説明

光学特性測定装置および光学特性測定システム

【課題】簡単な構成で、容易に、かつ高精度に光学特性を測定可能な光学特性測定装置及び光学特性測定システムを提供する。
【解決手段】光学特性測定装置5は測定面4から射出される測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子22を備え、この電気信号によって光学特性を測定する。受光素子22の近傍に、受光素子22の受光面と同一平面上に設けられるとともに、受光面と同一面積を有する光射出面から測定面4に向かって測定領域表示用のポインター光束を射出するポインター光源1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定光の光学特性を測定する光学特性測定装置および光学特性測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力することにより、測定光の光学特性値を測定する光学特性測定装置が知られている。このような光学特性測定装置としては、例えば、測定光をカラーフィルタにより分光し、分光した所定波長の色光の光量により色度を測定する色度計や、測定光の光量から照度を測定する照度計などが挙げられる。
ところで、このような光学特性測定装置において、例えばスクリーンなどの測定対象のうち、一部の領域の光学特性を測定する場合、測定者はこの領域を把握する必要があり、従来より、このような測定領域の特定方法として、ファインダーを覗くことにより測定領域を確認する方法が知られている。しなしながら、ファインダーの視野が狭く、正確な測定領域を特定するのが困難であるという問題もある。この問題を解決する方法として、マーカー用光源からの光を入射光の通る光路上に逆方向に射出させ、測定領域を確認する方法が提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、測定光を受光素子に導く光路内に、ハーフミラーが設けられ、ポインター光源から射出される光をハーフミラーで反射させて測定面にマーカを表示させる構成が採られている。また、ポインター光源から射出された光束を反射鏡で反射させて測定面に表示させ、測定光をこの反射鏡に反射させて受光素子で受光させる構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−166520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の光学特性測定装置では、光学測定系と領域確認用光学系を共用しているが、光源から反射鏡までの光路長、反射鏡から受光素子までの光路長が異なり、これら光源の光射出面の面積と受光素子の受光面の面積も異なる。このため、測定面に明示されたマーカー光の大きさに対して、受光素子で受光可能な測定領域の面積が異なり、測定領域を十分に把握できないという問題がある。また、光学系内にハーフミラーを導入する構成では、測定面から入射する測定光の一部もハーフミラーで反射されてしまうため、受光素子で受光する測定光の光量が減衰し、高精度な光学特性の測定が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明では、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、容易に、かつ高精度に光学特性を測定可能な光学特性測定装置及び光学特性測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学特性測定装置は、測定対象から射出される測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子を備え、この電気信号により光学特性を測定する光学特性測定装置であって、前記受光素子の近傍に、前記受光素子の受光面と同一平面上に設けられるとともに、前記受光面と同一面積を有する光射出面から前記測定対象に向かって測定領域表示用のポインター光束を射出する光源を具備したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、光源と受光素子が同一平面に設けられており、受光素子の受光面と光源の光射出面とが略同一面積に形成されている。これにより、光源から測定面までのポインター光束の光路長と、測定面から受光素子までの測定光の光路長を略同一長さにすることができる。また、受光素子の受光面と光源の光射出面とが略同一面積であるため、測定面の測定領域の近傍に、測定領域と同一面積を有するポインター画像を表示させることができる。したがって、このポインター画像を確認することで、容易に、測定領域とその大きさを確認することができ、光学特性の測定効率を向上させることができる。
