説明

光学活性ヒドラジン化合物および光学活性アミン化合物の製造方法

【課題】 環境への負担が少ない非金属の不斉触媒によるアゾ化合物への不斉求核付加反応を開発し、光学活性ヒドラジン化合物および光学活性アミン化合物の有利な製造方法を提供する。
【解決手段】 不斉チオ尿素化合物(I)の存在下、アゾ化合物(II)と化合物(III)を反応させることを特徴とする、光学活性ヒドラジン化合物(IV)の製造方法、および(IV)の窒素―窒素結合を還元することを特徴とする光学活性アミン化合物(V)の製造方法。


(式中、C*等は不斉炭素を示し、R及びRは低級アルキル基等を示し、R及びRは一緒になってシクロヘキサン等を形成してもよく、Rは置換基を有していてもよいアリール基等を示し、R及びRは水素原子等を示し、Rは置換基を有していてもよいアリール基等を示し、RおよびR10は電子吸引性基を示し、PGは保護基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉チオ尿素化合物を不斉触媒として用いる光学活性ヒドラジン化合物および光学活性アミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然には、ラクタシスチン(lactacystin)、ミリオシン(myriocin)、カイトセファリン(kaitocephalin)、オキサゾロマイシン(oxazolomycin)など、医薬品への応用が期待される生理活性化合物が数多く存在している。これらは、いずれも光学活性な4級炭素を有するα−アミノ酸構造を有しており、生理活性と深く係わっていると考えられる。
したがって、窒素原子を含む不斉四置換炭素の構築は、有機合成化学の重要な課題になっており、これまでに様々な合成法が報告されている。
【0003】
そのなかには、ストレッカー反応(Strecker reaction)やマンニッヒ反応(Mannich reaction)を用いたエナンチオ選択的な炭素−炭素結合の構築による光学活性なα−アミノ酸誘導体の合成法(非特許文献1〜7参照)、または、プロリン、シンコニジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)(Ph-BOX)、β-イソキュプレイジン(β-isocupreidine)を触媒としたエナンチオ選択的な炭素−窒素結合の構築による合成法(非特許文献8〜14参照)が報告されている。
【非特許文献1】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),1998年,第120巻,p.5315
【非特許文献2】「アンゲバンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,2000年,第39巻,p.1279
【非特許文献3】「アンゲバンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,1998年,第37巻,p.3186
【非特許文献4】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2000年,第122巻,p.762
【非特許文献5】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),1997年,第119巻,p.7153
【非特許文献6】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journalof the American Chemical Society)」,(米国),2002年,第124巻,p.5640
【非特許文献7】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2000年,第122巻,p.8180
【非特許文献8】「アンゲバンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,2002年,第41巻,p.1790−1793
【非特許文献9】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2002年,第124巻,p.5656−5657
【非特許文献10】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2002年,第124巻,p.6254-6255
【非特許文献11】「アンゲバンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,2003年,第42巻,p.975−978
【非特許文献12】「シンレット(Synlett)」,(米国),2004年,第12巻,p.2115−2118
【非特許文献13】「アンゲバンテケミーインターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition)」,2003年,第42巻,p.1367−1369
【非特許文献14】「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)」,(米国),2004年,第126巻,p.8120−8121
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、環境への負担が少ない非金属の不斉触媒によるエナンチオ選択的な炭素−窒素結合形成反応を開発することにより、アミン類、アミノ酸、医薬、農薬、食品添加物等の合成中間体として有用な光学活性な炭素−窒素結合を有する化合物の有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、非金属不斉触媒として、アゾ化合物を活性化する酸性部位と活性水素を有する炭素原子を活性化する塩基性部位とが光学活性な足場に同時に結合する化合物に着目し、鋭意研究を行った。その結果、不斉チオ尿素化合物を非金属不斉触媒として用いることにより、アゾ化合物にカルボアニオンがエナンチオ選択的に付加する炭素−窒素結合生成反応が、高収率かつ高立体選択的に進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]一般式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
