説明

光学用フィルム

【課題】
耐擦傷性に優れ、さらに高温でも耐擦傷性を維持したまま寸法変化が小さい。特に画像表示装置の一部として使用した際に、装置作製工程や画像表示装置使用時の擦傷などがつきにくく、寸法安定性に優れている光学用フィルムを提供する。
【解決手段】
透明プラスチックフィルムの少なくとも一方に膜厚がプラスチックフィルムの厚みの0.01〜5%である無機化合物層が形成され、光線透過率が80%以上であり、長手・幅方向の熱膨張係数がともに0〜40ppm/℃である光学用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物層を設けた光学用フィルムに関する。さらに本発明の光学用フィルムは画像表示装置、特にCRT、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)およびELディスプレイ(ELD)、表面電界ディスプレイ(SED)等に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、その機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性、電気絶縁性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアート材料あるいは光学表示材料などの多くの用途の基材として広く使用されている。しかしながらこのようなプラスチックフィルムは、フィルム表面の表面硬度が低く、また耐摩耗性が不足しているため、他の固い物質との接触、摩擦、引っ掻きなどによって表面に損傷を受けやすい。表面に発生した損傷は、特に光学用フィルムの商品価値を著しく低下させたり、フィルムを短期間で使用不可能にしたりする。また、温度により膨張したり熱による収縮したり寸法安定性に課題がある。
【0003】
このため例えば、プラスチックフィルム上に耐擦傷性や耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける方法が知られている。
【0004】
ハードコート層は、通常、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を用いて透明プラスチックフィルム基材上に2〜10μm程度の薄い塗膜として形成される。しかし、前記厚みではハードコート層の厚さが十分でないために、ガラス上に塗工した場合の鉛筆硬度が4H以上の特性を有するハードコート樹脂であっても、下地である透明プラスチックフィルム基材の影響を受け、透明プラスチックフィルム基材上に形成したハードコート層の表面硬度は鉛筆硬度にて2H以下となるのが一般的である。
【0005】
ハードコート層の硬度を向上させる方法として、単純にハードコート層の厚みを増加させることが考えられる。前記方法では硬度はより硬くなるものの、ハードコート層の割れや剥がれが生じやすくなると同時に、ハードコート層の硬化収縮によるカールが大きくなり、実用上使用できるものは得られていなかった。そこで、近年、ハードコートフィルムの高硬度化を実現するとともに、ハードコート層の割れや硬化収縮によるカールの課題を解決する方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0006】
しかし、通常の温度では耐擦傷性などは改善されるものの、温度が高くなった場合に軟化し、耐擦傷性が低下することや、熱膨張や熱収縮によって寸法変化が大きいなどの問題が残る。
【0007】
また、温度膨張係数を低減する手法として、プラスチックフィルムに無機化合物を形成する方法が提案されている。(特許文献3)しかし、透明性が低く光学ディスプレイ用には適していない。
【特許文献1】特開2000−214791号公報
【特許文献2】特開2005−41205号公報
【特許文献3】特開2002−319122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、耐擦傷性に優れ、さらに高温でも耐擦傷性を維持したまま寸法変化が小さい光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、すなわち、次の(1)〜(7)に記載のものである。
(1)透明プラスチックフィルムの少なくとも一方に膜厚がプラスチックフィルムの厚みの0.01〜5%である無機化合物層が形成され、光線透過率が80%以上であり、長手・幅方向の熱膨張係数がともに0〜40ppm/℃である光学用フィルム。
(2)無機化合物層が形成された面の表面硬度が鉛筆硬度で4H〜9Hである、上記(1)に記載の光学用フィルム。
(3)長手・幅方向のヤング率がともに3〜10GPaである、上記(1)または(2)に記載の光学用フィルム。
(4)長手・幅方向の150℃熱収縮率がともに0〜2%である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学用フィルム。
(5)酸素透過率が10〜300cc/m2・day・atmである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学用フィルム。
(6)透明プラスチックフィルムと無機化合物層の屈折率差が0〜0.05である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学用フィルム。
