説明

光学ユニットおよびプロジェクタ

【課題】被照明光学系内の反射面に対する照明光の入射角を調整すること。
【解決手段】 光源と集光光学系とを有する第1の光学系と、レンズ面を備える光学部材を有する第2の光学系と、前記第1の光学系と前記第2の光学系とを支持する支持部材とを備え、前記光学部材は、前記光源から出射された光をレンズ面から入射し、入射した光をライトバルブへ出射し、前記支持部材は、前記光学部材に備わるレンズ面の略曲率中心を通る軸を回転軸として前記第1の光学系と前記第2の光学系とを回動可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットおよびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光束を集光レンズを用いて集光し、全反射プリズム内部で全反射させて被照明部材を照明する表示光学装置が知られている(特許文献1参照)。このような構成では、光源や集光レンズの取り付け精度のばらつきに起因して全反射プリズム内部の反射面に対する照明光の入射角がずれると、該全反射プリズムでの全反射が不完全となってしまう。全反射が不完全になる場合は、照明光量の低下や照明ムラの発生要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−51231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、被照明光学系を構成する全反射プリズム内部の反射面に対する照明光の入射角の調整は、装置を一度組み立ててしまうと再調整が困難という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による光学ユニットは、光源と集光光学系とを有する第1の光学系と、レンズ面を備える光学部材を有する第2の光学系と、前記第1の光学系と前記第2の光学系とを支持する支持部材とを備え、前記光学部材は、前記光源から出射された光をレンズ面から入射し、入射した光をライトバルブへ出射し、前記支持部材は、前記光学部材に備わるレンズ面の略曲率中心を通る軸を回転軸として前記第1の光学系と前記第2の光学系とを回動可能に支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被照明光学系内の反射面に対する照明光の入射角を適切に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態によるプロジェクタの光学ユニットの要部構成を説明する断面図である。
【図2】集光レンズ側ユニットと全反射プリズム側ユニットとを連結する連結部材を説明する平面図である。
【図3】連結部材に対して全反射プリズム側ユニットを回動させる状態を説明する平面図である。
【図4】図3の場合における光学ユニットの断面図である。
【図5】連結部材に対して全反射プリズム側ユニットを回動させる状態を説明する平面図である。
【図6】図5の場合における光学ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるプロジェクタの光学ユニット1の要部構成を説明する断面図である。本実施形態では、プロジェクタが不図示のスクリーンへ画像などを投映する。図1において、プロジェクタは、集光レンズ側ユニット10と、全反射プリズム側ユニット20とを有する。
【0009】
集光レンズ側ユニット10は、G色LED光源11と、集光レンズ12と、R色LED光源13と、集光レンズ14と、B色LED光源15と、集光レンズ16と、ダイクロイックプリズム17とを含む。
【0010】
G色LED光源11はG色光を発する。集光レンズ12は、G色LED光源11からのG色光を集光してダイクロイックプリズム17へ入射させる。R色LED光源13はR色光を発する。集光レンズ14は、R色LED光源13からのR色光を集光してダイクロイックプリズム17へ入射させる。B色LED光源15はB色光を発する。集光レンズ16は、B色LED光源15からのB色光を集光してダイクロイックプリズム17へ入射させる。
【0011】
ダイクロイックプリズム17は、G色光を透過して全反射プリズム側ユニット20側へ射出する。また、ダイクロイックプリズム17は、R色光を反射面17aで反射して全反射プリズム側ユニット20側へ射出する。ダイクロイックプリズム17はさらに、B色光を反射面17bで反射して全反射プリズム側ユニット20側へ射出する。本実施形態では、G色LED光源11、R色LED光源13、およびB色LED光源15が3原色光源を構成する。各色の光源が時分割で発光することにより、後述する反射型表示素子22を色順次に照明する。
【0012】