また、例えば光路上にハーフミラーなどの他の光学部材が設けられないため、これらの光学部材を透過する際の測定光の光量減衰、光学部材により測定光の一部が反射されることによる光量減衰がなく、測定光の正確な光量を受光素子にて受光して測定することができる。また、このような他の光学部材が不要となるため、光学特性測定装置を小型化することができる。
【0009】
本発明の光学特性測定装置では、前記測定光を前記受光素子に導き、前記ポインター光束を前記測定対象に導く測定レンズ、およびこの測定レンズを光軸方向に沿って移動させるピント調整手段を有する測定光学系を備えることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、測定光学系にピント調整手段が設けられている。これにより、光源の光が測定面で正確に結像するように、ピント調整手段により測定レンズを移動させるだけで、容易に、測定光学系のピントを合わせることができ、測定領域を適切に絞り込むことができる。
また、測定領域の面積と光源により表示されるポインター画像の面積とが同一面積となるため、測定領域の面積を変更する場合に、ポインター画像の面積が所望の大きさになるように、ピント調整機構を調整するだけで、容易に所望の面積の測定領域を設定することができ、測定効率をより向上させることができる。
【0011】
本発明の光学特性測定装置において、前記光源は、前記受光素子の周部に沿って複数設けられることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、光源を受光素子の周部に沿って複数配置している。これにより、ポインター光束により表示されるポインター画像で測定領域を囲むことができる。したがって、測定者は、ポインター画像により囲われる領域を測定領域として、容易に、かつ正確に把握することができ、測定効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の光学特性測定装置において、前記光源は、平行光であるレーザー光束をポインター光束として射出するレーザー光源であることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、光源に平行光を射出可能であるレーザー光束を用いている。一般的に用いられる発光ダイオードなどの光源は、光束が平行光とならず、放射状に拡散するため、光源から照射された光が直接受光素子に入ってしまう場合があり、測定精度が低下する。しがって、測定光の光学特性の測定時には、光源を消灯させる必要がある。
これに対して、本発明では、平行光であるレーザー光束を用いるため、光源の光が直接受光素子に入ることがない。また、通常、測定光の光学特性を測定する場合、測定光学系のピントを合わせて、測定領域を絞った後、測定領域から射出される測定光の光学特性を測定する。したがって、レーザー光束により表示されるポインター画像と、測定領域とが重なることはなく、測定面で反射されたレーザー光が受光素子に入射することはない。したがって、受光素子では、測定光のみを受光することができ、測定精度が低下することがない。
【0015】
本発明の光学特性測定装置において、前記光源は、光射出部と、この光射出部より前記測定対象側で、前記受光素子の受光面と同一面状に設けられて、前記ポインター光束を遮断するマスク板と、を備え、前記マスク板は、一部に前記光射出部から射出されるポインター光束を透過させるとともに、前記受光素子の受光面と同一面積となる開口寸法を有する光透過孔を有することが好ましい。
【0016】
この発明によれば、光源は、光射出部から射出されるポインター光束を遮断するマスク板を備え、このマスク板の一部に、ポインター光束の一部を測定対象側に透過させる光透過孔が設けられている。これにより、光射出部から射出された光は、測定対象に対してのみ射出することができ、その他の方向に射出される光束はマスク板に阻まれるため、直接受光素子に入光することがない。また、上記発明と同様、測定領域の面積を十分に絞った状態では、測定領域とポインター画像とが重なることがなく、測定対象で反射されたポインター光束が受光素子に入ることがない。したがって、光源を点灯させた状態で、測定光の光学特性の測定を実施することができ、測定効率を向上させることができる。また、光透過孔の面積と受光面の面積とが略同一面積となるため、測定面に、測定領域を同面積でポインター画像を表示させることができ、測定面における測定領域の大きさを正確に把握することができる。さらに、光透過孔径を制御することにより、光源からの回折光を抑制し、光源を点灯させながら、光学特性測定を実施することができる。
【0017】
