光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求める方法、同方法を実行するための装置、及び同方法の使用
公知の方法は全反射の測定に基づいており、反射光の測定又はそれに続く他の方法による屈折率の測定のいずれかによる規格化を必要とする。その結果、公知の方法は汎用的に使用することができない。この分野で公知の制御方法は製造プロセスにおける特殊な特性に基づいて定性的にしか動作しない。しかし、真の定量的制御のためには、制御すべき要素(光学的層パラメータ)を測定可能にすることが不可欠である。本発明による方法は光学的に薄い層の物質組成を直接的に求めるものであり、波動インピーダンスとともに電磁伝送線路理論から導かれた光学的層モデルに基づいている。堆積層は好ましくは白色光源からの好ましくは非コヒーレント光により照射され、全反射以外の反射強度が空間分解型光検出器、好ましくはCCD、によって検出され、層モデルに供給される。層モデルの特徴関数はプロセスの実際値へと当てはめられ、光学的層パラメータを数値的に求めるために使用される。具体的な物質組成はこの光学的層パラメータから導かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ(屈折率nSchichtを実部とし、吸収係数κSchichtを虚部とする複素屈折率nkomplexと、実層厚dSchicht)間の相関によりインシトゥで求める方法、及びこの方法を実行及び適用するための装置に関する。
【0002】
先行技術
DE 69917 899 T2には、反射分光法によりシリコンウェーハのドーピングを決定することが記載されている。それによれば、基準測定と試験測定が行われ、複素屈折率に関する既知の物理的な計算方法に従って、光学的に薄い層の厚さが計算される。光線の光学的な反射の式が詳細に説明されており、このため、測定すべき層のモデル形成を理解することができる。ただし、ここで測定そのものはエクスシトゥでしか不可能である。測定は赤外領域で実行される。なぜならば、考察される層の厚さが属している厚さ範囲では、厚さを求めるための干渉波を評価するのにIR測定が必要となるからである。
【0003】
DE 197 23 729 A1からは、プラズマビームとイオンビームを援用したエッチング及びコーティングにおける光学的厚さ定数をインシトゥで求める方法が公知である。この文献では、光学的定数を表面加工源の特性放射による光の反射から求める方法が説明されている。表面加工中に、発生した干渉から反射のスペクトルを記録する。波長フィルタを介して4つの異なる波長を個別に検出する。規格化された光線の測定信号から層の絶対(実)厚さを求める。しかし、この方法は表面加工にプラズマビーム又はイオンビームを用いるシステムでしか適用できない。というのも、プラズマビーム又はイオンビームの強さも記録しなければならないからである。基板自体は測定されない。規格化された屈折率が測定され、その実際の値は後で求められる。使用される式は三層系(空気−非吸収性媒体−基板)に対するフレネルの式に相当する。
【0004】
EP 1 435 517 A1には、分光エリプソメータを使用して薄い多層系を測定することが記載されている。しかし、楕円偏光法は非常に滑らかな層でしか信頼性をもって機能しない。その上、楕円偏光法による測定はエクスシトゥでしか可能でない。というのも、反射を偏光測定法によって評価しなければならないからである。この評価は入射光の偏光とそれによって生じる反射光線への影響とを変化させることによって行われる。複素屈折率は決められた波長変更によって求められる。この方法は光学的モデルを用いた多層系に対して機能するが、この光学的モデルは、周波数に依存する(高速フーリエ変換FFTに似た)厚さ及び屈折率の関数の数値的な調整(当てはめ)に基づいている。
【0005】
EP 1 467 177 A1からも多層系の厚さ測定法が公知である。この方法はエクスシトゥ測定とそれに続くフーリエ変換による評価に基づいている。この方法では、プローブに光が照射され、FFTにより周波数スペクトルが求められる。FFTのピークの評価により、個々の層の厚さが求められる。様々な波長に対する空間分解型光学検出器として、CCD(電荷結合素子)を使用する。
【0006】
DE 10 2005 023 735 A1からは、表面分析をエクスシトゥで自動的に実行する方法が公知である。この方法は理論上の曲線をFFT法や勾配法によって測定曲線に適合させる。しかし、この方法では、もはや光学的に薄い層には分類されない10μmを超える層の厚さが考察される。反射スペクトルは計算されたスペクトルと比較される。また、もっぱらFFTスペクトルのみが評価され、このスペクトルの発生したピークが考察される。層の数はFFTスペクトルによって求められる。それゆえ、層はすでに処理が完了していなければならない。というのも、そうでなければ、スペクトルをこのように捕捉することはできないからである。つぎに、このスペクトルから様々な近似法が導出される。
