説明

光学用基材フィルム

【課題】高コストの多層構成の反射防止層によらなくても十分に低い表面反射率を備え、基材のポリエステルフィルムとの接着性に優れた光学用基材フィルムを提供する。
【解決手段】二軸延伸ポリエステルフィルム、および該二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直に設けられた塗布層からなり、該塗布層は、フルオロアルキル(メタ)アクリレートを主たる重合成分とし、フッ素を含まない(メタ)アクリレートを従たる重合成分としてなるアクリル共重合体からなり、300〜800nmの波長領域での表面の反射率の最小値が0.5〜8.0%であることを特徴とする、光学用基材フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の各種ディスプレイの構成部材として用いられる光学用基材フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、液晶表示装置等の各種ディスプレイの構成部材として用いられている。液晶表示装置では、光源より発せられた光線が光学用フィルムを通る際に、表面の反射により光線透過量が減少し輝度が低下する問題がある。
【0003】
光線透過量の減少を防止する方法として、バックライトの光量を上げることが考えられるが、消費エネルギーが高くなるなどの問題がある(特許文献1)。フィルム表面の反射を防止して光線透過量を向上させる方法も提案されており、ドライコーティング法、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法によって、フィルム上に反射を抑制する層を直接設けることが提案されている。しかし、ドライコーティング法では、真空処理設備が必要であり、生産コストが高価となる。そのため、最近ではウエットコーティング法でフィルム上に反射を抑制する層を安価に形成する技術が開発されている(特許文献2)。
【0004】
ウエットコーティングにおいても、フィルムよりも十分に低い屈折率の材料を反射防止層に用いる必要があるが、そのような低屈折率の剤は入手困難であるため、一般に複数の層を積層して反射光を干渉させることで、低い光線反射率の表面を得ることが行われている。このように複数の層を積層して表面の反射率を低くするためには、各層の厚みを厳密に制御する必要であり、工程も複数設ける必要があることから煩雑であり高コストである。
【0005】
【特許文献1】特開2007−044954号公報
【特許文献2】特開2003−075603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高コストの多層構成の反射防止層によらなくても十分に低い表面反射率を備え、基材のポリエステルフィルムとの接着性に優れた光学用基材フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルム、および該二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直に設けられた塗布層からなり、該塗布層は、下記式で表わされるフルオロアルキル(メタ)アクリレートを主たる重合成分とし、フッ素を含まない(メタ)アクリレートを従たる重合成分としてなるアクリル共重合体からなり、300〜800nmの波長領域での塗布層表面の反射率の最小値が0.5〜8.0%であることを特徴とする、光学用基材フィルムである。
【0008】
【化1】

(上記式において、R基は、水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R基は、炭素数1〜4かつフッ素原子数1〜7のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明は、高コストの多層構成の反射防止層によらなくても十分に低い表面反射率を備え、基材のポリエステルフィルムとの接着性に優れた光学用基材フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学用基材フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム、および該二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直に設けられた塗布層からなる。この塗布層が一層の塗布層でありながらフィルムの表面反射を抑制する作用をする。なお、塗布層は二軸延伸ポリエステルフィルムの両面に設けられていてもよい。
【0011】
[ポリエステルフィルム]
本発明において二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
【0012】
二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、上記のポリエステルの共重合体であってもよい。共重合体である場合、共重合成分の量は、ポリエステルの全繰返し単位を基準に例えば20モル%以下である。
【0013】
ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。
二軸延伸ポリエステルフィルムは、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒を含有してもよいが、フィラーを含有しないことが高い透明性を得る観点から好ましい。
【0014】
二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、光学用基材フィルムとして、例えばハードコート、タッチパネル、防眩処理、PDP用電磁波シールドフィルム、有機EL等の基材フィルム(支持体)として使用するときに必要な強度を得るために、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは50〜450μmである。
【0015】
