説明

光学的に変化する磁性顔料を含む転写箔、転写箔の製造方法、転写箔の使用、および転写箔を備える物品または書類

本発明は、剥離コーティングされた担体(1)と、担体上にデザインの形を有する転写コーティング層(3)とを備える転写箔に関する。ここで、転写コーティング層(3)は、配向した光学的に変化する磁性顔料(optically variable magnetic pigment、OVMP)を含み、この顔料配向が画像、識別印、または模様を表す。箔を製造および使用する方法、さらに箔を担持する書類も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔(デカルコマニア、デカール、またブロッキングフォイルとも呼ばれる)の技術の分野、およびその、保護対象書類および一般的アイテムの保護への応用の分野にある。さらに具体的には、本発明は、磁気的に配向した光学的に変化する顔料粒子をインクまたはコーティング中に含む光学的に変化するデカールまたは箔、およびその製造、使用、これにより保護された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に変化する転写箔は、1989年にカナダ中央銀行によって20ドル紙幣に導入された。この箔は、蒸着多層薄膜干渉素子に基づくものであり、垂直視からかすめるような視点に変化させたときに金色から緑色への色シフトを呈した。この転写箔は5層(ZrO2/SiO2/ZrO2/SiO2/ZrO2)の全誘電体干渉膜を備え、干渉膜は暗い背景上に付けられていた(J. Rolfe, Optically Variable Devices for Use on Bank Notes, Proc. SPIE, Vol. 1210, 1990, pp 14-19、米国特許第3,858,977号明細書、米国特許第4,626,445号明細書)。
【0003】
カナダ中央銀行はその後、5層の全誘電体干渉膜を3層の金属−誘電体−金属ファブリ・ペロー干渉膜に替えた。この3層の金属−誘電体−金属ファブリ・ペロー干渉膜は、製造がより容易であるにもかかわらず、ほぼ同じ色シフトでより高い視感反射率を有し、暗い背景上に付けられる必要がなかった(米国特許第4,705,300号明細書、米国特許第4,779,898号明細書、米国特許第5,648,165号明細書)。
【0004】
上記の多層薄膜干渉膜は、剥離コーティングされた担体上に製造される。担体はPET箔であってよく、また製造はロール・ツー・ロール真空コーティング機で行われる。アイテム、すなわち物品または書類へ付ける前に、接着剤層が、干渉膜に付けられ、および/または物品または書類上の、干渉膜が転写されることになっている位置に印刷される。そして干渉膜は、ホットスタンピングまたはコールドスタンピングのような転写方法によって物品または書類に付けられ、剥離コーティングされた担体が除去される。
【0005】
上記の光学的に変化する転写箔の重大な欠点は、その機械的脆弱性である。実際、付けられた干渉膜は、特に保護されない限り、例えば鉛筆に付いている消しゴムで、容易に破いて書類から剥がすことができる。このため、光学的に変化する干渉膜転写箔は結局、通貨の用途においては光学的に変化するインクに取って代わられた。
【0006】
機械的脆弱性の欠点に加えて、上記の光学的に変化する干渉膜転写箔は、芸術的なデザインの柔軟性の欠如にも悩まされる。注目すべきことに、このやり方では、物品または書類に、所定の「色」および「色シフト」の特性を示すたった1種類の干渉素子を転写することしかできない。その結果、デザイナーの芸術的な自由度は、色および色シフトの特性の選択、および転写される模様の形の選択に限定されてしまう。光学的に変化する薄膜転写箔の限定されたデザイン可能性を改善するために、付けられた薄膜素子にさらにエンボス加工を施すことが試みられたが(英国Security Foiling社のSecurigrafix(登録商標)素子)、達成できる芸術的効果は貧弱なままだった。
【0007】
光学的に変化する転写箔の、機械的脆弱性および固有の芸術的なデザイン上の制約は、光学的に変化するインク(optically variable ink、OVI)を適切な印刷技術と共に使用することによって克服される(米国特許第4,434,010号明細書、米国特許第5,059,245号明細書、米国特許第5,084,351号明細書、米国特許第5,171,363号明細書、米国特許第5,653,792号明細書、および欧州特許第0227423号明細書(Phillipsら))。光学的に変化するインクは、薄片状の光学的に変化する顔料(optically variable pigment、OVP)を含むが、これは、対称(金属/誘電体/金属/誘電体/金属)型、例えばCr(3.5nm)/MgF2(200nm)/Al(60nm)/MgF2(200nm)/Cr(3.5nm)の層配列を有する真空蒸着した5層ファブリ・ペロー干渉膜を粉砕することによって得られる。この薄片状の粒子は、典型的には10μmないし50μmの直径と、典型的には0.5μmないし5μmの厚さを有する。
【0008】
干渉膜の最も外側の2つの金属層は、半透明/半反射型の層として具現され、中央の金属層は、全反射型の不透明層として具現される。色、および干渉膜の視角または入射角に伴う色の変化は、誘電体層の厚さおよび屈折率によって、また干渉膜を作るのに用いられる材料の光学特性によって決まる。本技術分野において、「吸収体層」という用語は、このような半透明/半反射型の層を指すのにも用いられる。
【0009】
光学的に変化するインク(OVI)を作るには、少なくとも1種類の光学的に変化する顔料(OVP)が、必要に応じて他の顔料および/または染料および/または印刷用添加剤とともに、少なくとも1つの樹脂を含む適切なインク結合剤に混ぜられる。そうして得られた光学的に変化するインクは、必要に応じて他のインクと組み合わせて、画像、識別印、または模様の形で基材に印刷され得る。基材は、保護対象書類または一般的物品の場合がある。
