説明

光学活性シクロヘキセノンの製造方法

本発明は、アキラルな大環式3−置換−1,5−ジケトン(I)をナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの存在下で処理することによって、光学活性5−置換シクロヘキセノン(ii)を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、有機合成の分野、特に、反応式1:
【化1】

により、アキラルな大環式3−置換−1,5−ジケトンをナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの存在下で処理することによって光学活性5−置換シクロヘキセノンを製造する方法に関する。
【0002】
先行技術
光学活性シクロヘキセノン誘導体は、より複雑な種々の化合物、例えばステロイド又は大環式ケトンの合成にとって有用な中間体又は構成要素である。
【0003】
この事実にもかかわらず、知られている限りにおいては、先行技術は、アキラルなジケトンをキラルな促進剤の存在下で光学活性シクロヘキセノン誘導体に環化することを実施する1つの方法のみを報告しているにすぎない(C・アガミら フランス化学協会紀要、1987年、358号(C. Agami et al. in Bulletin de la Societe Chimique de France, 1987, 358)を参照のこと)。
【0004】
しかしながら、前記方法は、キラルな促進剤の性質及び使用される基質が極めて特殊であり、従ってほとんど融通性を有さないという欠点を被る。
【0005】
実際、考えられる1種の環化のキラルな促進剤、すなわちアミノ酸の(S)−プロリン及びジケトンの特殊な類型、すなわち4−アルキル−2,6−ヘプタンジオンのみが開示されているにすぎない。
【0006】
更に、この先行技術は、前記方法を他の促進剤を用いるか又は他の基質を用いて実施することの可能性に関するいかなる提案又は情報をも提供するものではない。基質に関しては、前記の4−アルキル−2,6−ヘプタンジオンが、例えば大環式1,5−ジケトンと比べて容易に活性化されてアルドール反応が進行することが公知であることを指摘することも有用である。実際、先行技術の実験条件を大環式1,5−ジケトンに適用することによっては、相応の光学活性シクロヘキセノンは得られないことを見出した。
【0007】
従って、この先行技術は、アキラルなジケトンから開始し、かつアルドール反応、例えば環化を促進するために使用される出発材料の性質及び/又はキラル化合物の性質がより広範な範囲にわたり、これにより顕著な融通性がもたらされる光学活性シクロヘキセノンを製造する方法を提供するという課題を解決するものではない。更に、この先行技術は特に、アキラルな大環式1,5−ジケトンから開始して光学活性シクロヘキセノン誘導体を製造する方法を提供するという課題についての解決法を提供するものではない。
【0008】
本発明の詳細な説明
前記課題を解決するために、本発明は、分子内アルドール縮合を介する単一段階での光学活性シクロヘキセノン誘導体の合成を標的とする方法に関する。
【0009】
従って、本発明は、式
【化2】

[式中、Rは、置換されていてよい直鎖状のC〜Cのアルカンジイル又はアルケンジイル基であり;
は、置換されていてよいC1〜6の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル又はアルケニル基若しくは置換されていてよいフェニル基であり;かつ
アスタリスクは、前記化合物(II)が光学活性形であることを意味する]の化合物を、式
【化3】

[式中、R及びRは、式(II)中に示した意味を有する]のアキラルなジケトンを基質としてナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの存在下で処理することによって製造する方法に関する。
【0010】
上述のように、R及びRは、例えば2個までの基によって置換されていてよい。限定されない例として、前記基は、R又はOR若しくはハロゲン原子でも示され、その式中、Rは、メチル又はエチルを表す基である。前記R基は、C3〜4アセタール基を有していてもよい。
【0011】
本発明の好ましい実施態様によれば、Rは、C1〜6の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基である。
【0012】
更に、式(I)の化合物が、3−メチル−1,5−シクロペンタデカンジオンであり、従って式(II)の化合物が、(S)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン又は(R)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン若しくは前記立体異性体の光学活性混合物であることが好ましい。
【0013】
上述にように、本発明の方法は、ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの存在下で実施する。
【0014】
本明細書では、「光学活性アルコキシド」は、アルコキシ基、すなわち脱プロトン化アルコール基を有する少なくとも1個の成分を有し、かつ光学活性な化合物を意味する。換言すれば、前記光学活性アルコキシドは、1個、2個又は3個のかかる成分を有するC〜C40化合物、又は炭水化物、例えば糖、又は光学活性アルコキシ基を有するポリマーの、光学活性なナトリウム、カリウム又はセシウム塩であってよい。
【0015】
本発明の方法に使用できる現在公知のナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの網羅的な列記を提供することは可能ではないが、以下のものを好ましい例として挙げることができる:
a)C〜C18光学活性モノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、例えば式
【化4】

