光学式検知装置およびそれを用いた機器
【課題】多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ低コスト化が可能な光学式検知装置およびそれを用いた機器を提供する。
【解決手段】多分割レンズ1の各レンズ101は、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有するフレネルレンズである。複数のレンズ面121は、複数のレンズ面121のうちの少なくとも1つを、中心軸が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐の側面の一部により構成する。レンズ101は、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐の中心軸とが、非平行である。
【解決手段】多分割レンズ1の各レンズ101は、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有するフレネルレンズである。複数のレンズ面121は、複数のレンズ面121のうちの少なくとも1つを、中心軸が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐の側面の一部により構成する。レンズ101は、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐の中心軸とが、非平行である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検知装置およびそれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学式検知装置として、所定の検知エリア内で人体から発せられる赤外線の変化量を検出し照明器具などの機器を制御する用途に使用されるものが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1,2に記載された光学式検知装置は、焦点位置を略同じとする複数枚のレンズが一平面上で組み合わされた多分割レンズと、上記焦点位置に配置された受光素子である赤外線検知素子とを備えている。なお、特許文献1,2には、赤外線検知素子として4個の受光部(素子エレメント)が並んだものを用い、多分割レンズとして15個のレンズが5個ずつ3列に並んだものを用いた場合、4×15個の検知ビームが生じることが記載されている。
【0004】
多分割レンズの各レンズは、第一面が平面、第二面が第一面の法線に対して斜交する主軸をもつ双曲面である。具体的に説明すれば、図19に示すように、レンズ101は、第二面である双曲面120の回転軸Cを、第一面である平面110の法線Hと角度θをなすように傾けている。
【0005】
ここで、レンズ101の頂点Oと赤外線検知素子(図示せず)の中心との距離をL、レンズ101の焦点距離をfとすれば、レンズの頂点Oを通って焦点Fにいたる入射光Dが法線Hに対してなす角度δは、
【0006】
【数1】
となる。また、レンズ101の屈折率をnとすれば、
【0007】
【数2】
であるから、角度θは、
【0008】
【数3】
で決まる。
【0009】
レンズ101は、集光光学系として設けられたものであり、頂点Oを通って焦点Fにいたる入射光Dが、法線Hに対して角度δをなすとともに、無収差で焦点Fに集光される。また、このレンズ101では、角度θを大きくすれば、焦点Fに無収差で集光される入射光Dが法線Hとなす角度δも大きくなる。
【0010】
ところで、特許文献1,2には、多分割レンズの材料としてポリエチレンを採用し、多分割レンズを射出成形によって製作することが記載されている。
【0011】
しかしながら、ポリエチレンにより形成されたレンズ101では、肉厚が1mmでも、レンズ101の平面110に垂直入射する波長10μm付近の赤外線の透過率が40%であり、肉厚が厚くなるほど透過率が低下する。そして、レンズ101の平面110に対して垂直でない方向から入射する入射光Dは、レンズ101の最大肉厚よりも光路長が長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。また、ポリエチレンにより形成されたレンズ101では、肉厚の変化が大きい場合、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、レンズ101の表面に、ひけ(sink mark)が発生し、レンズ101の外観が損なわれてしまう。
【0012】
そこで、特許文献1,2には、透過率の低下と、ひけの発生とを抑制するために、レンズ101の最小肉厚を、射出成形時のポリエチレンの流動性の点で許される最小限の値の0.3mmとし、レンズ面積(有効レンズ面積)の確保に影響を与えるレンズ101の最大最小肉厚差を、光学式検知装置の用途(流し元灯用)に応じた所定のレンズ面積の確保に必要な最小限の値の0.5mmとして、レンズ101の最大肉厚を1mm以下に抑えることが記載されている。
【0013】
また、特許文献3には、図20に示すように、集光レンズ401をフレネルレンズとし、軸外収差の発生を抑制するために、第二面の各双曲面421,422,423が共有する回転軸Cを、第一面である平面410に対して斜交させたものが提案されている。ここにおいて、各双曲面421,422,423それぞれがレンズ面を構成している。
【0014】
特許文献3には、図20のフレネルレンズ401では、各双曲面421,422,423が共有する回転軸Cと平面410とのなす角度に応じて、焦点に無収差で集光する平行光線と平面410の法線Nとの間に角度を持たせることができることが記載されている。したがって、図20のフレネルレンズ401では、軸外収差の発生を抑制することができ、平面410の法線Nに斜交する方向からの光線を効率よく集光することが可能となる。
【0015】
しかしながら、出射面を構成する各双曲面421,422,423の回転軸Cが入射面である平面410の法線Nに対して斜交したフレネルレンズ401は、各双曲面421,422,423が、平面410の法線Nに対して回転対称ではない。このため、フレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型は、旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0016】
そこで、フレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型の製作時には、多軸制御の加工機を用い、図21に示すようにノーズ半径(コーナ半径ともいう)が数μmの鋭利なバイト(工具)430の刃先のみを工作物440に点接触させて微小ピッチで切削加工を行うことで各双曲面421,422,423あるいは各曲面を形成する必要がある。工作物440は、フレネルレンズ401を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材である。このため、上述のフレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型の製作における加工時間が長くなり、フレネルレンズ401のコストアップの要因となってしまう。
【0017】
これに対して、フレネルレンズの入射面である平面の法線を含む断面形状において各レンズ面の断面形状が直線であれば、図22に示すようにバイト430を工作物440に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことにより、レンズ面あるいはレンズ面に応じた曲面の形成が可能であるため、加工時間を大幅に短縮することが可能となる。ここで、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐台の側面により近似することで、各レンズ面の断面形状を直線とできることが知られている(特許文献4)。
【0018】
なお、特許文献3に開示されたフレネルレンズ401および特許文献4に開示されたフレネルレンズは、対象とする光線が赤外線であり、特許文献3,4には、レンズ材料として、ポリエチレンを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3090336号公報
【特許文献2】特許第3090337号公報
【特許文献3】特公平7−36041号公報
【特許文献4】米国特許第4787722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、本願発明者らは、光学式検知装置を搭載する機器において多分割レンズが機器の外観の一部をなすので、機器のデザイン性を損なわないために、多分割レンズの各レンズにおいて赤外線が入射する側の面の形状を、平面または曲率が小さな曲面とすることを考えた。ここで、光学式検知装置を搭載する機器が防犯センサの場合には、不審者に光学式検知装置の存在や防犯センサの検知エリアを悟られないようにすることが可能となると考えた。さらに、本願発明者らは、光学式検知装置を搭載する機器として、例えばテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどの機器のように人と光学式検知装置との距離が比較的短くなる機器や、防犯センサなどの機器を考えた場合、多分割レンズの外観が重要となり、比較的近く(例えば、30cm程度)から覗き込んでも目視で、レンズ模様が視認できないようにすることが好ましいと考えた。そこで、上述の光学式検知装置においては、多分割レンズの各レンズ101の最大最小肉厚差を例えば上述した0.5mmなる値よりもさらに小さくすることが考えられるが、レンズ模様が視認されるのを難しくできる一方で、所定のレンズ面積を確保できなくなり、結果的に感度が低下してしまう。
【0021】
そのため、第二面側に形成されたレンズ模様を視認し難くすることが可能なレンズとして、フレネルレンズを採用する選択肢が出てくるのである。しかしながら、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいて、各レンズ面を円錐台の側面により近似したものでは、外界から第一面へ斜め入射する入射光(例えば、赤外線)を利用する場合に軸外収差が発生してしまう。
【0022】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ低コスト化が可能な光学式検知装置およびそれを用いた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の光学式検知装置は、複数枚のレンズが組み合わされ前記各レンズの焦点位置が同じである多分割レンズと、前記焦点位置に配置された赤外線受光素子を有する赤外線センサとを備え、前記多分割レンズの前記各レンズは、第一面とは反対側の第二面が複数のレンズ面を有するフレネルレンズであり、少なくとも1つの前記レンズ面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であることを特徴とする。
【0024】
この光学式検知装置において、前記複数の前記レンズ面のうち少なくとも2つの前記レンズ面が、それぞれ前記中心軸の異なる前記楕円錐の前記側面の前記一部からなり、外側に位置する前記レンズ面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことが好ましい。
【0025】
この光学式検知装置において、前記各レンズそれぞれにおける前記複数の前記レンズ面のうち中央の前記レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる中央の前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央の前記レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることが好ましい。
【0026】
この光学式検知装置において、前記非球面は、双曲面であることが好ましい。
【0027】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズは、前記多分割レンズの中心から離れた前記レンズほど前記第二面のレンズ面積を大きくしてあることが好ましい。
【0028】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズは、前記各レンズの最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることが好ましい。
【0029】
この光学式検知装置において、前記赤外線受光素子は、長方形状に形成された複数個の素子エレメントが、前記素子エレメントの短手方向に並んでいることが好ましい。
【0030】
この光学式検知装置において、前記赤外線受光素子は、正方形状に形成された4個の素子エレメントが2×2のマトリクス状に配列されてなり、前記4個の前記素子エレメントのうち対角位置にある2個の前記素子エレメントそれぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置されてなることが好ましい。
【0031】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズの前記各レンズと前記赤外線検出素子とによって形成される複数の検知ビームの配置が千鳥状の配置であることが好ましい。
【0032】
また、光学式検知装置において、前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであることが好ましい。
【0033】
また、光学式検知装置において、前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであり、且つ、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることが好ましい。
【0034】
本発明の機器は、前記光学式検知装置を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の光学式検知装置においては、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ低コスト化が可能となる。
【0036】
本発明の機器においては、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置を備えているので、光学式検知装置の感度の低下を抑制し且つ低コスト化を図りながらも光学式検知装置を搭載する機器全体の外観を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は実施形態の光学式検知装置の概略断面図、(b)は光学式検知装置の要部概略下面図、(c)は(b)の拡大図である。
【図2】実施形態の光学式検知装置の概略構成図である。
【図3】実施形態の光学式検知装置の検知エリアの説明図である。
【図4】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図5】実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの1つのレンズの平面図である。
【図6】実施形態の光学式検知装置における赤外線受光素子と検知ビームとの関係説明図である。
【図7】実施形態の光学式検知装置の検知エリアの説明図である。
【図8】実施形態の光学式検知装置の他の構成例の要部概略下面図である。
【図9】実施形態の光学式検知装置の他の構成例の検知エリアの説明図である。
【図10】実施形態の光学式検知装置の別の構成例の検知エリアの説明図である。
【図11】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおけるレンズのスポットダイヤグラムである。
【図12】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの他の構成例の要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図13】実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの他の構成例の要部平面図である。
【図14】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおける他の構成例のレンズのスポットダイヤグラムである。
【図15】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの別の構成例の要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図16】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおける別の構成例のレンズのスポットダイヤグラムである。
【図17】(a)は実施形態の光学式検知装置を備えた機器の概略正面図、(b)は概略上面図、(c)は概略側面図である。
【図18】(a)は実施形態の光学式検知装置を備えた他の機器の概略斜視図、(b)は多分割レンズの概略説明図、(c)は検知エリアの説明図である。
【図19】従来例の光学式検知装置における多分割レンズの1つのレンズの説明図である。
【図20】(a)は他の従来例のフレネルレンズの下面図、(b)は他の従来例のフレネルレンズの断面図である。
【図21】フレネルレンズの第二面側の各レンズ面が双曲面の場合のフレネルレンズの製作方法の説明図である。
【図22】フレネルレンズの第二面側の各レンズ面の断面形状が直線の場合のフレネルレンズの製作方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、光学式検知装置について、まず、図1〜図6に基づいて説明する。
【0039】
光学式検知装置Aは、複数枚のレンズ101が組み合わされ各レンズ101の焦点位置Fが同じである多分割レンズ1と、焦点位置(焦点)Fに配置された赤外線受光素子3を有する赤外線センサ2とを備えている。要するに、多分割レンズ1は、赤外線を集光する集光光学系を構成している。なお、複数枚のレンズ101は、一面上で組み合わされている。
【0040】
この光学式検知装置Aは、赤外線を放射する物体(例えば、人など)の動きを検知して検知信号を出力するものである。ここで、光学式検知装置Aは、赤外線受光素子3として、焦電型赤外線検知素子を用いている。
【0041】