[塗布層]
本発明においては、塗布層を、下記式で表わされるフルオロアルキル(メタ)アクリレートを主たる重合成分とし、フッ素を含まない(メタ)アクリレートを従たる重合成分としてなるアクリル共重合体(以下「フッ素含有アクリル共重合体」ということがある)で構成する。
【0016】
【化2】

(上記式において、R基は、水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R基は、炭素数1〜4かつフッ素原子数1〜7のアルキル基である。)
【0017】
本発明における「主たる重合成分」とは、フッ素含有アクリル共重合体を構成する全モノマー成分の合計重量を基準に、例えば65〜99重量%、好ましくは70〜90重量%を占める重合成分をいい、「従たる重合成分」とは、フッ素含有アクリル共重合体を構成する全モノマー成分の合計重量を基準に、例えば1〜35重量%、好ましくは10〜30重量%を占める重合成分をいう。
【0018】
この比率の重合成分からなるフッ素含有アクリル共重合体を塗布層に用いることで、光拡散フィルムとの良好な接着性を示し、適切な屈折率を備える塗布層を二軸延伸ポリエステルフィルムのうえに設けることができる。
【0019】
主たる重合成分のフルオロアルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートを例示することができる。水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する水に可溶なものも好ましく、特にトリフルオロエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
従たる共重合成分のフッ素を含まない(メタ)アクリレートとしては、例えば以下に例示されるものを用いることができる。すなわち、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1、3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1、4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1、1、1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレートを例示することができ、前記(メタ)アクリレートの中でもエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートが好ましく、特にエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
塗布層のフッ素含有アクリル共重合体として好ましいものは、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートと、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートとからなるフッ素含有アクリル共重合体である。
【0022】
塗布層のフッ素含有アクリル共重合体のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、優れた接着性と優れた造膜性を得ることができる。他方、ガラス転移温度が40℃ 未満であるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなり、100℃ を超えると造膜性が悪くなる。
【0023】
塗布層のフッ素含有アクリル共重合体は、例えば乳化重合によって重合することができる。乳化重合に用いることができる重合開始剤として、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルハイドロパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロキシクロライド、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロキシクロライド、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロキシクロライドを挙げることができる。また、公知のレドックス系開始剤、好ましくは過硫酸アンモニウムを用いることもできる。
【0024】
乳化重合反応は、用いられるモノマーおよびラジカル重合開始剤の種類、その他の条件に応じた温度および反応時間で行うことができる。重合条件として、例えば重合反応温度50〜90℃、および重合反応時間3〜24時間の条件下で行うことができる。乳化重合は、例えば窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
【0025】
塗布層の形成に用いるフッ素含有アクリル共重合体は、エマルジョンの形態であってもよく、粉末の形態であってもよい。フッ素含有アクリル共重合体を粉末形態にする方法としては、例えばフッ素含有アクリル共重合体を乾燥させる方法を用いることができる。塗布層を簡便に大面積に作製できるため、フッ素含有アクリル樹脂は、エマルジョンの形態で用いることが好ましい。
【0026】
塗布層は、フッ素含有アクリル共重合体および界面活性剤の他に、有機粒子および/または無機粒子を含有することが好ましい。粒子の平均粒径は、好ましくは0.02〜1.0μm、さらに好ましくは0.05〜0.5μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。平均粒径が1.0μmを超えると塗布後白味が発生し、表面が荒れるおそれがあり好ましくなく、平均粒径が0.02μm未満であると粒子同士の接触面積が広くなって凝集が起こりやすく、さらに現状に技術においては製造が困難などの問題があり好ましくない。
【0027】
