説明

光学情報読取装置

【課題】 読取対象までの距離を判定する機能を備えたものであって、そのための構成を簡単で安価に済ませる。
【解決手段】
読取口1cを有する本体ケース内に、読取対象Rに記録された二次元コードQを読取るための受光センサ3、結像レンズ4、照明部などを設け、更に、平行光線からなる距離判定用のスポット光Sを照射するスポット光照射部6を設ける。読取対象Rまでの距離Lが変化することに伴って、受光センサ3の撮影視野F中におけるスポット光Sの相対的な大きさが変動する。制御回路は、トリガスイッチがオン操作されると、読取対象Rにスポット光Sが照射された状態での画像を取込み、その大きさから距離Lを判定してシャッタ速度を設定する。引続き、スポット光Sの照射を停止し照明光を照射して受光センサ3による二次元コードQの画像の取込みを行い、デコード処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像レンズ及び受光センサを備えた読取機構により、読取対象に記されたバーコードや二次元コード等の情報コードを光学的に読取る光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読取るためのハンディタイプの光学情報読取装置においては、近年、使い勝手の良さから、読取対象から離れた位置から読取りができるものが供されてきている。このものは、例えば、手持ち可能に構成された本体ケース内に、CCDエリアセンサなどの受光センサ、結像レンズを有する結像光学部、LEDなどの照明装置等を備えて構成される。そして、ユーザが、本体ケースの先端部の読取口を読取対象に向けた状態で、トリガスイッチを操作すると、照明装置により読取対象(バーコード)に対して照明光が照射され、その反射光が読取口から入射され、結像レンズを介して受光センサにより撮像されるようになっている。
【0003】
ところで、この種の光学情報読取装置にあっては、照明光の強度や撮像素子の露光時間等の関係から、読取りに適切となる読取距離(装置から読取対象までの距離)にある程度の範囲がある。読取対象までの距離が例えばその範囲から遠い側に外れていると、光量不足となってしまうため、2度,3度と読取動作を繰返さなければならなくなるといった事態を招く。そこで、従来では、装置から読取対象までの距離を非接触で測定する手段を備えたものが考えられている。
【0004】
第1の従来例として、三角測量の原理を用いて装置から読取対象までの距離を測定する測距センサを設け、この測距センサの検出信号に基づいて、照明光(レーザービーム)の径が適正となるように制御を行うものが考えられている(例えば特許文献1参照)。また、第2の従来例として、読取対象に向けてレーザ光を出射し、その反射光が戻ってくるまでの時間を測定することに基づいて、読取対象までの距離が適切な読取範囲内にあるかどうかを判断するようにしたものが考えられている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−181995号公報
【特許文献2】特開平6−162249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記第1の従来例においては、比較的高価な測距センサを用いるためにコストアップを招いてしまうと共に、測距センサを搭載するためのスペースが必要となって大型化を招く不具合があった。また、上記第2の従来例においては、レーザ光の速度が非常に速いため、実際にその微小な時間を測定しようとしても、誤差が大きくなり、実用に耐え得るものではなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、読取対象までの距離を判定する機能を備えたものであって、そのための構成を簡単で安価に済ませることができる光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の光学情報読取装置は、結像レンズ及び受光センサを備えた読取機構により、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るものにあって、前記読取機構の撮影視野内において前記読取対象に対し平行光線からなる距離判定用のスポット光を照射するスポット光照射手段と、前記読取対象にスポット光を照射した状態の画像を前記読取機構により撮影させるスポット光画像取込み動作実行手段と、このスポット光画像取込み動作実行手段による撮影画像から前記スポット光の大きさを検出することに基づいて前記読取対象までの距離を判定する距離判定手段とを設けたところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