【0007】
DE 10 2005 023 737 A1には、どのようにして全反射から薄層の層厚又は屈折率を求めることができるのかが示されている。層厚又は拡散パラメータは反射スペクトルから求められることが記載されている。このために、測定値がモデルスペクトルと比較される。しかし、現時点で変化した層しか顧慮されず、使用されるモデルもそれ以上説明されていない。
【0008】
前記の刊行物は滑らかな表面における光線の反射の分析という範疇に入る。すべての方法が全反射の測定に基づいており、反射光の測定又はそれに続く他の方法による屈折率の測定のいずれかによる規格化を必要とする。使用される光学モデルはフレネル式の使用に基づいている。これらの方法は光学的に薄い層を得るために材料の蒸発プロセスを制御する目的では使用されていない。
【0009】
黄銅鉱薄層を基板上に堆積させるプロセスのための方法は例えばDE 102 56 909 B3から公知である。この文献では、堆積プロセスと黄銅鉱薄層の形成を制御するために、光源としてある波長のコヒーレント光が動いている基板に向けられる。この方法における制御は粗い表面でのレーザ光の散乱に基づいている。Cu(In,Ga)Se2層の蒸着プロセスは3段階に分割される。段階Iはインジウムとガリウムの蒸発を含み、段階IIは銅の同時蒸発を含み、段階IIIはインジウムとガリウムの同時蒸発を含む。さらに、プロセス全体の間、セレニウムを蒸発させる。基板の材料(ガラス、チタン又はプラスチック)と特性は包括的に説明されている。基板運動の様々なコンセプト(通り抜け、回転、ロール・ツー・ロール)が示されている。使用されるレーザを動かすコンセプトも提示されている。この公知の方法を用いれば、プロセスを制御しながら実行することが可能である。この公知の方法におけるプロセス制御はレーザ光散乱法(LLS)に基づいており、個々の特徴点を利用する。その際、個々の段階の間、レーザ光の制御信号が記録される。とりわけ、堆積される層の化学量論比を推定するために、第2の段階の制御信号が利用される。しかし、この制御では、プロセスを再現可能に実行する可能性はもたらされない。というのも、そのためには光学的な層パラメータの数値情報を用いた制御が必要となるからである。したがって、プロセスの定性的な監視しか行われない。質的な偏差がある場合には、「蒸発源の温度」や「基板の速度」といった製造パラメータが相応して変更される。
【0010】
R. Scheer他による刊行物I"Cu(In1-xGax)Se2 growth studies by in situ spectroscopic light scattering"(Applied Physics Letters 82 (2003), p.2091-2093)では、堆積させる層の粗さと制御信号との間の依存関係を認識することができるように、LLSの方法がスペクトル光散乱へと拡張されている。コヒーレントレーザ光は粗い表面でしか機能しない。プロセス開始時の基板は通常滑らかであるが、そのような滑らかな表面では、評価しうる測定信号が生じない。SLSの場合、レーザの代わりに白色光源が使用され、SSDスペクトロメータが検出器として使用される。同様に、SLSに基づいたプロセス制御がK. Sakurai他による刊行物II"In situ diagnostic methods for thin-film fabrication: utilization of heat radiation and light scattering"(Progress in Photovoltaics: Research and Applications 12 (2004), p.219-234)から公知であり、本発明は最も近い先行技術としてこの刊行物を前提としている。しかし、プロセス制御については論じられていない。この場合でも、光学的層パラメータの数値が知られていないため、薄層の成長の定量的な制御を行うことができず、ひいては操作量(方法パラメータ)を調節ことにより制御量(光学的層パラメータ)の実際値を目標値へと制御することもできない。
【0011】
