説明

光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法

【課題】光学フィルムを製造するためのロール金型の洗浄方法であって、該ロール金型にダメージを与えることなく、その汚染された表面を良好に洗浄することができる洗浄方法を提供する。
【解決手段】光学フィルムの製造に使用され、金型汚染物質が付着したロール金型3を、pH10以上の塩基性水溶液1中、30〜70℃で超音波処理することを特徴とする光学フィルム製造用ロール金型3の洗浄方法。本洗浄方法は、前記金型汚染物質が光硬化性樹脂である場合に好適に採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等において使用されるプリズムフィルム、拡散フィルムおよび防眩フィルム等の光学フィルムの製造の技術分野に属するものであり、更に詳しくは、光学フィルムを製造する際に使用されるロール金型の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等において使用されるプリズムフィルム、拡散フィルムおよび防眩フィルム等の光学フィルムは、例えば、フィルム状の樹脂をロール金型の表面に押し付けて密着させてロール金型の表面形状をフィルムに転写した後、該フィルムをロール金型から剥離させることにより製造されることが知られている。
【0003】
かかる方法により光学フィルムを連続して製造すると、光学フィルムを構成する樹脂の一部が金型汚染物質として徐々にロール金型の表面に残存し、堆積されていくことがある。従って、光学フィルムを好品質で連続して製造するためには、ロール金型を定期的に取り外して洗浄し、表面に付着した金型汚染物質を除去しなければならない。
【0004】
かかるロール金型の洗浄方法として、例えば、特開平5−177177号公報(特許文献1)には、ロールを回転させながらブラシをあてて付着物をはがし取る方法が提案されている。また、特開2002−86461号公報(特許文献2)には、光学シート製造用円筒形状型を、起泡剤とノニオン系界面活性剤と金属イオン封鎖剤とを含む水性洗浄剤で洗浄する方法が、特開2007−217234号公報(特許文献3)には、エタノール、アセトンなどの溶剤中に金型を浸漬して超音波処理する方法が、特開平10−217307号公報(特許文献4)には、線状ポリエステルの製膜に供されるキャスティングロールを特に加熱することなく塩基性水溶液中で超音波処理する方法が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−177177号公報
【特許文献2】特開2002−86461号公報
【特許文献3】特開2007−217234号公報
【特許文献4】特開平10−217307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、ロール表面を損傷させるおそれがあり、特許文献2乃至4記載の方法では、洗浄効率の点で必ずしも十分ではないことがあり、いずれの方法においても、光学フィルム製造用のロール金型の洗浄方法として満足できるものではなかった。従って、本発明の目的は、光学フィルムを製造するためのロール金型の洗浄方法であって、該ロール金型にダメージを与えることなく、その汚染された表面を良好に洗浄することができる洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学フィルムの製造に使用され、金型汚染物質が付着したロール金型を、pH10以上の塩基性水溶液中、30〜70℃で超音波処理することを特徴とする光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロール金型にダメージを与えることなく、その汚染された表面を良好に洗浄することができる。また、該洗浄方法により得られたロール金型を使用することにより、光学フィルム、中でも、防眩フィルムを好品質で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】超音波洗浄装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施例1で作製したロール金型の表面凹凸形状の形成に用いた画像データからなるパターンの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、光学フィルム製造用ロール金型を洗浄の対象とする。光学フィルムとしては、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置に用いられるプリズムフィルム、拡散フィルム及び防眩フィルム等が挙げられる。該光学フィルムの表面は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理を施していてもよい。本発明の洗浄方法は、前述したようにロール金型にダメージを与えることなく、その汚染された表面を良好に洗浄することができるため、表面に微細な凹凸形状を有するロール金型において有利に採用され、中でも、一般に防眩フィルムと称される、防眩性を持たせるために表面に微細な凹凸形状を有したフィルムを製造するためのロール金型の洗浄方法としてより好ましい。
【0011】
前記防眩フィルム製造用ロール金型には従来公知のものを採用することができ、その製造方法としては、基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施してロール金型を作製する方法(特開2006−53371号公報);基材に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、クロムめっきを施す方法(特開2007−187952号公報);銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、エッチング工程または銅めっき工程を施し、ついでクロムめっきを施す方法(特開2007−237541号公報);金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成し、該感光性樹脂膜上にパターンを露光した後、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行ない、感光性樹脂膜を剥離し、さらにエッチング処理を行ない、凹凸面を鈍らせた後、形成された凹凸面にクロムめっきを施す方法などが挙げられる。