本発明の光学特性測定システムは、測定対象から射出される測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子と、前記受光素子の近傍で、前記受光素子の受光面と同一平面上に設けられるとともに、前記測定対象に向かって測定領域表示用のポインター光束を射出する光源と、を具備した光学特性測定装置と、前記光学特性測定装置を所定姿勢に保持するとともに、所定の入力操作信号に応じて、前記光学特性測定装置の姿勢を変化させる測定保持装置と、前記測定保持装置に、通信可能に接続されるとともに、前記測定保持装置に前記入力操作信号を出力して、前記光学特性測定装置の姿勢変更を制御する姿勢制御装置と、を具備したことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、姿勢制御装置により測定保持装置を制御することで、光学特性測定装置の姿勢を調整することができる。従来のように、手動で光学特性測定装置の姿勢を決定する場合に比べて精度が高く、測定領域が測定面に表示されるポインタにより容易に確認できるため、手ブレなどの影響を受けることがなく操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態の光学特性測定装置を図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る光学特性測定装置の概略構成を示すブロック図である。
この光学特性測定装置5は、光源であるポインター光源1と、受光部2と、測定光学部3と、図示しない制御部と、を備えている。
この光学特性測定装置5は、プロジェクタなどの表示装置による画像の表示領域である測定面4から射出される測定光を受光部2にて受光し、受光量に応じた電気信号を生成して、生成した電気信号に基づいて、輝度、照度、色度等の光学特性を測定する装置である。このような光学特性測定装置としては、例えば輝度を計測する輝度計、照度を計測する照度計、色度などを測定する色度計などに適用することができる。
【0020】
測定光学部3は、内部に図示しない単一もしくは複数の測定レンズを備え、測定面4側から入射した測定光を受光部2に導く。また、測定光学部3は、ポインター光源1から射出されたポインター光束を測定面4側に射出する。
この測定光学部3は、図1に示すように、ピント調整手段32を備えている。このピント調整手段32は、測定光学部3内部の測定レンズを光軸方向に沿って進退移動させる。なお、このピント調整手段32としては、図1において、利用者の操作によりピンと調整つまみを回転させることで、測定レンズを移動させる構成を例示するが、これに限定されず、例えば制御部の制御により測定レンズを光軸方向に移動させてピント調整を実施する構成などとしてもよい。
【0021】
図2は、受光部2の概略構成を示す斜視図である。
受光部2は、円筒部21と、この円筒部21の内部に設けられる受光素子22を備えている。円筒部21は、受光部2の側方などから入射する光を遮断し、測定光学部3から入射する光を円筒端面から受光素子22に導く部材である。また、受光素子22は、図2に示すように、測定光学部3に対向する一端面に例えば矩形状に形成される受光面22Aを備え、この受光面22Aに入射した光束を受光する。そして、受光素子22は、測定面4より測定光学部3を透過して入射する光を受光面22Aで受光して、その受光量に応じた電気信号を生成、すなわち光電変換動作を実施する。また、受光素子22は、生成された電気信号を、制御部に出力する。
【0022】
ポインター光源1は、本発明の光源を構成する部材であり、受光部2の周囲に複数設けられている。本実施の形態では、一対のポインター光源1が、それぞれ受光部2に対して対象となる位置に設けられる構成を例示する。なお、ポインター光源1の配置数としては、上記構成に限定されず、例えば単一のポインター光源1が設けられる構成としてもよく、受光部2を中心として、円周方向に所定間隔で3個以上のポインター光源1が設けられる構成としてもよい。また、ポインター光源1としては、測定面に対してポインター光束を射出可能な構成であればいかなる光源を用いてもよく、第一の実施の形態では、LED(Light Emitting Diode)を用いる構成を例示する。
これらのポインター光源1は、受光素子22の受光面22Aと略同一形状、同一面積の光射出面を有しており、ポインター光源1は、この光射出面が受光素子22の受光面22Aと同一平面となる位置にそれぞれ設けられている。そして、ポインター光源1は、光射出面から、ポインター光束を測定光学部3に向かって射出し、測定面4にポインター画像を表示させる。
【0023】
〔光学特性測定装置による光学特性の測定方法〕
次に、上述したような光学特性測定装置5による光学特性測定方法を図面に基づいて、説明する。
図3は、光学特性測定装置による光学特性測定動作を示すフローチャートである。
【0024】
上述したような光学特性測定装置5を用いて光学特性を測定する場合、測定者は、まず、複数設けられたポインター光源1を点灯させ、ポインター光束を測定面に向かって射出させる(ST1)。これにより、各ポインター光源1から照射されたポインター光束は、測定光学部3から測定面4に向かって射出され、測定面4にポインター画像が表示される。
