説明

光学式測定システム

【課題】 所定位置に固定した原点を基準として、移動する測定対象の形状等を簡単な構成で高精度に測定すること。
【解決手段】 相互の位置関係が既知の光学式測定部121、123を有する複眼測定部125を所定の固定位置に配設すると共に、反射部132上に3つの標点118〜120を形成する標点用光源129及び標点118〜120に対して所定位置に配設された光学式測定部115を有しアーム式多関節ロボット100のハンド部114に一体的に設けられた光学式測定器131を備え、複眼測定部125によって所定の固定位置を原点として標点118〜120の座標を測定すると共に、測定部115によって所定位置を基準として測定対象130の形状等を測定し、これらの測定値及び設定値に基づいて、前記原点を基準として、測定対象130の形状等を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用光を測定対象に照射すると共に前記測定対象で反射した前記測定用光を検出し、前記検出した測定用光に基づいて前記測定対象の形状等を測定する光学式測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アーム式多関節ロボット等の各種作業用ロボットが組み立て工場等で使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
図6は、従来から使用されているアーム式多関節ロボットの外観を示す図である。
図6において、アーム式多関節ロボットは、所定の固定位置に取り付けられた台部601、複数のリンク部603、605、607、610、各リンク部を接続する複数の関節部602、604、606、608、609、及び部品や工具等を把持するハンド部611を備えている。
【0003】
図示しない制御装置により各関節部602、604、606、608、609を矢印方向に回転制御して、リンク部603、605、607、610を移動制御する。これによって、ハンド部611による部品や工具等の把持、把持した部品等の所定位置への移動、載置等の動作を制御する。
【0004】
ところで、ハンド部611によって部品や工具等を把持し所定位置に移動させる際、正確な位置に移動させるために、光学式測定装置(例えば、特許文献3参照)等を用いて測定したハンド部611の相対的な形状や位置等の情報、及び、リンク部603、605、607、610や関節部602、604、606、608、609の形状や位置等の情報に基づいて、絶対位置を基準としてハンド部611の形状や位置等を測定することにより、絶対位置を基準とする部品や工具の形状、位置あるいは姿勢等を測定するようにしている。
【0005】
このように、リンク部603、605、607、610や関節部602、604、606、608、609の形状や移動位置等の情報を用いて、絶対位置を基準としてハンド部611や部品等の形状や位置等、あるいは、絶対位置を基準としてハンド部611によって置かれた部品等の形状や位置等を算出するようにしている。
【0006】
したがって、リンク部603、605、607、610や関節部602、604、606、608、609のガタや駆動誤差等に基づく測定誤差が大きくなるという問題がある。
また、算出処理が極めて煩雑になり、測定結果が得られるまでに長時間要するという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−6684号公報
【特許文献2】特開2007−30163号公報
【特許文献3】特開2006−349362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、所定位置に固定した原点を基準として、移動する測定対象の形状等を簡単な構成で高精度に測定することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、可動体と、前記可動体の可動部に一体的に設けられ、複数の標点を表す標点用光を生成する標点用光生成手段と、相互の位置関係が既知の複数の光検出部を有し、所定の固定位置である原点を基準として、前記各標点の位置に関するデータを測定する複眼測定手段と、前記いずれかの標点との位置関係が既知の位置に配設されると共に、測定対象の形状に関するデータを測定する光学式測定手段と、前記複眼測定手段による前記各標点の測定動作と、前記光学式測定手段による前記測定対象の形状測定動作とを同期させる同期手段と、前記複眼測定手段によって前記各標点を測定した測定データと、前記光学式測定手段によって前記測定対象を測定した測定データとに基づいて、前記原点を基準として前記測定対象の形状を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定システムが提供される。
【0010】