塗布層は、フッ素含有アクリル共重合体と界面活性剤からなることが好ましく、塗布層を構成するフッ素含有アクリル共重合体の、塗布層中での含有量は、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、特に好ましくは70〜90重量%であり、そして、界面活性剤の塗布層中での含有量は5〜95重量%、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。塗布層がこの組成で構成されることによって、凝集力の高い塗膜を得るとともに、基材たる二軸延伸ポリエステルフィルムとの間に優れた接着力を得ることができる。
【0028】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を用いることができる。
【0029】
[塗布層の屈折率と厚み]
本発明の光学用基材フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、上記の塗布層が直に設けられた構成をとる。本発明においては、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直に塗布層を設けることで、表面の反射率を低くすることができる。
【0030】
本発明の光学用基材フィルムは、300〜800nmの波長領域での塗布層表面の反射率の最小値が0.5〜8.0%、好ましくは0.5〜7.0%、さらに好ましくは0.5〜3.0%である。この条件を満足することで、光学用基材フィルムとして好ましい、表面反射が抑制されたフィルムを得ることができる。
【0031】
塗布層の屈折率Nは、好ましくは1.20〜1.45、さらに好ましくは1.35〜1.45である。そして、塗布層の厚みd(nm)と屈折率Nは下記式を満足することが好ましい。
(300/4)/N ≦ d(nm) ≦ (800/4)/N
【0032】
これらの条件を満足することでフィルム表面の反射率を十分に低くすることができる。
例えば塗布層の屈折率Nが1.35〜1.45であるとき、塗布層の厚みdは80〜120nmであることが好ましい。この範囲の厚みとすることで、波長300〜800nmでの反射率を低く抑えることができる。
【0033】
本発明の光学用基材フィルムは、塗布層の表面ヘーズ値が0.5%以下であることが好ましく、300〜800nmの波長領域での平均光線透過率が90〜99%であることが好ましい。
上記の範囲であれば、表面の反射を十分に抑制することができ、また、光学用基材フィルムとして好適な透明性を備えて好ましい。
【0034】
[製造方法]
以下、融点をTm、ガラス転移温度をTgと表記する。
二軸延伸ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃ で長手方向に1回もしくは2回以上、合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸し、必要に応じてさらに180〜240℃で1〜60秒間熱処理を行い、熱処理温度より10〜20℃低い温度で幅方向に0〜20%収縮させながら再熱処理を行うことにより得ることができる。
【0035】
本発明において、塗布層は二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくと一方の面に設けられているが、必ずしも二軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布層を設ける必要は無く、未延伸もしくは一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布層を設け、その後に延伸してフィルムの二軸延伸フィルムとすることで製造してもよい。
【0036】
ポリエステルフィルムへの塗布層の塗設は、フィルム製造工程の任意の段階で実施することができる。二軸延伸ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向化が完了する前のフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム) を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/ または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0037】
塗布層の形成に用いる塗液は、水溶液、水分散液あるいは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗液として水性塗液を用いる場合、水性塗液の固形分濃度は、通常20重量%以下であるが、特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、ポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがあり、他方、20重量%を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が悪化してあまり好ましくない。
【0038】
塗液が水分散液またはエマルジョンである場合、固形分が平均粒子径0.1μm程度となるように分散した水溶液を、イオン交換水で薄め、同様に濡れ剤をイオン交換水で薄め、各々を混合することで作製することが好ましい。
【0039】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法を適用することができる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法を単独でまたは組合せて用いることができる。なお、塗布膜は必要に応じてフィルムの光拡散フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0040】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、物性は以下の方法で測定、評価した。「部」は重量部を意味する。