【0010】
上記を用いれば、標準的な印刷技術および既存の印刷装置を用い、異なるインクを適切に組み合わせて印刷画像を形成することにより、訴求力のある芸術的なデザインを実現することができる。光学的に変化するインク(OVI)が通貨に印刷されたのはタイが最初で(1987年、60バーツ記念発行)、後にドイツとフランス(1992年10月27日に1000ドイツマルク、1993年10月20日に50フランスフラン)、そして現在は、世界中のほとんどの通貨に標準として採用されている。
【0011】
光学的に変化するセキュリティ特徴の分野におけるさらなる発展は、光学的に変化する磁性顔料(optically variable magnetic pigment、OVMP)を含む光学的に変化する磁性インク(optically variable magnetic ink、OVMI)の利用である。このような顔料は、例えば米国特許第4,838,648号明細書、国際公開第02/073250号、欧州特許第686675号明細書、国際公開第03/00801号、米国特許第6,838,166号明細書、国際公開第2007/131833号に開示されている。光学的に変化する磁性インク中の光学的に変化する顔料粒子は、印刷後に適切な、非構造化された(すなわち均一な)または構造化された(すなわち空間的に変化する)磁場を印加することにより配向させてから、基材上の印刷インク組成物を固化することによってそれぞれの位置および配向に固定することができる。「配向した」光学的に変化する磁性インクは、最近は銀行券で用いられている(中国(10人民元)およびマカオ(20パタカ)の2008年オリンピック大会記念紙幣、カザフスタン記念紙幣(5000テンゲ))。
【0012】
コーティング組成物中で磁性粒子を配向させるための材料および技術、ならびに対応する印刷/磁気配向の複合工程は、米国特許第2,418,479号明細書、米国特許第2,570,856号明細書、米国特許第3,791,864号明細書、独国特許出願公開第2006848(A)号明細書、米国特許第3,676,273号明細書、米国特許第5,364,689号明細書、米国特許第6,103,361号明細書、米国特許出願公開第2004/0051297号明細書、米国特許出願公開第2004/0009309号明細書、欧州特許出願公開第710508(A)号明細書、国際公開第02/090002号、国際公開第03/000801号、国際公開第2005/002866号、および、米国特許出願公開第2002/0160194号明細書、ならびに同一出願人の同時係属出願である国際出願PCT/IB2008/003406号明細書に開示されている。
【0013】
インクはさらに、発光材料のような、追加の、特別にデザインされた明白な(すなわち肉眼で見える)および/または隠れた(すなわち肉眼で見えない)セキュリティ要素(マーカー)の組み込み、または犯罪捜査用タガントの組み込みのための適当な媒介物として用いることができる。これらは皆、これらでマーキングされた文書の真正性判定(認証)を可能にするものである。
【0014】
保護対象書類印刷業界における重要な課題は、製造された保護対象書類の偽造および転売を防ぐためにセキュアなサプライチェーンを提供することと、それらを製造するのに用いられる、鍵となる材料を提供することである。
【0015】
このような理由で、銀行券および同様の保護対象書類の印刷に用いられる光学的に変化するインク(OVI)および光学的に変化する磁性インク(OVMI)は、世界中の公式なセキュリティの高い銀行券印刷所から選ばれた、限られた認定印刷業者の集団だけに供給される。
【0016】
一方、交通機関の切符、イベントのチケット、物品税印紙、クレジットカード、アクセスカード、証明書、納税印紙などのような、銀行券以外の多くの書類は、通常は認定された銀行券印刷業者によって印刷されるのではなく、光学的に変化するインク(OVI)または光学的に変化する磁性インク(OVMI)の印刷設備を必ずしも備えない他のおびただしいセキュリティ印刷所の1つによって印刷され、そうした多くの書類における光学的に変化するセキュリティ要素の市場可能性は相当なものである。従って、この市場に貢献する切実な必要性が長らく存在しており、本発明はこの必要性に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、配向した光学的に変化する磁性顔料粒子を結合剤樹脂中に、好ましくは光学的に変化する磁性のインクまたはコーティング(OVMI)の形で含む転写箔(デカルコマニア、デカール、またブロッキングフォイルとも呼ばれる)を提供し、以下の説明で開示および規定されるように、図示し、請求する。転写箔は半製品であり、この半製品は、光学的に変化する磁性インクの印刷および配向の設備を備えた専用のセキュリティ印刷環境で製造することができ、転写箔を付ける設備を備えた別の環境で保護対象書類または一般的アイテムに付けることができる。
【0018】
本発明の転写箔は、あらゆる所与の用途に合わせて独自に仕様決定と設計をすることができるという点で、特注生産に大きな自由を提供する。また、本発明によって、通常は専用のセキュリティ印刷環境で製造されない書類または物品への光学的に変化する磁性特徴の応用可能性を保ったまま、専用のセキュリティ印刷環境の外で起こり得る光学的に変化する磁性インクの悪用(転売)がなくなる。
【0019】
本発明の転写箔は、裸眼で容易に認証可能であるとともに一般に利用可能な手段では容易に偽造され得ない、高度にセキュアな光学的に変化する要素をさらに提供する。
【0020】
