状ダイを用いることができるが、ウエルドの発生が少なく、厚みの均一性に優れた、特許第3568524号や特許4050771号に記載されるようなスパイラルダイを用いることが好ましい。
【0012】
また、熱可塑性樹脂の溶融温度としては、熱可塑性樹脂の吐出量、所望のフィルムの厚さなどによって適宜決定され、特に制限はないが、通常は、成形材料のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+30℃〜Tg+180℃の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、フィルムの成形加工性、得られるフィルムの表面の平滑さ、透明性のバランスがよい良好なフィルムが得られる。以上の観点から熱可塑性樹脂の溶融温度は、さらに好ましくはTg+50℃〜Tg+150℃、特に好ましくはTg+60℃〜Tg+140℃の範囲である。
例えば、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を使用した場合には、200℃以下で溶融させることが好ましく、140〜200℃の範囲が特に好適である。
【0013】
(空冷工程及び水冷工程)
次に、該バブルの外周面に冷却空気3’を吹き付けて冷却する空冷工程、次いで冷却水7により冷却固化させる水冷工程を有する。水冷工程では、冷却水槽に浸漬する方法、冷却水をシャワー等により吹きかける方法などがある。図1に示す方法では、前記バブル5を冷却水槽6に浸漬する方法を示しており、該水槽6には、図1に示すように冷却水7が供給される。冷却水槽6で用いられた冷却水は、冷却水受け皿9で回収され、循環利用される。
本発明では、該水冷工程において、バブル5の外面を、冷却水を含有する吸水性材料8を巻いて冷却することを特徴とする。すなわち、バブル5は、その内面は空気に、外面は、吸水性材料8を支持材とした冷水流によって挟圧されることとなる。このように、管状に成形された溶融樹脂(バブル5)は、外面から冷水流によって冷却されるので、溶融樹脂を素早く冷却固化することができる。その結果、結晶が成長する前に溶融樹脂を冷却固化することができるので、高い透明性を有する光学フィルムを製造することが可能となる。
【0014】
また、バブル5は、十分に冷却水を含んだ吸水性材料8上の水流に接して移動するため、ピンチロール15で、強制的に折りたたまれるまでに十分な冷却がなされる。したがって、後の工程において、フィルムがピンチロールからはがれやすく、また、折りたたまれたフィルムの分離が容易となる。また、バブル5は、ダイヘッドの直下の部分より、上から下に向けて製膜され、フィルム自身が引っ張られることがないため、シワ等の欠陥が入らない。さらに、バブル5の外表面は吸水性材料8に直接的に接するものではなく、冷却水を介して接するため、該外表面はほぼ鏡面状態に近い、良好な面状態を有するものとすることができる。
【0015】
上記水冷工程で用いる吸水性材料としては、水を吸収し放出するものであれば、特に限定されるものではないが、バブル5が振動する際にも、冷却水7を介してバブル5に接触できるように、柔軟性がある材料であることが好ましい。このような吸水性材料としては、布、不織布、綿、フェルト、キルト、スポンジ、吸水性シートなどがあげられる。また、バブル5の表面の平滑性の点から、毛羽立ちのない材料であることが好ましい。
取り扱いの容易性、水の保水性などの観点から、綿、絹、合成繊維等の布が好適であり、バブル5の表面に鏡面状に近い外観をもたらす、目地の細かい、具体的には繊維径が10〜20μmのものが好適に使用される。
【0016】
前記吸水性材料は、十分な冷却を行うとの観点から、バブル5全面に円筒状に巻かれていることが好ましく、その材料はフィルムと接する面につなぎ目がないことが望ましい。
また、該吸水性材料を巻く位置については、バブル5を急冷することが肝要であることから、上記空冷工程の直後に冷却水槽6などにより水冷を行い、その直下に吸水性材料8が巻かれていることが好ましい。
【0017】
水冷に用いる水の温度については、熱可塑性樹脂の種類、吐出量、所望のフィルムの厚さなどによって適宜決定されるが、0〜50℃であることが好ましい。冷却水の温度が0℃以上であると、冷却水が凍結することがなく作業上有利である。一方、冷却水が50℃以下であると、得られるフィルムの透明性が確保される。以上の点から、冷却水の温度は、5〜40℃の範囲が好ましい。なお、冷却水槽6及び吸水性材料8に供給される冷却水の流量については、上述の冷却水の温度が維持される範囲内で適宜決定されるものである。
【0018】
(折りたたみ、乾燥、分離工程)
次いで、該バブルを折りたたみ、フィルムを得る工程では、冷却固化されたバブル5は、安定板14及びピンチロール15によって強制的に折りたたまれてフィルム化される。その後乾燥ゾーン10にて、該フィルム表面の水分が除去され(乾燥工程)、折りたたまれたフィルムは分離されて光学フィルムが得られる。通常、分離された光学フィルムは、図1に示すように、それぞれ巻き上げロール13及び13’によって巻き取られる。
本発明の方法では、バブルを折りたたみ、フィルムを得る工程において、前述のようにバブルの内面同士がブロッキングしないように、バブルを十分に冷却させる。その後、安定板14によりバブル5を折りたたみ、単体フィルムとして巻き取るためには、該環状体の両端各数mmをスリッター12で除去し、前記折りたたまれたフィルムを分離して、2本の巻き上げロール13及び13’に巻き取る。
ここで、乾燥ゾーン10は通常40〜50℃に設定され、また、フィルムの状態に応じて、乾燥ゾーン10と別に80〜100℃の高温のアニールゾーンを設けても良い。図1では、乾燥後に表面処理装置11によって、種々の表面処理を行うことができ、例えば、2の表面処理装置11(アニールロール)間をアニールゾーンとすることができる。
【0019】
本発明の方法である水冷インフレーション方式では、安定して薄肉成形が可能で、当該光学フィルムは、10〜200μmまで成形可能であり、好ましく40〜100μmで成形される。
【0020】
本発明の方法における成形速度は、製造するフィルムの厚さと幅、及び熱可塑性樹脂の押出し量により決定され、安定的に製造できる範囲で特に制限はなく、通常は、1〜150m/分、好ましくは5〜100m/分、特に好ましくは10〜50m/分の範囲である。
【0021】
[本発明の光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、ポリプロピレン系樹脂から構成され、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度で測定した位相差が20nm以下であることを特徴とする。位相差が小さいために、偏光板における偏光子の保護フィルムとして好適である。以上の点から、入射角度40度で測定した位相差は10nm以下であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明の光学フィルムは、80℃、相対湿度10〜40%に制御された条件下(通常のドライ条件)で、1000時間の加熱処理をした後に、特定の条件で測定した位相差と、加熱処理前の同条件で測定した位相差の差が5〜15nmであることが好ましい。なお、ここでいう、特定の条件とは、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度でそれぞれ測定することである。すなわち、上記条件にて加熱処理した後の光学フィルムに対して、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度で測定した位相差R'と、加熱処理前の同条件で測定した位相差R0との差(R’−R0)の値が5〜15nmであることが好ましい。このように、位相差の角度依存性が小さいことから、本失明の光学フィルムは、配向性が極めて小さいものであると考えられ、偏光板における偏光子の保護フィルムとして好適である。以上の点から、該位相差の差が5〜10nmであることがより好ましい。
【0023】
上述した本発明の光学フィルムは、上記本発明の製造方法を用いることによって、製造され得るもので、従来までのTダイ法により製造されるポリプロピレン系樹脂からなる光学フィルムでは達成し得なかったものである。また、従来のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムと比較しても同等以上の性能を有するものである。
