説明

光学用セルロースアシレートフィルム、偏光板及び液晶表示装置

セルロースアシレートフィルムが提供され、該フィルムはポリマー成分としてセルロースアシレートを含む。セルロースアシレートは、セルロースの脂肪酸エステルであり、セルロースの水酸基をアセチル基または炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られる。該セルロースアシレートフィルムは、流延方向或いは、流延幅方向において、実質的に10%以上延伸したフィルムである。該フィルムは、流延(搬送)方向の線熱膨張率D(MD)と、流延幅方向(すなわち流延方向に垂直な方向)の線熱膨張率D(TD)とが特定の関係を有する。該フィルムを用いた偏光板、およびこの偏光板を備えた液晶表示装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用セルロースアシレートフィルム、それを光学補償シートとして用いた偏光板、およびこの偏光板を備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。
しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In-Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
【0003】
ところで、セルロースアシレートフィルムは、他のポリマーフィルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)という特徴がある。従って、光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板には、セルロースアシレートフィルムを用いることが普通である。
一方、液晶表示装置の光学補償シート(位相差フィルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。特にVA用の光学補償シートでは30乃至200nmの正面レターデーション(Re)、70乃至400nmの膜厚方向レターデーション(Rth)が必要とされる。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフィルムやポリスルホンフィルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフィルムを用いることが普通であった。正面レターデーション値と膜厚方向レターデーション値とは、それぞれ下記式(2)および(3)にしたがって算出される光学特性値である。
式(2):Re=(nx−ny)×d
式(3):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム平面内のx方向の屈折率であり、nyはフィルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフィルム面と直交する方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(μm)である。
【0004】
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフィルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフィルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアシレートフィルムを使用することが一般的な原則であった。
【0005】
特許文献2には、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフィルムが提案されている。この提案ではセルローストリアセテートで高いレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加し、延伸処理を行っている。一般にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、複屈折率を大きくすることは困難であることが知られているが、添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより複屈折率を大きくすることを可能にし、高いレターデーション値を実現している。このフィルムは偏光板の保護膜を兼ねることができるため、安価で薄膜な液晶表示装置を提供することができる利点がある。
【0006】
特許文献3には、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をAとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をBとしたとき、
2.0≦A+B≦3.0、及び A<2.4
を同時に満たすセルロースエステルを含有する光学フィルムであって、更に、波長590nmにおける遅相軸方向の屈折率Nx及び進相軸方向の屈折率Nyが
0.0005≦Nx−Ny≦0.0050
を満たすことを特徴とする光学フィルムが開示されている。
【0007】
特許文献4には、VAモード液晶表示装置に用いられる偏光板が、偏光子と光学的に二軸性の混合脂肪酸セルロースエステルフィルムとを有し、液晶セルと偏光子の間に該光学的に二軸性の混合脂肪酸セルロースエステルフィルムが配置されている偏光板が開示されている。
【特許文献1】特許第2587398号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開0911656A2号明細書
【特許文献3】特開2002−71957号公報
【特許文献4】特開2002−270442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の文献に開示されている方法は、安価でかつ薄い液晶表示装置が得られる点で有効である。しかしながら、近年、液晶表示装置が高湿度下や高温下など各種環境下で使用されることが多くなり、上記技術を用いたセルロールエステルフィルムではそのような環境下で光学補償機能が低下するという問題があった。具体的には、高温下でフィルムの線熱膨張率が大きいとフィルムが寸法変化を起こしやすく、光学補償能が低下しムラなどの発生を招いた。高温下の別の問題として、フィルムが着色し光学補償能が低下するという問題も生じた。
そのため、このような環境による光学補償機能の変化が少なく、しかも安価で且つ薄い液晶表示装置が得られるフィルムの開発が要望されている。
本発明の目的は、正面及び膜厚方向レターデーションの発現性に優れ、温度等の環境による光学補償能の変動が少ない光学フィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、環境変化があっても視野角特性変化の少ない液晶表示装置及び液晶表示装置に使用する偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、セルロースアシレートフィルムの原料セルロースアシレートの置換度をコントロールすることが有効であることを知見し、さらに検討したところ、特定の置換度と特定の線熱膨張率、さらにはそれらの流延方向、及びその垂直方向の線熱膨張率の比率を特定の範囲とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記構成の光学用セルロースアシレートフィルム、偏光板、および液晶表示装置が提供され、本発明の上記目的が達成された。
1.フィルムを構成するポリマー成分が、セルロースの水酸基をアセチル基または炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの脂肪酸エステルであるセルロースアシレートからなり、流延方向或いは、流延幅方向において、実質的に10%以上延伸したセルロースアシレートフィルムであって、
流延(搬送)方向の線熱膨張率D(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の線熱膨張率D(TD)とが下記数式(II)から(IV)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(II) :30ppm≦D(MD)≦90ppm
数式(III):25ppm≦D(TD)≦90ppm
数式(IV) :1.0≦D(MD)/D(TD)≦5.0
2.アセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(I)を満たすことを特徴とする上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(I):2.0≦A+B≦3.0
3.前記セルロースアシレートフィルムにおいて、90℃で500時間経時させる前後での色差ΔEabが0.5以下であり、140℃24時間経時させる前後での色差が1.5以下であることを特徴とする上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
4.セルロースアシレートフィルムの熱膨張率D(MD)、D(TD)が、下記数式(V)を満たすことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(V) :50ppm≦D(MD)≦75ppm、30ppm≦D(TD)≦75ppm
5.セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(VI-a)および(VI-b)を満たし、かつ セルロースアシレートフィルムの熱膨張率D(MD)、D(TD)が下記数式(VI)を満たすことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(VI-a):2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(VI-b) :DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
数式(VI) :1.0≦D(MD)/D(TD)≦3.0
6.アシル基がブタノイル基であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
7.アシル基がプロピオニル基であり、置換度Bが0.6以上であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
8.下記数式(IX)および(X)で定義されるRe(λ)およびRth(λ)が、下記数式(IX)〜(XII)を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(IX):Re(λ)=(nx−ny)×d
数式(X) :Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
数式(XI):30nm≦Re(590)≦200nm
数式(XII):70nm≦Rth(590)≦400nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。]
9.Re(590)、Rth(590)が、下記数式(XIII)、(XIV)を満たすことを特徴とする請求項8に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(XIII):40≦Re(590)≦100
数式(XIV) :170nm≦Rth(590)≦300nm
10.棒状または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を少なくとも1種含有していることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
11.可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤のうち少なくとも1種含有していることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
12.フィルムの膜厚が40〜180μmであることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
13.25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(Re10%RH−Re80%RH)が、0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(Rth10%RH−Rth80%RH)が、0〜30nmであることを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
14.1軸延伸法、同時2軸延伸法または逐次2軸延伸法で延伸されていることを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
15.25℃60%RHにおけるRe(630)、Rth(630)が下記数式(A)
〜(C)を満たすことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(A):46≦Re(630)≦150
数式(B):Rth(630)=a−5.9Re(630)
数式(C):580≦a≦670
[式中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(630)は波長630nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またaは光学特性の調整係数(単位:nm)である。]
16.幅手方向での膜厚の最大値、最小値、平均値をそれぞれRmax、Rmin、Raveとしたときに、R(%)=(Rmax−Rmin)/Rave×100で算出される膜厚分布Rが0〜8%に調整されていることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
17.Re(590)の分布が5%以下に調整されていることを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
18.Rth(590)の分布が10%以下に調整されていることを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
19.セルロースアシレートの重合度が250から350の範囲であり、全置換度が2.65から2.95であり、流延(搬送)方向の破断強度BS(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の破断強度BS(TD)がそれぞれ下記式を満たすことを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
6kgf/mm≦BS(MD)≦14kgf/mm
12kgf/mm≦BS(TD)≦20kgf/mm
20.偏光子の2枚の保護膜の内少なくとも一方が、上記1〜19のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする偏光板。
21.25℃60%RHにおける単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CT、偏光度Pが下記数式(a)〜(d)の少なくとも1つ以上を満たすことを特徴とする上記20に記載の偏光板。
(a)40.0≦TT≦45.0
(b)30.0≦PT≦40.0
(c)CT≦2.0
(d)95.0≦P
22.波長λにおける直交透過率をTλとしたときに、T(380)、T(410)
、T(700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たすことを特徴とする上記20または21に記載の偏光板。
(e)T(380)≦2.0
(f)T(410)≦1.0
(g)T(700)≦0.5
