説明

光学式タッチパネル

【課題】 部品数を大幅に削減して製造コストを低減できる光学式タッチパネルを提供する。
【解決手段】 矩形の表示画面11の対向する2辺の受光辺11a、11cと、表示画面の残りの2辺の受光辺11b、11dとにおけるそれぞれの2辺に対向配置される光電効果型光センサからなる受光素子12a、12c、12b、12dと、該受光素子に光を照射する発光素子18と該発光素子18から照射される光を導光し受光辺の受光素子に光を照射する導光体13とを有する発光ペン10とを備え、表示画面11の対向する2辺の受光辺11a、11cと、表示画面の残りの2辺の受光辺11b、11dとにおけるそれぞれの2辺の受光素子の受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより、発光素子の位置の直交座標を位置情報として出力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式タッチパネルに関し、特に部品数を大幅に低減した光学式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式タッチパネルは、図4に示すように、矩形の表示画面101の隣り合う2辺101a、101bに沿って配列された複数の発光素子102と、この表示画面101の残りの2辺101c、101dに沿って、各発光素子102にそれぞれ対向して配列された受光素子103を備えている。各発光素子102(制御回路109によって駆動される)が発した光は、それぞれ対向する受光素子103によって検出される。例えば、辺101aの上端の発光素子102が発した光106は辺101cの上端の受光素子103によって検出され、また、辺101bの右端の発光素子102が発した光104は辺101dの右端の受光素子103によって検出される。各受光素子103が出力する信号は所定の処理回路110によって解析処理される。操作者が指などで表示画面101を触れると、特定の発光素子102が発した光が遮光物体108によって遮られる結果、対応する受光素子102の出力が変化して、操作者が触れた座標が上記処理回路110を通して検出される。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】特開平6−309100号公報(第2頁、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の光学式タッチパネルにおいては、発光素子から出た光ビームが正確に受光素子に対向している事が必要であり、実装上、光軸を合わせる事が必要である。また光パワー素子である発光素子は、発光強度を上げるため、必ず集光レンズが必要となり、それにより形状が大きくなるために素子の実装ピッチが限定され、それによる分解能の制限を受け易い。そのために光学式タッチパネルにおいては、発光素子から受光素子へと導かれる光ビームの光軸を精度良く形成する必要があった。このため発光素子自体のレンズの精度が要求され、発光素子を選別する必要があるが、発光素子の選別は多大な時間と手間がかかり、そのことにより製造コストが高くつくという問題があった。
【0005】
また光ビームの光軸精度を上げるため、発光素子を発光素子取付基板に実装する際には、レンズの方向を正確に保持するための治具等が必要となり、そのことも生産コストを高めることとなり、さらに受光素子の数だけ発光素子が必要であって、特に発光素子のような光パワー素子は、タッチパネルを構成する部品の中では平均故障率が高く、発光素子の数の大きさはタッチパネルの寿命や信頼性を下げる要因となるという問題があった。
【0006】
(発明の目的)
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、部品数を大幅に削減して製造コストを低減できる光学式タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の光学式タッチパネルは、矩形の表示画面の対向する2辺の受光辺と、前記表示画面の残りの2辺の受光辺とにおけるそれぞれの2辺に対向配置される光電効果型光センサからなる受光素子と、該受光素子に光を照射する発光素子と該発光素子から照射される光を導光し前記受光辺の受光素子に光を照射する導光体とを有する発光ペンとを備え、表示画面の対向する2辺の受光辺と、表示画面の残りの2辺の受光辺とにおけるそれぞれの2辺の受光素子の受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより、発光素子の位置の直交座標を位置情報として出力することを特徴とする。
【0008】
また、対向する2辺の受光辺に配置されている受光素子は、相対する辺での位置が同じであることを特徴とする。
【0009】
また、光電効果型光センサからなる受光素子は、CdS、CdSe、PbS、PbSe等よりなる内部光電効果を用いたセルであることを特徴とする。
【0010】
また、発光ペンの先端に設ける導光体は発光素子から照射される光を入射する受光面と、入射した光を受光素子に照射する照射面とを有し、該照射面は円筒形の形状で先端が略半球状の形状をなし、受光面は略半球状の凹部を有し該凹部に発光素子が近接配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の光学式タッチパネルは矩形の表示画面の周囲4辺に沿って光電効果型光センサからなる受光素子を配置し、発光ペンに1個の発光素子を設ければ良い。したがって、発光素子の個数が大幅に削減され、全体として部品数が大幅に削減される。この結果、組立工程も簡易化され、製造コストを大幅に低減することができる。