本発明によれば、転写箔(デカルコマニア、デカール、またブロッキングフォイルとも呼ばれる)は、剥離コーティングされた担体(1)と、担体上に配置されたデザインの形の転写コーティング層(転写可能部分)(3)とを備え、転写コーティング層(3)が、配向した光学的に変化する磁性顔料(OVMP)粒子を含むことを特徴とする。接着剤層(4)が、当技術分野で知られるように、転写コーティング層(3)上にさらに配置されてもよい。
【0021】
さらに、配向した光学的に変化する磁性顔料粒子を結合剤樹脂中に含む転写コーティング層(3)は、光学的に変化する磁性インクで作られていないが上記デザイン、すなわち転写箔の転写可能部分の、不可欠な部分である層または層の部分を備える複合層であってもよい。
【0022】
画像、識別印、または模様であってよい上記デザインを担持する上記転写コーティング層は、その後、当技術分野で知られるようにホットスタンピング工程またはコールドスタンピング工程で、保護対象書類(例えば銀行券、パスポート、本人確認カード、アクセスカード、運転免許証、クレジットカード、引換券、交通機関の切符、イベントのチケット、納税印紙)または一般的な物品または書類(例えばブランドラベルまたは商品)のような基材に転写することができる。転写箔の転写可能部分の書類または物品への転写後、付けられた転写コーティング層から担体が除去される。
【0023】
[詳細な説明]
本発明の転写箔は、配向した光学的に変化する磁性顔料(OVMP)粒子を含み、配向した光学的に変化する磁性顔料(OVMP)粒子は、好ましくは、凝固した光学的に変化する磁性のインクまたはコーティング(OVMI)の層に含まれる。
【0024】
転写箔およびデカールは、グラフィックアートおよび装飾美術の当業者によく知られており、前もって作られた識別印、画像、または模様を布地、書類、または一般的アイテムのような製品上に転写するのに用いられる(米国特許第5,393,590号明細書、米国特許第5,681,644号明細書、米国特許第5,925,593号明細書、米国特許第6,808,792号明細書、欧州特許第0538358号明細書、欧州特許第0538376号明細書)。ここで、識別印、画像、または模様は、印刷および/またはその他の付着技術により、プラスチック箔または転写紙のような剥離コーティングされた中間担体に鏡面画像として前もって形成され、2番目のステップにおいて、ホットスタンピングまたはコールドスタンピングのような適切な転写技術により目標アイテムに転写される。中間担体は最後に除去されて、識別印、画像、または模様を担持するきれいな転写可能層が目標アイテムに残る。
【0025】
本開示の関連において、デザインとは、真空コーティング、前処理および後処理、そして磁性顔料配向を含む印刷工程またはコーティング工程によって製造され得るすべてのものを意味する。
【0026】
本記載の関連において、配向した光学的に変化する磁性顔料(OVMP)粒子とは、単純な印刷工程の結果として得られる配向とは違う配向でコーティング中に存在する顔料粒子を意味する。本発明の関連において、配向した顔料粒子は、付けられたばかりのコーティング層に、均一な、または適切に構造化された外部磁場を印加し、続けて顔料粒子を、得られたそれぞれの位置および配向で、欧州特許第1641624(B1)号明細書および国際公開第2008/046702(A1)号に開示されたように固化(凝固、乾燥、硬化)工程により固定することによって得られる。
【0027】
好ましくは、顔料粒子配向が、画像、識別印、または模様を表す。
【0028】
好ましくは、光学的に変化する磁性顔料(OVMP)が、ファブリ・ペロー型干渉顔料、および全誘電体屈折率変調型干渉顔料からなる群から選ばれた磁性薄膜干渉顔料である。磁気特性は、顔料粒子の構成層のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの磁性材料または磁化可能材料で構成されることにより、顔料粒子に与えられる。
【0029】
最も好ましくは、光学的に変化する磁性顔料(OVMP)が、吸収体層、誘電体層、反射体層、誘電体層、吸収体層の5層配列を備える顔料であって反射体層および/または吸収体層が磁性層である顔料と、吸収体層、誘電体層、反射体層、磁性層、反射体層、誘電体層、吸収体層の7層配列を備える顔料とからなる群から選ばれる。
【0030】
転写コーティング層(3)の結合剤樹脂は、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子ビーム硬化性樹脂、および熱硬化性樹脂からなる群から選ばれると有利である。
【0031】
好ましくは、転写箔は、転写コーティング層の範囲の少なくとも一部に、熱活性化型または放射線活性化型の接着剤の層(4)をさらに備える。最も好ましいのは、天然および合成の熱可塑性樹脂からなる群から選ばれた、熱活性化型の接着剤の層である。熱可塑性樹脂の例は、セラック、フェノールホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリシロキサンアクリレート等である。
【0032】
熱可塑性樹脂は、ホットスタンピング処理に有用な温度範囲、すなわち65℃ないし180℃、最も好ましくは80℃ないし120℃で粘着性になるべきである。さらに好ましいのは、溶着した状態で不可逆的に架橋して、転写されたコーティングが最終的な基材に耐久性よく固定されるような熱可塑性樹脂である。
【0033】
接着剤の化学的性質は、当業者に知られているように、転写箔が付けられる基材の化学的性質に合わせなければならない。適切な接着剤の選択については本発明の範囲外であるが、紙基材に付ける場合、接着剤は水素結合能を有していなければならない、すなわちフェノール、カルボン酸塩、アミド、ウレタンなどのような水素結合官能基を備えていなければならない、ということが当業者に知られている。
