説明

光学活性スルホニルイミン化合物の製造方法

【課題】カルボニル化合物とエナミン誘導体を用いるアルドール付加反応型の触媒的不斉求核付加反応により簡便でかつ高収率で立体選択的なスルホニルイミン化合物、並びにその加水分解物及び還元物の製造方法を提供する。
【解決手段】次の一般式(1)


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、Rは、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表す。)で表されるエンスルホンアミドと、アルデヒド基を有する化合物とを、銅化合物及び不斉炭素原子を含有するジイミンとを含有してなる触媒の存在下で反応させて、対応するスルホニルイミン化合物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンスルホンアミド、及びこれと、アルデヒド基を有する化合物とを、有機溶媒中で銅化合物及び不斉炭素原子を含有するジイミンとを含有してなる触媒の存在下で反応させて、スルホニルイミン化合物、並びにその加水分解物及び還元物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農薬、香料、機能性高分子等のファインケミカル分野においては、化学物質の有効性や安全性の観点からより高純度の物質を提供することが望まれてきている。特に、分子中に不斉炭素原子を有する物質については、光学的にもより高純度の物質の提供が望まれてきており、立体選択的又はエナンチオ選択的な化学物質の製造法の開発が望まれてきている。このような製造方法は、一般に不斉合成法として呼ばれており、不斉水素化反応はすでに工業化されてきている。
触媒的不斉アルドール反応は、カルボニル基と水酸基を有する化合物のエナンチオ選択的な製造方法としてファインケミカル分野における重要な化合物の合成方法として活発に検討されてきたが、アルドール反応は自己縮合やオリゴマー化などの副反応が生じやすく必ずしも十分な収率で目的物を得ることはできなかった。特に、アルデヒドを求核剤として用いた場合、自己縮合や、生成物の再反応といった問題を伴うことがよく知られている。近年、アルデヒドを直接、あるいはアルデヒド由来のケイ素、エノレートを用いた触媒的不斉交差アルドール反応が報告され注目されている(非特許文献1〜3参照)。
本発明者らは、このような状況において、キラル銅触媒を用いてイミン、アルデヒド、ケトンに対する、ケトン由来のエンカルバメート又はエナミドの触媒的不斉求核付加反応を報告している(特許文献1、及び非特許文献4〜7参照)。
【0003】
しかしながら、これまでの報告では単純なエナミンが使用されてきており、エナミンの改良が求められていた。この改良のひとつとして、キラルなアザエノラートを用いる求核付加反応が報告されていた。アザエノラートは求核性が高く有用であり、特に、アザエノラートを用いた不斉求核付加反応は、光学活性な含窒素化合物を得ることができるために有用であるとされてきた。
一方、化学工業の分野では環境負荷の低減が重要課題となっており、特に不斉点を触媒量の不斉源から合成する試みが活発に検討されている。従来法であるキラルなアザエノラートを用いる不斉求核付加反応は、その選択性には優れるものの不斉源を当量必要とし、反応後多くの場合不斉源を回収しない。アザエノラートを求核剤として用いる触媒的不斉付加反応も検討されているが非常に限られた例が報告されているのみであった。
また、近年、本発明者らは、エナミドやエンカルバメートがキラルルイス酸触媒存在下、エチルグリオキシレートやアシルイミン、アゾジカルボキシレート等種々の求電子剤と反応し、付加体を高収率、高選択的に与えることを見いだしている。
【0004】
【特許文献1】WO 2005/070864号
【非特許文献1】Cordoba,A. 他 J.Org.Chem. 2002,67,301.
【非特許文献2】Chowdari,R. 他 Tetrahedron Lett. 2002,43,9591.
【非特許文献3】Denmark,S. E. 他 Angew.Chem.,Int.Ed. 2001,40,4759.
【非特許文献4】J.S.Fossey et al.,Org. Biomol. Chem.,2005,3,2910-2913
【非特許文献5】R.Matasubara et al.,Tetrahedron,60,2004,9769-9784
【非特許文献6】R.Matasubara et al.,Angew. Chem. Int. Ed.,2004,43,1679-1681
【非特許文献7】R.Matasubara et al.,Angew. Chem. Int. Ed.,2004,43,3258-3260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、医薬品、農薬、香料、機能性高分子等の製造のための原料や合成中間体として有用な光学活性アミノアルコールやケトアルコールを製造するための原料となる、一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を触媒的不斉求核付加反応により製造する方法を提供することを目的としている。より詳細には、本発明は、銅化合物及び光学活性ジイミンの存在下で、カルボニル化合物とエナミン誘導体を用いるアルドール付加反応型の触媒的不斉求核付加反応により簡便でかつ高収率で立体選択的なスルホニルイミン化合物、並びにその加水分解物及び還元物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、カルボニル化合物とエナミン又はその誘導体を用いたアルドール付加反応型の求核付加反応においては、アルドール付加反応により生成した付加体を加水分解してアルドール誘導体を製造するものであるが、この反応は原料のカルボニル化合物もエナミンも、いずれもカルボニル誘導体であることから、自己縮合やオリゴマー化などの副反応が生じやすく、生成物を単離することが困難な場合があった。特に使用するエナミンがアルデヒド由来のものである場合には、生成物が複雑となり十分な収率をえることは困難であった。本発明者らは、さらに検討し、新しいタイプのエナミン誘導体を用いたアルドール付加反応型の求核付加反応を見いだした。
【0007】
即ち、本発明は、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドと、アルデヒド基を有する化合物とを、銅化合物及び不斉炭素原子を含有するジイミンとを含有してなる触媒の存在下で反応させて、一般式(3)表されるスルホニルイミン化合物、並びにその加水分解物及び還元物を製造する方法に関する。本発明の方法は、立体選択的なものであり、本発明は、光学活性のスルホニルイミン化合物、並びにその加水分解物及び還元物を効率的に製造する方法に関する。
【0008】
本発明をより具体的に説明すれば次のとおりとなる。
(1)次の一般式(1)
【0009】
【化5】

【0010】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、Rは、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表し、また、RとRが一緒になって隣接する炭素原子と共に炭素数5〜15の炭素環を形成してもよい。)
で表されるエンスルホンアミドと、次の一般式(2)
【0011】
【化6】

【0012】
(式中、Rは、−R基、−C(=O)−R基、又は−COO−R基を示し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示す。)
で表されるアルデヒド基を有する化合物とを、銅化合物及び不斉炭素原子を含有するジイミンとを含有してなる触媒の存在下で反応させて、次の一般式(3)
【0013】
【化7】

【0014】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表し、Rは、炭素アルキル基又はアリール基を表し、Rは、アリール基を表し、Rは、−R基、−C(=O)−R基、又は−COO−R基を示し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表し、*印は不斉炭素原子であることを表す。)
で表されるスルホニルイミン化合物を製造する方法。
(2)一般式(2)におけるRが、−C(=O)−R基又は−COO−R基(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示す。)である前記(1)に記載の方法。
(3)不斉炭素原子を含有するジイミンが光学活性体であり、生成する一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物が少なくとも一種の光学活性体を過剰に含むものである前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物が、光学活性体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)不斉炭素原子を含有するジイミンが、エチレンジアミン構造を有する化合物である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)不斉炭素原子を含有するジイミンが、次の一般式(4)
【0015】
【化8】