赤外線センサ2は、赤外線受光素子3の他に、赤外線受光素子3の出力信号を増幅する増幅部4と、増幅部4で増幅された電圧信号と閾値とを比較し電圧信号が閾値を超えたか否かを判断する判断部5と、判断部5において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに出力を出す出力部6とを備えている。なお、光学式検知装置Aの検知対象の物体が人である場合、増幅部4としては、例えば、人の動きに近い周波数成分(1Hzを中心とする成分)の電圧信号を増幅するように構成することが好ましく、例えば、特許文献1,2に記載された増幅部と同様の周波数特性を有するものを用いることができる。また、増幅部4は、例えば、赤外線受光素子3から出力される出力信号である焦電電流を電圧信号に変換する電流電圧変換回路と、この電流電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧信号を増幅する電圧増幅回路とで構成することができる。また、判断部5は、コンパレータなどを用いた比較回路で構成することができる。また、出力部6は、例えば、判断部5において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに検知信号を出力として出す出力回路により構成することができる。
【0042】
また、赤外線センサ2は、赤外線受光素子3、増幅部4、判断部5および出力部6などを収納したパッケージ7を備えており、プリント配線板からなる回路基板8に実装して用いることができる。ここにおいて、パッケージ7内には、赤外線受光素子3などを実装した素子保持部材(例えば、MID基板など)9が収納されている。そして、素子保持部材9には、増幅部4と判断部5と出力部6とを1チップ化したIC素子(図示せず)も実装されている。
【0043】
パッケージ7は、円盤状のステム71と、このステム71に接合される有底円筒状のキャップ72と、このキャップ72の底部に形成された開口部72aを閉塞するように配置され所望の赤外線を透過する機能を有する赤外線透過部材73とで構成されている。赤外線透過部材73としては、例えば、シリコン基板やゲルマニウム基板などを用いることが好ましい。なお、パッケージ7は、ステム71とキャップ72とが両方とも金属材料により形成されており、赤外線透過部材73とキャップ72とを導電性材料により接合してある。
【0044】
光学式検知装置Aは、多分割レンズ1を有するカバー部材10が、パッケージ7を覆うように回路基板8の一表面側に配置されている。なお、カバー部材10とパッケージ7との間の空間は、空気層であり、断熱層として機能する。
【0045】
赤外線受光素子3を構成する焦電型赤外線検知素子としては、例えば、図6(b)に示すように、1枚の焦電体基板30に4個の素子エレメント(受光部)31が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。図6(b)に示した赤外線受光素子3は、1枚の焦電体基板30に4個の素子エレメント31が2×2のアレイ状に配列されている。図6(b)に示した例では、各素子エレメント31の平面視形状が正方形状であり、焦電体基板30の中央部において焦電体基板30の外周線よりも内側の仮想正方形の4つの角それぞれに素子エレメント31の中心が位置するように配置されている。
【0046】
赤外線受光素子3の各素子エレメント31は、一対の電極(図示せず)の間に焦電体基板30の一部が介在するコンデンサであり、図6(b)には、各素子エレメント31の一対の電極のうち多分割レンズ1側に位置する電極の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。ここにおいて、赤外線受光素子3は、4個の素子エレメント31のうち、仮想正方形の一方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント31同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント31同士が並列接続されている。要するに、赤外線受光素子3は、図6(b)の右側に示す直交座標系のように、x軸、y軸およびz軸それぞれの正方向を規定すると、x軸方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント31同士が逆並列に接続され、かつ、y軸方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント31同士が逆並列に接続されている。
【0047】
光学式検知装置Aの検知エリア200(図3参照)は、赤外線受光素子3と多分割レンズ1とで決まる。したがって、光学式検知装置Aの検知エリア200には、各レンズ101ごとに、素子エレメント31の数(図6(b)の例では、4個)の検知ビーム220が設定される。検知ビーム220は、赤外線受光素子3への赤外線の入射量がピーク範囲になる小範囲であって、検知対象の物体からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。
【0048】
図1(a)に示した光学式検知装置Aでは、多分割レンズ1が図1(b)に示すように2×8枚のレンズ101により構成されているので、図3に示すように検知エリア200内に16×4個の検知ビーム220が設定される。なお、多分割レンズ1におけるレンズ101の枚数は特に限定するものではない。
【0049】
図3は、床面の上方に光学式検知装置Aを配置した場合の検知エリア200を示しており、図3(b)では、検知エリア200のうち床面上に設定される検知面210における各検知ビーム220それぞれに、その検知ビーム220が対応する素子エレメント31の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。要するに、検知ビーム220には、素子エレメント31に1対1で対応した極性がある。
【0050】
検知面210における検知ビーム220の形状は、その検知ビーム220に対応する素子エレメント31と相似形である。
【0051】
ところで、多分割レンズ1は、各レンズ101の最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることが好ましい。ここで、光学式検知装置Aは、各レンズ101の最大肉厚tを同じ肉厚とすることにより、図6(a)に示すように、赤外線検知素子3の受光面(素子エレメント31における多分割レンズ1側の表面)を含む平面から各レンズ101までの距離dが一定距離となるため、検知面210上での検知ビーム220の幅Wを同じにすることが可能となる。したがって、検知面210上で検知ビーム220の大きさが一定となることにより、検知エリア200内の各所における検出能力を同等にすることができる。なお、レンズ101同士の最大肉厚tの差が100μm程度であれば、略同じ肉厚とみなすことができる。
【0052】
多分割レンズ1は、光学式検知装置Aにおいて水平画角を大きくするために、図1(c)におけるx軸方向に沿って並べるレンズ101の数をy軸方向に沿って並べるレンズ101の数よりも多くしてある。ここにおいて、図1(c)に示した例では、x軸方向に沿って並べるレンズ101の数を8、y軸方向に沿って並べるレンズ101の数を2としてある。また、人体検知装置Aは、図1(c)におけるx軸、y軸およびz軸それぞれの正方向と、図6(b)におけるx軸、y軸およびz軸それぞれの正方向とが揃うように、多分割レンズ1と赤外線受光素子3との相対的な位置関係を規定してある。要するに、赤外線受光素子3は、正方形状に形成された4個の素子エレメント31が平面視において2×2のマトリクス状に配列されており、上述の仮想正方形の1辺に沿った方向を左右方向として配置してある。
【0053】
ただし、赤外線受光素子3の配置は、これに限らず、例えば、2×2のマトリクス状に配列された4個の素子エレメント31のうち対角位置にある2個の素子エレメント31それぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置してもよい。つまり、赤外線受光素子3は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置してもよい。この場合、図6(b)に示した赤外線受光素子3をxy平面内で45°だけ回転させたことになるので、人体検知装置Aの検知エリア200は、図7(a),(b)に示すように設定されることとなる。したがって、この場合には、隣り合うレンズ101それぞれに対して設定される4個ずつの検知ビーム220のうち互いに異なるレンズ101により形成されて隣り合う2個の検知ビーム220間の間隔を小さくすることが可能となり、物体の、より小さな動きを検知することが可能となる。また、この場合には、人が極性の異なる2つの検知ビーム220を通過して素子エレメント31同士の出力が相殺される可能性が低くなる。また、上述のように図6(b)に示した赤外線受光素子3をxy平面内で45°だけ回転させ、さらに、多分割レンズ1のレンズ101を図8に示すように千鳥状の配置とすれば、人体検知装置Aの検知エリア200は、図9(a),(b)に示すように設定され、複数の検知ビーム220の配置が千鳥状の配置となる。これにより、人体検知装置Aは、物体の、より小さな動きを検知することが可能となる。
【0054】
また、赤外線受光素子3は、長方形状に形成された複数個の素子エレメント31が、平面視において素子エレメント31の短手方向に並んでいるもの、例えば、長方形状の素子エレメント31が1×4のアレイ状に配列されたものでもよい。この場合、人体検知装置Aの検知エリア200は、図10(a),(b)に示すように設定されることとなり、左右方向(水平方向)における検知ビーム220の幅、隣り合う検知ビーム220間の間隔を小さくすることが可能となり、赤外線を放射する物体の動きを検知しやすくなる。
【0055】
ところで、多分割レンズ1の各レンズ101は、フレネルレンズであり、第一面110が平面であり、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有している。ここで、本実施形態では、光学式検知装置Aを搭載する機器において多分割レンズ1の周辺部の外観面が平面または曲率の小さな曲面である場合が多いことを踏まえて、第一面110を平面としてある。これにより、機器において多分割レンズ1の周辺部の外観面と多分割レンズの外観面とを略面一とする(連続的な形状とする)ことが可能となる。よって、本実施形態の光学式検知装置では、多分割レンズを搭載する機器のデザイン性が多分割レンズにより損なわれたり、機器を見た人が多分割レンズに起因して機器の外観に違和感を感じるのを抑制することが可能となり、多分割レンズを搭載した機器の外観を美麗なものとすることが可能となる。
【0056】
レンズ101は、図4(a)に示すように、中心レンズ部101aと、中心レンズ部101aを取り囲む複数(図示例では、2つ)の輪帯状レンズ部101bとを有している。輪帯状レンズ部101bの数は特に限定するものではなく、3つ以上でもよい。レンズ101は、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有する集光レンズであり、中心レンズ部101aのレンズ面121が凸面となっている。要するに、レンズ101は、凸レンズに比べて厚みを薄くすることが可能な集光レンズである。
【0057】
各輪帯状レンズ部101bは、第二面120側に山部111bを有している。山部111bは、中心レンズ部101a側の側面からなる立ち上がり面(非レンズ面)122と、中心レンズ部101a側とは反対側の側面からなるレンズ面121とを有している。したがって、レンズ101の第二面120は、各輪帯状レンズ部101bそれぞれにおけるレンズ面121を有している。また、レンズ101の第二面120は、中心レンズ部101aにおけるレンズ面121も有している。
【0058】
ところで、一般的な非球面レンズにおいて、レンズ面を非球面の式で表すと、(4)式のようになる。ただし、(4)式では、光軸に直交する一つの平面をXY平面として、当該XY平面と光軸との交点を原点とし、当該XY平面内での原点からの距離をr、光軸方向におけるXY平面からの距離をz、コーニック定数をk、レンズ面と光軸との交点の曲率をc、と定義してあり、a2〜amは補正係数である。
【0059】
【数4】
(4)式では、第1項が回転二次曲面を表し、k<−1の場合にレンズ面が双曲面となる。したがって、(4)式を利用すれば、回転軸が第一面110の法線に対して角度θだけ傾いた双曲面125を設計することができ、このような双曲面125の一部をレンズ面121とすることにより、角度δで入射する赤外線を焦点位置Fに無収差で集光させることが可能となる。
【0060】
また、レンズ101の第一面110の面積をSとした場合、上述のように回転軸が第一面110の法線に対して角度θだけ傾いた双曲面125の一部をレンズ面121とするレンズ101では、検知面210から入射する赤外線の入射パワーをPWとすると、入射パワーPWは、下記(5)式で表される。ただし、(5)式のKは、比例定数である。
【0061】
【数5】
したがって、レンズ101の第一面110の面積Sが一定の場合には、角度θの大きなレンズ101ほど赤外線の入射パワーが小さくなる。そこで、多分割レンズ1は、角度θが大きいレンズ101ほど、レンズ101の第一面110の面積Sが大きくなるように設定するのが好ましい。この場合には、多分割レンズ1の中心から離れたレンズ101ほど第一面110の面積Sが大きくなり、多分割レンズ1の中心から離れたレンズ101ほど第二面120の面積が大きくなる。
【0062】
多分割レンズ1は、レンズ材料として赤外線を透過する樹脂であるポリエチレンを採用している。しかし、多分割レンズ1は、各レンズ101それぞれをフレネルレンズとしたことにより、各レンズ101の第二面120のレンズ面積の増大を図りながらも最大最小肉厚差Δt(図4(b)参照)を小さくすることができる。しかして、多分割レンズ1は、第一面110の法線に斜交する方向(第一面110に垂直でない方向)から入射する赤外線の光路長を短くすることができて透過率を向上させることができる。
【0063】
なお、赤外線を透過する材料として、シリコンやゲルマニウムなどがあるが、これらの結晶材料から複雑な形状の多分割レンズ1を量産性良く製作することは難しい。一方、ポリエチレンは赤外線を透過する材料であり、射出成形によって金型の複雑な形状を転写させることができるので、多分割レンズ1を量産性良く製作することが可能となる。
【0064】
しかしながら、レンズ面121が双曲面125の一部により構成され、双曲面125の回転軸が第一面110の法線に対して斜交している場合には、各レンズ面121が、第一面110の法線に対して回転対称ではない。このため、多分割レンズ1や当該多分割レンズ1用の金型を旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0065】
これに対し、本実施形態における多分割レンズ1の各レンズ101は、例えば、図4および図5に示すように、レンズ101の各レンズ面121それぞれが、楕円錐130の側面の一部からなり、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐130の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐130の中心軸とが、非平行である(つまり、傾いている)。ここにおいて、各楕円錐130は、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置している。また、図4および図5に示した構成の多分割レンズ1のレンズ101では、第一面110が平面なので、楕円錐130の中心軸は、第一面110上の各点の各々における法線に対して斜交する。また、第一面110上の点と、その点における法線がレンズ面121に交差する交点とを結ぶ方向を、レンズ厚さ方向と規定した場合、第一面110が平面であれば、第一面110上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。したがって、図4(a),(b)の各々においては、上下方向が、レンズ厚さ方向となる。よって、レンズ101は、各レンズ面121それぞれが、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成されたものとすることが好ましい。なお、第一面110の法線を含む断面形状において、第一面110に平行な面と各レンズ面121とのなす角度は鈍角であり、第一面110に平行な面と各立ち上がり面122とのなす角度は略直角である。
【0066】
以下、図4および図5に示すように、各レンズ面121が上述の楕円錐130の側面の一部により構成されたレンズ101について説明する。
【0067】
本願発明者らは、多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光(赤外線)を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置を提供するという課題を解決するために、次のように考えた。すなわち、まず、第二面120を、回転軸(主軸)が第一面110の法線に対して斜交する複数の双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)125それぞれの一部により構成した基準構造に関して、第一面110の法線を含む断面形状において、複数の双曲面125それぞれの上記一部を直線で近似することを考えた。
【0068】
ここで、双曲面125は、当該双曲面125の回転軸に直交する断面上の各点における接線の集合が円錐となる。したがって、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐の側面の一部により近似することができる。
【0069】
ところで、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、b,cを係数として、円錐の方程式は下記の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
【0070】
【数6】
この円錐をxy平面に平行な2つの面で切り取った円錐台では、上述の基準構造における各双曲面125それぞれの上記一部を近似することはできない。
【0071】
一方、双曲面125は、当該双曲面125の回転軸に垂直でない断面上の各点における接線140の集合が楕円錐となる。ここで、本願発明者らは、上述の図4の構造における双曲面125を、双曲面125の主軸に斜交する平面と双曲面125との交線上の各点において、双曲面125と接する楕円錐130で近似できる点に着目した。そして、本願発明者らは、各レンズ面121それぞれを、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成することを考えた。
【0072】