【0034】
場合によっては、転写コーティング層(3)と接着剤層(4)との間に、この境界面の接着を十分にするために、介在層が必要となることがある。あるいは、選ばれた接着剤層(4)にしっかりと接着するように転写コーティング層(3)の化学的性質が改変されてもよい。
【0035】
あるいは、転写コーティング層(3)それ自体を熱可塑性層として具現して、ホットスタンピングにより基材に直接転写することも可能である。しかしながら、この組み合わせは、転写コーティング層(3)中の顔料粒子の磁性配向が熱の影響により多かれ少なかれ失われてしまうという事実を考えると、好ましくない。
【0036】
別の考えられた実施の形態において、転写箔は、転写箔の範囲の少なくとも一部に、剥離コーティングされた担体(1)と転写コーティング層(3)との間に配置されたトップコーティング層(6)をさらに備える。
【0037】
さらなる考えられた実施の形態において、転写箔は、転写箔の範囲の少なくとも一部に、転写コーティング層(3)上、または転写コーティング層(3)と接着剤層(4)との間に配置されたボトムコーティング層(6’)をさらに備える。
【0038】
本発明による転写箔の、デザインの形の転写コーティング層(3)は、光学的に変化する磁性インクで作られていない層または層の部分を含む複合層であることが好ましい。この場合、複合層は、配向した光学的に変化する磁性顔料を含む第1のインクで印刷された少なくとも1つの領域、および他の種類の顔料および/または染料を含む第2のインクで印刷された少なくとも1つのさらなる領域を有する。
【0039】
上記他の種類の顔料および/または染料は、注目すべきことには、非磁性の光学的に変化する顔料、透明な光学的に変化する顔料、加法混色顔料、玉虫色の顔料、液晶ポリマー顔料、金属顔料、磁性顔料、紫外線または可視光線または赤外線を吸収する顔料、紫外線または可視光線または赤外線を発光する顔料、紫外線または可視光線または赤外線を吸収または発光する染料、およびこれらの混合物を含んでよい。
【0040】
加法混色顔料は、可視スペクトルの所定の部分を選択的に反射しつつ背景からの反射をすべて遮蔽する、光学的に不透明な反射性の顔料である。このような顔料は、有色の金属顔料または不透明な干渉顔料によって具現できる。有色の金属顔料は光学的に変化しない。高屈折率の誘電体材料(n>2)に依る干渉顔料は、一般に視角の変化に伴う色シフトがごくわずかで無視できるほどであり、従って光学的に変化するようには見えない。低屈折率の誘電体材料(n<1.65)に依る干渉顔料は、一般に視角の変化に伴う色シフトがかなりあり、従って、光学的に変化するように見える。これらの屈折率の限界間の境界線上の場合の光学的可変性については、視角に対する顔料の特定の色の感度で個別に判断しなければならない。黄色は、例えば青色または赤色よりも感度が高い。
【0041】
本発明による転写箔において、トップコーティング層(6)またはボトムコーティング層(6’)は、さらに金属層であってもよい。この金属層は、さらに識別印を表すか担持してよい。
【0042】
最後に、光学的に変化する磁性顔料を含むインク層(3)は、第2の種類の光学的に変化する磁性顔料、非磁性の光学的に変化する顔料、透明な光学的に変化する顔料、玉虫色の顔料、液晶ポリマー顔料、磁性顔料、金属顔料、さらには発光顔料または発光染料および吸収顔料または吸収染料で、両者共に可視スペクトル領域および/または赤外スペクトル領域におけるもの、ならびにこれらの混合物のような、他の種類の顔料および/または染料をさらに含んでよい。インク層(3)はさらに、発光材料のような、特別にデザインされた明白な(すなわち肉眼で見える)および/または隠れた(すなわち肉眼で見えない)セキュリティ要素(マーカー)、または犯罪捜査用タガントを担持してよい。これらは皆、これらでマーキングされた文書の真正性判定(認証)を可能にするものである。
【0043】
さらに開示されるのは、光学的に変化する転写箔を製造する工程であって、この工程は、
a)剥離コーティングされた担体(1)を供給するステップと、
b)担体(1)をトップコーティング層(6)で随意にコーティングするステップと、
c)剥離コーティングされた担体(1)またはトップコーティング層(6)に、磁性または磁化可能な光学的に変化する顔料粒子(5)を含む転写コーティング層(3)を付けるステップと、
d)付けられた転写コーティング層(3)の磁性または磁化可能な光学的に変化する顔料粒子(5)を、非構造化磁場または適切に構造化された磁場の印加によって磁気的に配向させるステップと、
e)配向した光学的に変化する顔料粒子をそれぞれの位置および配向に固定するために、配向した光学的に変化する顔料粒子を含む転写コーティング層(3)を固化させるステップと、
f)転写コーティング層(3)をボトムコーティング層(6’)で随意にコーティングするステップとを含む。
【0044】
特に好ましい実施の形態において、この工程は、
g)転写コーティング層(3)またはボトムコーティング層(6’)に接着剤の層を付けるさらなるステップを含む。
【0045】
さらに開示されるのは、本発明による転写箔を用いて書類または物品を保護する工程であって、この工程は、
a)ホットスタンピングおよびコールドスタンピングから選ばれた付着方法を用いて、本発明による転写箔から転写コーティング層(3)を書類または物品に付けるステップと、
b)付けられた転写コーティング層(3)から担体(1)を除去するステップと
を含む。
【0046】
本発明による光学的に変化する転写箔は、転写箔から転写コーティング層(3)を書類、商品、または物品に付けることによって、銀行券(通貨)、パスポート、本人確認カードまたはアクセスカード、運転免許証、クレジットカード、引換券、交通機関の切符、イベントのチケット、納税印紙のような書類の保護、さらには物品または商品等のようなアイテムの保護に使用することができる。