(7)透明プラスチックフィルムの両面に無機化合物層が形成される、上記(1)〜(6)のいずれかに光学用フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学用フィルムは、耐擦傷性に優れ、さらに高温でも耐擦傷性を維持したまま寸法変化が小さい。特に画像表示装置の一部として使用した際に、装置作製工程や画像表示装置使用時の擦傷などがつきにくく、寸法安定性に優れているため、工程や使用時の欠陥を減らし生産性を向上させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学用フィルムは透明プラスチックフィルムの少なくとも一方に無機化合物層が形成されている必要がある。さらに両面に形成されていると寸法安定性向上やカール抑制の観点から好ましい。
【0012】
本発明において、無機化合物とは一般的に言われる炭素を含まない物質と炭素を含むが他の元素が主体となる化合物(金属炭化物や金属炭酸化物など)のことである。例えば、Li、Na、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Ba、La、Ce、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Si、Ge、Sb、Nd、Th、Bi、Cdなどの酸化物(−O)、窒化物(−N)、炭化物(−C)、水酸化物(−OH)、硫化物(−S)、ホウ化物(−B)、塩化物(−Cl)、フッ化物(−F)、セレン化物(−Se)、テルル化物(−Te)、炭酸化物(−CO)などが挙げられる。本発明ではX線光電子分光法を用いて、金属元素が10at.%以上検出された場合を無機化合物とする。
【0013】
本発明の無機化合物層は透明プラスチックフィルムと屈折率が近いことが干渉を低減できるため、フッ化物やSiO、Al、MgO、ThO、SnO、La、SiOなどの酸化物が好ましい。さらに、耐擦傷性や寸法安定性の観点から、SiO、Al、MgOが好ましく、特にAlが好ましい。プラスチックフィルムと無機化合物層の屈折率差は0〜0.05であることが好ましい。0.05より差が大きいと干渉縞などでディスプレイの部材として使用した際に画面の写りが悪くなる。より好ましくは0〜0.04、さらに好ましくは0〜0.03である。無機化合物層の屈折率は基本的には素材によって決まるが、Alの場合、酸素ガスの流量を変更し、酸化状態を変更することで屈折率を制御することができる。
【0014】
本発明の無機化合物層の厚みはプラスチックフィルムの厚みの0.01〜5%である。0.01%より厚みが薄いと耐擦傷性や寸法安定性が向上しない。5%より厚いと透過率を下げることが難しく、また湾曲によるひび割れなど問題がでてくる。より好ましくは0.05〜4%、さらに好ましくは0.1〜3%である。無機化合物層の厚みは透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察によって特定する。厚みは無機化合物層の形成方法により制御することができる。
【0015】
本発明の光学用フィルムの光線透過率は80〜100%が必要である。80%より低い場合、ディスプレイの部材として使用した際に画面が暗くなる、鮮明に見えないなどの問題がある。光線透過率は無機化合物層の素材によって制御することができる。さらに、無機化合物層の厚みによっても制御できる。より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。特にAlの場合、酸素ガスの流量を変更し、酸化状態を変更することで全光線透過率を制御することができる。
【0016】
本発明の光学用フィルムは長手・幅方向の熱膨張係数がともに0〜40ppm/℃である必要がある。0ppm/℃未満や40ppm/℃より大きい場合、温度によって寸法が変化し、工程で問題がおこったり、他の部材とひずみができたりするため好ましくない。より好ましくは0〜35ppm/℃、さらに好ましくは0〜30ppm/℃である。温度膨張係数は無機化合物層の素材によって制御することができる。さらに、無機化合物層の厚みによっても制御できる。無機化合物自体の温度膨張係数が小さいものが光学用フィルムの温度膨張係数をより小さくすることができ、また無機化合物層の厚みが厚いほど膨張しようとする力を抑制できるため光学用フィルムの温度膨張係数を下げることができる。本願の範囲内に制御するには温度膨張係数が小さいSiOやAlが好ましい。本願ではヤング率の観点からAlがさらに好ましい。
【0017】
本発明における透明プラスチックフィルムの素材としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。特に、溶融製膜もしくは溶液製膜可能な素材が好ましく、その具体例として、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、アセテート、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などを挙げることができる。これらの内、特に透明性、機械的強度、寸法安定性などに優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。画像表示装置用途に用いるためには、光線透過率が高く、ヘイズ値が低いことが好ましいため、ポリエステル、アセテートおよびアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種からなるフィルムが好ましい。透明性、ヘイズ値、機械特性の点から、特にポリエステルからなるフィルムが好ましい。
【0018】