図4および図5に示す多分割レンズ1のレンズ101において、それぞれ楕円錐130の一部により構成されるレンズ面121に着目すれば、楕円錐130が、その楕円錐130に内接する双曲面125をもち、楕円錐130と双曲面125との交線上の各点においては両者の接線の傾きが一致するので、楕円錐130と双曲面125との交線上の各点を通る光線は、双曲面125の回転軸上の一点に集光される。このレンズ101では、複数のレンズ面121のうちの少なくとも1つのレンズ面121を、楕円錐130と双曲面125の交線を含むように楕円錐130の一部を切り取った形状とすることによって、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。ここにおいて、レンズ101は、山部111bの高さが低いほど、この山部111bを通る光線を一点に集光しやすくなるので、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が、山部111bと交わることが望ましい。
【0073】
各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔は、レンズ101において集光対象とする電磁波の波長以上の値に設定する必要がある。例えば、波長10μmの赤外線を集光対象とする場合には、各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔を10μm以上とする必要がある。一方、レンズ101では、各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔が大きくなると、軸外収差が大きくなるという課題、第一面110側からレンズ模様が視認可能となるという課題が生じてしまうことが考えられる。そこで、レンズ101は、軸外収差の許容値(目標値)を例えば焦点Fに配置する赤外線受光素子3の大きさである0.6×0.6mm以下とする場合、山部111の最大高さを150μm以下とすることが好ましい。また、レンズ101は、第一面110から30cmだけ離れたところから意識せずに眺めた場合に第二面120側のレンズ模様を視認できないことを要求されるような場合、隣り合う山部111b間の間隔を0.3mm以下とすることが好ましい。一方、隣り合う山部111b間の間隔を小さくするほど山部111bの数が増えるので、隣り合う山部111b間の間隔は、例えば0.1〜0.3mmの範囲で設定することが、より好ましい。
【0074】
本実施形態におけるレンズ101では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面110に平行で)且つ輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図4(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0075】
一般の楕円錐の方程式は、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系において、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、下記の(7)式の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
【0076】
【数7】
以下では、説明の便宜上、図4のレンズ101において、3つの楕円錐130にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中央のレンズ面121に対応するものを楕円錐1300、中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐1302とする。要するに、中央のレンズ面121に対応する楕円錐130を除いた楕円錐130のうち、中央のレンズ面121に近い側から順に数えてm(m≧1)番目の第m輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐130mとする。また、ここでは、各楕円錐1300,1301,1302それぞれの頂点P,P,Pを頂点P0,P1,P2とし、各楕円錐1300,1301,1302それぞれの中心軸をCA0,CA1,CA2とする。要するに、ここでは、第m輪帯となるレンズ面121に対応する楕円錐130mの頂点をPmとし、その楕円錐130mの中心軸をCAmとする。そして、各楕円錐1300,1301,1302それぞれについて、頂点P0,P1,P2を原点として、中心軸CA0,CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐1300,1301,1302の式は、各直交座標系において、上述の(7)式で表すことができる。なお、図4では、楕円錐1300,1301,1302に内接する双曲面125,125,125をそれぞれ双曲面1250,1251,1252としてある。
【0077】
フレネルレンズであるレンズ101の一例として、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる6つのレンズ面121を備えたものを例示する。このレンズ101において、6つの楕円錐130のうち中央のレンズ面121に対応するものを楕円錐1300、第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、各山部111b以外の部分からなるベース部分の厚みtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(7)式における係数a,b,cが表1に示す値となる。ただし、表1に示した係数a,b,cは、レンズ101の第一面110に平行な像面Iから第一面110までの距離を5.5mmとし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0078】
【表1】
また、第一面110上の各点の各々における法線に対して、その法線が交わる第二面120のレンズ面121の中心軸は傾いている。以下では、説明の便宜上、図4のレンズ101において、第一面110の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線と第二面120との交点をA1’,A2’、B1’,B2’,C1’,C2’とし、第一面110の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線をA1−A1’,A2−A2’,B1−B1’,B2−B2’,C1−C1’,C2−C2’と称する。ここにおいて、中央のレンズ面121に交差する法線A1−A1’,A2−A2’と楕円錐1300の中心軸CA0とのなす角度をθ0、中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に交差する法線B1−B1’,B2−B2’と楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に交差する法線C1−C1’,C2−C2’と楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、第3輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、第4輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、第5輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表2に示す値となる。
【0079】
【表2】
表2から、レンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0080】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図11に示す。この図11には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。
【0081】
図4および図5に示したレンズ101では、第一面110の法線を含む断面形状において、各レンズ面121が直線であるので、図23に示すようにバイト430を工作物(金型を形成するための基材)440に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことにより、レンズ面121に応じた曲面の形成が可能となる。したがって、本実施形態では、多分割レンズ1用の金型の製作時においてバイト430による工作物の加工時間を短縮することが可能となる。なお、金型の材料は特に限定するものではないが、例えば、リン青銅などを採用することができる。
【0082】
本実施形態の光学式検知装置Aは、上述のように複数枚のレンズ101が組み合わされ各レンズ101の焦点位置Fが同じである多分割レンズ1と、焦点位置Fに配置された赤外線受光素子3を有する赤外線センサ2とを備えている。そして、本実施形態の光学式検知装置Aは、多分割レンズ1の各レンズ101について、図4に例示したように、第一面110が平面であり、第二面120が複数のレンズ面121を有するものであり、各レンズ面121それぞれが、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面が位置し且つ中心軸が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成されている。ここで、本実施形態におけるレンズ101は、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐130の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐130の中心軸とが、非平行である。しかして、本実施形態におけるレンズ101では、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。しかして、本実施形態の光学式検知装置Aは、多分割レンズ1の各レンズ101の第二面120側に形成されたレンズ模様を各レンズ101の第一面110側から視認しづらくすることで多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0083】
上述のように、多分割レンズ1は、レンズ101の複数のレンズ面121の全てを楕円錐130の一部により構成することが可能である。しかしながら、レンズ101の複数のレンズ面121の全てを楕円錐130の一部により構成した場合には、中心レンズ部101aのレンズ面121が楕円錐130の頂点Pを含んでしまい、この頂点Pにおいて曲面が不連続となるため、頂点Pを通る赤外線が焦点位置Fに集光されない。
【0084】
そこで、多分割レンズ1の各レンズ101それぞれにおける複数のレンズ面121のうち中央のレンズ面121、言い換えれば、中心レンズ部101aのレンズ面121は、例えば、対称軸が第一面110の法線に対して斜交し且つ曲率が連続的に変化する非球面の一部とするのが好ましく、図12および図13に示すように、回転軸OP1が第一面110の法線に対して斜交する双曲面125の一部とするのが、より好ましい。これにより、多分割レンズ1は、中央レンズ部101aのレンズ面121が楕円錐130の側面の一部により構成されている場合に比べて、集光性能を向上させることが可能となる。要するに、多分割レンズ1の各レンズ101は、複数のレンズ面121のうち中央のレンズ面121を、曲率が連続的に変化する非球面の一部とし、第一面110上の各点の法線のうち非球面の一部からなる中央のレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央のレンズ面121に対応する非球面の対称軸(非球面が双曲面125の場合には双曲面125の回転軸OP1)とが、非平行である(つまり、傾いている)ことが好ましく、これにより、集光性能を向上させることが可能となる。ここにおいて、多分割レンズ1の各レンズ101は、この非球面にとっての対称軸と、中央のレンズ面121を第一面110の中心軸に平行な方向へ投影したときの第一面110での投影領域における各点の法線とが、非平行であればよい。ここで、中心レンズ部101aのレンズ面121を双曲面125の一部により構成する場合には、設計が容易であり、かつ加工しやすいという利点があり、より望ましい。なお、中心レンズ部101aのレンズ面121が双曲面125の一部である場合、多分割レンズ1用の金型の製作にあたっては、バイト430(図21、図22参照)のすくい面をレンズ面121に応じた曲面に対して垂直となるように傾けながら往復運動させることにより加工できる。この場合は、バイト430のノーズ半径が、双曲面125の曲率半径よりも小さければ加工できるので、中央レンズ部101aのレンズ面121が双曲面125の一部であっても加工時間を短縮することが可能となる。
【0085】
図12および図13に示した例のレンズ101は、図4および図5に示した例のレンズ101と同様に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が、山部111bと交わることが望ましい。図12および図13のレンズ101では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面110に平行で)且つ輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図12(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0086】
図12のレンズ101において、中心レンズ部101aのレンズ面121となる双曲面125は、焦点Fを原点、双曲面125の回転軸OP1をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系を定義すると、下記の(8)式で表される。
【0087】
【数8】
ただし、(8)式のa,b,cは、レンズ材料の屈折率をn、中央レンズ部101aのバックフォーカスをfとして、(9)式、(10)式、(11)式でそれぞれ与えられる。
【0088】
【数9】
上述の(8)式は、z=g(x,y)(gは任意の関数)という陽関数の式に変形すると、上述の(4)式の第一項と一致する。すなわち、(8)式は、(4)式の場合と同じく、r2=x2+y2として変数置換して、zとrとの関係をまとめ直すと、上述した(4)式のうち、r2の項((4)式の右辺の第一項)に相当する式に変形できる。よって、(4)式のr2の項と(8)式とが実質的に同じ関係を表していることは明らかである。
【0089】
また、各楕円錐1301,1302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(7)式で表すことができる。
【0090】
フレネルレンズであるレンズ101の一例として、双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121と、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる5つのレンズ面121とを備えたものを例示する。この一例のレンズ101において、5つの楕円錐130のうち第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、各山部111b以外の部分からなるベース部分の厚みtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(8)式または(7)式における係数a,b,cが表3に示す値となる。レンズ段差Δtについては、値が小さいほど、ポリエチレンの硬化時のひけの発生を抑制することが可能、すなわち、第一面110側が凹むのを抑制することが可能となり、その結果、ひけに起因したレンズ101の集光性能の低下を防止することが可能となり、しかも、第一面110側の外観が客観的にいびつに見えないので、種々検討した値のうちの一例として、0.05mmを挙げている。表3は、双曲面125について、(8)式におけるa,b,cの値を記載してあり、楕円錐1301〜1305について、(7)式におけるa,b,cの値を記載してある。ただし、表3に示した係数a,b,cは、レンズ101の第一面110に平行な像面Iから第一面110までの距離を5.5mmとし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0091】
【表3】
第一面110に対して入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させる場合、中心レンズ部101aの双曲面125の回転軸OP1と第一面110の法線とのなす角度は、スネルの法則により、27.5°とすればよい。すなわち、回転軸OP1は、第一面110の法線に対して27.5°だけ傾ければよい。また、第一面110上の各点の各々における法線に対して、その法線が交わる第二面120のレンズ面121の中心軸は傾いている。中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に交差する法線B1−B1’,B2−B2’と楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に交差する法線C1−C1’,C2−C2’と楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、第3輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、第4輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、第5輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表4に示す値となる。
【0092】
【表4】
表4から、多分割レンズ1のレンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0093】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図14に示す。この図14には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。図11と図14とを比較すれば、図12のレンズ101では、図4のレンズ101に比べて収差を小さくできることが分かる。
【0094】
多分割レンズ1の各レンズ101は、複数の輪帯状レンズ部101bのうちの少なくとも1つの輪帯状レンズ部101bのレンズ面121を、楕円錐130の側面の一部により構成することにより、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0095】