【0025】
次に、測定者により測定光学部3のピント調整手段32が操作されると、測定光学部3の測定レンズが光軸方向に沿って移動し、測定光学部3のピント調整が実施される(ST2)。この時、測定者は、ポインター光源1により表示されるポインター画像の表示面積が最小となるように、ピント調整手段32により測定レンズを移動させることで、測定光学部3のピントを測定面4に合わせる。ここで、ポインター光源1の光射出面は、受光素子22の受光面22Aと同一平面上に配置されているため、ポインター光源1からポインター画像までのポインター光束の光路長と、測定面の測定位置から受光素子までの測定光の光路長とが同一となる。したがって、ST2の操作により、ポインター画像の表示面積が最小となるように、ピント調整を実施すると、受光部2にて測定される測定光の射出元である測定領域の面積も小さくなる。すなわち、測定領域を絞り込むことができ、所望の測定位置の光学特性の測定光のみを精度良く受光部2に導くことができる。
また、ポインター光源1が受光部2を挟んで配置されているため、図1に示すように、測定領域は、ポインター画像により挟まれる位置となる。したがって、測定者は、一対のポインター画像間の間を測定領域として把握することができる。ここで、上記ST2において、測定光学部3のピントが測定面4に正確に合わされている場合では、ポインター画像の面積も最小となり、すなわち点表示されることとなる。このような場合、測定者は、一対のポインター画像(点表示)を結ぶ線分の中点を測定点として、より正確にその位置を把握することができる。
なお、本実施の形態では、ポインター光源1が受光部2を挟んで対象となる位置に一対設けられる構成を例示したが、例えば、受光部2を中心として、その周囲に円周方向に沿って3つ以上のポインター光源1を設ける場合では、これらのポインター光源1により表示されるポインター画像により囲われる領域が、測定領域となる。また、例えば受光部2を中心とする円周方向に、均等間隔で偶数個のポインター光源1を配置する場合、すなわち、受光部2を挟んで対称位置に配置される一対のポインター光源1が複数組ある場合、各組を構成するポインター光源1により表示されるポインター画像を仮想直線で結ぶと、これら仮想直線は測定点で交差することになる。したがって、測定者は、複数の仮想直線の交差点を確認することで、容易に測定点を特定することができる。
【0026】
次に、ST2において、測定者により測定点の位置を確認され、測定者の操作により、ポインター光源1を消灯させる旨の操作信号が入力されると、光学特性測定装置5の制御部は、ポインター光源1への電力供給を遮断するなどして、ポインター光源1を消灯させる(ST3)。これにより、ポインター光源1から射出されるポインター光束が、受光部2に回り込み、受光素子22に直接ポインター光束が入る不都合を回避できる。
【0027】
この後、受光部2による測定光の光学特性の測定を実施する(ST4)。すなわち、測定面4の測定領域内の所定の測定点にて反射、または測定点から射出される測定光は、測定光学部3により受光部2の受光素子22に集光される。受光部2の受光素子22は、集光された測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を生成して制御部に出力する。制御部は、入力された電気信号に基づいて、測定光の光学特性値、例えば測定点における輝度や、色度、照度などを測定する。
【0028】
[第一実施形態の効果]
上述のような第一実施形態の光学特性測定装置5では、以下のような効果がある。
(1)光学特性測定装置5は、受光部2と、受光部2の近傍に配置されるポインター光源1と、を備えている。そして、受光部2における受光素子22の受光面22Aと、ポインター光源1の光射出面と、が同一平面に設けられ、かつこれら受光面22Aをポインター光源1の光射出面とが略同一形状、同一面積に形成されている。このような構成では、測定面4にポインター画像を表示させるためのポインター光束の光路を導く、例えばハーフミラーなどの新たな光学系を必要とせず、簡単な構成で、測定面4上に測定領域を確認するためのポインター画像を表示させることができる。また、光路内にポインター光束を導くための別の光学系を設けることがないため、このような光学系による測定光の減衰がない。したがって、受光部2は、測定光の正確な光量を受光することができ、光学特性測定装置5における光学特性の測定も高精度に実施することができる。
さらに、ポインター光源1の光射出面から測定面4上のポインター画像までのポインター光束の光路長と、測定面4の測定点から受光素子22の受光面22Aまでの測定光の光路長とが、略同一光路長となる。また、上記したように、ポインター光源1の光射出面と、受光素子22の受光面22Aとが、略同一形状、同一面積に形成されている。このため、この光学特性測定装置5では、ポインター光源1を点灯させることで、測定面4に、受光面22Aと同じ形状、面積のポインター画像を表示させることができる。したがって、測定者は、ポインター画像を確認することで、受光部2により測定される測定領域の形状、および面積を容易に把握することができる。
