説明

光学照明装置とその動作方法

可変焦点照明装置は、前方に光を照射する光源と、その光源からの光路中に、光源の前方の光軸上で該光源に対して接近又は後退するように設けた可動レンズと、光源の前方に設けた固定レンズとを備えている。そのレンズの組み合わせによって、実際の光源の後方に光源の像を作り、可動レンズの移動により、その画像から前方に照射した光を合焦させる。単一レンズシステムと比較して、この二レンズシステムでは、焦点の所定の位置精度を達成するために要求される可動レンズの位置決め精度は一桁低くなる。この発明の他の形態では、可動レンズは、間隔を空けて対向する固定径の開口とともにユニットとして形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光学装置に関し、特に可変焦点ビームを使用して被写界深度を増加させる光学照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードリーダのような光学走査装置は、コードを含む離れた目標(ターゲット)に向けて走査されたレーザビームを照射する。そのコードから反射された照明光は、その後コード検知の処理がなされる。コードの正確な読み取りには、レーザビームの焦点が合った状態のままコード全体を走査する必要がある。これには、普通に用いることのできるCCDやCMOSイメージセンサよりも大きな被写界深度が要求される。そのため、レーザスキャナにおいて被写界深度を効果的に増加させるために、可変焦点が一般に使用されている。
【0003】
従来のレーザビーム照明装置10の概略図を図1に示す。レーザダイオード12のようなレーザ光源が、前方へレーザ光を照射する。その光は、この場合固定レンズである合焦レンズ14に当ってそれを通過し、そのレンズの前方の開口(アパーチャ)16を通過する。比較的狭いビームが開口16から照射され、そして開口16から距離Z0において、ビームウエスト18又は最小径を示す。そのZ0の実値は、光の特定の波長におけるレンズ14の焦点距離及び開口16の直径によって決まる。
【0004】
図2は、日本特許第3730673号公報に開示されているような、可変焦点レーザビーム照明装置10′の概略を示す。この装置10′は、開口からビームウエストまでの距離を調節できるレーザビームを生成する。この場合、光源12は、レンズ20を通して前方へレーザ光を照射する。レンズ20は、光源12に対して光軸上で接近又は後退移動するように設けられる。レンズ20から前方に発光された光は、径を可変できる開口22に進む。レンズ20の移動と同時に開口22を調節することによって、開口22からレーザビームウエストまでの距離を、所定範囲に亘って調節し得る。開口22からターゲットまでの距離を検出することによって、レンズ20と開口22を調節し、ターゲットの距離に対応する距離にビームウエストを設定できるように、開口22からビームウエストまでの距離を所定範囲に亘って調節する。その結果、光源10′の被写界深度が効果的に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光源の被写界深度が効果的に増加するのは望ましい結果ではあるが、それはかなりの費用をかけて達成される。レンズ位置及び開口サイズの制御は、協調して動作する二つの別々の制御装置及びアクチュエータによって達成される。したがって、光源は複雑になり、小型化が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一つの形態によると、前方へ光を照射する光源を備えた可変焦点照明装置は、その光源からの光路中に、光源の前方でその光源に対して光軸方向に接近又は後退移動するように設けられた可動レンズと、光源の前方に設けられた固定レンズとを備えている。その固定レンズは可動レンズの前方にあるとよい。設計により、このレンズの組み合わせは、実際の光源の後方に光源の像を作る、そして、可動レンズの移動は、その像から前方に照射される光を合焦させる。単一レンズシステムと比較して、この二レンズシステムにおいては、焦点の所定の位置精度を達成するために要求される可動レンズの位置決め精度が一桁低くなる。
【0007】
この発明の他の形態によると、可動レンズは、間隔を置いて対向する固定径の開口とともにユニットとして形成される。その照明装置は、前方に光を照射する光源と、その光源の前方でその光源に対して光軸方向に接近又は後退移動するように設けられた前述のユニットと、光源の前方に設けられた固定レンズとを備えている。可動レンズの移動により発光した光線の焦点を変化させるだけでなく、同時に開口が光源に対して接近又は後退移動することにより、通過した光が固定レンズに当たる最大角も変化する。この結果、特に効果的な焦点の制御ができる。固定径の開口と比較してビームウエストの径を減少させ、その結果、照明装置によって生成される光のスポットサイズをより小さくすることができるだけでなく、照明装置の全焦点範囲に亘ってスポットサイズの変動が少なくなる。さらに、より一定した照度が達成される。
