説明

光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法

【課題】光学純度の高い光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を効率よく得ることが出来る工業的製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する光学活性フェニルアラニンアミド誘導体を光学分割剤として用いて、ラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を有機溶媒中で光学分割することを特徴とする一般式(3)


(Rはアルキル基等、*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬またはその中間体として有用な光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法である。
【背景技術】
【0002】
ラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を合成する方法は多くの報告があり(特許文献1、2)、その誘導体を変換して様々な化合物が合成されている。しかしこの5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体は有用な中間体であるにもかかわらず、その光学活性体を簡便に製造する方法は極めて少なく、例えばラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体に酵素を作用させる不斉加水分解反応が知られているにすぎず(非特許文献1)、市販あるいは化学的に合成された光学分割剤を用いて光学分割を行った製造例は報告されていない。また、前記公知例においてはラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を酵素により不斉加水分解して高い光学純度の光学活性体を分離しているが、その反応溶液は原料であるラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の濃度が1.5重量%と非常に希薄であり、生産性が低く工業的生産を行うことは困難である。つまり通常酵素の活性は反応条件に大きく影響を受けるため、濃度を上げると活性が低下する。そのため、実用化が可能な濃度で反応を行うことは困難である。
【特許文献1】特開平04―112868号公報
【特許文献2】特公平07―045491号公報
【非特許文献1】テトラヘドロン・アシンメトリー.,12,3241,(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、高い光学純度の光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を効率的に生産できる工業的製造法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は課題解決に向けて鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は
「一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(ここでRは、i)水素原子、ii)ハロゲン原子、iii)ニトロ基、iv)シアノ基、v)炭素数1〜4のアルキル基、またはvi)炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R、Rは同じであっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、iii)芳香環が無置換、または炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアラルキル基を示す。また*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する)で表される光学活性フェニルアラニンアミド誘導体を光学分割剤として用いて、一般式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
(ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはアラルキル基を示す。)で表されるラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を有機溶媒中で光学分割することを特徴とする一般式(3)
【0010】
【化3】

【0011】
(ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはアラルキル基を示す。また*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学純度の高い光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を効率よく得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において出発原料として用いられるラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体とは一般式(4)または(5)
【0014】
【化4】

【0015】
で表される化合物の混合物を意味する。ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基を示すが、好ましくは水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数7〜12のアラルキル基が挙げられ、なかでも炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく挙げられる。また、光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体とはいずれか一方が80%以上過剰の光学活性体、すなわち光学純度が80%ee.以上の混合物を意味する。5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の具体例として、1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸、5−オキソピロリジン−3−カルボン酸、1−メチル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸、1−フェニル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸、1−p−クロロフェニル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸などが好ましく使用できるが1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸が特に好ましい。ここで、原料の5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体はいかなる方法で製造したものでも使用できるが、例えば下記反応式に従って製造することができる(特開平4−112868号公報参照)。
【0016】
【化5】

【0017】
(ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはアラルキル基を示す。)
すなわち、イタコン酸等のカルボン酸とベンジルアミン等のアミンを溶媒中加熱還流することでラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を得ることができる。
本発明で使用する光学分割剤は、一般式(5)
【0018】
【化6】