【0012】
次に、上記した表面に微細な凹凸形状を有するロール金型を用いてエンボス法によって防眩フィルムを製造する方法について説明する。エンボス法では、目的に応じた凹凸表面を有するロール金型を製造し、製造されたロール金型の凹凸面を透明支持体上に転写し、次いで凹凸面が転写された透明支持体をロール金型から剥がすことによって、防眩フィルムを製造することができるため、微細凹凸表面を精度よく、かつ、再現性よく製造することができる。ここで、エンボス法としては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0013】
UVエンボス法は、透明支持体の表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写させる方法である。具体的には、透明支持体上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明支持体側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成された透明支持体を剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0014】
UVエンボス法を用いる場合、透明支持体としては、実質的に光学的に透明なフィルムであって、光硬化性樹脂が硬化可能な波長領域の活性エネルギー線を透過するものであれば特に制限されるものでなく、各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニルなどからなるフィルムが例示される。
【0015】
透明支持体の光硬化性樹脂の塗工面および/またはその反対側の表面には、帯電防止層や易接着層が設けてあってもよい。帯電防止層や易接着層は、光硬化性樹脂の塗工性や密着性を低下させるもの、あるいは必要以上の色づきや曇化を起こすもの、透過率を著しく低下させるものでなければ特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。
【0016】
上記光硬化性樹脂は、光重合開始剤の種類を適宜選択することにより紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることもできる。紫外線硬化性樹脂の種類は特に限定されず、たとえば、多官能(メタ)アクリレート系化合物と光重合開始剤とを含むものであることができる。多官能(メタ)アクリレート系化合物および光重合開始剤は、市販品であってもよい。多くの場合、紫外線硬化性樹脂は、多官能(メタ)アクリレート系化合物、光重合開始剤、その他必要に応じて添加された添加剤を含むものとして市販されている。
【0017】
多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート;ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;ならびに、上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどが挙げられる。これらの化合物はそれぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0018】
紫外線硬化性樹脂は、上記多官能(メタ)アクリレート系化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート系化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0019】
光重合開始剤としては、たとえば、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などを挙げることができる。
【0020】
前述したように、ロール金型を使用して光学フィルムを連続して製造していくと、光学フィルムを構成する樹脂の一部が金型汚染物質として該ロール金型の表面に徐々に付着していく。中でも、金型汚染物質が硬化性樹脂である場合には、該金型汚染物質がロール金型の表面に強固に付着していることがある。本発明の洗浄方法によれば、このように金型汚染物質が付着したロール金型をpH10以上の塩基性水溶液中、30〜70℃という従来法より比較的高い温度で超音波処理することにより、該ロール金型にダメージを与えることなく、その汚染された表面を良好に洗浄することが可能となる。なお、ここで、金型汚染物質とは、光学フィルム製造用ロール金型表面(微細凹凸表面等)に付着している塊状もしくは薄膜状の樹脂(硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)などを意味する。
【0021】
塩基性水溶液とは、水に塩基性化合物が溶解した水溶液である。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの如き水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムの如き炭酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムの如き重炭酸塩のような無機塩基性化合物や、アンモニアや、トリエチルアミン、N,N,−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノールアミンの如きアミンのような有機塩基性化合物が挙げられる。中でも、光硬化性樹脂に対する洗浄力の点から、無機塩基性化合物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。一方、水には純水が好適に使用される。