【0047】
また、銀行券、パスポート、本人確認カードもしくはアクセスカード、運転免許証、クレジットカード、引換券、交通機関の切符、イベントのチケット、納税印紙のような書類、または物品もしくは商品のようなアイテムであって、本発明による転写コーティング層(3)を担持するものも開示される。
【0048】
次に、本発明による転写箔、その製造、およびその使用について、図面および例示的な実施の形態を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】は、剥離コーティング(2)された担体(1)と、配向した光学的に変化する磁性顔料(5)を含む転写コーティング層(3)とを備える本発明の転写箔の第1の実施の形態を説明する図である。
【図2】は、接着剤層(4)をさらに備える本発明の転写箔の第2の実施の形態を説明する図である。
【図3】は、トップコーティング層および/またはボトムコーティング層(6、6’)をさらに備える本発明の転写箔の第3の実施の形態を説明する図である。
【図4】は、トップコーティング層および/またはボトムコーティング層(6、6’)ならびに接着剤層(4)をさらに備える本発明の転写箔の第4の実施の形態を説明する図である。
【図5】は、配向した光学的に変化する磁性顔料を含む第1のインクで印刷された領域、および他の種類の顔料および/または染料を含む第2のインクで印刷された領域を有する複合転写コーティング層(3)を有する本発明の転写箔のさらなる実施の形態を説明する図である。
【図6】は、基材(S)に付けられ、担体(1)が除去された状態の図2の転写箔を説明する図である。
【図7】は、以下に挙げた例に従って製造された転写箔を担体の印刷側から見た状態の写真を示す図である。剥離コーティングされた基材上の硬化したインクパッチが「a」の反転文字の像を表している。
【図8】は、以下に挙げた例による転写箔の、基材に付けられた後の状態の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明による光学的に変化する転写箔は、図1ないし図4を参照すると、表面に剥離コーティング(2)が付けられた担体(1)と、剥離コーティング(2)上に、配向した光学的に変化する磁性顔料(OVMP)(5)を含む転写コーティング層(3)とを備える。転写コーティング層(3)上には、熱活性化型または他の活性化型の接着剤の層(4)が設けられてよい。1つ以上のさらなるトップコーティング層(6)が、剥離コーティング(2)と転写コーティング層(3)との間、すなわち転写箔の最上部に設けられてよい。さらにさらなるボトムコーティング層(6’)が、転写コーティング層(3)上、または転写コーティング層(3)と接着剤層(4)との間にそれぞれ設けられてよい。
【0051】
箔は、好ましくは、ホットスタンピングおよびコールドスタンピングから選ばれた転写法で基材(S)に付けられ、その際、随意に硬化ステップが組み合わされる。箔を付けた後、剥離コーティング(2)を有する担体(1)は除去され、転写コーティング層(3)または場合に応じてトップコーティング層(6)が、基材(S)の表面に露出した状態で残る。
【0052】
このように、本発明による光学的に変化する転写箔はホットスタンピング箔であってよく、その場合、転写コーティング層(3)または接着剤層(4)のいずれかは、熱可塑性層または熱活性化型接着剤層のいずれかでなければならない。また、転写コーティング層(3)および/または接着剤層(4)は、放射線硬化機能を備えてよく、その場合、転写コーティング層を書類または物品に付けるのと同時、またはその後に、紫外線または電子ビームの放射によって層を最終的に固化(硬化)させることができる。
【0053】
担体(1)は、当業者に知られているように、紙またはプラスチック(例えばPET)から選ばれてよい。剥離コーティング(2)は、当技術分野で知られているようなシリコンコーティングであってよい。シリコン処理された表面は、それに付けられるあらゆる種類のコーティングに対して着脱可能に付着することが知られている。シリコン加工紙および蝋紙は、転写箔を製造するための好適な基材として当業者に知られている。
【0054】
図5を参照すると、特に好ましい実施の形態において、転写コーティング層(3)は、転写箔のデザインに応じて、「配向した」光学的に変化する磁性インク(9、9’、9’’)で印刷された領域、および他の種類の顔料および/または染料を含むインク(7、7’、7’’、7’’’)で印刷された領域を備える複合層である。また、金属化された表面(8、8’)が転写コーティング層(3)の上または内側にさらに設けられてよく、金属化された表面(8、8’)は、さらに識別印を表し、または担持してよい。光学的に変化する磁性インク(9’’)は、他の種類の顔料および/または染料(10)をさらに含んでよい。
【0055】
これら他の種類の顔料および/または染料(10)、そしてインク(7、7’、7’’、7’’’)中の他の種類の顔料および/または染料は、スペクトル選択的な吸収顔料、スペクトル選択的な反射顔料、紫外領域(300〜400nm)、可視領域(400〜700nm)、および赤外領域(700〜2500nm)のスペクトル選択的な放射(発光)顔料、ならびに架橋したネマチックまたはコレステリックの分子構造に基づく偏光性顔料から選ばれてよい。さらに、顔料は、磁性顔料や、犯罪捜査用マーキング顔料から選ばれてもよい。有用な顔料および染料については、当業者はO. Luckert, Pigment + Fullstoff Tabellen, 5. Ed., Laatzen, 1994を参照してもよい。同文献は、引用することによりここに組み込まれているものとする。
【0056】