これによれば、スポット光照射手段から照射されるスポット光が、拡がりのほとんどない(或いは少ない)平行光線からなることにより、スポット光照射手段から読取対象までの距離が変動しても、読取対象に照射されるスポット光の絶対的な大きさの変動はごく少ないものとなる。これに対し、読取機構は一定の画角を有しており、その視野が、読取対象までの距離が遠ざかるにつれて次第に大きくなるので、撮影画像中のスポット光の相対的な大きさ(視野内に占める割合)が小さくなることになる。
【0009】
従って、スポット光画像取込み動作実行手段によって、読取対象にスポット光を照射した状態の画像を読取機構により撮影させるようにすれば、距離判定手段により、撮影画像中のスポット光の大きさに基づいて読取対象までの距離を判定することが可能となる。この場合、測距センサを設けるような場合と比較して、高価なセンサを用いずに済むので、構成が簡単で安価に済ませることができる。また、レーザ光が反射して戻ってくるまでの微小な時間を測定するものと比べて誤差も小さく、十分な確かさで距離を判定することができる。
【0010】
このとき、上記スポット光照射手段を、光源と集光レンズとを含んで構成すると共に、その集光レンズの焦点位置に前記光源を配置した構成とすることができる(請求項2の発明)。これによれば、いわゆるテレセントリック光学系を構成し、平行光線を得るに効果的となる。
【0011】
また、この種の光学情報読取装置は、一般に、情報コードの読取時に読取対象に照明光を照射する照明手段を備えるものとなっているが、上記スポット光照射手段により照射されるスポット光の色を、照明光の色と異なるものとすることができる(請求項3の発明)。これによれば、距離判定用のスポット光を、その色によって照明光などの他の光と明確に区別することが可能となる、
上記スポット光照射手段を、結像レンズの画角に沿って読取機構の撮影視野内の隅部にスポット光を照射するように構成することもできる(請求項4の発明)。これによれば、情報コードを読取るに際しての邪魔になりにくい位置にスポット光を照射することができる。
【0012】
本発明においては、工場出荷時に、撮影画像におけるスポット光の大きさとその際の前記読取対象までの距離との関係を少なくとも1ポイント記憶させる記憶手段を設け、距離判定手段を、その記憶手段に記憶された関係を用いて距離を判定するように構成することができる(請求項5の発明)。これによれば、組立て時において、スポット光照射手段と読取機構との間での組付け位置の多少のずれが生じていても、そのような組付け誤差に対応することができ、より正確に距離を判定することができるようになる。
【0013】
そして、上記距離判定手段により判定された距離が、情報コードの読取りに不適切な距離である場合に、その旨を報知する報知手段を設けることができる(請求項6の発明)。これによれば、報知手段により、ユーザに対し、読取対象までの距離が情報コードの読取りに不適切である旨を知らせることができ、読取対象までの距離を適切なものに変更した上での再度の読込みの実行を促すことができる。
【0014】
尚、上記距離判定手段により判定された距離の利用法としては、他にも、距離に応じてシャッタ速度を調整(距離が遠いほど撮像素子における露光時間を長くする)したり、可変焦点機構(結像光学系のレンズやミラーを自在に移動できる機構)を備えたものでは合焦位置を調整したり、照明光の強度が可変のものでは距離に応じて照明光の強度を調整(距離が遠いほど照明光の強度を高くする)したりすることができる。いずれも、読取対象までの距離に応じた、情報コードの良好な読取りを行うことができるようになる。
【0015】
また、読取機構による画像の取込み動作としては、スポット光画像取込み動作実行手段によるスポット光画像の取込みをまず行い、その後に、スポット光の照射を停止した状態で情報コードの画像取込みを実行するという、いわば2段階で行うことができる(請求項7の発明)。これによれば、スポット光の大きさの検出及び情報コードの読取りの各々を確実に行なうことができる。
【0016】