【0022】
塩基性水溶液には、水溶性有機溶媒が含有されるのが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールの如き1価アルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンの如き多価アルコールの他、アセトン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。水溶性有機溶媒の含有量は、塩基性水溶液総量に対して70重量%以下であるのが好ましく、50重量%以下であるのがより好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が70重量%を超えてしまうと、洗浄力が不十分となるおそれがある。
【0023】
なお、塩基性水溶液には、洗浄力を向上させるために、適宜、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤を添加することもできる。
【0024】
本発明の洗浄方法で使用する塩基性水溶液のpHは10以上であり、好ましくはpH11〜13である。pHが10未満では洗浄力が十分でないことがある。また、塩基性水溶液における塩基性化合物の含有量は、前記pHの範囲になるように適宜調整されるが、塩基性水溶液総量に対し、好ましくは0.1〜1重量%であり、より好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0025】
本発明における洗浄温度は、30〜70℃であり、好ましくは40〜65℃である。洗浄温度が30℃未満であると洗浄力が不十分となる。また、洗浄温度が70℃を超えると、例えば塩基性水溶液中に水溶性有機溶媒が含有される場合には、該有機溶媒の揮発などが懸念される。
【0026】
本発明では、光学フィルムの製造に使用され、金型汚染物質が付着したロール金型を、前述した塩基性水溶液中、前記所定温度にて超音波処理を行う。かかる超音波処理は、たとえば図1に示されるような超音波洗浄装置を用いて行なうことができる。図1に示される超音波洗浄装置は、塩基性水溶液1(洗浄剤)を入れる洗浄槽2と、洗浄されるロール金型3を保持する軸を備え、当該軸を回転させることによりロール金型3を回転させる、装置上部に配置された回転体4と、洗浄槽2の底部に配設された超音波発振機5とを備え、ロール金型3の全部または一部が塩基性水溶液1に浸漬した状態で、ロール金型3を回転させながら、超音波を照射して洗浄できる構成となっている。
【0027】
超音波洗浄中、ロール金型3は、その全体が塩基性水溶液1中に浸漬された状態であってもよいし、その一部〔たとえば、図1に示されるように、ロール金型3の外周面(洗浄される面)の約1/2〕が塩基性水溶液1中に浸漬された状態であってもよい。また、超音波洗浄は、ロール金型3を回転させながら行なうこともできるし、回転させることなく行なうこともできる。たとえば、ロール金型3の一部が塩基性水溶液1中に浸漬されている場合、超音波洗浄中、ロール金型3を連続的に回転させることにより、または、ロール金型3を静止した状態で超音波洗浄を行ない、ついでロール金型3を回転させて異なる洗浄面を塩基性水溶液1に浸漬させること(あるいはこの操作の繰り返し)により、洗浄面全体を超音波洗浄することができる。
【0028】
また、図1に示されるように、洗浄槽2が給水口6および排水口7を有し、給水口6、恒温循環装置(図示せず)および排水口7を接続する洗浄剤給排水用の配管からなる循環ラインが設けることが好ましい。これにより、洗浄槽2内の塩基性水溶液1を一定温度に保持することができ、温度上昇による金型へのダメージを防止することができる。さらに、洗浄剤を常に清潔に保つことができ、金型汚染物質の再付着をより効果的に防止できることから、循環ラインにフィルターを取り付けることがより好ましい。
【0029】
超音波発振機の周波数は、ロール金型の材質や除去する金型汚染物質の大きさ等によって決まってくるため、特に限定されるものではないが、28kHz〜50kHzの範囲であることが好ましい。また、超音波発振機の出力も、特に限定されるものではないが、洗浄槽の大きさや、ロール金型の材質、大きさ等に応じて最適な出力のものを使用することが好ましい。
【0030】
超音波処理の時間は0.5〜24時間程度であることが好ましく、この処理時間中、ロール金型を回転させながら洗浄を行うことが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
(1)ロール金型の作製
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図2に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。なお、図2に示したパターンである画像データは20.9mm×20.9mmの大きさで、12800dpiで作成した。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。
【0033】
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は3μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工(クロムめっき層の厚み4μm)を行ない、ロール金型を作製した。
【0034】
(2)防眩フィルムの作製