【0029】
(2)光学特性測定装置5は、ポインター光束を測定面4に、測定光を受光素子22に導く、測定レンズを備えた測定光学部3が設けられている。この測定光学部3には、測定レンズを光軸方向に進退移動させることで、ピント調整を実施可能なピント調整手段32が設けられている。
ここで、上記のように、ポインター光束の光路長と測定光の光路長とは、略同一光路長となり、ポインター光源1の光射出面と、受光面22Aとは略同一形状、同一面積に形成されている。このため、ピント調整手段32により、ポインター画像の面積が最小となるように測定レンズが移動されると、測定領域も最小となる。すなわち、ポインター画像が点表示されるように、ピント調整手段32によるピント調整を実施することで、所定測定点から射出される測定光を受光素子22に導くことができる。したがって、測定者が所望する所定の測定点の測定光の光学特性を正確に測定することができる。
また、上記において、測定点から射出される測定光の光学特性を測定する方法を例示したが、所定の測定領域から射出される測定光の光学特性を測定する場合では、ポインター画像の面積が測定領域と同面積となるようにピント調整手段32を操作すればよい。
【0030】
(3)ポインター光源1は、受光部2の中心点に対して点対称となる位置に一対設けられている。
このため、上述したST2の手順でピント調整を実施すると、一対のポインター光源1により表示される一対のポインター画像と、測定点とが一直線上に配置され、かつ、測定点から各ポインター画像までの距離が等しくなる。すなわち、一対のポインター画像を結ぶ線分の中心点が測定点となるため、測定者は、容易に正確な測定点を把握することができる。
(4)また、受光部2は、円筒部21と円筒部21の内周側に配置される受光素子22とを備えている。このため、円筒部21により、測定光学部3以外から入射する光を遮断することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0031】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態の光学特性測定装置5Aについて、図面に基づいて説明する。
図4は本発明の第二実施形態の受光部近傍の概略構成を示す側面図である。なお、以降の説明において、上記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0032】
第二実施形態の光学特性測定装置5Aは、第一実施形態の光学特性測定装置5と略同様に、測定光学部3と、受光部2と、光源部1Dを構成するポインター光源1Cとを備えている。
測定光学部3は、第一実施形態と同様、測定レンズを備え、測定レンズにより、測定光を受光部2に導き、ポインター光束を測定面4に導く。また、測定光学部3は、測定レンズを光軸方向に沿って進退させるピント調整手段32を備えている。
【0033】
受光部2は、第一実施形態と同様に、円筒部21と、円筒部21の内周側に設けられる受光素子22とを備えている。
【0034】
光源部1Dは、本発明の光源を構成するものであり、マスク板1Aと、ポインター光源1Cとを備えている。
マスク板1Aは、受光素子22の円筒部21の外周面に当接し、受光面22Aと同一平面となる位置に設けられている。また、マスク板1Aは、受光部2の中心点に対して点対称となる位置にそれぞれ光透過孔であるマスク開口1Bを備えている。そして、マスク板1Aの測定光学部3と対向する面とは反対側となる面には、マスク開口1Bに対向してポインター光源1Cが配設されている。また、マスク開口1Bは、それぞれ、受光素子22の受光面22Aと同一形状、同一面積に形成されている。
このような光源部1Dでは、ポインター光束は、ポインター光源1Cから放射状に射出され、マスク開口1Bにより絞られて、測定光学部3に向かって射出される。すなわち、マスク板1Aにより、ポインター光源1Cから受光素子22へポインター光束が回り込んで入光する不都合を防止でき、受光素子22では、測定光のみを適切に受光することができる。
【0035】
〔光学特性測定装置による光学特性の測定方法〕
次に、第二実施形態の光学特性測定装置5Aを用いた光学特性の測定方法について説明する。
第二実施形態の光学特性測定装置では、測定面4側から入射する測定光の光学特性を測定する際、第一実施形態と同様、まず、光源部1Dのポインター光源1Cを点灯させる。
これにより、ポインター光源1Cから射出されたポインター光束は、マスク開口1Bによりその光束径が絞られて、測定光学部3に側に射出される。すなわち、マスク板1Aにより、ポインター光源1Cから直接受光素子22に入光する光は遮断される。
【0036】