〔式中、C*およびC**はそれぞれ独立して不斉炭素を示し;RおよびRは同一または異なって、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示すか、あるいはRとRが結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環(当該脂肪族複素環は、芳香族炭化水素と縮合していてもよい。)を形成してもよく;Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し;RおよびRは同一または異なって、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示すか、あるいはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって、置換基を有していてもよい同素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換基を有していてもよい低級アルキル基を示す。〕で表される化合物(以下、不斉チオ尿素化合物(I)ともいう。)またはその塩の存在下、一般式(II):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、PGは保護基を表す。)で表される化合物(以下、アゾ化合物(II)ともいう。)と、一般式(III):
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、RおよびR10は、それぞれ独立して電子吸引性基を示し、あるいはRとRは隣接する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよく、かつ電子吸引性基を含む環(当該環は、芳香族炭化水素と縮合していてもよい。)を形成してもよい。但し、RおよびR10が同じ基を示す場合を除く。)で表される化合物(以下、化合物(III)ともいう。)を反応させることを特徴とする、一般式(IV):
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、C***は不斉炭素を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、光学活性ヒドラジン化合物(IV)ともいう。)またはその塩の製造方法。
[2]RとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になってシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンを形成する、上記[1]記載の製造方法。
[3]RとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になってシクロヘキサンを形成し、かつR6およびR7が水素原子である、上記[2]記載の製造方法。
[4]C*およびC**の絶対立体配置が、共にS配置であるか、または共にR配置である、上記[3]記載の製造方法。
[5]保護基が、−CO11または−CONR1213(ここで、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、あるいは、R12とR13は、結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環を形成してもよい。)である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]電子吸引性基が、シアノ基、ニトロ基、−P(=O)R1415、−SO16、−CO17、−CONR1819、−COR20(ここで、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R18とR19は、結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環を形成してもよい。)である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]RとRが形成してもよい電子吸引性基を含む環が、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1−インダノンまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレンである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[8]トルエン、塩化メチレン、ジエチルエーテルおよびヘキサンから選ばれる少なくとも一種の溶媒中で行うことを特徴とする、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法によって製造される、光学活性ヒドラジン化合物(IV)またはその塩を、塩基または酸と反応させてPGで表される保護基を除去し、次いで接触還元に付すかあるいは亜鉛末と反応させて、窒素―窒素結合を還元することを特徴とする、一般式(V):
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物(以下、光学活性アミン化合物(V)ともいう。)またはその塩の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非金属である不斉チオ尿素化合物(I)を不斉触媒として用い、アゾ化合物(II)へ化合物(III)を付加させることにより、光学活性ヒドラジン化合物(IV)を高収率かつ高立体選択的に製造することができる。得られた光学活性ヒドラジン化合物(IV)は、窒素−窒素結合を切断することにより、容易に光学活性アミン化合物(V)に導くことができる。
また、本発明の不斉チオ尿素化合物(I)は非金属であるため、金属廃液の処理等をする必要がなく、環境に優しい触媒である。さらに非金属であるため、回収再利用も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.記号、用語の定義
本発明におけるアルキルにおいて、語頭(例えば、イソ、ネオ、sec−、tert−など)を付していない限り直鎖状であり、例えば単にプロピルとあれば、直鎖状のプロピルのことである。
【0018】
、R、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20に示される「置換基を有していてもよい低級アルキル基」の「低級アルキル基」としては、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルである。
当該低級アルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、低級アルコキシ基、モノ−低級アルキルアミノ基、ジ−低級アルキルアミノ基、ハロゲン原子、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ、α−またはβ−ナフチルメトキシ等)、アリルオキシ基、プロパルギルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、−COOR21(ここで、R21は上記で定義したものと同じ低級アルキル基を示す)等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0019】