標点用光生成手段は、可動体の可動部に一体的に設けられ、複数の標点を表す標点用光を生成する。複眼測定手段は、相互の位置関係が既知の複数の光検出部を有し、所定の固定位置である原点を基準として、前記各標点の位置に関するデータを測定する。光学式測定手段は、前記いずれかの標点との位置関係が既知の位置に配設されると共に、測定対象の形状に関するデータを測定する。同期手段は、前記複眼測定手段による前記各標点の測定動作と、前記光学式測定手段による前記測定対象の形状測定動作とを同期させる。算出手段は、前記複眼測定手段によって前記各標点を測定した測定データと、前記光学式測定手段によって前記測定対象を測定した測定データとに基づいて、前記原点を基準として前記測定対象の形状を算出する。
【0011】
ここで、前記標点は前記標点用光生成手段によって少なくとも3つ形成され、前記複眼測定手段は、前記原点を基準として、前記各標点の位置を測定し、前記光学式測定手段は、前記いずれかの標点との位置関係が所定の関係にある位置を基準として前記測定対象の形状を測定し、前記算出手段は、前記複眼測定手段によって前記各標点を測定した標点測定データと、前記光学式測定手段によって前記測定対象を測定した形状測定データとに基づいて、前記原点を基準として前記測定対象の形状を算出するように構成してもよい。
【0012】
また、前記光学式測定手段は、前記いずれかの標点との位置関係が固定されて成るように構成してもよい。
また、前記可動体の可動部は産業用ロボットのハンド部であるように構成してもよい。
また、前記可動体の可動部は工作機械の主軸に沿って移動可能な可動部であるように構成してもよい。
【0013】
また、前記標点用光生成手段は、少なくとも3つの方向に光を出力する光源と、前記光源からの光を乱反射する反射部とを備えて成るように構成してもよい。
また、前記標点用光生成手段は、前記各標点を表す光を出力する複数の発光素子を備えて成るように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定位置に固定した原点を基準として、移動する測定対象の形状等を簡単な構成で高精度に測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る光学式測定システムについて説明する。尚、以下の説明で使用する各図において、同一部分には同一符号を付している。
図4は、本発明の実施の形態に係る光学式測定システムに用いる複眼測定部の測定原理を説明するための説明図である。
ここで複眼測定部とは、相互の位置関係が既知の位置関係を有すると共に、測定用光源との位置関係が無関係な複数の光検出部を有し、測定対象で反射した測定用光源からの測定用光を前記各光検出部で検出し、前記検出したデータに基づいて、前記測定対象の形状、所定位置から前記測定対象の測定点までの距離等の、測定対象の長さに関する測定を行う測定器である。
【0016】
図4において、11は半導体レーザ等によって構成され断面が点状の測定用光を出力する光源、12は測定対象、13、14は受光レンズ、15、16は受光レンズ13、14に対向して各々配設された光検出素子である。光検出素子15、16としては、PSD(Position Sensitive Detector)、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光センサアレー(CMOS光センサアレー)等、各種の光検出素子が使用可能である。
【0017】
光検出素子15、16は、各々、測定対象12で反射した前記測定用光を、対応する受光レンズ13、14を介して検出する。
光源11は、受光レンズ13及び光検出素子15や、受光レンズ14及び光検出素子16とは、相互の位置関係が無関係に配設される。受光レンズ13、光検出素子15、受光レンズ14及び光検出素子16は、相互の位置関係が既知の位置に配設されている。
【0018】
尚、光源11は光出力手段を構成し、受光レンズ13及び対応する光検出素子15は第1光検出手段を構成し、受光レンズ14及び対応する光検出素子16は第2光検出手段を構成している。前述したように、前記複数の光検出手段相互の位置関係は予め定めた既知の所定位置に配設されると共に、前記各光検出手段は前記光出力手段の位置とは無関係な任意の位置に配設される。
【0019】
また、複数の受光レンズ13、14及び各受光レンズ13、14に対応して配設された複数の光検出素子15、16は複眼測定部を構成している。前記複眼測定部は、測定対象12に測定用光を照射するための光源21を含むような構成とすることもできる。また、前記複眼測定部は、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、所定位置(例えば所定の固定位置である絶対原点)を基準とする測定対象位置の座標、前記所定位置から前記測定対象位置までの距離、あるいは測定対象12の形状等を算出する算出手段を含むような構成とすることもできる。
【0020】
このように、複眼測定部においては、相互の位置関係は既知の位置に配設されると共に光出力手段の位置とは無関係な任意の位置に配設され、測定対象12の測定対象位置で反射した測定用光を検出する複数の光検出手段とを使用して、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、所定位置(例えば所定の固定位置である絶対原点)を基準とする前記測定対象位置の座標、前記所定位置から前記測定対象位置までの距離、または、測定対象12の形状等を算出するようにしている。
【0021】