あるいは、スポット光画像取込み動作実行手段により取込んだ画像から、情報コードの読取りを併せて行うように構成することができる(請求項8の発明)。これによれば、一度の画像取込みにより、スポット光の大きさの検出及び情報コードの読取りの双方を行うことができ、効率的となる。尚、この際、バーコードのような一次元コードを読取る場合には、スポット光の存在しない部分(水平方向の走査線)で読取りを行えば良い。また、二次元コードを読取る場合、スポット光が二次元コードの一部に掛かっても、誤り訂正(データ復元)機能等を用いることにより、誤り訂正可能なレベルであれば読取りが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を手持ち式(ガンタイプ)の二次元コード読取装置に適用した第1の実施例について、図1ないし図6を参照しながら説明する。
まず、図5及び図6を参照して、本実施例に係る光学情報読取装置たる二次元コード読取装置の全体構成について述べる。図5に示すように、二次元コード読取装置の本体ケース1は、丸みを帯びた薄型のほぼ矩形箱状をなす主部1aの下面側後部寄りに、ユーザが片手で把持して操作することが可能なグリップ部1bを一体的に有して構成されている。前記本体ケース1(主部1a)の先端面部には、矩形状をなし透光性を有する読取口1cが設けられている。また、前記グリップ部1bの上端部には、読取指示用のトリガスイッチ2が設けられている。
【0018】
前記本体ケース1(主部1a)内の先端側部分には、商品に付されたラベルやカタログ等の読取対象R(図1、図6参照)に記録された情報コードたる例えばQRコード等の二次元コードQ(図1参照)を読取るための読取機構が設けられる。図6にも示すように、この読取機構は、受光センサ3、結像光学系を構成する結像レンズ4、照明手段としての照明部5(図6にのみ図示)等から構成されている。そして、本体ケース1内の先端側部分には、後述する距離判定用のスポット光Sを照射するスポット光照射手段としてのスポット光照射部6が設けられる。
【0019】
前記受光センサ3は、例えばCCDエリアセンサからなり、本体ケース1(主部1a)内の中央部に前記読取口1cを向いて配設されている。また、前記結像レンズ4は、前記受光センサ3の前方に配設されている。詳しい図示及び説明は省略するが、この結像レンズ4は、鏡筒内に複数枚のレンズを配設して構成されている。このとき、結像レンズ4の光軸O(図1参照)は、前記読取口1c面の中心を直交するように延びており、前記受光センサ3は光軸Oの延長線上にその中心を一致させるように配設されている。尚、この読取機構(結像レンズ4)は一定の画角θ(図1参照)を有している。
【0020】
前記照明部5は、詳しく図示はしないが、照明光源となる複数個のLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光及び拡散する照明用レンズとを、前記結像レンズ4の周囲部(上部を除く)に、前記読取口1cに向けて複数組配設して構成されている。これにて、照明部5によって読取口1cを通して読取対象Rに記された二次元コードQに照明光が照射され、二次元コードQからの反射光が読取口1cを通して入射され、前記結像レンズ4を介して受光センサ3上に結像され、以て、二次元コードQの画像が取込まれる(撮影される)ようになっているのである。尚、前記照明光は、例えば白色光とされている。
【0021】
そして、前記スポット光照射部6は、次のように構成されている。即ち、図1及び図2にも示すように、スポット光照射部6は、例えばLEDやレーザダイオードからなる光源7と、その前部に配置される集光レンズ8とを備えている。このとき、図2に示すように、集光レンズ8は、光源7側の入射面が平面状に構成されていると共に、出射面が球面状に構成されている。また、集光レンズ8の焦点位置に光源7が配置されている。これにて、いわゆるテレセントリック光学系が構成され、スポット光照射部6は、断面が円形状の、拡がりのほとんど無い(或いは少ない)平行光線からなるスポット光Sを出射するようになっている。
【0022】
このスポット光照射部6は、前記結像レンズ4の近傍に読取口1cを向いて配設され、図1に示すように、結像レンズ4の画角に沿ってスポット光Sを出射するようになっている。これにて、スポット光Sは、読取対象Rに対し、受光センサ3の撮影視野Fの常に左上部の隅部に位置して照射されるようになっている。尚、本実施例では、スポット光照射部6は、上記照明光とは異なる色である、例えば緑色のスポット光Sを出射するようになっている。
【0023】
このとき、図1に示すように、スポット光照射部6により照射されるスポット光Sは、平行光線であるため、スポット光照射部6(本体ケース1)から読取対象Rまでの距離が変動しても、読取対象Rに照射されるスポット光Sの絶対的な大きさの変動はごく少ないものとなる。これに対し、読取機構(結像レンズ4)は一定の画角θを有しており、受光センサ3の撮影視野Fが、読取対象Rまでの距離が遠ざかるにつれて次第に大きくなるので、撮影画像(撮影視野F)中のスポット光Sの相対的な大きさ(視野F内に占める割合)が小さくなることになる。