[式中、Rは、C1〜4アルキル基又は置換されていてよいフェニル基であり、かつRは、C1〜4アルキル基、又はC(R(OR4’)で示され、その式中、Rは、水素原子か若しくはR基であり、かつR4’は、C1〜6アルキル基、置換されていてよいフェニル又はベンジル基若しくはC3〜9トリアルキルシリル又はトリフェニルシリル基を表す基であるか;又は例えば式R3’−OHで示され、その式中、R3’は、C7〜12キラル炭化水素基であるキラルアルコール]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
b) − C〜C18の光学活性1,2−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、例えば式
【化5】

[式中、Rはそれぞれ、置換されていてよいフェニル基、C1〜6アルキル基又はCOORで示され、その式中、Rは、C1〜4アルキル基を表す基である]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
− C〜C18の光学活性1,3−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、例えば式
【化6】

[式中、Rはそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
− C〜C35の光学活性1,4−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、例えば式
【化7】

の成分を含有する光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩か、又は、
例えば式
【化8】

[式中、Rは、上記の意味を有する]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
c)β位に窒素を含有するC〜C25の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、例えば式
【化9】

[式中、Rは上記の意味を有し、R7’は、上述のR又はR基であり、かつRは、置換されていてよいフェニル基か若しくはC1〜9アルキル又はアルキルベンゼン基であり、かつR8’は、R基又はSO、RCO、CHCHNR、SiR、PO(OR基であり;場合によりR及びR7’は一緒に結合してC5〜10環を形成していてよいか、又はR7’及びRは一緒に結合してC4〜5複素環を形成してよいか、又はR及びR8’は一緒に結合してC2〜5複素環を形成していてよい]の光学活性1,2−アミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は、例えば式
【化10】

[式中、R、R及びR7’はそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性イミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
d)前記a)、b)又はc)に挙げられた光学活性アルコキシドから誘導された2個又は3個の基を有するC15〜38化合物のナトリウム、カリウム又はセシウム塩;又は
e)前記d)に挙げられ、かつ不溶性材料、例えばシリカ、メリフィールド樹脂、金又はポリスチレン上に担持された光学活性アルコキシドのナトリウム、カリウム又はセシウム塩である。
【0016】
フェニル基の置換基の例は、Cl、F、Br、R’、SR’、SOR’、SOR’、NO、NR2’又はOR’で示され、その式中、R’は、C1〜4アルキル基を表す基である。前記芳香族環は、1個又は2個の前記の基で置換されていてよい。
【0017】
本発明の特定の実施態様によれば、前記のナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドは、1個又は2個のアルコキシ基を有しており、かつ:
a)式
【化11】

[式中、Rは、C1〜4アルキル基若しくは置換されていてよいフェニル又はベンジル基であり、かつR10は,1個のC1〜4アルキル基で置換されていてよいフェニル基である]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
b)式
【化12】

[式中、R10はそれぞれ、前記の意味を有する]の光学活性1,2−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は、式
【化13】

[式中、R11はそれぞれ、C1〜4基又は水素原子である]の光学活性1,4−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
c)式
【化14】

[式中、R12は、Cl、Br、SOMe、F、SMe、OMe、NO又はC1〜4アルキル基で置換されていてよいフェニル基であり、R13は、C1〜4アルキル基、R12基又はCHOSi(R13基であり、かつR14は、ベンジル又はC1〜4アルキルであるか、若しくは2つのR14が一緒に結合してC4〜5複素環を形成する]の光学活性1,2−アミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は式
【化15】

[式中、R12はそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性1,2−イミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;又は
d)式
【化16】

[式中、R12はそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩である。
【0018】
上記のナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの特定の例は、式1〜12
【化17】