【0019】
(ここでRは、i)水素原子、ii)ハロゲン原子、iii)ニトロ基、iv)シアノ基、v)炭素数1〜4のアルキル基、またはvi)炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R、Rは同じであっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、iii)芳香環が無置換、または炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアラルキル基を示す。また、*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する) で表されるDまたはL体の光学活性フェニルアラニンアミド誘導体であり、いずれか一方が95%以上過剰の光学活性体、すなわち光学純度が95%ee.以上であることが好ましく、より好ましくは98%ee.以上である。また、L体を使用するか、D体を使用するかは、目的とする光学活性5−オキソ−3−ピロリジンカルボン酸誘導体の立体配座に応じて選択すればよい。例えば光学活性フェニルアラニンアミド、光学活性フェニルアラニンメチルアミド、光学活性フェニルアラニンジメチルアミド、光学活性フェニルアラニンエチルアミド、光学活性フェニルアラニンジエチルアミド、光学活性フェニルアラニンプロピルアミド、光学活性フェニルアラニンジプロピルアミド等のフェニルアラニンアルキルアミド類や、光学活性フェニルアラニンアニリド、光学活性フェニルアラニン−p−クロロアニリド、光学活性フェニルアラニンベンジルアミド等が挙げられるが、好ましくは光学活性フェニルアラニンベンジルアミドである。
【0020】
光学分割に使用する光学活性フェニルアラニンアミド誘導体の使用量は、5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体に対して0.4〜1.2モル倍が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0モル倍である。
【0021】
光学分割する際に使用する溶媒は基質と反応しない有機溶媒であることが必要であり、例えば、炭素数1〜8のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できるが、好ましくは炭素数1〜4のアルコールである。添加する有機溶媒の使用量に特に制限はないが、ラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の濃度が5〜30重量%となるように調製することが好ましく、より好ましくは10〜25重量%である。
【0022】
また、光学分割を行う際、系内に水を存在させることが好ましい。系内の水分量に特に制限はないが、得られるジアステレオマー塩結晶の品質、操作性を考慮すると、系内の水分量はラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体に対して0.1〜6モル倍が好ましく、より好ましくは0.5〜6モル倍である。
【0023】
光学分割を行う温度は、ラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体、光学分割剤、有機溶媒の種類によって異なるが、通常は0℃から用いる有機溶媒の沸点以下の温度である。
【0024】
光学分割の方法は、ラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体、光学分割剤、有機溶媒を仕込み、析出した塩を濾過する方法が採用できる。この場合一括仕込みする方法、原料のラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体と溶媒を仕込んだ後に撹拌しながら光学分割剤を入れる方法、逆に溶媒と光学分割剤を仕込んだ後に、撹拌しながら原料の5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を仕込む方法等があるが特に限定されない。これらを仕込んだ後、昇温して溶解させるか、あるいはスラリー状態で十分に平衡に到達させてから徐々に降温して、析出結晶を濾過して単離する。母液の付着による影響が大きい場合や、特に高い光学純度の製品を生産する場合には、再度、溶媒を加えて溶解、あるいはスラリー洗浄し、析出結晶を濾過することで、容易に光学純度を高くすることができる。
【0025】
得られた結晶から光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を単離するのは常法に従って実施できる。例えば、結晶を水と塩酸の混合溶媒中に添加し、析出した結晶を濾過することによって光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を得ることもできるし、一方、結晶を水と苛性ソーダと有機溶媒を用いて有機層側に光学分割剤、水層側に光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を抽出し、その水層を分液したあと硫酸とトルエンなどの有機溶媒を用いて抽出して、有機層側に光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を抽出し、濃縮することで単離することができる。
【0026】
本発明の製造法によれば、光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を高い光学純度で効率よく生産できるだけでなく、分割剤を回収・リサイクルすることができるので省資源的な製造法といえる。また回収した不要の光学異性体である光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体をラセミ化・再使用すれば、さらに省資源的な製造法となる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0028】
ここでは、L−フェニルアラニンベンジルアミドを光学分割剤に用いてラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸から光学活性1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸を合成する方法について説明する。
【0029】
<分析法>
(光学純度分析法)
実施例における光学活性1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の光学純度は、以下の分析条件に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。分析用サンプルの調製は、光学分割により得られたジアステレオマー塩結晶を10%HCl水溶液を用いて中和し、テトラヒドロフラン、塩化ナトリウムを添加して抽出、有機層を分液した後、濃縮し、1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸を移動相で希釈して行った。
カラム :CHIRALPAK AD−RH 0.46cmφ×15cm(ダイセル化学(株))
移動層 :pH2リン酸水溶液/アセトニトリル=84/16(v/v)
流量 :0.5ml/分
温度 :40℃
検出器 :UV(220nm)
保持時間:R体:15.2分、S体:16.8分。
【0030】
(化学純度分析法)
ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸と光学活性1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の化学純度は、以下の分析条件に従ってHPLCにより分析した。
カラム :CAPCELL PAK C−18、4.6mm×150mm(資生堂)
移動層 :5mM ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(リン酸でpH2.5に調整)/アセトニトリル=70/30(0minから30min)→36/64(30minから40min)→70/30(40minから45min)→70/30(45minから55min)
流量 :1.0ml/分
温度 :40℃
検出器 :UV(210nm)
保持時間:3.0分。
【0031】
なお、得られた光学活性1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の絶対配置は、公知文献(テトラヘドロン・アシンメトリー.,12,3241,(2001))に従い決定した。例えば、光学活性1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の旋光度が[α]=+15.5(C=0.5、エタノール)である場合、絶対配置は(S)である。なお旋光度は旋光計を用いて測定した。
【0032】
参考例 ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の合成
温度計、滴下ロート、ディーンスタークを装着した2L4口フラスコにイタコン酸140.53g(1.08モル)とトルエン1001.68g、およびベンジルアミン116.2g(1.08モル)を添加し撹拌しながら108℃まで昇温しその温度を保ちながら4時間撹拌した。反応終了後30℃まで冷却しながら12時間撹拌した。得られた結晶を固液分離し、トルエンでリンスした。減圧乾燥した結果、粉体状の白色結晶220.03g(化学純度98%、収率93%)を単離した。
【0033】
以下の実験は、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸の結晶を原料に用いて実施した。