23.60℃95%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記20〜22のいずれかに記載の偏光板。
(j)−6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
24.偏光子の一方の保護膜の表面に、ハードコート層、防眩層、および反射防止層のうち少なくとも一層が設けられていることを特徴とする上記23に記載の偏光板。
25.上記1〜19に記載のセルロースアシレートフィルムおよび上記20〜24に記載の偏光板のいずれかを具備したことを特徴とする液晶表示装置。
26.上記20〜24に記載の偏光板のいずれかをセルの上下に用いたことを特徴とするOCBまたはVAモード液晶表示装置。
27.上記20〜24に記載の偏光板のいずれか1枚をバックライト側に用いたVAモード液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学用セルロースアシレートフィルムは、正面及び膜厚方向レターデーションの発現性に優れ、温度等の環境による線熱膨張率、およびその異方性が小さい。
このような光学用セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜に用いた本発明の偏光板は、環境(温度)変化があっても視野角特性変化の少ない液晶表示装置を与える。
本発明の光学用セルロースアシレートフィルムあるいは偏光板を備えた本発明の液晶表示装置は環境(温度)変化があっても視野角特性変化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」との記載は、「アクリロイル及びメタクリロイルの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」等も同様である。また、水素原子が水素原子以外の原子で置換されている場合、該水素原子以外の原子を便宜上置換基として取り扱う。
【0012】
まず、本発明の光学用セルロースアシレートフィルムについて説明する。
[セルロースアシレート]
本発明において用いられる特定のセルロースアシレートについて詳細に記載する。本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。
特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基および炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの脂肪酸エステルであって、好ましくはセルロースの水酸基への置換度が下記数式(I)を満たす。
数式(I):2.0≦A+B≦3.0
ここで、式中、A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(VI-a)および(VI-b)を、後記する熱膨張率に関する数式(VI)と共に、満たすことが好ましい。
数式(VI-a):2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(VI-b) :DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
【0013】
本発明では、水酸基のAとBとの置換度の総和(A+B)は、上記式(I)に示すように、好ましくは2.0〜3.0であり、より好ましくは2.2〜2.95であり、特に好ましくは2.40〜2.85または2.65〜2.95である。また、Bの置換度は、0であってもよい。0でない場合は、好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは1.3以上である。
A+Bが2.0以上であると、親水性が弱く環境湿度の影響を受けにくい。
Bが0であり、セルロースアセテートになると、環境湿度の影響を受けやすくなるものの、環境温度の影響については後述する線熱膨張率がBが0でない場合に比べて、小さくなり液晶表示装置で表示させたときのムラなどの発生が抑えられる。
さらにBはその28%以上が6位水酸基の置換度であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換度であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換度であることが好ましい。
また更に、セルロースアシレートの6位水酸基のAとBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0014】
上記炭素原子数3以上のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族炭化水素基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、好ましくはプロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などである。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイル基である。また、プロピオニル基の場合には置換度Bは0.6以上であるのが好ましい。
【0015】
セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。
【0016】
[セルロースアシレートの合成方法]
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
【0017】
セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0018】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が一般的である。この含水率にするためには乾燥することが好ましく、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
【0019】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
[添加剤]
本発明において、上記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤の1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば融点が20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等をあげることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等をあげることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等をあげることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0020】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0021】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0022】
紫外線吸収剤の添加量は、添加効果およびフィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトするのを抑制する観点から、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0023】
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加しても良い。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
【0024】
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止する。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
【0025】
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。可塑剤として具体的には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどが好ましく挙げられる。さらに、好ましい可塑剤として、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類が挙げられる。
【0026】
前記剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらにまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号に記載されている。
【0027】
これらの添加剤を添加する時期は、ドープ作製工程において何れの段階で添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程として添加剤を添加する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
【0028】
本発明のセルロースアシレートフィルムの線熱膨張率は、流延(搬送)方向の線熱膨張率D(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の線熱膨張率D(TD)とが下記数式(II)、(III)および(IV)を満たし、さらには数式(V)および(VI)を満たすことが好ましい。
数式(II):30ppm≦D(MD)≦90ppm
数式(III):25ppm≦D(TD)≦90ppm
数式(IV):1.0≦D(MD)/D(TD)≦5.0
数式(V):50ppm≦D(MD)≦75ppm、30ppm≦D(TD)≦75ppm
数式(VI):1.0≦D(MD)/D(TD)≦3.0
本発明のセルロースアシレートフィルムの線熱膨張率は、延伸倍率、前記可塑剤の種類や添加量、綿の選択によって、上記数式を満たすことができる。
流延(搬送)方向の線熱膨張率D(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の線熱膨張率D(TD)とが上記数式(II)〜(VI)を満たすことの技術的意義は以下の通りである。環境(温度)変化があると、粘着層、位相差フィルム、偏光子、保護フィルムなどで構成される偏光板構成部分では、収縮、膨張を起こし、各部分間に応力が発生する。上記数式を満たすことにより、この応力が偏光板構成部分で上手くバランスし、環境温度変化があっても偏光板は視野角特性変化の少ない液晶表示装置となり、好ましい結果が得られる。
本発明のセルロースアシレートフィルムのガラス転移点Tgは、70〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。ガラス転移点Tgは動的粘弾性測定機(バイブロン:DVA-225(アイティー計測制御株式会社))で測定することができる。ガラス転移点も可塑剤の種類、添加量を適宜選択することにより、上記範囲に調整することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tgを上記の範囲とすることが好ましい。
【0029】
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
【0030】
[レターデーション発現剤]
本発明では好ましいレターデーション値を発現させるため、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。
本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、棒状または円盤状化合物からなるものを挙げることができる。
上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1乃至30質量部であることが好ましく、0.5乃至20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05乃至20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至5質量部の・BR>ヘ囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状または円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0031】
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144に開示の化合物が円盤状化合物として好ましく用いられる。
【0032】
前記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0033】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0034】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0035】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0036】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0037】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
【0038】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0039】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
【0040】
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0041】
棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0042】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
【0043】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0044】
一般式(1)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
【0045】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。
【0046】
一般式(1)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(2)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(2):Ar−L−X−L−Ar
上記一般式(2)において、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(1)のAr1およびAr2と同様である。
【0047】
一般式(2)において、LおよびLは、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、より好ましくは1乃至8であり、さらに好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1乃至4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
およびLは、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0048】
一般式(2)において、Xは、1,4-シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
以下に、一般式(1)または(2)で表される化合物の具体例を示す。
【0049】
【化1】