薄層の成長を定量的に制御する方法は例えばUS 5 450 250に示されている。この公知の方法では、レーザとCCDカメラを用いて、光学的に薄い層の厚さが干渉法により測定される。レーザはシリコン基板の表面を照明する。CCDカメラは入射レーザ光の反射を記録及び評価する。この方法は干渉法に基づいている(DE 10 2005 050 795 A1及びDE 10 2006 016 132 A1の干渉法を参照せよ)。この方法では、入射光と反射光は極端なケースでは破壊的又は建設的に重畳しうるように重なり合う。これにより、薄層の絶対厚さを測定することができる。しかし、これは測定された材料の光学的特性が十分に知られていない限り不可能である。そのためには、何よりも複素屈折率の大きさが知られていなければならない。さらに、前記した材料特性が堆積プロセス中に頻繁に変化を被るということが考慮されない。それゆえ、上記の方法では、定量的なプロセス制御及び調整は原理的に可能というだけである。
【0012】
本当の閉ループ制御という意味でのプロセス制御のためには、例えばUS 7 033 070 B2に記載されているように、制御されるべき要素を測定可能にすることも不可欠である。シリコン単結晶を得るための結晶引き上げ法(浮遊帯域法)を監視するために、CCDカメラを用いてシリコン溶融の温度が監視される。この方法では、引き上げられた結晶はハロゲンランプによって局所的に加熱される。カメラはハロゲンランプにより加熱される結晶の領域に向けられている。ここで、CCDカメラは光源の反射光と散乱光のフィルタリングによって溶融の光度を測定し、これにより温度を推定する。このためにCCDカメラには赤外光を可視化するフィルタが装備される。こうして、この公知の方法はシリコンの溶融を溶融の固有光度によって数値的に監視する。ただし、この方法によっては材料の組成又は厚さに関する情報はまったく得られない。むしろ、引き上げられるべき結晶がどの程度まで溶融しているかがカメラによって監視される。
【0013】
発明の課題
本発明の課題は、冒頭に述べた、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ間の相関によりインシトゥで求める方法において、堆積した層の物質的な組成を光学的な層パラメータに基づいて求めることができるようにすることである。しかも、この方法は低コストかつ妨害に強くリアルタイムで実行可能でなければならない。この方法を実行する好適な装置は相応の構成要素を有していなければならない。
【0014】
さらに、連続的な同時蒸発プロセス中の光起電性にとって効率の良い半導体層が再現可能に製造されることが絶対に保証されなければならない。蒸発プロセスの連続性が、蒸発プロセスの各時点における制御を可能にするインシトゥ法の必要性をもたらす。しかし、閉ループ制御によってプロセスを制御できるようにするためには、閉ループ制御機構がエラーや妨害の影響から自由に動作でき、制御量が測定可能であることが必要である。同じように、避けられない妨害源の影響を無視できる程度に保つことも必要である。それゆえ、本発明による方法の適用の際には、具体的な光学的層パラメータに定量的にアクセスする閉ループ制御という意味でのプロセス制御も実行可能でなければならない。このためには、制御される要素(層パラメータ)を測定可能にすることも不可欠である。
【0015】
これらの課題の解決手段は、方法、製品及び使用に関する独立請求項に記載されている。有利な実施形態はそれぞれの従属請求項に示されており、以下において本発明との関連でより詳しく説明される。
【0016】
本発明による方法は、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求めるのに適している。ここで、光学的に薄い層とは、複素屈折率nkomplex(実部:屈折率nSchicht;虚部:吸収係数κSchicht)と実層厚dSchichtとが干渉法によって評価可能な相関において互いに依存しているような層である。干渉法は、層が厚すぎるか、吸収性が高すぎる場合に限界に達する。通常、光学層は最大で入射波長の10倍までの厚さ又は1000nm未満の厚さを示す。
【0017】
本発明による方法は、このような光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求めるために、層の製造中に少なくとも以下の方法ステップを含む。
【0018】
光学的に薄い層を堆積させる間、基板は堆積面上で可視光領域の非コヒーレント光によって照射される。その際、少なくとも3つの異なる波長λ1、λ2、λ3の光が堆積された層に向けられる。未知の光学的層パラメータ(屈折率nSchicht、吸収係数κSchicht及び層厚dSchicht)も3つ求めなければならないので、3つの異なる波長が必要である。非コヒーレント光は粗い表面でも滑らかな表面でも使用することができる。コヒーレント光の使用は粗い表面に限定されている。
【0019】
堆積した層から発する拡散性光散乱又は直接光散乱は3つの異なる波長λ1、λ2、λ3において空間分解されて光学的に検出される。それぞれについて反射強度Rの時間的経過が測定される。しかし、その際、全反射が生じないように光を入射させる。同様に、全反射も光学的に薄い層には生じない。