図4の例では便宜上、受光レンズ13、14間の中心位置を座標原点Oとしており、各受光レンズ13、14の中心と原点Oとの距離Dと、各受光レンズ13、14の中心と対応する光検出素子15、16間の距離d1、d2とは所定の既知の値としている。
図4において、光源11から測定用光を測定対象12に照射すると、測定対象12表面の照射位置(測定対象位置)17では散乱光が発生して、その一部が受光レンズ13、14側に反射する。測定対象12で反射した前記測定用光は、各々、受光レンズ13、14を介して、受光レンズ13、14に対応して配設された光検出素子15、16によって検出される。各光検出素子15、16には、各々、結像18、19が得られる。
【0022】
このとき、点Oを原点とするX・Y・Z直交座標系によって表した測定対象位置17の座標(x,y,z)は、下記3つの式(1)によって表される。但し、下記式(1)において、D、d1、d2は前述したように既知の値である。また、光検出素子15における結像18のZ軸方向座標h1及びY軸方向座標y1、光検出素子16における結像19のZ軸方向座標h2及びY軸方向座標y2は、光検出素子15、16による測定値である。
x=D・(h1・d2−d1・h2)/(h1・d2+d1・h2)
z=2h1・h2・D/(h1・d2+d1・h2) ・・・(1)
y=y1・z/h1=y2・z/h2
【0023】
したがって、光検出素子15によってh1、y1を測定し、光検出素子16によって測定位置h2、y2を測定し、これらの測定値h1、y1、h2、y2及び既知の値d1、d2、Dを用いると共に前記3つの式(1)を用いて、図示しない算出手段によって算出処理を行うことにより、原点Oを基準として、測定対象12上の測定対象位置17の座標(x,y,z)を算出することができる。
【0024】
また、幾何学的な算出処理を行うことにより、所定位置(例えば、原点O)から測定対象位置17までの距離も算出できる。また、光源11から出力する測定用光を偏向手段により偏向して測定対象12を走査しながら測定を行うことによって、測定対象12の複数の点を測定して、測定対象12の3次元形状を算出すること等が可能になる。
【0025】
このように、相互の位置関係は所定の既知の位置関係に配設されると共に光源11の位置とは無関係な位置に複数の光検出手段を配設し、前記複数の光検出手段によって測定対象12の測定対象位置17で反射した前記測定用光を各々検出し、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、所定位置を基準とする測定対象位置17の座標等を測定することが可能になる。光源11の位置は、光検出手段の位置とは無関係に決定できるため、構成要素の配置の自由度が大きくなるので、装置の小型化が可能になったり、複雑な形状の測定対象の形状等の測定が可能になる等の効果を奏する。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態に係る光学式測定システムに用いる複眼測定部の他の例を説明するための説明図である。図4の例では、光源として、断面が点状の測定用光を出力する点状光源を用いたが、本例では光源として、断面が線状の測定用光を出力する線状光源を使用している。尚、図4と同一部分には同一符号を付している。
【0027】
図5において、21は断面が直線状の測定用光を出力する光源、12は測定対象、13、14は受光レンズ、15、16は所定面積の平面状の光検出面を有するCMOS光センサアレー等によって構成され、測定対象12で反射した前記測定用光を受光レンズ13、14を介して検出する面状の光検出素子である。
尚、光源21は、直接、断面が線状の測定用光を発生する光源を用いてもよく、あるいは、断面が点状の測定用光を発生し、該測定用光を断面が線状の測定用光に変換するような構成の光源としてもよい。
【0028】
ここで、光源21は光出力手段を構成し、受光レンズ13及び対応する光検出素子15は第1光検出手段を構成し、受光レンズ14及び対応する光検出素子16は第2光検出手段を構成している。このように、図5の例においては、相互の位置関係は既知の値に配設されると共に測定対象12の測定対象位置に断面が線状の測定用光を照射する光出力手段の位置とは無関係な位置に配設され、前記測定対象の測定対象位置で反射した前記断面線状の測定用光を検出する複数の光検出手段とを使用して、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、算出手段により、所定位置を基準とする前記測定対象位置の座標、所定位置から前記測定対象位置までの距離、または、測定対象12の形状を算出するようにしている。
【0029】
また、複数の受光レンズ13、14及び各受光レンズ13、14に対応して配設された複数の光検出素子15、16は複眼測定部を構成している。前記複眼測定部は、測定対象12に測定用光を照射するための光源21を含むような構成とすることもできる。また、前記複眼測定部は、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、所定位置(例えば所定の固定位置である絶対原点)を基準とする測定対象位置の座標、前記所定位置から前記測定対象位置までの距離、あるいは測定対象12の形状等を算出する算出手段を含むような構成とすることもできる。