当該「低級アルコキシ基」としては、アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられ、好ましくはメトキシまたはエトキシである。
【0020】
当該「モノ−低級アルキルアミノ基」としては、アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であるモノ−アルキルアミノ基、例えばN−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−プロピルアミノ、N−イソプロピルアミノ、N−ブチルアミノ、N−イソブチルアミノ、N−sec−ブチルアミノ、N−tert−ブチルアミノ、N−ペンチルアミノ、N−イソペンチルアミノ、N−ネオペンチルアミノ、N−ヘキシルアミノ、N−ヘプチルアミノ、N−オクチルアミノ、N−ノニルアミノ、N−デシルアミノ、N−ウンデシルアミノ、N−ドデシルアミノ等が挙げられる。
【0021】
当該「ジ−低級アルキルアミノ基」としては、アルキル部分が上記で定義された、同一または異なる「低級アルキル基」であるジ−アルキルアミノ基、例えばN,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジイソプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N,N−ジイソブチルアミノ、N,N−ジ−sec−ブチルアミノ、N,N−ジ−tert−ブチルアミノ、N,N−ジペンチルアミノ、N,N−ジイソペンチルアミノ、N,N−ジネオペンチルアミノ、N,N−ジヘキシルアミノ、N,N−ジヘプチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−プロピルアミノ、N−メチル−N−イソプロピルアミノ、N−メチル−N−ブチルアミノ、N−メチル−N−イソブチルアミノ、N−メチル−N−sec−ブチルアミノ、N−メチル−N−tert−ブチルアミノ、N−メチル−N−ペンチルアミノ、N−メチル−N−イソペンチルアミノ、N−メチル−N−ネオペンチルアミノ、N−メチル−N−ヘキシルアミノ、N−メチル−N−ヘプチルアミノ、N−メチル−N−オクチルアミノ、N−メチル−N−ノニルアミノ、N−メチル−N−デシルアミノ、N−メチル−N−ウンデシルアミノ、N−メチル−N−ドデシルアミノ等が挙げられる。
【0022】
当該「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0023】
、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20に示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「アリール基」としては、炭素数1〜20のアリール基、例えばフェニル、1−または2−ナフチル、ビフェニル、ビナフチル等が挙げられる。
当該アリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、低級アルキル基(上記で定義したものと同じものが例示される)、低級アルコキシ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、モノ−低級アルキルアミノ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ジ−低級アルキルアミノ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ハロゲン原子(上記で定義したものと同じものが例示される)、ハロアルキル基(ハロゲン原子が1個または2個以上置換した低級アルキル基、例えばトリフルオロメチル等)、アラルキルオキシ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、アリルオキシ基、プロパルギルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、−COOR21(ここで、R21は上記と同義を示す)等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
に示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「置換基」としては、アルキル基、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、−COOR21(ここで、R21は上記と同義を示す)等が好ましく、ハロアルキル基等がより好ましい。
【0024】
、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20に示される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、上記で定義された「低級アルキル基」の任意の位置に上記で定義された「アリール基」が置換して形成されるアラルキル基、例えばベンジル、1−または2−フェネチル、1−、2−または3−フェニルプロピル、1−または2−ナフチルメチル、ベンゾヒドリル、トリチル等が挙げられる。
当該アラルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0025】
、R、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20に示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「ヘテロアリール基」としては、例えば炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含む5〜10員の芳香性を有する複素環基、及びその縮合ヘテロ環基等が挙げられる。例えば2−又は3−チエニル、2−又は3−フリル、1−、2−又は3−ピロリル、1−、2−、4−又は5−イミダゾリル、2−、4−又は5−オキサゾリル、2−、4−又は5−チアゾリル、1−、3−、4−又は5−ピラゾリル、3−、4−又は5−イソオキサゾリル、3−、4−又は5−イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾール−1、3、4又は5−イル、1,2,3−トリアゾール−1、2又は4−イル、1H−テトラゾール−1又は5−イル、2H−テトラゾール−2又は5−イル、2−、3−又は4−ピリジル、2−、4−又は5−ピリミジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−又は7−インドリル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチエニル、1−、2−、4−、5−、6−又は7−ベンズイミダゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−イソキノリル等が挙げられる。