【0024】
具体的には、読取口1cから読取対象Rまでの間の距離が比較的近い距離L1(例えば100mm)の場合には、撮影視野Fの左上部に照射されるスポット光Sは、撮影視野F内において相対的に径の大きいものとなり、読取口1cから読取対象Rまでの間が中間的な距離L2(例えば200mm)の場合には、スポット光Sは中間的な大きさ(径)となり、読取口1cから読取対象Rまでの間が比較的遠い距離L3(例えば300mm)の場合には、スポット光Sは比較的小さな大きさ(径)となる。
【0025】
尚、図1の下部においては、上記読取対象Rまでの距離の異なる3種類の撮影画像を模式的に示しているが、これらの図では、便宜上、撮影視野Fの中央部分に二次元コードQが撮影されている様子を示している。そして、本実施例では、このスポット光照射部6は、前記トリガキー2がオン操作されたときに、スポット光Sを照射(点灯)し、引続き行われる受光センサ3による二次元コードQの画像取込み(撮影)時には消灯されるようになっている。電源オン時に、二次元コードQの画像取込み(撮影)時を除いて常時(或いは間欠的に)スポット光Sを照射する構成としても良い。
【0026】
また、図5に示すように、本体ケース1(主部1a)内の後部側には、図6に示す各回路等が実装されている回路基板9が設けられている。さらに、図6のみに図示するように、本体ケース1の外面部(主部1aの上面部)には、ユーザが各種入力指示を行うための操作スイッチ10、報知用のLED11、液晶表示器12などが設けられている。本体ケース1内には報知用のブザー13や外部との通信を行うための通信インタフェイス14、駆動電源となる二次電池15なども設けられている。
【0027】
図6は、本実施例の二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示しており、前記回路基板9には、マイコンを主体として構成され、全体の制御やデコード処理等を行う制御回路16が設けられている。この制御回路16には、前記トリガスイッチ2及び操作スイッチ10からの信号が入力されるようになっていると共に、制御回路16は、前記受光センサ3、照明部5、スポット光照射部6を制御するようになっており、以て、読取対象Rに記された二次元コードQの画像の取込み動作を実行するようになっている。また、この制御回路16は、前記LED11、ブザー13、液晶表示器12を制御し、通信インタフェイス14を介して外部(管理コンピュータ等)とのデータ通信を実行する。
【0028】
さらに、前記回路基板9には、増幅回路17、A/D変換回路18、メモリ19、特定比検出回路20、同期信号発生回路21、アドレス発生回路22などが実装され、これらも前記制御回路16により制御されるようになっている。これにて、受光センサ3による撮像信号が、増幅回路17にて増幅され、A/D変換回路18にてデジタル信号に変換されて画像データとしてメモリ19に記憶される。またこのとき、特定比検出回路20にて画像データ中の特定パターンが検出されるようになっている。前記受光センサ3及び特定比検出回路20、アドレス発生回路22には、同期信号発生回路21から同期信号が与えられるようになっている。
【0029】
さて、後の作用説明でも述べるように、本実施例では、前記制御回路16は、主としてそのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、読取対象Rにスポット光Sを照射した状態の画像を受光センサ3により撮影させるスポット光画像取込み動作を実行させるようになっていると共に、その撮影画像からスポット光Sの撮影視野F内における相対的な大きさ(例えばスポット光Sが占める円領域の直径方向の画素数)を検出し、その大きさ(直径)に基づいて読取対象Rまでの距離を判定するようになっている。従って、制御回路16が、本発明にいうスポット光画像取込み動作実行手段及び距離判定手段として機能するようになっている。
【0030】
この場合、本実施例では、トリガスイッチ2がオン操作されると、スポット光照射部6によるスポット光Sの照射(点灯)が行われ、その状態(照明部5はオフ(消灯)状態)で、受光センサ3により画像が取込まれ、引続き、スポット光Sの照射が停止された状態で照明部5がオン(点灯)されて受光センサ3による二次元コードQの画像の取込みが行われるようになっている。つまり、2段階の画像取込み動作が実行されるようになっている。
【0031】
