光学異方性素子、偏光板、立体画像表示装置、及び立体画像表示システム
【課題】微細なパターンを有するパターン光学異方性層を有する光学異方性素子を備える立体画像表示装置のクロストークの軽減。
【解決手段】
面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されている光学異方性素子である。
【解決手段】
面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されている光学異方性素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な配向パターンを有する光学異方性素子、それを用いた偏光板、立体画像表示装置、及び立体画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する立体(3D)画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン光学異方性素子が利用されている。
このパターン光学異方性素子の支持体としては、ガラスからなる支持体、及びフィルムからなる支持体の二種類に分類され、ガラスからなる支持体は、フィルムからなる支持体と比較して、製造工程における加熱・冷却時による膨張・収縮、又は経時での温湿度の変化による膨張・収縮が抑制されるという利点があるため多く利用されてきたが、近年、経済的な観点からフィルムからなる支持体を有するパターン光学異方性素子(以下、「FPR」ともいう。)を使用する動きが広がっている。
【0003】
しかし、通常、市販されているフィルムには、レターデーションがある程度あり、光学的に等方性のガラスを支持体として利用する場合には問題にならなかったクロストークが顕著になる。特許文献1には、FPRとして、樹脂フィルムからなる基材フィルム上に、パターニングされた、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域を含む位相差層を有し、これら位相差領域の遅相軸の二等分線と基材フィルムの遅相軸とが平行である位相差素子が提案されている。この位相差素子は、クロストークによって生じるゴーストのアンバランスを解消するものであるが、クロストークの発生を根本的に解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4508280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、微細なパターンを有するパターン光学異方性層を有する光学異方性素子を備える立体画像表示装置のクロストークを軽減することを課題とする。
具体的には、クロストークが軽減された立体画像表示装置、並びにそれに用いられる偏光板、立体画像表示システム、及び光学異方性素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1>面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子。
<2>前記第1のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第2のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である<1>に記載の光学異方性素子。
<3>前記第1のフィルム及び第2のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である<1>又は<2>に記載の光学異方性素子。
<4>前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムのいずれか一方が、MD方向に対して平行方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に対して平行方向に遅相軸を有する<1>〜<3>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<5>前記第1及び第2のフィルムの間には、他の層が配置されていない、又は光学的に等方性の層のみが配置されている<1>〜<4>のいずれかに記載の光学素子。
<6>前記積層体の前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている<1>〜<5>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<7>第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子。
<8>前記第3のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第4のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である<7>に記載の光学異方性素子。
<9>前記第3のフィルム及び第4のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である<7>又は<8>に記載の光学異方性素子。
<10>前記第3のフィルムの前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている<7>〜<9>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<11>偏光膜と、<1>〜<10>のいずれかに記載の光学異方性素子とを少なくとも有する偏光板。
<12>前記光学異方性素子が、<1>〜<6>のいずれかに記載の光学異方性素子であり、前記パターン光学異方性層と前記偏光膜とが貼合されている<11>に記載の偏光板。
<13>前記光学異方性素子が、<7>〜<10>の光学異方性素子であり、前記第4のフィルムと前記偏光板とが貼合されている、<11>に記載の偏光板。
<14>画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される<1>〜<10>のいずれかに記載の光学異方性素子と、を少なくとも有する立体画像表示装置。
<15>前記表示パネルが液晶セルを有する<14>に記載の立体画像表示装置。
<16><14>又は<15>に記載の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細なパターンを有するパターン光学異方性層を有する光学異方性素子を備える立体画像表示装置のクロストークを軽減することができる。
具体的には、クロストークが軽減された立体画像表示装置、並びにそれに用いられる偏光板、立体画像表示システム、及び光学異方性素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図2】第一の実施形態における、外側表面に硬化膜からなる表面層を有する本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図3】第一の実施形態における、表面層がハードコート層及び反射防止層である本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図4】第一の実施形態における、第2のフィルムが塗布により形成された本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図5】第一の実施形態における、MD方向に遅相軸を有するフィルムとTD方向に遅相軸を有するフィルムの関係の一例の概略図である。
【図6】パターンλ/4層の一例の上面模式図である。
【図7】図3に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図である。
【図8】第一の実施形態のおける、偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。
【図9】本発明の第二の実施形態の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図10】第二の実施形態における、外側表面に硬化膜からなる表面層を有する本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図11】第二の実施形態における、表面層がハードコート層及び反射防止層である本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図12】図11に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図である。
【図13】実施例で行った評価方法を説明するために用いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0010】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0012】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0013】
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
また、「MD方向」は、連続生産におけるフィルムの送り出し方向、及び「TD方向」はそれに直交する方向を意味する。
本発明における寸法変動とは、摂氏25度湿度10%の条件と摂氏25度湿度80%の条件間で、寸法が0.2%以上変動することをいう。ここで、寸法変化率とは、下記の通り定義する。
寸法変化率={(摂氏25度湿度80%の条件下での寸法)−(摂氏25度湿度10%の条件下での寸法))/(摂氏25度湿度60%の条件下での寸法)
【0014】
本発明の第一の実施形態の光学異方性素子は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子に関する。
【0015】
支持体として、可撓性のフィルムを用いたFPRは、剛直なガラス板を用いるより、取り扱い性に優れる等、種々の利点があるが、一方で、光学的に等方性のガラス板と異なり、フィルムを完全に光学的に等方性にするのは困難であり、一般的には、ある程度のレターデーションを有する。FPRでは、支持体フィルムのレターデーションの影響により、パターン光学異方性層を通過した光の偏光状態が変化し、クロストークの発生が顕著になるという問題がある。本発明では、支持体として、面内遅相軸を互いに直交にして配置された第1及び第2のフィルムの積層体を利用しているので、第1及び第2のフィルムのレターデーションは互いに打ち消し合い、実質的に0になる。従って、パターン光学異方性層を通過した光の偏光状態は、当該積層体を通過してもなんら変化せず、クロストークの発生を抑制できる。本発明は、クロストークの発生を根本的に解消するものであり、クロストークの発生を前提とし、その左右のアンバランスの軽減を図る従来技術とは、技術思想が異なるものである。
【0016】
2つの位相差フィルムを、面内遅相軸を互いに直交にして配置することで、レターデーションを0にできることは、各方位の位相差を減少させるという考え方で説明することができる。
【0017】
第1及び第2のフィルムは、少なくとも一方は自己支持性のあるフィルムであることが好ましい。双方が自己支持性のあるポリマーフィルムであってもよいし、一方が自己支持性のあるポリマーフィルムであり、他方は塗布、転写等によって、前記ポリマーフィルム上に形成される非自己支持性のフィルムであってもよい。第1及び第2のフィルム間には、他の層は配置されていないか、又は光学的に等方性の層(例えば粘着剤層)のみが配置されているのが好ましい。
【0018】
本発明の光学異方性素子は、立体画像表示装置に用いられる。具体的には、偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学異方性素子の第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の第一の実施形態のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。
【0020】
本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図を図1に示す。図1に示す光学異方性素子は、パターン光学異方性層10を、第1のフィルム12及び第2のフィルム14の積層体上に有する。第1のフィルム12と第2のフィルム14とは、その面内遅相軸を互いに直交にして積層されているので、互いにレターデーションを打ち消し合い、積層体としてのレターデーションは実質的に0になっている。図1に示す例では、第1のフィルム12と第2のフィルム14との間には、これらを一体化する粘着剤層13が配置されているので、積層体全体としてレターデーション0を達成するためには、粘着剤層13は、光学的に等方性の層であるのが好ましい。
【0021】
パターン光学異方性層10の第1及び第2の位相差領域を通過した光は、各領域のレターデーション及び遅相軸の方向によって決定される、所定の偏光にそれぞれ変換され、右眼用及び左眼用の偏光画像が形成される。右眼用及び左眼用の偏光画像は、その後、第1のフィルム12及び第2のフィルム14を通過するが、上記した通り、積層体全体としてのレターデーションは0であるので、各フィルムのレターデーションに影響されずに、右眼用及び左眼用の偏光画像の偏光状態はそのまま維持される。その結果、左右画像のクロストークの発生を抑制することができる。
【0022】
第1のフィルム12及び第2のフィルム14は、それぞれの遅相軸を互いに直交にして積層されていれば、クロストークの軽減効果が得られ、それぞれの方向については、特に制限はない。図5に模式的に示す通り、第1のフィルム12及び第2のフィルム14のうち、一方が、MD方向に遅相軸を有するフィルムであり、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであると、ロールトゥロール法で積層させることができ、簡便に光学異方性素子を製造することができるので好ましい。