【0050】
【化2】

【0051】
【化3】

【0052】
【化4】

【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1-trans)とシス型(1-cis)とを、以下に示す。
【0059】
【化10】

【0060】
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。
上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0061】
下記一般式(3)で表される化合物もまた好ましい。
【0062】
一般式(3)
【化11】

【0063】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)
【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
【化15】

【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0073】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
上記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
【0074】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は、0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。2次平均粒子径が上記範囲であれば、きしみ防止効果が十分発現すると共にヘイズが小さい。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
【0075】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0076】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0077】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1mあたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0078】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0079】
次に、本発明のセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
[塩素系溶媒]
本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0080】
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/10/5/7、質量部)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
【0082】
[非塩素系溶媒]
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0083】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒としては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
【0084】
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。・BR>Aルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0085】
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/14/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
【0087】
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)
などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0088】
[セルロースアシレート溶液特性]
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0089】
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10−4〜+4×10−4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10−4〜+2×10−4である。
【0090】
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
【0091】
[ドープ調製]
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号の各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。
以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0092】
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であるのが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万である。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
【0093】
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0094】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
【0095】
[製膜]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製される際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の方法を本発明では用いることができる。
【0097】
[重層流延]
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0098】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び紫外線吸収剤のうち少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0099】
[流延]
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0100】
[乾燥]
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0101】
[延伸処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸(固定幅、自由幅)でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。延伸は10%以上、好ましくは10〜200%、さらに好ましくは12〜100%の延伸が、特に好ましくは15〜80%の延伸を行う。光学フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量(残留溶剤量/(残留溶剤量+固形分量))が2乃至50%で好ましく延伸することができる。
【0102】
乾燥後得られる本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常5から500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは30〜180μmであり、特に好ましくは40〜180μm、とりわけ好ましくは40〜150μmの範囲である。また、光学用として特にVA液晶表示装置用としては40〜110μmであることが好ましい。
フィルムの膜厚は110〜180μmにすることで、流延製膜時の乾燥負荷が大きくなるものの、光学特性の大きさは膜厚に比例するため、膜厚を大きくすることで所望の光学特性を達成することができる。また、透湿度も膜厚に反比例して減少するため膜厚を大きくすることで透湿度は小さくなり、より水を通しにくくなる。60℃90%RH500時間の偏光板耐久性試験などで有利である。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0103】
[セルロースアシレートフィルムの光学特性]
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学特性は、
数式(IX):Re(λ)=(nx−ny)×d、
数式(X) :Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
で表されるReレターデション値、Rthレターデーション値がそれぞれ、下記数式(XI)、(XII)を満たすことが、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置の視野角を広くするため好ましい。
数式(XI) :30nm≦Re(590)≦200nm
数式(XII):70nm≦Rth(590)≦400nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。]
さらに好ましくは、Reレターデション値が下記数式(XIII)を満たすことである。
数式(XIII):40nm≦Re(590)≦100nm
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学的2軸性フィルムであり下記数式(XIV)を満たすことが、VAモード液晶表示装置の視野角を特に広くできるので好ましい。
数式(XIV):170nm≦Rth(590)≦300nm
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃60%RHにおけるRe(630)、Rth(630)が下記数式(A)〜(C)を満たすことが好ましい。
数式(A)46≦Re(630)≦150
数式(B)Rth(630)=a−5.9Re(630)
数式(C)580≦a≦670
[式中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(630)は波長630nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またaは光学特性の調整係数(単位:nm)である。]
aはRe、Rthの調整係数であり、より好ましくは590≦a≦660であり、更に好ましくは600≦a≦650である。上記範囲にaがあることで、垂直配向型液晶表示装置の視野角特性を広げる点で好ましい。
【0104】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が、0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が、0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
【0105】
Reの幅手方向での膜厚分布は、フィルムを幅手方向に2cm(幅手方向)×3cm(幅手直交方向)のサンプルを10個、フィルム端部5cmの位置から、順次サンプリングし、等間隔で10点採取した。各試験片(2cm×3cm)の膜厚ははフィルムの面内において縦、横方向それぞれ3個所ずつ合計9点測定し、そのサンプルの膜厚とした。
幅手方向の膜厚の最大値、最小値、平均値をそれぞれRmax、Rmin、Raveとしたときの膜厚分布RをR(%)=(Rmax−Rmin)/Rave×100と定義したときにこれらが、0〜8%に調整されていることが好ましく、0〜7.8%に調整されていることがより好ましく、0〜7.6%に調整されていることがさらに好ましい。Re、Rthは膜厚に比例した値となるため、膜厚の幅手方向で膜厚の分布は小さいほどRe(590)、Rth(590)のばらつきが小さくなるため好ましい。
Re(590)、Rth(590)の分布は上記膜厚バラツキに起因して、或いは、延伸ムラ、乾燥ムラなどに起因して発生するが、このReの分布(バラツキ)は5%以下に、Rthの分布は10%以下に調整されていることが好ましい。より好ましくはReの分布は4.8%以下に、Rthの分布は9.8%以下であり、さらに好ましくはReの分布が4.6%以下、Rthの分布は9.6%以下であることが好ましい。
以上の膜厚分布R、Re分布、Rth分布は、液晶表示装置(特にVA液晶表示装置)で当該フィルムを用いて表示させたときに表示ムラが低減されるため好ましい。
【0106】
本発明において光学特性の測定は以下の方法で行なった。
Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、90℃、500時間経時させる前後での色差ΔEabは、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。また、140℃、24時間経時させる前後での色差は、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。90℃500時間や140℃24時間経時などの環境強制条件下で、フィルムが着色すると位相差膜としての光学補償能の低下が起こり好ましくなく、また外観上でも好ましくない。色差の測定は、UV3100(島津製作所製)を用いた。測定の仕方は、フィルムを25℃60%RHに2時間以上調湿した後にサーモ経時前のフィルムのカラー測定を行ない初期値(L0、a0、b0)を求めた。その後、フィルム単体で空気恒温槽に所定時間放置した。所定時間の経過後、フィルムを恒温槽から取り出し、25℃60%RHに2時間調湿した後に、カラー測定を行い、サーモ経時後の値(L1、a1、b1)を求めた。これらから、色差ΔEab=((L0−L1+(a0−a1+(b0−b11/2を求めた。
【0107】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃80%RHにおける平衡含水率が5.0%以下であるのが好ましく、4.0%以下であるのがさらに好ましく、3.2%以下であるのがより好ましく、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料重量(g)で除して算出する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24hrの透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m・24hr以上1800g/m・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。測定された透湿度は、基準膜厚を80μmとして換算される。透湿度の換算値は、「80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm」により計算される。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
【0108】
ガラス転移温度の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA-225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とする。
【0109】
弾性率の測定及び破断強度の測定は、本発明の乾膜のセルロースアシレートフィルム試料10mm×150mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ−R2(東洋精機製))で、チャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で行なった。
【0110】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが0.01〜2%であるのが好ましい。ここで、ヘイズは、以下のようにして測定される。
本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であるのが、好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%であるのが、好ましい。
【0111】
本発明のセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、50×10−13cm/dyne以下であるのが液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾・BR>ォ係数を算出する。
【0112】
[偏光板]
次に、本発明の偏光板について説明する。
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。そして、本発明では、少なくとも一方の保護膜として、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いる。他方の保護膜は、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いても、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0113】
本発明のセルロスアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、図1に示すように、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルム(図中のTAC1)の遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じ、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られない為、本発明のセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
本発明においては、偏光板の単板透過率、平行透過率、直交透過率はUV3100PC(島津製作所社製)を用いて測定した。測定では、25℃60%RH条件下、380nm〜780nmの範囲で測定し、単板、平行、直交透過率ともに、10回測定の平均値を用いた。偏光板耐久性試験は(1)偏光板のみと(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた、2種類の形態で次のように行った。偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に光学補償膜が挟まれるように組み合わせて直交、同じものを2つ用意し測定した。ガラス貼り付け状態のものはガラスの上に偏光板を光学補償膜がガラス側にくるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作成する。単板透過率測定ではこのサンプルのフィルムの側を光源に向けてセットして測定した。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を単板の透過率とした。偏光性能の好ましい範囲としては単板透過率、平行透過率、直交透過率の順でそれぞれ、40.0≦TT≦45.0、30.0≦PT≦40.0、CT≦2.0であり、より好ましい範囲としては40.2≦TT≦44.8、32.2≦PT≦39.5、CT≦1.6であり、さらに好ましい範囲としては41.0≦TT≦44.6、34≦PT≦39.1、CT≦1.3である。