【0030】
尚、図4の場合と同様に、受光レンズ13、14間の中心位置を座標原点Oとしており、各受光レンズ13、14の中心と原点Oとの距離D、各受光レンズ13、14の中心と対応する光検出素子15、16間の距離d1、d2は既知の値としている。
光源21から断面が線状の測定用光を測定対象12の測定対象位置に照射すると、測定対象12の測定対象位置には線状の測定用光22が照射されることになる。測定対象12で反射した線状の前記測定用光は、各々、受光レンズ13、14を介して、受光レンズ13、14に対応して配設された光検出素子15、16に入射し、線状の結像23、24が検出される。
【0031】
線状の結像23、24は、複数の点を連結したものと同じとみることができるため、図4で説明したのと同様の式を用いて、測定対象位置の座標等を算出することができる。
光検出素子15における結像23のZ軸方向座標h1及びY軸方向座標y1、光検出素子16における結像24のZ軸方向座標h2及びY軸方向座標y2を測定することにより、線状の結像23、24上の複数の点の座標(x,y,z)は、図4において使用した前記3つの式(1)を用いて算出することが可能である。
【0032】
また、同様にして、所定位置(例えば、原点O)から測定対象位置までの距離を測定することが可能である。また、線状の測定用光22を測定用光22の長さ方向と直交する方向(図5ではX軸方向)に偏向手段(図示せず))で偏向して走査しながら測定を行うことによって、測定対象12の複数の点を測定して、測定対象12の3次元形状を測定することが可能になる。
【0033】
このように、光源21とは位置関係が無関係であるが、相互の位置関係は予め定めた所定の位置関係にある複数の光検出手段を配設し、前記光検出手段によって測定対象12の測定対象位置22で反射した前記測定用光を検出し、前記複数の光検出手段が検出した測定用光に基づいて、所定位置を基準とする測定対象位置22の座標等を測定することが可能になるため、図4の例と同様に、複雑な形状の測定対象の測定が可能になり、多様な測定に対応することが可能になる。また、断面が線状の測定用光を使用するため、短時間で広い面積の測定が可能になる等の効果を奏するものである。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る光学式測定システムの構成を模式的に示す構成図である。
図1において、光学式測定システムは、複眼測定部125、光学式測定器131を備えている。
複眼測定部125は、その測定原理を図4、図5に示した構成のものであり、複数(図1では2つ)の光学式測定部121、123を備えている。複眼測定部125は所定の固定位置(図1の例では、アーム式多関節ロボット100の台部101)に設置されており、光学式測定器131はアーム式多関節ロボット100先端のハンド部114に固定して取り付けられている。
【0035】
光学式測定部121、123は、各々、光検出部122、124を備えている。光検出部122、124は、各々、測定対象の照射点(図1の例では反射部132の標点118〜120)で反射した測定用光(図1の場合は標点用光)を受光する受光レンズ及び前記受光レンズで受光した前記測定用光(図1の場合は標点用光)を検出する光検出素子(ともに図示せず)を備えている。前記光検出素子として、PSD、CCD、CMOS光センサアレー等、各種の光検出素子が使用可能である。
【0036】
光検出部122、124の相互の位置関係は、図4、図5に示したように、予め定めた所定の既知の位置関係に配設されると共に、光源129とは無関係な任意の位置に配設される。
このように、複眼測定部125は、相互の位置関係が予め定めた所定の既知の位置関係を有すると共に、光源129とは無関係な任意の位置に配設された2つの光検出部122、124を備え、反射部132で反射した光源129からの標点用光を2つの光検出部122、124によって検出するように構成されている。後述するように、演算制御部134は、光検出部122、124によって検出した標点用光に基づいて、標点118〜120の位置、ひいては、反射部132の向き等を算出するように構成されている。
【0037】
光学式測定器131は、光源129、反射部132、光学式測定部115を備えており、アーム式多関節ロボット100の可動部(図1の例ではハンド部114)に一体的に取り付けられている。光源129は、半導体レーザ等によって構成され、複数(少なくとも3つ)の標点118〜120を形成するために複数(少なくとも3つ)の方向に標点用光を出力する。各標点118〜120は同一線上には位置しないように構成されている。
【0038】
尚、ロボットの動きが一方向に制限されている場合のように動きが所定方向に制限されている場合や、動きが所定方向に制限されている(可動部が移動する軸が少ない)工作機械等に使用する場合は、標点は必ずしも3つ必要とはされず、2つでよい場合もあり、適宜設定する。
【0039】
前記各標点用光は、1つの光源からの光を分岐して形成するようにしてもよい。標点118〜120は、複眼測定部125と光学式測定部115が共通して使用する基準となる点である。