【0023】
また、一般的には、フィルムの遅相軸は、延伸処理等によって分子が配列した方向と平行であるか、又は直交する。フィルムは、一般的には分子が配列した方向に直交する方向において寸度変化が生じる傾向がある。従って、第1のフィルム12及び第2のフィルム14として、分子の配列方向と平行な方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、又は分子の配列方向と直交する方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、面内遅相軸を互いに直交にして積層すれば、積層体全体としての寸度変化に伴う光学特性の変動を軽減でき、さらにはそれに起因したクロストークをより軽減できる。
【0024】
第1のフィルム12及び第2のフィルム14のRe(550)の差は、より小さいほうが好ましく、具体的には、8nm以下であることが好ましく、理想的には0nmである。第1のフィルム12及び第2のフィルム14それぞれのRe(550)についても、より小さいほうが好ましい。具体的には、20nm以下である。但し、フィルムの製造困難性の観点では、Re(550)は1nm以上であり、汎用フィルムの使用を考慮すれば、Re(550)は3nm以上である。また、第1のフィルム12及び第2のフィルム14のRe(550)の差が8nm以下であり、且つ各フィルムのRe(550)が20nm以下であると、面内遅相軸が直交していることによるレターデーションの打消しがより完全になり、クロストークをより軽減することができる。
【0025】
図2は、外側表面に硬化膜からなる表面層15を有する光学異方性素子の断面模式図である。光学異方性素子は、表示パネルの視認側外側に配置されるものであるので、表面層15は、外部からの物理的衝撃から保護する機能、又は外光の反射を防止する機能を有するのが好ましい。表面層15の例には、ハードコート層及び反射防止層が含まれる。また、表面層15は2以上の層を含んでいてもよく、一例は、図3に示す、ハードコート層15a及び反射防止層15bを有する例である。また、本実施形態では、第2のフィルム14の表面に表面層15が設けられているが、第2のフィルム14と表面層15の間にさらに機能層が設けられていてもよい。
【0026】
図4は、第2のフィルム14'が、保護層等の自己支持性のない、例えば塗布等によって形成される層であることを特徴とする態様である。第2のフィルム14'は、第1のフィルム12の遅相軸と直交する遅相軸を有する限り、特にその材料、及び機能については制限はない。例えば、ハードコート層であって、外部からの物理的衝撃から保護する機能を有していてもよい。また、本態様では、第2のフィルム14'は塗布等により、第1のフィルム12の表面上に直接形成することができるので、第1のフィルム12と第2のフィルム14'との間には、粘着剤層は存在しない。
【0027】
図1〜図4中、パターン光学異方性層10は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含む。第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、また、それぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0028】
パターン光学異方性層の一例は、第1及び第2の位相差領域の面内レターデーションReがλ/4であるλ/4層であって、各領域の遅相軸が互いに直交するパターンλ/4層である。図6(a)及び(b)にパターンλ/4層の一例の上面模式図を示す。図6(a)及び(b)中の第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内レターデーションは、それぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有するパターンλ/4層である。この態様のパターン光学異方性層を偏光膜と組み合わせると、第1及び第2の位相差領域のそれぞれを通過した光は互いに逆向きの円偏光状態になり、それぞれ右眼及び左眼用の円偏光画像を形成する。
【0029】
パターン光学異方性層は、上記態様に限定されるものではない。第1及び第2位相差領域の一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4であるパターン光学異方性層を利用することができる。さらに、第1及び第2位相差領域1a及び1bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0であるパターン光学異方性層を利用することもできる。
【0030】
また、第1及び第2位相差領域1a及び1bの形状及び配置パターンは、図6に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。例えば、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。
【0031】
パターン光学異方性層は、単層構造であっても、2層以上の積層構造であってもよい。パターン光学異方性層は、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物の1種又は2種から形成することができる。
【0032】
また、光学異方性層の各パターンの面内遅相軸は、パターン配向膜等を利用することで、互いに異なる方向、例えば互いに直交する方向、に調整することができる。パターン配向膜としては、マスク露光によりパターニング配向膜を形成可能な光配向膜、及びマスクラビングによりパターニング配向膜を形成可能なラビング配向膜のいずれも利用することができる。また、パターン配向膜を利用せずに、ナノインプリントによる配向制御技術を利用することもできる。
【0033】
本発明の光学異方性素子は、図1〜図4に示す態様に限定されるものではなく、他の部材を含んでいてもよい。例えば、上記した通り、パターン光学異方性層を、配向膜を利用して形成する態様では、第1のフィルムとパターン光学異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。また、外側表面には、ハードコート層、反射防止層とともに(又はそれに替えて)、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層等が配置されていてもよい。
【0034】
本発明は、偏光板にも関する。本発明の偏光板は、偏光膜と、本発明の光学異方性素子とを少なくとも有する。好ましくは、本発明の光学異方性素子のパターン光学異方性層と偏光膜とが貼合されている態様である。
【0035】
図7に、図3に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図を示す。図7に示す偏光板では、偏光膜16は、光学異方性素子のパターン光学異方性層10の面上に配置される。パターン光学異方性層10と偏光膜16との間には、他の層が配置されていないか、又は光学的に等方性の層(例えば、粘着剤層)のみが配置されているのが好ましい。
【0036】
パターン光学異方性層10が図6(a)及び(b)に示すパターンλ/4層であるそれぞれの例では、図8(a)及び(b)にそれぞれ示すように、第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の透過軸pと±45°にして配置する。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域1a及び1bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。また、偏光膜の透過軸と、第1及び第2のフィルムのいずれか一方の遅相軸は平行であるのが好ましく、他方は直交であるのが好ましい。即ち、図8(a)の例では、第1及び第2のフィルムの遅相軸は、一方がMD方向で且つ他方がTD方向であるのが好ましく、図8(b)の例では、第1及び第2のフィルムの遅相軸は、一方がMD方向に対して45°の方向、他方がMD方向に対して135°の方向であるのが好ましい。
【0037】
また、本発明は、本発明の光学異方性素子と、表示パネルとを少なくとも有する立体画像表示装置にも関する。光学異方性素子は、表示パネルの視認側面上に配置され、入射する偏光を、右眼用及び左眼用の偏光画像(例えば円偏光画像)に分離する。観察者は、これらの偏光画像を、偏光眼鏡(例えば円偏光眼鏡)等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0038】
図7に示す通り、本発明の光学異方性素子は、偏光膜とともに、表示パネルの視認側面上に配置されるが、表示パネルが、視認側に偏光膜を有する場合には、偏光膜はなくてもよい。また、視認側に偏光膜を有する表示パネル上に、図7に示す通り、偏光膜とともに、本発明の光学異方性素子を配置する態様では、該偏光膜の透過軸を、表示パネルの視認側に配置されている偏光膜の透過軸と一致させて配置する。
【0039】
本発明の第二の実施形態は、第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子に関する。
【0040】
支持体として、可撓性のフィルムを用いたFPRは、剛直なガラス板を用いるより、取り扱い性に優れる等、種々の利点があるが、一方で、熱、湿度等に基づく寸法変化によって、光学特性が変動してしまうという問題点がある。光学特性の変動は、クロストークを増大させる。
ここで、フィルムの遅相軸は、延伸処理等によって分子が配列した方向と平行であるか、又は直交する。そして、寸法変化は、通常、フィルムを構成する分子が配列した方向に直交する方向において生じる。そこで、本発明では、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、面内遅相軸を互いに直交するように設けることにより、フィルムの寸法変化に伴う光学特性の変動を軽減し、結果として、クロストークの削減に成功したものである。好ましくは、第3および第4のフィルムが、いずれも、分子の配列方向と平行な方向に面内遅相軸を有するか、分子の配列方向と垂直な方向に面内遅相軸を有する場合である。
すなわち、第3および第4のフィルムは、それぞれ、寸法変化を生じるが、その寸法変化に基づく光学特性の変動を互いに打ち消しあい、全体としての光学特性の変動としては、実質的にゼロとなる。従って、パターン光学異方性層を通過した光は、当該素子を通過してもなんら変化せず、クロストークの発生を抑制できる。本発明は、クロストークの発生を根本的に解消するものであり、クロストークの発生を前提とし、その左右のアンバランスの軽減を図る従来技術とは、技術思想が異なるものである。
【0041】
第3及び第4のフィルムは、少なくとも一方は自己支持性のあるフィルムであることが好ましく、双方が自己支持性のあるポリマーフィルムであることが好ましい。
【0042】
本発明の光学異方性素子は、立体画像表示装置に用いられる。具体的には、偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学異方性素子の第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。
【0043】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。また、上記第一の実施形態と同一の部材については、同じ符号を採用している。
【0044】
本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図を図9に示す。図9に示す光学異方性素子は、第3のフィルム20、パターン光学異方性層10、および、第4のフィルム22を該順に有する。通常は、第3のフィルムの表面に配向膜等を形成した後、パターン光学異方性層10が形成される。第3のフィルム20と第4のフィルム22の寸法変化は、互いのフィルムが打ち消しあい、結果として、寸法変化に伴う光学特性の変動は軽減され、クロストークが軽減される。図9に示す例では、第4のフィルム22と光学異方性層10のとの間には、これらを一体化する粘着剤層13が配置されている。光学異方性素子全体としての光学特性の変動を最小限にするためには、粘着剤層13は、光学特性の変動の少ない層であるのが好ましい。また、第3のフィルムとパターン光学異方性層の間およびパターン光学異方性層と第4のフィルムとの間に含まれる層は、寸法変化を実質的に起さない層のみが含まれていることが好ましい。実質的に寸法変化を引き起こさないとは、例えば、寸法変化率が0.2%以下であることをいう。
【0045】
パターン光学異方性層10の第1及び第2の位相差領域を通過した光は、各領域のレターデーション及び遅相軸の方向によって決定される、所定の偏光にそれぞれ変換され、右眼用及び左眼用の偏光画像が形成される。右眼用及び左眼用の偏光画像は、その後、第3のフィルム20及び第4のフィルム22を通過するが、上記した通り、第3のフィルム20と第4のフィルム22の寸法変化に伴う光学特性の変動は相殺されるため、左右画像のクロストークの発生を抑制することができる。
【0046】
第3のフィルム20及び第4のフィルム22は、それぞれ、分子の配列方向と垂直または平行な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていれば、クロストークの軽減効果が得られ、それぞれの方向については、特に制限はない。
【0047】