当該ヘテロアリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
に示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「置換基」としては、アルキル基、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、−COOR21(ここで、R21は上記と同義を示す)等が好ましい。
【0026】
とR、R12とR13並びにR18とR19が結合する窒素原子と一緒になって形成してもよい「置換基を有していてもよい脂肪族複素環」の「脂肪族複素環」としては、炭素原子と少なくとも1個の窒素原子を含み、それ以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含んでもよい、5〜10員の脂肪族複素環、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン等が挙げられる。
当該脂肪族複素環は、芳香族炭化水素と縮合してもよく、そのような芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ビナフチル等が挙げられる。
【0027】
当該脂肪族複素環は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0028】
とRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成してもよい「置換基を有していてもよい同素環」の「同素環」としては、例えば不斉チオ尿素化合物(I)のCおよびC**で示される不斉炭素を含む、炭素数3〜7個のシクロアルカン(例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等)または炭素数4〜7個のシクロアルケン(例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン等)等が挙げられ、好ましくはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられ、より好ましくはシクロヘキサン等が挙げられる。
【0029】
とRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成してもよい「置換基を有していてもよい複素環」の「複素環」としては、例えば不斉チオ尿素化合物(I)のCおよびC**で示される不斉炭素を含み、かつ炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜3個含む5〜10員の複素環、例えばテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピペリジン等が挙げられる。
【0030】
当該「同素環」および「複素環」は、さらに芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ビナフチル等)と縮合してもよい。
当該「同素環」または「複素環」は、置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0031】
PGに示される「保護基」としては、アミノ基の保護基として用いられる自体公知の保護基を特に制限なく使用することができるが、アゾ化合物(II)のアゾ基を安定化させるために、電子吸引性の保護基が好ましい。そのような保護基としては、例えば、−CO11または−CONR1213(ここで、各記号は前記と同義を示す。)等が挙げられ、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0032】
およびR10に示される「電子吸引性基」としては、隣接する炭素原子が不斉チオ尿素化合物(I)の塩基性部位(アミノ基)によってアニオン化される程度に酸性化できるものであれば特に限定されない。そのような電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、−P(=O)R1415、−SO16、−CO17、−CONR1819、−COR20(ここで、各記号は前記と同義を示す。)等が挙げられ、シアノ基、−CO17、−COR20、−CONR1819等が好ましい。
【0033】
とRが隣接する炭素原子と一緒になって形成してもよい「電子吸引性基を含む環」としては、該電子吸引性基が上記の性質を有するものであればよく、例えば、炭素数3〜7のシクロアルカノン類(例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタン等)、炭素数3〜5のラクトン類(例えば、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等)、炭素数3〜5のラクタム類(例えば、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム等)等が挙げられ、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が好ましい。
【0034】
当該電子吸引性基を含む環は、さらに芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ビナフチル等)と縮合してもよい。芳香族炭化水素と縮合する態様としては、1−インダノン、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレン等が好ましい。
当該電子吸引性基を含む環は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、上記「置換基を有していてもよいアリール基」で例示された置換基と同じ置換基が挙げられる。当該置換基の数は特に限定はなく、1〜3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0035】