また、1段目の画像取込み動作によりスポット光画像が取込まれると、撮影視野F中のスポット光Sの大きさが検出されて、その大きさに基づいて読取口1cから読取対象Rまでの距離Lが判定されるのであるが、このとき、予め、工場出荷時において、撮影視野F中のスポット光Sの大きさとその際の前記読取対象Rまでの距離Lとの関係が、例えば2ポイントについて測定され、その関係が記憶手段としてのメモリ19に記憶されるようになっている。後述するように、読取対象Rまでの距離Lを判定するにあたっては、メモリ19に予め記憶されているその関係が用いられるようになっている。
【0032】
そして、本実施例では、前記制御回路16は、判定された読取対象Rまでの距離Lに応じて、2段目の二次元コードQの画像取込み動作におけるシャッタ速度(画像センサ3における露光時間)を制御するようになっている。この場合、距離Lが遠いほど、露光時間を長くすることは勿論である。さらに本実施例では、判定された読取対象Rまでの距離Lが、二次元コードQの読取りに不適切な距離(遠過ぎる或いは近過ぎる)である場合に、前記ブザー13の鳴動及び液晶表示器12の表示により、その旨を報知するようになっている。従って、ブザー13及び液晶表示器12等から本発明にいう報知手段が構成されるようになっている。
【0033】
次に、上記構成の作用について、図3、図4も参照して述べる。まず、図4のフローチャートは、上記した、工場出荷時において、スポット光Sの撮影視野F中の大きさとその際の読取対象Rまでの距離Lとの関係を、例えば2ポイントについて測定してメモリ19に記憶させる際の、制御回路16が実行する処理手順を示している。
【0034】
即ち、まずステップS1では、例えばダミーの読取対象Rを本体ケース1の読取口1cからの距離が既知の第1の位置(例えば距離Lが100mm)に配置した状態で、受光センサ3による、読取対象Rにスポット光Sを照射した画像の取込み動作が実行される。次のステップS2では、取込んだ撮影画像データからスポット光Sの大きさ(例えば直径方向の画素数)が求められる。ステップS3では、距離Lと検出された大きさとがメモリ19に記憶される。
【0035】
ステップS4では、例えばダミーの読取対象Rを第2の位置(例えば距離Lが300mm)に配置した状態で、上記ステップS1と同様に、受光センサ3による、読取対象Rにスポット光Sを照射した画像の取込み動作が実行される。以下同様に、ステップS5では、取込んだ撮影画像データからスポット光Sの大きさが求められ、ステップS6では、距離Lと検出された大きさとがメモリ19に記憶され、この処理が終了する。
【0036】
ここで、図1から明らかなように、スポット光Sの撮影視野F中の大きさ(直径方向の画素数)xと、読取口1cから読取対象Rまでの距離Lとは、ほぼ反比例の関係にあり、例えば、L=a+b/x(但しa、bは定数)の式で表すことができる。従って、大きさxと距離Lとの関係が2ポイントについて判っていれば、簡単な連立方程式により定数a、bの値を算出することができ、距離Lと大きさxとの関係を求めることができるのである。これにより、組立て時において、スポット光照射部6と結像レンズ4等との間での位置あるいは角度の多少のずれが生じていても、そのような組付け誤差に対応することができるようになるのである。
【0037】
さて、上記のように構成された本実施例の二次元コード読取装置において、ユーザが、読取対象Rに記された二次元コードQを読取らせるにあたっては、本体ケース1を読取対象Rから適当な(任意の)距離だけ離し、且つ、読取口1cがその読取対象R(二次元コードQ)に向いた状態とする。そして、その状態でトリガスイッチ2をオン操作するようにする。図3のフローチャートは、トリガスイッチ2がオン操作されたときに、制御回路16が実行する二次元コードQの読取りの処理手順を示している。
【0038】
即ち、トリガスイッチ2がオン操作されると、まずステップS11にて、受光センサ3による1段目の画像取込み動作(露光)が実行される。このときには、読取対象Rにスポット光Sのみが照射され、照明光はオフしているので、受光センサ3には、読取対象Rにスポット光Sが写り込んだ画像が取込まれることになる。ステップS12では、取込まれた画像データから、撮影視野F中のスポット光Sの大きさが検出され、上記したように、その大きさから読取対象Rまでの距離Lが判定される。
【0039】
次のステップS13では、求められた距離Lが、二次元コードQの読取りに適切な範囲内にあるかどうかが判断される。読取対象Rまでの距離Lが、二次元コードQの読取りに不適切な距離(遠過ぎる或いは近過ぎる)である場合には(ステップS13にてNo)、ステップS19にて、ブザー13の鳴動及び液晶表示機12の表示によりNGの報知がなされる。適切な距離であれば(ステップS13にてYes)、ステップS14にて、その距離Lに応じて、2段目の画像取込み時における受光センサ3のシャッタ速度(露光時間)が設定される。