これらの透過率から偏光度Pは計算され偏光度Pが大きいほど、クロス配置したときの漏れ光がすくなくなり偏光板の性能が高いことを示している。偏光度Pは95.0%以上であることが好ましく、より好ましくは96.0%以上、さらに好ましくは97.0%以上である。
【0114】
本発明の偏光板は、波長λにおける直交透過率をTλとしたときに、T(380)、T(410)、T(700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(e)T(380)≦2.0
(f)T(410)≦1.0
(g)T(700)≦0.5
より好ましくはT(380)≦1.95、T(410)≦0.9、T(700)≦0.49であり、さらに好ましくはT(380)≦1.90、T(410)≦0.8、T(700)≦0.48である。
本発明の偏光板は、60℃95%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(j)−6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
より好ましくは−5.8≦ΔCT≦5.8、−9.5≦ΔP≦0.0、更に好ましくは、−5.6≦ΔCT≦5.6、−9.0≦ΔP≦0.0である。
本発明の偏光板は、60℃90%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(h)、(i)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(h)−3.0≦ΔCT≦3.0
(i)−5.0≦ΔP≦0.0
本発明の偏光板は、80℃の条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(l)、(m)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(l)−3.0≦ΔCT≦3.0
(m)−2.0≦ΔP≦0.0
また偏光板耐久性試験ではその変化量はより小さいほうが好ましい。
【0115】
[表面処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0116】
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルム塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0117】
また、本発明の偏光板は、偏光板の他方の側の保護膜の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたものであるのが好ましい。すなわち、図2に示すように偏光板の液晶表示装置への使用時において液晶セルと反対側に配置される保護膜(TAC2)には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としてハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば反射防止層に防眩層としての機能を持たせることにより反射防止層を反射防止層及び防眩層として機能する層としても良い。
【0118】
[反射防止層]
本発明では、保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層してなる反射防止層、または保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層してなる反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。
【0119】
保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0120】
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。また、C光源下での反射光の色味がa値−2〜2、b値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比が0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb値を0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0121】
本発明で用いることができる反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることが好ましい。このようにすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上する。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0122】
[低屈折率層]
保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層してなる反射防止層における低屈折率層について以下に説明する。
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(XV)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(XV):(m/4)×0.7<n1d1<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
【0123】
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張り試験機で測定した場合に500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0124】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0125】
含フッ素共重合体の構成成分である含フッ素モノマー単位を形成するモノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0126】
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0127】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0128】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0129】
[光散乱層]
光散乱層は、表面散乱および内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
【0130】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が不足となる。
【0131】
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
【0132】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0133】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0134】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
【0135】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0136】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0137】
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0138】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0139】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0140】
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mとなるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0141】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。TiOおよびZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0142】
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0143】
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0144】
次に保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層について述べる。
保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止層は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の反射防止層が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0145】
[高屈折率層および中屈折率層]
反射防止層の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物の微粒子が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等の微粒子が挙げられる。
平均粒径100nm以下の微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(例、特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及びカチオン重合性の少なくともいずれかの重合性基を2個以上含有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体含有組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0146】
[低屈折率層]
次に、保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層してなる反射防止層における低屈折率層について説明する。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001-40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素ポリマー及びシロキサンポリマーの少なくともいずれかのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより低屈折率層を形成することが好ましい。
【0147】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0148】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0149】
[ハードコート層]
ハードコート層は、反射防止層を設けた保護膜に物理強度を付与するために、保護膜の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び熱の少なくともいずれかの手段で、硬化性化合物の架橋反応または重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。また加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したものと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO00/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
【0150】
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0151】
[反射防止層の他の層]
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0152】
[帯電防止層]
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10−8(Ωcm−3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10−8(Ωcm−3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、このような金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn,Ti,Al,In,Si,Mg,Ba,Mo,W,またはVを挙げることができ、これを主成分とした金属酸化物を用いることが好・BR>ワしい。具体的な例としては、ZnO,TiO,SnO,Al,In,SiO,MgO,BaO,MoO,V等あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO,TiO,及びSnOが好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl,In等の添加物、SnOに対してはSb,Nb,ハロゲン元素等の添加、またTiOに対してはNb,TA等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10−8(Ωcm−3)以下の導電性を確保するためには、該帯電防止層が概ね10−10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく、更に好ましくは10−8(Ω/□)以下である。帯電防止層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値であり、帯電防止層を形成する途中の段階で測定することができる。
【0153】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述の本発明のセルロースアシレートフィルム、または本発明の偏光板のいずれかを用いた液晶表示装置(第1形態)、前述の本発明の偏光板をセル上下に2枚用いたOCBまたはVAモード液晶表示装置(第2形態)、及び前述の本発明の偏光板1枚をバックライト側に用いたVAモード液晶表示装置(第3形態)である。
すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学補償シートとして有利に用いられる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードまたはOCBモードに好ましく用いることができる。
【0154】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、図3に示すように、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板(TAC1、偏光子及びTAC2からなる偏光板)からなるものが挙げられる。液晶セルは、特に図示しないが二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
【0155】
本発明の透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償シートとして用い、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の透過型液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の保護膜として、本発明のセルロースアシレートフィルムが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに上記のセルロースアシレートフィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護膜に、上記のセルロースアシレートフィルムを用いてもよい。液晶セルへの張り合わせは、本発明のセルロースアシレートフィルム(TAC1)をVAセル側にすることが好ましい。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに上記のセルロースアシレートフィルムを用いた場合、これが、上側偏光板(観察側)、下側偏光板(バックライト側)のどちら側でもよく、機能的には何ら問題がない。ただし、上側偏光板として使用すると
機能性膜を観察側(上側)に設ける必要性があり生産得率が下がる可能性があるため、下側偏光板として使用する場合が高いと考えられ、より好ましい実施形態であると考えられる。
【0156】
そして、図3の光源側及び観察者側の両方を本発明の偏光板で形成したものが第2形態の液晶表示装置であり、光源側のみを本発明の偏光板で形成したものが第3形態の液晶表示装置である。
図3の保護膜(TAC2)は通常のセルレートアシレートフィルムでも良く、本発明のセルロースアシレートフィルムより薄いことが好ましい。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0157】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0158】
[実施例1:セルロースアシレートフィルムの製膜]
(セルロースアシレート)
表1に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、CAPとは、セルロースアセテートプロピオネート(アシル基がアセテート基とプロピオニル基からなるセルロースエステル誘導体)の略称であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
【0159】
(1)セルロースアシレート
表1に記載のアシル置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量及び熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(2)ドープ調製
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
表1記載のセルロースアシレート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェイト 8.0質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェイト 4.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0160】
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−3> レターデーション発現剤溶液A
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、レターデーション発現剤溶液Aを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤溶液A
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部更にレターデーション発現剤溶液Aを表1〜3に示す割合になるように混合し、製膜用ドープを調製した。レターデーション発現剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で表1、2に示した。
【0161】
レターデーション発現剤A
【化20】