全反射プリズム側ユニット20は、全反射プリズム21と、反射型表示素子22と、投映レンズ群24と、反射ミラー25とを含む。全反射プリズム21は、二つのプリズムが組み合わされたものであり、二つのプリズム間には空気層が存在する。そのため、入射光が所定の角度以上でプリズムに入射すると、プリズムと空気層との界面である反射面21bで全反射が生じる。全反射プリズム21は、集光レンズ側ユニット10から入射された3原色光を反射面21bで全反射して反射型表示素子22へ向けて射出する。全反射プリズム21は、反射型表示素子22からの反射光(変調光)を透過して投映レンズ群24へ向けて射出する。投映レンズ群24から射出された投映光束は、反射ミラー25によって折り曲げられる。これにより、不図示のスクリーンにフルカラー像が投映される。
【0013】
反射型表示素子22は、たとえば、DMD(Digital Micromirror Device)によって構成される。DMDは、画素に対応する可動微小鏡面(マイクロミラー)を二次元に配列したものである。マイクロミラーに設けられる電極を駆動することにより、照明光を全反射プリズム側ユニット20へ向けて反射する状態と、照明光を内部の吸収体へ向けて反射する状態とを切替える。各マイクロミラーを個別に駆動することにより、表示画素ごとに照明光の反射を制御する。
【0014】
一般に、DMDは照明光を外部へ反射する状態と、照明光を内部へ吸収する状態との2値制御であるが、これら2値状態を高速で切替え、反射状態と吸収状態との時間比率を制御するパルス幅変調(PWM)によって濃淡を表現する。上述した3原色光源によって色順次で照明することにより、1個の反射型表示素子を用いてフルカラー像の投映を行う。なお、反射型表示素子22と全反射プリズム側ユニット20の間には、反射型表示素子22を保護する保護カバー23が設けられている。
【0015】
プロジェクタが投映する画像信号は、不図示の外部機器からプロジェクタへ供給される。
【0016】
本実施形態は、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム側ユニット20との間の位置関係を調整するための調整機構に特徴を有するので、以降の説明はこの点を中心に行う。
【0017】
図2は、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム側ユニット20とを連結する連結部材30を説明する平面図である。図2において、集光レンズ側ユニット10および全反射プリズム側ユニット20に対して紙面上側から連結部材30をねじ止め固定する。ねじ41、ねじ42、およびねじ43は、それぞれ集光レンズ側ユニット10の筐体上面に設けられたねじ穴(不図示)と螺合する。集光レンズ側ユニット10は、ねじ41〜ねじ43によって連結部材30に取り付けられる。
【0018】
ねじ44およびねじ45は、それぞれ全反射プリズム側ユニット20の筐体上面に設けられたねじ穴(不図示)と螺合する。全反射プリズム側ユニット20は、ねじ44およびねじ45によって連結部材30に取り付けられる。ここで、連結部材30においてねじ45が貫通する穴31は、他のねじ41〜ねじ44が貫通する丸穴と異なる長穴である。
【0019】
長穴31は、ねじ44およびねじ45間の距離を半径とする円の円弧状に設けられている。この長穴31を有することにより、連結部材30に対して全反射プリズム側ユニット20がねじ44を回転軸として回動可能に構成される。回動範囲は長穴31の上記円弧の長さによって決まり、本例の場合の長穴31の長さは、たとえば30度の回動角が得られるように、円周の1/12に構成されている。
【0020】
また、全反射プリズム側ユニット20において(図1)、上記集光レンズ側ユニット10からの3原色光を入射する面21aが球面レンズで構成される。レンズのパワーは、照明光(3原色光)が適切に反射型表示素子22を照明するように構成される。上記回転軸が上記レンズ21a(図1)のレンズの曲率中心に相当するようにねじ44(図2)の位置を決めておくことで、連結部材30(すなわち集光レンズ側ユニット10)に対して全反射プリズム側ユニット20を回動させても、上記集光レンズ側ユニット10から入射される3原色光は、常にレンズ面21aの曲率中心へ向かうこととなる。
【0021】
図2において、回動範囲の中心はねじ42とねじ44とを結ぶ直線上にあり、この直線に対して上方15度から下方15度までが回動範囲である。なお、ねじ42とねじ44とを結ぶ直線と、図1においてダイクロイックプリズム17からレンズ面21aへ向かう線(一点鎖線)とは略平行になるように構成されている。
【0022】