本発明の透明プラスチックフィルムの395〜745nmでの光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。また、透明プラスチックフィルムのヘイズ値は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。これら条件を満たすと、画像表示装置用部材として用いたときに、視認性の点でさらに好ましい。
【0019】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。また、これらの共重合体、および変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂との混合物でもよい。
【0020】
本発明において、ポリエステルとは、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものである。
【0021】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0024】
アセテートとしては、トリアセチルセルロース等が、アクリル系樹脂としてはポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0025】
透明プラスチックフィルムには、その表面に易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子などが添加されていてもよい。
【0026】
なお、本発明においては、透明プラスチックフィルムやその透明プラスチックフィルムを用いて得られた光学用フィルムに、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
【0027】
本発明の透明プラスチックフィルムの厚みは、15〜500μmであることが好ましい。15μmより薄い場合、搬送などが難しく、シワなどができやすく好ましくない。500μmより厚い場合、画像表示装置用部材として軽量化、小型化ができず好ましくない。より好ましくは50μm〜300μm、さらに好ましくは100〜200μmである。
【0028】
本発明の光学用フィルムは、無機化合物層が形成された面の鉛筆硬度が4H〜9Hであることが好ましい。4H未満であると、表面にキズが付きやすく光学用フィルムとして使用できない。9Hよりも高いことが好ましいが、現状ではガラスを用いた光学用パネルでも9H程度であり、現実的に10H以上は困難である。より好ましくは5H〜9Hである。鉛筆硬度は無機化合物層の素材によって制御できる。さらに、無機化合物層の厚みによっても制御できる。
【0029】
本発明の光学用フィルムは、長手方向、幅方向のヤング率がともに3〜10GPaであることが好ましい。ヤング率が3GPaより小さい場合、張力によって伸び変形しやすく、工程などで不良品となりやすい。ヤング率が10GPaより大きくなるとスリット性が悪くなるなど問題がある。より好ましくは3.5〜9GPa、さらに好ましくは4〜8GPaである。光学用フィルムのヤング率は透明プラスチックフィルムのヤング率でほぼ決まるが、無機化合物層の素材や厚みで多少向上させることができる。特に透明プラスチックフィルムのヤング率から30〜80%向上させるよう無機化合物層の素材や厚みを制御することが好ましい。本願の範囲内に制御するにはヤング率の高いAlが好ましい。また、無機化合物層の厚みが厚いほどヤング率は向上するが透過率低下、割れやすさ、湾曲などの問題から上記に記載の無機化合物層の厚みに制御することが必要である。
【0030】
本発明の光学用フィルムは、長手・幅方向の150℃熱収縮率がともに0〜2%であることが好ましい。熱収縮率がマイナスになると、工程などで熱がかかった場合に膨張することになり不良品となる。2%より大きい場合も熱がかかった場合に収縮が大きくなり不良品となりやすい。より好ましくは0〜1.5%、さらに好ましくは0〜1.0%である。光学用フィルムの熱収縮率は透明プラスチックフィルムの熱収縮率でほぼ決まるが、無機化合物層の素材や厚みでも多少制御することができる。熱収縮率は無機化合物のヤング率が高いほど低減できるので、熱収縮率を本願の範囲内に制御するには、ヤング率の高いAlを用いることが好ましい。
【0031】
本発明の光学用フィルムは酸素透過率が10〜300cc/m・day・atmであることが好ましい。10cc/m・day・atmより小さいと部材内の酸素が混入すると排気されないため、酸化や変性の原因となり好ましくない。300cc/m・day・atmよりも大きいと酸素が混入しやすく酸化の原因となり好ましくない。
【0032】
上記したような本発明の光学用フィルムは、たとえば次のように製造される。
【0033】
まず、透明プラスチックフィルムを製造する。例えばポリエステルフィルムを製造するには、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
【0034】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。
【0035】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸延伸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。特に同時二軸延伸法を用いることが好ましい。逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、物性の均一性が高く、またロールによる延伸を行わないため、表面のキズや異物などの欠点が現れにくい。延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
【0036】
また、透明プラスチックフィルムは市販のフィルムを購入しても良い。