この後、第一実施形態におけるST2と同様の手順により、ピント調整手段32によるピント調整を実施することで、ポインター光源1Cから射出されるポインター光束により、測定面4上にポインター画像が表示される。したがって、測定者は、このポインター画像を確認することで、容易に測定領域を把握することが可能となる。
この後、第一実施形態におけるST4と同様の手順により、測定光の光学特性の測定を実施する。ここで、第二実施形態では、ポインター光源1Cを消灯せず、点灯したまま測定光の光学特性の測定が可能となる。すなわち、ポインター光源1Cから射出されるポインター光束は、上記のように、測定光学部3に向かって射出されるポインター光束のみがマスク開口1Bを通って射出され、他方向に射出されるポインター光束は、マスク板1Aにより遮断される。このため、ポインター光源1Cを点灯したままであっても、ポインター光束が直接受光素子22に入射することがない。また、各ポインター光源1Cから射出されたポインター光束は、測定領域(測定点)を挟む位置に投影されてポインター画像を表示させる。すなわち、測定領域(測定点)にはポインター光束が投影されないため、測定光と、測定面4で反射されたポインター光束と、が合成されることがなく、測定光のみが受光部2の受光素子22に導かれる。したがって、ポインター光源1Cを点灯したままであっても、測定光のみを受光部2の受光素子22で受光することが可能となる。
【0037】
[第二実施形態の効果]
第二実施形態の光学特性測定装置5Aでは、第一実施形態の効果に加えて以下のような効果がある。
(5)光学特性測定装置5Aは、受光部2と光源部1Dとを備え、光源部1Dは、受光素子22の受光面22Aと同一平面上に配置されるマスク板1Aと、マスク板1Aに形成されるマスク開口1Bに対向して、測定光学部3に向かってポインター光束を射出するポインター光源1Cとを備えている。
このため、ポインター光源1Cから射出されるポインター光束は、マスク開口1Bにより光束径が絞られて射出され、ポインター光源1Cから直接受光素子22に向かう光束は、マスク板1Aにより遮断される。このため、光源部1Dから受光素子22へ直接ポインター光束が入射することによる不都合を防止できる。また、ポインター光源1Cにより表示されるポインター画像は、測定領域(測定点)と、異なる位置に表示されるため、測定光にポインター光束の反射光が混ざることがなく、測定光のみが受光素子22に入射する。以上により、ポインター光源1Cを点灯させながら、光学特性測定を実施することができ、これにより、例えばポインター画像により測定領域を確認しながら光学特性の測定を実施するなど、測定操作効率を向上させることができる。
また、マスク開口1Bの開口形状は、受光素子22の受光面22Aの形状を同一形状、同一面積に形成されている。このため、測定面におけるポインター画像により、受光素子22により測定可能な領域面積、および形状を常に表示させることができ、測定領域を正確に把握することができる。
【0038】
〔第三実施形態〕
次に、本発明に係る第三実施形態の光学特性測定装置5Bについて、図面に基づいて説明する。
図5は本発明の第三実施形態の光学特性測定装置5Bの概略構成を示すブロック図である。
【0039】
上記第一実施形態の光学特性測定装置5では、光源として、LEDにより構成されるポインター光源1を用いたが、第三実施形態の光学特性測定装置5Bでは、光源として、レーザー光源1Eを用いる。その他の構成については、同一構成であるため、ここでの説明を省略する。
【0040】
具体的には、光学特性測定装置5Bにおいて、光源を構成するレーザー光源1Eは、測定光学部3に向かって、平行光であるレーザー光を射出する。このレーザー光源1Eとしては、例えば半導体レーザー、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザーなど、いかなるものを用いてもよいが、小型で安価である半導体レーザーを用いることが好ましい。
【0041】
〔光学特性測定装置による光学特性の測定方法〕
第三実施形態の光学特性測定装置5Bでは、上記した第二実施形態と略同様の操作により、測定光の光学特性を測定することができる。
すなわち、光学特性測定装置5Bでは、測定面4側から入射する測定光の光学特性を測定する際、まず、レーザー光源1Eを点灯させ、平行光となるポインター光束を射出させる。
【0042】
この後、ピント調整手段32によるピント調整を実施することで、測定面4に対して、測定光学部3のピントを調整する。
この後、第一実施形態におけるST4と同様の手順により、測定光の光学特性の測定を実施する。