図3は、連結部材30(すなわち集光レンズ側ユニット10)に対して全反射プリズム側ユニット20を回動させる状態を説明する平面図である。図3において、ねじ44およびねじ45を緩めた状態で全反射プリズム側ユニット20を矢印方向に回動させる。これにより、ねじ45の位置が長穴31の中を下方へ移動する。図4は、図3の場合における光学ユニットの断面図である。図4において、全反射プリズム側ユニット20の筐体の当接部26が集光レンズ側ユニット10の筐体に当接するまで回動されている。図4によれば、集光レンズ側ユニット10からの3原色光が、図1の場合に比べて入射面21aの上方から入射されるので、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム側ユニット20との間の位置関係が変化しているのがわかる。具体的には、全反射プリズム内部の反射面21bに対する3原色光の入射角が異なる。しかしながら、上述したように、入射された3原色光はレンズ面21aのレンズの曲率中心へ向かうので、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム20の入射面21aとの光学的関係は維持される。
【0023】
図5は、連結部材30(すなわち集光レンズ側ユニット10)に対して全反射プリズム側ユニット20を他の向きへ回動させる状態を説明する平面図である。図5において、ねじ44およびねじ45を緩めた状態で全反射プリズム側ユニット20を矢印方向に回動させる。これにより、ねじ45の位置が長穴31の中を上方へ移動する。図6は、図5の場合における光学ユニットの断面図である。図6において、全反射プリズム側ユニット20の筐体の当接部27が集光レンズ側ユニット10の筐体に当接するまで回動されている。図6によれば、集光レンズ側ユニット10からの3原色光が、図1の場合に比べてレンズ面21aの下方から入射されるので、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム側ユニット20との間の位置関係が変化しているのがわかる。具体的には、全反射プリズム内部の反射面21bに対する3原色光の入射角が異なる。しかしながら、この場合にも入射された3原色光はレンズ面21aのレンズの曲率中心へ向かうので、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム20のレンズ面21aとの光学的関係は維持される。
【0024】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)プロジェクタの光学ユニット1は、LED光源11、13、15、集光レンズ12、14、16、およびダイクロイックプリズム17を有する集光レンズ側ユニット10と、集光レンズ側ユニット10からの照明光で照明される全反射プリズム21を有する全反射プリズム側ユニット20と、全反射プリズム側ユニット20を集光レンズ側ユニット10に対して回動可能に支持する連結部材30と、を備え、全反射プリズム21は、集光レンズ側ユニット10からの照明光を、レンズを形成する入射面21aから入射し、該入射光を反射面21bで反射して反射型表示素子22へ導き、連結部材30は、全反射プリズム21のレンズ面21aの略曲率中心を通る軸を回転軸(ねじ44)として集光レンズ側ユニット10に対して全反射プリズム側ユニット20を回動可能に支持するように構成した。これにより、集光レンズ側と全反射プリズム21のレンズ面21aとの光学的関係を維持したままで、全反射プリズム21内の反射面21bに対する照明光の入射角を調整できる。光学ユニット1の組み立て時の調整はもちろん、組み立て後や保守時の再調整も容易である。
【0025】
(2)上記(1)の光学ユニット1において、連結部材30は、全反射プリズム側ユニット20と固定するための第1の穴および第2の穴31を有し、第1の穴は、回転軸に相当する位置(ねじ44)に設けられ、第2の穴31は、該第2の穴31および第1の穴(ねじ44)間の距離を半径とする円の円弧状に設けられるようにしたので、連結部材30(すなわち集光レンズ側ユニット10)に対して全反射プリズム側ユニット20を回動させた場合に、穴31を貫通するねじ45によって回動が妨げられない。
【0026】
(3)上記(3)の光学ユニット1において、全反射プリズム側ユニット20はさらに、反射型表示素子22を含むように構成したので、全反射プリズム側ユニット20に含まない場合に比べて、組み立て作業を簡単にすることができる。
【0027】
(変形例1)
上述した説明では、光源からの光を変調する変調素子(ライトバルブとも呼ばれる)として反射型表示素子22を採用し、該反射型表示素子22としてDMDを使用する例を説明した。DMDの代わりに、反射型液晶パネル(LCOS)を用いて構成してもよい。
【0028】
(変形例2)