光学的に変化する磁性インク(9、9’、9’’)は、例えば米国特許第4,838,648号明細書、国際公開第02/073250号、欧州特許第686675号明細書、国際公開第03/00801号、米国特許第6,875,522号明細書、米国特許第6,838,166号明細書、および国際公開第2007/131833号に開示された種類の光学的に変化する磁性または磁化可能な顔料粒子を含むと好ましい。
【0057】
本発明で用いるのに最も好ましい顔料は、米国特許第4,838,648号明細書による薄片状の5層ファブリ・ペロー干渉膜顔料で対称(吸収体/誘電体/磁性体/誘電体/吸収体)型、例えばCr(3.5nm)/MgF2(200nm)/Ni(100nm)/MgF2(200nm)/Cr(3.5nm)の層配列を有するもの、または薄片状の5層ファブリ・ペロー干渉膜顔料で対称(磁性吸収体/誘電体/反射体/誘電体/磁性吸収体)型、例えばNi(5nm)/MgF2(250nm)/Al(40nm)/MgF2(250nm)/Ni(5nm)の層配列を有するもの、または米国特許第6,875,522号明細書による薄片状の7層ファブリ・ペロー干渉膜顔料で対称(吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体)型、例えばCr(3.5nm)/MgF2(200nm)/Al(40nm)/Ni(100nm)/Al(40nm)/MgF2(200nm)/Cr(3.5nm)の層配列を有するもののいずれかである。
【0058】
5層構造では、顔料の明るい干渉色をもたらすために、中央の磁性体層は相当な光反射特性も有しなければならない。あるいは、外側の薄い吸収体層によって5層顔料に磁気特性を与えることもできる。これにより、磁性体層(または複数の磁性体層)を作るための有用な材料の数が制限される。7層構造では、磁性体はその光反射特性と無関係に選ぶことができ、これにより適切な磁気特性をもつ材料の選択に大きな自由がもたらされる。もちろん、顔料の構造は、補足機能または強化機能を顔料に与えるさらなる層を備えてもよい。
【0059】
最も好ましい実施の形態において、顔料の、色を生成する光学的に変化する構造は、反射体/誘電体/反射体のファブリ・ペロー型であり、外部からの光がファブリ・ペロー構造に入射して干渉を生じるように、少なくとも1つの反射体層、これは金属層にすることができるが、これが半光透過性である。代替となる実施の形態において、顔料の、色を生成する光学的に変化する構造は、全誘電体屈折率変調型であり、屈折率の異なる材料が交互に重なる層を備える。そのような構造の一例は、視角に応じて金色から緑色へのシフトを見せるものであり、ZrO2(75nm)/SiO2(302nm)/ZrO2(75nm)/SiO2(302nm)/ZrO2(75nm)の層配列を備える。ZrO2およびSiO2の屈折率は、それぞれ2.2および1.54である。当業者は、J.A. Dobrowolski, "Optical Thin-Film Security Devices," in "Optical Document Security," R.L. van Renesse, 2nd edition, Artech House, London, 1998, ch. 13, pp. 289-328を参照する。同文献は、引用することによりここに組み込まれているものとする。また、当業者は、同文献中に引用されている文書も参照する。どの場合でも、必要な磁気特性を顔料粒子に与えるための適切な措置がなければならない。これは、構成層のうちの少なくとも1つに少なくとも1つの磁性体または磁化可能な材料を含めれば達成できる。
【0060】
安定した屈折率変調型全誘電体色生成構造の具体的な例はコレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)であり、これについては、例えば米国特許第5,798,147号明細書、米国特許第6,899,824号明細書、国際公開第2008/000755(A1)号、欧州特許第1213338(B1)号明細書、欧州特許第0685749(B1)号明細書、独国特許出願公開第19922158(A1)号明細書、欧州特許出願公開第0601483(A1)号明細書、独国特許出願公開第4418490(A1)号明細書、欧州特許第0887398(B1)号明細書、国際公開第2006/063926号、米国特許第5,211,877号明細書、米国特許第5,362,315号明細書、および米国特許第6,423,246号明細書で知られている。磁性体とCLCPコーティングされた磁性コア粒子とを含むCLCP顔料もまた、本発明において光学的に変化する磁性顔料として用いることができる。
【0061】
光学的に変化する磁性インク(OVMI)は、スクリーン印刷法を用いて付けられるのが最も好ましい。スクリーン印刷によれば、注目すべきことに、10μmないし50μm程度の必要なコーティング厚を単純かつ迅速な方法で付けることができる。しかしながら、必要な技術があれば、他の印刷法、特に凹版印刷法、フレキソ印刷法、およびグラビア印刷法であっても、同じ目的に用いることができる。
【0062】
OVMIの付着または印刷と同時、またはその後に、インク中の磁性または磁化可能な顔料粒子が、当技術分野で知られているように、非構造化磁場または適切に構造化された磁場の印加によって配向させられる。
【0063】
次に、配向した磁性または磁化可能な粒子を含むインクは、粒子をそれぞれの配向および位置に固定するために固化させられる。適切な固化、乾燥、または硬化の方法は当業者に知られており、インクは、利用可能な乾燥/固化の設備に応じて調合可能である。本発明の関連における好ましい固化工程は、放射線硬化(すなわち光硬化または電子線硬化)によるものであり、最も好ましくは紫外線硬化によるものである。紫外線硬化には、瞬間的に固化させて、手ごろな設備コストで最高の生産速度が得られるという利点がある。