多分割レンズ1のレンズ101については、上述の図12および図13に示した例と略同じであって、図15に示すように、第一面110が第二面120側とは反対側に凸となる曲面であるものを用いることもできる。なお、図15では、第一面110が曲率半径の大きな球面の一部からなるが、球面の一部に限定するものではない。
【0096】
ところで、多分割レンズ1のレンズ101が図12および図13に示したレンズ101を備えた多分割レンズ1では、レンズ材料としてポリエチレンを採用した場合、第一面110が平面であるため、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、ひけや、うねりが発生し、外観が損なわれてしまう懸念がある。また、光学式検知装置Aをテレビやエアコンや防犯センサなどの機器に搭載する場合、多分割レンズ1は、機器の外観の一部をなすので、機器のデザイン性を損なわないために、第一面110を、機器の表面における第一面110の周辺部と略面一となる形状とすることが好ましい。
【0097】
そこで、レンズ材料としてポリエチレンを採用し射出成形により製作する場合、多分割レンズ1のレンズ101は、図15に示すように、第一面110を、曲率半径が大きな曲面(曲率が小さな曲面)とすることが好ましい。この場合、レンズ厚さ方向は、第一面110上の各点の各々における法線方向である。この多分割レンズ1では、第一面110を、第二面120側とは反対側に凸となる曲面とすることにより、うねりの方向を一方向に抑制することが可能となり、外観が損なわれるのを防止することが可能となる。なお、レンズ101は、第一面110を、非球面である双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121よりも曲率半径が大きく且つ双曲面125とは反対側に凸となるなだらかな曲面とすることが好ましい。
【0098】
本実施形態における多分割レンズ1では、軸外収差が許容値を超えない範囲(赤外線受光素子3の大きさ以下)で、第一面110の曲率を設計すれば、レンズ材料としてポリエチレンを採用して、軸外収差の発生を抑制しつつ、ひけや、うねりの発生を抑制することが可能となる。
【0099】
図15に示した例では、図12に示した例と同様に、中心レンズ部1aのレンズ面121が双曲面125の一部により構成されているが、図12の例と同様に双曲面125の回転軸OP1を27.5°だけ傾けた場合、45°の入射角で入射する光線に対して軸外収差が大きくなる。そこで、図15に示した例のように、第一面110が球面の一部からなる場合には、さらに、双曲面125の回転軸OP1を、この双曲面125に関して定義した直交座標系のxz面内で双曲面125の頂点Pxのまわりに回転して傾けることにより、軸外収差を小さくすることが可能となる。
【0100】
図15に示したレンズ101は、図12に示したレンズ101と同様に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が、山部111bと交わることが望ましい。図15のレンズ101では、輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図15(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0101】
図15のレンズ101において、中心レンズ部101aの双曲面125は、双曲面125の焦点を原点、回転軸OP1をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系権を定義すると、上述の(8)式で表される。また、各楕円錐1301,1302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(7)式で表すことができる。
【0102】
ここで、レンズ101の一例として、双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121と、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる5つのレンズ面121とを備えたものを例示する。この一例のレンズ101において、5つの楕円錐130のうち第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、第一面110を曲率半径が100mmの球面の一部とし、山部111b以外の部分からなるベース部分の最小高さtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(8)式または(7)式における係数a,b,cが表5に示す値となる。ここで、表5は、双曲面125について、(8)式におけるa,b,cの値を記載してあり、楕円錐1301〜1305について、(7)式におけるa,b,cの値を記載してある。ただし、表5に示した係数a,b,cは、レンズ101の像面Iから像面Iに平行で第一面110に接する平面までの距離を5.5mm、とし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0103】
【表5】
ここにおいて、レンズ101は、中心レンズ部101aのレンズ面121に対応する双曲面125に関して、図12に示したレンズ101の中心レンズ部101aの双曲面125の回転軸OP1を、上述のxz面内で双曲面125の頂点Pxのまわりに2.5°だけ回転して傾けることにより、軸外収差を小さくすることができる。また、第一面110上の各点における法線は、第一面110の曲率中心に向かっており、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸CA1,CA2とは傾いている。像面Iの法線と第1輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、像面Iと第2輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、像面Iの法線と第3輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、像面Iの法線と第4輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、像面Iの法線と第5輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表6に示す値となる。
【0104】
【表6】
表6から、多分割レンズ1のレンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0105】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図16に示す。この図16には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。図14と図16とを比較すれば、図16のレンズ101では、図14のレンズ101と同等の収差であることが分かる。
【0106】
上述の光学式検知装置Aを備えた機器300においては、例えば、図17や図18(a)に示すように、機器300の機器本体301における前面と多分割レンズ1における各レンズ101の第一面110とを略面一とすることにより、機器本体301の前方に検知エリア200(図18(a)参照)を設定することができるとともに、機器300の外観を損なうことなく光学式検知装置Aを配置することが可能となり、機器300の外観を高めることが可能となる。ここで、光学式検知装置Aを搭載する機器300においては、機器本体301のうち、人体を感知すべき側である前面が、一般的に、略平面状に形成されていることが多いので、そのような機器本体301のデザインに馴染むよう、多分割レンズ1における各レンズ101の第一面110を、機器本体301の前面と略面一としている。本実施形態の機器300においては、多分割レンズ1の各レンズ101の第二面120側に形成されたレンズ模様を各レンズ101の第一面110側から視認しづらくすることで多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置Aを備えているので、光学式検知装置Aの感度の低下を抑制し且つ低コスト化を図りながらも光学式検知装置Aを搭載する機器300全体の外観を高めることが可能となる。また、光学式検知装置Aを搭載する機器300が防犯センサの場合には、目視で、ひけやレンズ模様が視認できないようにすることが可能となり、不審者に防犯センサの検知エリアを悟られないようにすることが可能となる。これにより、機器300を見た人間が多分割レンズ1のレンズ模様に違和感を感じるのを抑制することが可能となるものと推考され、不審者などに悪戯されるのを避けることが可能となるものと推考される。
【0107】
図17に示した機器300は、薄型のテレビであり、例えば、電源がオンの状態で、人が光学式検知装置Aの検知エリア内から出た場合には休止状態にして省エネルギ化を図り、人が検知エリア内に戻った場合にすぐに画面に画像が表示される状態とすることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。ここで、機器300は、多分割レンズ1が水平方向に広い画角を有する、つまり、水平画角が大きくなるように多分割レンズ1を設計しておけば、斜め方向から画面を見ている人の動きも光学式検知装置Aにより検知できる。
【0108】
なお、光学式検知装置Aをテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイに搭載する場合には、検知エリアに関して大きな水平画角が要求される一方で垂直画角については水平画角ほど大きな画角を必要としない。これは、人がテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどを見る際には、椅子に座って画面を見ることが多いため、垂直方向の動きがほとんど生じないからである。したがって、テレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどに搭載する光学式検知装置Aでは、水平方向の人の小さな動きを検知するという観点から、図3(b)のような検知エリア200が形成されるものよりも、図10(b)のような検知エリア200が形成されるものが好ましい。
【0109】
また、光学式検知装置Aの検知エリア200が図3(b)のように設定されている場合に、人が検知エリア200を図3(b)の左右方向に沿って通過する際に、極性の異なる2つの検知ビーム220を通過し、赤外線受光素子3の2個の素子エレメント31の出力が相殺されることが考えられるので、図3(b)のような検知エリア200よりも、図6(b)や図10(b)や図9(b)や図18(c)のような検知エリア200が好ましい場合もある。図6(b)や図10(b)や図9(b)や図18(c)のような検知エリア200であれば、隣り合う検知ビーム220間の間隔が小さくなるとともに、図18(a)のように人Mが左右方向Eに移動する際に、極性の異なる2つの検知ビーム220を通過して赤外線受光素子3の2個の素子エレメント31の出力が相殺される可能性が小さくなる。
【0110】
また、図18に示した機器300は、コピー機であり、例えば、電源がオンの状態で、人Mが光学式検知装置Aの検知エリア200内から出た場合には休止状態にして省エネルギ化を図り、人Mが検知エリア200内に入った場合にすぐに休止状態を解除して操作可能な状態とすることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。ここで、機器300がコピー機に限らず、例えば、ファクシミリ(facsimile:FAX)、プリンター、複合機などの事務機器の場合には、同様に省エネルギ化を図ることが可能となる。また、機器300において、光学式検知装置Aの多分割レンズ1の各レンズ101を斜め下向きまたは斜め上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置した場合には、機器300から離れた所を通過する人Mの動きが検出されるのを防止することが可能となり、より一層の省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0111】
また、光学式検知装置Aを搭載する機器は、例えば、自販機、券売機、現金自動預け払い機(Automatic Tellers Machine:ATM)、現金自動支払機(CashDispenser:CD)などでもよく、機器に近づいてきた人が検知エリア200内に入った時に機器の休止状態を解除し、機器の前に人が立った時にはすぐに操作が可能な状態にすることが可能となる。これらの機器に光学式検知装置Aを搭載する場合には、多分割レンズ1の各レンズ101を下向きまたは上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置すると、機器から離れた所を通過する人の動きは検出されず、省エネルギ化を図ることが可能となる。また、これらの機器において、光学式検知装置Aの多分割レンズ1の各レンズ101を斜め下向きまたは斜め上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置した場合には、機器から離れた所を通過する人の動きが検出されるのを防止することが可能となり、より一層の省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0112】
また、光学式検知装置Aを搭載する機器は、例えば、壁に取り付ける照明器具やエアコンなどでもよい。このような機器も場合も垂直方向の人の動きの検知は重要でないので、図3(b)のような検知エリア200が形成されるものよりも、図10(b)のような検知エリア200が形成されるものが好ましい。
【0113】
また、光学式検知装置Aが搭載されている機器が壁付けの照明器具の場合には、斜め下向きの検知ビーム220が形成されるようにするのがよい。このような場合には、人が照明器具に近付いた時に点灯し、人がいない時には消灯することによって省エネルギ化を図ることができる。
【0114】
また、光学式検知装置Aをエアコンなどの空調制御用の機器に搭載する場合、多分割レンズ1は斜め下向きに検知ビーム220が形成されるようにするのがよい。これは、エアコンなどは部屋の天井近くの壁面に設置されるため、検知ビーム220を斜め下方に形成することにより、部屋の中にいる人の動きを検出することができるからである。また、光学式検知装置Aをエアコンなどの空調制御用の機器に搭載した場合には、人の動きのある箇所を集中的に冷やしたり、温めたりすることで効率的な運転が可能となる。
【0115】
また、光学式検知装置Aを、部屋の入り口付近の壁に取り付けられて照明器具を制御するコントローラなどの機器に搭載した場合には、人が部屋に入った時にすぐに照明器具を点灯させ、人がいない時には照明器具を消灯させることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0116】
なお、赤外線受光素子3は、焦電型赤外線検知素子に限らず、例えば、フォトダイオードなどの受光素子でもよい。
【符号の説明】
【0117】
A 光学式検知装置
C 回転軸
CA1,CA2,CA3 中心軸
F 焦点位置
H 法線
OP1 回転軸(対称軸)
P 頂点
P0,P1,P2 頂点
A1−A1’ 法線
A2−A2’ 法線
B1−B1’ 法線
B2−B2’ 法線
C1−C1’ 法線
C2−C2’ 法線
1 多分割レンズ
2 赤外線センサ
3 赤外線受光素子
101 レンズ
110 第一面
120 第二面
121 レンズ面
125 双曲面
130 楕円錐
1300,1301,1302 楕円錐
300 機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検知装置およびそれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学式検知装置として、所定の検知エリア内で人体から発せられる赤外線の変化量を検出し照明器具などの機器を制御する用途に使用されるものが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1,2に記載された光学式検知装置は、焦点位置を略同じとする複数枚のレンズが一平面上で組み合わされた多分割レンズと、上記焦点位置に配置された受光素子である赤外線検知素子とを備えている。なお、特許文献1,2には、赤外線検知素子として4個の受光部(素子エレメント)が並んだものを用い、多分割レンズとして15個のレンズが5個ずつ3列に並んだものを用いた場合、4×15個の検知ビームが生じることが記載されている。
【0004】
多分割レンズの各レンズは、第一面が平面、第二面が第一面の法線に対して斜交する主軸をもつ双曲面である。具体的に説明すれば、図19に示すように、レンズ101は、第二面である双曲面120の回転軸Cを、第一面である平面110の法線Hと角度θをなすように傾けている。
【0005】
ここで、レンズ101の頂点Oと赤外線検知素子(図示せず)の中心との距離をL、レンズ101の焦点距離をfとすれば、レンズの頂点Oを通って焦点Fにいたる入射光Dが法線Hに対してなす角度δは、
【0006】
【数1】
となる。また、レンズ101の屈折率をnとすれば、
【0007】
【数2】
であるから、角度θは、
【0008】
【数3】
で決まる。
【0009】
レンズ101は、集光光学系として設けられたものであり、頂点Oを通って焦点Fにいたる入射光Dが、法線Hに対して角度δをなすとともに、無収差で焦点Fに集光される。また、このレンズ101では、角度θを大きくすれば、焦点Fに無収差で集光される入射光Dが法線Hとなす角度δも大きくなる。
【0010】
ところで、特許文献1,2には、多分割レンズの材料としてポリエチレンを採用し、多分割レンズを射出成形によって製作することが記載されている。
【0011】
しかしながら、ポリエチレンにより形成されたレンズ101では、肉厚が1mmでも、レンズ101の平面110に垂直入射する波長10μm付近の赤外線の透過率が40%であり、肉厚が厚くなるほど透過率が低下する。そして、レンズ101の平面110に対して垂直でない方向から入射する入射光Dは、レンズ101の最大肉厚よりも光路長が長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。また、ポリエチレンにより形成されたレンズ101では、肉厚の変化が大きい場合、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、レンズ101の表面に、ひけ(sink mark)が発生し、レンズ101の外観が損なわれてしまう。