【0016】
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立して置換基を有してもよいアリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表す。)
で表されるエチレンジアミン誘導体である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)銅化合物が、過塩素酸銅である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記一般式(1)における、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、Rが、置換基を有してもよい炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数6〜36、の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)を表し、Rが、置換基を有してもよい炭素数6〜36の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)を表す前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記一般式(1)における、RとRが一緒になって隣接する炭素原子と共に炭素数5〜15の炭素環が、炭素数5〜15のシクロアルケン環である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)アルキル基又はアリール基における置換基が、ハロゲン、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基から誘導されるアルコキシ基である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記した一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を加水分解して、イミノ基の部分がケト基(=O)になった対応する3−ケトアルコール誘導体を製造する方法。
(12)加水分解が、酸の存在下で行われる前記(11)に記載の方法。
(13)前記した一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を還元して、イミノ基の部分がアミド基(−N−SO−)になった対応する3−アミノアルコール誘導体を製造する方法。
(14)還元が、水素化物による還元である前記(13)に記載の方法。
【0017】
次に、本発明の態様をさらに詳細に説明する。
まず本発明の、アルデヒド基を有する化合物のアルデヒド基に、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドをアルドール付加型の求核付加反応について説明する。
本発明における「アルデヒド基を有する化合物」としては、アルデヒド基(−CHO基)を有し、当該アルデヒド基の一端に炭素原子が結合したものであって、反応条件下で副反応を生じさせるような官能基を有さないものであれば特に制限はない。そして、当該アルデヒド基(−CHO基)に対する反応が、求核反応であることから電子吸引性の官能基を有し、当該アルデヒド基(−CHO基)の炭素原子における電子がより不足系となっているものが好ましい。
本発明における好ましい「アルデヒド基を有する化合物」をより具体的に示せば、次の一般式(2)
【0018】
【化9】

【0019】
(式中、Rは、−R基、−C(=O)−R基、又は−COO−R基を示し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(2)における基Rの炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)が挙げられる。これらの炭化水素基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ビニル基、1−メチル−ビニル基、2−メチル−ビニル基、n−2−プロペニル基、1,2−ジメチル−ビニル基、1−メチル−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2.]オクチル基、アダマンチル基(トリシクロ[3.3.1.1]デカニル基)、ビシクロ[4.3.2]ウンデカニル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチル−メチル基などが挙げられる。また、これらの炭化水素基における置換基としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;前記したアルキル基から誘導されるアルコキシ基;前記したアルキル基から誘導されるアルコキシカルボニル基;前記したアルキル基から誘導されるアルキルカルボニルオキシ基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルコキシ基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルコキシカルボニル基;前記したシクロアルキル基から誘導されるシクロアルキルカルボニルオキシ基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールオキシ基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールオキシカルボニル基;前記した炭素環式芳香族基から誘導されるアリールカルボニルオキシ基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルオキシ基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルオキシカルボニル基;前記したアラルキル基から誘導されるアラルキルカルボニルオキシ基;シアノ基;ニトロ基などや、場合によっては、前記したアルキル基やアルケニル基やシクロアルキル基などを置換基とすることもできる。
【0020】
一般式(2)で表されるアルデヒド基を有する化合物の中でもさらに好ましい化合物としては、一般式(1)における基Rが−C(=O)−R基又は−COO−R基である場合が挙げられる。本発明の方法において、さらに好ましい一般式(2)で表されるアルデヒド基を有する化合物としては、次の一般式(5)
【0021】
【化10】

【0022】
(式中、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭化水素オキシ基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。一般式(5)における置換基を有してもよい炭化水素基としては前記した基Rとして説明したものと同じものが挙げられる。好ましいRとしては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;前記した炭素数1〜20のアルキル基に酸素原子が結合したアルコキシ基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、前記したアリール基に酸素原子が結合したアリールオキシ基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基;前記したアラルキル基に酸素原子が結合したアラルキルオキシ基などが挙げられる。これらの基の置換基としては、前記してきた置換基群が挙げられる。
本発明の方法における好ましい「アルデヒド基を有する化合物」の具体例としては、例えば、グリオキシル酸エチルエステルなどのグリオキシル酸エステル類、フェニルグリオキサールなどのグリオキサール類などが挙げられる。
【0023】
本発明の方法における一般式(1)で表されるエンスルホンアミドにおけるアルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。また、アリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)が挙げられる。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられる。これらの、アルキル基やアリール基は、反応に悪影響を及ぼさない限りで、各種の置換基を有することができる。このような置換基としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基から誘導されるアルコキシ基などが挙げられる。また、アリール基の置換基としては前記してきた炭素数1〜30のアルキル基であってもよい。
本発明の好ましいエンスルホンアミドとしては、N−(ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−メチル−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−メチル−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−クロロ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−クロロ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−(p−メトキシ−フェニル)−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−(p−メトキシ−フェニル)−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−(p−クロロ−フェニル)−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−(p−クロロ−フェニル)−1−プロペニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−ブテニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−ブテニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−2−ペンテニル−アミン、N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−2−ペンテン−1−イル−アミンなどが挙げられる。
【0024】
本発明の方法におけるアルデヒド基を有する化合物と、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドとの使用割合は、1:1とすることが基本ではあるが、原料化合物の反応性や価格などを考慮して適宜決めることができる。両者のモル比としては、0.1〜10程度の広い範囲で選択することができる。
【0025】
本発明のアルデヒド基を有する化合物のアルデヒド基に、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドをアルドール付加型の求核付加反応の方法としては、通常のアルドール付加反応の反応条件下で行うこともできるが、触媒としてキラルな触媒の存在下で、エナンチオ選択的な生成物を得る方法が好ましい。このような方法としては、各種のキラル触媒を使用することもできるが、本発明者らが先に報告してきたキラル触媒(WO 2005/070864号参照)の使用が好ましい。例えば、触媒としてキラルな銅触媒又はキラルなニッケル触媒が挙げられる。これらの触媒におけるキラリティーは、配位子として使用する有機化合物によって生じさせることができる。
このようなキラリティーを有する配位子の好ましい例としては、ジイミン系の化合物が挙げられる。より好ましくはアルキレンジアミン構造、より具体的にはエチレンジアミン構造を有する化合物が挙げられる。不斉炭素原子を含有する配位子であって、キラルな配位子の好ましい例としては、前記した一般式(4)で表されるエチレンジアミン化合物が挙げられる。一般式(4)における基R及びRにおけるアルキル基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、例えば、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、基Ar及びArにおけるアリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられる。好ましいアリール基としてはフェニル基やナフチル基が挙げられる。これらのアルキル基やアリールの置換基としては前記した基Rで説明してきた置換基が挙げられる。アリール基における好ましい置換基としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基やエチル基などの炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基から誘導されるアルコキシ基などが挙げられる。これらの置換基は1個又は2個以上であってもよい。
これらの中で、さらに好ましい不斉炭素原子を含有するジイミンとしては、次のものが挙げられる。
【0026】
【化11】

