説明

光学式エンコーダ及びリニアゲージ

【課題】光学式エンコーダのSN比を向上する。
【解決手段】
レンズ724は、LED721から出射された光を上方に向かう平行光に変換する。第1絞722はLED721の発光部7211からの直接光のみを透過するように配置される。第2絞723は、LED721の発光部7211からの直接光のうちの、レンズ724において有効に平行光に変換される光成分のみが、レンズ724に到達するように配置される。平行光マスク725には、4つの四角形状の貫通孔71が設けられ、レンズ724で変換された平行光のうち、フォトダイオードアレイ732の4つのフォトダイオードの受光面に向かう光成分のみを透過する。そして、送光部72から出射された平行光は、第1スリット5を透過した後、第2スリット731を透過しフォトダイオードアレイ732の4つのフォトダイオードの受光面に到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の直動方向の変位を測定するリニアゲージ等に用いられる光学式エンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダとしては、被計測物の移動に伴い移動する第1のスリットと、第1のスリットと平行に配置した、相互に位相の異なる複数の第2のスリットを設け、送光光学系で生成した光を各スリットに垂直な方向から照射し、各第2スリットに各々対応して設けた複数の光電素子で、当該光電素子に対応する第2スリットと第1スリットとを透過した光を電気信号に変換する光学式エンコーダが知られている(たとえば、特許文献1、2)。
ここで、このような光学式エンコーダを用いることにより、各光電素子で変換した電気信号に基づいて、第1スリットしたがって被計測物の移動速度や移動方向や、これらに基づく変位を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01-180615号公報
【特許文献2】特開2003-232656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した光学式エンコーダによれば、周辺構造物により散乱、反射等した不要光成分が、各スリットや各光電素子に混入してしまうことを充分に抑止することができなかった。そして、このことが光学式エンコーダのSN比を劣化させ、ひいては、測定精度を低下させる要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、よりSN比に優れた光学式エンコーダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、検出ユニットと、前記検出ユニットに対して相対的に第1の方向に移動する、スリット面と垂直な方向が前記第1の方向と垂直な第2の方向となる第1スリットとを備えた光学式エンコーダを提供する。ここで、前記検出ユニットは、平行光を前記第2の方向に出射する送光部と、受光部とを有し、前記受光部は、前記第1スリットと前記第2の方向に見て重なる位置に配置された、相互に位相の異なる複数の第2スリットと、前記第2スリットの各々に対応して設けられた複数の光電素子とを備えている。また、前記複数の光電素子の受光面は、前記送光部との間に前記第1スリットと前記第2スリットとが位置するように配置され、かつ、前記各光電素子の受光面は、前記対応する第2スリットと、前記第2の方向に見て重なる位置に配置されている。そして、前記送光部は、光源と、前記光源からの光を平行光に変換するレンズと、前記レンズが変換した平行光のうち、前記各光電素子の受光面方向に進む成分のみを透過するマスクとを備えている。
【0007】
このような光学式エンコーダによれば、前記マスクによって、前記光源と前記レンズを用いて生成した平行光のうちの、前記各光電素子の受光面に向かう平行光成分のみを前記送光部から出射して、当該平行光成分が、前記第1スリットと前記第2スリットを透過して前記各光電素子の受光面に到達するようにしたので、各所における散乱、反射、回折等による前記第2スリットを通過しない、もしくは、前記対応する第2スリット以外の前記第2スリットを通過した光成分の、前記各光電素子の受光面への混入の影響を排除して、光学式エンコーダのSN比を向上することができるようになる。
【0008】
ここで、このような光学式エンコーダは、前記送光部に、前記光源と前記レンズとの間に配置された、前記光源からの光のうち、前記光源からの直接光であって、前記レンズによって前記平行光に変換される光成分のみを透過させて前記レンズに入射する絞を設けるようにしてもよい。
【0009】
このようにすることにより、精度良く正しい平行光をレンズにおいて生成できるようになるので、さらに、不要光の光電素子の受光面への混入を抑制してS/N比を向上することができる。
なお、このような光学式エンコーダにおいて、前記複数の光電素子の受光面と、前記複数の第2スリットは、n及びmを2以上の正数として、n行m列の格子状に配列されているものとすると共に、前記マスクを、前記n行m列の格子状に配列された開口を有する遮光体としても良い。
ここで、本発明は、併せて、以上のような光学式エンコーダを用いたリニアゲージも提供する。
すなわち、本発明は、フレームと、前記第1の方向に移動可能に前記フレームに支持されたシャフトとを備え、前記検出ユニットは前記フレームに固定され、前記第1スリットは前記シャフトに固定されているリニアゲージも提供する。