【0040】
引続き、ステップS15にて、受光センサ3による2段目の画像取込み動作(露光)が実行される。このとき(露光時のみ)には、スポット光Sがオフされると共に照明部5により照明光がオンされるので、読取対象Rに照明光が照射されその反射光(二次元コードQの撮影画像)が受光センサ3に取込まれることになる。また、上記ステップS14にて、距離Lに応じた適切なシャッタ速度が設定されているので、画像の取込みが良好に行われるようになる。
【0041】
ステップS16では、その画像データから二次元コードQのデコード処理が実行される。ステップS17では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、ステップS18にて、例えばLED11の点灯などによりOKの報知がなされ、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS17にてNo)、ステップS19にて、NGの報知がなされて処理が終了する。
【0042】
このように本実施例によれば、スポット光照射部6から読取対象Rに向けて照射されるスポット光Sを、拡がりのほとんどない平行光線から構成することにより、スポット光照射部6(読取口1c)から読取対象Rまでの距離Lが変動すると、それに伴って、読取対象Rに対するスポット光Sの受光センサ3の撮影視野Fに対する大きさが変動することを利用して、読取対象Rまでの距離Lを判定するように構成した。
【0043】
この場合、距離Lを判定するための構成として、光源7と集光レンズ8とから構成されるスポット光照射部6を設けるだけで済むので、前述した第1の従来例のような別途に比較的高価な測距センサを設けるような場合と比較して、構成が簡単で安価に済ませることができる。また、前述した第2の従来例のようなレーザ光が反射して戻ってくるまでの微小な時間を測定するものと比べて、距離の測定誤差も小さく、十分な確かさで距離Lを判定することができるものである。
【0044】
そして、本実施例では、判定された読取対象Rまでの距離Lに応じて、二次元コードQの読取時の適切なシャッタ速度(露光時間)が設定されるので、画像の取込みを良好に行うことができる。しかも、距離Lが二次元コードQの読取りに不適切な場合には、ユーザに対し、その旨を知らせることができ、読取対象Rまでの距離を適切なものに変更した上での再度の読込みの実行を促すことができる。
【0045】
また、特に本実施例では、受光センサ3による画像の取込み動作として、スポット光Sの画像の取込みをまず行い、その後に、スポット光Sの照射を停止した状態で二次元コードQの画像取込みを実行するという、いわば2段階の画像取込み動作を行うようにしたので、スポット光Sの大きさの検出及び二次元コードQの読取りの各々を確実に行なうことができるといったメリットも得ることができる。さらには、工場出荷時において、スポット光Sの大きさとその際の読取対象Rまでの距離Lとの関係を、2ポイントについて測定してメモリ19に記憶させるようにしたので、組立て時において、スポット光照射部6と結像レンズ4等との間での位置あるいは角度の多少のずれが生じていても、そのような組付け誤差に対応することができ、より正確な距離判定を行うことができる。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施例を示すものである。この実施例が上記第1の実施例と異なるところは、受光センサ3による2段階の画像取込み動作を実行することに代えて、一度の画像取込み動作を実行し、その撮影画像データに基づいて、スポット光Sの大きさの検出を行うと共に、二次元コードQの読取り(デコード)処理を併せて行うように構成した点にある。また、この実施例では、受光センサ3として、カラー読取が可能なCCDエリアセンサを採用するようにしている。
【0047】
ここで、周知のように、二次元コードQであるQRコードは、リードソロモン符号による誤り訂正(データ復元)機能を有しており、例えば面積の最大30%が汚れていたり、破損したりしていても、読取りが可能とされている。この実施例では、そのような誤り訂正機能を利用するものである。
【0048】