さらに、フィルムの厚さ方向の位相差(Rth)が2〜25nmと小さく、これは従来のTACフィルムと比較しても、極めて小さい値であり、位相差性能に優れる。位相差性能の点から、Rthは10〜20nmの範囲であることがさらに好ましい。
しかも、本発明の光学フィルムは、TACフィルムと比較して、高い柔軟性及び防湿性を有するため、本発明の光学フィルムを偏光子の保護フィルムとして使用した場合に、従来から用いられているTACフィルム以上の保護機能を有するものである。
【0024】
以下、本発明の製造方法及び本発明の光学フィルムに用いられる材料について詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂]
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂;(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;ポリアミド;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリ乳酸;ポリビニルアセタール樹脂;液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でもよいし、それぞれの樹脂を混合して用いてもよい。
また、特開2003−306577号公報に開示される、連続相を構成し、かつ可塑化されたセルロース誘導体と、該セルロース誘導体と異なる屈折率を有し、かつ分散相を構成する熱可塑性樹脂とで構成されたセルロース系樹脂組成物を用いることもできる。なお、該セルロース系樹脂組成物で用いられる熱可塑性樹脂は上記と同様である。
【0025】
上記熱可塑性樹脂の中でも、オレフィン系樹脂が好ましく、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体(以下「ポリプロピレン」と称する場合がある。)又はプロピレンと1種または2種以上のコモノマーとの共重合体(以下「プロピレン系共重合体」と称する場合がある。)からなる。
プロピレンに共重合されるコモノマーとしては、例えば、エチレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィンを挙げることができる。
【0026】
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上、炭素数4);1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上、炭素数5); 1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上、炭素数6);1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上、炭素数7);1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上、炭素数8);1−ノネン(炭素数9);1−デセン(炭素数10);1−ウンデセン(炭素数11);1−ドデセン(炭素数12);1−トリデセン(炭素数13);1−テトラデセン(炭素数14);1−ペンタデセン(炭素数15);1−ヘキサデセン(炭素数16);1−ヘプタデセン(炭素数17);1−オクタデセン(炭素数18);1−ノナデセン(炭素数19)などを挙げることができる。
α−オレフィンの中では、上記のうち、炭素原子数4〜12のα−オレフィンであることが好ましい。また、共重合性の観点より、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンがより好ましく、1−ブテン及び1−ヘキセンがさらに好ましい。
【0027】
上記プロピレン系共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、光学特性の観点からランダム共重合体が好ましい。
プロピレン系ランダム共重合体の例としては、プロピレン−エチレンのランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンのランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンのランダム共重合体などを挙げることができる。より具体的には、プロピレン−α−オレフィンのランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンのランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンのランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンのランダム共重合体などを挙げることができる。また、プロピレン−エチレン−α−オレフィンのランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテンのランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンのランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンのランダム共重合体などを挙げることができる。
これらのうち、好ましくは、プロピレン−エチレンのランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンのランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンのランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンのランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンのランダム共重合体である。
【0028】
プロピレン系共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含有量は、透明性と耐熱性のバランスの観点から、0超〜40質量%が好ましく、0超〜20質量%がより好ましく、さらに好ましくは0超〜10質量%である。なお、2種類以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体である場合には、該共重合体に含まれる全てのコモノマー由来の構成単位の合計含量が、上記範囲であることが好ましい。
なお、共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含有量は、赤外線(IR)吸収スペクトルの測定により求めることができる。
【0029】
プロピレン系共重合体の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、またはアタクチックのいずれの形式であってもよいが、耐熱性の点からシンジオタクチック又はアイソタクチックの立体規則性を有するものが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、エチレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとを共重合する方法が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の製造に用いる公知の重合用触媒としては、メタロセン触媒やチーグラー・ナッタ触媒などが挙げられる。
【0031】
(メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン)
メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンとは、後述するメタロセン触媒を用いて重合反応により合成されたプロピレン重合体(ポリプロピレン単独重合体及びプロピレン系共重合体のいずれをも含む、以下同様)である。メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンは、汎用されているチーグラー系触媒を用いて重合されたポリプロピレンと比べて、一般に分子量と結晶性が均一で、低分子量・低結晶性成分が少ないという特長を有するので、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンを、偏光子保護用光学フィルムとして用いた場合には、チーグラー系触媒を用いて重合されたポリプロピレンのみが用いられた偏光子保護用光学フィルムよりも、透明性が高く、複屈折が小さいものになる。そのため、本発明においては、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンが好適である。