、C**およびC***に示される「不斉炭素」は、それぞれ独立の絶対立体配置を持ち、特に限定されない。不斉チオ尿素化合物(I)中のCおよびC**の絶対配置は、所望の立体配置を有する光学活性ヒドラジン化合物(IV)を得るために、適宜選択すればよい。なお、光学活性ヒドラジン化合物(IV)においてC***を不斉炭素とする必要があるため、RとR10が同時に同じ基を示す場合は除かれる。
【0036】
「光学活性」とは、不斉炭素においてその立体配置が異なる異性体の等量混合物(例えば、ラセミ体)でないことを意味し、一方の立体異性体が過剰に存在する場合(例えば、6:4の混合物)であれば、光学活性と定義される。
なお、化合物(III)は光学活性である必要はなく、ラセミ体でもよい。
【0037】
不斉チオ尿素化合物(I)、光学活性ヒドラジン化合物(IV)および光学活性アミン化合物(V)は、塩の形態であってもよい。そのような塩としては、例えば無機酸塩(例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等);有機酸塩(例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、メタンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等);アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等);有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)等が挙げられる。
【0038】
不斉チオ尿素化合物(I)のRおよびRは、好ましくはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成する置換基を有していてもよい同素環または置換基を有していてもよい複素環であり;より好ましくはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成する置換基を有していてもよい同素環であり;より好ましくはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成するシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンであり、さらに好ましくはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成するシクロヘキサンである。
【0039】
およびRが、RとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって形成するシクロヘキサンであるとき、RおよびRは水素原子が好ましく、さらにこのとき、CおよびC**の絶対立体配置が共にS配置であるか、または共にR配置であるのが好ましい。
【0040】
不斉チオ尿素化合物(I)のRおよびRは、好ましくは置換基を有していてもよい低級アルキル基またはRとRが結合する窒素原子と一緒になって形成する、置換基を有していてもよく、芳香族炭化水素と縮合していてもよい脂肪族複素環であり、より好ましくはメチル、エチル、イソプロピルまたはRとRが結合する窒素原子と一緒になって形成するイソインドリンであり、さらに好ましくはメチルまたはイソプロピルである。
【0041】
不斉チオ尿素化合物(I)のRは、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基または−COOR21(ここで、R21は上記と同義を示す)で置換されたフェニルであり、より好ましくはハロアルキル基で置換されたフェニルであり、さらに好ましくはトリフルオロメチルで置換されたフェニルである。
【0042】
アゾ化合物(II)のPGは、好ましくはエトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ベンジロキシカルボニル基である。
【0043】
2.光学活性ヒドラジン化合物(IV)および光学活性アミン化合物(V)の製造方法
本発明の製造方法は、下記反応スキームに示される。
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
すなわち、本発明の製造方法は、不斉チオ尿素化合物(I)の存在下、アゾ化合物(II)に化合物(III)を求核付加させ、光学活性ヒドラジン化合物(IV)を製造する方法、および当該光学活性ヒドラジン化合物(IV)を塩基または酸と反応させてPGで表される保護基を除去し、次いで接触還元に付すかあるいは亜鉛末と反応させて、窒素―窒素結合を還元して、光学活性アミン化合物(V)を製造する方法である。
【0046】
本発明の製造方法において製造される光学活ヒドラジン化合物(IV)および光学活性アミン化合物(V)の光学純度は特に限定はないが、HPLCキラル分析によって測定されるエナンチオマー過剰率として、通常63%e.e.以上であり、好ましくは76%e.e.以上である。
【0047】
光学活性ヒドラジン化合物(IV)は、例えば、溶媒中または無溶媒において、不斉チオ尿素化合物(I)、アゾ化合物(II)および化合物(III)を混合することにより製造することができる。試薬の添加の順序は特に限定はなく、不斉チオ尿素化合物(I)、アゾ化合物(II)および化合物(III)をそれぞれ同時または順次添加すればよい。
【0048】
本発明の製造方法に使用される不斉チオ尿素化合物(I)の使用量は、アゾ化合物(II)1モルに対して触媒量でよく、例えば0.01モル〜1.00モルが好ましく、0.05モル〜0.20モルがより好ましい。不斉チオ尿素化合物(I)の使用量がこの範囲より少ないと反応が遅くなる傾向があり、この範囲を越えた場合、使用量に見合う効果が少なくなり、経済的に不利になる傾向がある。
【0049】
本発明の製造方法に使用される化合物(III)の使用量は、アゾ化合物(II)1モルに対して1モル〜2モルが好ましく、1モル〜1.1モルがより好ましい。化合物(III)の使用量がこの範囲より少ないと反応が完結しにくくなる傾向があり、この範囲を越えても、使用量に見合う効果が少なくなり、経済的に不利になる傾向がある。
【0050】
本発明の製造方法においては、溶媒中で行うことができるが、無溶媒で行うこともできる。無溶媒で行った場合は、溶媒が不要であるため経済的に有利であり、また容積効率も高くすることができるので、工業的に有利である。
【0051】