【0042】
(1)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率を測定した。フィルムの全光線透過率を下記の基準で評価した。
◎:92.5%≦全光線透過率値 ・・・ 極めて良好
○:90.0%≦全光線透過率値<92.5% ・・・ 良好
×: 全光線透過率値<90.0% ・・・ 不良
【0043】
(2)表面ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの表面ヘーズを測定した。フィルムの表面ヘーズを下記の基準で評価した。
◎: 表面ヘーズ値≦0.5% ・・・ 極めて良好
○:0.5%<表面ヘーズ値≦1.5% ・・・ 良好
×:1.5%<表面ヘーズ値 ・・・ 不良
【0044】
(3)反射率の最小値
(株)島津製作所製分光光度計MPC3100を用い、フィルムの塗布層面を測定対象として、波長300nm〜2100nmでの反射率を測定した。波長300〜800nmでの反射率の最小値をチャートから読み取り、反射率の最小値を下記の基準で評価した。
◎: 最小反射率値≦2.0% ・・・ 極めて良好
○:2.0%<最小反射率値≦4.0% ・・・ 良好
×:4.0%<最小反射率値 ・・・ 不良
【0045】
(4)塗布層の屈折率
塗布用塗液の乾固物について、Metricon社製のレーザー屈折率計プリズムカプラ、モデル2010を用い、633nmの波長を用いて屈折率を測定した。屈折率を下記の基準で評価した。
◎: 屈折率値≦1.400 ・・・ 極めて良好
○:1.400<屈折率値≦1.450 ・・・ 良好
×:1.450<屈折率値 ・・・ 不良
【0046】
(5)塗布層の厚み
反射率の最小値から得られたボトム波長(nm)と塗布液乾固物の屈折率とを用いて、下記の式より算出した。(厚みd(nm)は小数点以下1桁四捨五入した。)
d=λ/(4×n)
d:塗布層の厚み(nm)
λ:ボトム波長(nm)
n:塗液乾固物の屈折率
【0047】
(6)フィルムの厚み
光学基材用フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(LEM−2000)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗膜層の厚みを測定した。
【0048】
(7)反射率が最小となる波長(ボトム波長)
(株)島津製作所製分光光度計MPC3100を用い、フィルムの塗布層面を測定対象として、波長300nm〜2100nmの反射率を測定した。波長300〜800nmでの反射率の最小値をチャートから読み取った。
【0049】
(8)塗布欠点
製膜した光学基材用フィルムの塗布層を一定範囲(巾20cm、長さ20cm)についてハロゲンランプで目視観察し、長手方向のスジ状欠点、ハジキ状欠点の発生度合を下記の基準で評価した。
◎: スジ状欠点、ハジキ状欠点とも皆無 ・・・極めて良好
○: スジ状欠点、ハジキ状欠点の合計が10個以下 ・・・良好
△: スジ状欠点、ハジキ状欠点の合計が10個を超え30個以下・・・やや良好
×: スジ状欠点、ハジキ状欠点の合計が30個を超える ・・・不良
【0050】
(9)接着性
JIS−K5600−8塗膜劣化評価を参照に、ガーゼに、荷重500g/cmの荷重を負荷しながら、塗布層の表面上を10往復させた後、表面に観察された塗布層の剥がれた塗膜幅、傷を観察し、接着性の評価をした。評価は目視にて確認できる幅とし、下記の基準とした。
◎: 剥離、擦傷とも皆無 ・・・極めて良好
○: 剥離皆無、擦傷あり ・・・良好
△: 剥離少しあり、擦傷あり ・・・やや良好
×: 剥離あり、擦傷あり ・・・不良
【0051】
(10)ガラス転移温度
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V 4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
【0052】
(11)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0053】
(12)成分
実施例において用いた成分は以下の通りである。
フッ素含有アクリル共重合体A:
トリフルオロエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩で構成されている(Tg=76℃)。なお、アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水1050部、および乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩22.6部を仕込んで窒素気流中で80℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム6.4部添加し、さらにモノマーであるトリフルオロエチルメタクリレート110.0部、エチレングリコールジメタクリレート6.9部を3時間にわたり液温が70〜80℃になるよう調製しながら滴下し、滴下終了後も同温度を5時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却させ、真空乾燥機で乾燥させ、平均粒径0.1μmを有する固形分濃度25重量%のフッ素含有アクリル共重合体Aの水分散体を得た。このフッ素含有アクリル樹脂Aはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートが繰り返し単位として90モル%、さらにエチレングリコールジメタクリレートが繰り返し単位として10モル%含有している。
【0054】
フッ素含有アクリル共重合体B:
トリフルオロエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩で構成されている(Tg=76℃)。なお、アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水1050部、および乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩22.6部を仕込んで窒素気流中で80℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム6.4部添加し、さらにモノマーであるトリフルオロエチルメタクリレート77.0部、エチレングリコールジメタクリレート46.2部を3時間にわたり液温が70〜80℃になるよう調製しながら滴下し、滴下終了後も同温度を5時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却させ、真空乾燥機で乾燥させ、平均粒径0.1μmを有する固形分濃度25重量%のフッ素含有アクリル共重合体Bの水分散体を得た。このフッ素含有アクリル樹脂Bはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートが繰り返し単位として67モル%、さらにエチレングリコールジメタクリレートが繰り返し単位として33モル%含有している。
【0055】
フッ素含有アクリルモノマー:
トリフルオロエチルメタクリレート(東ソーエフテック社製 フルオレスター)
アクリルモノマー:
エチレングリコールジメタクリレート(三新化学工業社製 サンエステルEG)
乳化剤:
アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩(日本乳化剤社製 ニューコール271S)
重合開始剤:
過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学社製 別名ペルオキソ二硫酸アンモニウム)
フッ素含有オレフィン樹脂C:
ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業社製 PTFE)
アクリル樹脂:
日本カーバイド社製 ニカゾールRX−906
界面活性剤:
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製 エマルゲン)
添加剤:
カルナバワックス(中京油脂社製 セロゾール524)
微粒子:
コロイダルシリカ(平均粒径:200nm、屈折率:1.46)(日産化学工業社製 スノーテックス)
【0056】
[実施例1〜2、比較例1〜8]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いでその両面に表1に示す組成物の水性塗液(固形分濃度3.0%)をロールコーターで均一に塗布して、塗布フィルムとした。この塗布フィルムを、引き続いて95℃で乾燥し、100℃で、長手方向に3.4倍、横方向に3.6倍の倍率で同時二軸延伸し、225℃で長手方向および幅方向にそれぞれ2%収縮させながら熱固定し、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが50μmであり、塗布層を備える光学用基材フィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
実施例1の光学用基材フィルムの塗布層とは反対側の表面にプリズムレンズ層を形成させて輝度向上シートであるプリズムシートを作製した。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の光学用基材フィルムは、各種光学用部材の基材フィルムとして用いることができ、特にプリズムレンズシート、拡散シート、タッチパネル、バックライト、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の基材フィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルム、および該二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直に設けられた塗布層からなり、該塗布層は、下記式で表わされるフルオロアルキル(メタ)アクリレートを主たる重合成分とし、フッ素を含まない(メタ)アクリレートを従たる重合成分としてなるアクリル共重合体からなり、300〜800nmの波長領域での塗布層表面の反射率の最小値が0.5〜8.0%であることを特徴とする、光学用基材フィルム。
【化1】

(上記式において、R基は、水素原子、または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R基は、炭素数1〜4かつフッ素原子数1〜7のアルキル基である。)
【請求項2】
塗布層のアクリル共重合体が、フルオロアルキル(メタ)アクリレート65〜99重量部およびフッ素を含まない(メタ)アクリレート1〜35重量部から重合されたアクリル共重合体である、請求項1記載の光学用基材フィルム。
【請求項3】
アクリル共重合体のフルオロアルキル(メタ)アクリレートがトリフルオロエチル(メタ)アクリレートであり、フッ素を含まない(メタ)アクリレートがエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項2記載の光学用基材フィルム。
【請求項4】
塗布層の表面ヘーズ値が0.5%以下であり、300〜800nmの波長領域での平均光線透過率が90〜99%である、請求項1記載の光学用基材フィルム。
【請求項5】
塗布層の屈折率Nが1.20〜1.45であり、塗布層の厚みd(nm)および屈折率Nについて下記式を満足する、請求項1記載の光学用基材フィルム。
(300/4)/N ≦ d(nm) ≦ (800/4)/N

【公開番号】特開2010−84067(P2010−84067A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256437(P2008−256437)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】