また、本発明の光学式タッチパネルによれば、発光素子の光量バランスを取る光量調整作業もないので多大の時間や手間が不要となり生産コストの低減がはかれるばかりでなく、光学式タッチパネルの寿命や信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、発光ペンに搭載した発光素子の位置検出は、対向する2辺の受光辺の間を連続して検出でき、抵抗膜式タッチパネルと同様に発光素子の位置のアナログ位置検出が可能である。この結果、お絵描きなどの手書き入力もできるようになりタッチパネルとしての使用範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1から図3に基づいて本発明の実施形態における光学式タッチパネルについて説明する。図1は、本発明の実施例における光学式タッチパネルの概略構成を示す図であり、図2は実施例における光学式タッチパネルの他の例の概略構成を示す図である。また、図3は、実施例における発光ペンを示し、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は分解斜視図である。
【実施例】
【0014】
図1に示すように本実施例における光学式タッチパネルは、矩形の表示画面11のX方向における対向する2辺の受光辺11a、11cに対向配置される光電効果型光センサからなる受光素子12a、12cと、表示画面のY方向における残りの2辺の受光辺11b、11dに対向配置される光電効果型光センサからなる受光素子12b、12dと、この受光素子12a、12b、12c、12dに光を照射する発光素子18を搭載した発光ペン10とを備えている。発光ペン10に搭載された発光素子18から照射された光14a、14cは、対向する2辺11a、11cの受光素子12a、12cの受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより、発光素子18のX方向の位置情報を得る。また、発光素子18から照射された光14b、14dは、対向する2辺11b、11dの受光素子12b、12dの受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより、発光素子18のY方向の位置情報を得る。これらの位置情報を基に発光ペン10に搭載された発光素子18の位置の直交座標を位置情報として出力する。
【0015】
光電効果型光センサからなる受光素子12a、12b、12c、12dは、CdS、CdSe、PbS、PbSe等よりなる内部光電効果を用いたセルで、受光する光の量に応じて電気伝導度が変化し、電気抵抗が変わるセンサーである。製作方法から大別して単結晶形、焼結形、蒸着形があるが、現在は使用されている物の多くは焼結形である。また、表示画面11の対向する2辺の受光辺11a、11cに対向配置される受光素子12a、12cは、それぞれ3個づつ配置され、相対する受光辺11a、11cでの位置が同じ位置となるように対向配置されている。表示画面の残りの2辺の受光辺11b、11dに対向配置される受光素子12b、12dについても同様にそれぞれ3個づつ配置され、相対する受光辺11b、11dでの位置が同じ位置となるように対向配置されている。
【0016】
発光ペン10は図3に示すように筒部10aと、裏蓋10bと、光を照射する発光素子としてのLED18と、該LED18から照射される光を導光し各受光辺の受光素子12a、12b、12c、12dに光を照射する導光体13と、電源としての電池15とを備えている。導光体13は筒部10aの一方の先端から突出するように装着されており、その後部に回路基板に搭載されたLED18が収納され、さらにその後部に電池17が収納され裏蓋10bによって固定されている。導光体13は透明材料からなりLED18から照射される光を入射する受光面13aと、入射した光を受光素子12a、12b、12c、12dに照射する照射面13bとを有し、照射面13bは円筒状の形状で先端が略半球状の形状となっている。また、受光面13aは略半球状の凹部17を有し、この凹部17にLED18が近接配置されている。このように構成された発光ペン10は、その先端に設ける導光体13の照射面13aからLED18の光を照射することができる。この照射面13bは円筒状の形状であるためLED18からの光は導光体13を中心として放射状に全方向に照射される。
【0017】
表示画面11の操作域に発光ペン10を置き、発光ペン10に搭載されているLED18を発光させる。LED18から照射された光は導光体13の受光面13aの凹部17の内壁から導光板13の内部に導光され導光板13の照射面13bから照射光14a、14b、14c、14dとして全方向に照射され、表示画面11の4つの受光辺11a、11b、11c、11dの受光素子12a、12b、12c、12dに入射する。LED18からの光の強さは距離の2乗に半比例して弱くなるので、受光素子12a、12b、12c、12dが受光する光量はLED18からの距離に応じた量となり、受光素子12a、12b、12c、12dは受光量に応じた抵抗値変化を示す。
【0018】