【0027】
(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜36のアリール基を示す。)
で表されるアルキレンジアミン誘導体又はシクロヘキシルジアミン誘導体が挙げられる。前記式中におけるPh基又はアリール基は、1個又は2個以上の置換基を有していてもよく、このような置換基としては、メチル基やエチル基やi−プロピル基やt−ブチル基などの炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基;塩素原子、フッ素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。より好ましいPh基やアリール基としては無置換のフェニル基、p−ブロムフェニル基などのハロゲン置換フェニル基、3,5−キシリル基などのアルキル置換フェニル基などが挙げられる。特に好ましいアリール基の例としてはp−ブロムフェニル基が挙げられ、Ph基の例としては、フェニル基又は3,5−キシリル基などが挙げられる。
【0028】
銅化合物としては、1価又は2価の化合物として銅塩、錯塩、有機金属化合物等の各種のものから選択されてよいが、なかでも、有機酸または無機酸との塩、もしくはこの塩との錯体や有機複合体が好適なものとして挙げられる。より好ましくは強酸との塩、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸や過塩素酸、硫酸等の塩、それらの錯体や有機複合体が挙げられる。このような銅化合物としては、例えば、Cu(OTf)、CuOTf、CuClO・4CHCN、Cu(ClO・6HO、Ni(OTf)、NiX+AgOTf(Xはハロゲン原子を示す。)等が挙げられる。好ましい銅化合物としては過塩素酸銅、その溶媒和物であるCuClO・4CHCNが挙げられる。
本発明の方法における銅化合物は、前記したような銅化合物とキラルな不斉炭素原子を含有するジイミンとを、あらかじめ混合して錯体を調製してから、これを触媒として用いてもよいし、あるいは反応系において銅化合物と不斉炭素原子を含有する化合物とを混合して使用するようにしてもよい。触媒としての使用割合については、銅化合物とキラルな有機分子との錯体として、アルデヒド化合物に対して、通常は、0.1〜50モル%、好ましくは0.5〜20モル%程度の割合とすることができる。
【0029】
本発明のアルデヒド基を有する化合物のアルデヒド基に、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドをアルドール付加型の求核付加反応の方法は、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、アセトニトリル等のニトリル類、THF等のエーテル類などの有機溶媒の存在下で行うのが好ましい。反応温度としては、好ましくは−20℃〜溶媒の沸点、−20℃〜40℃程度の範囲で適宜選択することができる。雰囲気は大気中もしくは不活性雰囲気とすることができる。
前記したような本発明の触媒を使用することにより、一般式(1)で表されるエンスルホンアミドの付加が立体選択的に生成し、アルデヒド基を有する化合物のアルデヒド基の位置に生成する水酸基が(R)又は(S)のいずれか一方の鏡像体が優位に生成する。本明細書ではこの位置における(R)体又は(S)体のいずれか一方の過剰率をエナンチオマー過剰率(ee)(%)として表す。このエナンチオマー過剰率は、((R)−(S))/((R)+(S))×100、又は((S)−(R))/((R)+(S))×100として計算される値である。
アルデヒド基を有する化合物のアルデヒド基に一般式(1)で表されるエンスルホンアミドをアルドール付加型の求核付加反応の方法においては、通常はイミノアルコールが生成し、これを加水分解することにより光学活性なアルドール誘導体(3−カルボニルアルコール誘導体)を得ることができ、また、これを還元することにより光学活性な3−アミノアルコールを製造することができる。これらの方法は、本発明の方法において生成した一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を単離することなく、そのまま行うこともできる。
前記した一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を加水分解することにより、一般式(3)におけるイミノ基(=N)の部分がケト基(=O)になった対応する3−ケトアルコール誘導体を製造することができる。このときに使用される酸としては、塩酸、臭化水素酸などの無機酸を使用することができる。
また、前記した一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物を還元して、一般式(3)におけるイミノ基(=N−SO−)の部分がアミド基(−N−SO−)になった対応する3−アミド−アルコール誘導体を製造することができ、これをさらに加水分解することにより、対応する3−アミノアルコール誘導体とすることができる。このときの還元のための還元剤としては水素化ホウ素化合物、水素化アルミニウム化合物、またはそれらの塩などの水素化物を使用することができる。これらの具体的な例を後述する実施例で示す。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、医薬品、農薬、香料、機能性高分子等の製造のための原料や合成中間体として有用な光学活性1,3−アミノアルコール誘導体や1,3−カルボニルアルコール誘導体の原料となる光学活性なスルホニルイミン誘導体を、高収率で、高光学収率で、しかも触媒の再使用が可能な効率的な製造方法を提供するものである。また、本発明の方法は、エナンチオ選択的かつジアステレオ選択的なグリオキシル酸エステルのアルデヒド基への求核付加反応方法と、これを応用した光学活性α−ヒドロキシ酸エステル等の製造方法を提供するものである。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
H−NMRと13C−NMR は JEOL JNM-ECX400、JNM-ECX500、又はJNM-ECX600を使用しCDClを溶媒とし(他の溶媒を使用した場合は個別に記載)、テトラメチルシラン (δ=0、H−NMR)またはCDCl (δ=77.0、13C−NMR)を内部標準物質として測定した。IRスペクトルの測定は JASCO FT/IR-610 を、旋光度の測定は JASCO P-1010 を使用した。HPLCの測定にはSHIMADZU LC-10AT、SHIMADZU SPD-10A及びSHIMADZU C-R6A Cを使用した。質量分析にはSHIMADZU GC-17A又はSHIMADZU GCMS-QP5050Aを使用し、融点の測定には、YAZAWA BY-1を使用した。カラムクロマトグラフィーには、Silica gel 60 (Merck) を使用し、調製用薄層クロマトグラフィーにはWakogel B-5Fを使用した。全ての反応はアルゴン雰囲気下で実施し、溶媒は定法に従い蒸留したものを使用した。グリオキシル酸エチルは使用直前に蒸留した。
【実施例1】
【0032】
一般式(1)で表されるエンスルホンアミドの製造
エンスルホンアミドは、加藤らの方法(Kato, S.; Igami, S. JP 63250303 A2(特開昭63−250303号) 1988-10-18(Chem.Abstr. 111 : 96854 1988年))文献記載の方法により合成した。
これらの方法により製造されたエンスルホンアミドの物性値を以下に示す。なお、化合物名の後の括弧内は以下の説明で使用する化合物の番号である。
実施例1−1
N−(ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(E−4a)。
【0033】
【化12】