集光レンズ側ユニット10からの3原色光を入射する全反射プリズム側ユニット20の入射面21aを球面レンズで構成するように説明したが、シリンドリカルレンズでもよい。シリンドリカルレンズとは、円筒型の一部を有する形状をしており、円筒の軸を含む面で切ると断面は平面になっており、円筒軸に対して直交する面で切ると断面は屈折力を有する曲面を持つレンズである。ここで、レンズ面21aにシリンドリカルレンズの屈折力を有する方向が光学ユニットを回転させる方向と同じになるように配置する。すなわちシリンドリカルレンズの軸が図2の紙面垂直方向になるように配置する。そして、上記回転軸がシリンドリカルレンズの曲率中心を通過する軸に相当するようにねじ44(図2)の位置を決めておく。このような構成にすることで、連結部材30(すなわち集光レンズ側ユニット10)に対して全反射プリズム側ユニット20を回動させても、上記集光レンズ側ユニット10から入射される3原色光は、常にレンズ面21aの曲率中心へ向かうこととなる。この結果、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム20のレンズ面21aとの光学的関係が維持される。またシリンドリカルレンズの他に、自由曲面レンズやトーリックレンズ、アナモルフィックレンズ等の軸対称なレンズをレンズ面に配置しても、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム20のレンズ面21aとの光学的関係が維持される。
【0029】
(変形例3)
連結部材30を全反射プリズム側ユニット20の上記実施形態と異なる面へ取り付けることにより、全反射プリズム側ユニット20が集光レンズ側ユニット10に対して回動する向きを異ならせてもよい。変形例3では、回転軸がレンズ面21aの曲率中心を通るようにねじの位置を決めるとともに、該回転軸を全反射プリズム21の反射面21bと平行に構成しておく。これにより、集光レンズ側ユニット10から入射される3原色光が、常にレンズ面21aのレンズの曲率中心へ向かうように回動させることができる。この結果、集光レンズ側ユニット10と全反射プリズム20のレンズ面21aとの光学的関係が維持される。
【0030】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。また、上記実施形態に各変形例の構成を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…光学ユニット
10…集光レンズ側ユニット
11、13、15…LED光源
12、14、16…集光レンズ
17…ダイクロイックプリズム
20…全反射プリズム側ユニット
21…全反射プリズム
21a…レンズ面
21b…反射面
22…反射型表示素子
30…連結部材
31…長穴
41〜45…ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と集光光学系とを有する第1の光学系と、
レンズ面を備える光学部材を有する第2の光学系と、
前記第1の光学系と前記第2の光学系とを支持する支持部材とを備え、
前記光学部材は、前記光源から出射された光をレンズ面から入射し、入射した光をライトバルブへ出射し、
前記支持部材は、前記光学部材に備わるレンズ面の略曲率中心を通る軸を回転軸として前記第1の光学系と前記第2の光学系とを回動可能に支持する
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学部材は反射部を有し、前記回転軸は前記反射部の反射面に平行である
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持部材は、前記支持部材と前記第2の光学系とを固定するための第1の穴および第2の穴を有し、前記第1の穴は、前記回転軸に相当する位置に設けられ、前記第2の穴は、該第2の穴および前記第1の穴間の距離を半径とする円の円弧状に設けられる
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ユニットにおいて、
前記レンズ面は自由曲面レンズである
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ユニットにおいて、
前記入射面は軸対称レンズを形成することを特徴とする光学ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の光学ユニットにおいて、
前記軸対称レンズは、シリンドリカルレンズであることを特徴とする光学ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学ユニットにおいて、
前記第2の光学系はさらに、反射型の前記ライトバルブを含む
ことを特徴とする光学ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学ユニットを搭載する
ことを特徴とするプロジェクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15569(P2013−15569A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146357(P2011−146357)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】