[式中、点線は、単結合又は二重結合を示す]の化合物の何れか1種のナトリウム、カリウム又はセシウム塩であり、前記化合物は、出発化合物(I)が大環状化合物である本発明にかかる方法に特に有用であることが判明している。
【0019】
光学活性アルコキシドが特定の鏡像異性体過剰率(e.e.)により特定決定されうる点を挙げることも有用である。一般的に、大きいe.e.を有する光学活性アルコキシドは、大きいe.e.を有する化合物(I)を提供するものであった。従って、本発明にかかる方法において、少なくとも50%か又は更には少なくとも90%のe.e.を有する光学活性アルコキシドを利用することが好ましい。
【0020】
光学活性アルコキシドは、反応媒質に広範な濃度で添加してよい。限定されない例として、光学活性アルコキシド濃度として、ジケトン(I)に対して0.2〜20モル当量の範囲にわたる値を引き合いに出すことができる。この光学活性アルコキシド濃度は、1.0〜8.0モル当量であることが好ましい。無論、前記アルコキシドの最適濃度は、そのアルコキシドの性質及び所望の反応時間に依存する。
【0021】
ナトリウム、カリウム又はセシウムのキラルアルコキシドは、事前に形成された塩の形であるか、又はその使用前に現場で、例えば、ヒドロキシ基を有する少なくとも1個の成分を有するキラル化合物と適切なナトリウム、カリウム又はセシウム塩基とを予備混合することによって形成してよい。
【0022】
本発明の特定の実施態様によれば、好ましいアルコキシドは、ナトリウム又はカリウムのアルコキシドである。
【0023】
更に本方法は、添加剤の存在下で実施してよい。前記添加剤は、水と反応可能か又は水を閉じ込め、かつ所望の生成物の形成に有利であると考えられている化合物である。
【0024】
有用な添加剤の例は:
i)アルカリ水素化物又はアルカリ土類水素化物、例えばNaH、KH、CaH、LiH;
ii)水とクラスレート(chlatrate)を形成可能な、反応媒質に不溶な無機材料、例えば無水のゼオライト、好ましくは無水の4Å型のゼオライト、又は無水のNaOH、NaCl、NaCO、MgSO、NaSO、NaO、CaCl又はMgClであるか;又は
iii)水と反応して非酸性化合物を形成する有機材料、例えば、BuONa、オルトエステル、N−メチル−N−トリメチルシリル−トリフルオロアセトアミド又は1−トリメチルシリルイミダゾールである。
【0025】
本発明の更なる実施態様によれば、好ましい添加剤は、NaH、KH、無水の4Å型のゼオライト、BuONa、又は無水のKOH、NaOH、NaCl、NaCO、NaSOである。
【0026】
添加剤は、反応媒質に添加剤の厳格な性質に依存する広範な量で添加してよい。しかしながら、理論的に形成され得る全ての水を閉じ込めるのに理論的に必要な量を3倍だけ上回る量の添加は、評価できる付加的ないかなる利益をも提供するものではない。
【0027】
本発明にかかる方法は、溶剤の存在下又は不存在下で実施してよいが、何れの場合においても、無水条件下、例えば0.5(質量/質量)%未満の水の存在下で実施することが有利である。当業者が予想しうるように、溶剤の存在は、出発ジケトン(I)が反応条件下で固体化合物である場合にのみ必須である。
【0028】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、出発ジケトン(I)の物理的状態とは無関係に、本方法は溶剤の存在下で実施することが有利である。前記溶剤は、その反応に化学的に適合しなければならず、かつアルコキシドを不活性化させるものではない。
【0029】
好適な溶剤は、非プロトン性溶剤である。かかる溶剤の限定されない例は、エーテル、エステル、アミド、アミン、芳香族化合物の溶剤、直鎖状又は分枝鎖状又は環状の炭化水素、塩素化溶剤及びこれらの混合物である。この溶剤は、C〜Cエーテル、例えばTHF又はジオキサン、C〜Cアミン、例えばNEt、ピリジン、N−Me−ピロリジン又はN−Me−モルホリン、C〜Cアミド、例えばDMF又はN−メチルピロリドン、塩化メチレン、C〜C10芳香族化合物の溶剤、例えばトルエン又はアニソール、若しくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0030】
本発明にかかる方法を実施できる温度は、−20℃〜100℃、好ましくは0〜60℃である。無論、当業者は、出発及び最終生成物及び/又は最終溶剤の融点及び沸点の関数として好ましい温度を選択することもできる。
【0031】
本発明を、目下のところ、以下の実施例により更に詳細に記載するが、その際、略は当該分野の慣用の意味を有し、温度は摂氏温度(℃)で示し;NMRスペクトルデータはCDCl中で、H又は13Cについて、それぞれ360MHz又は100MHzの機械を用いて記録し、化学的変位δをスタンダードとしてのTMSについてppmで示し、結合定数JはHzで表現する。
【0032】
実施例1
光学活性14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オンの製造
【化18】