【0034】
Mp. 107−108℃;
H NMR (CDCl) δ:
1.60 (d, 3H, J = 7.3 Hz), 5.68 (q, 1H, J = 7.2 Hz), 6.03 (s, 1H),
6.95-7.10 (m, 2H), 7.20-7.30 (m, 3H), 7.45-7.63 (m, 3H),
7.82 (d, 2H, J = 7.8 Hz);
13C NMR (CDCl) δ:
13.9, 115.7, 127.4, 128.3, 128.3, 128.8, 128.9, 132.8, 133.8,
135.4, 139.7;
IR (neat) 3347, 3255, 2978, 1685, 1596, 1447, 1332, 1219, 1159,
1090, 951, 754, 688, 592, 536 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 274.0902.
実測値 274.0911.
実施例1−2
N−(ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(Z−4a)。
【0035】
【化13】

【0036】
Mp. 104−104.5℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.47 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 5.68 (q, 1H, J = 7.0 Hz), 6.18 (s, 1H),
7.20-7.27 (m, 3H), 7.30-7.37 (m, 2H), 7.38-7.45 (m, 2H),
7.50-7.55 (m, 1H);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.0, 121.4, 126.8, 127.4, 128.1, 128.2, 128.9, 132.9,
135.1, 137.8, 139.8;
IR (neat) 3258, 3082, 3062, 3020, 2919, 1644, 1585, 1491, 1480,
1446, 1402, 1326, 1268, 1165, 1091, 1043, 1025, 997,
970, 904, 844, 787, 748, 727, 696, 685, 645, 620, 571,
532, 440 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、計算値 274.0902.
実測値 274.0903.
実施例1−3
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(E−4b)。
【0037】
【化14】

【0038】
Mp. 52−54℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.59 (d, 3H, J = 7.3 Hz), 3.87 (s, 3H), 5.65 (q, 1H, J = 7.2 Hz),
5.95-6.02 (brs, 1H), 6.94 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 7.00-7.07 (m, 2H),
7.22-7.27 (m, 3H), 7.70-7.78 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.9, 55.6, 114.0, 115.0, 128.3, 128.8, 129.6, 131.3, 134.0,
135.6, 163.0;
IR (neat) 3647, 3266, 3057, 2942, 2840, 1595, 1578, 1497, 1434,
1415, 1378, 1357, 1312, 1260, 1224, 1180, 1157, 1091,
1025, 960, 877, 834, 802, 781, 767, 700, 628, 577,
553 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、計算値 304.1007.
実測値 304.0996.
実施例1−4
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(Z−4b)。
【0039】
【化15】

【0040】
Mp. 142.5−143.5℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.49 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 3.84 (s, 3H), 5.64 (q, 1H, J = 7.1 Hz),
6.12 (s, 1H), 6.85-6.88 (m, 2H), 7.22-7.26 (m, 3H),
7.34-7.37 (m, 2H), 7.61-7.64 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
12.9, 55.6, 113.9, 120.7, 126.7, 127.9, 128.0, 129.4, 131.4,
135.3, 137.7, 163.0;
IR (neat) 3255, 1643, 1595, 1576, 1496, 1457, 1442, 1395, 1326,
1263, 1181, 1159, 1112, 1094, 1041, 1024, 968, 904, 833,
802, 785, 748, 695, 645, 612, 558, 539, 504, 448 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、計算値 304.1007.
実測値 304.0995.
なお、この結晶はX−線回折の測定に適当であったので、これをAcOEt/ヘキサンから再結晶して解析された。このデータは、CCDC−629330として、www.ccdc.cam.ac.uk/conts/retrieving.htmlam.ac.uk/conts/retrieving.htmlにアクセスすることにより無料で得られる。
実施例1−5
N−(p−メチル−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(Z−4c)。
【0041】
【化16】

【0042】
Mp. 132−134℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.47 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 2.41 (s, 3H), 5.66 (q, 1H, J = 7.2 Hz),
6.10 (s, 1H), 7.20-7.27 (m, 5H), 7.34-7.38 (m, 2H),
7.58-7.63 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
12.9, 21.5, 120.8, 126.7, 127.3, 127.9, 128.0, 129.4, 135.2,
136.7, 137.7, 143.6;
IR (neat) 3263, 3032, 1646, 1596, 1492, 1444, 1395, 1326, 1164,
1091, 1040, 1025, 899, 834, 813, 783, 748, 693, 609,
549, 531 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、計算値 288.1058.
実測値 288.1059.
実施例1−6
N−(p−クロロ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(E−4d)。
【0043】
【化17】

【0044】
H−NMR (C) δ:
1.34 (d, 3H, J = 7.4 Hz), 5.45-5.55 (m, 1H), 5.75-6.05 (m, 1H),
6.80-6.85 (m, 2H), 6.85-7.00 (m, 5H), 7.43-7.50 (m, 2H);
13C−NMR (C) δ:
13.7, 116.0, 127.9, 128.0, 128.1, 128.3, 128.4, 129.0, 129.1,
129.2, 134.5, 135.7, 138.8, 139.4;
IR (neat) 3266, 3088, 3059, 2919, 2857, 1911, 1700, 1650, 1585,
1493, 1476, 1443, 1396, 1379, 1359, 1317, 1278, 1223,
1164, 1091, 1027, 1014, 960, 883, 828, 781, 755, 700, 619,
564, 533, 482 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、計算値 308.0512.
実測値 308.0514.
実施例1−7
N−(p−クロロ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−プロペニル−アミン(Z−4d)。
【0045】
【化18】

【0046】
Mp. 152−155℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.54 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 5.70 (q, 1H, J = 6.9 Hz), 6.21 (s, 1H),
7.20-7.25 (m, 3H), 7.28-7.32 (m, 2H), 7.35-7.38 (m, 2H),
7.60-7.63 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.0, 121.7, 126.7, 128.1, 128.7, 129.0, 134.8, 137.3, 138.3,
139.3;
IR (neat) 3265, 1557, 1471, 1394, 1331, 1167, 1089, 1010, 900, 824,
784, 756, 667, 642, 593, 530, 482, 419 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 308.0512.
実測値 308.0524.
実施例1−8
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−(p−メトキシ−フェニル)−1−プロペニル−アミン(E−4e)。
【0047】
【化19】

【0048】
Mp. 95−96℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.59 (d, 3H, J = 7.6 Hz), 3.78 (s, 3H), 3,87 (s, 1H),
5.57 (q, 1H, J = 7.1 Hz), 5.90 (s, 1H), 6.77-6.80 (m, 2H),
6.93-6.96 (m, 2H), 6.97-7.01 (m, 2H), 7.73-7.76 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.9, 55.3, 55.6, 113.6, 114.0, 114.2, 127.9, 129.7, 130.2,
131.4, 133.8, 159.4, 163.0;
IR (neat) 3263, 2975, 2939, 2839, 1671, 1596, 1555, 1510, 1498,
1459, 1441, 1418, 1377, 1356, 1315, 1260, 1176, 1150,
1088, 1026, 941, 881, 835, 803, 761, 739, 677, 628, 596,
552 cm−1
HRMS (FAB); E[M+H]として、 計算値 334.1113.
実測値 334.1102.
実施例1−9
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−(p−メトキシ−フェニル)−1−プロペニル−アミン(Z−4e)。
【0049】
【化20】