【0162】
<1−4> レターデーション発現剤溶液B
更に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、レターデーション発現剤溶液Bを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤溶液B
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A 8.0質量部
レターデーション発現剤B 12.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部更にレターデーション発現剤溶液Bを表3に示す割合になるように混合し、製膜用ドープを調製した。レターデーション発現剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で表3に示した。
【0163】
レターデーション発現剤B
【化21】

【0164】
(溶解(ドープの調製))
表1に記載のセルロースアシレート、可塑剤、下記レターデーション調節剤を次の混合溶剤、ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が15質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解した。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対してそれぞれ微粒子であるマット剤(ニ酸化ケイ素(一次粒子径20nm)、モース硬度 約7)0.05質量部を投入し、加熱しながら攪拌しドープを調製した。
【0165】
(流延)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25から35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターゾーンの給気温度140℃(排気温度は90℃〜125℃の範囲)で、0%〜30%の延伸倍率(表1参照)で幅方向に延伸して、セルロースアシレートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。表1にテンターの延伸倍率を示した。延伸後の膜厚が92μmになるように、流延膜厚を調整した。作製したセルロースアシレートフィルム(光学補償シート)について、自動複屈折計(KOBRA 21ADH:王子計測機器)を用いて、25℃60%RHで波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定し、表1に示した。また、フィルムを25℃10%RH、25℃80%RHに2時間以上調湿した後に、その環境下で測定した。このときの80%RHから10%RHへのセルロースアシレートフィルムのレターデーションの変化量ΔRe、ΔRth(ΔRe=Re(10%RH)−Re(80%RH)、ΔRth=Rth(10%RH)−Rth(80%RH))とすると、表中延伸したCTAはΔReが5〜13nm、ΔRthが25〜30であった。また、延伸したCAPはΔReが10nm以下、ΔRthは20nm以下であった。
【0166】
【表1】