【0032】
(メタロセン触媒)
メタロセン触媒としては、公知のものを適宜用いることができる。一般的には、Zr、Ti、Hf等の4〜6族遷移金属化合物、特に4族遷移金属化合物と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体の基を有する有機遷移金属化合物を使用することができる。
シクロペンタジエニル誘導体の基としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル等のアルキル置換体基、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成した基を使用することができ、代表的にはインデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、あるいはこれらの部分水素添加物を挙げることができる。また、複数のシクロペンタジエニル基がアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等で結合されたものも好適に挙げることができる。
【0033】
(助触媒)
助触媒としては、アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物もしくはルイス酸、固体酸、あるいは、層状ケイ酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。また、必要に応じてこれらの化合物と共に有機アルミニウム化合物を添加することができる。
上述の層状ケイ酸塩とは、イオン結合等によって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとるケイ酸塩化合物をいう。本発明では、層状ケイ酸塩は、イオン交換性であることが好ましい。ここでイオン交換性とは、層状ケイ酸塩の層間陽イオンが交換可能なことを意味する。大部分の層状ケイ酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら層状ケイ酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0034】
層状ケイ酸塩の具体例としては、公知の層状ケイ酸塩であれば特に制限はなく、例えば、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族;クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族;モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、テニオライト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族;バーミキュライト等のバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族;アタパルジャイト;セピオライト;パリゴルスカイト;ベントナイト;パイロフィライト;タルク;緑泥石群が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
これらの層状ケイ酸塩は化学処理を施すことができる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状ケイ酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。これらの処理には、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させるなどの作用があり、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離、固体酸性度等を変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0035】
(メタロセン触媒を用いたポリプロピレンの重合方法)
上記メタロセン触媒を用いてポリプロピレンを合成する方法(重合方法)としては、これらの触媒の存在下、不活性溶媒を用いたスラリー法、実質的に溶媒を用いない気相法、溶液法、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
このようにしてメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンは、融点(Tm)が130℃以上であることが好ましい。
【0036】
(チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたポリプロピレン)
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒;マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを組み合わせた触媒系などを挙げることができる。
マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系が挙げられる。
【0037】
有機アルミニウム化合物としては、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物及びテトラエチルジアルモキサンを挙げることができる。
電子供与性化合物としては、好ましくはシクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0038】
(チーグラー・ナッタ触媒を用いたポリプロピレンの重合方法)
プロピレン共重合体の製造に用いる重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶剤重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマー中で行う気相重合法などを挙げることができ、好ましくは塊状重合法または気相重合法である。これらの重合法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
【0039】
[ポリプロピレン系樹脂の物性]
ポリプロピレン系樹脂は、光学的に等方性が高い偏光子保護用光学フィルムを得るために、下記の樹脂選定試験により測定された面内位相差が20nm以下のものが好ましい。
特に、プロピレン系ランダム共重合体は、複屈折が小さいため、本発明における偏光子保護用光学フィルムに好ましく用いることができる。
(樹脂選定試験)ペレット状のサンプルを熱プレス成形して、大きさ10cm角・厚さ100μmのフィルムを作製する。上記熱プレス成形では、樹脂を220℃で5分間予熱後、3分間かけて100kgf/cm2まで昇圧し、100kgf/cm2で2分間保圧し、その後、30℃で30kgf/cm2の圧力で5分間冷却する。このようにして作製したフィルムの面内位相差を求めることで、複屈折の小さいプロピレン系共重合体を選定することができる。なお、面内位相差は、位相差測定機を用いて、波長589.3nm、入射角0度の条件で測定する。
【0040】
ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が、0.5〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは7g/10分以上である。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記範囲内であれば、未延伸フィルム製膜時にひずみが発生しにくいので、複屈折が小さい光学フィルムを得ることができるからである。また、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができるからである。さらに、MFR調整剤などの添加剤の添加量をおさえることができるので、物性に悪影響を与えることがないからである。なお、混合物のMFRの調整は、例えば有機過酸化物などの一般的なMFR調整剤などによって行うこともできる。