第3のフィルム20及び第4のフィルム22のRe(550)の差は、より小さいほうが好ましく、具体的には、8nm以下であることが好ましく、理想的には0nmである。第3のフィルム20及び第4のフィルム22それぞれのRe(550)についても、より小さいほうが好ましい。具体的には、20nm以下である。但し、フィルムの製造困難性の観点では、Re(550)は1nm以上であり、汎用フィルムの使用を考慮すれば、Re(550)は3nm以上である。また、第3のフィルム20及び第4のフィルム22のRe(550)の差が8nm以下であり、且つ各フィルムのRe(550)が20nm以下であると、面内遅相軸が直交していることによるレターデーションの打消しがより完全になり、クロストークをより軽減することができる。
【0048】
第3のフィルム20および第4のフィルム22は、それぞれ、寸法変化率が通常、0.1〜0.5%である。
【0049】
図10は、外側表面に硬化膜からなる表面層15を有する光学異方性素子の断面模式図である。光学異方性素子は、表示パネルの視認側外側に配置されるものであるので、表面層15は、外部からの物理的衝撃から保護する機能、又は外光の反射を防止する機能を有するのが好ましい。表面層15の例には、ハードコート層及び反射防止層が含まれる。また、表面層15は2以上の層を含んでいてもよく、一例は、図11に示す、ハードコート層15a及び反射防止層15bを有する例である。また、本実施形態では、第3のフィルム20の表面に表面層15が設けられているが、第3のフィルム20と表面層15の間にさらに機能層が設けられていてもよい。
【0050】
図9〜図11中、パターン光学異方性層10は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含む。第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、また、それぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
パターン光学異方性層の詳細については、上述の第一の実施形態の記載を参酌できる。
【0051】
本発明の第二の実施形態の光学異方性素子は、図9〜図11に示す態様に限定されるものではなく、他の部材を含んでいてもよい。これらの記載については上述の第一の実施形態の記載を参酌できる。
【0052】
図12に、図11に示す第二の実施形態の光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図を示す。
【0053】
パターン光学異方性層10が図6(a)及び(b)に示すパターンλ/4層であるそれぞれの例では、図8(a)及び(b)にそれぞれ示すように、第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の透過軸pと±45°にして配置する。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域1a及び1bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。また、偏光膜の透過軸と、第3及び第4のフィルムのいずれか一方の遅相軸は平行であるのが好ましく、他方は直交であるのが好ましい。
【0054】
<表示パネル>
本発明では、表示パネルについてなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、液晶パネル等は、視認側面上に画像表示のための偏光膜を有するが、上記した通り、当該偏光膜との組み合わせによって、本発明の光学異方性素子が上記機能を達成してもよい。
【0055】
表示パネルの一例は、透過モードの液晶パネルであり、一対の偏光膜とその間に液晶セルとを有する。偏光膜のそれぞれと液晶セルとの間には、通常、視野角補償のための位相差フィルムが配置される。液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0056】
本発明は、本発明の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システムにも関する。立体用画像表示装置の視認側外側に配置される前記偏光板の一例は、観察者が装着する偏光眼鏡である。観察者は、立体画象表示装置が表示する右眼用及び左眼用の偏光画像を円偏光又は直線偏光眼鏡を介して観察し、立体画像として認識する。
【0057】
以下、本発明の光学異方性素子に用いられる種々の部材等について詳細に説明する。
<光学異方性素子>
本発明の光学異方性素子は、パターン光学異方性層を、第1及び第2のフィルムの積層体の面上または第3のフィルムの面上に有する。パターン光学異方性層の製造方法は特に制限はないが、通常、第1のフィルムまたは第3のフィルムの表面に配向膜を設け、該配向膜の表面上に設けられる。
第一の実施形態では、さらに、第1のフィルムのパターン光学異方性層が形成されていない側の面(通常は表面)に、粘着剤層を介して、第2のフィルムを貼合してもよい。また、第2のフィルムについても、その表面に、保護層等を形成して、一旦表面フィルムを作製し、該表面フィルムの裏面(第2のフィルムの保護層が形成されていない側の面)と、第1のフィルムのパターン光学異方性層が形成されていない側の面とを粘着剤層を介して貼合してもよい。勿論、第1及び第2のフィルムをあらかじめ粘着剤層を介して貼合してから、パターン光学異方性層、及び所望により保護層等を形成してもよい。
また、第二の実施形態では、パターン光学異方性層の第3のフィルムが設けられている側とは反対側の面(通常は表面)に、粘着剤層を介して、第4のフィルムを貼合する態様が例示される。
【0058】
<第1〜第4のフィルム>
第1〜第4のフィルムの製造方法については特に制限はない。溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれも利用することができるが、溶液製膜法が好ましい。第1〜第4のフィルムとしては、低Reのポリマーフィルムを用いるのが好ましく、第1及び第2のフィルムまたは第3及び第4のフィルムの好ましい組み合わせは、Reの差が小さい組み合わせである。Reの好ましい範囲、及びReの差の好ましい範囲については、上記した通りである。
【0059】
本発明に使用可能な第1〜第4のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0060】
また、前記第1〜第4のフィルムの材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0061】
また、前記第1〜第4のフィルムの材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
第1のフィルムと第2のフィルム、第3のフィルムと第4のフィルムとは、異なる材料であってもよく、同一の材料であってもよい。
【0062】
[延伸]
第1〜第4のフィルムは、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。延伸処理によって、レターデーション及び面内遅相軸を調整することができる。上記した通り、第1及び第2のフィルムは、一方が、MD方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであるのが好ましい。また第3及び第4のフィルムは、一方が、MD方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであるのが好ましい。一般的には、MD方向に遅相軸を有するフィルムは、MD方向に延伸することで、及びTD方向に遅相軸を有するフィルムは、TD方向に延伸することでそれぞれ作製することができる。
【0063】
幅方向(TD方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む−20℃〜+100℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0064】
フィルムの延伸は、MD方向あるいはTD方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、TD方向により多く延伸することが好ましい。TD方向の延伸は1〜100%の延伸が好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸を行う。MD方向の延伸は1〜10%の延伸が好ましく、特に好ましくは2〜5%延伸を行う。
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
製膜工程の途中で延伸を行う場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。
製膜して巻き取った原反を延伸する場合には、残留溶剤量が0〜5%の状態でTD方向に1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%延伸である。
【0065】
延伸処理は製膜工程の途中で行った後、製膜して巻き取った原反をさらに延伸処理しても良い。
製膜工程の途中で延伸処理されたフィルムを巻き取った後でさらに延伸処理する場合には、製膜工程の途中での延伸は残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で延伸することが好ましく、製膜して巻き取った原反の延伸は、残留溶剤量が0〜5%の状態で延伸することが好ましく、TD方向の延伸は未延伸の状態を基準として1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸である。
【0066】
また、第1〜第4のフィルムは、二軸延伸を行ってもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、TD方向に延伸した後、MD方向に延伸されるか、またはMD方向に延伸した後、TD方向に延伸される。
延伸での残留歪を緩和させ、寸度変化を低減させるため、また面内の遅相軸のTD方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−50〜Tg+50℃であることが好ましい。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短い。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線をもとめることによりTgを求めた。
【0067】
製膜工程の途中で延伸処理を行った場合、フィルムの乾燥は搬送したまま行うことができる。乾燥温度は100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100℃〜150℃であり、さらに好ましくは110℃〜140℃であり、特に好ましくは130℃〜140℃ある。乾燥時間は特に制限はないが、好ましくは10分から40分である。
最適な延伸後乾燥温度を選択することにより、製造されるセルロースエステルフィルムの残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化、光学特性変化、遅相軸方位の変化を小さくすることができる。
【0068】
製膜して巻き取った原反を延伸処理した場合、延伸処理されたフィルムはその後、さらに加熱処理される工程を経て製造されても良い。加熱処理する工程を経ることにより、製造される第1〜第4のフィルムの残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化、光学特性変化、遅相軸方位の変化が小さくなるので好ましい。加熱時の温度は特に制限はないが、100℃〜200℃が好ましい。
【0069】
<粘着剤層>
粘着剤層は、光学的に等方性であるのが好ましい。光学的に等方性の粘着剤層を形成可能な粘着剤の例には、アクリレート系粘着剤等が含まれる。また、貼合可能である限り、一般的には、接着剤に分類される剤を利用してもよい。
【0070】
<パターン光学異方性層>
パターン光学異方性層の材料については特に制限はなく、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物、及び延伸フィルム等の位相差フィルムなどを利用することができる。光学異方性層は、パターニングが必要であるので、パターニングが容易であるという観点では、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物を利用するのが好ましい。
【0071】
前記光学異方性層は、配向膜を利用した種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141345号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0072】
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0073】
また、第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0074】
さらに、第3の態様として、重合性が互いに異なる重合性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有するディスコティック液晶を利用する方法がある。この態様では、ディスコティック液晶を所定の配向状態にした後、一方の重合性基のみの重合反応が進行する条件で、光照射等を行い、プレ光学異方性層を形成する。次に、他方の重合性基の重合を可能にする条件で(例えば他方の重合性基の重合を開始させる重合開始剤の存在下で、マスク露光を行う。露光部の配向状態は完全に固定され、所定のReを有する一方の位相差領域が形成される。未露光領域は、一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、未露光領域は、等方相状態に固定され、即ち、Reが0nmになる。