【0037】
次に、得られた透明プラスチックフィルムに無機化合物層を設ける。無機化合物層の形成方法としては、基本的に物理蒸着法や化学蒸着法を用いることができる。透明プラスチックフィルムへの化学蒸着法にはプラズマCVD法、光CVD法などがあるが、化学蒸着法は成膜速度が遅く生産性が悪い問題がある。物理蒸着法には真空蒸着法、スパッタリング法があり、特に透明プラスチックフィルムの受ける熱量の小さい真空蒸着法が好ましく、さらに電子ビーム蒸着法が好ましい。
【0038】
電子ビーム蒸着法は、減圧状態に保たれた機器の中でロール状のフィルムを巻出し、冷却されたドラムに密着させながら走行させ、電子ビームによって加熱蒸発させた蒸発源をフィルム上に付着させ、ロール状に巻取る工程を行う方法である。また、本発明の無機化合物層の厚みを制御するためには、蒸発量とフィルム搬送速度を制御する必要がある。金属蒸発量が一定である場合、搬送速度を速くすると無機化合物層の厚みが薄くなり、遅くすると無機化合物層の厚みが厚くなる。逆に搬送速度が一定である場合は、蒸発量を減らせば無機化合物層の厚みは薄くなり、蒸発量を増やせば無機化合物層の厚みが厚くなる。蒸発量は材料によって異なるが、基本的に電子ビームの出力が高いほど蒸発量は増加する。
【0039】
透明プラスチックフィルム表面に無機化合物層を形成するには、たとえば図1に示すような真空蒸着装置を用いる。この真空蒸着装置1においては、真空チャンバ2の内部をポリエステルフィルムが巻出しロール部3からガイドロール5を経て冷却ドラム6で蒸着され巻取りロール部8へと走行する。そのときに、るつぼ13内の金属材料9を電子銃10から照射した電子ビーム11で加熱蒸発させる。酸化物を作製する場合、ガス供給ノズル14から酸素ガスを導入し、蒸発した金属を酸化反応させながら冷却ドラム6上のポリエステルフィルムに蒸着する。
【0040】
ここで、真空チャンバ2の内部は1.0×10−8〜1.0×10Paに減圧することが好ましい。さらに緻密で劣化部分の少ない無機化合物層を形成させるために好ましくは、1.0×10−6〜1.0×10−1Paに減圧することが好ましい。冷却ドラム6は、その表面温度を−40〜60℃の範囲内にすることが好ましい。より好ましくは−35〜30℃、さらに好ましくは−30〜0℃である。また、冷却効率を向上させるために、冷却ドラム6を印加させ搬送するフィルムを静電密着させることが好ましい。電子ビーム11は、その出力を2.0〜15.0kWの範囲内とすることが好ましい。より好ましくは3.0〜12.0kW、さらに好ましくは4.0〜10.0kWの範囲内である。なお、直接ルツボを加熱することで金属材料9を加熱蒸発させてもよい。真空チャンバ2の内部における透明プラスチックフィルムの搬送速度は10〜400m/minが好ましい。より好ましくは20〜350m/min、さらに好ましくは40〜300m/minである。搬送速度が10m/minより遅すぎる場合、生産性が悪く、また蒸着ムラが起こりやすい。搬送速度が400m/minより速くなると、冷却ドラムとの接触時間が短くなるため熱による破れやシワが発生し、生産性が損なわれる。真空チャンバ2の内部における透明プラスチックフィルムの搬送張力は1〜200N/mが好ましい。より好ましくは5〜150N/m、さらに好ましくは10〜100N/mである。
【0041】
蒸着後、無機化合物層を安定化させるためには、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返すことが好ましい。さらに温度20〜50℃、湿度40〜80%RHの環境下で1〜3日間エージングすることが好ましい。
【実施例】
【0042】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
実施例、比較例における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りであった。
【0043】
(1)無機化合物層の厚み
下記条件にて断面観察を行い、得られた合計9点の厚み[nm]の平均値を算出し、無機化合物層の厚み[nm]とする。
【0044】
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型 (株)日立製作所製
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:10万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD−ZD断面
測定回数:1視野につき3点、3視野を測定する。
【0045】
(2)組成分析
下記条件にて、深さ方向の組成分析を行う。炭素濃度が50at.%を越える深さをM層とポリエステルフィルムとの界面とし、表層から界面までを等分に5分割し、それぞれの区間の中央点を測定点として組成分析を行う。得られた各測定点の組成から平均値を算出し、本発明における平均組成とする。
【0046】
測定装置:X線光電子分光機 Quantera−SXM 米国PHI社製
励起X線:monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
X線径 :100[μm]
光電子脱出角度:45°
ラスター領域:2×2[mm]
Arイオンエッチング: 2.0[kV] 1.5×10−7[Torr]
スパッタ速度:3.68nm/min(SiO換算値)
データ処理:9−point smoothing
ピークの結合エネルギー値から元素情報が得られ、各ピークの面積比を用いて組成を定量化(at.%)する。
【0047】