なお、MFRの値は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定する。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂の分子量分布の幅は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(分散度)で評価することができ、Mw/Mn=1〜20であることが好ましい。
なお、Mn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いた条件で測定する。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂は、融点が120〜170℃であることが好ましい。融点(Tm)が130℃以上であれば、光学フィルムの耐熱性が向上し、偏光板の耐熱用途への使用が可能となるので好ましい。
なお、融点は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定された融解曲線において最高強度のピークが現われている温度で評価され、ポリプロピレン系樹脂のプレスフィルム10mgを、窒素雰囲気下、230℃で5分間熱処理後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して30℃において5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の融解ピーク温度として求める。
【0043】
(ポリプロピレン系樹脂の混合物)
ポリプロピレン系樹脂として、2種以上のプロピレン系共重合体を混合して用いることができる。その場合は、コモノマーの種類、プロピレン由来の構成単位の割合、分子量、またはタクティシティーなどが異なるポリプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体を混合してもよい。
【0044】
(その他の成分)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂を、偏光子保護用光学フィルムとして用いる場合には、その熱可塑性樹脂に、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂を任意成分として添加することができる。
【0045】
(有機系紫外線吸収剤)
有機系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールが好適に用いられるが、その他の有機系紫外線吸収剤を、プロピレン系共重合体の光学特性を阻害しない範囲、又は実用上の支障がみられない範囲で含有させてもよい。紫外線吸収特性が異なる複数の紫外線吸収剤を添加することは、広い領域で高い紫外線吸収性能を得る観点から有効である。
【0046】
(金属酸化物系紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤として、金属酸化物系紫外線吸収剤を含有させてもよい。金属酸化物系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化鉄が好ましく挙げられ、なかでも酸化亜鉛、及び酸化チタンが好ましい。これらの金属酸化物系紫外線吸収剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
金属酸化物系紫外線吸収剤の平均粒子径は、可視光線透過率を良好にしながら紫外線吸収性能を確保する観点から5〜90nmであることが好ましく、5〜50nmがより好ましい。紫外線吸収金属酸化物の平均粒子径は、上記の観点から小さければ小さいほど好ましいが、製造コストを鑑みると、下限は5nmである。ここで、平均粒子径は、カーボンブラックをクロロホルムなどの溶媒で十分に希釈分散させた分散液を、コロジオン膜付メッシュ上に展開、乾燥させた後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影したTEM写真のコンピューター画像解析を行い、抽出された各凝集体の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)を粒径とし、得られた粒径分布より求めた算術平均径(数平均値)である。
金属酸化物系紫外線吸収剤の含有量は、光学フィルムの良好な紫外線吸収性能を確保しつつ、良好な透明性を得るためには、熱可塑性樹脂組成物中に通常は0.08〜5.5質量%程度含有することが好ましい。
【0047】
これらの金属酸化物系紫外線吸収剤は、通常は粉体のものを原料として使用することができる。粉体の金属酸化物系紫外線吸収剤は、分散性に劣るため、ポリプロピレン系樹脂と金属酸化物系紫外線吸収剤とのマスターバッチを予め作成してから、ポリプロピレン系樹脂に練り込むことが必要となる。マスターバッチ作成時における金属酸化物系紫外線吸収剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂と金属酸化物系紫外線吸収剤との混合物に対して、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。金属酸化物系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、マスターバッチ中の金属酸化物系紫外線吸収剤の分散性は良好となる。
【0048】
(ソルビトール系添加物)
また、引張強度を向上させてかつ透明性を向上させるために、ソルビトール系添加物を含有してもよい。ソルビトール系添加物としては、位相差への影響が微小であるジベンジリデンソルビトール系添加物が好ましい。
ジベンジリデンソルビトール系添加物としては、1,3−2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−2,4−ジパラメチルジベンジリデンソルビトールなどのジ−置換ジベンジリデンソルビトール、及びジ−置換ベンジリデンソルビトールとジグリセリンモノ脂肪酸エステルとを配合したものなどが好ましく挙げられる。
ジベンジリデンソルビトール系添加物は、透明化核剤として、ポリプロピレン系樹脂の透明性向上と強度向上に寄与することが知られているが、偏光子保護膜用光学フィルムに使用した場合に、位相差への影響がほとんどないことを見出したものである。
【0049】
ジベンジリデンソルビトール系添加物の中でも、ブリードが少なく安定したジグリセリンモノ脂肪酸エステル添加ジベンジリデンソルビトール系核剤が望ましい。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステルなどが好ましく、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
ソルビトール系添加物の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中に0.03〜0.5質量%の範囲であることが好ましく、0.05〜0.25質量%がより好ましい。0.03質量%以上であると、透明性の向上及び十分な強度の向上を図ることができる。一方、0.5質量%以下であると、効率よく透明性の向上や強度の向上が得られるので、コスト的に有利である。
さらに、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを添加したジ−置換ベンジリデンソルビトールを用いる場合、ジ−置換ベンジリデンソルビトールの含有量は、組成物に対して0.03〜0.3質量%とすることが好ましく、混合するジグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、熱可塑性樹脂組成物に対して0.01〜0.2質量%とすることが好ましい。
【0051】
ジベンジリデンソルビトール系添加物及びベンゾトリアゾール系化合物は、熱可塑性樹脂組成物中の分散性を向上させる目的で、これらを単独で、又は混合してから造粒して用いることが好ましい。これらの造粒は、溶融押出造粒、乾式押出造粒、圧縮造粒などの方法により行うことができる。
【0052】
(各種オレフィン樹脂及び添加剤)
本発明の熱可塑性樹脂を、偏光子保護用光学フィルムとして用いる場合には、その所望物性に応じて、必要な光学特性を損なわない範囲で、各種オレフィン樹脂や添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、などが挙げられる。