本発明の製造方法に溶媒を使用する場合は、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、α,α,α−トリフルオロトルエン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸tert−ブチル、ヘキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル等を単独または混合して使用することができるが、収率および立体選択性が良好なことからトルエン、塩化メチレン、ジエチルエーテルまたはヘキサンが好ましく、トルエンが特に好ましい。
混合溶媒とする場合には、任意の割合で混合すればよい。
溶媒の使用量としては、アゾ化合物(II)1kgに対して通常1L〜100Lであり、より好ましくは10L〜50Lである。
【0052】
本発明の製造方法の反応温度は使用する試薬にもよるが、通常は−78℃〜100℃であるが、−78℃〜0℃が好ましい。
反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常25時間〜100時間である。
【0053】
本発明の製造方法で製造される光学活性ヒドラジン化合物(IV)は、常法によって単離、精製することができる。例えば反応液を水に注いだ後、分液後、有機層を洗浄、減圧濃縮する、または反応液を濃縮することによって、光学活性ヒドラジン化合物(IV)を単離することができる。単離後、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製することもできるが、これに限定されるものではない。
【0054】
光学活性ヒドラジン化合物(IV)を単離、精製する際に、不斉チオ尿素化合物(I)を容易に分離回収することができる。例えば、不斉チオ尿素化合物(I)には、塩基性のアミンが存在するため、抽出操作において、酸性水溶液(例えば、塩酸、硝酸、硫酸等)で処理することによって、水層に塩として移行させることにより光学活性ヒドラジン化合物(IV)と分離することができる。当該水溶液を中和した後、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン等)で抽出することにより、不斉チオ尿素化合物(I)を分離回収することができる。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいて分離回収してもよい。
【0055】
このようにして分離回収された不斉チオ尿素化合物(I)は、本発明の製造方法に再利用することができる。すなわち、本発明の不斉チオ尿素化合物(I)は非金属であるため、金属触媒等にみられる触媒活性の劣化が起こりにくく、回収することによって何回でも再利用することができ、経済的に有利である。
【0056】
上記で得られる光学活性ヒドラジン化合物(IV)は、自体公知の方法、例えば、1) Angew.Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1790-1793.または 2) J. Am. Chem. Soc. 2004, 126,8120-8121.に記載の方法に準じて反応させることにより、光学活性アミン化合物(V)に導くことができる。
すなわち、光学活性ヒドラジン化合物(IV)を、例えば、溶媒中または無溶媒において、塩基または酸と反応させてPGで表される保護基を除去し、次いで接触還元に付すかあるいは亜鉛末と反応させて、窒素―窒素結合を還元するすることにより、光学活性アミン化合物(V)を製造することができる。反応条件の詳細は、上記文献に準じて行なうことができるので、省略する。
【0057】
本発明の製造方法によって製造される光学活性ヒドラジン化合物(IV)および光学活性アミン化合物(V)は、アミン類、アミノ酸、医薬、農薬、食品添加物等の有用な合成中間体となり得る。
【0058】
本発明で使用される不斉チオ尿素化合物(I)は、WO2005/000803号パンフレットに記載の方法によって製造することができる。
【0059】
本発明の製造方法の原料であるアゾ化合物(II)は、市販品を使用することができる。
【0060】
本発明の原料である化合物(III)は、目的に応じて、公知化合物から制限なく選択することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0062】
製造例1
(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素
【0063】
【化8】

【0064】
アルゴン雰囲気下、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルイソチオシアネート(605mg,2.23mmol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液(1.0 ml) に(R,R)−trans−N,N−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン(317mg,2.23mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌し、次いで混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=100/5/1)にて精製し、表題化合物を白色アモルファスの固体(597mg,収率65%)として得た。
【0065】
[α]16 −32.7 (c0.99,CHCl);
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6) δ: 10.0 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 8.17 (s, 2H),7.66(s, 1H), 4.09 (brs,1H), 2.54(brs, 1H), 2.21(s, 7H), 1.82(brs, 1H),1.74(brs, 1H), 1.63 (brd, J=11.0Hz,1H), 1.31-1.01(m, 4H)ppm;
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ:178.6, 142.0, 130.8, 130.5, 130.3, 130.0,126.5, 124.3, 122.2, 120.9, 120.0,115.3, 65.0, 55.3, 45.7, 31.6, 24.6, 24.5, 21.0 ppm;
IR(CHCl3) ν:3402, 3200,2942,2865, 1528, 1469, 1383, 1278 cm-1;
MS(FAB+) 414 (MH+,100);
元素分析.計算値(for C17H21F6N3S):C,49.39; H, 5.12; N, 10.16; F, 27.57.分析値:C, 49.36; H, 5.28; N, 10.11; F, 27.71.