【0075】
<表面層>
本発明の光学異方性素子は、第2のフィルムの第1のフィルムが積層されている面と反対の面上に、または、第3のフィルムのパターン光学異方性層が設けられている側とは反対側の面上に、硬化膜からなる表面層を有していてもよい。表面層の機能については特に制限はない。外部からの物理的衝撃から保護するためのハードコート層や、外光の映り込みを防止するための反射防止層としての機能を有していてもよい。また、これらの積層体であってもよい。本発明の光学異方性素子が反射防止層等の表面層を有する場合、第2のフィルムまたは第3のフィルムは、表面層の支持体としても機能する。
一例は、図3または図11に示す例であり、ハードコート層及び反射防止層が積層された例である。上記表面層は、上記層とともに、又は上記層に替えて、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を有していてもよい。上記反射防止層及びハードコート層を構成する各層の詳細については、特開2007−254699号公報の[0182]〜[0220]に記載があり、本発明に利用可能な反射防止層についても好ましい特性、好ましい材料等について、同様である。
【0076】
<偏光膜>
本発明では、偏光膜として、一般的な直線偏光膜を用いることができる。偏光膜は延伸フィルムからなっていても、塗布により形成される層であってもよい。前者の例には、ポリビニルアルコールの延伸フィルムをヨウ素又は二色性染料等で染色したフィルムが挙げられる。後者の例には、二色性液晶性色素を含む組成物を塗布して、所定の配向状態に固定した層が挙げられる。
なお、本明細書では、「偏光膜」という場合は、直線偏光膜を意味するものとする。
【0077】
<液晶セル>
本発明の立体用画像表示システムに用いられる立体用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0078】
<立体画像表示システム用偏光板>
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前記位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線眼鏡が用いられる。光学異方性層の前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前記第1及び第2位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0079】
偏光眼鏡を含め、本発明の立体用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、位相差板は、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1位相差領域と前記第2位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0080】
円偏光を利用する場合、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
【0081】
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
【0082】
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
<実施例A>
下記表に記載の光学特性の第1及び第2のフィルムをそれぞれ準備した。マスク露光処理により作製したパターン光配向膜、マスクラビング処理により作製したパターンラビング配向膜、又は上記した、添加剤等と配向膜との相互作用のON−OFFを利用して形成されたパターン配向膜等を種々利用して、液晶組成物の配向を制御し、配向状態を固定することで、第1のフィルム上にパターン光学異方性層をそれぞれ形成し、FPRをそれぞれ作製した。なお、液晶組成物には、重合性棒状液晶または重合性ディスコティック液晶を利用し、所望により配向制御のための添加剤を添加し、また重合を進行させるための重合開始剤も添加した。このパターン光学異方性層は、図6(a)に示す例と同様のパターンλ/4層であり、第1及び第2の位相差領域がそれぞれλ/4を示していた。
【0085】
第2のフィルムのそれぞれの表面に、常法により、ハードコート層及び反射防止層を順次形成して、表面フィルムをそれぞれ作製した。
【0086】
上記で作製したFPRの裏面(パターン光学異方性層が形成されていない側の面)と、上記で作製した表面フィルムの裏面(ハードコート層及び反射防止層が形成されていない側の面)とを、光学的に等方性の粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合し、
下記表に記載の構成の光学異方性素子をそれぞれ作製した。
【0087】
【表1】
【0088】
市販のVAモード液晶表示装置の視認側偏光膜のさらに外側に、上記で作製した各光学異方性素子を積層した。
【0089】
(クロストークの評価)
作製した実施例1〜4、及び比較例1の光学異方性素子を積層させたVAモード液晶表示装置において、図13に示したように液晶表示パネルの奇数ライン(水平方向)上にパターニング位相差層の右眼用画像を透過する領域(第1位相差領域)となるように配置し、偶数ライン上にパターニング位相差層の左眼用画像を透過する領域(第2位相差領域)となるように配置した。この画面に対し、全ライン白表示とした「表示0」と、奇数ラインを黒表示、偶数ラインを白表示とした「表示1」と、奇数ラインを白表示、偶数ラインを黒表示とした「表示2」の3パターンの表示を行い、正面、および正面から斜め45度方向、極角5°の方向から、左右の眼鏡を透過した透過光の強度を測定した。このとき、各場所でのクロストーク量は下記式(1)および(2)を計算して求めたクロストーク(右眼)とクロストーク(左眼)の平均値として求めることができる。
式(1):
クロストーク(右眼)=(表示2での右眼鏡透過光)/(表示0での右眼鏡透過光)×100%
式(2):
クロストーク(左眼)=(表示1での左眼鏡透過光)/(表示0での左眼鏡透過光)×100%
また、参考例1として、第1及び第2のフィルムとしてガラス基板を使用した以外は実施例1と同様にして作製した表示装置を用いて同様にして評価した。
【0090】
【表2】
【0091】
表2から、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが直交していると、クロストークが軽減されることが分かる。一方、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが平行の関係にある比較例1では、クロストークが実施例と比較して劣ることがわかる。また、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが直交していて、それぞれのRe差が8nmを超える実施例4は、クロストークが他の実施例と比較して劣ることが分かる。
<実施例B>
【0092】
次に第3のフィルムと第4のフィルムの間にパターン光学異方性層が配置された構成について評価を行った。
【0093】
表3に記載の第3のフィルムをそれぞれ準備し、マスク露光処理により作製したパターン光配向膜、マスクラビング処理により作製したパターンラビング配向膜、又は上記した、添加剤等と配向膜との相互作用のON−OFFを利用して形成されたパターン配向膜等を種々利用して、液晶組成物の配向を制御し、配向状態を固定することで、第3のフィルム上にパターン光学異方性層をそれぞれ形成し、FPRをそれぞれ作製した。なお、液晶組成物には、重合性棒状液晶または重合性ディスコティック液晶を利用し、所望により配向制御のための添加剤を添加し、また重合を進行させるための重合開始剤も添加した。このパターン光学異方性層は、図6(a)に示す例と同様のパターンλ/4層であり、第1及び第2の位相差領域がそれぞれλ/4を示していた。
【0094】
さらに第3のフィルムのパターン光学異方性層を形成した面の反対側の表面に、常法により、ハードコート層及び反射防止層を順次形成してパターン光学異方性層を有する表面フィルムをそれぞれ作製した。
【0095】
次に偏光子を2枚のフィルムで挟んだ偏光板を用意し、上記で作製したパターン光学異方性層を有する表面フィルムの光学異方性層側の面と偏光板を光学的に等方性の粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合した。この時、偏光板を形成する2枚のフィルムのうち、パターン光学異方性層を有する表面フィルム側のフィルムは表3に記載の第4のフィルムの特性を有する。
【0096】
【表3】
【0097】
市販のVAモード液晶表示装置を用意し、視認側偏光膜を取り除き、ここに上記で作成した偏光板とパターン光学異方性層を有する表面フィルムの貼合品を粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合した。
【0098】
作製した実施例5、及び比較例2の光学異方性素子を積層させたVAモード液晶表示装置を温度25℃湿度10%の乾燥条件に48時間置いた後、クロストークの評価を行った。その結果を表4に記す。
【0099】
【表4】
【0100】
表4から、第3のフィルムの遅相軸と第4のフィルムの遅相軸とが直交していると、クロストークが軽減されることが分かる。一方、第3のフィルムの遅相軸と第4のフィルムの遅相軸とが平行の関係にある比較例2では、クロストークが実施例と比較して劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0101】
10 パターン光学異方性層
12 第1のフィルム
13 粘着剤層
14 第2のフィルム
15 表面層
15a ハードコート層
15b 反射防止層
16 偏光膜
a 面内遅相軸
b 面内遅相軸
1a 第1位相差領域
1b 第2位相差領域
20 第3のフィルム
22 第4のフィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な配向パターンを有する光学異方性素子、それを用いた偏光板、立体画像表示装置、及び立体画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する立体(3D)画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン光学異方性素子が利用されている。
このパターン光学異方性素子の支持体としては、ガラスからなる支持体、及びフィルムからなる支持体の二種類に分類され、ガラスからなる支持体は、フィルムからなる支持体と比較して、製造工程における加熱・冷却時による膨張・収縮、又は経時での温湿度の変化による膨張・収縮が抑制されるという利点があるため多く利用されてきたが、近年、経済的な観点からフィルムからなる支持体を有するパターン光学異方性素子(以下、「FPR」ともいう。)を使用する動きが広がっている。
【0003】
しかし、通常、市販されているフィルムには、レターデーションがある程度あり、光学的に等方性のガラスを支持体として利用する場合には問題にならなかったクロストークが顕著になる。特許文献1には、FPRとして、樹脂フィルムからなる基材フィルム上に、パターニングされた、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域を含む位相差層を有し、これら位相差領域の遅相軸の二等分線と基材フィルムの遅相軸とが平行である位相差素子が提案されている。この位相差素子は、クロストークによって生じるゴーストのアンバランスを解消するものであるが、クロストークの発生を根本的に解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4508280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、微細なパターンを有するパターン光学異方性層を有する光学異方性素子を備える立体画像表示装置のクロストークを軽減することを課題とする。
具体的には、クロストークが軽減された立体画像表示装置、並びにそれに用いられる偏光板、立体画像表示システム、及び光学異方性素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1>面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子。
<2>前記第1のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第2のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である<1>に記載の光学異方性素子。
<3>前記第1のフィルム及び第2のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である<1>又は<2>に記載の光学異方性素子。
<4>前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムのいずれか一方が、MD方向に対して平行方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に対して平行方向に遅相軸を有する<1>〜<3>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<5>前記第1及び第2のフィルムの間には、他の層が配置されていない、又は光学的に等方性の層のみが配置されている<1>〜<4>のいずれかに記載の光学素子。