(3)温度膨張係数
測定装置:真空理工(株)製TMA TM−3000、加熱制御部TA−1500
試料サイズ:幅4mm×試長間15mm
荷重:0.5g
試料前処理:25℃→(10℃/分)→200℃(10分保持)→(10℃/分)→25℃
降温時の150℃から50℃でのフィルムの変化量ΔL[μm]を測定し、次式から温度膨張係数[ppm/℃]を算出した。
【0048】
温度膨張係数[ppm/%RH]=10×{(ΔL/(15×10))/(150−50)}
(4)鉛筆硬度
JIS−K5400(1990)に準拠し、下記装置を用いて測定する。硬度の低い6Bから始め、3回測定し1回もキズが付かなかった場合、硬度を1つ上げて測定を行う。キズがついた硬度の1つ下の硬度を本発明での鉛筆硬度とする。
【0049】
測定装置:HEIDON 新東科学株式会社製
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:3回測定する。
【0050】
(5)フィルム厚み
下記測定装置を用いて、透明プラスチックフィルムの厚みを測定する。無機化合物層が設けられた光学用フィルムの場合は、上記(1)の方法で無機化合物層の厚みを測定後、この方法で厚みを測定し、その測定された厚みから無機化合物層の厚みを引いた厚みを透明プラスチックフィルムの厚みとした。5回の測定結果の平均値を算出し、本発明におけるフィルム厚みとする。
【0051】
測定装置:電子マイクロメータ(K−312A型) アンリツ(株)製
測定環境:23℃65%RH
針圧:30g
(6)全光線透過率
JIS−K7105(1981)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における全光線透過率とする。
【0052】
測定装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用) スガ試験機社製
光源 :ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:5回測定する。
【0053】
(7)150℃熱収縮率
JIS C−2318(1997)に準拠し測定する。5回の測定結果の平均値を算出し、本発明における150℃熱収縮率とする。
【0054】
試料幅:10mm
試料長:200mm
熱処理装置:ギアオーブン
熱処理条件:150℃、30分間、無荷重
熱収縮率(%)=[(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ]×100。
【0055】
(8)プラスチックフィルムの屈折率
無機化合物層をフッ酸で溶解させ拭き取り、水洗し乾燥させる。JIS−K7142(1996)に準拠し測定する。ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折率計を用いて測定した。なお、マウント液はヨウ化メチレンを用い、25℃、65%RHにて測定した。3回の測定結果の平均値を本発明におけるプラスチックフィルムの屈折率とする。
【0056】
試料幅:25mm
試料長:30mm
測定装置:アッベ屈折率計 NAR−1T (株)アタゴ社製
マウント液:ヨウ化メチレン
測定環境:温度23℃湿度65%RH。
【0057】
(9)無機化合物層の屈折率
下記装置を用いて、エリプソメトリー法で無機化合物層の屈折率を求める。3回の測定結果の平均値を無機化合物層の屈折率とする。
【0058】
装置:位相差測定装置NPDM−1000(株式会社ニコン社製)
光源:ハロゲンランプ
検出器:Si−Ge
偏光子・検光子:グラムトムソン
検光子回転数:2回
入射角:45°〜80°、0°
測定波長:590nm
プラスチックフィルムと無機化合物層の屈折率の差は絶対値で表す。
【0059】
(10)酸素透過率
下記装置を用いて測定した値をml/(m・day・MPa)の単位で示した。
【0060】
測定装置:モダンコントロール社製酸素透過率計“OXTRAN−100”
測定温度:23℃(相対湿度5%,80%)。
【0061】
(11)ヤング率
ASTM−D882(1997)に準拠して光学用フィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
【0062】
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
【0063】
(12)加工性
光学用フィルムにスパッタにより透明導電層(ITO)成膜後、フォトリソグラフィ及びエッチングにより透明導電層をパターニングする。さらに配向剤を塗布しラビング処理を行う。スペーサーを散布後、シール剤を印刷コートし、同様に処理した光学用フィルムと貼り合わせ、加熱硬化させる。液晶材料を注入し、封止し液晶セルを作製する。液晶セルの両面に接着剤で偏光板を貼り付け液晶ディスプレイ素子を作製する。
【0064】
この時の100個作製した時の不良品の数を加工性として評価した。
【0065】
◎;不良品が10個未満
○;不良品が10個以上20個未満
△;不良品が20個以上30個未満
×;不良品が30個以上。
【0066】
(13)耐擦傷性;スチールウール硬度評価
耐擦傷性は、光学用フィルムの無機化合物層の面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、10cm×10cmの範囲を目視で観察し、傷の付き方を次の評価をした。
【0067】
◎;まったくキズが付かない
○;キズが1本以上5本以下
△;キズが6本以上10本以下
×;キズが11本以上。
【0068】
(14)高温耐擦傷性
(13)を150℃のオーブン内で実施し、同様の評価を行った。