従って表示画面11のX方向における相対する2辺の受光辺11a、11cのそれぞれに3個づつ配置されている受光素子12a、12cの抵抗値変化量を比較することは、両受光辺11a、11cの受光素子12a、12cが受けるLED18からの受光量を比較することになり、さらにLED18から両受光辺11a、11cの受光素子12a、12cまでのそれぞれの距離を比較することになる。これによってLED18が両受光辺11a、11c間のどの位置にあるかを知ることができる。同様にしてLED18が表示画面11のY方向における両受光辺11b、11d間のどの位置にあるかを知ることができる。このように、対向する2辺の受光辺の受光素子の受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより発光ペン10の先端に設けるLED18の位置の直交座標を位置情報として出力することができる。尚、相対する受光素子毎にLED18の位置を測定し、3組の受光素子の測定値の平均値を採る測定方法にしても良い。
【0019】
本実施例においては、各受光辺に3個の受光素子を配置した例で説明したが、これに限定されるものではなく表示画面の大きさ等に応じて適当に設定することができる。尚、受光素子の個数は増した方が位置検出精度が向上する利点がある。また、図2に示すように、各受光辺11a、11b、11c、11dにそれぞれ1個の受光素子12a、12b、12c、12dを配置しても良い。この場合は受光素子12a、12b、12c、12dの長さを対応する各受光辺11a、11b、11c、11dの全長とほぼ等しい長さに設定することが好ましく、これによって位置検出精度を高めることができる。
【0020】
以上のように本実施例における光学式タッチパネルでは、データ入力用に発光ペン10を採用することにより、発光ペン10に発光素子として1個LED18を設ければ良い。したがって、発光素子の個数を大幅に削減することができる。また組み立て工程も簡易化され製造コストを大幅に低減することができる。
また、LEDの光量バランスを取る光量調整作業もないので多大の時間や手間が不要となり生産コストの低減がはかれるばかりでなく、光学式タッチパネルの寿命や信頼性を向上させることができる。
また、発光ペン10に搭載したLED18の位置検出は、対向する2辺の受光辺の間を連続して検出でき、抵抗膜式タッチパネルと同様に発光素子の位置のアナログ位置検出が可能である。この結果、お絵描きなどの手書き入力もできるようになりタッチパネルとしての使用範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1における光学式タッチパネルの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における光学式タッチパネルの他の例の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における発光ペンを示す斜視図及び分解斜視図である。
【図4】従来の光学式タッチパネルの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 発光ペン
10a 筒部
10b 裏蓋
11 表示画面
11a、11b、11c、11d 受光辺
12a、12b、12c、12d 受光素子
13 導光体
13a 受光面
13b 照射面
15 電池
16a、16b、16c、16d 受光素子
17 受光面の凹部
18 LED
101 表示画面
101a、101b、101c、101d 表示画面の辺
102 発光素子
103 受光素子
108 遮蔽物体
109 制御回路
110 処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の表示画面の対向する2辺の受光辺と、前記表示画面の残りの2辺の受光辺とにおけるそれぞれの2辺に対向配置される光電効果型光センサからなる受光素子と、該受光素子に光を照射する発光素子と該発光素子から照射される光を導光し前記受光辺の受光素子に光を照射する導光体とを有する発光ペンとを備え、前記表示画面の対向する2辺の受光辺と、前記表示画面の残りの2辺の受光辺とにおけるそれぞれの2辺の受光素子の受光量に応じて変化する電気抵抗値の変化量を比較することにより、前記発光素子の位置の直交座標を位置情報として出力することを特徴とする光学式タッチパネル。
【請求項2】
前記対向する2辺の受光辺に配置されている受光素子は、相対する辺での位置が同じであることを特徴とする請求項1記載の光学式タッチパネル。
【請求項3】
前記光電効果型光センサからなる受光素子は、CdS、CdSe、PbS、PbSe等よりなる内部光電効果を用いたセルであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学式タッチパネル。
【請求項4】
前記発光ペンの先端に設ける導光体は前記発光素子から照射される光を入射する受光面と、入射した光を前記受光素子に照射する照射面とを有し、該照射面は円筒状の形状で先端が略半球状の形状をなし、前記受光面は略半球状の凹部を有し該凹部に前記発光素子が近接配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11569(P2006−11569A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184362(P2004−184362)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】