<6>前記積層体の前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている<1>〜<5>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<7>第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子。
<8>前記第3のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第4のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である<7>に記載の光学異方性素子。
<9>前記第3のフィルム及び第4のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である<7>又は<8>に記載の光学異方性素子。
<10>前記第3のフィルムの前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている<7>〜<9>のいずれかに記載の光学異方性素子。
<11>偏光膜と、<1>〜<10>のいずれかに記載の光学異方性素子とを少なくとも有する偏光板。
<12>前記光学異方性素子が、<1>〜<6>のいずれかに記載の光学異方性素子であり、前記パターン光学異方性層と前記偏光膜とが貼合されている<11>に記載の偏光板。
<13>前記光学異方性素子が、<7>〜<10>の光学異方性素子であり、前記第4のフィルムと前記偏光板とが貼合されている、<11>に記載の偏光板。
<14>画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される<1>〜<10>のいずれかに記載の光学異方性素子と、を少なくとも有する立体画像表示装置。
<15>前記表示パネルが液晶セルを有する<14>に記載の立体画像表示装置。
<16><14>又は<15>に記載の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細なパターンを有するパターン光学異方性層を有する光学異方性素子を備える立体画像表示装置のクロストークを軽減することができる。
具体的には、クロストークが軽減された立体画像表示装置、並びにそれに用いられる偏光板、立体画像表示システム、及び光学異方性素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図2】第一の実施形態における、外側表面に硬化膜からなる表面層を有する本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図3】第一の実施形態における、表面層がハードコート層及び反射防止層である本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図4】第一の実施形態における、第2のフィルムが塗布により形成された本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図5】第一の実施形態における、MD方向に遅相軸を有するフィルムとTD方向に遅相軸を有するフィルムの関係の一例の概略図である。
【図6】パターンλ/4層の一例の上面模式図である。
【図7】図3に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図である。
【図8】第一の実施形態のおける、偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。
【図9】本発明の第二の実施形態の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図10】第二の実施形態における、外側表面に硬化膜からなる表面層を有する本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図11】第二の実施形態における、表面層がハードコート層及び反射防止層である本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図である。
【図12】図11に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図である。
【図13】実施例で行った評価方法を説明するために用いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0010】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0012】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0013】
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
また、「MD方向」は、連続生産におけるフィルムの送り出し方向、及び「TD方向」はそれに直交する方向を意味する。
本発明における寸法変動とは、摂氏25度湿度10%の条件と摂氏25度湿度80%の条件間で、寸法が0.2%以上変動することをいう。ここで、寸法変化率とは、下記の通り定義する。
寸法変化率={(摂氏25度湿度80%の条件下での寸法)−(摂氏25度湿度10%の条件下での寸法))/(摂氏25度湿度60%の条件下での寸法)
【0014】
本発明の第一の実施形態の光学異方性素子は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子に関する。
【0015】
支持体として、可撓性のフィルムを用いたFPRは、剛直なガラス板を用いるより、取り扱い性に優れる等、種々の利点があるが、一方で、光学的に等方性のガラス板と異なり、フィルムを完全に光学的に等方性にするのは困難であり、一般的には、ある程度のレターデーションを有する。FPRでは、支持体フィルムのレターデーションの影響により、パターン光学異方性層を通過した光の偏光状態が変化し、クロストークの発生が顕著になるという問題がある。本発明では、支持体として、面内遅相軸を互いに直交にして配置された第1及び第2のフィルムの積層体を利用しているので、第1及び第2のフィルムのレターデーションは互いに打ち消し合い、実質的に0になる。従って、パターン光学異方性層を通過した光の偏光状態は、当該積層体を通過してもなんら変化せず、クロストークの発生を抑制できる。本発明は、クロストークの発生を根本的に解消するものであり、クロストークの発生を前提とし、その左右のアンバランスの軽減を図る従来技術とは、技術思想が異なるものである。
【0016】
2つの位相差フィルムを、面内遅相軸を互いに直交にして配置することで、レターデーションを0にできることは、各方位の位相差を減少させるという考え方で説明することができる。
【0017】
第1及び第2のフィルムは、少なくとも一方は自己支持性のあるフィルムであることが好ましい。双方が自己支持性のあるポリマーフィルムであってもよいし、一方が自己支持性のあるポリマーフィルムであり、他方は塗布、転写等によって、前記ポリマーフィルム上に形成される非自己支持性のフィルムであってもよい。第1及び第2のフィルム間には、他の層は配置されていないか、又は光学的に等方性の層(例えば粘着剤層)のみが配置されているのが好ましい。
【0018】
本発明の光学異方性素子は、立体画像表示装置に用いられる。具体的には、偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学異方性素子の第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の第一の実施形態のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。
【0020】
本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図を図1に示す。図1に示す光学異方性素子は、パターン光学異方性層10を、第1のフィルム12及び第2のフィルム14の積層体上に有する。第1のフィルム12と第2のフィルム14とは、その面内遅相軸を互いに直交にして積層されているので、互いにレターデーションを打ち消し合い、積層体としてのレターデーションは実質的に0になっている。図1に示す例では、第1のフィルム12と第2のフィルム14との間には、これらを一体化する粘着剤層13が配置されているので、積層体全体としてレターデーション0を達成するためには、粘着剤層13は、光学的に等方性の層であるのが好ましい。
【0021】
パターン光学異方性層10の第1及び第2の位相差領域を通過した光は、各領域のレターデーション及び遅相軸の方向によって決定される、所定の偏光にそれぞれ変換され、右眼用及び左眼用の偏光画像が形成される。右眼用及び左眼用の偏光画像は、その後、第1のフィルム12及び第2のフィルム14を通過するが、上記した通り、積層体全体としてのレターデーションは0であるので、各フィルムのレターデーションに影響されずに、右眼用及び左眼用の偏光画像の偏光状態はそのまま維持される。その結果、左右画像のクロストークの発生を抑制することができる。
【0022】
第1のフィルム12及び第2のフィルム14は、それぞれの遅相軸を互いに直交にして積層されていれば、クロストークの軽減効果が得られ、それぞれの方向については、特に制限はない。図5に模式的に示す通り、第1のフィルム12及び第2のフィルム14のうち、一方が、MD方向に遅相軸を有するフィルムであり、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであると、ロールトゥロール法で積層させることができ、簡便に光学異方性素子を製造することができるので好ましい。
【0023】
また、一般的には、フィルムの遅相軸は、延伸処理等によって分子が配列した方向と平行であるか、又は直交する。フィルムは、一般的には分子が配列した方向に直交する方向において寸度変化が生じる傾向がある。従って、第1のフィルム12及び第2のフィルム14として、分子の配列方向と平行な方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、又は分子の配列方向と直交する方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、面内遅相軸を互いに直交にして積層すれば、積層体全体としての寸度変化に伴う光学特性の変動を軽減でき、さらにはそれに起因したクロストークをより軽減できる。
【0024】
第1のフィルム12及び第2のフィルム14のRe(550)の差は、より小さいほうが好ましく、具体的には、8nm以下であることが好ましく、理想的には0nmである。第1のフィルム12及び第2のフィルム14それぞれのRe(550)についても、より小さいほうが好ましい。具体的には、20nm以下である。但し、フィルムの製造困難性の観点では、Re(550)は1nm以上であり、汎用フィルムの使用を考慮すれば、Re(550)は3nm以上である。また、第1のフィルム12及び第2のフィルム14のRe(550)の差が8nm以下であり、且つ各フィルムのRe(550)が20nm以下であると、面内遅相軸が直交していることによるレターデーションの打消しがより完全になり、クロストークをより軽減することができる。
【0025】
図2は、外側表面に硬化膜からなる表面層15を有する光学異方性素子の断面模式図である。光学異方性素子は、表示パネルの視認側外側に配置されるものであるので、表面層15は、外部からの物理的衝撃から保護する機能、又は外光の反射を防止する機能を有するのが好ましい。表面層15の例には、ハードコート層及び反射防止層が含まれる。また、表面層15は2以上の層を含んでいてもよく、一例は、図3に示す、ハードコート層15a及び反射防止層15bを有する例である。また、本実施形態では、第2のフィルム14の表面に表面層15が設けられているが、第2のフィルム14と表面層15の間にさらに機能層が設けられていてもよい。
【0026】
図4は、第2のフィルム14'が、保護層等の自己支持性のない、例えば塗布等によって形成される層であることを特徴とする態様である。第2のフィルム14'は、第1のフィルム12の遅相軸と直交する遅相軸を有する限り、特にその材料、及び機能については制限はない。例えば、ハードコート層であって、外部からの物理的衝撃から保護する機能を有していてもよい。また、本態様では、第2のフィルム14'は塗布等により、第1のフィルム12の表面上に直接形成することができるので、第1のフィルム12と第2のフィルム14'との間には、粘着剤層は存在しない。
【0027】
図1〜図4中、パターン光学異方性層10は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含む。第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、また、それぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0028】
パターン光学異方性層の一例は、第1及び第2の位相差領域の面内レターデーションReがλ/4であるλ/4層であって、各領域の遅相軸が互いに直交するパターンλ/4層である。図6(a)及び(b)にパターンλ/4層の一例の上面模式図を示す。図6(a)及び(b)中の第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内レターデーションは、それぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有するパターンλ/4層である。この態様のパターン光学異方性層を偏光膜と組み合わせると、第1及び第2の位相差領域のそれぞれを通過した光は互いに逆向きの円偏光状態になり、それぞれ右眼及び左眼用の円偏光画像を形成する。