【0167】
表1中、「+」は色差ΔE*abが0.5以下、「±」は色差ΔE*abが0.5以上0.7未満を意味する。
なお、表1に記載されている1c、2c、3c、4c、5c、6c、7cは、未延伸の比較サンプルフィルムである。
表1に示す結果から、全置換度(A+B)2.87のもの(実施No1、2)と、2.82(No.3〜5)、2.81(No.6、7)、2.80(No.8、9)、2.79(No.10、11)で同じ延伸倍率で比較した場合、全置換度を小さくするとRe、Rthの光学特性発現性が増していることが分かる。また同一置換度で比較した場合、延伸倍率を上げるほど、Re、Rthともに増加している。
線熱膨張率D(MD)、D(TD)は同じ延伸倍率で比較した場合、全置換度に対して明瞭な差異は認められない。一方、同一置換度で比較すると、延伸倍率を上げるほど、延伸方向(TD方向)の熱膨張率は小さくなり、それと垂直方向(MD方向)は逆に増加する(No1とNo2、No3とNo4とNo5、No6とNo7、No8とNo9、No10とNo11の比較)。未延伸品のものは、面内は等方的であるためMDとTDで熱膨張率はほぼ等しい。同じ延伸倍率のTACとCAPを比較すると(例えばNo.11とNo30)、TD方向の線膨張係数はほぼ同じであるが、MD方向の膨張係数はCAPが大きく、従ってその比D(MD)/D(TD)もCAPの方が大きいことが分かる。後述するようにこの線熱膨張率がMD、TDで適当な範囲に入ることで、液晶表示装置にしたときの光学補償能の低下が認められる。
【0168】
フィルムの着色は未延伸品のものだけが△となっていることが分かる。明確な理由は不明であるが次のように推定される。延伸処理を行なうことでフィルムの自由体積が減少するため、140℃の強制環境条件下ではレターデーション発現剤が膜中を移動できる経路(自由体積)が小さくなりレターデーション発現剤はフィルム中を拡散しにくくなると考えられる。動きにくくなることで、可塑剤のミクロドメインと相互作用する機会が減り、可塑剤ないしはレターデーション発現剤の劣化が抑制されると考えられる。つまり、レターデーション発現剤の膜中の移行(拡散)が起こりにくくなることで、着色が起こらないと思われる。このことはより自由体積の大きなCAP(No.6c、12)でレターデーション発現剤がない場合には未延伸品(No.6c)でも延伸品(No.12)でも着色は認められない。
【0169】
また、レターデーション発現剤を用いることにより、更に光学特性が向上することがわかる(No12とNo.13)。
また、本実施例で得られたフィルムのRe分布、Rth分布はそれぞれ1.2%〜5%、3%〜10%であった。幅手方向の膜厚の分布Rは、1〜7%であった。
本実施例で得られたフィルムの25℃での弾性率はMD方向、TD方向をそれぞれ長手方向に切り出したサンプルで1500MPa〜5000MPaの範囲であり、またそれぞれの破断強度BSはBS(MD)は7kgf/mm〜12kgf/mm、BS(TD)は13kgf/mm〜18kgf/mmの範囲であった。そして、MD、TDに延伸したものは環境変化しても寸度安定性に優れており5%以内であった。また、可塑剤入りの実施例はどれも25℃80%RHの含水率が2.3以下であり、湿度寸法安定性にも優れていた。
また、全置換度が同じところで比較すると、プロピル(ブチリル)置換度が大きいほど湿度依存性がより低減されていることが判る。また、本発明のフィルム1−16および1−23の6位の水酸基の置換度の総和はそれぞれ0.87、0.88であった。
ヘイズは全て0.1〜0.9、マット剤の2次平均粒子径が1.0μm以下であり、80℃90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化は0〜3%であった。また、60℃95%RH及び90℃5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化は0〜4.5%であった。さらに、どのサンプルも光弾性係数は50×10−13cm/dyne以下であった。
【0170】
表1に記載の乾燥後膜厚を100μm、110μm、120μm、130μm、150μm、160μmのフィルムを作製したところ、Re、Rthはほぼ膜厚に依存して大きくなり、透湿度は膜厚にほぼ逆比例していた。また、Re、Rthの湿度依存性△Re、△Rth、ガラス転移温度、含水率は膜厚に関係なく同じ値であった。結果を表2に示す。光学特性調整係数aは表1のサンプル4〜11で594〜661の間であった。また、サンプル22、23は623、633であった。
【0171】
【表2】

【0172】
表1に記載のレターデーション発現剤の溶液をA液からB液に変えて表3のフィルムを作製したところ、Reは表1と比較してほぼ同等、Rthはやや低下した。また、Re、Rthの湿度依存性ΔRe、ΔRth、ガラス転移温度、含水率はほぼ同じ値であった。光学特性調整係数aは表3のサンプル3−1、3−2は353、403で3−3〜3−11は587〜650の間であった。また、3−22は618、3−23は625であった。
【0173】
【表3】

【0174】
表1中、「+」は色差ΔE*abが0.5以下、「±」は色差ΔE*abが0.5以上0.7未満を意味する。
【0175】
[実施例2:偏光板]
<2−1−1>
(偏光板の作製−1)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(No1からNo13、No1c〜No7c:図1〜3のTAC1に相当)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下のような条件で行った。
1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01Nの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製:図2または3の機能性膜TAC2に相当)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光子の透過軸と実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した(図1)。偏光子の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
このようにして作製した偏光板A1からA13、A1cからA7c(図2で機能性膜が無い形の光学補償膜一体型偏光板)を、その一部はそのまま防湿袋に入れて保管し、もう一部は25度C60%RHで2時間調湿後に防湿袋に入れて保管した。防湿袋はポリエチレンテレフタレート/アルミ/ポリエチレンの積層構造からなる包装材であり、透湿度は0.01mg/m(24時間)以下であった。
【0176】
<2−2−1>
(光散乱層用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PETA、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.5gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。 この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液を調製した。
【0177】
<2−2−2>
(低屈折率層用塗布液の調製)
まず初めに、次のようにしてゾル液aを調製した。攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、上記ゾル液a 0.6gおよびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノ0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0178】
<2−2−3>
(光散乱層付き透明保護膜01の作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記の機能層(光散乱層)用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm 、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの機能層を形成し、巻き取った。
該機能層(光散乱層)を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出してその光散乱層側に、該調製した低屈折率層用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm 、照射量900mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った(図2の機能性膜TAC2あるいは図3のTAC2−1に相当)。
【0179】
<2−3−1>
(偏光板の作製−2)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
作製した光散乱層付き透明保護膜01に<2−1−1>記載と同様のケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、機能性膜の無い側と偏光子の片側を貼り付けた。
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(No1からNo13、No1cからNo7c:図1のTAC1に相当)に同様のケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した(図2の構成が完成)。
偏光子の透過軸と実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した(図1)。偏光子の透過軸と光散乱層付き透明保護膜01の遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(B1からB13:機能性膜、光学補償膜一体型偏光板(図2))を作製した。偏光板の作製<2−1−1>と同様に、25度C60%RHで2時間調湿後防湿袋に入れたものと、調湿せずに防湿袋に入れたものを作成した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。<2−2−3>で作成した光散乱層付き透明保護膜01及び機能性層を塗布していない80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)を前述と同様のケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前述と同様に偏光子に貼りあわせた。このようにして偏光板(B0:機能性膜、光学補償膜一体型偏光板(図2))を作成した。偏光板の作製<2−1−1>と同様に、調湿後防湿袋に入れたものと、調湿せずに防湿袋に入れたものを作成した。
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を機能性膜側から測定し、450〜650nmの積分球平均反射率を求めたところ、2.3%であった。
分光光度計(UV3100PC)を用いて、偏光子の内側に光学補償膜がくるように組み合わせて380nm〜780nmの偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTを測定し、400〜700nmの平均値を求めたところ、TTは40.8〜44.7、PTは34〜38.8、CTは1.0以下であった。また60℃95%RH500時間の偏光板耐久性試験では−0.1≦ΔCT≦0.2、−2.0≦ΔP≦0の範囲にいずれも入り、60℃90%RHでは−0.05≦ΔCT≦0.15、−1.5≦ΔP≦0であった。
【0180】
<2−4−1>
(ハードコート層用塗布液の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、日本化薬(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量3000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0g、シクロヘキサノン500.0g及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)50.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0181】
<2−4−2>
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)を使用した。
この粒子257.1gに、下記分散剤38.6g、およびシクロヘキサノン704.3gを添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0182】
分散剤
【化22】