図7のフローチャートは、トリガスイッチ2がオン操作されたときに、制御回路16が実行する二次元コード(QRコード)Qの読取りの処理手順を示している。このときも、ユーザは、本体ケース1を読取対象Rから適当な(任意の)距離だけ離した状態で、読取口1cが読取対象Rの二次元コードQに向くように位置合せを行い、トリガスイッチ2をオン操作する。
【0049】
トリガスイッチ2がオン操作されると、まず、ステップS21にて、受光センサ3による画像取込み動作(露光)が実行される。このときには、読取対象Rにスポット光Sが照射されていると共に、照明光がオンするようになっている。従って、受光センサ3には、読取対象Rに記された二次元コードQの画像にスポット光Sが写り込んだ画像が撮影されることになる。ステップS22では、受光センサ3の撮影画像データから、撮影視野F中のスポット光Sの大きさが検出され、その大きさから読取対象Rまでの距離Lが判定される。尚、この場合、スポット光Sは照明光とは異なる色(緑色)に構成されているので、照明光がオンしていてもスポット光Sの検出は可能である。
【0050】
次のステップS23では、求められた距離Lが、二次元コードQの読取りに適切な範囲内にあるかどうかが判断される。読取対象Rまでの距離Lが、二次元コードQの読取りに不適切な距離である場合には(ステップS23にてNo)、ステップS28にて、NGの報知がなされる。適切な距離であれば(ステップS23にてYes)、以下、二次元コードQのデコード処理が実行されるのであるが、ここでは、まずステップS24にて、誤り訂正機能によるデータ復元が可能かどうかが判断される。
【0051】
このとき、二次元コードQの画像の一部に、スポット光Sの一部分が重なることがあると、その部分が汚れと同様に正しく読取れなくなる虞がある。このステップS24では、二次元コードQのデコード処理を一部実行し、誤り訂正機能によるデータ復元が可能なレベルであるかどうかが判断されるのである。誤り訂正機能によるデータ復元が不可能であると判断された場合には(ステップS24にてNo)、ステップS28にて、NGの報知がなされる。
【0052】
誤り訂正機能によるデータ復元が可能であると判断された場合には(ステップS24にてYes)、ステップS25にて、二次元コードQのデコード処理が実行される。ステップS26では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、ステップS27にて、OKの報知がなされ、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS26にてNo)、ステップS28にて、NGの報知がなされて処理が終了する。
【0053】
このような第2の実施例によれば、上記第1の実施例と同様に、読取対象Rまでの距離Lを判定する機能を備えたものであって、そのための構成を簡単で且つ安価に済ませることができるという優れた効果を奏する。そして、それに加え、一度の画像取込みにより、スポット光Sの大きさの検出及び二次元コードQの読取りの双方を行うことができ、効率的な動作を行うことができるものである。
【0054】
尚、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張、変更が可能である。
即ち、上記各実施例では、本発明の光学情報読取装置を、情報コードとしての二次元コードQ、特にQRコードの読取りに適用したが、他の種類の二次元コードの読取りに適用したり、バーコードなどの一次元コードの読取りに適用したりすることもできる。この場合、バーコードのような一次元コードに関して、一度の画像取込みにより、スポット光Sの大きさ検出及び情報コードの読取りを行う際には、スポット光Sの存在しない部分(水平方向の走査線)に沿ってバーコードの読取り(デコード)を行えば良く、同様に実施することができる。
【0055】
また、上記各実施例では、判定された読取対象Rまでの距離Lを、読取りに適切な距離であるかどうかの判断、あるいは、シャッタ速度(露光時間)の調整に利用するようにしたが、例えば、可変焦点機構(結像光学系のレンズやミラーを自在に移動できる機構)を備えたものでは合焦位置を調整したり、照明光の強度が可変のものでは距離に応じて照明光の強度を調整(距離が遠いほど照明光の強度を高くする)したりすることができる。いずれも、読取対象までの距離に応じた、情報コードの良好な読取りを行うことができるようになる。
【0056】
さらには、上記第1の実施例では、トリガスイッチ2のオン操作時に2段階の画像取込み動作を行うようにしたが、トリガスイッチを2段階での押圧操作可能に構成し、第1段の押圧操作(いわゆる半押し状態)でスポット光Sを照射するようにし、第2段の押圧操作により画像取込みを実行するように構成することも可能である。スポット光Sを常時(2段目の画像取込み動作時を除く)照射するように構成しても良い。スポット光Sの形状としても、棒状や四角形状など、種々の変形が考えられる。スポット光Sは、点滅光であっても良い。
