説明

光学用粘着シート

【課題】形状追従性に優れた光学用粘着シートを提供する。
【解決手段】紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる、紫外線架橋性粘着シートであって、
紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、5.0×104Pa以上、1.0×106Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×104Pa以下であり、
さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×103Pa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイおよびタッチパネルに有用な粘着シート、より詳細には、紫外線架橋性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式携帯端末、コンピューターディスプレイおよびタッチパネルなどの電子機器の画像表示モジュールには、表面保護層としてガラスやプラスチックフィルムが積層されている。これらの表面保護層は、画像表示部分の外側余白またはタッチパネルの有効動作領域の外側に枠状のテープまたは接着剤を適用することによって、画像表示モジュールまたはタッチパネルに固定されている。その結果、画像表示部分またはタッチパネルの有効動作領域と表面保護層との間には空隙が形成される。
【0003】
画像表示モジュールまたはタッチパネルと表面保護層との間の空隙を、これらの材料の屈折率と大体合致する透明物質で置換して、透過性を向上させ、画像の鮮明度を改善することが、産業界のトレンドとなっている。例示的な透明物質として、粘着剤、接着剤、シリコーンゲルなどが挙げられる。接着剤を使用した場合、例えば表面保護層と画像表示モジュールを貼り合せた後、欠陥が生じた場合に表面保護層を剥離して交換することが困難であり、シリコーンゲルは接着力が低いために長期信頼性に問題がある。これに対し、粘着剤(例えば粘着シート)は、十分な接着力を有しかつ貼り直しが可能であるため、表面保護層を画像表示モジュールまたはタッチパネルに貼り合わせるのに有効である。
【0004】
画像表示モジュール、光学部材、表面保護層などの被着体の表面は平坦でないことがある。表面保護層の表面、特に粘着シートと接触する表面には、装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。いくつかの例では、印刷された部分により高さが10μm以上の段差が表面保護層の表面に生じる。粘着シートを用いて画像表示モジュールまたはタッチパネルを表面保護層と貼り合せる場合、例えば、粘着シートの段差への追従性が不十分であって、段差の上またはその近傍に空隙が生じるという問題がある。その上、粘着剤の変形による応力が大きすぎて液晶ディスプレイに色ムラが発生するおそれがある。これらの問題を回避するために、粘着シートの厚さを通常段差の高さの約10倍程度とする必要があった。応力緩和性の悪い粘着剤を用いると、その厚さを段差の高さの10倍以上にしても貼り合わせの品質要求を満たさない場合がある。
【0005】
特許文献1(特開2004−262957号公報)は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に対して、光ラジカル開始剤の少なくとも水素引き抜きタイプ光ラジカル開始剤を0.01〜1.0重量%含有したことを特徴とするホットメルト型紫外線架橋透明粘着剤、およびそのような粘着剤をホットメルト成形した後に紫外線照射させて架橋させた粘着シートを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−262957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像表示装置の小型化・薄型化のため、あるいはタッチパネルの感度向上のため、粘着シートの厚さはできるだけ薄いことが望ましい。本開示は、段差または隆起を有する表面に適用可能な、薄い(例えば30〜50μm厚)粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる、紫外線架橋性粘着シートであって、紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以上、約1.0×106Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以下であり、さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、約1.0×103Pa以上である、紫外線架橋性粘着シートが提供される。
【0009】
また、本開示の他の実施態様によれば、少なくとも一方の表面に段差または隆起を有する第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材の間に配置された、上記紫外線架橋性粘着シートと、を含む積層体であって、第1の基材の前記少なくとも一方の表面が紫外線架橋性粘着シートと接触して、紫外線架橋性粘着シートが段差または隆起に追従している、積層体が提供される。
【0010】
また、本開示の別の実施態様によれば、少なくとも一方の表面に段差または隆起を有する第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材の間に配置された、上記紫外線架橋性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、紫外線架橋性粘着シートを第1の基材に前記少なくとも一方の表面側で隣接させて配置する工程と、第2の基材を紫外線架橋性粘着シートと隣接させて配置する工程と、紫外線架橋性粘着シートを加熱および/または加圧して段差または隆起に追従させる工程と、紫外線架橋性粘着シートに紫外線を照射する工程と、を含む、積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の紫外線架橋性粘着シートは、一例として、画像表示モジュールまたは光学部材(例えば液晶パネル、タッチパネルなど)と、表面保護層(例えば、樹脂フィルム、ガラスなど)とを貼り合せるために使用できる。画像表示モジュールもしくは光学部材、および/または表面保護層の表面が、印刷段差や種々の加工処理により平坦でない場合、そのような表面に粘着シートを追従させるために、従来の粘着シートではその厚さを通常例えば段差の高さの10倍程度(例えば、高さ10〜20μmの段差に対して100〜175μmの厚さ)とする必要があった。本開示の粘着シートは、紫外線架橋前の段階での加熱および/または加圧により、その厚さが段差または隆起の高さと同等程度(例えば、20〜30μm)であっても、十分にその段差または隆起に追従することができ、その結果、段差または隆起近傍に空隙などが生じず、段差または隆起近傍での粘着シートの内部残留応力も不要に高くなることがない。そして、粘着シートを被着体に貼り合わせた後に紫外線架橋を行うことにより、信頼性の高い接着が実現可能となる。これにより、被着体を含む積層体の厚みを薄く抑えることができると共に、空隙や液晶の色ムラなどの欠陥がない貼り合わせが可能となる。本開示によれば、例えば、画像表示装置の小型化・薄型化、あるいはタッチパネルの感度向上が達成できる。
【0012】
また、一般に、高分子量の熱可塑性ベースポリマーと低分子量の架橋性成分との混合物からなる、従来の紫外線架橋性ホットメルト粘着剤から形成される粘着シートにおいては、架橋性成分のブリードアウトや微視的または巨視的な相分離が生じることにより、粘着シートの透明性が減少する場合がある。本開示の紫外線架橋性粘着シートに含まれる(メタ)アクリル共重合体は、それ自体で紫外線架橋を行うことができる。すなわち、架橋性成分、例えば多官能性モノマーまたはオリゴマーを粘着シートにさらに添加する必要がないことから、架橋性成分に起因する透明性の減少といった上記問題を回避できる。そのため、本開示の粘着シートは高い透明性を有しており、優れた光学特性が要求される用途に有用である。