光学式測定部115は、標点118〜120との位置関係が予め所定の位置関係になるように予め設定されている。この場合、光学式測定部115は、標点118〜120の中の少なくとも1つの標点(例えば、標点118、あるいは2つの標点118、119、または全ての標点118〜120)との位置関係が予め所定位置になるように設定する、あるいは、位置関係が所定位置になるように固定して設けることができる。
【0040】
反射部132は、光源129から照射された標点用光を乱反射する。光源129からの標点用光によって照射された反射部132上の複数の点が標点118〜120である。反射部132の標点118〜120位置で乱反射した標点用光は、複眼測定部125によって検出される。
光学式測定部115は、いわゆる三角測距法によって測定対象の形状や位置等を測定する光学式測定部であり、測定用光を出力する光源116、測定対象130で反射した前記測定用光を検出する光検出部117を備えている。
【0041】
光検出部117は、測定用光を受光する受光レンズ及び前記受光レンズを介して測定用光を検出する光検出素子(いずれも図示せず)を備えている。前記光検出素子として、PSD、CCD、CMOS光センサアレー等、各種の光検出素子が使用可能である。
光源116は、測定用光を測定対象130に向けて出力する。光検出部117は、測定対象130で反射した測定用光を検出する。
【0042】
また、詳細は後述するが、演算制御部134は、複眼測定部125と光学式測定器131とが同期しながら測定動作を行うように、複眼測定部125と光学式測定器131を制御する。また、演算制御部134は、複眼測定部125及び測定器131による測定データに基づいて、測定対象130の形状や所定位置からの距離等を算出する。このように、複眼測定部125と測定器131の同期をとりながら測定を行うことにより、測定対象130の形状等を、所定の固定位置(絶対原点)を基準とする座標で測定することが可能になる。
【0043】
アーム式多関節ロボット100は、所定の固定位置である台部101に取り付けられている。アーム式多関節ロボット100は、複数のリンク部102、104、106、108、110、112、複数の関節部103、105、107、109、111、113、及び、工作物の部品や工具等を把持するハンド部114を備えている。
関節部103、105、107、109、111、113及びハンド部114の動作は演算制御部134によって制御され、これにより、アーム式多関節ロボット100は、ハンド部114による部品の把持動作、移動動作、載置動作、工具を保持しての作業動作等を行うように構成されている。
【0044】
尚、複眼測定部125は複眼測定手段を構成し、光学式測定部115は光学式測定手段を構成している。
複眼測定手段は、相互の位置関係が既知の複数の光検出部を有し、所定の固定位置である原点を基準として、各標点の位置に関するデータを測定することができる。
光学式測定手段は、いずれかの標点との位置関係が既知の位置に配設されると共に、測定対象130の形状に関するデータ(例えば所定位置から測定対象130の測定点までの距離等)を測定することができる。
【0045】
アーム式多関節ロボット100は、動くことが可能な構成要素(可動部)を有する機器である可動体を構成し、関節部103、105、107、109、111、113及びハンド部114は可動部を構成している。また、リンク部104、106、108、110、112も、関節部103、105、107、109、111、113の動きに応じて動くため、可動部を構成している。
【0046】
光源129及び反射部132は標点用光生成手段を構成している。光学式測定部115は、前述したように標点118〜120との位置関係が既知の位置に配設され、光源116から測定対象130へ測定用光を出力すると共に測定対象130で反射した前記測定用光を光検出部117によって検出することにより、測定対象130の形状に関するデータを測定することができる。
【0047】
演算制御部134は、同期手段を構成しており、複眼測定部125による標点118〜120の測定動作と、測定部115による測定対象130の測定動作とが同期するように複眼測定部125と測定部115の動作を制御することができる。また、演算制御部134は、算出手段を構成しており、複眼測定部125によって測定した標点118〜120の位置に関する測定データと、測定部115によって測定した測定対象130の形状に関する測定データとに基づいて、絶対原点を基準とする形状等を算出することができる。
【0048】
図2は、図1に示した光学式測定システムの測定処理を説明するための説明図である。
図2において、π面201は、標点P1、P2、P3(図1の標点118、119、120に対応している。)を通る平面であり、図1の反射部132の表面に対応する平面である。
X・Y・Z座標軸は所定の固定位置(0,0,0)を原点(絶対原点)とする座標系(絶対座標系)である。原点(0,0,0)は、複眼測定部125が測定する座標値の原点となる。
【0049】
Xk・Yk・Zk軸は、X・Y・Z軸の原点(0,0,0)を、標点P1(X0,Y0,Z0)まで平行移動した座標系である。