【0029】
パターン光学異方性層は、上記態様に限定されるものではない。第1及び第2位相差領域の一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4であるパターン光学異方性層を利用することができる。さらに、第1及び第2位相差領域1a及び1bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0であるパターン光学異方性層を利用することもできる。
【0030】
また、第1及び第2位相差領域1a及び1bの形状及び配置パターンは、図6に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。例えば、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。
【0031】
パターン光学異方性層は、単層構造であっても、2層以上の積層構造であってもよい。パターン光学異方性層は、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物の1種又は2種から形成することができる。
【0032】
また、光学異方性層の各パターンの面内遅相軸は、パターン配向膜等を利用することで、互いに異なる方向、例えば互いに直交する方向、に調整することができる。パターン配向膜としては、マスク露光によりパターニング配向膜を形成可能な光配向膜、及びマスクラビングによりパターニング配向膜を形成可能なラビング配向膜のいずれも利用することができる。また、パターン配向膜を利用せずに、ナノインプリントによる配向制御技術を利用することもできる。
【0033】
本発明の光学異方性素子は、図1〜図4に示す態様に限定されるものではなく、他の部材を含んでいてもよい。例えば、上記した通り、パターン光学異方性層を、配向膜を利用して形成する態様では、第1のフィルムとパターン光学異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。また、外側表面には、ハードコート層、反射防止層とともに(又はそれに替えて)、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層等が配置されていてもよい。
【0034】
本発明は、偏光板にも関する。本発明の偏光板は、偏光膜と、本発明の光学異方性素子とを少なくとも有する。好ましくは、本発明の光学異方性素子のパターン光学異方性層と偏光膜とが貼合されている態様である。
【0035】
図7に、図3に示す光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図を示す。図7に示す偏光板では、偏光膜16は、光学異方性素子のパターン光学異方性層10の面上に配置される。パターン光学異方性層10と偏光膜16との間には、他の層が配置されていないか、又は光学的に等方性の層(例えば、粘着剤層)のみが配置されているのが好ましい。
【0036】
パターン光学異方性層10が図6(a)及び(b)に示すパターンλ/4層であるそれぞれの例では、図8(a)及び(b)にそれぞれ示すように、第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の透過軸pと±45°にして配置する。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域1a及び1bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。また、偏光膜の透過軸と、第1及び第2のフィルムのいずれか一方の遅相軸は平行であるのが好ましく、他方は直交であるのが好ましい。即ち、図8(a)の例では、第1及び第2のフィルムの遅相軸は、一方がMD方向で且つ他方がTD方向であるのが好ましく、図8(b)の例では、第1及び第2のフィルムの遅相軸は、一方がMD方向に対して45°の方向、他方がMD方向に対して135°の方向であるのが好ましい。
【0037】
また、本発明は、本発明の光学異方性素子と、表示パネルとを少なくとも有する立体画像表示装置にも関する。光学異方性素子は、表示パネルの視認側面上に配置され、入射する偏光を、右眼用及び左眼用の偏光画像(例えば円偏光画像)に分離する。観察者は、これらの偏光画像を、偏光眼鏡(例えば円偏光眼鏡)等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0038】
図7に示す通り、本発明の光学異方性素子は、偏光膜とともに、表示パネルの視認側面上に配置されるが、表示パネルが、視認側に偏光膜を有する場合には、偏光膜はなくてもよい。また、視認側に偏光膜を有する表示パネル上に、図7に示す通り、偏光膜とともに、本発明の光学異方性素子を配置する態様では、該偏光膜の透過軸を、表示パネルの視認側に配置されている偏光膜の透過軸と一致させて配置する。
【0039】
本発明の第二の実施形態は、第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子に関する。
【0040】
支持体として、可撓性のフィルムを用いたFPRは、剛直なガラス板を用いるより、取り扱い性に優れる等、種々の利点があるが、一方で、熱、湿度等に基づく寸法変化によって、光学特性が変動してしまうという問題点がある。光学特性の変動は、クロストークを増大させる。
ここで、フィルムの遅相軸は、延伸処理等によって分子が配列した方向と平行であるか、又は直交する。そして、寸法変化は、通常、フィルムを構成する分子が配列した方向に直交する方向において生じる。そこで、本発明では、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有する2枚のフィルムを、面内遅相軸を互いに直交するように設けることにより、フィルムの寸法変化に伴う光学特性の変動を軽減し、結果として、クロストークの削減に成功したものである。好ましくは、第3および第4のフィルムが、いずれも、分子の配列方向と平行な方向に面内遅相軸を有するか、分子の配列方向と垂直な方向に面内遅相軸を有する場合である。
すなわち、第3および第4のフィルムは、それぞれ、寸法変化を生じるが、その寸法変化に基づく光学特性の変動を互いに打ち消しあい、全体としての光学特性の変動としては、実質的にゼロとなる。従って、パターン光学異方性層を通過した光は、当該素子を通過してもなんら変化せず、クロストークの発生を抑制できる。本発明は、クロストークの発生を根本的に解消するものであり、クロストークの発生を前提とし、その左右のアンバランスの軽減を図る従来技術とは、技術思想が異なるものである。
【0041】
第3及び第4のフィルムは、少なくとも一方は自己支持性のあるフィルムであることが好ましく、双方が自己支持性のあるポリマーフィルムであることが好ましい。
【0042】
本発明の光学異方性素子は、立体画像表示装置に用いられる。具体的には、偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学異方性素子の第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。
【0043】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。また、上記第一の実施形態と同一の部材については、同じ符号を採用している。
【0044】
本発明の光学異方性素子の一例の断面模式図を図9に示す。図9に示す光学異方性素子は、第3のフィルム20、パターン光学異方性層10、および、第4のフィルム22を該順に有する。通常は、第3のフィルムの表面に配向膜等を形成した後、パターン光学異方性層10が形成される。第3のフィルム20と第4のフィルム22の寸法変化は、互いのフィルムが打ち消しあい、結果として、寸法変化に伴う光学特性の変動は軽減され、クロストークが軽減される。図9に示す例では、第4のフィルム22と光学異方性層10のとの間には、これらを一体化する粘着剤層13が配置されている。光学異方性素子全体としての光学特性の変動を最小限にするためには、粘着剤層13は、光学特性の変動の少ない層であるのが好ましい。また、第3のフィルムとパターン光学異方性層の間およびパターン光学異方性層と第4のフィルムとの間に含まれる層は、寸法変化を実質的に起さない層のみが含まれていることが好ましい。実質的に寸法変化を引き起こさないとは、例えば、寸法変化率が0.2%以下であることをいう。
【0045】
パターン光学異方性層10の第1及び第2の位相差領域を通過した光は、各領域のレターデーション及び遅相軸の方向によって決定される、所定の偏光にそれぞれ変換され、右眼用及び左眼用の偏光画像が形成される。右眼用及び左眼用の偏光画像は、その後、第3のフィルム20及び第4のフィルム22を通過するが、上記した通り、第3のフィルム20と第4のフィルム22の寸法変化に伴う光学特性の変動は相殺されるため、左右画像のクロストークの発生を抑制することができる。
【0046】
第3のフィルム20及び第4のフィルム22は、それぞれ、分子の配列方向と垂直または平行な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていれば、クロストークの軽減効果が得られ、それぞれの方向については、特に制限はない。
【0047】
第3のフィルム20及び第4のフィルム22のRe(550)の差は、より小さいほうが好ましく、具体的には、8nm以下であることが好ましく、理想的には0nmである。第3のフィルム20及び第4のフィルム22それぞれのRe(550)についても、より小さいほうが好ましい。具体的には、20nm以下である。但し、フィルムの製造困難性の観点では、Re(550)は1nm以上であり、汎用フィルムの使用を考慮すれば、Re(550)は3nm以上である。また、第3のフィルム20及び第4のフィルム22のRe(550)の差が8nm以下であり、且つ各フィルムのRe(550)が20nm以下であると、面内遅相軸が直交していることによるレターデーションの打消しがより完全になり、クロストークをより軽減することができる。
【0048】
第3のフィルム20および第4のフィルム22は、それぞれ、寸法変化率が通常、0.1〜0.5%である。
【0049】
図10は、外側表面に硬化膜からなる表面層15を有する光学異方性素子の断面模式図である。光学異方性素子は、表示パネルの視認側外側に配置されるものであるので、表面層15は、外部からの物理的衝撃から保護する機能、又は外光の反射を防止する機能を有するのが好ましい。表面層15の例には、ハードコート層及び反射防止層が含まれる。また、表面層15は2以上の層を含んでいてもよく、一例は、図11に示す、ハードコート層15a及び反射防止層15bを有する例である。また、本実施形態では、第3のフィルム20の表面に表面層15が設けられているが、第3のフィルム20と表面層15の間にさらに機能層が設けられていてもよい。
【0050】
図9〜図11中、パターン光学異方性層10は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含む。第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、また、それぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
パターン光学異方性層の詳細については、上述の第一の実施形態の記載を参酌できる。
【0051】
本発明の第二の実施形態の光学異方性素子は、図9〜図11に示す態様に限定されるものではなく、他の部材を含んでいてもよい。これらの記載については上述の第一の実施形態の記載を参酌できる。
【0052】
図12に、図11に示す第二の実施形態の光学異方性素子を有する偏光板の一例の断面模式図を示す。
【0053】
パターン光学異方性層10が図6(a)及び(b)に示すパターンλ/4層であるそれぞれの例では、図8(a)及び(b)にそれぞれ示すように、第1及び第2位相差領域1a及び1bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の透過軸pと±45°にして配置する。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域1a及び1bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。また、偏光膜の透過軸と、第3及び第4のフィルムのいずれか一方の遅相軸は平行であるのが好ましく、他方は直交であるのが好ましい。
【0054】
<表示パネル>
本発明では、表示パネルについてなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、液晶パネル等は、視認側面上に画像表示のための偏光膜を有するが、上記した通り、当該偏光膜との組み合わせによって、本発明の光学異方性素子が上記機能を達成してもよい。
【0055】
表示パネルの一例は、透過モードの液晶パネルであり、一対の偏光膜とその間に液晶セルとを有する。偏光膜のそれぞれと液晶セルとの間には、通常、視野角補償のための位相差フィルムが配置される。液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0056】
本発明は、本発明の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システムにも関する。立体用画像表示装置の視認側外側に配置される前記偏光板の一例は、観察者が装着する偏光眼鏡である。観察者は、立体画象表示装置が表示する右眼用及び左眼用の偏光画像を円偏光又は直線偏光眼鏡を介して観察し、立体画像として認識する。