【0034】
実施例1
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸10.0g(45.7ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド11.5g(45.7ミリモル)、および2−プロパノール18.8gと水3.0g(2.6モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたwetケーク中の1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は4.02g、光学純度94.2%ee.であった。得られたwetケークのうち10.3gを100ml4口フラスコに入れ2−プロパノール9.14gと水1.48g(2.6モル倍)を加えて、内温65℃に加熱し撹拌した。溶解液が均一になったところで、65℃から50℃に冷却し、先ほど得られたwetケーク(光学純度94.2%ee.)の一部を種として接種し2時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離し、wetケーク11.6gであり、得られたケーク中の1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は3.49gであり、光学純度98.8%ee.であった。
【0035】
得られた、wetケークにトルエン28g、48%苛性ソーダ水溶液12.1g、水22gを加え撹拌した後pHが12になったことを確認し分液操作を行った。得られた水層42.5gを分取し、つづいてその水層に95%硫酸7.5gとテトラヒドロフラン16.5gを加えて撹拌した。二層分離した上層を分取して濃縮乾固した。濃縮した固形分にトルエン10gを加えて共沸脱水を行い、得られた結晶にトルエン10gを加えて60℃で溶解し1時間撹拌した。28℃まで冷却した後、5時間、28℃で撹拌し、析出した結晶を濾過して(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸3.02gを得た。その光学純度98.5%ee.であり収率は30.1%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)であった。
【0036】
実施例2
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸5.01g(22.85ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド5.80g(22.81ミリモル)、および2−プロパノール32.48gと水0.25g(0.6モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は2.66gであり、収率53.1%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)、光学純度69.3%ee.であった。
【0037】
実施例3
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸5.05g(23.03ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド5.79g(22.77ミリモル)、および2−プロパノール34.42gと水0.44g(1.0モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は2.35gであり、収率46.5%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)、光学純度80.2%ee.であった。
【0038】
実施例4
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸5.08g(23.17ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド5.80g(22.81ミリモル)、および2−プロパノール32.42gと水0.59g(1.4モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は2.33g、収率45.9%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)光学純度84.1%ee.であった。
【0039】
実施例5
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸5.08g(23.17ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド5.80g(22.81ミリモル)、および2−プロパノール32.43gと水0.73g(1.8モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は2.06g 収率40.6%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)光学純度94.7%ee.であった。
【0040】
実施例6
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸5.02g(22.90ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド5.80g(22.81ミリモル)、および2−プロパノール32.65gと水1.52g(3.7モル倍)を加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は2.01g、収率40.0%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)光学純度97.7%ee.であった。
【0041】
実施例7
撹拌器、温度計、コンデンサーを装着した容量100ml4口フラスコに、ラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸15.7g(71.8ミリモル)とL−フェニルアラニンベンジルアミド17.84g(70.37ミリモル)、および2−プロパノール96.97gを加え、内温65℃に加熱し1時間撹拌した。溶解液が均一系になったところで、65℃から50℃に冷却しあらかじめ用意してあった1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸とL−フェニルアラニンベンジルアミドの塩(光学純度66.9%ee.)を少量接種し、そのまま28℃まで冷却しながら撹拌した。12時間撹拌し、生じたスラリーを桐山漏斗を用いて固液分離した。得られたケーク中の(S)−1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸は7.56g収率48.1%(原料であるラセミ1−ベンジル−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対する収率を指す)光学純度は29.0%ee.であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(ここでRは、i)水素原子、ii)ハロゲン原子、iii)ニトロ基、iv)シアノ基、v)炭素数1〜4のアルキル基、またはvi)炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R、Rは同じであっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、iii)芳香環が無置換、または炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアラルキル基を示す。また*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する)で表される光学活性フェニルアラニンアミド誘導体を光学分割剤として用いて、一般式(2)
【化2】

(ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはアラルキル基を示す。)で表されるラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体を有機溶媒中で光学分割することを特徴とする一般式(3)
【化3】

(ここでRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、またはアラルキル基を示す。また*のついている炭素原子は不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法。
【請求項2】
光学分割を行う系内の水分量をラセミ5−オキソピロリジン−3−カルボン酸に対して0.5〜6モル倍であることを特徴とする請求項1記載の光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法。
【請求項3】
有機溶媒が炭素数1〜4のアルコールであることを特徴とする請求項1または2記載の光学活性5−オキソピロリジン−3−カルボン酸誘導体の製造法。

【公開番号】特開2008−127308(P2008−127308A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312392(P2006−312392)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】