【0013】
また、本開示の紫外線架橋性粘着シートは、液状接着剤よりも取り扱いが容易であり、紫外線架橋後に接着力を高める設計となっているので、紫外線照射前の所望の段階で、仮止め、再位置合せなどを行うことが容易である。そのため、例えば大型の被着体(例えば大型液晶モジュール)への表面保護層の貼り合わせに有利に使用できる。
【0014】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様および本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示による紫外線架橋性粘着シートを含む画像表示装置の一実施態様の断面図を示す。
【図2】本開示による紫外線架橋性粘着シートを含むタッチパネルユニットの一実施態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0017】
本明細書で使用する用語「紫外線架橋性部位」とは、紫外線照射により活性化され、(メタ)アクリル共重合体分子内の他の部分または他の(メタ)アクリル共重合体分子との間で架橋を形成することが可能な部位を指す。
【0018】
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0019】
「貯蔵弾性率」とは、−60℃〜200℃の温度範囲において、5℃/分の昇温速度および1Hzの剪断モードで粘弾性測定を行ったときの、指定した温度における貯蔵弾性率を意味する。
【0020】
「親水性モノマー」とは、水との親和性が良好であり、具体的には、20℃の水100グラムに対して5グラム以上溶解するモノマーを意味する。
【0021】
本開示の一実施態様の紫外線架橋性粘着シートは、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含む。紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率は、30℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以上、約1.0×106Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以下であり、さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率は、130℃、1Hzにおいて、約1.0×103Pa以上である。
【0022】
本開示の粘着シートは、紫外性架橋前の段階で上記粘弾性特性を有するため、通常の作業温度で粘着シートを被着体に貼り合わせた後、加熱および/または加圧することにより、粘着シートを被着体例えば表面保護層の表面にある段差や隆起などに追従させることができる。その後、紫外線架橋を行うことにより粘着シートの凝集力が高まり、その結果、粘着シートが上記粘弾性特性を有するため、信頼性の高い接着が実現可能となる。
【0023】
また、粘着シートに含まれる(メタ)アクリル共重合体はそれ自体で紫外線架橋を行うことができるため、一般に低分子量の架橋性成分、例えば多官能性モノマーまたはオリゴマーを粘着シートにさらに添加する必要がない。一般に、高分子量の熱可塑性ベースポリマーと低分子量の架橋性成分との混合物からなる、従来の紫外線架橋性ホットメルト粘着剤から形成される粘着シートにおいては、架橋性成分のブリードアウトや微視的または巨視的な相分離が生じることにより、粘着シートの透明性が減少する場合があるが、本開示の粘着シートは架橋性成分に起因するそのような問題を回避できるため、高い透明性を有している。このことは、画像表示装置、タッチパネルなどの、優れた光学特性が要求される用途において特に有利である。
【0024】
紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、上記定義したとおり、紫外線照射により活性化されて、(メタ)アクリル共重合体分子内の他の部分との架橋を形成するか、他の(メタ)アクリル共重合体分子との間で架橋を形成することが可能な部位を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステルが使用できる。紫外線架橋性部位として作用する構造は様々である。例えば、紫外線架橋性部位として、紫外線照射により励起されて、(メタ)アクリル共重合体分子内の他の部分または他の(メタ)アクリル共重合体分子から水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を採用することができる。そのような構造には、例えば、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o−ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3−ケトクマリン構造、2−エチルアントラキノン構造、カンファーキノン構造などが含まれる。上記構造のいずれも、紫外線照射により励起することができ、その励起状態において(メタ)アクリル共重合体分子から水素ラジカルを引き抜くことができる。このようにして(メタ)アクリル共重合体上にラジカルが生成し、生成したラジカル同士の結合による架橋構造の形成、酸素分子との反応によるパーオキシドラジカルの生成および生成したパーオキシドラジカルを介した架橋構造の形成、生成したラジカルによる別の水素ラジカルの引き抜きなど、様々な反応が系中で起こり、最終的に(メタ)アクリル共重合体が架橋される。
【0025】
上記構造の中でも、透明性、反応性などの点でベンゾフェノン構造が有利である。そのようなベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0026】
紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルの量は、モノマーの合計質量を基準として、一般に約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、または約0.3質量%以上であり、約2質量%以下、約1質量%以下、または約0.5質量%以下である。紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルの量を、モノマーの合計質量を基準として約0.1質量%以上とすることで、紫外線架橋後の粘着シートの接着力を高めて、信頼性の高い接着を達成することができ、約2質量%以下とすることで、紫外線架橋後の粘着シートの弾性率を適切な範囲とすることができる。
【0027】
一般に、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーには、粘着シートに好適な粘弾性を与えて被着体に対する濡れ性を良好にする目的で、アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、アルキル基の炭素数が2〜12の非第三級アルキルアルコールの(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、以下に限定されないが、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、およびこれらの混合物などが挙げられる。エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、およびこれらの混合物が好適に使用される。
【0028】
アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量は、モノマーの合計質量を基準として、一般に約60質量%以上、約70質量%以上、または約80%以上であり、約95質量%以下、約92質量%以下、または約90質量%以下である。アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量を、モノマーの合計質量を基準として約95質量%以下とすることにより、粘着シートの接着力を十分に確保することができ、約60質量%以上とすることにより、粘着シートの弾性率を適切な範囲として、被着体に対する粘着シートの濡れ性を良好なものとすることができる。
【0029】
また、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーに親水性モノマーが含まれてもよい。親水性モノマーを用いることにより、粘着シートの接着力を向上させる、および/または粘着シートに親水性を付与することができる。親水性が付与された粘着シートを、例えば画像表示装置に使用した場合、粘着シートは画像表示装置内部の水蒸気を吸収できるため、そのような水蒸気が結露することによる白化を抑制できる。このことは、表面保護層が、ガラス板、無機蒸着フィルムなど透湿性の低い材料である場合、および/または粘着シートを用いた画像表示装置などが高温多湿環境下で使用される場合に特に有利である。
【0030】
そのような親水性モノマーとして、例えば、カルボン酸、スルホン酸などの酸性基を有するエチレン性不飽和モノマー、ビニルアミド、N−ビニルラクタム、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、以下に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル共重合体の弾性率を調整して、被着体に対する濡れ性を確保するという観点から、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基およびこれらの複数の組合せが連結した基を含む(メタ)アクリレート、アルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物などを、親水性モノマーとして使用することもできる。具体的には、以下に限定されないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、式:
CH2=C(R)COO−(AO)p−(BO)q−R’・・・(1)
(式(1)中、Aは、それぞれ独立して、(CH2rCO、CH2CH2、CH2CH(CH3)、およびCH2CH2CH2CH2からなる群から選ばれる基であり、Bは、それぞれ独立して、(CH2rCO、CO(CH2r、CH2CH2、CH2CH(CH3)、およびCH2CH2CH2CH2からなる群から選ばれる基であり、Rは水素またはCH3であり、R’は、水素、または置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアリール基であり、p、q、rはそれぞれ1以上の整数である。)で表される(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
式(1)中、Aは、得られる粘着シートの透湿性制御および工業的入手容易性という観点から、CH2CH2またはCH2CH(CH3)であることが好ましい。また、Bは、Aと同様、得られる粘着シートの透湿性制御および工業的入手容易性という観点から、CH2CH2またはCH2CH(CH3)であることが好ましい。光重合によってモノマーを共重合させる場合には、重合性の点から、RはHであることが好ましい。R’がアルキル基である場合、かかるアルキル基は直鎖、分岐鎖、環状のいずれであってもよい。ある態様においては、R’として、アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの相溶性に優れる、炭素数1〜12または1〜8のアルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基)が使用される。p、q、rの上限については特に制限はないが、pは10以下、qは10以下、rは5以下、とすることにより、アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの相溶性をより向上させることができる。
【0033】
また、アミノ基などの塩基性基を有する親水性モノマーを使用することもできる。塩基性を有する親水性モノマーを含むモノマーから得られる(メタ)アクリル共重合体を、酸性基を有する親水性モノマーを含むモノマーから得られる(メタ)アクリル共重合体とブレンドすることにより、塗工溶液の粘度を増加させることにより塗布厚を増やすこと、接着力をコントロールすること、などが可能となる。なお、塩基性基を有する親水性モノマーを含むモノマーから得られる(メタ)アクリル共重合体に、紫外線架橋性部位が含まれない場合であっても、上記ブレンドによる効果を得ることができ、そのような(メタ)アクリル共重合体は他の(メタ)アクリル共重合体の紫外線架橋性部位を介して架橋しうる。具体的として、以下に限定されないが、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0034】
上記親水性モノマーは、1種または複数組み合わせて使用することができる。親水性モノマーを使用する場合、親水性モノマーの量は、モノマーの合計質量を基準として、一般に約5質量%以上、約40質量%以下であり、約10質量%以上、約30質量%以下とすることが、上述した白化をより効果的に抑制すると共に、高い柔軟性および接着力を得ることが可能となる。
【0035】
(メタ)アクリル共重合体に使用されるモノマーとして、粘着シートの特性を損なわない範囲で、他のモノマーが含まれていてもよい。例えば、上記以外の(メタ)アクリル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレンなどのビニルモノマーが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル共重合体は、上記モノマーを重合開始剤の存在下で重合することにより形成することができる。重合方法としては、特に制限はなく、上記モノマーを、通常のラジカル重合法、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合などにより重合すればよい。紫外線架橋性部位が反応しないように、一般には熱重合開始剤によるラジカル重合が使用される。熱重合開始剤の例として、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物などが挙げられる。こうして得られる(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、一般に、約30,000以上、約50,000以上、または約100,000以上であり、約1,000,000以下、約500,000以下、約300,000以下であり、ガラス転移温度Tgは、一般に約0℃以下、または約10℃以下である。
【0037】
粘着シートは、上記(メタ)アクリル共重合体以外に、光開始剤であるジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)をさらに含んでもよい。TPOを粘着シートに添加することにより、紫外線架橋に必要な紫外線照射量を減らすことができる。このことにより、例えばタクトタイムの短縮化、省エネルギー化が可能となり、被着体の貼り合わせ工程をより効率的にすることができる。TPOの添加は、被着体に紫外線吸収剤が含まれており、その被着体を通して粘着シートに紫外線を照射する場合に、特に有利である。
【0038】