XL・YL・ZL軸は、アーム式多関節ロボット100の関節部103、105、107、109、111、113、リンク部104、106、108、110、112及びハンド部114の動きにともなってXk・Yk・Zk軸が回転した座標系である。Xk・Yk・Zk軸からXL・YL・ZL軸への回転は、標点P1、P2、P3を通る平面の回転に対応している。
【0050】
Xc・Yc・Zc軸は、XL・YL・ZL軸を、原点(Xco,Yco,Zco)まで平行移動させた座標系であり、測定部115が測定対象130を測定する場合の座標軸系である。原点(Xco,Yco,Zco)は予め定めた既知の位置であり、例えば測定部115の光源116の位置に設定する。この場合、光源116と標点118〜120(P1〜P3)の中の少なくとも1つの位置関係が予め所定位置になるように設定することができる。
測定部115によって、測定対象130の測定点Qの座標値(Xw,Yw,Zw)がXc・Yc・Zc軸座標系の座標値として測定される。
【0051】
Xk・Yk・Zk軸に対するXL・YL・ZL軸の方向余弦を各々、(L1,m1,n1)、(L2,m2,n2)、(L3,m3,n3)とすると、Xk・Yk・Zk軸座標系上の座標(Xk,Yk,Zk)とXL・YL・ZL軸座標系上の座標(XL,YL,ZL)との関係は、次の3つの式(2)で表される。
Xk=L1・XL+L2・YL+L3・ZL
Yk=m1・XL+m2・YL+m3・ZL ・・・(2)
Zk=n1・XL+n2・YL+n3・ZL
【0052】
XL・YL・ZL軸座標系の原点からみたXc・Yc・Zc軸座標系の原点座標を(Xco,Yco,Zco)とすると、測定対象130上の測定点Qの座標(Xw,Yw,Zw)はXL、YL、ZLを用いて、次の3つの式(3)で表される。
尚、Xc・Yc・Zc軸は、測定部115が測定対象130を測定する場合の座標軸系であり、原点(Xco,Yco,Zco)はその原点である。前述したように、原点(Xco,Yco,Zco)は予め定めた既知の位置であり、例えば測定部115の光源116の位置に設定する。測定部115によって、測定対象130の測定点Qの座標値(Xw,Yw,Zw)がXc・Yc・Zc軸上の座標値として測定される。
【0053】
XL=Xw+Xco
YL=Yw+Yco ・・・(3)
ZL=Zw+Zco
したがって、Xk・Yk・Zk軸座標系からみた測定対象130上の測定点Qの座標(Xw,Yw,Zw)については、式(2)、(3)から、次の3つの式(4)が成立する。
【0054】
Xk=L1(Xw+Xco)+L2(Yw+Yco)+L3(Zw+Zco)
Yk=m1(Xw+Xco)+m2(Yw+Yco)+m3(Zw+Zco)・・(4)
Zk=n1(Xw+Xco)+n2(Yw+Yco)+n3(Zw+Zco)
したがって、X・Y・Z軸座標系における測定点Qの絶対座標(X,Y,Z)は、次の3つの式(5)で表される。
【0055】
X=Xk+X0
Y=Yk+Y0 ・・・(5)
Z=Zk+Z0
すなわち、測定点Qの座標(Xw,Yw,Zw)をX・Y・Z軸座標系で表すためには、方向余弦が不可欠となる。
【0056】
換言すれば、Xc・Yc・Zc軸座標系と平行関係にあるXL・YL・ZL軸座標系と、絶対座標系であるX・Y・Z軸座標系と平行関係にあるXk・Yk・Zk軸座標系の座標回転変換関係が解らなくてはならない。その為に、本実施の形態では、複眼測定部125を用いて、標点P1、P2、P3の座標を、X・Y・Z軸座標系で測定し、これにより、方向余弦(L1,m1,n1)、(L2,m2,n2)、(L3,m3,n3)を算出している。
【0057】
測定対象130の形状等を測定する場合、演算制御部134は、複眼測定部125による各標点P1〜P3の測定動作と、測定部115による測定対象130の測定動作とを同期して行うように制御する。また、演算制御部134は、これらの測定値から前記方向余弦(L1,m1,n1)、(L2,m2,n2)、(L3,m3,n3)を算出し、既知の座標値(Xco,Yco,Zco)、及び、測定対象130を測定した座標値(Xw,Yw,Zw)、標点P1の座標(X0,Y0,Z0)を用いて、式(4)、(5)により、測定点QのX・Y・Z軸座標系における座標(X,Y,Z)を算出する。
【0058】
このようにして、標点P1〜P3を通る平面の傾き、即ち、3つの標点P1〜P3の3次元座標位置を測定することにより、測定点Qの絶対座標(X,Y,Z)を得ることができる。各標点P1〜P3は同一線上に位置しないように構成されているため、絶対原点(0,0,0)と標点P1〜P3を結ぶ軸回りにπ平面(換言すればハンド部114)が回転した場合でも、回転位置を特定することが可能になり、不定になることがない。
【0059】
換言すれば、複眼測定部125によって絶対原点(0,0,0)から反射部132までのベクトルAを測定し、これに同期して測定部115によって測定部115から測定対象130の測定点QまでのベクトルCを測定し、反射部132から測定部115までの既知のベクトルBと前記ベクトルA、Cとに基づいて、X・Y・Z軸座標系において絶対原点(0,0,0)を基準とする測定点QまでのベクトルD(=ベクトルA+B+C)を測定することが可能になる。
【0060】