【0053】
耐候性改善剤としては、例えば、光安定剤を用いることができる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、ラジカル捕捉剤として機能するものである。このようなヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2′−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性のものを光安定剤として用いることもできる。
【0054】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常光学フィルムの膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
【0055】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
【0056】
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
【0057】
そのほかにも、混合物に各種の添加剤を添加して、偏光子保護用光学フィルムの各種の機能を付与することもできる。例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを挙げることができる。
【0058】
(偏光子保護用光学フィルム)
本発明の光学フィルム及び本発明の製造方法により得られる光学フィルムは、偏光子保護用光学フィルムとして有用である。
偏光子保護用光学フィルムの厚さは、10〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmがより好ましい。上記厚さが10μm以上であると、偏光子保護用光学フィルムの保護強度が十分に確保され、200μm以下であると十分な可撓性が得られ、また軽量であることからハンドリングが容易であり、かつコスト的にも有利である。
【0059】
偏光子保護用光学フィルムは、例えば、ポリプロピレン系樹脂由来の特性(結晶化度、平均分子量等)で選択する方法、樹脂に無機質あるいは有機質の充填剤から選ばれた充填剤を添加する方法、架橋剤などを添加する方法、弾性率の異なる2種類以上の樹脂を混合する方法、硬化性樹脂の可塑剤組成分を選択する方法などを用いて、あるいはこれらの方法を適宜複数組み合わせて用いて、所望の曲げ弾性率に調整することができる。
【0060】
偏光子保護用光学フィルムの曲げ弾性率は、700MPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であると、フィルム状態で取り扱う際の十分な剛性が得られ、後加工を容易に行うことができ、偏光板の保護シートとして機能させるために十分な耐擦過性が得られるからである。さらには、偏光子保護用光学フィルムの曲げ弾性率は、900MPa以上であることがより好ましい。
なお、本発明において、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定されるものとする。
【0061】
偏光子保護用光学フィルムは、引張強度が20MPa以上であることが好ましい。20MPa以上であると、偏光子光子保護用フィルムの成形加工に際して、偏光子保護用光学フィルムを接着剤層を介して偏光子にロール・ツウ・ロールの方法で貼り合わせる場合に、配向がかからず、光学フィルムに位相差が発生しにくいため、偏光板の性能を維持できるからである。
なお、本発明において、引張強度は、ASTM D638(TypeIV条件)に準拠し
て測定されるものとする。
【0062】
偏光子保護用光学フィルムには、偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、及びこれらを併用する方法が好ましい。
【0063】
また、偏光子保護用光学フィルムと偏光子との密着性を上げるために接着剤層を形成する場合は、偏光子保護用光学フィルムか偏光子かのいずれかの側または両側に接着剤を塗布することにより行う。
易接着処理を行った面もしくは接着剤層を形成した面を介して、偏光子保護用光学フィルムと偏光子とを貼り合せた後に、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。接着剤層を形成した後にこれを貼り合わせることもできる。偏光子と偏光子保護用光学フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等によりおこなうことができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
接着剤層の厚み(乾燥後の厚み)が厚くなりすぎると偏光子保護用光学フィルムの接着性の点で好ましくないことから、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0064】
また、偏光子保護用光学フィルムの表面には、機能層を積層して、各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0065】
(偏光子保護用光学フィルムの製造方法)
偏光子保護用光学フィルムは、ポリプロピレン系樹脂と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールと、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂とを混合し、加熱溶融させた後、押出しコーティング成形法、キャスト法、Tダイ押出し成形法、インフレーション法、射出成形法等の各種成形法で成形加工して、製造することができるが、
本発明では、偏光子上に作製される偏光子保護用光学フィルムが配向しないことが望まれるため、700mm幅以上の広幅成形では、Tダイ成形より延伸のかからない未延伸の水冷インフレーション成形法が有効であることを見出したものである。
【0066】
(偏光板)
本発明の偏光板は、上記の偏光子保護用光学フィルムが、偏光子の少なくとも片面に形成されたものである。形成の方法としては、偏光子の上に偏光子保護用光学フィルムを直接成形してもよいし、偏光子保護用光学フィルムを先に作製しておき、その後、接着剤層を介して偏光子に貼り合わせてもよい。
偏光子の片面に接着剤層を介して、偏光子保護用光学フィルムが形成され、全体として偏光板を構成している。
【0067】
偏光板で用いる偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であれば如何なるものでもよく、例えばPVA系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したPVA系偏光子;PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光子;コレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子等が挙げられ、その中でもPVA系偏光子が好ましく用いられる。
PVA系偏光子としては、例えばPVA系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。これらのなかでもPVA系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に1〜100μm程度である。
【0068】
偏光子を構成する樹脂として好適に用いられるPVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
PVA系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このPVA系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。PVA系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲である。
【0069】
偏光板は、例えば、上述のようなPVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸PVA系フィルムに偏光子保護用光学フィルムを貼り付ける工程を経て、製造される。