【0008】
この発明の前述の簡単な説明とさらなる目的や特徴及び利点は、添付図面を参照してこの発明の好適な実施例を詳細に説明することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】典型的な従来のレーザビーム照明の概略図である。
【図2】周知の可変焦点レーザビーム照明装置を示す概略図である。
【図3】この発明による可変焦点照明装置の第1実施例の断面図である。
【図4】図2に示した照明装置(30)のための可動レンズ20の位置の関数として装置の焦点距離Fを示す線図である。
【図5】図3に示した照明装置30のためのレーザダイオード34と可動レンズ38との間の距離の関数として装置の焦点距離を示す線図である。
【図6】図3の装置30における光学パラメータの概要を示す図である。
【図7】この発明による可変焦点照明装置の第2実施例130の断面図である。
【図8】装置130におけるフレーム154の移動端位置における開口156の効果を示す概略図であり、(A)はフレーム154が最も前方に位置した場合に関し、(B)はフレーム154が最も後方に位置した場合に関する。
【図9】開口からの距離の関数としてスポットサイズ(ビームウエスト径)を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図3はこの発明による可変焦点照明装置30の第1実施例の断面図である。装置30は、ハウジング32と、そのハウジングの後部に搭載されたレーザダイオード34である光源と、そのハウジング32のレーザダイオード34より前方に設けられた固定レンズ36と、レーザダイオード34と固定レンズ36の間に設けられ、そのレーザダイオードに対して接近又は後退移動する可動レンズ38とを備えている。レンズ38の移動は、以下でさらに詳述する線形アクチュエータによってなされる。
【0011】
その作用において、レーザダイオード34はレンズ36及び38に向けて前方に光を発光する。レンズ36及び38の協調動作によって、焦点の合ったビームがレンズ36の前方に照射される。レンズ38の移動は、照射したビームのビームウエストを移動させる。具体的には、レンズ38がレーザダイオード34に近付くにつれて、ビームウエストが前方に移動し、装置30の有効な焦点距離を増加させる。
【0012】
レーザダイオード34は波長が650nmの光を生成するとよいが、他の波長の光でも使用できる。レーザダイオード34は、前方に光を発光するように、ハウジング32の後方における開口部32aに搭載される。
【0013】
固定レンズ36は、ハウジング32内の内壁40に搭載される、そして、内壁40の開口部40a内に突き出ている。レンズ36は2.33mmの焦点距離を持ち、レーザダイオード34から2.284mmの固定距離に設けるとよい。しかし、これらの値は適用に応じて変更し得ることが分かるであろう。可動レンズ38は、20mmの焦点距離を持つ球面レンズであって、レーザダイオード34から1mm〜1.5mmの距離の間で移動するように設けるとよい。しかし、適用に応じて他の焦点距離及び移動距離を用いてもよい。また、レンズ38は、円筒状、凸面状、凹面状又は他のどのような形状のものとすることも考えられる。この構成によって、装置の焦点距離を100mmから800mmの間で変化させることができる。
【0014】
一般的な円筒状の固定ヨーク45が、後方に突き出すようにハウジング32の内部に設けられる。スリーブ状の可動ヨーク50が、ヨーク45に沿ってその軸方向にスライド可能に、そのヨーク45に装着されている。ヨーク50の前端が、弾性支持体52によってハウジング32に装着されている。ヨーク50の後方には、可動レンズ38を支持するフレーム54が設けらている。そして、フレーム54は、弾性支持体56によってハウジング32に装着されている。弾性支持体52及び56は、可動ヨーク50を固定ヨーク45上でその軸方向にスライドできるように保持する。その結果、レンズ38がレーザダイオード34に対して接近又は後退する移動が可能になる。
【0015】
線形アクチュエータは、ハウジング32内に設けられた固定磁石60とヨーク50の周りに形成された電気コイル65とによって構成される。当業者であれば、コイル65に電流を流したときに誘起される磁界が磁石60と相互作用して、可動ヨーク50を固定ヨーク45に沿って軸方向にスライドさせることが分かるであろう。コイル65に流す電流の大きさと方向を制御することによって、レーザダイオード34に対するレンズ38の位置を制御するヨーク50の位置を制御することができる。実際には、目標の距離が検知され、その目標の位置にビームウエストが位置するようにレンズ38の位置が制御される。
【0016】