【0012】
そこで、特許文献1,2には、透過率の低下と、ひけの発生とを抑制するために、レンズ101の最小肉厚を、射出成形時のポリエチレンの流動性の点で許される最小限の値の0.3mmとし、レンズ面積(有効レンズ面積)の確保に影響を与えるレンズ101の最大最小肉厚差を、光学式検知装置の用途(流し元灯用)に応じた所定のレンズ面積の確保に必要な最小限の値の0.5mmとして、レンズ101の最大肉厚を1mm以下に抑えることが記載されている。
【0013】
また、特許文献3には、図20に示すように、集光レンズ401をフレネルレンズとし、軸外収差の発生を抑制するために、第二面の各双曲面421,422,423が共有する回転軸Cを、第一面である平面410に対して斜交させたものが提案されている。ここにおいて、各双曲面421,422,423それぞれがレンズ面を構成している。
【0014】
特許文献3には、図20のフレネルレンズ401では、各双曲面421,422,423が共有する回転軸Cと平面410とのなす角度に応じて、焦点に無収差で集光する平行光線と平面410の法線Nとの間に角度を持たせることができることが記載されている。したがって、図20のフレネルレンズ401では、軸外収差の発生を抑制することができ、平面410の法線Nに斜交する方向からの光線を効率よく集光することが可能となる。
【0015】
しかしながら、出射面を構成する各双曲面421,422,423の回転軸Cが入射面である平面410の法線Nに対して斜交したフレネルレンズ401は、各双曲面421,422,423が、平面410の法線Nに対して回転対称ではない。このため、フレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型は、旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0016】
そこで、フレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型の製作時には、多軸制御の加工機を用い、図21に示すようにノーズ半径(コーナ半径ともいう)が数μmの鋭利なバイト(工具)430の刃先のみを工作物440に点接触させて微小ピッチで切削加工を行うことで各双曲面421,422,423あるいは各曲面を形成する必要がある。工作物440は、フレネルレンズ401を直接形成するための基材や、金型を形成するための基材である。このため、上述のフレネルレンズ401やフレネルレンズ401用の金型の製作における加工時間が長くなり、フレネルレンズ401のコストアップの要因となってしまう。
【0017】
これに対して、フレネルレンズの入射面である平面の法線を含む断面形状において各レンズ面の断面形状が直線であれば、図22に示すようにバイト430を工作物440に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことにより、レンズ面あるいはレンズ面に応じた曲面の形成が可能であるため、加工時間を大幅に短縮することが可能となる。ここで、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐台の側面により近似することで、各レンズ面の断面形状を直線とできることが知られている(特許文献4)。
【0018】
なお、特許文献3に開示されたフレネルレンズ401および特許文献4に開示されたフレネルレンズは、対象とする光線が赤外線であり、特許文献3,4には、レンズ材料として、ポリエチレンを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3090336号公報
【特許文献2】特許第3090337号公報
【特許文献3】特公平7−36041号公報
【特許文献4】米国特許第4787722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、本願発明者らは、光学式検知装置を搭載する機器において多分割レンズが機器の外観の一部をなすので、機器のデザイン性を損なわないために、多分割レンズの各レンズにおいて赤外線が入射する側の面の形状を、平面または曲率が小さな曲面とすることを考えた。ここで、光学式検知装置を搭載する機器が防犯センサの場合には、不審者に光学式検知装置の存在や防犯センサの検知エリアを悟られないようにすることが可能となると考えた。さらに、本願発明者らは、光学式検知装置を搭載する機器として、例えばテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどの機器のように人と光学式検知装置との距離が比較的短くなる機器や、防犯センサなどの機器を考えた場合、多分割レンズの外観が重要となり、比較的近く(例えば、30cm程度)から覗き込んでも目視で、レンズ模様が視認できないようにすることが好ましいと考えた。そこで、上述の光学式検知装置においては、多分割レンズの各レンズ101の最大最小肉厚差を例えば上述した0.5mmなる値よりもさらに小さくすることが考えられるが、レンズ模様が視認されるのを難しくできる一方で、所定のレンズ面積を確保できなくなり、結果的に感度が低下してしまう。
【0021】
そのため、第二面側に形成されたレンズ模様を視認し難くすることが可能なレンズとして、フレネルレンズを採用する選択肢が出てくるのである。しかしながら、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいて、各レンズ面を円錐台の側面により近似したものでは、外界から第一面へ斜め入射する入射光(例えば、赤外線)を利用する場合に軸外収差が発生してしまう。
【0022】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ低コスト化が可能な光学式検知装置およびそれを用いた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の光学式検知装置は、複数枚のレンズが組み合わされ前記各レンズの焦点位置が同じである多分割レンズと、前記焦点位置に配置された赤外線受光素子を有する赤外線センサとを備え、前記多分割レンズの前記各レンズは、第一面とは反対側の第二面が複数のレンズ面を有するフレネルレンズであり、少なくとも1つの前記レンズ面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であることを特徴とする。
【0024】
この光学式検知装置において、前記複数の前記レンズ面のうち少なくとも2つの前記レンズ面が、それぞれ前記中心軸の異なる前記楕円錐の前記側面の前記一部からなり、外側に位置する前記レンズ面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことが好ましい。
【0025】
この光学式検知装置において、前記各レンズそれぞれにおける前記複数の前記レンズ面のうち中央の前記レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる中央の前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央の前記レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることが好ましい。
【0026】
この光学式検知装置において、前記非球面は、双曲面であることが好ましい。
【0027】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズは、前記多分割レンズの中心から離れた前記レンズほど前記第二面のレンズ面積を大きくしてあることが好ましい。
【0028】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズは、前記各レンズの最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることが好ましい。
【0029】
この光学式検知装置において、前記赤外線受光素子は、長方形状に形成された複数個の素子エレメントが、前記素子エレメントの短手方向に並んでいることが好ましい。
【0030】
この光学式検知装置において、前記赤外線受光素子は、正方形状に形成された4個の素子エレメントが2×2のマトリクス状に配列されてなり、前記4個の前記素子エレメントのうち対角位置にある2個の前記素子エレメントそれぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置されてなることが好ましい。
【0031】
この光学式検知装置において、前記多分割レンズの前記各レンズと前記赤外線検出素子とによって形成される複数の検知ビームの配置が千鳥状の配置であることが好ましい。
【0032】
また、光学式検知装置において、前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであることが好ましい。
【0033】
また、光学式検知装置において、前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであり、且つ、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることが好ましい。
【0034】
本発明の機器は、前記光学式検知装置を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の光学式検知装置においては、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ低コスト化が可能となる。
【0036】
本発明の機器においては、多分割レンズの各レンズの第二面側に形成されたレンズ模様を各レンズの第一面側から視認しづらくすることで多分割レンズの外観を高めながらも、外界から第一面へ斜め入射する入射光を利用するレンズの軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置を備えているので、光学式検知装置の感度の低下を抑制し且つ低コスト化を図りながらも光学式検知装置を搭載する機器全体の外観を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は実施形態の光学式検知装置の概略断面図、(b)は光学式検知装置の要部概略下面図、(c)は(b)の拡大図である。
【図2】実施形態の光学式検知装置の概略構成図である。
【図3】実施形態の光学式検知装置の検知エリアの説明図である。
【図4】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図5】実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの1つのレンズの平面図である。
【図6】実施形態の光学式検知装置における赤外線受光素子と検知ビームとの関係説明図である。
【図7】実施形態の光学式検知装置の検知エリアの説明図である。
【図8】実施形態の光学式検知装置の他の構成例の要部概略下面図である。
【図9】実施形態の光学式検知装置の他の構成例の検知エリアの説明図である。
【図10】実施形態の光学式検知装置の別の構成例の検知エリアの説明図である。
【図11】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおけるレンズのスポットダイヤグラムである。
【図12】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの他の構成例の要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図13】実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの他の構成例の要部平面図である。
【図14】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおける他の構成例のレンズのスポットダイヤグラムである。
【図15】(a)は実施形態の光学式検知装置における多分割レンズの別の構成例の要部断面図、(b)は赤外線の進行経路の説明図である。
【図16】実施形態の光学式検知装置の多分割レンズにおける別の構成例のレンズのスポットダイヤグラムである。
【図17】(a)は実施形態の光学式検知装置を備えた機器の概略正面図、(b)は概略上面図、(c)は概略側面図である。
【図18】(a)は実施形態の光学式検知装置を備えた他の機器の概略斜視図、(b)は多分割レンズの概略説明図、(c)は検知エリアの説明図である。
【図19】従来例の光学式検知装置における多分割レンズの1つのレンズの説明図である。
【図20】(a)は他の従来例のフレネルレンズの下面図、(b)は他の従来例のフレネルレンズの断面図である。
【図21】フレネルレンズの第二面側の各レンズ面が双曲面の場合のフレネルレンズの製作方法の説明図である。
【図22】フレネルレンズの第二面側の各レンズ面の断面形状が直線の場合のフレネルレンズの製作方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、光学式検知装置について、まず、図1〜図6に基づいて説明する。
【0039】
光学式検知装置Aは、複数枚のレンズ101が組み合わされ各レンズ101の焦点位置Fが同じである多分割レンズ1と、焦点位置(焦点)Fに配置された赤外線受光素子3を有する赤外線センサ2とを備えている。要するに、多分割レンズ1は、赤外線を集光する集光光学系を構成している。なお、複数枚のレンズ101は、一面上で組み合わされている。
【0040】
この光学式検知装置Aは、赤外線を放射する物体(例えば、人など)の動きを検知して検知信号を出力するものである。ここで、光学式検知装置Aは、赤外線受光素子3として、焦電型赤外線検知素子を用いている。
【0041】
赤外線センサ2は、赤外線受光素子3の他に、赤外線受光素子3の出力信号を増幅する増幅部4と、増幅部4で増幅された電圧信号と閾値とを比較し電圧信号が閾値を超えたか否かを判断する判断部5と、判断部5において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに出力を出す出力部6とを備えている。なお、光学式検知装置Aの検知対象の物体が人である場合、増幅部4としては、例えば、人の動きに近い周波数成分(1Hzを中心とする成分)の電圧信号を増幅するように構成することが好ましく、例えば、特許文献1,2に記載された増幅部と同様の周波数特性を有するものを用いることができる。また、増幅部4は、例えば、赤外線受光素子3から出力される出力信号である焦電電流を電圧信号に変換する電流電圧変換回路と、この電流電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧信号を増幅する電圧増幅回路とで構成することができる。また、判断部5は、コンパレータなどを用いた比較回路で構成することができる。また、出力部6は、例えば、判断部5において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに検知信号を出力として出す出力回路により構成することができる。
【0042】
また、赤外線センサ2は、赤外線受光素子3、増幅部4、判断部5および出力部6などを収納したパッケージ7を備えており、プリント配線板からなる回路基板8に実装して用いることができる。ここにおいて、パッケージ7内には、赤外線受光素子3などを実装した素子保持部材(例えば、MID基板など)9が収納されている。そして、素子保持部材9には、増幅部4と判断部5と出力部6とを1チップ化したIC素子(図示せず)も実装されている。
【0043】
パッケージ7は、円盤状のステム71と、このステム71に接合される有底円筒状のキャップ72と、このキャップ72の底部に形成された開口部72aを閉塞するように配置され所望の赤外線を透過する機能を有する赤外線透過部材73とで構成されている。赤外線透過部材73としては、例えば、シリコン基板やゲルマニウム基板などを用いることが好ましい。なお、パッケージ7は、ステム71とキャップ72とが両方とも金属材料により形成されており、赤外線透過部材73とキャップ72とを導電性材料により接合してある。
【0044】
光学式検知装置Aは、多分割レンズ1を有するカバー部材10が、パッケージ7を覆うように回路基板8の一表面側に配置されている。なお、カバー部材10とパッケージ7との間の空間は、空気層であり、断熱層として機能する。
【0045】
赤外線受光素子3を構成する焦電型赤外線検知素子としては、例えば、図6(b)に示すように、1枚の焦電体基板30に4個の素子エレメント(受光部)31が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。図6(b)に示した赤外線受光素子3は、1枚の焦電体基板30に4個の素子エレメント31が2×2のアレイ状に配列されている。図6(b)に示した例では、各素子エレメント31の平面視形状が正方形状であり、焦電体基板30の中央部において焦電体基板30の外周線よりも内側の仮想正方形の4つの角それぞれに素子エレメント31の中心が位置するように配置されている。
【0046】
赤外線受光素子3の各素子エレメント31は、一対の電極(図示せず)の間に焦電体基板30の一部が介在するコンデンサであり、図6(b)には、各素子エレメント31の一対の電極のうち多分割レンズ1側に位置する電極の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。ここにおいて、赤外線受光素子3は、4個の素子エレメント31のうち、仮想正方形の一方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント31同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント31同士が並列接続されている。要するに、赤外線受光素子3は、図6(b)の右側に示す直交座標系のように、x軸、y軸およびz軸それぞれの正方向を規定すると、x軸方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント31同士が逆並列に接続され、かつ、y軸方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント31同士が逆並列に接続されている。
【0047】
光学式検知装置Aの検知エリア200(図3参照)は、赤外線受光素子3と多分割レンズ1とで決まる。したがって、光学式検知装置Aの検知エリア200には、各レンズ101ごとに、素子エレメント31の数(図6(b)の例では、4個)の検知ビーム220が設定される。検知ビーム220は、赤外線受光素子3への赤外線の入射量がピーク範囲になる小範囲であって、検知対象の物体からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。