【0070】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、また、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
【0071】
PVA系フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、PVA系フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
【0072】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100質量部あたり1×10-3〜1×10-2質量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
【0073】
ホウ酸処理後のPVA系フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120〜600秒程度である。
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたPVA系フィルムからなる偏光子が得られる。
【0074】
偏光子と偏光子保護用光学フィルムとの貼り合せの方法としては、接着剤層を介して行うことができる。接着剤層を形成する接着剤としては、PVA系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトさせたポリオレフィンもしくは前記グラフトさせたポリオレフィンをブレンドしたポリオレフィン系接着剤などが挙げられる。その他、透明性を有する接着剤、例えば、ポリビニルエーテル系、ゴム系等の接着剤を使用することができる。なかでも、PVA系接着剤が好ましい。
【0075】
PVA系接着剤は、PVA系樹脂と架橋剤を含有するものであり、PVA系樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニルをケン化して得られたPVA及びその誘導体、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物、PVAをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化又はリン酸エステル化等した変性PVAなどが挙げられる。これらPVA系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。酢酸ビニルと共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類、エチレンやプロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
PVA系樹脂の重合度等は特に限定されないが、接着性などが良好になることから、平均重合度100〜3000程度、好ましくは500〜3000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%程度のものを用いることが好ましい。
【0076】
エポキシ系接着剤としては、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などがある。エポキシ樹脂には、さらにオキタセン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
【0077】
アクリル系接着剤としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルと、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールの如きビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、偏光子の偏光特性を阻害することがないので特に好ましい。
【0078】
また、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトさせたポリオレフィンもしくは前記グラフトさせたポリオレフィンをブレンドしたポリオレフィンを接着剤として使用することもできる。グラフトに用いられるポリオレフィンとしては、たとえば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、チーグラー系触媒又はメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレンープロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、これらの混合物などである。ポリオレフィンのグラフトに用いる不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。こうして得た変性ポリオレフィンはそのまま用いてもよいが、ポリオレフィンに配合して用いることもできる。
本発明において、上記偏光子や上記接着剤層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能を付与してもよい。
上記接着剤層は、偏光子保護用光学フィルム又は偏光子のいずれかの側または両側に、接着剤を塗布することにより形成する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
また、偏光子保護用光学フィルムを偏光子と接着させるに際し、偏光子保護用光学フィルムの偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、及びこれらを併用する方法が好ましい。
【0079】
次いで、上記のようにして易接着処理を行った面に接着剤層を形成し、前記接着剤層を介して、偏光子と偏光子保護用光学フィルムとを貼り合せる。
偏光子と偏光子保護用光学フィルムとの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。なお、加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
【0080】
本発明の偏光子保護用光学フィルムが偏光子の一方の面に形成された偏光板には、必要に応じて偏光子の他方の面に、本発明の偏光子保護用光学フィルムを形成することもできるし、その他の樹脂からなるフィルムを形成することもできる。その他の樹脂からなるフィルムとしては、例えばフマル酸ジエステル系樹脂、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリナフタレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、マレイミド系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。上記その他の樹脂からなるフィルムは特定の位相差を持つ位相差フィルムであっても良い。
【0081】
偏光板は、表面性、耐傷付き性を向上させる為に、少なくとも一層以上のハードコート層を有する積層体とすることが好ましい。前記ハードコート層としては、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、紫外線硬化型樹脂、ウレタン系ハードコート剤等よりなるハードコート層が挙げられ、その中でも透明性、耐傷付き性、耐薬品性の点から、紫外線硬化型樹脂よりなるハードコート層が好ましい。これらのハードコート層は、一種類以上で用いることができる。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレート、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化型オキセタン等から選ばれる一種類以上の紫外線硬化樹脂が挙げられる。
ハードコート層の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜20μmである。また、ハードコート層の間にプライマー処理をすることもできる。
【0082】
また、偏光板は、必要に応じて、反射防止や低反射処理などの公知の防眩処理を行うことができる。
【0083】
(画像表示装置)
本発明の偏光板は、画像表示用の各種装置に好ましく使用することができる。