【0057】
以下、本発明の光学異方性素子に用いられる種々の部材等について詳細に説明する。
<光学異方性素子>
本発明の光学異方性素子は、パターン光学異方性層を、第1及び第2のフィルムの積層体の面上または第3のフィルムの面上に有する。パターン光学異方性層の製造方法は特に制限はないが、通常、第1のフィルムまたは第3のフィルムの表面に配向膜を設け、該配向膜の表面上に設けられる。
第一の実施形態では、さらに、第1のフィルムのパターン光学異方性層が形成されていない側の面(通常は表面)に、粘着剤層を介して、第2のフィルムを貼合してもよい。また、第2のフィルムについても、その表面に、保護層等を形成して、一旦表面フィルムを作製し、該表面フィルムの裏面(第2のフィルムの保護層が形成されていない側の面)と、第1のフィルムのパターン光学異方性層が形成されていない側の面とを粘着剤層を介して貼合してもよい。勿論、第1及び第2のフィルムをあらかじめ粘着剤層を介して貼合してから、パターン光学異方性層、及び所望により保護層等を形成してもよい。
また、第二の実施形態では、パターン光学異方性層の第3のフィルムが設けられている側とは反対側の面(通常は表面)に、粘着剤層を介して、第4のフィルムを貼合する態様が例示される。
【0058】
<第1〜第4のフィルム>
第1〜第4のフィルムの製造方法については特に制限はない。溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれも利用することができるが、溶液製膜法が好ましい。第1〜第4のフィルムとしては、低Reのポリマーフィルムを用いるのが好ましく、第1及び第2のフィルムまたは第3及び第4のフィルムの好ましい組み合わせは、Reの差が小さい組み合わせである。Reの好ましい範囲、及びReの差の好ましい範囲については、上記した通りである。
【0059】
本発明に使用可能な第1〜第4のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0060】
また、前記第1〜第4のフィルムの材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0061】
また、前記第1〜第4のフィルムの材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
第1のフィルムと第2のフィルム、第3のフィルムと第4のフィルムとは、異なる材料であってもよく、同一の材料であってもよい。
【0062】
[延伸]
第1〜第4のフィルムは、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。延伸処理によって、レターデーション及び面内遅相軸を調整することができる。上記した通り、第1及び第2のフィルムは、一方が、MD方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであるのが好ましい。また第3及び第4のフィルムは、一方が、MD方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に遅相軸を有するフィルムであるのが好ましい。一般的には、MD方向に遅相軸を有するフィルムは、MD方向に延伸することで、及びTD方向に遅相軸を有するフィルムは、TD方向に延伸することでそれぞれ作製することができる。
【0063】
幅方向(TD方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む−20℃〜+100℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0064】
フィルムの延伸は、MD方向あるいはTD方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、TD方向により多く延伸することが好ましい。TD方向の延伸は1〜100%の延伸が好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸を行う。MD方向の延伸は1〜10%の延伸が好ましく、特に好ましくは2〜5%延伸を行う。
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
製膜工程の途中で延伸を行う場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。
製膜して巻き取った原反を延伸する場合には、残留溶剤量が0〜5%の状態でTD方向に1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%延伸である。
【0065】
延伸処理は製膜工程の途中で行った後、製膜して巻き取った原反をさらに延伸処理しても良い。
製膜工程の途中で延伸処理されたフィルムを巻き取った後でさらに延伸処理する場合には、製膜工程の途中での延伸は残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で延伸することが好ましく、製膜して巻き取った原反の延伸は、残留溶剤量が0〜5%の状態で延伸することが好ましく、TD方向の延伸は未延伸の状態を基準として1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸である。
【0066】
また、第1〜第4のフィルムは、二軸延伸を行ってもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、TD方向に延伸した後、MD方向に延伸されるか、またはMD方向に延伸した後、TD方向に延伸される。
延伸での残留歪を緩和させ、寸度変化を低減させるため、また面内の遅相軸のTD方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−50〜Tg+50℃であることが好ましい。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短い。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線をもとめることによりTgを求めた。
【0067】
製膜工程の途中で延伸処理を行った場合、フィルムの乾燥は搬送したまま行うことができる。乾燥温度は100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100℃〜150℃であり、さらに好ましくは110℃〜140℃であり、特に好ましくは130℃〜140℃ある。乾燥時間は特に制限はないが、好ましくは10分から40分である。
最適な延伸後乾燥温度を選択することにより、製造されるセルロースエステルフィルムの残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化、光学特性変化、遅相軸方位の変化を小さくすることができる。
【0068】
製膜して巻き取った原反を延伸処理した場合、延伸処理されたフィルムはその後、さらに加熱処理される工程を経て製造されても良い。加熱処理する工程を経ることにより、製造される第1〜第4のフィルムの残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化、光学特性変化、遅相軸方位の変化が小さくなるので好ましい。加熱時の温度は特に制限はないが、100℃〜200℃が好ましい。
【0069】
<粘着剤層>
粘着剤層は、光学的に等方性であるのが好ましい。光学的に等方性の粘着剤層を形成可能な粘着剤の例には、アクリレート系粘着剤等が含まれる。また、貼合可能である限り、一般的には、接着剤に分類される剤を利用してもよい。
【0070】
<パターン光学異方性層>
パターン光学異方性層の材料については特に制限はなく、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物、及び延伸フィルム等の位相差フィルムなどを利用することができる。光学異方性層は、パターニングが必要であるので、パターニングが容易であるという観点では、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする組成物を利用するのが好ましい。
【0071】
前記光学異方性層は、配向膜を利用した種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141345号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0072】
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0073】
また、第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0074】
さらに、第3の態様として、重合性が互いに異なる重合性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有するディスコティック液晶を利用する方法がある。この態様では、ディスコティック液晶を所定の配向状態にした後、一方の重合性基のみの重合反応が進行する条件で、光照射等を行い、プレ光学異方性層を形成する。次に、他方の重合性基の重合を可能にする条件で(例えば他方の重合性基の重合を開始させる重合開始剤の存在下で、マスク露光を行う。露光部の配向状態は完全に固定され、所定のReを有する一方の位相差領域が形成される。未露光領域は、一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、未露光領域は、等方相状態に固定され、即ち、Reが0nmになる。
【0075】
<表面層>
本発明の光学異方性素子は、第2のフィルムの第1のフィルムが積層されている面と反対の面上に、または、第3のフィルムのパターン光学異方性層が設けられている側とは反対側の面上に、硬化膜からなる表面層を有していてもよい。表面層の機能については特に制限はない。外部からの物理的衝撃から保護するためのハードコート層や、外光の映り込みを防止するための反射防止層としての機能を有していてもよい。また、これらの積層体であってもよい。本発明の光学異方性素子が反射防止層等の表面層を有する場合、第2のフィルムまたは第3のフィルムは、表面層の支持体としても機能する。
一例は、図3または図11に示す例であり、ハードコート層及び反射防止層が積層された例である。上記表面層は、上記層とともに、又は上記層に替えて、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を有していてもよい。上記反射防止層及びハードコート層を構成する各層の詳細については、特開2007−254699号公報の[0182]〜[0220]に記載があり、本発明に利用可能な反射防止層についても好ましい特性、好ましい材料等について、同様である。
【0076】
<偏光膜>
本発明では、偏光膜として、一般的な直線偏光膜を用いることができる。偏光膜は延伸フィルムからなっていても、塗布により形成される層であってもよい。前者の例には、ポリビニルアルコールの延伸フィルムをヨウ素又は二色性染料等で染色したフィルムが挙げられる。後者の例には、二色性液晶性色素を含む組成物を塗布して、所定の配向状態に固定した層が挙げられる。
なお、本明細書では、「偏光膜」という場合は、直線偏光膜を意味するものとする。
【0077】
<液晶セル>
本発明の立体用画像表示システムに用いられる立体用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0078】
<立体画像表示システム用偏光板>
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前記位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線眼鏡が用いられる。光学異方性層の前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前記第1及び第2位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0079】
偏光眼鏡を含め、本発明の立体用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、位相差板は、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1位相差領域と前記第2位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0080】
円偏光を利用する場合、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
【0081】
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
【0082】
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
<実施例A>
下記表に記載の光学特性の第1及び第2のフィルムをそれぞれ準備した。マスク露光処理により作製したパターン光配向膜、マスクラビング処理により作製したパターンラビング配向膜、又は上記した、添加剤等と配向膜との相互作用のON−OFFを利用して形成されたパターン配向膜等を種々利用して、液晶組成物の配向を制御し、配向状態を固定することで、第1のフィルム上にパターン光学異方性層をそれぞれ形成し、FPRをそれぞれ作製した。なお、液晶組成物には、重合性棒状液晶または重合性ディスコティック液晶を利用し、所望により配向制御のための添加剤を添加し、また重合を進行させるための重合開始剤も添加した。このパターン光学異方性層は、図6(a)に示す例と同様のパターンλ/4層であり、第1及び第2の位相差領域がそれぞれλ/4を示していた。