いかなる理論に拘束されるわけではないが、TPOの作用機構は、例えば紫外線架橋性部位としてベンゾフェノン構造を使用する場合、以下のようなものであると考えられている。ベンゾフェノン構造はUV−A(波長315−380nm)ではほとんど励起せず、UV−B(波長280−315nm)やUV−C(波長200−280nm)を照射する必要がある。一方、TPOの励起波長は可視光領域にまで達しており、励起したTPOは直ちに開裂してラジカルを生成する。そして、生じたラジカルが、ベンゾフェノン構造または(メタ)アクリル共重合体の他の部分でのラジカル生成に関与して、結果的に(メタ)アクリル共重合体の架橋を促進する。そのため、TPOを粘着シートに添加すると、ベンゾフェノン構造で利用されない波長の紫外線を有効に利用できる。
【0039】
粘着シートは、上記(メタ)アクリル共重合体以外に、フィラー、酸化防止剤などの追加成分を含んでもよい。しかしながら、上記(メタ)アクリル共重合体はそれ自体で粘着シートとして使用するのに必要な特性を有しているため、上記追加成分を添加しなかった場合、(メタ)アクリル共重合体以外の成分のブリードによる汚染や、粘着シートの特性の変化が生じないという利点がある。
【0040】
紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率は、30℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以上、約1.0×106Pa以下である。30℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約5.0×104Pa以上であることにより、粘着シートは、加工性、取り扱い性、形状維持などに必要な凝集力を保持することができる。また、30℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約1.0×106Pa以下であることにより、粘着シートの貼り付けに必要な初期粘着性(タック)を粘着シートに付与することができる。
【0041】
また、紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率は、80℃、1Hzにおいて、約5.0×104Pa以下である。80℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約5.0×104Pa以下であることにより、加熱された粘着シートが、所定の時間内(例えば数秒〜数分)に段差や隆起などに追従して、それらの近傍に空隙が形成されないように流動することができる。
【0042】
さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率は、130℃、1Hzにおいて、約1.0×103Pa以上である。130℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約1.0×103Pa以上であることにより、紫外線架橋後の粘着シートが流動することを抑制して、長期信頼性のある接着を実現することができる。
【0043】
粘着シートの貯蔵弾性率は、粘着シートに含まれる(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの種類、分子量、および配合比、ならびに(メタ)アクリル共重合体の重合度を適宜変更することによって調整することができる。例えば、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いると貯蔵弾性率が高くなり、アルキル基の炭素数が2〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量、あるいはアルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基およびこれらの複数の組合せが連結した基を含む(メタ)アクリレート、またはアルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレートの量を多くすると貯蔵弾性率が低くなる。また、(メタ)アクリル共重合体の重合度を高くすると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。
【0044】
粘着シートの厚さは、用途に応じて適宜決定することができ、例えば、約5μm〜約1mmとすることができる。粘着シートの厚さを決定する基準の一つとして、被着体の表面にある段差または隆起の高さが挙げられる。上述したように、本開示によれば、粘着シートの厚さを段差または隆起の高さと同等程度に薄くすることができる。被着体が実質的に平面である一実施態様において、被着体表面の段差または隆起の高さを、被着体に適用された粘着シートの広がり平面に対して垂直方向(粘着シートの厚さ方向)に沿って決定した場合、粘着シートの厚さを段差または隆起の最大高さの約0.8倍以上、約1倍以上、または約1.2倍以上、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下とすることができる。このような厚さとすることにより、被着体を含む積層体の厚みを薄く抑えることができ、例えば、画像表示装置の小型化・薄型化、あるいはタッチパネルの感度向上が達成できる。
【0045】
粘着シートは、溶液キャスト、押出加工など従来知られた方法を使用して、(メタ)アクリル共重合体単体、または(メタ)アクリル共重合体と任意成分(TPOおよびその他の追加成分)の混合物から形成できる。また、粘着シートはその片面または両面に、シリコーン処理したポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムなどの剥離フィルムを備えていてもよい。
【0046】
本開示の別の実施態様は、少なくとも一方の表面に段差または隆起を有する第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材の間に配置された、上述の紫外線架橋性粘着シートと、を含む積層体であって、第1の基材の前記少なくとも一方の表面が紫外線架橋性粘着シートと接触している、積層体である。この積層体においては、粘着シートが第1の基材の段差または隆起を有する表面に接触して段差または隆起に追従しているため、段差または隆起の近傍は粘着シートで満たされ、段差または隆起の近傍に空隙が形成されていない。
【0047】
このような積層体は、紫外線架橋性粘着シートを、第1の基材に段差または隆起を有する表面側で隣接させて配置する工程と、第2の基材を紫外線架橋性粘着シートと隣接させて配置する工程と、紫外線架橋性粘着シートを加熱および/または加圧して段差または隆起に追従させる工程と、紫外線架橋性粘着シートに紫外線を照射する工程と、を含む、方法によって製造することができる。これらの工程は様々な順序で行うことができる。
【0048】
一実施態様では、最初に、粘着シートを第1の基材に段差または隆起を有する表面側で隣接させて配置し、第2の基材を粘着シートと隣接させて配置する。すなわち粘着シートに段差または隆起を有する表面が向くようにして、第1の基材と第2の基材で粘着シートを挟む。次に、粘着シートを加熱および/または加圧して、粘着シートを段差または隆起に追従させる。その後、第1の基材側および/または第2の基材側から、これらの基材を通して粘着シートに紫外線を照射することにより、粘着シートを架橋する。このようにして、第1の基材の段差または隆起の近傍に空隙を形成することなく、第1の基材と第2の基材を接着することができる。この実施態様では、第1の基材と第2の基材を粘着シートに隣接させてから粘着シートを加熱および/または加圧するため、第2の基材の被着表面に段差や隆起がある場合、例えば画像表示モジュールに取り付けられた偏光板上に粘着シートを適用する場合に、第2の基材の段差や隆起にも粘着シートを追従させて、それらの形状近傍においても空隙の形成を防止することができる。
【0049】