また、本発明は、光学式エンコーダと、フレームと、前記第1の方向に移動可能に前記フレームに支持されたシャフトとを備え、前記検出ユニットは前記シャフト固定され、前記第1スリットは前記フレームに固定されリニアゲージも提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、よりSN比に優れた光学式エンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るリニアゲージの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリニアゲージの検出ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリニアゲージの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、被計測物の直動方向の変位を測定するリニアゲージへの適用を例にとり説明する。
図1a1-a5に、リニアゲージの構造を示す。
前後左右上下方向を図1a1、a2に示すように定義するものとして、図1a1はリニアゲージの上面を、図1a2はリニアゲージの右側面を、図1a3はリニアゲージを右後上方の視点より見たようすを、図1a4はリニアゲージを左前上方の視点より見たようすを、図1a5はリニアゲージを右前上方の視点より見たようすを表している。
【0013】
さて、図示するようにリニアゲージは、フレーム1、軸方向に移動可能にフレーム1に軸受されたシャフト2、シャフト2の一端に固定された測定子3、シャフト2の他端に固定されたホルダ4、ホルダ4に固定された第1スリット5、一端がフレーム1に他端がホルダ4に固定された、ホルダ4を測定子3の方向に付勢するバネ6、検出ユニット7とを備えている。
【0014】
なお、リニアゲージには、実際には、図1a5に破線で示すようにカバー8で覆われる。
ここで、検出ユニット7には前後方向に貫通した貫通孔71が設けられており、第1スリット5は、この貫通孔71に挿入されている。
そして、このような構成において、図1b1、b2に示すように、測定子3が被計測物に当接された状態で、シャフト2がフレーム1に対して前後に移動すると、シャフト2にホルダ4を介して固定された第1スリット5が前後に移動することになる。
次に、図2に、検出ユニット7の構成を示す。
図2aに模式的に示すように、検出ユニット7は、第1スリット5が前後方向に挿入されている貫通孔71の下方に設けられた送光部72と、貫通孔71の上方に設けられた受光部73とを有する。
そして、送光部72は、下から順に、光源であるLED721、第1絞722、第2絞723、レンズ724、平行光マスク725を有している。
そして、受光部73は、下から順に、第2スリット731と、フォトダイオードアレイ732とを備えている。
ここで、フォトダイオードアレイ732の下面には、図2b1に示すように、A、B、invA、invBの4つのフォトダイオードの受光面が形成されており、この4つのフォトダイオードの受光面は2行2列の格子状に配置されている。
また、第2スリット731には、図2b2に示すように、90°スリット領域、180°スリット領域、270°スリット領域、360°スリット領域の4つのスリット領域が2行2列の格子状に設けられており、各スリット領域には各々前後方向に並んだ同ピッチのスリットが設けられている。ここで、360°スリット領域のスリットに対して90°スリット領域のスリットは位相が90°異なり、360°スリット領域のスリットに対して180°スリット領域のスリットは位相が180°異なり、360°スリット領域のスリットに対して270°スリット領域のスリットは位相が270°異なる。
【0015】
そして、90°スリット領域が、フォトダイオードアレイ732のAのフォトダイオードを覆い、270°スリット領域が、フォトダイオードアレイ732のinvAのフォトダイオードを覆い、180°スリット領域が、フォトダイオードアレイ732のBのフォトダイオードを覆い、360°スリット領域が、フォトダイオードアレイ732のinvBのフォトダイオードを覆うように、第2スリット731は、フォトダイオードアレイ732の下方に重ねて配置される。
【0016】
なお、貫通孔71に挿入されている第1スリット5には、図2b3に示すように、第2スリット731と同ピッチのスリットが前後方向に形成されている
一方、送光部72において、レンズ724は、LED721から出射された光を上方に向かう平行光に変換する。第1絞722は、図2b6に示すように、円形の小孔が設けられた遮光板であり、できるだけ、LED721の内部の反射板などにおいて生じる反射光を遮断してLED721の発光部7211からの直接光のみを透過するように、LED721の上側近傍の位置に配置される。また、第2絞723は、図2b5に示すように、レンズ724の径より小さな径の円形の貫通孔71が設けられた遮光板であり、LED721の発光部7211からの直接光のうちの、レンズ724において有効に平行光に変換される光成分のみが、レンズ724に到達するように、第1絞722とレンズ724との間の位置に配置される。
【0017】
そして、平行光マスク725は、図2b4に示すように、2行2列の格子状に配置され4つの四角形状の孔が設けられた遮光板であり、レンズ724で変換された平行光のうち、フォトダイオードアレイ732の4つのフォトダイオードの受光面に向かう光成分のみを透過するように、レンズ724と貫通孔71の間に配置されている。すなわち、平行光マスク725は、垂直方向に見て、4つの四角形状の貫通孔71の各々が、フォトダイオードアレイ732の4つのフォトダイオードの受光面の各々と、ちょうど重なるように形成されている。
【0018】
そして、このような検出ユニット7の構成において、送光部72から上方に出射された平行光は、貫通孔71に挿入されている第1スリット5を透過した後、第2スリット731を透過しフォトダイオードアレイ732の4つのフォトダイオードの受光面に到達し、電気信号に変換される。
【0019】