【0050】
Mp. 151.5−152℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.45 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 3.78 (s, 3H), 3.84 (s, 3H),
5.50 (q, 1H, J = 7.0 Hz), 5.96 (s, 1H), 6.75-6.80 (m, 2H),
6.85-6.90 (m, 2H), 7.26-7.33 (m, 2H), 7.60-7.67 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
12.7, 55.2, 55.6, 113.4, 113.9, 118.4, 128.0, 129.4, 130.3,
135.0, 159.5, 163.0;
IR (neat) 3266, 1610, 1594, 1573, 1553, 1508, 1455, 1387, 1331,
1265, 1176, 1160, 1093, 1029, 824, 803, 702, 6116,
556, 419 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 334.1113.
実測値 334.1102.
実施例1−10
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−(p−クロロ−フェニル)−1−プロペニル−アミン(E−4f)。
【0051】
【化21】

【0052】
Mp. 116−117℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.58 (d, 3H, J = 7.4 Hz), 3.86 (s, 3H), 5.59 (q, 1H, J = 7.2 Hz),
6.05 (s, 1H), 6.92 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.01 (d, 2H, J = 8.2 Hz),
7.22 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.68 (d, 2H, J = 8.8 Hz);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.9, 55.6, 114.0, 116.8, 128.4, 129.6, 130.4, 131.1, 133.2,
133.8, 134.1, 163.1;
IR (neat) 3648, 3262, 2942, 2840, 1653, 1595, 1578, 1496, 1440,
1378, 1357, 1312, 1261, 1223, 1180, 1158, 1091, 1025,
961, 881, 833, 766, 720, 669, 628, 577, 555, 486 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 338.0618.
実測値 338.0602.
実施例1−11
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−(p−クロロ−フェニル)−1−プロペニル−アミン(Z−4f)
【0053】
【化22】

【0054】
Mp. 175−176℃;
H−NMR (CDCl); δ:
1.47 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 3.86 (s, 3H), 5.62 (q, 1H, J = 6.9 Hz),
6.02 (s, 1H), 6.87-6.90 (m, 2H), 7.19-7.22 (m, 2H),
7.28-7.32 (m, 2H) 7.60-7.63 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
12.8, 55.6, 114.0, 120.9, 128.1, 128.2, 129.4, 131.2, 133.8,
134.5, 136.2, 163.1;
IR (neat) 3238, 1594, 1576, 1486, 1455, 1402, 1320, 1304, 1264,
1154, 1090, 1019, 822, 802, 739, 695, 679, 608, 561,
536, 420 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 338.0618.
実測値 338.0612.
実施例1−12
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−1−フェニル−1−ブテニル−アミン(E−4g)。
【0055】
【化23】

【0056】
H−NMR (C) δ:
0.72 (t, 3H, J = 7.5 Hz), 1.83 (quintet, 2H, J = 7.6 Hz),
3.05 (s, 3H), 5.61 (t, 1H, J = 7.8 Hz), 6.48-6.52 (m, 2H),
6.92-6.97 (m, 4H), 7.73-7.77 (m, 2H);
13C−NMR (C) δ:
14.5, 21.6, 54.6, 113.7, 113.9, 121.5, 127.6, 128.0, 128.9,
129.4, 129.8, 132.4, 133.6, 136.3, 162.7;
IR (neat) 3267, 2963, 2930, 2871, 1595, 1578, 1497, 1444, 1362,
1317, 1260, 1217, 1180, 1155, 1091, 1025, 923, 886,
834, 803, 775, 700, 628, 579, 553 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 318.1164.
実測値 318.1161.
実施例1−13
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−1−フェニル−1−ブテニル−アミン(Z−4g)。
【0057】
【化24】

【0058】
Mp. 170−171℃;
H−NMR (CDCl); δ:
0.83 (t, 3H, J = 7.5 Hz), 1.89 (quintet, 2H, J = 7.5 Hz),
3.84 (s, 3H), 5.50 (t, 1H, J = 7.4 Hz), 6.03 (s, 1H),
6.84-6.90 (m, 2H), 7.21-7.27 (m, 3H), 7.33-7.38 (m, 2H),
7.58-7.65 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
13.4, 20.8, 55.6, 113.8, 126.9, 127.8, 128.0, 129.5, 131.3,
133.8, 137.6, 163.0;
IR (neat) 3237, 2966, 1595, 1577, 1498, 1443, 1411, 1322, 1303,
1265, 1183, 1158, 1094, 1022, 920, 848, 802, 767, 739,
694, 624, 550 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 318.1164.
実測値 318.1162.
実施例1−14
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(E)−2−ペンテン−1−イル−アミン(E−4h)。
【0059】
【化25】

【0060】
Mp. 85−86℃;
H−NMR (C) δ:
0.78 (t, 3H, J = 7.3 Hz), 1.29 (d, 3H, J = 6.9 Hz),
1.94 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 1.93 (q, 2H, J = 7.8 Hz), 3.06 (s, 3H),
5.34-5.46 (m, 1H), 6.50-6.80 (m, 3H), 7.85-7.98 (m, 2H);
13C−NMR (C) δ:
11.9, 12.2, 23.3, 54.9, 111.1, 114.1, 130.0, 132.3, 136.6, 163.0;
IR (neat) 3267, 2974, 2841, 1596, 1579, 1499, 1461, 1442, 1414,
1320, 1260, 1181, 1156, 1094, 1058, 1024, 954, 891, 833,
803, 681, 628, 593, 566, 546 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 256.1007.
実測値 256.1017.

なお、この結晶はX−線回折の測定に適当であったので、これをAcOEt/ヘキサンから再結晶して解析された。このデータは、CCDC−629329として、www.ccdc.cam.ac.uk/conts/retrieving.htmlam.ac.uk/conts/retrieving.htmlにアクセスすることにより無料で得られる。
実施例1−15
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−(Z)−2−ペンテン−1−イル−アミン(Z−4h)。
【0061】
【化26】

【0062】
Mp. 101−102℃;
H−NMR (CDCl); δ:
0.97 (t, 3H, J = 7.3 Hz), 1.30 (d, 3H, J = 6.9 Hz),
2.16 (q, 2H, J = 7.5 Hz), 3.86 (s, 3H), 5.03 (q, 1H, J = 6.9 Hz),
5.70-5.83 (m, 1H), 6.93-6.97 (m, 2H), 7.75-7.80 (m, 2H);
13C−NMR (CDCl) δ:
11.7, 12.1, 27.9, 55.6, 114.1, 115.0, 129.2, 131.8, 136.6, 162.9;
IR (neat) 3275, 2969, 2938, 2841, 1671, 1596, 1578, 1498, 1461,
1442, 1396, 1321, 1260, 1180, 1156, 1094, 1063, 1024,
957, 900, 834, 803, 750, 718, 675, 629, 595, 556,
458 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 256.1007.
実測値 256.1013.