図4は、図2に示した照明装置(30)のための可動レンズ20の位置の関数として装置の焦点距離Fを示す線図である。図示のように、この線図における曲線は、可動レンズの略0.05mmの移動によって装置の焦点距離が100mmから800mmに変化する急勾配を示している。対照的に、図5は、図3に示した照明装置30におけるレーザダイオード34と可動レンズ38との間の距離の関数として装置の焦点距離を示す線図である。図示のように、装置の焦点距離の100mmから800mmの変化が、可動レンズ38の0.5mmの距離に亘って達成されている。言い換えると、レンズ38の移動量は、レンズ20の移動量よりも一桁大きいことになる。つまり、仮にとびとびのステップ、例えば0.5mmステップで装置の焦点距離を制御したい場合、図2の装置10′では、図3の装置30よりも非常に制御が難しい。
【0017】
好ましい実施例において、可動レンズ38はレーザダイオード34と固定レンズ36との間に配置されるが、その構成は必須ではない。この発明では、固定レンズ36がレーザダイオード34と可動レンズ38との間に配置されることも考えられる。
【0018】
図6は装置30の光学パラメータの概要を示す図である。レンズ36と38及びレーザダイオード34の位置Oが示されている。この発明の二レンズシステムの一つの効果は、位置Oから距離SIFTだけ後方にシフトした位置Oimagに、レーザダイオード34の像を生成することである。そのシフトされた像は、その後、レンズ38の移動によって合焦される。実質的な動作は、図4の線図の特性における勾配のより少ない部分にシフトされ、図5の線図の特性にする。
【0019】
図7は、この発明による可変焦点照明装置の第2実施例130の断面図である。装置130の殆どの要素は、装置30の対応する要素と構成及び作用が同じであり、同一の参照符号が付されている。主な違いはフレーム154の構成であり、それは可動レンズ38の後方に距離を置いて開口158が一体に設けられている点で、フレーム54と異なっていることである。好ましい実施例においては、この距離は0.3mmで開口156の径は0.25mmである。しかし、当業者であれば、これらの値は適用に応じて変更し得ることが分かるであろう。その他の点では、種々の構成要素の距離、サイズ及び移動量は同じである。開口158をレンズ38の前方に設置することや、固定レンズ36をレーザダイオード34とフレーム154との間に設置することもまた考えられる。
【0020】
図8は、フレーム154の移動端な位置における開口156の効果を示す概略図である。図8の(A)はフレーム154が最も前方に位置している。この位置では、開口158はダイオード34から発光された光の大部分を遮光する。その結果、レンズ36の前端における有効な開口径がφになる。一方、フレーム154が最も後方に位置している場合には、ダイオード34から発光された光のより多くが開口158を通過し、φよりもかなり大きい有効な開口径φ′になる。好ましい実施例においては、φは0.5mmでφ′は0.8mmである。特定の適用に応じてこれらを変更してよいことが分かるであろう。しかしながら、有効な開口の増加に伴ってビームウエストの距離が増加することは明らかである。従って、目標に対して照射される光量が、目標の距離とともに望ましく増加し、より一定な照度をもたらす。
【0021】
図9は、開口からの距離の関数としてスポットサイズ(ビームウエスト径)を示す線図である。理想的には、スポットサイズは曲線110によって示されるように、約0.2mmであって、かつ距離によって変化しないのがよい。固定位置における開口では、曲線120によって示されるように、スポットサイズは、100mmにおいてはほぼ理想値と等しくなるものの、開口から500mmの距離では約0.7mmに達するまで距離とともに直線的に増加する。図7に示した可動開口の装置においては、開口からの距離は、レンズ36の前端における有効な開口から測定される。曲線130によって示されるように、スポットサイズは、レンズ36から100mmにおいて理想値とほぼ等しくなり、曲線120よりもかなり低い変化率で距離の増加とともに直線的に増加する。実質的に、可動開口を用いると平均スポットサイズが減少し、そのスポットサイズが距離とともに徐々に大きくなる。
【0022】
この発明の好ましい実施例を説明のために開示してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲によって規定されるこの発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の追加、変更および置き換えが可能なことが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に光を照射する光源と、
照射された前記光の光路中の固定位置に設けた第1のレンズと、