【0057】
その他、例えば本発明の光学情報読取装置は、ガンタイプのものに限らず、ハンディタイプのものや、FAシステムなどに固定的に組込まれるもの(読取対象側の位置が変動するもの)であっても良く、また、読取対象に対して読取位置や読取範囲を示すためのマーカ光を照射する構成を付加しても良い等、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、読取対象までの距離の変化に伴ってスポット光の大きさが変動する様子を示す図
【図2】スポット光照射部の構成を示す平面図
【図3】二次元コードの読取りの処理手順を示すフローチャート
【図4】工場出荷時においてスポット光の大きさとその際の読取対象までの距離との関係を測定して記憶させる際の処理手順を示すフローチャート
【図5】二次元コード読取装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図6】二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図7】本発明の第2の実施例を示す図3相当図
【符号の説明】
【0059】
図面中、1は本体ケース、1cは読取口、2はトリガスイッチ、3は受光センサ、4は結像レンズ、5は照明部、6はスポット光照射部(スポット光照射手段)、7は光源、8は集光レンズ、16は制御回路(スポット光画像取込み動作実行手段、距離判定手段)、19はメモリ(記憶手段)、Rは読取対象、Qは二次元コード(情報コード)、Sはスポット光を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズ及び受光センサを備えた読取機構により、読取対象に記された情報コードを光学的に読取る光学情報読取装置において、
前記読取機構の撮影視野内において前記読取対象に対し平行光線からなる距離判定用のスポット光を照射するスポット光照射手段と、
前記読取対象にスポット光を照射した状態の画像を前記読取機構により撮影させるスポット光画像取込み動作実行手段と、
このスポット光画像取込み動作実行手段による撮影画像から前記スポット光の大きさを検出することに基づいて前記読取対象までの距離を判定する距離判定手段とを具備することを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
前記スポット光照射手段は、光源及び集光レンズを具備して構成されると共に、前記集光レンズの焦点位置に前記光源が配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項3】
情報コードの読取時に前記読取対象に照明光を照射する照明手段を備え、前記スポット光の色が、前記照明光の色と異なっていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記スポット光照射手段は、前記結像レンズの画角に沿って読取機構の撮影視野内の隅部にスポット光を照射するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
工場出荷時において、撮影画像における前記スポット光の大きさとその際の前記読取対象までの距離との関係を少なくとも1ポイント記憶させる記憶手段を備え、
前記距離判定手段は、前記記憶手段に記憶された関係を用いて距離を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記距離判定手段により判定された距離が、前記情報コードの読取りに不適切な距離である場合に、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記スポット光画像取込み動作実行手段によるスポット光画像の取込みの後に、前記スポット光の照射を停止した状態で前記情報コードの画像取込みが実行されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項8】
前記スポット光画像取込み動作実行手段により取込んだスポット光画像から、情報コードの読取りが併せて行われることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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