a)一般的な手順:
反応容器中に、不活性雰囲気下で、126mgの3−メチル−1,5−シクロペンタデカンジオン、3mlの無水THF、場合により200mgの無水の分子ふるい4Å又は2モル当量のNaHを導入し、そして第1表によるNaアルコキシド又はKアルコキシド1〜12を無水THF中に溶解させた。存在するTHFの全量を算出して、反応の初期に出発ジオンの濃度を0.1〜0.4モル/Lに維持した。
【0033】
この反応混合物を、室温で攪拌し、続いてGCを行った。この反応を停止させるために、この混合物を水か又は2NのHCl水溶液で加水分解した。ジエチルエーテルで水層を抽出した後に、有機層をMgSO上で乾燥させ、それを濾過した。この溶剤を真空下で除去し、そして残留物をフラッシュクロマトグラフィー又はバルブ−トゥ−バルブ(buib to bulb)蒸留の何れかにより精製し、所望の生成物、すなわち、(S)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン又は(R)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン若しくはアルコキシドの立体配置に依存する前記立体異性体の光学活性混合物が得られた。
H−NMR:1.04(d,j=6.1Hz,3H)、1.18−1.46(m,10H)、1.50−1.75(m,4H)、1.97−2.15(m,3H)、2.30−2.40(m,3H)、2.41−2.56(m,3H)。
13C−NMR:21.3、23.5、24.6、25.1、25.3、25.5、26.0、26.2、26.6、29.7、32.3、38.3、46.7、136.3、158.2、199.7。
【0034】
得られた結果を第1表に示す。
【0035】
第1表:使用されたアルコキシドの関数としての最終生成物の収率及びe.e.。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、Rは、置換されていてよい直鎖状のC7〜9のアルカンジイル又はアルケンジイル基であり;
は、置換されていてよいC1〜6の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル又はアルケニル基若しくは置換されていてよいフェニル基であり;かつ
アスタリスクは、前記化合物(II)が光学活性形であることを意味する]の化合物を製造する方法において、前記化合物を、式
【化2】

[式中、R及びRは、式(II)中に示した意味を有する]のアキラルなジケトンを基質としてナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドの存在下で処理することによって製造する方法。
【請求項2】
が、C1〜6の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が、3−メチル−1,5−シクロペンタデカンジオンであり、かつ式(II)の化合物が、(S)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン又は(R)−14−メチル−ビシクロ[9.4.0]ペンタデカ−1(11)−エン−12−オン若しくは前記立体異性体の光学活性混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドが、1個、2個又は3個のアルコキシ基を有するC4〜40化合物、又は炭水化物、又は光学活性アルコキシ基を有するポリマーの、光学活性なナトリウム、カリウム又はセシウム塩であることを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドが:
a)C〜C18光学活性モノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
b)C〜C18光学活性1,2−ジオール、C〜C18光学活性1,3−ジオール、C〜C35光学活性1,4−ジオールの、ナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
c)β位に窒素を含有するC〜C25光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
d)前記a)、b)又はc)に挙げられた光学活性アルコキシドから誘導された2個又は3個の基を有するC15〜38化合物のナトリウム、カリウム又はセシウム塩;又は
e)前記d)に挙げられ、かつ不溶性材料上に担持された光学活性アルコキシドのナトリウム、カリウム又はセシウム塩であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドが:
a)式
【化3】