なお、この結晶はX−線回折の測定に適当であったので、これをAcOEt/ヘキサンから再結晶して解析された。このデータは、CCDC−629331として、www.ccdc.cam.ac.uk/conts/retrieving.htmlam.ac.uk/conts/retrieving.htmlにアクセスすることにより無料で得られる。
実施例1−16
N−(p−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−1−シクロヘキセン−1−イル−アミン(4i)。
【0063】
【化27】

【0064】
Mp. 86−88℃;
H−NMR (C) δ:
1.10-1.40 (m, 4H), 1.72-2.02 (m, 4H), 3.03-3.25 (m, 3H),
5.51-5.70 (m, 1H), 6.50-6.70 m, 2H), 7.08 (s, 1H),
7.85-8.10 (m, 2H);
13C−NMR (C) δ:
21.9, 22.6, 24.3, 28.2, 55.0, 113.8, 114.3, 130.0, 132.4,
133.1, 163.0, 163.1;
IR (neat) 3346, 3259, 1597, 1577, 1499, 1457, 1324, 1301, 1264,
1154, 1095, 1027, 896, 836, 568, 543 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、 計算値 268.1007.
実測値 268.1012.
【実施例2】
【0065】
過塩素酸銅(CuClO・4CHCN)とキラルジアミン配位子5(N,N’−ビスアリール−シクロヘキシルジイミンにおける両方のアリール基が、4−ブロモフェニル基である化合物)から調整されたキラル銅触媒を用いる、エンスルホンアミドのグリオキシル酸エチルへの付加反応
実施例2の方法を次の化学反応式で示す。
【0066】
【化28】

【0067】
(1)CuClO・4CHCN(3.3mg,0.010mmol)の入っている容器に、リガンド5(5.0mg,0.011mmol)の塩化メチレン(1.5mL)溶液を加え、12時間撹拌した。0℃に冷やした後、エチルグリオキシレート(40ml,0.40mmol)と塩化メチレン(1.5mL)を加えた。さらに、エンスルホンアミドZ−4e(0.20mmol)を加え、0℃にて24時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応液を室温に戻し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。
(2)得られた残さにエタノール(0.5mL)と48%HBr水溶液(0.5mL)を加え室温で2分間撹拌後、0℃にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応液を室温に戻し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して次式
【0068】
【化29】

【0069】
で表される化合物7(前記した化学反応式における生成物6を加水分解した化合物)を得た。収率93%。主なジアステレオマーの光学純度はHPLC分析の結果98%eeであった。
(2S)−2−ヒドロキシ−4−(4−メトキシ−フェニル)−3−メチル−4−オキソ−ブタン酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR シン体 (CDCl) δ:
1.28 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 1.29 (d, 3H, J = 7.1 Hz),
3.35 (br, 1H), 3.84-3.96 (m, 4H), 4.27 (q, 2H, J = 7.1 Hz),
4.58 (t, 1H, J = 4.2 Hz), 6.96 (apparent d, 2H, J = 9.0 Hz),
7.30-7.45 (m, 5H), 7.95 (apparent d, 2H, J = 8.8 Hz);
アンチ体 (CDCl) δ:
1.19 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 1.36 (d, 3H, J = 7.3 Hz),
3.75 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 3.88 (s, 3H),
3.94 (dq, 1H, J = 4.6, 7.3 Hz),
4.15 (apparent dq, 2H, J = 3.2, 7.1 Hz),
4.36 (dd, 1H, J = 4.6, 9.3 Hz), 6.92-6.99 (m, 2H),
7.90-7.97 (m, 2H);
13C−NMR シン体 (CDCl) δ:
12.3, 14.0, 43.7, 55.4, 61.8, 71.7, 113.9, 128.5, 130.7, 163.7,
173.1, 200.4;
アンチ体(CDCl) δ:
14.0, 14.6, 43.2, 55.5, 61.4, 73.4, 113.9, 128.7, 130.8, 163.8,
173.2, 201.9;
IR (neat) シン体 :3477, 2979, 2935, 2850, 1730, 1670, 1600, 1573,
1510, 1463, 1420, 1308, 1261, 1173, 1125,
1027, 976, 843, 770, 604;
アンチ体 : 3478, 2979, 2941, 2843, 1738, 1671, 1599,
1580, 1510, 1457, 1419, 1370, 1308, 1257,
1216, 1172, 1092, 1026, 974, 841 cm−1
HRMS (FAB); C1419 [M+H]として、
計算値 267.1232.
実測値 267.1232.;
HPLC, Daicel Chiralcel ADH, ヘキサン/i−PrOH = 4/1,
流速 = 0.2 mL/分 :
tR = 60.5分 (2R, 3R),
tR = 65.4分 (2S, 2S),
tR = 75.2分 (2R, 3S),
tR = 78.9分 (2S, 3R).
【0070】
前記した実施例1で製造した各種のエンスルホンアミドを用いて同様に行った。これらの結果を次の表1に示し、生成物の物性データを示す。
【0071】
【表1】