【0183】
<2−4−3>
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)58.4g、光重合開始剤(イルガキュア907)3.1g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1g、メチルエチルケトン482.4gおよびシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
【0184】
<2−4−4>
(高屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)47.9g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)4.0g、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.3g、メチルエチルケトン455.8g、およびシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
【0185】
<2−4−5>
(低屈折率層用塗布液の調製)
下記共重合体をメチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)を固形分に対して3%、光ラジカル発生剤イルガキュア907(商品名)を固形分に対して5質量%添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0186】
共重合体
【化23】

【0187】
<2−4−6>
(反射防止層付透明保護膜02の作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士写真フィルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm 、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
【0188】
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm 、照射量400mJ/cmの照射量とした。硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
【0189】
高屈折率層および低屈折率層の乾燥条件はいずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nm、低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止層付き透明保護膜02を作製した(図2の機能性膜TAC2あるいは図3のTAC2に相当)。
【0190】
<2−5−1>
(偏光板の作製−3)
光散乱層付き透明保護膜01の代わりに反射防止層付き透明保護膜02を用いた以外は<2−3−1>と同様にして偏光板(C1からC19:機能性膜、光学補償膜一体型偏光板(図2))を作製した。また同様の方法で、反射防止層付き透明保護膜02、偏光子及び機能性層を塗布していない80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)よりなる偏光板(C0)を作製した。
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を機能性膜側から測定し、450〜650nmの積分球平均反射率を求めたところ、0.4%であった。
【0191】
[実施例3]
(パネルへの実装)
[実施例3−1]
(VAパネルへの実装)(1枚型)
図3の液晶表示装置を作製した。即ち、観察方向(上)から上側偏光板(TAC2(機能性膜有り/なし)、偏光子、TAC1)、VAモード液晶セル、下側偏光板(TAC1、偏光子、TAC2)を積層し、さらにバックライト光源を配置した。以下の例では、上側偏光板に市販品の偏光板(HLC2−5618)を用いて、下側偏光板に光学補償フィルムと一体型になった偏光板を使用しているが、これが逆であっても機能的には何ら問題がない。ただし、一体型偏光板としては、下側偏光板として使用する場合が高い(上側偏光板として使用すると機能性膜を観察側(上側)に設ける必要性があり生産得率が下がる可能性があるため)と考えられ、より好ましい実施形態であると考えられる。
【0192】
<液晶セルの作製>
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
【0193】
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の上側偏光板(観察者側)には、市販品のスーパーハイコントラスト品(例えば、株式会社サンリッツ社製HLC2−5618)を用いた。下側偏光板(バックライト側)には実施例1で作製した光学補償シートを使用(No3〜No.11)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A3〜A11)を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(図3のTAC1−2に相当)が液晶セル側となるように設置した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。使用する偏光板はあらかじめ25℃、60%RHの温湿度条件で2時間調湿防湿袋に封入して保管してあったものと、調湿しないで袋に封入し保管したものの両方を用いて液晶表示装置を作成した。
なお、ここでは、上側偏光板に市販品を、下側偏光板に本発明の一体型偏光板を用いているが、作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)を測定した。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)を測定した。
次に液晶表示画面の横方向を基準に方位角45°、画面表面の法線方向を基準に極角60°の方位の黒表示時の色みを測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて測定し、これを初期値とした。次にこのパネルを、常温常湿(25℃60
%RH程度で湿度制御無し)の部屋で1週間放置し、再度、黒表示時の色味を測定した。
下記表4に視野角と色味変化の測定を示す。本実施例はいずれも広い視野角を有し、色味変化も少なかった。液晶表示装置組み立て前に偏光板を調湿したものは、特に色味変化が少なかった。
【0194】
[実施例3−2]
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の下側偏光板に、実施例1で作製した光学補償シートを使用(No.3〜No.11)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A3〜A13)を、上側偏光板に実施例2の<2−3−1>で作製した偏光板(B0)を、粘着剤を介して貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。このとき、作業場の温度は20から25℃に、湿度は50から70%RHになるように空調されていた。使用する偏光板はあらかじめ25℃、60%RHの温湿度条件で2時間調湿防湿袋に封入して保管してあったものと、調湿しないで袋に封入し保管したものの両方を用いて液晶表示装置を作成した。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また実施例3−1と同じように、視野角と色味変化の測定を行い、その結果を表4に示した。
【0195】
[実施例3−3]
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の下側偏光板に、実施例1で作製した光学補償シートを使用(No3からNo.11)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A3〜13)を、上側偏光板に実施例2の<2−5−1>で作製した偏光板(C0)を粘着剤を介して貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。このとき、作業場の温度は20から25℃、湿度は50から70%RHになるように空調されていた。使用する偏光板はあらかじめ25℃、60%RHの温湿度条件で2時間調湿防湿袋に封入して保管してあったものと、調湿しないで袋に封入し保管したものの両方を用いて液晶表示装置を作成した。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また実施例3−1と同じように、視野角と色味変化の測定を行い、その結果を表4に示した。
【0196】
[比較例3−1]
実施例3−1の下側偏光板をA3c、B3c及びC3cとすること以外は実施例3−1とまったく同様に行なった。なおここで使用した偏光板は調湿をしなかった。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また実施例3−1と同じように、視野角と色味変化の測定を行い、その結果を表4に示した。
【0197】
【表4】