上記実施態様では、第1の基材および第2の基材の少なくとも一方が、それらを通して粘着シートの架橋に必要な紫外線を照射できるように、少なくとも部分的に透明である。第1の基材の段差または隆起の部分が紫外線を透過しない場合、第1の基材側から紫外線を照射すると、その段差または隆起の部分の直下には紫外線が照射されないが、照射された部分で発生したラジカルの移動などにより非照射部分においても粘着シートの架橋がある程度進行する。このような場合、第2の基材がタッチパネルなどのような透明基材であれば、第2の基材側から紫外線を照射することにより、段差または隆起の部分に対応する粘着シートの部分にも紫外線を照射することができ、より均一に粘着シートを架橋することができる。
【0050】
別の実施態様では、粘着シートを第1の基材に段差または隆起を有する表面側で隣接させて配置した後、粘着シートを加熱および/または加圧して、粘着シートを段差または隆起に追従させる。その後、粘着シートの開放面に紫外線を照射して、粘着シートを架橋した後、第2の基材を粘着シートに隣接させて配置して、第2の基材を粘着シートに貼り付ける。剥離フィルムが透明であれば、剥離フィルムを通して粘着シートに紫外線を照射することもできる。この実施態様では、粘着シート全面に紫外線を照射することができるため、より均一に粘着シートを架橋することができる。第1の基材が、粘着シートの架橋に必要な紫外線を照射できるように少なくとも部分的に透明であれば、第1の基材側から紫外線を照射することもできる。このようにして、第1の基材の段差または隆起の近傍に空隙を形成することなく、第1の基材と第2の基材を接着することができる。
【0051】
上記加熱工程は、対流式オーブン、ホットプレート、ヒートラミネーター、オートクレーブなどを用いて行うことができる。粘着シートの流動を促進して、より効率的に粘着シートを段差または隆起に追従させるために、ヒートラミネーター、オートクレーブなどを用いて、加熱と同時に加圧することが好ましい。オートクレーブを用いた加圧は、粘着シートの脱泡に特に有利である。粘着シートの加熱温度は、粘着シートが軟化または流動して段差または隆起に十分に追従する温度であればよく、一般に約30℃以上、約40℃以上、または約60℃以上とすることができ、約150℃以下、約120℃以下、または約100℃以下とすることができる。粘着シートを加圧する場合、与える圧力は、一般に約0.05MPa以上、または約0.1MPa以上、約2MPa以下、または約1MPa以下とすることができる。
【0052】
上記紫外線照射工程は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプなどを光源として用いる、一般的な紫外線照射装置、例えばベルトコンベア式の紫外線照射装置を用いて行うことができる。紫外線照射量は、一般に、約1000mJ/cm2〜約5000mJ/cm2である。
【0053】
例示を目的として、第1の基材が段差を表面に有する表面保護層であり、第2の基材が画像表示モジュールまたはタッチパネルである実施態様について、図1および2を参照しながら説明する。
【0054】
表面保護層は、画像表示モジュールまたはタッチパネルの最表面に配置されて、これらを外部から保護する。表面保護層は、画像表示モジュールまたはタッチパネルの保護材料として従来から使用されているものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、またはガラス板であることができる。フィルムまたはガラス板の厚さは、以下に限定されないが、一般に約0.1mm〜約5mmである。
【0055】
表面保護層の、画像表示モジュールの観測者側またはタッチパネルの使用者側には、耐磨耗性、耐擦傷性、防汚性、反射防止性、帯電防止性などの機能・特性を付与するための層を設けることができる。耐磨耗性および耐擦傷性を付与するための層は、ハードコートを形成可能な硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させることで形成できる。例えば、アルキルトリアルコキシシランを主成分とするシラン混合物の部分縮合反応物とコロイダルシリカからなる塗料を塗布し、次いでこれを加熱硬化することで硬化被膜を形成することにより、または多官能アクリレートを主成分とした塗料を塗布し、塗膜に紫外線照射することにより、硬化被膜を形成することができる。また、防汚性を確保するためには、有機ケイ素化合物やフッ素系化合物を含む樹脂層を形成することができる。さらに、帯電防止性を得るためには、界面活性剤や導電性微粒子を含む樹脂層を形成することができる。このような機能・特性を付与するための層は、表面保護層の透明性を阻害しないものが望ましく、また、機能を発揮できる範囲でできるだけ薄い方がよい。機能・特性を付与する層は、以下に限定されないが、一般に約0.05μm〜約10μmである。
【0056】
ここで説明する実施態様では、表面保護層の、粘着シートと隣接する表面の一部の領域上に、印刷層、蒸着層などの追加の層が付与されて、表面保護層の当該表面に段差を形成している。印刷層または蒸着層は、例えば、画像表示モジュールの外周縁部に枠状に形成されて、その部分を見えなくする光遮蔽層として機能する。そのような光遮蔽層として用いる印刷層または蒸着層の厚さは、光遮蔽効果の高い黒色であれば約10μm〜約20μm以下であり、白色など光を透過しやすい色であれば約40μm〜約50μmとするのが一般的である。
【0057】
画像表示モジュールとして、以下に限定されないが、反射型またはバックライト型の液晶表示ユニット、プラズマディスプレイユニット、エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ、電子ペーパーなどの画像表示モジュールなどが挙げられる。画像表示モジュールの表示面には、追加の層(一層であっても多層であってもよい)、例えば、偏光板(凹凸形状表面を有している場合もある)を設けることができる。また、後述するようなタッチパネルが、画像表示モジュールの表示面に存在していてもよい。
【0058】
タッチパネルとは、透明で薄膜形状のデバイスであり、使用者が指やペンでタッチパネル上のある位置を触れるか押圧したときに、その位置を検出し特定することができる。位置検出方式として、タッチパネルに加わる圧力により動作する抵抗膜方式、指先とタッチパネルとの間での静電容量変化を検出する静電容量方式などが一般的である。タッチパネルは、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどの画像表示装置の上に搭載され、ATM、PC(パソコン)、携帯電話、PDAなどの携帯端末において使用されている。
【0059】
図1は、粘着シートを含む画像表示装置の一実施態様の断面図を示す。画像表示装置10は、画像表示モジュール1の表示面上に、粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。表面保護層4は、連続層5、および連続層5の下面(粘着シート3側)の一部領域に設けられた光遮蔽層6から構成され、表面に段差が形成されている。なお、光遮蔽層6は硬化性樹脂組成物の塗布溶液に、着色剤を混入させた液を、スクリーン印刷などの適切な方法で連続層5の所定の領域に塗布し、紫外線照射などの適切な硬化方法で硬化させることで形成される。粘着シート3は、表面保護層4の段差を有する表面に貼付されている。粘着シート3は、紫外線照射前の加熱および/または加圧により、光遮蔽層6によって生じた段差に十分に追従しているため、段差近傍に空隙はない。また、粘着シートの内部残留応力が緩和されているため、画像表示装置における表示ムラを防止することができる。画像表示装置10は、例えば、表面保護層4および粘着シート3からなる積層体2を画像表示モジュール1の表示面に貼り合せることで得られる。
【0060】