【0072】
(2S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オキソ−4−フェニル−ブタン酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR シン体 (CDCl) δ:
1.26 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.29 (d, 3H, J = 7.0 Hz), 3.28 (br, 1H),
3.93 (dq, 1H, J = 4.2, 7.0 Hz), 4.25 (q, 2H, J = 7.0 Hz),
4.58 (d, 1H, J = 4.2 Hz), 7.40-7.65 (m, 3H), 7.90-8.05 (m, 2H);
アンチ体
anti (CDCl) δ:
1.20 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 1.36 (d, 3H, J = 7.3 Hz),
3.61 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 3.98 (dq, 1H, J = 4.6, 7.1 Hz),
4.10-4.25 (m, 2H), 4.39 (dd, 1H, J = 4.6, 8.3 Hz),
7.40-7.65 (m, 3H);
13C−NMR シン体 (CDCl) δ:
12.1, 14.0, 44.3, 61.9, 71.6, 128.4, 128.7, 133.3, 135.7,
173.1, 201.6;
アンチ体(CDCl) δ:
14.0, 14.1, 44.0, 61.5, 73.1, 128.3, 128.7, 133.4, 135.9, 173.1;
IR (neat) シン体: 3480, 3063, 2978, 2936, 1734, 1678, 1596, 1579,
1449, 1369, 1217, 1133, 1062, 1023, 1001, 975,
952, 862, 794, 708;
アンチ体: 3481, 3059, 2981, 2941, 1738, 1685, 1588,
1454, 1372, 1255, 1209, 1144, 1092, 1024,
973, 701 cm−1
HRMS (FAB); C1317 [M+H]として、
計算値 237.1127.
実測値 237.1118.;
HPLC, Daicel Chiralcel AS + ADH + AD,
ヘキサン/i−PrOH = 4/1, 流速 = 0.5 mL/分:
tR = 46.7分 (2S, 3S),
tR = 50.6分 (2R, 3R),
tR = 54.3分 (2S, 3R),
tR = 61.9分 (2R, 3S).
【0073】
(2S)−4−(4−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オキソ−ブタン酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR シン体 (CDCl) δ:
1.26 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.28 (d, 3H, J = 7.0 Hz), 3.27 (brs, 1H),
3.87 (dq, 1H, J = 4.4, 7.0 Hz), 4.25 (q, 2H, J = 7.0 Hz),
4.55 (d, 1H, J = 4.4 Hz), 7.40-7.55 (m, 2H), 7.84-7.97 (m, 2H);
アンチ体 (CDCl) δ:
1.21 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 1.34 (d, 3H, J = 7.1 Hz),
3.53 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 3.91 (dq, 1H, J = 5.0, 7.1 Hz),
4.08-4.24 (m, 2H), 4.38 (dd, 1H, J = 5.0, 8.2 Hz),
7.42-7.52 (m, 2H), 7.80-7.95 (m, 2H);
13C−NMR シン体 (CDCl) δ:
12.1, 14.0, 44.4, 62.0, 71.5, 129.0, 129.8, 134.1, 139.7, 173.1,
200.3;
アンチ体(CDCl) δ:
13.9, 14.0, 44.1, 61.6, 73.0, 129.0, 129.8, 134.3, 139.9, 173.0,
201.8;
IR (neat) シン体: 3485, 2982, 2938, 1730, 1682, 1589, 1571, 1488,
1455, 1401, 1217, 1132, 1092, 1013, 977, 843,
758, 692, 533, 478;
アンチ体: 3478, 3092, 2982, 2935, 1738, 1686, 1589,
1455, 1402, 1255, 1208, 1144, 1092, 1022,
976, 842, 751, 527 cm−1
HRMS (FAB); C1316ClO [M+H]として、
計算値 271.0737.
実測値 271.0745.;
HPLC, Daicel Chiralcel AS, ヘキサン/i−PrOH = 4/1,
流速 = 0.5 mL/分 :
tR = 15.1分 (2S, 3S),
tR = 16.6分 (2S, 3R),
tR = 21.4分 (2R, 3S),
tR = 23.9分 (2R, 3R).
【0074】
(2S)−3−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR シン体 (CDCl) δ:
0.93 (t, 3H, J = 7.5 Hz), 1.19 (t, 3H, J = 7.1 Hz),
1.70-2.05 (m, 2H), 3.18 (brs, 1H), 3.83 (dt, 1H, J = 5.3, 8.3 Hz),
4.19 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 4.51 (d, 1H, J = 5.3 Hz),
7.42-7.54 (m, 2H), 7.54-7.62 (m, 1H), 7.90-8.02 (m, 2H);
アンチ体(CDCl) δ:
1.04 (t, 3H, J = 7.6 Hz), 1.15 (t, 3H, J = 7.1 Hz),
1.80-1.95 (m, 2H), 3.70 (d, 1H, J = 9.5 Hz),
3.83 (dt, 1H, J = 4.2, 7.1 Hz), 4.09 (q, 2H, J = 7.1 Hz),
4.43 (dd, 1H, J = 4.2, 9.5 Hz), 7.46-7.52 (m, 2H),
7.56-7.63 (m, 1H), 7.88-7.95 (m, 2H);
13C−NMR シン体 (CDCl) δ:
12.0, 13.9, 21.3, 51.2, 61.9, 71.1, 128.3, 128.6, 133.2, 137.0,
173.6, 201.5;
アンチ体(CDCl) δ:
12.0, 13.9, 22.3, 50.1, 61.4, 71.3, 128.3, 128.7, 133.5, 136.6,
173.4, 203.9;
IR (neat) シン体: 3477, 2972, 2876, 1738, 1675, 1596, 1447, 1372,
1255, 1220, 1118, 1023, 931, 849, 779, 701;
アンチ体: 3485, 3062, 2966, 2941, 2875, 1738, 1682,
1596, 1579, 1448, 1368, 1268, 1208, 1134,
1100, 1028, 914, 849, 785, 699 cm−1
HRMS (FAB); C1419 [M+H]として、
計算値 251.1283.
実測値 251.1277.;
HPLC, Daicel Chiralcel AS, ヘキサン/i−PrOH = 4/1,
流速 = 0.5 mL/分 :
tR = 13.7分 (2S, 3S),
tR = 15.3分 (2S, 3R),
tR = 17.6分 (2R, 3R),
tR = 23.1分 (2R, 3S).
【0075】
(2S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オキソ−ヘキサン酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR アンチ体 (C) δ:
0.89 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 0.99 (d, 3H, J = 7.2 Hz),
1.97-2.08 (m, 2H), 2.70 (dq, 1H, J = 4.9, 7.2 Hz),
3.39 (d, 1H, J = 6.7 Hz), 3.80-4.00 (m, 2H),
4.11 (dd, 1H, J = 4.9, 6.7 Hz);
シン体 (C) δ:
0.87 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 0.93 (t, 3H, J = 7.3 Hz),
1.02 (d, 3H, J = 7.2 Hz), 1.95-2.22 (m, 2H),
2.65 (dq, 1H, J = 4.4, 7.2 Hz), 3.05-3.23 (m, 1H),
3.80-4.00 (m, 2H), 4.38-4.47 (m, 1H);
13C−NMR アンチ体 (CDCl) δ:
7.58, 12.8, 14.0, 34.6, 49.4, 61.3, 73.0, 173.5, 211.3;
シン体 (C) δ:
7.7, 11.0, 14.0, 34.0, 49.5, 61.6, 71.7, 173.7, 209.9;
IR (neat) アンチ体: 3484, 2981, 2940, 1739, 1716, 1459, 1409, 1375,
1268, 1209, 1108, 1066, 1025, 975, 862, 808,
748;
シン体: 3488, 2981, 2940, 1733, 1716, 1459, 1373, 1218,
1145, 1025, 977, 862, 800, 752 cm−1
HRMS (FAB); C17 [M+H]として、
計算値 189.1127.
実測値 189.1120.;
【0076】
(1S)−ヒドロキシ−(2−オキソ−シクロヘキシル)−酢酸エチルエステル(シン体とアンチ体の混合物):
H−NMR アンチ体 ((1S,1’R),(C) δ:
0.95 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 0.94-1.20 (m, 2H), 1.30-1.42 (m, 2H),
1.56-1.84 (m, 3H), 2.02-2.12 (m, 1H), 2.60-2.70 (m, 1H),
3.35 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 3.84 (dd, 1H, J = 3.2, 7.2 Hz),
4.02 (dq, 2H, J = 1.9, 7.1 Hz);
シン体(シン体の特徴的なピーク) δ:
0.88 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 2.12-2.21 (m, 1H), 2.48-2.57 (m ,1H),
2.94 (d, 1H, J = 5.0 Hz), 4.60 (dd, 1H, J = 3.2, 5.0 Hz);
13C−NMR アンチ体 (CDCl) δ:
14.1, 24.8, 26.9, 30.1, 42.0, 53.7, 61.6, 71.1, 173.4, 211.2;
シン体(シン体の特徴的なピーク) δ:
14.2, 24.6, 27.1, 41.9, 53.8, 61.7, 69.2, 173.6, 210.4;
HRMS (FAB); C1017 [M+H]として、
計算値 201.1127.
実測値 201.1127.;
【実施例3】
【0077】
次に示す反応式にしたがって、実施例2と同様に行った。
【0078】
【化30】