【0066】
実施例1
(S)−N,N’−ビス(イソプロポキシカルボニル)−1−シアノ−1−ヒドラジノ−1−フェニル酢酸エチルエステル
2−シアノ−2−フェニル酢酸エチルエステル(23.0 mg, 0.11mmol)と(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素(4.1mg, 0.01mmol)のトルエン(1 mL)溶液にアゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(21.5μl, 0.10mmol)を−78℃で加えた。15分間撹拌後、反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離精製し、表題化合物を41.4mg(収率:100%,光学純度76%ee)得た。無色アモルファス
【0067】
H−NMR(500 MHz, CDCl) δ: 0.99 and 1.16(eachd, J=6.1Hz, total 3H), 1.20−1.40(m, 6H), 4.20−4.40(m, 2H), 4.75−4.95(m, 1H), 5.08(m,1H), 6.11 and 6.29(each brs, total 1H), 7.35−7.50(m, 3H), 7.60−7.85(m, 2H) ppm;
IR(CHCl) ν 3412, 2986, 1753, 1739, 1726cm−1
MSMS(FAB) 392(MH, 97), 237(100);
HRMS(FAB) Calcd for [C1925:392.1822; Found: 392.1823;
HPLC分析条件:Chiralcel AD, ヘキサン/2−プロパノール=90/10, 0.5mL/min, λ=210nm,リテンションタイム: (メジャー) 55.9min, (マイナー) 37.1min.
【0068】
実施例2
N,N’−ビス(イソプロポキシカルボニル)−2−アセチル−2−ヒドラジノシクロペンタノン
2−アセチル−シクロペンタノン(13.9mg, 0.11mmol)と(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素(4.1mg,0.01mmol)のトルエン(1mL)溶液にアゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(21.5μl, 0.10mmol)を−78℃で加えた。18時間撹拌後、反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離精製し、表題化合物を31.8mg(収率:97%,光学純度:77%ee)得た。無色オイル
【0069】
[α]26=+33.4(c 1.22, CHCl);
H−NMR(500MHz, CDCl) δ: 1.20−1.40(m, 12H),1.65−2.85(m, 9H), 4.94(brs, 2H), 6.60(brs, 1H);
IR(CHCl) ν 3018, 1759, 1746, 1733, 1720cm−1
MS(FAB) 329(MH, 100);
HRMS(FAB) Calcd for[C1624:329.1713; Found: 329.1707;
HPLC条件:Chiralcel AD, ヘキサン/2−プロパノール=90/10, 0.5mL/min, λ=210nm,リテンションタイム (メジャー) 24.6min, (マイナー) 18.0min
【0070】
実施例3
N,N’−ビス(エトキシカルボニル)−1−ヒドラジノ−2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルエステル
2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルエステル(15.6mg, 0.11mmol)と(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素(4.1mg,0.01mmol)のトルエン(1mL)溶液に室温下、アゾジカルボン酸ジエチルエステル(45.5μl, 0.10mmol)を加えた。0.5時間撹拌後、反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離精製して、表題化合物を41.4mg(収率:92%)得た。
エナンチオ選択性はキラルHPLC分析(ChiralpakADカラム,ヘキサン/2−プロパノール=90/10, 1.0mL/min, λ=254nm, リテンションタイム (メジャー)=11.7 min, (マイナー)=9.8min)により、80%eeであった。
【0071】
[α]25=+18.00(c 1.00, CHCl);
IR(CHCl): ν 3398, 3027, 2360, 1738,1215cm−1
H−NMR(500Hz, CDCl):δ: 6.96 (brs, 1H),4.10−4.20 (m, 4H),3.78(s, 3H), 2.60−2.10(m, 6H), 1.25−1.32(m, 6H)ppm;
13C−NMR(126Hz, CDCl):δ: 171.0, 156.0, 155.4, 63.0, 62.1, 60.1, 53.0, 22.4, 20.7, 18.4, 14.1ppm;
MS(FAB): 317(MH, 100), 185(75);
HRMS(FAB) Calcd for [C1321:317.1349; Found: 317.1343.