画像表示装置としては、液晶セルを含む液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」という)表示装置、タッチパネル等が挙げられ、偏光板を使用するものであれば、画像表示装置の種類の限定はない。また、液晶ディスプレイの場合、画像表示装置は、一般に、液晶セル、光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては、上記した偏光板を用いる点を除いて、画像表示装置の構成には特に限定はない。例えば、液晶セルの片側又は両側に偏光板を配置した画像表示装置や、照明システムとしてバックライト又は反射板を用いたものなどの適宜な画像表示装置が例示される。また、液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用い得る。なお、画像表示装置を構成するに際しては、例えば、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0084】
(液晶セルを含む液晶ディスプレイ)
本発明の偏光板は、例えば液晶セルなどに積層して使用される。
本発明の画像表示装置は、液晶セルを含む液晶ディスプレイである。この液晶セルは、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型等や、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型などのものが例示される。この液晶セルの上に、粘着剤層を介して、位相差板(複屈折板)が積層され、この上に、粘着剤層を介して、偏光板が積層されたものである。偏光板は、中心に偏光子を有し、その両側の表面に、接着剤層を介して、偏光子保護用光学フィルムが積層されている。偏光板と位相差板、位相差板と液晶セルの積層に際しては、予め偏光板、位相差板及び液晶セルに粘着剤層を設けておくこともできる。
【0085】
偏光板と液晶セルを積層する粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤が、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れているので好ましい。
前記粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。
【0086】
粘着剤には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層であってもよい。粘着剤層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能を付与してもよい。
【0087】
偏光板への上記粘着剤の塗工は、特に限定されず、適宜な方法で行うことができる。例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、ベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上に直接塗工する方法、或いはこの方法に準じ離型性ベースフィルム上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方法などが挙げられる。
塗工方法は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等、各種方法が可能であるが、グラビアコートが最も一般的である。
【0088】
粘着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板の片面又は両面に設けることもできる。また、両面に設ける場合、偏光板の表裏において、粘着剤が同一組成である必要はなく、また同一の厚さである必要もない。異なる組成、異なる厚さの粘着剤層とすることもできる。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm〜500μmであり、5μm〜200μmが好ましく、特に10μm〜100μmが好ましい。
【0089】
粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的に離型性フィルムが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。離型性フィルムとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来公知なものを用いることができる。
【0090】
(有機EL表示装置)
本発明の偏光板は、有機EL表示装置にも好適に使用し得る。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。
【0091】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0092】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設け且つ前記透明電極と偏光板との間に複屈折層(位相差板)を設けることができる。
【0093】
偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、複屈折層をλ/4板で構成し、かつ偏光板と前記複屈折層との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0094】
(タッチパネル)
本発明の偏光板は、タッチパネルにも好適に使用し得る。
タッチパネルには種々の方式があり、抵抗膜方式、光学式、静電容量結合方式(アナログ容量結合方式とも呼ばれる)、赤外線方式、超音波式、及び電磁誘導式等の方式がある。ここでは、抵抗膜方式のタッチパネルの例で説明する。
【0095】
抵抗膜方式のタッチパネルには、ガラス/ガラスタイプとガラス/フィルムタイプがある。ガラス/ガラスタイプは透明導電層付ガラス基板と透明導電層付ガラス基板が空間を介して保持されたものであり、これがディスプレイ表面に装着される。また、ガラス/フィルムタイプは、車載用あるいは携帯用のタッチパネルにおいて、より軽量化・薄型化したものが望まれるため、上部の透明導電層付ガラス基板を光学フィルムで置き換えたタイプのタッチパネルである。
【0096】
直線偏光板、あるいは偏光板にλ/4板を組み合わせて積層した円偏光板をタッチパネルの最表面に使用すれば、タッチパネルとして十分な強度を得ることができ、かつ、反射防止の効果により視認性が向上する。これらタッチパネルの偏光板に本発明の偏光子保護用光学フィルムが好適に使用できる。
【0097】
本発明の偏光子保護用光学フィルムは偏光板の保護膜上・下・下外(ITOを設ける軽量化用フィルム)のいずれにも使用できる。また、タッチパネルの反射防止には、直線偏光タイプと円偏光タイプがあるが(直線偏光は円偏光に比べて反射率が高い)、本発明の偏光子保護用光学フィルムは円偏光板にも直線偏光タイプの偏光板にも使用できる。
本発明の偏光子保護用光学フィルムを使用した円偏光板、又は直線偏光板は、透過型・反射型どちらのタッチパネルにも使用できる。
【実施例】
【0098】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0099】
(評価方法)
(1)曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率を測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
メルトインデクサ(株式会社東洋精機製作所製「F-W01(型番)」)を用いて、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重の条件で、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートを測定した。
(3)位相差及び厚さ方向の位相差
位相差測定機(王子計測機器株式会社製「KOBRA−WR(型番)」)を用いて、波長589.3nm、入射角−50〜50°での位相差を10度毎に測定した。なお、入射角0度の条件で測定した位相差が面内位相差であり、厚さ方向の位相差Rthは、各入射角度での位相差の測定結果より、定法により算出した。
(4)ヘーズ(濁度)
JIS K7105に準拠して、光学フィルムのヘーズを測定した。
(5)表面観察1
各実施例及び比較例で得られた光学フィルムの表面を目視にて観察した。
(6)表面観察2