[式中、Rは、C1〜4アルキル基又は置換されていてよいフェニル基であり、かつRは、C1〜4アルキル基、又はC(R(OR4’)で示され、その式中、Rは、水素原子か若しくはR基であり、かつR4’は、C1〜6アルキル基、置換されていてよいフェニル又はベンジル基若しくはC3〜9トリアルキルシリル又はトリフェニルシリル基を表す基であるか;又は式R3’−OHで示され、その式中、R3’は、C7〜12キラル炭化水素基であるキラルアルコールである]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
b)式
【化4】

[式中、Rは、置換されていてよいフェニル基、C1〜6アルキル基、又はCOORで示され、その式中、Rは、C1〜4アルキル基を表す基である]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
− 式
【化5】

[式中、Rはそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
− 式
【化6】

の成分を含有する光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩、
− 式
【化7】

[式中、Rは、上記の意味を有する]の光学活性ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
c)式
【化8】

[式中、Rは上記の意味を有し、R7’は、上述のR又はR基であり、かつRは、置換されていてよいフェニル基か若しくはC1〜9アルキル又はアルキルベンゼン基であり、かつR8’は、R基又はSO、RCO、CHCHNR、SiR、PO(OR基であり;場合によりR及びR7’は一緒に結合してC5〜10環を形成していてよいか、又はR7’及びRは一緒に結合してC4〜5複素環を形成してよいか、又はR及びR8’は一緒に結合してC2〜5複素環を形成していてよい]の光学活性1,2−アミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は、式
【化9】

[式中、R、R及びR7’はそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性イミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
d)前記a)、b)又はc)に挙げられた光学活性アルコキシドから誘導された2個又は3個の基を有するC15〜38光学活性化合物のナトリウム、カリウム又はセシウム塩;又は
e)前記d)に挙げられ、かつシリカ、メリフィールド樹脂、金又はポリスチレン上に担持された光学活性化合物のナトリウム、カリウム又はセシウム塩であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドが:
a)式
【化10】

[式中、Rは、C1〜4アルキル基若しくは置換されていてよいフェニル又はベンジル基であり、かつR10は,1個のC1〜4アルキル基で置換されていてよいフェニル基である]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
b)式
【化11】

[式中、R10はそれぞれ、前記の意味を有する]の光学活性1,2−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は、式
【化12】

[式中、R11はそれぞれ、C1〜4基又は水素原子である]の光学活性1,4−ジオールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
c)式
【化13】

[式中、R12は、Cl、Br、SOMe、F、SMe、OMe、NO又はC1〜4アルキル基で置換されていてよいフェニル基であり、R13は、C1〜4アルキル基、R12基又はCHOSi(R13基であり、かつR14は、ベンジル又はC1〜4アルキルであるか、若しくは2つのR14は一緒に結合してC4〜5複素環を形成する]の光学活性1,2−アミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;
又は、式
【化14】

[式中、R12はそれぞれ、上記の意味を有する]の光学活性1,2−イミノアルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩;若しくは
d)式
【化15】

[式中、それぞれのR12は、上記の意味を有する]の光学活性アルコールのナトリウム、カリウム又はセシウム塩であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ナトリウム、カリウム又はセシウムの光学活性アルコキシドが、式1〜12
【化16】

[式中、点線は、単結合又は二重結合を示す]の化合物の何れか1種のナトリウム、カリウム又はセシウム塩であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
光学活性アルコキシドのe.e.が、少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
光学活性アルコキシドが、ナトリウム又はカリウムの光学活性アルコキシドであることを特徴とする、請求項1から9までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
i)アルカリ水素化物又はアルカリ土類水素化物;
ii)水とクラスレートを形成可能な、反応媒質に不溶な無機材料;及び
iii)水と反応して非酸性化合物を形成可能な有機材料
からなる群から選択された添加剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から10までの何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
添加剤が、NaH、KH、無水の4Å型のゼオライト、BuONa、又は無水のKOH、NaOH、NaCl、NaCO、NaSOからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶剤の存在下で実施し、かつ前記溶剤が、C〜Cエーテル、C〜Cアミン、C〜Cアミド、塩化メチレン、C〜C10芳香族化合物の溶剤及びこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1から12までの何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−522257(P2007−522257A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553702(P2006−553702)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000399
【国際公開番号】WO2005/077875
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】