【0085】
第2のフィルムのそれぞれの表面に、常法により、ハードコート層及び反射防止層を順次形成して、表面フィルムをそれぞれ作製した。
【0086】
上記で作製したFPRの裏面(パターン光学異方性層が形成されていない側の面)と、上記で作製した表面フィルムの裏面(ハードコート層及び反射防止層が形成されていない側の面)とを、光学的に等方性の粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合し、
下記表に記載の構成の光学異方性素子をそれぞれ作製した。
【0087】
【表1】
【0088】
市販のVAモード液晶表示装置の視認側偏光膜のさらに外側に、上記で作製した各光学異方性素子を積層した。
【0089】
(クロストークの評価)
作製した実施例1〜4、及び比較例1の光学異方性素子を積層させたVAモード液晶表示装置において、図13に示したように液晶表示パネルの奇数ライン(水平方向)上にパターニング位相差層の右眼用画像を透過する領域(第1位相差領域)となるように配置し、偶数ライン上にパターニング位相差層の左眼用画像を透過する領域(第2位相差領域)となるように配置した。この画面に対し、全ライン白表示とした「表示0」と、奇数ラインを黒表示、偶数ラインを白表示とした「表示1」と、奇数ラインを白表示、偶数ラインを黒表示とした「表示2」の3パターンの表示を行い、正面、および正面から斜め45度方向、極角5°の方向から、左右の眼鏡を透過した透過光の強度を測定した。このとき、各場所でのクロストーク量は下記式(1)および(2)を計算して求めたクロストーク(右眼)とクロストーク(左眼)の平均値として求めることができる。
式(1):
クロストーク(右眼)=(表示2での右眼鏡透過光)/(表示0での右眼鏡透過光)×100%
式(2):
クロストーク(左眼)=(表示1での左眼鏡透過光)/(表示0での左眼鏡透過光)×100%
また、参考例1として、第1及び第2のフィルムとしてガラス基板を使用した以外は実施例1と同様にして作製した表示装置を用いて同様にして評価した。
【0090】
【表2】
【0091】
表2から、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが直交していると、クロストークが軽減されることが分かる。一方、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが平行の関係にある比較例1では、クロストークが実施例と比較して劣ることがわかる。また、第1のフィルムの遅相軸と第2のフィルムの遅相軸とが直交していて、それぞれのRe差が8nmを超える実施例4は、クロストークが他の実施例と比較して劣ることが分かる。
<実施例B>
【0092】
次に第3のフィルムと第4のフィルムの間にパターン光学異方性層が配置された構成について評価を行った。
【0093】
表3に記載の第3のフィルムをそれぞれ準備し、マスク露光処理により作製したパターン光配向膜、マスクラビング処理により作製したパターンラビング配向膜、又は上記した、添加剤等と配向膜との相互作用のON−OFFを利用して形成されたパターン配向膜等を種々利用して、液晶組成物の配向を制御し、配向状態を固定することで、第3のフィルム上にパターン光学異方性層をそれぞれ形成し、FPRをそれぞれ作製した。なお、液晶組成物には、重合性棒状液晶または重合性ディスコティック液晶を利用し、所望により配向制御のための添加剤を添加し、また重合を進行させるための重合開始剤も添加した。このパターン光学異方性層は、図6(a)に示す例と同様のパターンλ/4層であり、第1及び第2の位相差領域がそれぞれλ/4を示していた。
【0094】
さらに第3のフィルムのパターン光学異方性層を形成した面の反対側の表面に、常法により、ハードコート層及び反射防止層を順次形成してパターン光学異方性層を有する表面フィルムをそれぞれ作製した。
【0095】
次に偏光子を2枚のフィルムで挟んだ偏光板を用意し、上記で作製したパターン光学異方性層を有する表面フィルムの光学異方性層側の面と偏光板を光学的に等方性の粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合した。この時、偏光板を形成する2枚のフィルムのうち、パターン光学異方性層を有する表面フィルム側のフィルムは表3に記載の第4のフィルムの特性を有する。
【0096】
【表3】
【0097】
市販のVAモード液晶表示装置を用意し、視認側偏光膜を取り除き、ここに上記で作成した偏光板とパターン光学異方性層を有する表面フィルムの貼合品を粘着剤(綜研化学株式会社製SK−2057)により貼合した。
【0098】
作製した実施例5、及び比較例2の光学異方性素子を積層させたVAモード液晶表示装置を温度25℃湿度10%の乾燥条件に48時間置いた後、クロストークの評価を行った。その結果を表4に記す。
【0099】
【表4】
【0100】
表4から、第3のフィルムの遅相軸と第4のフィルムの遅相軸とが直交していると、クロストークが軽減されることが分かる。一方、第3のフィルムの遅相軸と第4のフィルムの遅相軸とが平行の関係にある比較例2では、クロストークが実施例と比較して劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0101】
10 パターン光学異方性層
12 第1のフィルム
13 粘着剤層
14 第2のフィルム
15 表面層
15a ハードコート層
15b 反射防止層
16 偏光膜
a 面内遅相軸
b 面内遅相軸
1a 第1位相差領域
1b 第2位相差領域
20 第3のフィルム
22 第4のフィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子。
【請求項2】
前記第1のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第2のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である請求項1に記載の光学異方性素子。
【請求項3】
前記第1のフィルム及び第2のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である請求項1又は2に記載の光学異方性素子。
【請求項4】
前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムのいずれか一方が、MD方向に対して平行方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に対して平行方向に遅相軸を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項5】
前記第1及び第2のフィルムの間には、他の層が配置されていない、又は光学的に等方性の層のみが配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記積層体の前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項7】
第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子。
【請求項8】
前記第3のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第4のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である請求項7に記載の光学異方性素子。
【請求項9】
前記第3のフィルム及び第4のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である請求項7又は8に記載の光学異方性素子。
【請求項10】
前記第3のフィルムの前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面に、硬化膜からなる表面層が配置されている請求項7〜9のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項11】
偏光膜と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学異方性素子とを少なくとも有する偏光板。
【請求項12】
前記光学異方性素子が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学異方性素子であり、前記パターン光学異方性層と前記偏光膜とが貼合されている請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
前記光学異方性素子が、請求項7〜10の光学異方性素子であり、前記第4のフィルムと前記偏光板とが貼合されている、請求項11に記載の偏光板。
【請求項14】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学異方性素子と、を少なくとも有する立体画像表示装置。
【請求項15】
前記表示パネルが液晶セルを有する請求項14に記載の立体画像表示装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【請求項1】
面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記パターン光学異方性層が、面内遅相軸を互いに直交にして積層された第1及び第2のフィルムの積層体の面上に配置されていることを特徴とする光学異方性素子。
【請求項2】
前記第1のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第2のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である請求項1に記載の光学異方性素子。
【請求項3】
前記第1のフィルム及び第2のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である請求項1又は2に記載の光学異方性素子。
【請求項4】
前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムのいずれか一方が、MD方向に対して平行方向に遅相軸を有し、他方がTD方向に対して平行方向に遅相軸を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項5】
前記第1及び第2のフィルムの間には、他の層が配置されていない、又は光学的に等方性の層のみが配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記積層体の前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面上に、硬化膜からなる表面層が配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項7】
第3のフィルム、パターン光学異方性層、および、第4のフィルムを該順に有し、
前記パターン光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する光学異方性素子であって、
前記第3のフィルムと前記第4のフィルムは、分子の配列方向と平行または垂直な方向に面内遅相軸を有し、かつ、面内遅相軸が互いに直交にしていることを特徴とする光学異方性素子。
【請求項8】
前記第3のフィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)と、前記第4のフィルムのRe(550)との差が、8nm以下である請求項7に記載の光学異方性素子。
【請求項9】
前記第3のフィルム及び第4のフィルムのそれぞれの波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である請求項7又は8に記載の光学異方性素子。
【請求項10】
前記第3のフィルムの前記パターン光学異方性層が配置されている面と反対側の面に、硬化膜からなる表面層が配置されている請求項7〜9のいずれか1項に記載の光学異方性素子。
【請求項11】
偏光膜と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学異方性素子とを少なくとも有する偏光板。
【請求項12】
前記光学異方性素子が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学異方性素子であり、前記パターン光学異方性層と前記偏光膜とが貼合されている請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
前記光学異方性素子が、請求項7〜10の光学異方性素子であり、前記第4のフィルムと前記偏光板とが貼合されている、請求項11に記載の偏光板。
【請求項14】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学異方性素子と、を少なくとも有する立体画像表示装置。
【請求項15】
前記表示パネルが液晶セルを有する請求項14に記載の立体画像表示装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−256028(P2012−256028A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93183(P2012−93183)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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