【0072】
実施例4
N,N’−ビス(イソプロピルカルボニル)−2−ヒドラジノ−[1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレン]−2−カルボン酸メチルエステル
1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレン−2−カルボン酸メチルエステル(22.5mg, 0.11mmol)と(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素(4.1mg,0.01mmol)のトルエン(1mL)溶液にアゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(21.5μl, 0.10mmol)を−78℃で加えた。168時間撹拌後、反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離精製して、表題化合物を38.6mg(収率:95%,光学純度:79%ee)得た。無色オイル
【0073】
[α]25=+5.60(c 1.14, CHCl);
IR(CHCl): ν 3366, 3039, 2985, 2947,1746, 1732, 1706cm−1
H−NMR(500Hz, CDCl):δ: 1.00−1.48(m, 12H), 2.52−3.54(m, 4H), 3.81(s, 3H), 4.71 and 4.98(each s, total2H), 6.41(s, 1H), 7.25−7.45(m, 2H), 7.45−7.51(m, 1H), 7.85−8.05(m, 1H)ppm;
MS(FAB): 407(MH, 100), 205(100);
HRMS(FAB) Calcd for [C2027:407.1818; Found: 407.1826.
HPLC条件:Chiralcel OD−H, ヘキサン/2−プロパノール=90/10, 0.5mL/min, λ=254nm,リテンションタイム (メジャー) 14.3min, (マイナー) 18.4min

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


〔式中、C*およびC**はそれぞれ独立して不斉炭素を示し;RおよびRは同一または異なって、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示すか、あるいはRとRが結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環(当該脂肪族複素環は、芳香族炭化水素と縮合していてもよい。)を形成してもよく;Rは置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し;RおよびRは同一または異なって、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示すか、あるいはRとRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になって、置換基を有していてもよい同素環または置換基を有していてもよい複素環を形成してもよく;RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換基を有していてもよい低級アルキル基を示す。〕で表される化合物またはその塩の存在下、一般式(II):
【化2】


(式中、PGは保護基を表す。)で表される化合物と、一般式(III):
【化3】


(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、RおよびR10は、それぞれ独立して電子吸引性基を示し、あるいはRとRは隣接する炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよく、かつ電子吸引性基を含む環(当該環は、芳香族炭化水素と縮合していてもよい。)を形成してもよい。但し、RおよびR10が同じ基を示す場合を除く。)で表される化合物を反応させることを特徴とする、一般式(IV):
【化4】


(式中、C***は不斉炭素を示し、他の各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
とRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になってシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンを形成する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
とRがそれぞれ結合する不斉炭素と一緒になってシクロヘキサンを形成し、かつR6およびR7が水素原子である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
*およびC**の絶対立体配置が、共にS配置であるか、または共にR配置である、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
保護基が、−CO11または−CONR1213(ここで、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、あるいは、R12とR13は、結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環を形成してもよい。)である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
電子吸引性基が、シアノ基、ニトロ基、−P(=O)R1415、−SO16、−CO17、−CONR1819、−COR20(ここで、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、R18とR19は、結合する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい脂肪族複素環を形成してもよい。)である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
とRが形成してもよい電子吸引性基を含む環が、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1−インダノンまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレンである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
トルエン、塩化メチレン、ジエチルエーテルおよびヘキサンから選ばれる少なくとも一種の溶媒中で行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって製造される、一般式(IV):
【化5】


(式中、各記号は請求項1と同義を示す。)で表される化合物またはその塩を、塩基または酸と反応させてPGで表される保護基を除去し、次いで接触還元に付すかあるいは亜鉛末と反応させて、窒素―窒素結合を還元することを特徴とする、一般式(V):
【化6】


(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。

【公開番号】特開2006−240996(P2006−240996A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54799(P2005−54799)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年2月1日 日本薬学会 第125年会Webページ(http://nenkai.pharm.or.jp/125/pc/ipdfview.asp?i=3419)にて発表
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】