【0069】
◎;まったくキズが付かない
○;キズが1本以上10本以下
△;キズが11本以上30本以下
×;キズが30本以上。
【0070】
(15)視認性
光学用フィルムの下に写真を置き、光学用フィルムを通して写真を見た時に、虹彩模様が見えずはっきり見えるかどうか視認性を評価した。
【0071】
◎;像が鮮明に見える
○;像が少し見えにくい
△;像が見えにくい
×;像が見えない。
【0072】
光学用フィルムとして(12)〜(15)の評価で×が1つでもあれば、不合格。△が3つ以上でも不合格。それ以外を合格とした。
【0073】
[参考例1]
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部および三酸化アンチモン0.05重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5重量%エチレングリコール溶液を1重量部(リン酸トリメチルとして0.05重量部)添加した。
【0074】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達したら、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0075】
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62、溶融比抵抗1.0×10Ω・cmのポリエチレンテレフタレートのPETペレットWを得た。
【0076】
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、作製したPETペレットWを99.98重量部と平均粒径0.4μmのコロイダルシリカ粒子の0.15重量%水スラリーを10重量部(コロイダルシリカとして0.015重量部)と平均粒径1.5μmのコロイダルシリカ粒子の0.05重量%水スラリーを10重量部(コロイダルシリカとして0.005重量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の真空度に保持し水分を除去し、平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%と平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有する(固有粘度0.62dl/g)ペレットYを得た。
[実施例1]
参考例1で作製したペレットYを、180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出した。押出されたシートを、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸シートとした。このようにして得られた未延伸シートを、105℃に加熱したロール群で長手方向に3.0倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。さらに連続的に3%の幅方向の弛緩処理をさせながら230℃の熱処理ゾーンで17秒間の熱処理を施し、フィルムの熱固定を行った。このようにして得られたPETフィルムは、総厚みが100μmであり、透明性に優れたものであった。
【0077】
次に、図1に示す真空蒸着装置11の巻出しロール部13に得られたPETフィルムをセットし、1.5×10−3Paの真空度にした後に、−20℃の冷却ドラム16を介してPETフィルムを搬送速度100m/min、搬送張力100N/mで走行させた。そして、99.99重量%のアルミニウムを電子ビーム(出力6kW)で加熱蒸発させ、さらに蒸発源であるるつぼ23の真横に設置したガス供給ノズル24から酸素ガスを10L/minで金属蒸気と同じ方向に供給し、酸化アルミニウム(AlOx)の蒸着薄膜層(厚み200nm)をPETフィルムの片側上に形成して巻取った。真空蒸着装置内を常圧に戻し、40℃の環境で2日間エージングして、光学フィルムを得た。
【0078】
得られた光学用フィルムは表1に示すように耐擦傷性に優れ、寸法変化が小さく優れた特性を有していた。(蒸着などにより成膜された無機化合物層は通常のバルク材料よりも不安定な状態で成膜されるため、酸化物としてはAlだが、組成的にAl:Oが2:3にならない場合もあり、AlOxという表記を用いた。以下の実施例の無機化合物層も同様の表記を用いた。)
[実施例2]
真空蒸着時の搬送速度を200m/min、電子ビーム(出力3kW)、酸素ガス導入量4L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例3]
真空蒸着時の搬送速度を10m/min、電子ビーム(出力8kW)、酸素ガス導入量14L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例4]
真空蒸着時の搬送速度を200m/min、酸素ガス導入量6L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例5]
真空蒸着時の蒸着材料を99.99重量%のシリカに変更し、搬送速度50m/min、酸素ガス導入量2L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例6]
帝人デュポンフィルム社“テオネックスQ65F”ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いて、真空蒸着時の搬送速度20m/minとすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例7]