【0048】
図1(a)に示した光学式検知装置Aでは、多分割レンズ1が図1(b)に示すように2×8枚のレンズ101により構成されているので、図3に示すように検知エリア200内に16×4個の検知ビーム220が設定される。なお、多分割レンズ1におけるレンズ101の枚数は特に限定するものではない。
【0049】
図3は、床面の上方に光学式検知装置Aを配置した場合の検知エリア200を示しており、図3(b)では、検知エリア200のうち床面上に設定される検知面210における各検知ビーム220それぞれに、その検知ビーム220が対応する素子エレメント31の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。要するに、検知ビーム220には、素子エレメント31に1対1で対応した極性がある。
【0050】
検知面210における検知ビーム220の形状は、その検知ビーム220に対応する素子エレメント31と相似形である。
【0051】
ところで、多分割レンズ1は、各レンズ101の最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることが好ましい。ここで、光学式検知装置Aは、各レンズ101の最大肉厚tを同じ肉厚とすることにより、図6(a)に示すように、赤外線検知素子3の受光面(素子エレメント31における多分割レンズ1側の表面)を含む平面から各レンズ101までの距離dが一定距離となるため、検知面210上での検知ビーム220の幅Wを同じにすることが可能となる。したがって、検知面210上で検知ビーム220の大きさが一定となることにより、検知エリア200内の各所における検出能力を同等にすることができる。なお、レンズ101同士の最大肉厚tの差が100μm程度であれば、略同じ肉厚とみなすことができる。
【0052】
多分割レンズ1は、光学式検知装置Aにおいて水平画角を大きくするために、図1(c)におけるx軸方向に沿って並べるレンズ101の数をy軸方向に沿って並べるレンズ101の数よりも多くしてある。ここにおいて、図1(c)に示した例では、x軸方向に沿って並べるレンズ101の数を8、y軸方向に沿って並べるレンズ101の数を2としてある。また、人体検知装置Aは、図1(c)におけるx軸、y軸およびz軸それぞれの正方向と、図6(b)におけるx軸、y軸およびz軸それぞれの正方向とが揃うように、多分割レンズ1と赤外線受光素子3との相対的な位置関係を規定してある。要するに、赤外線受光素子3は、正方形状に形成された4個の素子エレメント31が平面視において2×2のマトリクス状に配列されており、上述の仮想正方形の1辺に沿った方向を左右方向として配置してある。
【0053】
ただし、赤外線受光素子3の配置は、これに限らず、例えば、2×2のマトリクス状に配列された4個の素子エレメント31のうち対角位置にある2個の素子エレメント31それぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置してもよい。つまり、赤外線受光素子3は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置してもよい。この場合、図6(b)に示した赤外線受光素子3をxy平面内で45°だけ回転させたことになるので、人体検知装置Aの検知エリア200は、図7(a),(b)に示すように設定されることとなる。したがって、この場合には、隣り合うレンズ101それぞれに対して設定される4個ずつの検知ビーム220のうち互いに異なるレンズ101により形成されて隣り合う2個の検知ビーム220間の間隔を小さくすることが可能となり、物体の、より小さな動きを検知することが可能となる。また、この場合には、人が極性の異なる2つの検知ビーム220を通過して素子エレメント31同士の出力が相殺される可能性が低くなる。また、上述のように図6(b)に示した赤外線受光素子3をxy平面内で45°だけ回転させ、さらに、多分割レンズ1のレンズ101を図8に示すように千鳥状の配置とすれば、人体検知装置Aの検知エリア200は、図9(a),(b)に示すように設定され、複数の検知ビーム220の配置が千鳥状の配置となる。これにより、人体検知装置Aは、物体の、より小さな動きを検知することが可能となる。
【0054】
また、赤外線受光素子3は、長方形状に形成された複数個の素子エレメント31が、平面視において素子エレメント31の短手方向に並んでいるもの、例えば、長方形状の素子エレメント31が1×4のアレイ状に配列されたものでもよい。この場合、人体検知装置Aの検知エリア200は、図10(a),(b)に示すように設定されることとなり、左右方向(水平方向)における検知ビーム220の幅、隣り合う検知ビーム220間の間隔を小さくすることが可能となり、赤外線を放射する物体の動きを検知しやすくなる。
【0055】
ところで、多分割レンズ1の各レンズ101は、フレネルレンズであり、第一面110が平面であり、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有している。ここで、本実施形態では、光学式検知装置Aを搭載する機器において多分割レンズ1の周辺部の外観面が平面または曲率の小さな曲面である場合が多いことを踏まえて、第一面110を平面としてある。これにより、機器において多分割レンズ1の周辺部の外観面と多分割レンズの外観面とを略面一とする(連続的な形状とする)ことが可能となる。よって、本実施形態の光学式検知装置では、多分割レンズを搭載する機器のデザイン性が多分割レンズにより損なわれたり、機器を見た人が多分割レンズに起因して機器の外観に違和感を感じるのを抑制することが可能となり、多分割レンズを搭載した機器の外観を美麗なものとすることが可能となる。
【0056】
レンズ101は、図4(a)に示すように、中心レンズ部101aと、中心レンズ部101aを取り囲む複数(図示例では、2つ)の輪帯状レンズ部101bとを有している。輪帯状レンズ部101bの数は特に限定するものではなく、3つ以上でもよい。レンズ101は、第一面110とは反対側の第二面120が複数のレンズ面121を有する集光レンズであり、中心レンズ部101aのレンズ面121が凸面となっている。要するに、レンズ101は、凸レンズに比べて厚みを薄くすることが可能な集光レンズである。
【0057】
各輪帯状レンズ部101bは、第二面120側に山部111bを有している。山部111bは、中心レンズ部101a側の側面からなる立ち上がり面(非レンズ面)122と、中心レンズ部101a側とは反対側の側面からなるレンズ面121とを有している。したがって、レンズ101の第二面120は、各輪帯状レンズ部101bそれぞれにおけるレンズ面121を有している。また、レンズ101の第二面120は、中心レンズ部101aにおけるレンズ面121も有している。
【0058】
ところで、一般的な非球面レンズにおいて、レンズ面を非球面の式で表すと、(4)式のようになる。ただし、(4)式では、光軸に直交する一つの平面をXY平面として、当該XY平面と光軸との交点を原点とし、当該XY平面内での原点からの距離をr、光軸方向におけるXY平面からの距離をz、コーニック定数をk、レンズ面と光軸との交点の曲率をc、と定義してあり、a2〜amは補正係数である。
【0059】
【数4】
(4)式では、第1項が回転二次曲面を表し、k<−1の場合にレンズ面が双曲面となる。したがって、(4)式を利用すれば、回転軸が第一面110の法線に対して角度θだけ傾いた双曲面125を設計することができ、このような双曲面125の一部をレンズ面121とすることにより、角度δで入射する赤外線を焦点位置Fに無収差で集光させることが可能となる。
【0060】
また、レンズ101の第一面110の面積をSとした場合、上述のように回転軸が第一面110の法線に対して角度θだけ傾いた双曲面125の一部をレンズ面121とするレンズ101では、検知面210から入射する赤外線の入射パワーをPWとすると、入射パワーPWは、下記(5)式で表される。ただし、(5)式のKは、比例定数である。
【0061】
【数5】
したがって、レンズ101の第一面110の面積Sが一定の場合には、角度θの大きなレンズ101ほど赤外線の入射パワーが小さくなる。そこで、多分割レンズ1は、角度θが大きいレンズ101ほど、レンズ101の第一面110の面積Sが大きくなるように設定するのが好ましい。この場合には、多分割レンズ1の中心から離れたレンズ101ほど第一面110の面積Sが大きくなり、多分割レンズ1の中心から離れたレンズ101ほど第二面120の面積が大きくなる。
【0062】
多分割レンズ1は、レンズ材料として赤外線を透過する樹脂であるポリエチレンを採用している。しかし、多分割レンズ1は、各レンズ101それぞれをフレネルレンズとしたことにより、各レンズ101の第二面120のレンズ面積の増大を図りながらも最大最小肉厚差Δt(図4(b)参照)を小さくすることができる。しかして、多分割レンズ1は、第一面110の法線に斜交する方向(第一面110に垂直でない方向)から入射する赤外線の光路長を短くすることができて透過率を向上させることができる。
【0063】
なお、赤外線を透過する材料として、シリコンやゲルマニウムなどがあるが、これらの結晶材料から複雑な形状の多分割レンズ1を量産性良く製作することは難しい。一方、ポリエチレンは赤外線を透過する材料であり、射出成形によって金型の複雑な形状を転写させることができるので、多分割レンズ1を量産性良く製作することが可能となる。
【0064】
しかしながら、レンズ面121が双曲面125の一部により構成され、双曲面125の回転軸が第一面110の法線に対して斜交している場合には、各レンズ面121が、第一面110の法線に対して回転対称ではない。このため、多分割レンズ1や当該多分割レンズ1用の金型を旋盤などによる回転加工で製作することが困難である。
【0065】
これに対し、本実施形態における多分割レンズ1の各レンズ101は、例えば、図4および図5に示すように、レンズ101の各レンズ面121それぞれが、楕円錐130の側面の一部からなり、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐130の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐130の中心軸とが、非平行である(つまり、傾いている)。ここにおいて、各楕円錐130は、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置している。また、図4および図5に示した構成の多分割レンズ1のレンズ101では、第一面110が平面なので、楕円錐130の中心軸は、第一面110上の各点の各々における法線に対して斜交する。また、第一面110上の点と、その点における法線がレンズ面121に交差する交点とを結ぶ方向を、レンズ厚さ方向と規定した場合、第一面110が平面であれば、第一面110上の各点における法線に沿った方向がレンズ厚さ方向となる。したがって、図4(a),(b)の各々においては、上下方向が、レンズ厚さ方向となる。よって、レンズ101は、各レンズ面121それぞれが、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)がレンズ厚さ方向に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成されたものとすることが好ましい。なお、第一面110の法線を含む断面形状において、第一面110に平行な面と各レンズ面121とのなす角度は鈍角であり、第一面110に平行な面と各立ち上がり面122とのなす角度は略直角である。
【0066】
以下、図4および図5に示すように、各レンズ面121が上述の楕円錐130の側面の一部により構成されたレンズ101について説明する。
【0067】
本願発明者らは、多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光(赤外線)を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置を提供するという課題を解決するために、次のように考えた。すなわち、まず、第二面120を、回転軸(主軸)が第一面110の法線に対して斜交する複数の双曲面(二葉双曲面の一方の双曲面)125それぞれの一部により構成した基準構造に関して、第一面110の法線を含む断面形状において、複数の双曲面125それぞれの上記一部を直線で近似することを考えた。
【0068】
ここで、双曲面125は、当該双曲面125の回転軸に直交する断面上の各点における接線の集合が円錐となる。したがって、出射面における各レンズ面の形状が入射面の法線を回転軸として回転対称となるフレネルレンズにおいては、各レンズ面を円錐の側面の一部により近似することができる。
【0069】
ところで、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系においては、円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、b,cを係数として、円錐の方程式は下記の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
【0070】
【数6】
この円錐をxy平面に平行な2つの面で切り取った円錐台では、上述の基準構造における各双曲面125それぞれの上記一部を近似することはできない。
【0071】
一方、双曲面125は、当該双曲面125の回転軸に垂直でない断面上の各点における接線140の集合が楕円錐となる。ここで、本願発明者らは、上述の図4の構造における双曲面125を、双曲面125の主軸に斜交する平面と双曲面125との交線上の各点において、双曲面125と接する楕円錐130で近似できる点に着目した。そして、本願発明者らは、各レンズ面121それぞれを、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面(図示せず)が位置し且つ中心軸(図示せず)が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成することを考えた。
【0072】
図4および図5に示す多分割レンズ1のレンズ101において、それぞれ楕円錐130の一部により構成されるレンズ面121に着目すれば、楕円錐130が、その楕円錐130に内接する双曲面125をもち、楕円錐130と双曲面125との交線上の各点においては両者の接線の傾きが一致するので、楕円錐130と双曲面125との交線上の各点を通る光線は、双曲面125の回転軸上の一点に集光される。このレンズ101では、複数のレンズ面121のうちの少なくとも1つのレンズ面121を、楕円錐130と双曲面125の交線を含むように楕円錐130の一部を切り取った形状とすることによって、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能となり、且つ、低コスト化が可能となる。ここにおいて、レンズ101は、山部111bの高さが低いほど、この山部111bを通る光線を一点に集光しやすくなるので、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が、山部111bと交わることが望ましい。
【0073】
各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔は、レンズ101において集光対象とする電磁波の波長以上の値に設定する必要がある。例えば、波長10μmの赤外線を集光対象とする場合には、各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔を10μm以上とする必要がある。一方、レンズ101では、各山部111bの高さおよび隣り合う山部111bの頂点間の間隔が大きくなると、軸外収差が大きくなるという課題、第一面110側からレンズ模様が視認可能となるという課題が生じてしまうことが考えられる。そこで、レンズ101は、軸外収差の許容値(目標値)を例えば焦点Fに配置する赤外線受光素子3の大きさである0.6×0.6mm以下とする場合、山部111の最大高さを150μm以下とすることが好ましい。また、レンズ101は、第一面110から30cmだけ離れたところから意識せずに眺めた場合に第二面120側のレンズ模様を視認できないことを要求されるような場合、隣り合う山部111b間の間隔を0.3mm以下とすることが好ましい。一方、隣り合う山部111b間の間隔を小さくするほど山部111bの数が増えるので、隣り合う山部111b間の間隔は、例えば0.1〜0.3mmの範囲で設定することが、より好ましい。
【0074】
本実施形態におけるレンズ101では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面110に平行で)且つ輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図4(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0075】
一般の楕円錐の方程式は、任意の平面の中心を原点として、当該任意の平面において互いに直交するx軸とy軸とを規定し、当該任意の平面に直交するz軸を規定した直交座標系において、楕円錐の任意の点の座標を(x,y,z)とし、a,b,cを係数として、下記の(7)式の標準形で表される。ここで、係数cは、zに無関係な定数である。
【0076】
【数7】
以下では、説明の便宜上、図4のレンズ101において、3つの楕円錐130にそれぞれ異なる符合を付して説明する。ここでは、中央のレンズ面121に対応するものを楕円錐1300、中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐1302とする。要するに、中央のレンズ面121に対応する楕円錐130を除いた楕円錐130のうち、中央のレンズ面121に近い側から順に数えてm(m≧1)番目の第m輪帯となるレンズ面121に対応するものを楕円錐130mとする。また、ここでは、各楕円錐1300,1301,1302それぞれの頂点P,P,Pを頂点P0,P1,P2とし、各楕円錐1300,1301,1302それぞれの中心軸をCA0,CA1,CA2とする。要するに、ここでは、第m輪帯となるレンズ面121に対応する楕円錐130mの頂点をPmとし、その楕円錐130mの中心軸をCAmとする。そして、各楕円錐1300,1301,1302それぞれについて、頂点P0,P1,P2を原点として、中心軸CA0,CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義する。すると、各楕円錐1300,1301,1302の式は、各直交座標系において、上述の(7)式で表すことができる。なお、図4では、楕円錐1300,1301,1302に内接する双曲面125,125,125をそれぞれ双曲面1250,1251,1252としてある。