【0064】
剥離コーティング(2)と転写コーティング層(3)との間、または転写コーティング層(3)と基材(S)もしくは接着剤層(4)との間にそれぞれある、さらなるコーティング層(6、6’)は、当業者に知られて用いられている任意の種類のものであってよい。特に、コーティング層(6、6’)は金属層として選ばれてよく、金属層は、さらに識別印を表し、または担持してよい。そのような識別印は、例えば、選択エッチング、エンボス加工、または印刷によって金属層内に具現されてよい。
【0065】
付着工程次第であるが、前もって作られた転写コーティング層(3)は、転写された後に、書類または物品の上で、化学物質および/または放射線(紫外線、電子ビーム)での処理によるさらなる硬化、または適切な保護ワニスでのワニスがけのような後処理を施されてよい。
【0066】
[発明の例示的な実施の形態]
粉砕薄膜ファブリ・ペロー型の配向した光学的に変化する磁性顔料を含む転写箔
光学的に変化する磁性顔料を含む紫外線硬化型シルクスクリーンインクを以下のように(重量で)調合した。
【表1】

(1)産業用原材料(例えばサートマー製SR351)
(2)産業用原材料(例えばサートマー製SR306)
(#)顔料は、マゼンタ−緑色の5層の光学的に変化する磁性顔料で、供給元は米国カリフォルニア州サンタローザのJDSユニフェイズのFlex Products社。
(#)他のインクを作るには、顔料を同じ重量の他の顔料(または複数の顔料)で置き換える。
【0067】
樹脂と添加剤との均一混合物に顔料をかき混ぜながら入れた。粘度は、ダワノールPMA/ヒュームドシリカで500mPa・sないし800mPa・s(ブルックフィールド)に含まれる目標粘度に合わせた。
【0068】
マゼンタ−緑色の光学的に変化する磁性インクを、70線/cmのメッシュサイズ(スクリーン孔の開口は約80マイクロメートル)を用いて、シリコン剥離コーティングされた紙の担体に丸いパッチの形でスクリーン印刷した。印刷に続いて、担体上の濡れた状態の印刷されたインクパッチを、欧州特許第1641624(B1)号明細書に従って、彫り込まれた永久磁石板の磁場にさらした。その際、永久磁石板を、この目的のため、印刷を施された担体の下に一時的に配置した。永久磁石板は、「プラストフェライト(Plastoferrite)」板で、彫り込まれた表面に対して垂直方向に磁化され、「a」の反転文字の形で深さ0.3mmに彫り込まれたものだった。彫り込まれた永久磁石板の磁場にさらした後、紫外光(200W/cmの電灯2つ)下でインクパッチを固化(硬化)し、これにより、光学的に変化する磁性顔料粒子の位置および配向を不可逆的にインク母材中に固定した。
【0069】
箔の転写可能部分を基材に付けた後にデザインが正しく表れるようにするためには、印刷および磁気配向はすべて、鏡面反転した向きで行わなければならないことに留意されたい。
【0070】
さらなるステップにおいて、熱可塑性接着コーティング(工業用1:5セラックのエタノール液、エタノール/ヒュームドシリカで800mPa・sに粘度調整したもの)を、紫外線硬化されたインクパッチの上にスクリーン印刷で付けた。乾燥後、印刷されたパッチは図7に示す外観を有していた。
【0071】
印刷されたパッチを、処理されていない白い紙に実験室条件下で(120℃の高温のアイロンを用いて)転写し、剥離コーティングされた紙の担体を除去した。転写されたパッチは図8に示す外観を有していた。
【0072】
同様にして、「配向した」光学的に変化する磁性インクで印刷された領域、および他の種類の顔料および/または染料を含む第2のインクで印刷された領域を有する複合転写コーティング層を作った。
【0073】
ある特定の例は、「マゼンタ−緑色」の光学的に変化する磁性インクの丸いパッチで構成した。この磁性インクは、上記の例のように文字「a」を表すように配向させたが、直交入射において光学的に変化するインクと同じ色を示すように色合わせされたマゼンタインクの環状領域で周囲を囲んだ。これら2つのインクは、スクリーン印刷とそれに続く紫外線硬化を続けて2回行って印刷した。
【0074】
この例の変形では、周囲を囲む環状領域を第2の光学的に変化するインクで印刷した。第2の光学的に変化するインクは、視角に応じた色シフトが「マゼンタ−緑色」の光学的に変化する磁性インクより少ないものであり、40°という斜めの視角において後者の反射スペクトルと合うように選んだ。これについては、同一出願人の同時係属出願である国際出願PCT/IB2008/002620号明細書に開示されたように行った。
【0075】
さらに別の例では、(アルミニウム顔料を含む)金属インクを、シリコン剥離コーティングされた紙の担体に署名ロゴ(signature logo)の形でスクリーン印刷した。印刷した金属インクを硬化させた後、マゼンタ−緑色の光学的に変化する磁性インクを丸いパッチの形で署名ロゴ上にスクリーン印刷し、署名ロゴの影を再現するように磁気配向させた。紫外線硬化の後、熱活性化型の接着剤の層を光学的に変化する磁性インク上に付け、印刷したパッチを上に開示したようなコーティングされていない紙の基材に熱転写した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離コーティングされた担体(1)と、前記担体上にデザインの形で転写コーティング層(3)とを備える転写箔において、前記転写コーティング層(3)が、配向した光学的に変化する磁性顔料(optically variable magnetic pigment、OVMP)粒子を含むことを特徴とする転写箔。
【請求項2】
前記顔料粒子配向が、画像、識別印、または模様を表す請求項1に記載の転写箔。
【請求項3】