ここで、第1スリット5が前後方向に移動している場合、第1スリット5と第2スリット731の各スリット領域のスリットの作用により、フォトダイオードアレイ732のA、B、invA、invBの4つのフォトダイオードでは、第1スリット5の移動速度に応じた周期の正弦波の電気信号が得られる。また、第2スリット731の各スリット領域のスリットの位相差に応じて、A、B、invA、invBの4つのフォトダイオードで得られる正弦波の信号の位相は、当該順序で順次90°ずつずれることになる。また、これにより、(A-invA)により生成したA相信号と、(B-invB)により生成したB相信号には、90°の位相差が生じる。
【0020】
そこで、このようなA相信号とB相信号とより、第1スリット5したがってシャフト2、測定子3、測定子3が当接している被計測物の移動速度や移動方向や、これらに基づく変位を測定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、第1絞722、第2絞723によって、LED721の発光部7211からの直接光のみをレンズ724で変換して正しい平行光を生成できるようにすると共に、平行光マスク725によって、生成した平行光のうちの、フォトダイオードアレイ732の各フォトダイオードの受光面に向かう平行光成分のみを送光部72から出射して、当該平行光成分が第1スリット5と第2スリット731を透過してフォトダイオードアレイ732の各フォトダイオードの受光面に到達するようにしたので、各所における散乱、反射、回折等による、各フォトダイオードの受光面への、第2スリット731を通過していない、または、第2スリット731の対応するスリット領域以外のスリット領域を通過した光成分の混入の影響を排除できる。よって、リニアゲージのSN比を向上することができるようになる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上で示した実施形態は、図3a、bに示すように第1スリット5をフレーム1に固定し、シャフト2に連結した検出ユニット7を移動するように構成したリニアゲージにおいても同様に適用することができる。
また、以上の実施形態では、リニアゲージへの適用を例にとり説明したが、以上で示した第1スリット5と、検出ユニット7からなる光学式エンコーダは、第1スリット5を被計測物と共に回転させるロータリエンコーダなどの、移動速度や移動方向を計測する任意の装置に同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…フレーム、2…シャフト、3…測定子、4…ホルダ、5…第1スリット、6…バネ、7…検出ユニット、8…カバー、71…貫通孔、72…送光部、73…受光部、721…LED、722…第1絞、723…第2絞、724…レンズ、725…平行光マスク、731…第2スリット、732…フォトダイオードアレイ、7211…発光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出ユニットと、
前記検出ユニットに対して相対的に第1の方向に移動する、スリット面と垂直な方向が前記第1の方向と垂直な第2の方向となる第1スリットとを備え、
前記検出ユニットは、平行光を前記第2の方向に出射する送光部と、受光部とを有し、
前記受光部は、
前記第1スリットと前記第2の方向に見て重なる位置に配置された、相互に位相の異なる複数の第2スリットと、
前記第2スリットの各々に対応して設けられた複数の光電素子とを有し、
前記複数の光電素子の受光面は、前記送光部との間に前記第1スリットと前記第2スリットとが位置するように配置され、かつ、前記各光電素子の受光面は、前記対応する第2スリットと、前記第2の方向に見て重なる位置に配置されており、
前記送光部は、
光源と、
前記光源からの光を平行光に変換するレンズと、
前記レンズが変換した平行光のうち、前記各光電素子の受光面方向に進む成分のみを透過するマスクとを有することを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1記載の光学式エンコーダであって、
前記送光部は、前記光源と前記レンズとの間に配置された、前記光源からの光のうち、前記光源からの直接光であって、前記レンズによって前記平行光に変換される光成分のみを透過させて前記レンズに入射する絞を備えていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学式エンコーダであって、
前記複数の光電素子の受光面と、前記複数の第2スリットは、n及びmを2以上の正数として、n行m列の格子状に配列されており、
前記マスクは、前記n行m列の格子状に配列された開口を有する遮光体であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の光学式エンコーダと、
フレームと、前記第1の方向に移動可能に前記フレームに支持されたシャフトとを有し、
前記検出ユニットは前記フレームに固定され、前記第1スリットは前記シャフトに固定されていることを特徴とするリニアゲージ。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の光学式エンコーダと、
フレームと、前記第1の方向に移動可能に前記フレームに支持されたシャフトとを有し、
前記検出ユニットは前記シャフト固定され、前記第1スリットは前記フレームに固定されていることを特徴とするリニアゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−123020(P2011−123020A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283097(P2009−283097)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】