尚、光学式測定器131をハンド部114に一体的に固定し、測定部115と標点118〜120との位置関係を予め既知の値に設定しておくことにより、前記ベクトルBを既知の値とすることができる。
アーム式多関節ロボット100を制御しながら、測定対象130の形状、載置向き等を測定する場合、演算制御部134によりアーム式多関節ロボット100の動き制御することにより、ハンド部114によって測定対象130を把持させて所定の位置に移動させた後に把持開放して所定位置に載置する。
【0061】
この状態で、演算制御部134は、複眼測定部125と光学式測定部115とが同期しながら測定動作を行うように制御する。演算制御部134によって、複眼測定部125と測定部115とからの測定データに基づいて、前述したような演算処理を行うことにより、測定対象130の形状や測定対象130上の測定点Qまでの距離等を、絶対座標で測定することができる。
【0062】
図3は、標点用光生成手段の他の例を示す斜視図である。前記実施の形態では、標点用光生成手段は、少なくとも3つの方向に光を出力する光源129と、光源129からの光を乱反射する反射部132とを備えるように構成したが、反射部を用いることなく、標点を表す光を出力する複数(本例では少なくとも3つ)の発光素子を用いるように構成してもよい。
【0063】
即ち、図3において、平板部301には、発光ダイオード(LED)やランプ等によって構成される少なくとも3つの発光素子302、303、304が一体的に取り付けられている。3つの発光素子302、303、304の位置関係は、予め定めておくようにすることができる。
かかる構成により、発光素子302〜304は標点として機能するため、他に光源を設ける必要がないという効果を奏する。また、標点用発光素子302〜304を平板部301と一体的に配設できるため、小型化が可能である。また、標点位置にずれが生じないという効果を奏する。
【0064】
以上述べたように、本実施の形態に係る光学式測定システムにおいては、可動部であるハンド部114と一体的に設けられた部分に標点118〜120(P1〜P3)を設け、複眼測定部125によって、所定の固定位置である原点(0,0,0)を基準として標点118〜120(P1〜P3)の位置に関するデータを測定し、又、少なくとも1つの標点118〜120(P1〜P3)との位置関係が既知の位置に配設された光学式測定部115によって測定対象130の形状に関するデータを測定する。
【0065】
このとき、演算制御部134は、複眼測定部125による各標点118〜120(P1〜P3)の測定動作と、光学式測定部115による測定対象130の測定動作とが同期するように、複眼測定部125と光学式測定部115を制御する。また、演算制御部134は、複眼測定部125が測定した各標点118〜120(P1〜P3)の位置に関する測定データや、光学式測定部115によって測定した測定対象130の形状に関する測定データ、あるいは、既知の設定値に基づいて、前記原点を基準として測定対象130の形状を算出するようにしている。
【0066】
したがって、所定位置に固定した原点を基準として、移動する測定対象の形状等を簡単な構成で高精度に測定することが可能になる。
また、標点を少なくとも3点とすることにより、ハンド部114等の可動部が3次元的に動いても測定が可能になる。ハンド部114が様々な動きをして、標点が形成された反射部材が傾く等の多様な動きをした場合でも、測定対象の形状を高精度に測定することが可能になる。
また、アーム式多関節ロボットのハンド部114に把持した測定対象の形状等や、ハンド部により所定位置に載置した測定対象の形状等を簡単な構成で高精度に測定可能である。
【0067】
このように、絶対原点を基準として形状を測定することが可能であるため、結果として、絶対原点を基準として、測定対象の向き等の姿勢が測定されることになる。したがって、測定結果に基づいて、アーム式多関節ロボットを制御することにより、測定対象を所望の位置に載置する等の制御が可能になる。
よって、アーム式多関節ロボットを用いて、測定対象の所定の位置を正確に把持、所定の向きに正確に把持することができ又、測定対象を所定の位置に、所定の向きに、正確に置く等の作業を容易に行うことが可能になる。
【0068】
尚、前記実施の形態では、光学式測定器131を取り付ける可動部として、ハンド部114に取り付ける例で説明したが、リンク部102、104、106、108、110、112や関節部103、105、107、109、111、113に取り付けるように構成してもよい。
また、測定対象130の形状等は、演算制御部134によって算出するように構成したが、複眼測定部125や光学式測定部115に中央処理装置(CPU)を内蔵させ、演算制御部134の算出処理の一部を前記各CPUに実行させるように構成してもよい。
【0069】
また、前記実施の形態では、可動体としてアーム式多関節ロボットの例で説明したが、垂直多関節ロボットや水平多関節ロボット等の多関節ロボットをはじめとして、直交ロボットやパラレルリンクロボットを含む各種の産業用ロボットに適用することができる。