前記光学的に変化する磁性顔料(OVMP)が、ファブリ・ペロー型干渉顔料、および屈折率変調型干渉顔料からなる群から選ばれた薄膜干渉顔料である請求項1ないし2のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項4】
前記光学的に変化する磁性顔料(OVMP)が、吸収体層、誘電体層、反射体層、誘電体層、吸収体層の5層配列を備える顔料であって前記反射体層および/または前記吸収体層が磁性層である顔料と、吸収体層、誘電体層、反射体層、磁性層、反射体層、誘電体層、吸収体層の7層配列を備える顔料とからなる群から選ばれる請求項1ないし3のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項5】
前記転写コーティング層(3)の結合剤樹脂が、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子ビーム硬化性樹脂、および熱硬化性樹脂からなる群から選ばれる請求項1ないし4のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項6】
前記転写コーティング層の少なくとも一部に、熱活性化型または放射線活性化型の接着剤の層をさらに備える請求項1ないし5のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項7】
前記転写箔の少なくとも一部に、前記剥離コーティングされた担体(1)と前記転写コーティング層(3)との間に配置されたトップコーティング層(6)をさらに備える請求項1ないし6のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項8】
前記転写箔の少なくとも一部に、前記転写コーティング層(3)上、または前記転写コーティング層(3)と前記接着剤層(4)との間に配置されたボトムコーティング層(6’)をさらに備える請求項1ないし7のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項9】
前記転写コーティング層(3)が、配向した光学的に変化する磁性顔料を含む第1のインクで印刷された領域、および他の種類の顔料および/または染料を含む第2のインクで印刷された領域を有する複合層である請求項1ないし8のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項10】
トップコーティング層(6)またはボトムコーティング層(6’)が金属層である請求項1ないし9のうちの1項に記載の転写箔。
【請求項11】
前記金属層が識別印を表し、または担持する請求項10に記載の転写箔。
【請求項12】
光学的に変化する転写箔を製造する工程であって、
a)剥離コーティングされた担体(1)を供給するステップと、
b)前記担体(1)をトップコーティング層(6)で随意にコーティングするステップと、
c)前記剥離コーティングされた担体(1)または前記トップコーティング層(6)に、磁性または磁化可能な光学的に変化する顔料粒子(5)を含む転写コーティング層(3)を付けるステップと、
d)前記付けられた転写コーティング層(3)の前記磁性または磁化可能な光学的に変化する顔料粒子(5)を、非構造化磁場または適切に構造化された磁場の印加によって磁気的に配向させるステップと、
e)前記配向した光学的に変化する顔料粒子をそれぞれの位置および配向に固定するために、前記配向した光学的に変化する顔料粒子を含む前記転写コーティング層(3)を固化させるステップと、
f)前記固化した転写コーティング層(3)をボトムコーティング層(6’)で随意にコーティングするステップと
を含む工程。
【請求項13】
g)前記転写コーティング層(3)または前記ボトムコーティング層(6’)に接着剤の層を付けるさらなるステップ
を含む請求項12に記載の工程。
【請求項14】
書類または物品を保護する工程であって、
a)ホットスタンピングおよびコールドスタンピングからなる群から選ばれた付着方法を用いて、請求項1ないし11のうちの1項に記載の転写箔から転写コーティング層(3)を前記書類または物品に付けるステップと、
b)前記付けられた転写コーティング層(3)から前記担体(1)を除去するステップと
を含む工程。
【請求項15】
書類、銀行券、パスポート、本人確認カード、アクセスカード、運転免許証、クレジットカード、引換券、交通機関の切符、イベントのチケット、納税印紙、物品、または商品の保護のための、請求項1ないし11のうちの1項に記載の光学的に変化する転写箔の使用。
【請求項16】
請求項1ないし11のうちの1項に記載の転写箔からの転写コーティング層(3)を担持する書類、銀行券、パスポート、本人確認カード、アクセスカード、運転免許証、クレジットカード、引換券、交通機関の切符、イベントのチケット、納税印紙、物品、または商品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−500177(P2013−500177A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522110(P2012−522110)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060577
【国際公開番号】WO2011/012520
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(311003204)シクパ ホールディング エスアー (21)
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH−1008 Prilly Switzerland
【Fターム(参考)】