【0198】
[実施例3−4]
(VAパネルへの実装)(2枚型)
図3の液晶表示装置を作製した。即ち、観察方向(上)から上側偏光板(TAC2(機能性膜なし)、偏光子、TAC1)、VAモード液晶セル、下側偏光板(TAC1、偏光子、TAC2)を積層し、さらにバックライト光源を配置した。
【0199】
<液晶セルの作製>
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
【0200】
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の上側、下側偏光板に、実施例1で作製した光学補償シートを使用(No14)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A14)を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(図3のTAC1−1及びTAC1−2)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。このとき、作業場の温度は20から25℃に、湿度は50から70%RHになるように空調されていた。使用する偏光板はあらかじめ25℃、60%RHの温湿度条件で2時間調湿防湿袋に封入して保管してあったものと、調湿しないで袋に封入し保管したものの両方を用いて液晶表示装置を作成した。
作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向もニュートラルな黒表示が実現できていた。また、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)を測定した。
次に液晶表示画面の横方向を基準に方位角45°、画面表面の法線方向を基準に極角60°の方位の黒表示時の色みを測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて測定し、これを初期値とした。次にこのパネルを、常温常湿(25℃65%RH程度で湿度制御無し)の部屋で1週間放置し、再度、黒表示時の色味を測定した。
下記表4に視野角と色味変化の測定を示す。本実施例はいずれも広い視野角を有し、色味変化もほとんどなかった。液晶表示装置組み立て前に偏光板を調湿したものは、特に色味変化が少なかった。
【0201】
[比較例3−4]
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の上側、下側偏光板に、比較例で作製した光学補償シートを使用(No.2c及びNo.6c)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A2c及びA6c)を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(TAC1)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、上側及び下側に一枚ずつ貼り付けた。上側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、下側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
また垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の下側偏光板に、実施例1で作製した光学補償シートを使用(No.2c及びNo.6c)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A2c及びA6c)を、上側偏光板に実施例2の<2−3−1>で作製した偏光板(B3及びB17)を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(TAC1)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、上側及び下側に一枚ずつ貼り付けた。上側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、下側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
更に垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の下側偏光板に、実施例1で作製した光学補償シートを使用(No.2c及びNo.6c)した実施例2の<2−1−1>で作製した偏光板(A2c及びA6c)を、上側偏光板に実施例2の<2−3−1>で作製した偏光板(C3及びC17)を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(TAC1)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、上側及び下側に一枚ずつ貼り付けた。上側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、下側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
このとき、作業場の温度は20から25℃に、湿度は50から70%RHになるように空調されていた。なおここで使用した偏光板は調湿はしなかった。
結果を表5に示す。本発明の偏光板を用いた場合と比較して、本比較例の偏光板を用いた場合は色味変化が起こっていた。
【0202】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明の偏光板の製造時におけるセルロースアシレートフィルムの貼り合わせ方法を示す模式図である。
【図2】本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを構成するポリマー成分が、セルロースの水酸基をアセチル基または炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの脂肪酸エステルであるセルロースアシレートからなり、流延方向或いは、流延幅方向において、実質的に10%以上延伸したセルロースアシレートフィルムであって、
流延(搬送)方向の線熱膨張率D(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の線熱膨張率D(TD)とが下記数式(II)から(IV)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(II) :30ppm≦D(MD)≦90ppm
数式(III):25ppm≦D(TD)≦90ppm
数式(IV) :1.0≦D(MD)/D(TD)≦5.0
【請求項2】
アセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(I)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(I):2.0≦A+B≦3.0
【請求項3】
前記セルロースアシレートフィルムにおいて、90℃で500時間経時させる前後での色差ΔEabが0.5以下であり、140℃24時間経時させる前後での色差が1.5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
セルロースアシレートフィルムの熱膨張率D(MD)、D(TD)が、下記数式(V)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(V) :50ppm≦D(MD)≦75ppm、30ppm≦D(TD)≦75ppm
【請求項5】
セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアセチル基またはアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(VI-a)および(VI-b)を満たし、かつ セルロースアシレートフィルムの熱膨張率D(MD)、D(TD)が下記数式(VI)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(VI-a):2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(VI-b) :DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
数式(VI) :1.0≦D(MD)/D(TD)≦3.0
【請求項6】
アシル基がブタノイル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項7】
アシル基がプロピオニル基であり、置換度Bが0.6以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項8】
下記数式(IX)および(X)で定義されるReλおよびRthλが、下記数式(IX)〜(XII)を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(IX):Re(λ)=(nx−ny)×d
数式(X) :Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
数式(XI):30nm≦Re(590)≦200nm
数式(XII):70nm≦Rth(590)≦400nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。]
【請求項9】
Re(590)、Rth(590)が、下記数式(XIII)、(XIV)を満たすことを特
徴とする請求項8に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(XIII):40≦Re(590)≦100
数式(XIV) :170nm≦Rth(590)≦300nm
【請求項10】
棒状または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を少なくとも1種含有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項11】
可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤のうち少なくとも1種含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項12】
フィルムの膜厚が40〜180μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項13】
25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(Re10%RH−Re80%RH)が、0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(Rth10%RH−Rth80%RH)が、0〜30nmであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項14】
1軸延伸法、同時2軸延伸法または逐次2軸延伸法で延伸されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項15】
25℃60%RHにおけるRe(630)、Rth(630)が下記数式(A)〜(C)を満たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(A):46≦Re(630)≦150
数式(B):Rth(630)=a−5.9Re(630)
数式(C):580≦a≦670
[式中、Re(630)は波長630nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(630)は波長630nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またaは光学特性の調整係数(単位:nm)である。]
【請求項16】
幅手方向での膜厚の最大値、最小値、平均値をそれぞれRmax、Rmin、Raveとしたときに、R(%)=(Rmax−Rmin)/Rave×100で算出される膜厚分布Rが0〜8%に調整されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項17】
Re(590)の分布が5%以下に調整されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項18】
Rth(590)の分布が10%以下に調整されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項19】
セルロースアシレートの重合度が250から350の範囲であり、全置換度が2.65から2.95であり、流延(搬送)方向の破断強度BS(MD)と、流延幅方向(流延垂直方向)の破断強度BS(TD)がそれぞれ下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
6kgf/mm≦BS(MD)≦14kgf/mm
12kgf/mm≦BS(TD)≦20kgf/mm
【請求項20】
偏光子の2枚の保護膜の内少なくとも一方が、請求項1〜19のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする偏光板。
【請求項21】
25℃60%RHにおける単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CT、偏光度Pが下記数式(a)〜(d)の少なくとも1つ以上を満たすことを特徴とする請求項20に記載の偏光板。
(a)40.0≦TT≦45.0
(b)30.0≦PT≦40.0
(c)CT≦2.0
(d)95.0≦P
【請求項22】
波長λにおける直交透過率をTλとしたときに、T(380)、T(410)、T
700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たすことを特徴とする請求項20または21に記載の偏光板。
(e)T(380)≦2.0
(f)T(410)≦1.0
(g)T(700)≦0.5
【請求項23】
60℃95%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の偏光板。
(j)−6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
【請求項24】
偏光子の一方の保護膜の表面に、ハードコート層、防眩層、および反射防止層のうち少なくとも一層が設けられていることを特徴とする請求項23に記載の偏光板。
【請求項25】
請求項1〜19に記載のセルロースアシレートフィルムおよび請求項20〜24に記載の偏光板のいずれかを具備したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項26】
請求項20〜24に記載の偏光板のいずれかをセルの上下に用いたことを特徴とするOCBまたはVAモード液晶表示装置。
【請求項27】
請求項20〜24に記載の偏光板のいずれか1枚をバックライト側に用いたVAモード液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505195(P2008−505195A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554395(P2006−554395)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/JP2005/012632
【国際公開番号】WO2006/004197
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】