【0077】
フレネルレンズであるレンズ101の一例として、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる6つのレンズ面121を備えたものを例示する。このレンズ101において、6つの楕円錐130のうち中央のレンズ面121に対応するものを楕円錐1300、第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、各山部111b以外の部分からなるベース部分の厚みtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(7)式における係数a,b,cが表1に示す値となる。ただし、表1に示した係数a,b,cは、レンズ101の第一面110に平行な像面Iから第一面110までの距離を5.5mmとし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0078】
【表1】
また、第一面110上の各点の各々における法線に対して、その法線が交わる第二面120のレンズ面121の中心軸は傾いている。以下では、説明の便宜上、図4のレンズ101において、第一面110の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線と第二面120との交点をA1’,A2’、B1’,B2’,C1’,C2’とし、第一面110の点A1、A2,B1,B2,C1,C2それぞれにおける法線をA1−A1’,A2−A2’,B1−B1’,B2−B2’,C1−C1’,C2−C2’と称する。ここにおいて、中央のレンズ面121に交差する法線A1−A1’,A2−A2’と楕円錐1300の中心軸CA0とのなす角度をθ0、中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に交差する法線B1−B1’,B2−B2’と楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に交差する法線C1−C1’,C2−C2’と楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、第3輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、第4輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、第5輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表2に示す値となる。
【0079】
【表2】
表2から、レンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0080】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図11に示す。この図11には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。
【0081】
図4および図5に示したレンズ101では、第一面110の法線を含む断面形状において、各レンズ面121が直線であるので、図23に示すようにバイト430を工作物(金型を形成するための基材)440に対して傾けて刃の側面を線接触させて切削加工を行うことにより、レンズ面121に応じた曲面の形成が可能となる。したがって、本実施形態では、多分割レンズ1用の金型の製作時においてバイト430による工作物の加工時間を短縮することが可能となる。なお、金型の材料は特に限定するものではないが、例えば、リン青銅などを採用することができる。
【0082】
本実施形態の光学式検知装置Aは、上述のように複数枚のレンズ101が組み合わされ各レンズ101の焦点位置Fが同じである多分割レンズ1と、焦点位置Fに配置された赤外線受光素子3を有する赤外線センサ2とを備えている。そして、本実施形態の光学式検知装置Aは、多分割レンズ1の各レンズ101について、図4に例示したように、第一面110が平面であり、第二面120が複数のレンズ面121を有するものであり、各レンズ面121それぞれが、第二面120側に頂点Pが位置するとともに第一面110側に底面が位置し且つ中心軸が第一面110の法線に対して斜交する楕円錐130の側面の一部により構成されている。ここで、本実施形態におけるレンズ101は、第一面110上の各点の法線のうち楕円錐130の側面の一部からなるレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差するレンズ面121に対応する楕円錐130の中心軸とが、非平行である。しかして、本実施形態におけるレンズ101では、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。しかして、本実施形態の光学式検知装置Aは、多分割レンズ1の各レンズ101の第二面120側に形成されたレンズ模様を各レンズ101の第一面110側から視認しづらくすることで多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0083】
上述のように、多分割レンズ1は、レンズ101の複数のレンズ面121の全てを楕円錐130の一部により構成することが可能である。しかしながら、レンズ101の複数のレンズ面121の全てを楕円錐130の一部により構成した場合には、中心レンズ部101aのレンズ面121が楕円錐130の頂点Pを含んでしまい、この頂点Pにおいて曲面が不連続となるため、頂点Pを通る赤外線が焦点位置Fに集光されない。
【0084】
そこで、多分割レンズ1の各レンズ101それぞれにおける複数のレンズ面121のうち中央のレンズ面121、言い換えれば、中心レンズ部101aのレンズ面121は、例えば、対称軸が第一面110の法線に対して斜交し且つ曲率が連続的に変化する非球面の一部とするのが好ましく、図12および図13に示すように、回転軸OP1が第一面110の法線に対して斜交する双曲面125の一部とするのが、より好ましい。これにより、多分割レンズ1は、中央レンズ部101aのレンズ面121が楕円錐130の側面の一部により構成されている場合に比べて、集光性能を向上させることが可能となる。要するに、多分割レンズ1の各レンズ101は、複数のレンズ面121のうち中央のレンズ面121を、曲率が連続的に変化する非球面の一部とし、第一面110上の各点の法線のうち非球面の一部からなる中央のレンズ面121に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央のレンズ面121に対応する非球面の対称軸(非球面が双曲面125の場合には双曲面125の回転軸OP1)とが、非平行である(つまり、傾いている)ことが好ましく、これにより、集光性能を向上させることが可能となる。ここにおいて、多分割レンズ1の各レンズ101は、この非球面にとっての対称軸と、中央のレンズ面121を第一面110の中心軸に平行な方向へ投影したときの第一面110での投影領域における各点の法線とが、非平行であればよい。ここで、中心レンズ部101aのレンズ面121を双曲面125の一部により構成する場合には、設計が容易であり、かつ加工しやすいという利点があり、より望ましい。なお、中心レンズ部101aのレンズ面121が双曲面125の一部である場合、多分割レンズ1用の金型の製作にあたっては、バイト430(図21、図22参照)のすくい面をレンズ面121に応じた曲面に対して垂直となるように傾けながら往復運動させることにより加工できる。この場合は、バイト430のノーズ半径が、双曲面125の曲率半径よりも小さければ加工できるので、中央レンズ部101aのレンズ面121が双曲面125の一部であっても加工時間を短縮することが可能となる。
【0085】
図12および図13に示した例のレンズ101は、図4および図5に示した例のレンズ101と同様に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が、山部111bと交わることが望ましい。図12および図13のレンズ101では、レンズ厚さ方向に直交し(つまり、平面からなる第一面110に平行で)且つ輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図12(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0086】
図12のレンズ101において、中心レンズ部101aのレンズ面121となる双曲面125は、焦点Fを原点、双曲面125の回転軸OP1をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系を定義すると、下記の(8)式で表される。
【0087】
【数8】
ただし、(8)式のa,b,cは、レンズ材料の屈折率をn、中央レンズ部101aのバックフォーカスをfとして、(9)式、(10)式、(11)式でそれぞれ与えられる。
【0088】
【数9】
上述の(8)式は、z=g(x,y)(gは任意の関数)という陽関数の式に変形すると、上述の(4)式の第一項と一致する。すなわち、(8)式は、(4)式の場合と同じく、r2=x2+y2として変数置換して、zとrとの関係をまとめ直すと、上述した(4)式のうち、r2の項((4)式の右辺の第一項)に相当する式に変形できる。よって、(4)式のr2の項と(8)式とが実質的に同じ関係を表していることは明らかである。
【0089】
また、各楕円錐1301,1302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(7)式で表すことができる。
【0090】
フレネルレンズであるレンズ101の一例として、双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121と、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる5つのレンズ面121とを備えたものを例示する。この一例のレンズ101において、5つの楕円錐130のうち第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、各山部111b以外の部分からなるベース部分の厚みtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(8)式または(7)式における係数a,b,cが表3に示す値となる。レンズ段差Δtについては、値が小さいほど、ポリエチレンの硬化時のひけの発生を抑制することが可能、すなわち、第一面110側が凹むのを抑制することが可能となり、その結果、ひけに起因したレンズ101の集光性能の低下を防止することが可能となり、しかも、第一面110側の外観が客観的にいびつに見えないので、種々検討した値のうちの一例として、0.05mmを挙げている。表3は、双曲面125について、(8)式におけるa,b,cの値を記載してあり、楕円錐1301〜1305について、(7)式におけるa,b,cの値を記載してある。ただし、表3に示した係数a,b,cは、レンズ101の第一面110に平行な像面Iから第一面110までの距離を5.5mmとし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0091】
【表3】
第一面110に対して入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させる場合、中心レンズ部101aの双曲面125の回転軸OP1と第一面110の法線とのなす角度は、スネルの法則により、27.5°とすればよい。すなわち、回転軸OP1は、第一面110の法線に対して27.5°だけ傾ければよい。また、第一面110上の各点の各々における法線に対して、その法線が交わる第二面120のレンズ面121の中心軸は傾いている。中央のレンズ面121に最も近い第1輪帯となるレンズ面121に交差する法線B1−B1’,B2−B2’と楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、中央のレンズ面121に2番目に近い第2輪帯となるレンズ面121に交差する法線C1−C1’,C2−C2’と楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、第3輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、第4輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、第5輪帯となるレンズ面121に交差する法線と楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表4に示す値となる。
【0092】
【表4】
表4から、多分割レンズ1のレンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0093】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図14に示す。この図14には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。図11と図14とを比較すれば、図12のレンズ101では、図4のレンズ101に比べて収差を小さくできることが分かる。
【0094】
多分割レンズ1の各レンズ101は、複数の輪帯状レンズ部101bのうちの少なくとも1つの輪帯状レンズ部101bのレンズ面121を、楕円錐130の側面の一部により構成することにより、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用する場合に軸外収差の発生を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能となる。
【0095】
多分割レンズ1のレンズ101については、上述の図12および図13に示した例と略同じであって、図15に示すように、第一面110が第二面120側とは反対側に凸となる曲面であるものを用いることもできる。なお、図15では、第一面110が曲率半径の大きな球面の一部からなるが、球面の一部に限定するものではない。
【0096】
ところで、多分割レンズ1のレンズ101が図12および図13に示したレンズ101を備えた多分割レンズ1では、レンズ材料としてポリエチレンを採用した場合、第一面110が平面であるため、射出成形の冷却、固化過程で生じる収縮むらなどにより、ひけや、うねりが発生し、外観が損なわれてしまう懸念がある。また、光学式検知装置Aをテレビやエアコンや防犯センサなどの機器に搭載する場合、多分割レンズ1は、機器の外観の一部をなすので、機器のデザイン性を損なわないために、第一面110を、機器の表面における第一面110の周辺部と略面一となる形状とすることが好ましい。
【0097】
そこで、レンズ材料としてポリエチレンを採用し射出成形により製作する場合、多分割レンズ1のレンズ101は、図15に示すように、第一面110を、曲率半径が大きな曲面(曲率が小さな曲面)とすることが好ましい。この場合、レンズ厚さ方向は、第一面110上の各点の各々における法線方向である。この多分割レンズ1では、第一面110を、第二面120側とは反対側に凸となる曲面とすることにより、うねりの方向を一方向に抑制することが可能となり、外観が損なわれるのを防止することが可能となる。なお、レンズ101は、第一面110を、非球面である双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121よりも曲率半径が大きく且つ双曲面125とは反対側に凸となるなだらかな曲面とすることが好ましい。
【0098】
本実施形態における多分割レンズ1では、軸外収差が許容値を超えない範囲(赤外線受光素子3の大きさ以下)で、第一面110の曲率を設計すれば、レンズ材料としてポリエチレンを採用して、軸外収差の発生を抑制しつつ、ひけや、うねりの発生を抑制することが可能となる。
【0099】
図15に示した例では、図12に示した例と同様に、中心レンズ部1aのレンズ面121が双曲面125の一部により構成されているが、図12の例と同様に双曲面125の回転軸OP1を27.5°だけ傾けた場合、45°の入射角で入射する光線に対して軸外収差が大きくなる。そこで、図15に示した例のように、第一面110が球面の一部からなる場合には、さらに、双曲面125の回転軸OP1を、この双曲面125に関して定義した直交座標系のxz面内で双曲面125の頂点Pxのまわりに回転して傾けることにより、軸外収差を小さくすることが可能となる。
【0100】
図15に示したレンズ101は、図12に示したレンズ101と同様に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125の交線が、山部111bと交わることが望ましい。図15のレンズ101では、輪帯状レンズ部101bにおける山部111bの谷からの高さが山部111bの最大高さの1/2となる平面115上に、楕円錐130と楕円錐130に内接する双曲面125との交線が存在する。したがって、このレンズ101では、図15(b)に示すように、レンズ面121と平面115との交点上を通る赤外線(光線)を、焦点Fに集光する。
【0101】
図15のレンズ101において、中心レンズ部101aの双曲面125は、双曲面125の焦点を原点、回転軸OP1をz軸とし、z軸にそれぞれ直交するx軸、y軸を有する直交座標系権を定義すると、上述の(8)式で表される。また、各楕円錐1301,1302は、それぞれ、頂点P1,P2を原点として、中心軸CA1,CA2をz軸とし、z軸に直交する断面における楕円の長径方向に沿ってx軸、短径方向に沿ってy軸を規定した直交座標系を定義すると、上述の(7)式で表すことができる。
【0102】
ここで、レンズ101の一例として、双曲面125の一部からなる中央のレンズ面121と、それぞれ楕円錐130の側面の一部からなる5つのレンズ面121とを備えたものを例示する。この一例のレンズ101において、5つの楕円錐130のうち第1輪帯〜第5輪帯それぞれとなるレンズ面121に対応するものを楕円錐1301〜1305とする。この一例のレンズ101では、第一面110を曲率半径が100mmの球面の一部とし、山部111b以外の部分からなるベース部分の最小高さtを0.5mm、各輪帯状レンズ部101bにおいて焦点Fに最も近い点での山部111bの高さ(レンズ段差)Δtを0.05mm、レンズ材料を屈折率が1.53のポリエチレンとした場合、(8)式または(7)式における係数a,b,cが表5に示す値となる。ここで、表5は、双曲面125について、(8)式におけるa,b,cの値を記載してあり、楕円錐1301〜1305について、(7)式におけるa,b,cの値を記載してある。ただし、表5に示した係数a,b,cは、レンズ101の像面Iから像面Iに平行で第一面110に接する平面までの距離を5.5mm、とし、入射角が45°で入射する赤外線(光線)を焦点Fに集光させることを前提条件として求めた値である。