図2は、粘着シートを含むタッチパネルユニットの一実施態様の断面図である。タッチパネルユニット20は、タッチパネル7の上に、粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された積層体2の構造は、図1に記載されているものと同様である。粘着シート3は、紫外線照射前の加熱および/または加圧により、光遮蔽層6によって生じた段差に十分に追従しているため、段差近傍に空隙はない。タッチパネルユニット20は、例えば、表面保護層4および粘着シート3からなる積層体2をタッチパネル7に貼り合せることで得られる。また、タッチパネル7の下側に、表示面を上側に有する画像表示モジュール(不図示)を、直接または別の粘着シートを介して取り付けることもできる。
【0061】
本開示のさらに別の態様によれば、上記画像表示モジュールを含む電子装置が提供される。そのような電子装置として、以下に限られないが、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機、電子読書端末、カーナビゲーションシステム、携帯音楽プレーヤー、時計、テレビジョン(TV)、ビデオカメラ、ビデオプレーヤー、デジタルカメラ、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)装置、パーソナルコンピュータ(PC)が挙げられる。
【実施例】
【0062】
<モノマーおよび開始剤の略称>
EA:エチルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
IOA:イソオクチルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
ABP:4−アクリロイルオキシベンゾフェノン
AEBP:4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン
V−190:エトキシエトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業製)
NVC:N−ビニルカプロラクトン
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
Darocur(登録商標)TPO:光重合開始剤(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、チバ・ジャパン製)
V−65:アゾ重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業製)
Irgacure(登録商標)651:光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、チバ・ジャパン製)
【0063】
<粘着シートの作製>
例1
紫外線架橋性部位を有するアクリル酸エステルを含むモノマーのアクリル共重合体を合成した。紫外線架橋性部位を有するアクリル酸エステルとして、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン(ABP)を使用した。2EHA/AA/ABP=87.5/12.5/0.35(質量部)となるように調製し、モノマー濃度が40質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)で稀釈した。開始剤として、V−65をモノマー成分に対して0.4質量%となるように加えて、10分間窒素パージした。続いて、50℃の恒温槽で24時間反応させたところ、透明な粘稠溶液が得られた。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は、160,000であった。(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算に基づく。)
【0064】
次に、この重合溶液を、50μmの厚みの剥離フィルム(東レフィルム加工社製セラピールMIB(T)の重剥離面)上にナイフコーターのギャップを120μmに調整して塗布し、100℃のオーブンで8分間乾燥させた。乾燥後の粘着剤の厚みは、30μmであった。続いて、この粘着面に、38μmの厚みの剥離フィルム(帝人デュポン社製ピューレックス(登録商標)A−31)をラミネートし、転写型粘着シートを得た。
【0065】
例2
アクリル共重合体を、2EHA/AA/AEBP=87.5/12.5/0.35(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は、170,000であった。(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算に基づく。)
【0066】
例3
アクリル共重合体を、2EHA/AA/AEBP=90.0/10.0/0.35(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0067】
例4
アクリル共重合体を、2EHA/IBXA/AA/AEBP=77.5/10.0/12.5/0.35(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0068】
例5
アクリル共重合体を、2EHA/IBXA/AA/AEBP=67.5/20.0/12.5/0.35(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0069】
例6
この例では、酸性基を有する共重合体と塩基性基を有する共重合体のブレンドを用いて、転写型粘着シートを作製した。酸性基を有する共重合体および塩基性基を有する共重合体は、両方とも紫外線架橋性部位を分子中に含んでいた。酸性基を有する共重合体については、2EHA/AA/AEBP=87.5/12.5/0.35(質量部)として、例1と同様に反応を行って透明で粘稠な重合溶液Aを得た。塩基性基を有する共重合体については、2EHA/DMAEMA/AEBP=95.0/5.0/0.35(質量部)として、例1と同様に反応を行って透明で粘稠な重合溶液Bを得た。
【0070】
得られた重合溶液Aと重合溶液Bを、重合溶液A中の共重合体/重合溶液B中の共重合体=100/10(質量比)となるように混合し、その混合溶液を例1の重合溶液の代わりに用いた以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0071】
例7
塩基性基を有する共重合体については、MMA/nBMA/DMAEMA=69.0/25.0/6.0(質量部)とした以外は例6と同様に実施して重合溶液Bを得て、例6の重合溶液Aと得られた重合溶液Bを、重合溶液A/重合溶液B=100/5(質量比)で混合した以外は例6と同様に実施して、転写型粘着シートを得た。この例では、酸性基を有する共重合体のみが紫外線架橋性部位を分子中に含んでいた。
【0072】
例8
アクリル共重合体を、BA/IBXA/HEA/AEBP=50.0/25.0/25.0/0.20(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0073】
例9
アクリル共重合体を、BA/IBXA/V−190/AA/AEBP=60.0/14.0/15.0/6.0/0.20(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0074】
例10
アクリル共重合体を、IOA/EA/AA/AEBP=72.5/15.0/12.5/0.35(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0075】
例11
例2の重合溶液にアクリル共重合体を基準にして0.10質量%のDarocur(登録商標)TPOを添加した以外は、例2と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0076】
比較例1
例7で使用した重合溶液Aと重合溶液Bを、重合溶液A/重合溶液B=100/15(質量比)で混合した以外は例7と同様に実施して、転写型粘着シートを得た。
【0077】
比較例2