【0079】
生成物の物性は次のとおりである。
(2S,3R)−2−ヒドロキシ−3−メチル−1,4−ジフェニルブタン−1,4−ジオン(シン−10):
[α]22 +80.1 (69%ee, c 1.285, CHCl);
H−NMR (CDCl) δ:
1.12 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 3.72 (d, 1H, J = 6.4 Hz),
3.83 (dq, 1H, J = 3.7, 6.9 Hz), 5.47 (dd, 1H, J = 3.7, 6.4 Hz),
7.45-7.67 (m, 6H), 7.89 (d, 2H, J = 7.3 Hz),
7.94 (d, 2H, J = 7.3 Hz);
13C−NMR (CDCl) δ:
10.4, 44.9, 73.5, 128.2, 128.6, 128.8, 129.0, 133.1, 134.0,
134.3, 136.3, 200.4, 201.3;
IR (neat) 3448, 2925, 1681, 1596, 1578, 1448, 1252, 1219, 971,
701 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、
計算値 269.1178.
実測値 269.1166;
キラルHPLC; Daicel Chiralcel AD-H;
ヘキサン/i−PrOH = 4/1,流速 = 1.0mL/分:
tR = 9.6分 (2S,3R),
tR = 13.1分 (2R,3S).
【0080】
(2S,3S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−1,4−ジフェニルブタン−1,4−ジオン(アンチ−10):
[α]22 +76.5 (78%ee,c 0.685,CHCl);
H−NMR (CDCl) δ:
1.35 (d, 3H, J = 7.3 Hz), 3.95-4.04 (m, 1H), 4.37 (s, 1H),
5.20 (d, 1H, J = 4.1 Hz), 7.42-7.50 (m, 4H), 7.54-7.62 (m, 2H),
7.92 (d, 2H, J = 7.3 Hz), 7.98 (d, 2H, J = 7.3 Hz);
13C−NMR (CDCl) δ:
14.9, 42.7, 76.6, 128.4, 128.6, 128.7, 129.1, 133.5, 133.7, 135.1,
136.1, 200.2, 204.7;
IR (neat) 3069, 2929, 1682, 1595, 1448, 1218, 974, 838, 702,
420 cm−1
HRMS (FAB); [M+H]として、
計算値 269.1178.
実測値 269.1183;
キラルHPLC; Daicel Chiralcel AS-H;
ヘキサン/i−PrOH = 4/1, 流速 = 1.0mL/分:
tR = 9.1分 (2S,3S),
tR = 22.9分 (2R,3R).
【実施例4】
【0081】
次の反応式にしたがって以下のとおり行った。
【0082】
【化31】

【0083】
Cu(OTf)(7.2mg,0.02mmol)の入っている容器にジアミンリガンド11(9.9mg,0.022mmol)のトルエン溶液(1.5mL)を加え、室温で12時間撹拌した。−20℃に冷やした後、MS 3A(20mg)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートのトルエン溶液(0.2mmol)と、実施例1で製造したエンスルホンアミド(E−4b)(0.2mmol)のトルエン溶液(1.2mL)を順次加えた。さらにその温度で4.5時間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応液を室温に戻し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた残さにEtOH(0.5mL)と48%HBr水溶液(0.5mL)を加え室温で1.5分間撹拌後、0℃にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応液を室温に戻し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して12を得た。収量47mg,収率70%。光学純度はHPLC分析の結果91%eeであった。
【0084】
ジイソプロピル N−(1−メチル−2−オキソ−2−フェニルエチル)−N,N’−ヒドラジンジカルボン酸:
[α]24 −20.1 (95%ee,c 3.46,CHCl);
H−NMR (CDCl) See below.;

13C NMR (CDCl3) See below.;

IR (neat) 3314, 2982, 2938, 1692, 1596, 1453, 1380, 1299, 1222, 1180,
1145, 1108, 1058, 1037, 1003, 966, 936, 766, 700 cm−1
HRMS (FAB); C1725 [M+H]として、
計算値 337.1763.
実測値 337.1761.;
キラルHPLC; Daicel Chiralcel AD-H; ヘキサン/i−PrOH = 4/1,
流速 = 1.0mL/分:
tR = 8.0分 (R),
tR = 11.0分 (S).
【実施例5】
【0085】
次の反応式にしたがって、次の表2に示す条件で実施例2で製造したスルホニルイミンの加水分解を行った。
【0086】
【化32】

【0087】
反応条件と結果を次の表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
【実施例6】
【0090】
次の反応式にしたがって、実施例2で製造したスルホニルイミンの還元を行った。
【0091】
【化33】

【0092】
目的の化合物9aと9bを収率93%で得た。9aと9bの比は、92:8であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、医薬品、農薬、香料、機能性高分子等の製造のための原料や合成中間体として有用な光学活性な1,3−アミノアルコールや1,3−カルボニルアルコールの原料となる光学活性スルホニルイミンを、高収率で、高光学収率で製造する方法を提供するものであり、化学物質を製造する分野、特にファインケミカル分野における産業に極めて有用なものであり、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、Rは、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、Rは、置換基を有してもよいアリール基を表し、また、RとRが一緒になって隣接する炭素原子と共に炭素数5〜15の炭素環を形成してもよい。)
で表されるエンスルホンアミドと、次の一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、−R基、−C(=O)−R基、又は−COO−R基を示し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示す。)
で表されるアルデヒド基を有する化合物とを、銅化合物及び不斉炭素原子を含有するジイミンとを含有してなる触媒の存在下で反応させて、次の一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表し、Rは、炭素アルキル基又はアリール基を表し、Rは、アリール基を表し、Rは、−R基、−C(=O)−R基、又は−COO−R基を示し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表し、*印は不斉炭素原子であることを表す。)
で表されるスルホニルイミン化合物を製造する方法。
【請求項2】
一般式(2)におけるRが、−C(=O)−R基又は−COO−R基(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を示す。)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不斉炭素原子を含有するジイミンが光学活性体であり、生成する一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物が少なくとも一種の光学活性体を過剰に含むものである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(3)で表されるスルホニルイミン化合物が、光学活性体である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
不斉炭素原子を含有するジイミンが、エチレンジアミン構造を有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
不斉炭素原子を含有するジイミンが、次の一般式(4)
【化4】

(式中、Ar及びArは、それぞれ独立して置換基を有してもよいアリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表す。)
で表されるエチレンジアミン誘導体である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
銅化合物が、過塩素酸銅である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2008−214262(P2008−214262A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53559(P2007−53559)
【出願日】平成19年3月3日(2007.3.3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】