【0103】
【表5】
ここにおいて、レンズ101は、中心レンズ部101aのレンズ面121に対応する双曲面125に関して、図12に示したレンズ101の中心レンズ部101aの双曲面125の回転軸OP1を、上述のxz面内で双曲面125の頂点Pxのまわりに2.5°だけ回転して傾けることにより、軸外収差を小さくすることができる。また、第一面110上の各点における法線は、第一面110の曲率中心に向かっており、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸CA1,CA2とは傾いている。像面Iの法線と第1輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1301の中心軸CA1とのなす角度をθ1、像面Iと第2輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1302の中心軸CA2とのなす角度をθ2とする。同様に、像面Iの法線と第3輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1303の中心軸CA3とのなす角度をθ3、像面Iの法線と第4輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1304の中心軸CA4とのなす角度をθ4、像面Iの法線と第5輪帯になるレンズ面121に対応する楕円錐1305の中心軸CA5とのなす角度をθ5とすれば、θ0〜θ5は、下記の表6に示す値となる。
【0104】
【表6】
表6から、多分割レンズ1のレンズ101は、第一面110上の各点における法線と、その法線が交わる第二面120の各レンズ面121の中心軸とがなす角度が、外側の輪帯状レンズ部101bほど大きくなることが分かる。
【0105】
このレンズ101の焦点Fにおけるスポットダイヤグラムを図16に示す。この図16には、焦点Fを中心とした2×2mmの範囲のスポットダイヤグラムを示してある。集光スポットの大きさは、レンズ101の焦点Fに合わせて配置する赤外線受光素子3の大きさ以下(ここでは、0.6×0.6mm以下)であればよい。図14と図16とを比較すれば、図16のレンズ101では、図14のレンズ101と同等の収差であることが分かる。
【0106】
上述の光学式検知装置Aを備えた機器300においては、例えば、図17や図18(a)に示すように、機器300の機器本体301における前面と多分割レンズ1における各レンズ101の第一面110とを略面一とすることにより、機器本体301の前方に検知エリア200(図18(a)参照)を設定することができるとともに、機器300の外観を損なうことなく光学式検知装置Aを配置することが可能となり、機器300の外観を高めることが可能となる。ここで、光学式検知装置Aを搭載する機器300においては、機器本体301のうち、人体を感知すべき側である前面が、一般的に、略平面状に形成されていることが多いので、そのような機器本体301のデザインに馴染むよう、多分割レンズ1における各レンズ101の第一面110を、機器本体301の前面と略面一としている。本実施形態の機器300においては、多分割レンズ1の各レンズ101の第二面120側に形成されたレンズ模様を各レンズ101の第一面110側から視認しづらくすることで多分割レンズ1の外観を高めながらも、外界から第一面110へ斜め入射する入射光を利用するレンズ101の軸外収差の発生を抑制して感度の低下を抑制することが可能であり、且つ、低コスト化が可能な光学式検知装置Aを備えているので、光学式検知装置Aの感度の低下を抑制し且つ低コスト化を図りながらも光学式検知装置Aを搭載する機器300全体の外観を高めることが可能となる。また、光学式検知装置Aを搭載する機器300が防犯センサの場合には、目視で、ひけやレンズ模様が視認できないようにすることが可能となり、不審者に防犯センサの検知エリアを悟られないようにすることが可能となる。これにより、機器300を見た人間が多分割レンズ1のレンズ模様に違和感を感じるのを抑制することが可能となるものと推考され、不審者などに悪戯されるのを避けることが可能となるものと推考される。
【0107】
図17に示した機器300は、薄型のテレビであり、例えば、電源がオンの状態で、人が光学式検知装置Aの検知エリア内から出た場合には休止状態にして省エネルギ化を図り、人が検知エリア内に戻った場合にすぐに画面に画像が表示される状態とすることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。ここで、機器300は、多分割レンズ1が水平方向に広い画角を有する、つまり、水平画角が大きくなるように多分割レンズ1を設計しておけば、斜め方向から画面を見ている人の動きも光学式検知装置Aにより検知できる。
【0108】
なお、光学式検知装置Aをテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイに搭載する場合には、検知エリアに関して大きな水平画角が要求される一方で垂直画角については水平画角ほど大きな画角を必要としない。これは、人がテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどを見る際には、椅子に座って画面を見ることが多いため、垂直方向の動きがほとんど生じないからである。したがって、テレビやパーソナルコンピュータのディスプレイなどに搭載する光学式検知装置Aでは、水平方向の人の小さな動きを検知するという観点から、図3(b)のような検知エリア200が形成されるものよりも、図10(b)のような検知エリア200が形成されるものが好ましい。
【0109】
また、光学式検知装置Aの検知エリア200が図3(b)のように設定されている場合に、人が検知エリア200を図3(b)の左右方向に沿って通過する際に、極性の異なる2つの検知ビーム220を通過し、赤外線受光素子3の2個の素子エレメント31の出力が相殺されることが考えられるので、図3(b)のような検知エリア200よりも、図6(b)や図10(b)や図9(b)や図18(c)のような検知エリア200が好ましい場合もある。図6(b)や図10(b)や図9(b)や図18(c)のような検知エリア200であれば、隣り合う検知ビーム220間の間隔が小さくなるとともに、図18(a)のように人Mが左右方向Eに移動する際に、極性の異なる2つの検知ビーム220を通過して赤外線受光素子3の2個の素子エレメント31の出力が相殺される可能性が小さくなる。
【0110】
また、図18に示した機器300は、コピー機であり、例えば、電源がオンの状態で、人Mが光学式検知装置Aの検知エリア200内から出た場合には休止状態にして省エネルギ化を図り、人Mが検知エリア200内に入った場合にすぐに休止状態を解除して操作可能な状態とすることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。ここで、機器300がコピー機に限らず、例えば、ファクシミリ(facsimile:FAX)、プリンター、複合機などの事務機器の場合には、同様に省エネルギ化を図ることが可能となる。また、機器300において、光学式検知装置Aの多分割レンズ1の各レンズ101を斜め下向きまたは斜め上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置した場合には、機器300から離れた所を通過する人Mの動きが検出されるのを防止することが可能となり、より一層の省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0111】
また、光学式検知装置Aを搭載する機器は、例えば、自販機、券売機、現金自動預け払い機(Automatic Tellers Machine:ATM)、現金自動支払機(CashDispenser:CD)などでもよく、機器に近づいてきた人が検知エリア200内に入った時に機器の休止状態を解除し、機器の前に人が立った時にはすぐに操作が可能な状態にすることが可能となる。これらの機器に光学式検知装置Aを搭載する場合には、多分割レンズ1の各レンズ101を下向きまたは上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置すると、機器から離れた所を通過する人の動きは検出されず、省エネルギ化を図ることが可能となる。また、これらの機器において、光学式検知装置Aの多分割レンズ1の各レンズ101を斜め下向きまたは斜め上向きの検知ビーム220のみが形成されるように配置した場合には、機器から離れた所を通過する人の動きが検出されるのを防止することが可能となり、より一層の省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0112】
また、光学式検知装置Aを搭載する機器は、例えば、壁に取り付ける照明器具やエアコンなどでもよい。このような機器も場合も垂直方向の人の動きの検知は重要でないので、図3(b)のような検知エリア200が形成されるものよりも、図10(b)のような検知エリア200が形成されるものが好ましい。
【0113】
また、光学式検知装置Aが搭載されている機器が壁付けの照明器具の場合には、斜め下向きの検知ビーム220が形成されるようにするのがよい。このような場合には、人が照明器具に近付いた時に点灯し、人がいない時には消灯することによって省エネルギ化を図ることができる。
【0114】
また、光学式検知装置Aをエアコンなどの空調制御用の機器に搭載する場合、多分割レンズ1は斜め下向きに検知ビーム220が形成されるようにするのがよい。これは、エアコンなどは部屋の天井近くの壁面に設置されるため、検知ビーム220を斜め下方に形成することにより、部屋の中にいる人の動きを検出することができるからである。また、光学式検知装置Aをエアコンなどの空調制御用の機器に搭載した場合には、人の動きのある箇所を集中的に冷やしたり、温めたりすることで効率的な運転が可能となる。
【0115】
また、光学式検知装置Aを、部屋の入り口付近の壁に取り付けられて照明器具を制御するコントローラなどの機器に搭載した場合には、人が部屋に入った時にすぐに照明器具を点灯させ、人がいない時には照明器具を消灯させることによって、省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0116】
なお、赤外線受光素子3は、焦電型赤外線検知素子に限らず、例えば、フォトダイオードなどの受光素子でもよい。
【符号の説明】
【0117】
A 光学式検知装置
C 回転軸
CA1,CA2,CA3 中心軸
F 焦点位置
H 法線
OP1 回転軸(対称軸)
P 頂点
P0,P1,P2 頂点
A1−A1’ 法線
A2−A2’ 法線
B1−B1’ 法線
B2−B2’ 法線
C1−C1’ 法線
C2−C2’ 法線
1 多分割レンズ
2 赤外線センサ
3 赤外線受光素子
101 レンズ
110 第一面
120 第二面
121 レンズ面
125 双曲面
130 楕円錐
1300,1301,1302 楕円錐
300 機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のレンズが組み合わされ前記各レンズの焦点位置が同じである多分割レンズと、前記焦点位置に配置された赤外線受光素子を有する赤外線センサとを備え、前記多分割レンズの前記各レンズは、第一面とは反対側の第二面が複数のレンズ面を有するフレネルレンズであり、少なくとも1つの前記レンズ面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であることを特徴とする光学式検知装置。
【請求項2】
前記複数の前記レンズ面のうち少なくとも2つの前記レンズ面が、それぞれ前記中心軸の異なる前記楕円錐の前記側面の前記一部からなり、外側に位置する前記レンズ面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことを特徴とする請求項1記載の光学式検知装置。
【請求項3】
前記各レンズそれぞれにおける前記複数の前記レンズ面のうち中央の前記レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる中央の前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央の前記レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学式検知装置。
【請求項4】
前記非球面は、双曲面であることを特徴とする請求項3記載の光学式検知装置。
【請求項5】
前記多分割レンズは、前記多分割レンズの中心から離れた前記レンズほど前記第二面のレンズ面積を大きくしてあることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項6】
前記多分割レンズは、前記各レンズの最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項7】
前記赤外線受光素子は、長方形状に形成された複数個の素子エレメントが、前記素子エレメントの短手方向に並んでいることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項8】
前記赤外線受光素子は、正方形状に形成された4個の素子エレメントが2×2のマトリクス状に配列されてなり、前記4個の前記素子エレメントのうち対角位置にある2個の前記素子エレメントそれぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項9】
前記多分割レンズの前記各レンズと前記赤外線検出素子とによって形成される複数の検知ビームの配置が千鳥状の配置であることを特徴とする請求項8記載の光学式検知装置。
【請求項10】
前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項11】
前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであり、且つ、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の光学式検知装置を備えてなることを特徴とする機器。
【請求項1】
複数枚のレンズが組み合わされ前記各レンズの焦点位置が同じである多分割レンズと、前記焦点位置に配置された赤外線受光素子を有する赤外線センサとを備え、前記多分割レンズの前記各レンズは、第一面とは反対側の第二面が複数のレンズ面を有するフレネルレンズであり、少なくとも1つの前記レンズ面が、楕円錐の側面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記楕円錐の側面の一部からなる前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する前記レンズ面に対応する前記楕円錐の中心軸とが、非平行であることを特徴とする光学式検知装置。
【請求項2】
前記複数の前記レンズ面のうち少なくとも2つの前記レンズ面が、それぞれ前記中心軸の異なる前記楕円錐の前記側面の前記一部からなり、外側に位置する前記レンズ面に対応する前記楕円錐ほど、前記中心軸と前記法線とのなす角度が大きいことを特徴とする請求項1記載の光学式検知装置。
【請求項3】
前記各レンズそれぞれにおける前記複数の前記レンズ面のうち中央の前記レンズ面は、曲率が連続的に変化する非球面の一部からなり、前記第一面上の各点の法線のうち前記非球面の一部からなる中央の前記レンズ面に交差する任意の法線と、当該任意の法線が交差する中央の前記レンズ面に対応する前記非球面の対称軸とが、非平行であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学式検知装置。
【請求項4】
前記非球面は、双曲面であることを特徴とする請求項3記載の光学式検知装置。
【請求項5】
前記多分割レンズは、前記多分割レンズの中心から離れた前記レンズほど前記第二面のレンズ面積を大きくしてあることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項6】
前記多分割レンズは、前記各レンズの最大肉厚を同じ肉厚に設定してあることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項7】
前記赤外線受光素子は、長方形状に形成された複数個の素子エレメントが、前記素子エレメントの短手方向に並んでいることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項8】
前記赤外線受光素子は、正方形状に形成された4個の素子エレメントが2×2のマトリクス状に配列されてなり、前記4個の前記素子エレメントのうち対角位置にある2個の前記素子エレメントそれぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項9】
前記多分割レンズの前記各レンズと前記赤外線検出素子とによって形成される複数の検知ビームの配置が千鳥状の配置であることを特徴とする請求項8記載の光学式検知装置。
【請求項10】
前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項11】
前記多分割レンズは、レンズ材料がポリエチレンであり、且つ、前記第一面が前記第二面側とは反対側に凸となる曲面であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の光学式検知装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の光学式検知装置を備えてなることを特徴とする機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−145562(P2012−145562A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207955(P2011−207955)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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