アクリル共重合体を、BA/IBXA/V−190/AA/AEBP=60.0/14.0/15.0/6.0/0.10(質量部)として調製した以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。
【0078】
比較例3
紫外線架橋型ポリマーとして、BASFジャパン社製acResin A204UVを使用した。このポリマーは、光架橋成分としてベンゾフェノン基を有し、ブチルアクリレートと2エチルヘキシルアクリレートを主成分としたアクリル系ポリマーである。このポリマーを、メチルエチルケトンを用いて40質量%となるようにポリマー溶液を調製し、例1と同様の方法で塗布して、転写型粘着シートを得た。
【0079】
比較例4
2EHA/AA=87.5/12.5(質量部)となるように調製した混合液をガラス容器に入れた。次に、開始剤として、Irgacure(登録商標)651をモノマー成分に対して0.04質量%となるように加えて混合し、窒素ガスを用いて混合物中の溶存酸素を置換した。続いて、低圧水銀ランプで数分間紫外線を照射して、混合物を部分的に重合させ、粘度1500mPa・s程度の粘性液体を得た。得られた粘性液体100質量部に、架橋剤としてHDDA 0.10質量部を混合し、Irgacure(登録商標)651を混合物に対して0.1質量%となるように追加して、十分に攪拌した。得られた混合物を真空脱泡した後、50μmの厚みの剥離フィルム(東レフィルム加工社製セラピールMIB(T)の重剥離面)上に175μm厚になるよう塗工し、重合を阻害する酸素を遮蔽するためにさらに38μmの厚みの剥離フィルム(帝人デュポン社製ピューレックス(登録商標)A−31)を塗工面に被せ、両面から低圧水銀ランプで約4分間照射して転写型粘着シートを得た。この粘着シートは、紫外線重合法により得られたアクリル系粘着シートであり、既に架橋されている。
【0080】
比較例5
2EHA/AA=87.5/12.5(質量部)として、例1と同様に反応を行ってアクリル共重合体溶液を得た。次に、この溶液に1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)を、共重合体固形分に対して0.1質量%添加して混合し、その混合溶液を例1の重合溶液の代わりに用いた以外は例1と同様に実施し、転写型粘着シートを得た。この粘着シートは、溶液重合法により得られたアクリル系粘着シートであり、既に架橋されている。
【0081】
<粘弾性測定>
例1〜11および比較例1〜3の転写型粘着シートの粘弾性測定を行った。粘弾性測定はティ・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置ARESを用いて剪断モード(1Hz)にて行った。剥離フィルムを除去した粘着シートを積層して約3mm厚となるようにしたものを、8mmφの抜き刃で打ち抜いて試験片とした。−60〜200℃の温度範囲において昇温速度5℃/分で測定を行い、20、30、80、100、120、130℃における貯蔵弾性率を記録した。また、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ、120W/cm、15m/min×20pass)を用いてそれぞれ紫外線照射を行った転写型粘着シートを、同様に約3mm厚となるように積層し、8mmφの抜き刃で打ち抜いて試験片とした。得られた試験片について同様の条件で粘弾性測定を行い、20、30、80、100、120、130℃における貯蔵弾性率を記録した。結果を表1に示す。比較例3では、紫外線照射前の粘着シートの凝集力が低すぎて、粘着シートにダメージを与えずに剥離フィルムを除去することができなかった。そのため、紫外線照射前の貯蔵弾性率を測定できなかった。したがって、比較例3の粘着シートの紫外線照射前の貯蔵弾性率は、いずれの温度条件においても、紫外線照射後の貯蔵弾性率より低いと推定される。
【0082】
例1〜10および比較例1〜5の転写型粘着シートを、以下の手順にしたがって評価した。
【0083】
<粘着シートの段差追従性の評価>
印刷された枠を有する表面保護層として、アクリル樹脂シート(三菱レイヨン社製Acrylite(登録商標)MR−200;45mm×65mm×0.8mm)の片面の外周縁部から約5mm内側まで印刷を施したものを準備した。印刷された枠の段差は約12μmであった。このアクリル樹脂シートの印刷面側に、転写型粘着シートを、軽剥離側の剥離フィルム(例えばA−31)を剥がしてからヒートラミネーターで貼り合せた。このときのロール温度は80℃、ロール圧は0.15MPaであった。続いて、残りの剥離フィルム(例えばMIB)を剥がし、この上からフロートガラス(50mm×80mm×0.55mm)を上記と同様の条件にてヒートラミネーターで貼り合せた。貼り合せ後の状態を目視で観察した結果を表2に示す。
【0084】
例1〜10のいずれにおいても良好な段差追従性が得られた。すなわち、印刷段差の近傍に空隙は生じなかった。一方、比較例1、4、5では、粘着シートが印刷段差に追従せず、印刷段差の近傍に空隙が観察された。比較例1は、30℃での貯蔵弾性率が高いことに起因し初期粘着性(タック)が低すぎたため、貼り合わせ作業が困難であった。比較例3は、紫外線架橋前の凝集力が低すぎるため、紫外線照射なしでは貼り合わせが行えず、評価サンプルが作製できなかった。
【0085】
<信頼性試験>
粘着シートを貼り合わせたサンプルの信頼性評価として、高温高湿下(65℃/90%RH)での性能安定性を評価した。
【0086】
信頼性試験サンプルは、以下の手順で準備した。フロートガラス(50mm×80mm×0.55mm)に粘着剤付き偏光板(サンリッツ製)をゴムローラーで貼り付けた。転写型粘着シートを、軽剥離側の剥離フィルム(例えばA−31)を剥がしてから、アクリル板(三菱レイヨン製Acrylite(登録商標)MR−200;55mm×85mm×1.0mm)に、ヒートラミネーターにて、ロール温度を80℃、ロール圧を0.15MPaとして貼り付けた。残りの剥離フィルムを剥がし、剥き出しとなった粘着面に対して、偏光板側が粘着面に接触するようにして、偏光板/フロートガラス積層体を貼り合せた。得られた「アクリル板/粘着シート/偏光板/ガラス積層体」をヒートラミネーターに通した(ロール温度:80℃、ロールプレス圧:0.15MPa)後に、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ、120W/cm、15m/min×20pass)を用いて紫外線照射を行った。
【0087】
この積層体をサンプルホルダーに立てかけて、65℃/90%RHの恒温恒湿器に入れた。3日後に取り出した積層体の外観を目視で確認した。ガラス板の移動(ずれ)、粘着シート中の発泡、積層体の剥離のいずれも観察されなかったサンプルを合格とした。結果を表2に示す。
【0088】
<落下試験>
落下試験サンプルは、以下の手順で準備した。SUS板(30mm×60mm×6mm)に粘着剤付き偏光板を貼り付けた。次に、偏光板上に、10mm×10mmにカットした転写型粘着シートを貼り付け、残りの剥離フィルムを剥がした。この剥き出しとなった粘着面に対して、アクリル板(三菱レイヨン製Acrylite(登録商標)MR−200;20mm×54mm×1mm)を貼り付け、得られた「SUS板/偏光板/粘着シート/アクリル板」積層体をヒートラミネーターに通した(ロール温度:80℃、ロールプレス圧:0.15MPa)後に、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ、120W/cm、15m/min×20pass)を用いて紫外線照射を行った。
【0089】
以下の方法で落下試験を行った。同一サンプルを、落下試験機(神栄テクノロジー(株)製DT−202)を用いて、25cmの高さから5回、50cmの高さから5回、100cmの高さから5回、150cmの高さから5回、200cmの高さから5回の順序で、繰り返し落下させた。サンプルに剥離が見られた時点で落下試験を終了した。200cmの高さから5回落下させた後でも剥離が見られなかったサンプルを合格とし、それ以外のサンプルを不合格とした。結果を表2に示す。