照射された前記光の光路中に、前記光源に対して接近又は後退するように設けた第2のレンズとを備えた光学照明装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のレンズが、前記光源の後方に該光源の像を生成し、その像が前記第2のレンズの位置とともに位置が変化するビームウエストを伴って装置の前方へ光を照射するように構成されている請求項1に記載の光学照明装置。
【請求項3】
前記光源が、レーザ光として規定される範囲の波長の光を発光する請求項1に記載の光学照明装置。
【請求項4】
前記光源が、略650nmの波長をもつ光を発光する請求項3に記載の光学照明装置。
【請求項5】
前記第2のレンズが、前記光源と前記第1のレンズとの中間に設けられた請求項1又は3に記載の光学照明装置。
【請求項6】
前記第2のレンズが、前記光源から略1mmの距離から略1.5mmの距離まで移動できるように搭載された請求項5に記載の光学照明装置。
【請求項7】
前記第1のレンズが、前記光源から略2.284mmの距離に搭載された請求項5に記載の光学照明装置。
【請求項8】
前記第1のレンズが、略2.33mmの焦点距離をもつ請求項3又は4に記載の光学照明装置。
【請求項9】
前記第2のレンズが、略20mmの焦点距離をもつ請求項6に記載の光学照明装置。
【請求項10】
前記第2のレンズが、前記光源に対して略0.5mmの距離に亘って移動できるように搭載された請求項8又は9に記載の光学照明装置。
【請求項11】
前記第2のレンズが、略20mmの焦点距離をもつ請求項3又は4に記載の光学照明装置。
【請求項12】
前記第2のレンズが、前記光源に対して略0.5mmの距離に亘って移動できるように搭載された請求項11に記載の光学照明装置。
【請求項13】
前記第2のレンズが、前記光源に対して略0.5mmの距離に亘って移動できるように搭載された請求項3又は4に記載の光学照明装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光学照明装置において、
前記第2のレンズとともに移動し、該第2のレンズに対向して設けられる開口を規定する手段をさらに備えた光学照明装置。
【請求項15】
前記開口が、前記第2のレンズと前記光源との間に設けられた請求項14に記載の光学照明装置。
【請求項16】
前記光源が、レーザ光として規定される波長の範囲内の光を発光する請求項14に記載の光学照明装置。
【請求項17】
前記光源が、略650nmの波長をもつ光を発光する請求項15に記載の光学照明装置。
【請求項18】
前記開口が、前記第2のレンズから略0.3mmの距離に設けられた請求項16又は17に記載の光学照明装置。
【請求項19】
前記開口部が、略0.25mmの径をもつ請求項16又は17に記載の光学照明装置。
【請求項20】
前方に光を照射する光源と、照射され前記光の光路中の固定位置に設けられた第1のレンズと、照射された前記光の光路中に前記光源に接近又は後退するように設けられた第2のレンズとを備えた光学照明装置を、目標に対して動作させる方法であって、
前記目標までの距離を検知し、前記光学照明装置の焦点距離がその検知した前記目標までの距離と略等しくなるように、前記第2のレンズを移動させる光学照明装置の動作方法。
【請求項21】
前記第2のレンズとともに移動し、該第2のレンズに対向して設けられた開口を規定する手段をさらに備えた光学照明装置によってなされる請求項20に記載の光学照明装置の動作方法。
【請求項22】
前記第1及び第2のレンズが、前記光源の後方に該光源の像を生成し、その像が前記第2のレンズの位置とともに位置が変化するビームウエストを伴って前方へ光を照射するように構成されている光学照明装置によってなされる請求項20に記載の光学照明装置の動作方法。
【請求項23】
光源の前方に固定レンズを搭載し、光軸を有する可動レンズと開口とを互いに空間的に固定された関係で設置し、前記光軸に沿って前記可動レンズと前記開口とを前記光軸に沿って一緒に動かすことからなる方法。
【請求項24】
前記開口と前記可動レンズとを一緒に動かすのは、電磁場を付与することからなる請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−502349(P2012−502349A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526024(P2011−526024)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/075679
【国際公開番号】WO2010/030267
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【出願人】(592252968)オプチコン インコーポレイテッド (31)
【住所又は居所原語表記】2220 Lind Avenue SW, Suite 100, Renton, Washington 98057 USA
【Fターム(参考)】