三菱レイヨン社“アクリプレン”ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムを用いて、真空蒸着時の搬送速度250m/minにすること以外は実施例5と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例8]
真空蒸着時の電子ビーム(出力5kW)とすること以外は実施例7と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例9]
真空蒸着時の搬送速度20m/min、酸素ガス導入量15L/minとすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例10]
三菱エンジニアリングプラスチック社“ユーピロンFE−2000”ポリカーボネート(PC)フィルムを用いること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例11]
住友ベークライト社“スミライトFS−1300”ポリエーテルサルフォン(PES)フィルムを用いること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例12]
帝人デュポンフィルム社“テオネックスQ65F”PENフィルムを用いて、真空蒸着時の蒸着材料を99.99重量%のマグネシウムに変更し、搬送速度200m/min、にすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例13]
三菱ガス化学社“ネオプリム”ポリイミド(PI)フィルムを用いること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例14]
無機化合物層を両面に蒸着すること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[実施例15]
JSR社“アートンフィルム”シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを用いること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように優れた特性を有していた。
[比較例1]
実施例1で得られたPETフィルムに蒸着を行わないで光学用フィルムとした。得られた光学用フィルムは表1に示すように劣る特性であった。
[比較例2]
真空蒸着時の搬送速度を8m/min、電子ビーム(出力8kW)、酸素ガス導入量14L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように劣る特性であった。
[比較例3]
真空蒸着時の搬送速度を40m/min、酸素ガス導入量6L/minにすること以外は実施例1と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように劣る特性であった。
[比較例4]
真空蒸着時の電子ビーム(5kW)、酸素ガス導入量5L/minにすること以外は実施例4と同様の方法にて光学用フィルムを得た。得られた光学用フィルムは表1に示すように劣る特性であった。
【0079】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の支持体を製造する際に用いられる真空蒸着装置の模式図である。
【符号の説明】
【0081】
11:真空蒸着装置
12:真空チャンバ
13:巻出しロール部
14:ポリエステルフィルム
15:ガイドロール
16:冷却ドラム
17:蒸着チャンバ
18:巻取りロール部
19:金属材料
20:電子銃
21:電子ビーム
22:酸素ガスボンベ
23:るつぼ
24:ガス供給ノズル
25:マスク
26:ガス流量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの少なくとも一方に膜厚がプラスチックフィルムの厚みの0.01〜5%である無機化合物層が形成され、光線透過率が80〜100%であり、長手・幅方向の熱膨張係数がともに0〜40ppm/℃である光学用フィルム。
【請求項2】
無機化合物層が形成された面の表面硬度が鉛筆硬度で4H〜9Hである、請求項1に記載の光学用フィルム。
【請求項3】
長手・幅方向のヤング率がともに3〜10GPaである、請求項1または請求項2に記載の光学用フィルム。
【請求項4】
長手・幅方向の150℃熱収縮率がともに0〜2%である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項5】
酸素透過率が10〜300cc/m・day・atmである、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項6】
透明プラスチックフィルムと無機化合物層の屈折率差が0〜0.05である、請求項1〜5のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項7】
透明プラスチックフィルムの両面に無機化合物層が形成される、請求項1〜6のいずれかに光学用フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−80389(P2009−80389A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250815(P2007−250815)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】