実施例1及び比較例1の光学フィルムの表面について、実施例1では、バブルの冷水流の接触する外面を、比較例1ではタッチロールの接触する外面を、それぞれ共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。使用した装置は、ライカマイクロシステムズ「TCS SP5」であり、光源レーザー波長405nmで対物レンズ100倍で観察した。
(7)耐久性試験後の位相差
実施例1、3、比較例3、4及び参考例1の光学フィルムを80℃、相対湿度10〜40%の条件(ドライ条件)で、それぞれ1000時間加熱処理した後の、室温における入射角度40度での位相差R’を測定した。測定は上記(3)と同様の装置及び波長にて行った。耐久性試験前の位相差R0(入射角度40度)との差を計算した。
【0100】
実施例1
メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ウィンテック(以下「mPP−A」と表記)、曲げ弾性率900MPa、融点142℃、MFR30g/10分)を原料とし、図1に示すような、吸水性材料8を備えた装置を用いて、ダイヘッドの設定温度を170℃、冷却水温度20℃の条件で、フィルム厚み100μm、700mm幅で、水冷インフレーション押し出し成形することにより、偏光子保護用光学フィルムを得た。なお、ここで用いた吸水性材料は、筒状の木綿の布であり、冷却水槽6の直下から、バブル5が安定板14内に入るまでの長さを有するものである。製造されたフィルムについての評価結果を第1表及び第2表に示す。
また、共焦点レーザー顕微鏡にて、フィルムの吸水性材料8側(バブル5の外側)表面を観察した結果を図2に示す。観察結果より、ひび割れ等が全くなく、表面の平滑性が高いことがわかる。
【0101】
実施例2
原料として、メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ウィンテック(以下「mPP−B」と表記)、曲げ弾性率1,200MPa、融点135℃、MFR20g/10分)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、偏光子保護用光学フィルムを得た。製造されたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0102】
実施例3
原料として、ポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製「J−2041GR(商品名)」(以下「PP−C」と表記)、チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン系共重合体、曲げ弾性率850MPa、融点140℃、MFR22g/10分)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、偏光子保護用光学フィルムを得た。製造されたフィルムについての評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0103】
比較例1
実施例1で用いた樹脂を用いて、ダイヘッドの設定温度を200℃、冷却ロール50℃の条件で、Tダイ押し出し成形することにより、フィルム厚み100μm、700mm幅の偏光子保護用光学フィルムを製造した。製造されたフィルムについての評価結果を第1表に示す。また、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果を図3に示す。観察結果より、ひび割れが生じていることがわかる。
【0104】
比較例2
実施例1において、吸水性材料8を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用光学フィルムを得た。製造されたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
比較例1で得られた光学フィルムは、100μm厚みで700mm幅ではフィルム端部に応力がかかりやすく、面内位相差が6〜30nmとばらついた。また、比較例2では、冷却効率が悪く、透明性が悪く、かつ面内位相差が10nmを超えて高かった。また、フィルムにシワも発生した。比較例1及び2ともに位相差が高い部分があり、偏光板には不適であることが明らかである。
【0107】
比較例3
実施例1と同様のポリプロピレン樹脂を原料として、千葉機械工業株式会社「スリーブタッチロール」を用いて偏光子保護用光学フィルムを作製した。光学フィルムの幅は700mmの広幅とした。Tダイの吐出口部分における溶融樹脂の温度は200℃であり、該溶融樹脂を冷却されたステンレススリーブを介したタッチロールと、冷却ロールとによって挟圧長さ5mm、線圧6N/mmで挟圧すると共に、タッチロール及び冷却ロールによって冷却して固化させることで、厚みが100μmのポリプロピレン系樹脂製フィルムを得た。製造されたフィルムについての評価結果を第2表に示す。
【0108】
比較例4
比較例3において、原料として実施例3のポリプロピレン樹脂を用い、光学フィルムの幅を300mmの狭幅としたこと以外は、比較例3と同様にして位相差フィルムを得た。製造されたフィルムについての評価結果を第2表に示す。
【0109】
参考例1
市販のTACフィルム(富士フィルム(株)製「フジタック(商品名)」、厚さ:80μm)についての評価結果を第2表に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
図4として、第2表の結果をグラフにしたものを掲載する。特に実施例1により製造されたフィルムが、角度依存性が小さく極めて良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、700mm幅以上の広幅成形で、厚みが100μm以下の薄肉成形でも配向がほとんどなく、かつ透明性の高いフィルムを得ることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 原料ホッパー
2 押出機
3、3' 冷却空気
4 環状ダイ
5 バブル
6 冷却水槽
7 冷却水
8 吸水性材料
9 冷却水受け皿
10 乾燥ゾーン
11 表面処理装置
12 スリッター
13、13' 巻き上げロール
14 安定板
15 ピンチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程、該バブルの外周面に空気を吹き付け冷却する空冷工程、次いで冷却水により冷却固化させる水冷工程、該バブルを折りたたみフィルムを得る工程、該フィルム表面の水分を除去する乾燥工程、及び折りたたまれたフィルムを分離する工程を含む、水冷式インフレーション法による光学フィルムの製造方法であって、前記水冷工程において、バブルの外面を、冷却水を含有する吸水性材料を巻いて冷却することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂から構成され、波長589.3nmの光を用い、入射角度40度で測定した位相差が20nm以下である光学フィルム。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂から構成され、80℃、相対湿度10〜40%に制御された条件下で、1000時間の加熱処理をした後に、以下の条件で測定した位相差と、加熱処理前の、同条件で測定した位相差の差が5〜15nmである請求項4に記載の光学フィルム。
位相差の測定条件;波長589.3nmの光を用い、入射角度40度でそれぞれ測定する。
【請求項6】
さらに厚さ方向の位相差Rthが2〜25nmである請求項4又は5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の光学フィルムを偏光子の少なくとも片面に形成してなる偏光板。
【請求項8】
液晶セルと貼り合わせて用いられ、かつ光学フィルムが偏光子の液晶セル側とは反対に形成してなる請求項7に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の偏光板を用いてなる画像表示装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104927(P2011−104927A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263971(P2009−263971)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】