ここで、第三実施形態では、レーザー光源1Eを消灯せず、点灯したまま測定光の光学特性の測定が可能となる。すなわち、レーザー光源1Eから射出されるポインター光束は、平行光となるため、レーザー光源1Eから受光素子22に、直接レーザ光が入光することがない。また、各レーザー光源1Eから射出されたポインター光束は、測定領域(測定点)を挟む位置に投影されてポインター画像を表示させるため、測定領域(測定点)にはポインター光束が投影されず、測定光のみが受光部2の受光素子22に導かれる。したがって、レーザー光源1Eを点灯したままであっても、測定光のみを受光部2の受光素子22で受光することが可能となる。
【0043】
[第三実施形態の効果]
第三実施形態の光学特性測定装置5Bでは、第一実施形態の効果に加えて以下のような効果がある。
(6)光学特性測定装置5Bは、受光部2と光源としてのレーザー光源1Eとを備え、レーザー光源1Eから平行光となるポインター光束が射出される。
このため、レーザー光源1Eから射出されるポインター光束が、直接受光素子22に回り込んで入光することがない。また、レーザー光源1Eにより表示されるポインター画像は、測定領域(測定点)と、異なる位置に表示されるため、測定光にポインター光束の反射光が混ざることがなく、測定光のみが受光素子22に入射する。以上により、レーザー光源1Eを点灯させながら、測定光の光学特性測定を実施することができ、これにより、例えばポインター画像により測定領域を確認しながら光学特性の測定を実施するなど、測定操作効率を向上させることができる。
【0044】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る第四実施形態の光学特性測定システム9について、図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の第四実施形態に係る光学特性測定システム9の概略構成を示すブロック図である。
【0045】
第四実施形態の光学特性測定システム9は、図6に示すように、プロジェクタ6と、光学特性測定装置5Cと、測定保持装置としてのプログラマブル雲台7と、姿勢制御装置としての制御装置8と、を備えている。
【0046】
プロジェクタ6は、例えば制御装置8から入力される画像信号に基づいた画像光を生成し、生成した画像光を測定面4に投射して表示させる装置である。なお、本実施の形態では、プロジェクタ6を例示したが、例えば液晶ディスプレイなどの他の表示装置を用い、その表示画面を測定面4としてもよく、その他の対象を測定面4として測定対象としてもよい。
【0047】
光学特性測定装置5Cは、第一実施形態で説明した装置を用いることができる。なお、第二および第三実施形態の光学特性測定装置を用いてもよい。
【0048】
プログラマブル雲台7は、光学特性測定装置5Cを保持するとともに、この光学特性測定装置5Cの姿勢を変更可能な図示しない姿勢変更駆動手段を備えている。この姿勢変更駆動手段としては、例えば光学特性測定装置5Cの底面部に接続される4本の長手棒状のアームを備え、これらのアームを長手方向に沿って移動させることで光学特性測定装置5Cの姿勢を変更してもよく、例えば光学特性測定装置5Cを載置する載置台の角度を変更することで姿勢を変更する構成としてもよい。そして、この姿勢変更駆動手段は、制御装置8から入力される制御信号に基づいて、駆動され、光学特性測定装置5Cの姿勢を変更する。
【0049】
制御装置8は、図示は省略するが、所定の操作信号を入力可能な入力手段と、プログラマブル雲台7を制御するための制御信号を生成する信号生成手段と、などを備えている。そして、制御装置8は、入力手段から光学特性測定装置5Cを所定方向に回動させる旨の入力操作信号が入力されると、信号生成手段にて入力操作信号に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号をプログラマブル雲台7に出力する。
【0050】
〔光学特性測定システムの動作〕
上記のような光学特性測定システム9を用いた光学特性の測定では、まず、プロジェクタ6を駆動させ、プロジェクタ6からの測定対象となる画像光を射出させる。これにより、測定面4に測定対象となる画像が表示される。次に、上記した光学特性測定装置5Cの動作におけるST1およびST2の手順を実施し、測定面4にポインター画像を表示させる。測定者は、ポインター画像を目視で確認することで、測定点を容易に把握することができる。
ここで、測定点を変更する場合、測定者は、測定面4に表示されるポインター画像を確認しながら、制御装置8の入力手段を操作する。これにより、制御装置8は、入力手段から入力される入力操作信号を認識し、信号生成手段にて、認識した入力操作信号に対応する制御信号を生成し、この制御信号をプログラマブル雲台7に出力する。プログラマブル雲台7は制御信号が入力されると、この制御信号に基づいて、姿勢変更駆動手段を駆動させて、光学特性測定装置5Cを所定方向に所定角度だけ回動させる。上記処理により、測定者が測定面4に表示されたポインター画像を目視により確認しながら、測定点を設定することが可能となり、光学特性測定装置5Cによる光学特性測定の効率を向上させることができる。
【0051】