また、可動体としてマシニングセンタ等の工作機械であってもよく、この場合、可動部は工作機械の主軸に沿って移動可能な可動部であるように構成することができる。この場合、1軸、2軸、3軸又はそれ以上の主軸を有する工作機械にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
アーム式多関節ロボット等の産業用ロボットや工作機械等の可動部の位置、前記可動部に把持した部品や工具の位置、形状あるいは姿勢、前記可動部によって載置した部品や工具等の位置や姿勢等を、絶対座標等の所定位置を基準として測定する光学式測定システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学式測定システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学式測定システムの動作説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学式測定システムに使用する他の標点生成手段の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光学式測定システムの測定原理の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光学式測定システムの他の測定原理の説明図である。
【図6】一般的なアーム式多関節ロボットの構成図である。
【符号の説明】
【0072】
11、21、116、129・・・光源
12、130・・・測定対象
13、14・・・受光レンズ
15、16・・・光検出素子
23、24・・・結像
100・・・アーム式多関節ロボット
101、601・・・台部
102、104、106、108、110、112、603、605、607、610、・・・リンク部
103、105、107、109、111、113、602、604、606、608、609・・・関節部
114、611・・・ハンド部
115、121、123・・・光学式測定部
117・・・光検出部
122、124・・・光検出部
125・・・複眼測定部
131・・・光学式測定器
132・・・反射部
134・・・演算制御部
118〜120、P1〜P3・・・標点
301・・・平板部
302〜304・・・発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体と、
前記可動体の可動部に一体的に設けられ、複数の標点を表す標点用光を生成する標点用光生成手段と、
相互の位置関係が既知の複数の光検出部を有し、所定の固定位置である原点を基準として、前記各標点の位置に関するデータを測定する複眼測定手段と、
前記いずれかの標点との位置関係が既知の位置に配設されると共に、測定対象の形状に関するデータを測定する光学式測定手段と、
前記複眼測定手段による前記各標点の測定動作と、前記光学式測定手段による前記測定対象の形状測定動作とを同期させる同期手段と、
前記複眼測定手段によって前記各標点を測定した測定データと、前記光学式測定手段によって前記測定対象を測定した測定データとに基づいて、前記原点を基準として前記測定対象の形状を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定システム。
【請求項2】
前記標点は前記標点用光生成手段によって少なくとも3つ形成され、
前記複眼測定手段は、前記原点を基準として、前記各標点の位置を測定し、
前記光学式測定手段は、前記いずれかの標点との位置関係が所定の関係にある位置を基準として前記測定対象の形状を測定し、
前記算出手段は、前記複眼測定手段によって前記各標点を測定した標点測定データと、前記光学式測定手段によって前記測定対象を測定した形状測定データとに基づいて、前記原点を基準として前記測定対象の形状を算出することを特徴とする請求項1記載の光学式測定システム。
【請求項3】
前記光学式測定手段は、前記いずれかの標点との位置関係が固定されて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の光学式測定システム。
【請求項4】
前記可動体の可動部は産業用ロボットのハンド部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の光学式測定システム。
【請求項5】
前記可動体の可動部は工作機械の主軸に沿って移動可能な可動部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の光学式測定システム。
【請求項6】
前記標点用光生成手段は、少なくとも3つの方向に光を出力する光源と、前記光源からの光を乱反射する反射部とを備えて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の光学式測定システム。
【請求項7】
前記標点用光生成手段は、前記各標点を表す光を出力する複数の発光素子を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の光学式測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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