【0090】
例2と例11の転写型粘着シートを用いて、Darocur(登録商標)TPOの添加効果を調べた。
【0091】
<粘着シートの段差追従性の評価>
例11の転写型粘着シートについても例1と同様に段差追従性を評価したところ、良好な段差追従性が観察された。結果を表3に示す。
【0092】
<信頼性試験>
粘着シートを貼り合わせたサンプルの信頼性評価として、高温高湿下(65℃/90%RH)での性能安定性を評価した。
【0093】
信頼性試験サンプルは、以下の手順で準備した。例2または例11の転写型粘着シートを、軽剥離側の剥離フィルム(A−31)を剥がしてから、アクリル板(三菱レイヨン製Acrylite(登録商標)MR−200;55mm×85mm×1.0mm)にゴムローラーを用いて貼り付けた。残りの剥離フィルムを剥がして、フロートガラス(50mm×80mm×0.55mm)をゴムローラーで貼り付けた後、ヒートラミネーターに通した(ロール温度:80℃、ロールプレス圧:0.15MPa)。
【0094】
次に、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ、120W/cm)を用いて、ライン速度15m/minで、8、10、12、14、16または18回、積層体のアクリル板側から紫外線照射を行った。ベンゾフェノン基は、UV−BやUV−Cなどの相対的に短波長の紫外線によって活性化されることが知られている。紫外線照射量は、EIT社製光量計UV POWER PUCK(登録商標)IIで測定し、1パス当たりの光量は、UV−B(280−320nm)が111mJ/cm2、UV−C(250−260nm)が19mJ/cm2であった。紫外線照射を行わなかった積層体も用意した。
【0095】
室温にて一晩養生した後、信頼性試験として、この積層体をサンプルホルダーに立てかけて、65℃/90%RHの恒温恒湿器に入れた。3日後に取り出した積層体の外観を目視で観察した。ガラス板の移動(ずれ)、粘着シート中の発泡、積層体の剥離のいずれも観察されなかったサンプルを合格とした。結果を表3に示す。
【0096】
紫外線照射を行わない場合、高温高湿環境下に曝すと、Darocur(登録商標)TPOの添加・無添加に関わらず粘着シートの凝集力が乏しいために、貼り合わせたガラスが自重で滑り落ちていた。紫外線照射を行った場合、一定の照射量に達するまでは粘着シートの剥がれが観察された。例2(Darocur(登録商標)TPO未添加)では、14回以上の紫外線照射を行うと信頼性試験に合格した。これに対し、例11(Darocur(登録商標)TPO添加)では、10回の紫外線照射を行えば信頼性試験に合格することが確認できた。すなわち、粘着シートにDarocur(登録商標)TPOを添加することにより、約28%のUVエネルギーを削減できた。
【0097】
<落下試験>
落下試験サンプルは、以下の手順で準備した。SUS板(30mm×60mm×6mm)に粘着剤付き偏光板を貼り付けた。次に、偏光板上に、10mm×10mmにカットした例2または例11の転写型粘着シートを貼り付け、残りの剥離フィルムを剥がした。この剥き出しとなった粘着面にアクリル板(三菱レイヨン製Acrylite(登録商標)MR−200;20mm×54mm×1mm)を貼り付けた。得られた「SUS板/偏光板/粘着シート/アクリル板」積層体をヒートラミネーターに通した(ロール温度:80℃、ロールプレス圧:0.15MPa)。次に、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300を用いて、積層体のアクリル板側から紫外線照射を行った(H−バルブ、120W/cm、15m/min×16pass)。
【0098】
以下の方法で落下試験を行った。同一サンプルを、落下試験機(神栄テクノロジー(株)製DT−202)を用いて、25cmの高さから5回、50cmの高さから5回、100cmの高さから5回、150cmの高さから5回、200cmの高さから5回の順序で、繰り返し落下させた。サンプルに剥離が見られた時点で落下試験を終了した。200cmの高さから5回落下させた後でも剥離が見られなかったサンプルを合格とし、それ以外のサンプルを不合格とした。結果を表3に示す。
【0099】
上記結果で示されるように、粘着シートにDarocur(登録商標)TPOを添加することにより、他の性能に影響を及ぼすことなく、架橋に必要な紫外線照射量のみを削減できる。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【符号の説明】
【0103】
10 画像表示装置
20 タッチパネルユニット
1 画像表示モジュール
2 積層体
3 粘着シート
4 表面保護層
5 連続層
6 光遮蔽層
7 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる、紫外線架橋性粘着シートであって、
紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、5.0×104Pa以上、1.0×106Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×104Pa以下であり、
さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×103Pa以上である、紫外線架橋性粘着シート。
【請求項2】
前記紫外線架橋性部位がベンゾフェノン構造を有する、請求項1に記載の紫外線架橋性粘着シート。
【請求項3】
前記モノマーに親水性モノマーが含まれ、モノマーの合計質量を基準として親水性モノマーが10質量%以上、30質量%以下である、請求項1に記載の紫外線架橋性粘着シート。
【請求項4】
前記紫外線架橋性粘着シートが、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドをさらに含む、請求項1に記載の紫外線架橋性粘着シート。
【請求項5】
少なくとも一方の表面に段差または隆起を有する第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線架橋性粘着シートと、を含む積層体であって、前記第1の基材の前記少なくとも一方の表面が前記紫外線架橋性粘着シートと接触して、前記紫外線架橋性粘着シートが前記段差または隆起に追従している、積層体。
【請求項6】
前記第1の基材が表面保護層であり、前記第2の基材が画像表示モジュールまたはタッチパネルである、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
少なくとも一方の表面に段差または隆起を有する第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線架橋性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、
前記紫外線架橋性粘着シートを前記第1の基材に前記少なくとも一方の表面側で隣接させて配置する工程と、
前記第2の基材を前記紫外線架橋性粘着シートと隣接させて配置する工程と、
前記紫外線架橋性粘着シートを加熱および/または加圧して前記段差または隆起に追従させる工程と、
前記紫外線架橋性粘着シートに紫外線を照射する工程と、
を含む、積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184582(P2011−184582A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51768(P2010−51768)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】