〔他の実施形態変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0052】
例えば、上記実施形態において、受光部2を挟んで点対称となる位置に設けられる一対の光源(ポインター光源1、レーザー光源1E)が設けられる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、上記において説明したように、受光部2の近傍に1つのみ設けられえる構成としてもよく、また、3個以上の光源が設けられる構成としてもよい。
【0053】
また、光源として、可視光線を射出する光源(ポインター光源1、レーザー光源1E)を例示したがこれに限定されない。例えば、測定面4に紫外線が照射されることで発光する蛍光塗料を塗布し、紫外線をポインター光束として射出する光源を用いてもよい。個の場合でも、測定領域を挟む位置に、塗布された蛍光塗料を発光させることができるため、測定領域を容易に把握することができる。
【0054】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光学特性測定装置のブロック図。
【図2】受光素子の側面図。
【図3】光学特性測定装置の操作手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の第二実施形態に係る光学測定装置のブロック図。
【図5】本発明の第三実施形態に係る光学測定装置のブロック図。
【図6】本発明の第四実施形態に係る光学測定システムのブロック図。
【符号の説明】
【0056】
1…ポインター光源、2…受光部、3…測定光学部、4…測定面、5…光学特性測定装置、32…ピント調整手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から射出される測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子を備え、この電気信号により光学特性を測定する光学特性測定装置であって、
前記受光素子の近傍に、前記受光素子の受光面と同一平面上に設けられるとともに、前記受光面と同一面積を有する光射出面から前記測定対象に向かって測定領域表示用のポインター光束を射出する光源を具備した
ことを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学特性測定装置において、
前記測定光を前記受光素子に導き、前記ポインター光束を前記測定対象に導く測定レンズ、およびこの測定レンズを光軸方向に沿って移動させるピント調整手段を有する測定光学系を備えた
ことを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学特性測定装置において、
前記光源は、前記受光素子の周部に沿って複数設けられる
ことを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光学特性測定装置において、
前記光源は、平行光であるレーザー光束をポインター光束として射出するレーザー光源である
ことを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光学特性測定装置において、
前記光源は、光射出部と、この光射出部より前記測定対象側で、前記受光素子の受光面と同一面状に設けられて、前記ポインター光束を遮断するマスク板と、を備え、
前記マスク板は、一部に前記光射出部から射出されるポインター光束を透過させるとともに、前記受光素子の受光面と同一面積となる開口寸法を有する光透過孔を有する
ことを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項6】
測定対象から射出される測定光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子と、前記受光素子の近傍で、前記受光素子の受光面と同一平面上に設けられるとともに、前記測定対象に向かって測定領域表示用のポインター光束を射出する光源と、を具備した光学特性測定装置と、
前記光学特性測定装置を所定姿勢に保持するとともに、所定の入力操作信号に応じて、前記光学特性測定装置の姿勢を変化させる測定保持装置と、
前記測定保持装置に、通信可能に接続されるとともに、前記測定保持装置に前記入力操作信号を出力して、前記光学特性測定装置の姿勢変更を制御する姿勢制御装置と、
を具備した光学特性測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169410(P2010−169410A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9659(P2009−9659)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】