光硬化性樹脂組成物「GRANDIC 806T」(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られたロール金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層がロール金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごとロール金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムを作製した。以上のような防眩フィルムの製造を連続的に行った。
【0035】
(3)ロール金型の洗浄
図1に示されるような超音波洗浄装置を用い、洗浄処理を実施した。洗浄液として、純水に、花王株式会社製の「クリンスルーPA900」(登録商標)を5重量%、及び、花王株式会社製の「クリンスルーPA970」(登録商標;水酸化カリウム3〜5重量%含有)を5重量%含有させた塩基性水溶液(pH=13、塩基性水溶液中の水酸化カリウム含有量は0.15〜0.25重量%)を使用し、ロール金型の外周面の約1/2が洗浄液中に浸漬された状態となるようにロール金型を設置し、回転体を用いてロール金型を回転させながら洗浄温度を60℃として超音波洗浄を連続的に行い、2時間かけて洗浄面全体を洗浄した。この際、超音波発振機として超音波洗浄機「WS−1200−40型」(本多電子株式会社製)を使用し、周波数40kHz、出力1200Wの条件で超音波洗浄を行った。その後、流水にて5分間洗浄した後、ロール金型の観察を行った。
【0036】
実施例2
洗浄液の溶媒を、純水から、純水及びエタノールの混合液(重量比=1:1)にかえた以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0037】
実施例3
洗浄液中の「クリンスルーPA970」(登録商標)の含有量を1重量%とした以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0038】
比較例1
洗浄液として、純水を使用した以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0039】
比較例2
洗浄液として、エタノールを使用した以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0040】
比較例3
洗浄液として、純水に、株式会社エスエヌディ製の「USC−702」(アニオン系界面活性剤)を10重量%含有させた水溶液(pH=9)を使用した以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0041】
比較例4
洗浄液の溶媒を、純水から、純水及びエタノールの混合液(重量比=1:1)にかえた以外は、比較例3と同様にして洗浄を行った。
【0042】
比較例5
洗浄温度を25℃とした以外は、実施例1と同様にして洗浄を行った。
【0043】
(洗浄力およびロール金型へのダメージの評価)
洗浄前および洗浄後のロール金型について、目視および光学顕微鏡(キーエンス社製の「デジタルマイクロスコープ「VHX−500」)により微細凹凸表面を観察し、金型汚染物質(異物)の残存状態および微細凹凸表面のクラックの拡大、クロムめっき層の剥離や傷の有無を確認することにより、洗浄力およびロール金型へのダメージを評価した。評価基準は次のとおりであり、得られた評価結果を、洗浄条件とともに表1に示す。
【0044】
(洗浄力の評価基準)
1:目視で異物が大部分で観察される、
2:目視で異物が一部観察される、
3:目視で異物が観察されないが、光学顕微鏡観察により異物が一部観察される、
4:目視で異物が観察されず、かつ光学顕微鏡観察でも異物が観察されない。
【0045】
(ロール金型へのダメージの評価基準)
1:金型表面のクラックの拡大、クロムめっき層の剥離および傷が観察されない、
2:金型表面のクラックの拡大、クロムめっき層の剥離または傷が一部で観察される、 3:金型表面のクラックの拡大、クロムめっき層の剥離または傷が大部分で観察される。
【0046】
【表1】

【符号の説明】
【0047】
1 塩基性水溶液(洗浄剤)、2 洗浄槽、3 ロール金型、4 回転体、5 超音波発振機、6 給水口、7 排水口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの製造に使用され、金型汚染物質が付着したロール金型を、pH10以上の塩基性水溶液中、30〜70℃で超音波処理することを特徴とする光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法。
【請求項2】
前記金型汚染物質が、光硬化性樹脂である請求項1記載の光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法。
【請求項3】
前記塩基性水溶液が、水溶性有機溶媒を含有する請求項1又は2記載の光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法。
【請求項4】
前記塩基性水溶液中の水溶性有機溶媒の含有量が、塩基性水溶液総量に対して70重量%以下である請求項3記載の光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法。
【請求項5】
前記ロール金型が、表面に凹凸形状を有する防眩フィルム製造用の金型である請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム製造用ロール金型の洗浄方法。
【請求項6】
請求項5記載に記載の方法によりロール金型を洗浄し、該ロール金型の凹凸面を透明支持体上に転写した後、凹凸面が転写された透明支持体をロール金型から剥すことを特徴とする防眩フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148247(P2011−148247A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12865(P2010−12865)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】