【0020】
異なる波長λ1、λ2、λ3について検出された反射強度Rの数値は測定と時間的に並行して光学的層モデルに供給される。したがって、光学的層モデルは堆積プロセスと時間的に同期して動作する。この光学的層モデルは電気通信技術から公知の一般的な伝送線路理論に基づいている。伝送線路理論では、堆積した各層は、可変の波動インピーダンスZG、伝搬定数γ、及び導体の長さに等しい層厚dSchichtをもつ電磁導体として解釈される。
【0021】
光学的層モデルは異なる波長λ1、λ2、λ3ごとに数値的に評価される。層モデル又は層モデルを記述する関数を検出された反射強度の時間的経過に適応させることにより、堆積させた層の光学的層パラメータ(屈折率nSchicht、吸収係数κSchicht及び層厚dSchicht)の実数値が得られる。その際、波長に依存する実層厚dSchichtが基準値として定められるので、本発明による方法は自己参照的である。従来の技術から公知のように、付加的に検出される量を用いて外部から基準を形成しなくてもよい。
【0022】
光学的層パラメータの数値的に求められた値から、検出された堆積層のそのときの材料組成が求められる。これは既知の材料組成の光学的層パラメータの値を標準値と比較することにより行われる。
【0023】
本発明による方法の1つの有利な実施形態では、異なる層の間で材料組成が変わる場合、先行する層の光学的層パラメータの求められた値が記憶され、次の層のための基準値として使用される。それゆえ、本発明による方法は光学的に薄い層の任意の積み重ねに対しても使用することができる。というのも、本発明による方法はつねに最上層をその下の層に対して基準値として分析するからである。さらに、有利には、入射する単一波長のコヒーレント光によって生じる反射の強度をさらに測定してもよい(LLS)。これにより、堆積層の表面の粗さの影響を考慮することができる。しかし、これは粗い表面が存在することを前提としている。滑らかな表面はコヒーレント光では分析できない。
【0024】
本発明による方法の個々の求め方及び実施形態と、本方法を実行するための好適な装置、特に例えば赤色、青色及び緑色に対する光学検出器としてのCCD又はCMOSカメラと白色光源を有する光学的撮像装置とに関する詳細は、個別的な実施部分からうかがえる。
【0025】
本発明による方法は、好ましくは、気相から基板上に堆積させられる光学的に薄い層を形成する際のインシトゥプロセス制御として適用される。本方法は閉ループ制御回路に組み込まれ、この閉ループ制御回路が、光学的に薄い層の光学的層パラメータの計算された実際値を制御量として、光学的層パラメータの求められた実際値に応じ、操作量である製造パラメータの調節により所定の目標値へと制御する。
【0026】
さらに、本発明による方法は、光学的に薄い層ではなく、吸収性のある層を成長させる場合にも、インシトゥプロセス制御として使用することができる。この場合、少なくとも化学量論量の推定のために本発明による方法を考慮することができる。基板上に堆積させた層から発する全反射以外の拡散性光散乱又は直接光散乱の反射強度Rも少なくとも2つの波長λ1、λ2において相応に解釈される。明らかな経過の変化は化学量論量に達した時点を示す。さらに、本発明による方法では、複数の蒸発源の同時温度監視が空間分解型光検出を介してこれら蒸発源の温度放射の色度を解釈することによって行われる。最後に、粗い基板又は粗い堆積層への適用も可能である。というのも、非コヒーレント光の使用により相互干渉が生じないからである。しかし、粗さの影響も考慮したいならば、相応にコヒーレント(レーザ)光を使用しなければならない。好適な適用形態に関する詳細は同様に個々の説明部分から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】伝送線路理論を光学的に薄い層に橋渡しするための図を示す。
【図1B】光学的に薄い層での干渉法の基本図を示す。
【図2】反射強度の時間依存性から厚さ依存性への変換の図を示す。
【図3A】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3B】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3C】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3D】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図4】画像信号の3つの色成分すべての測定信号を表した図を示す。
【図5】PVDプロセス全体の基本図を示す。
【図6】PVDプロセス全体の光学的に薄い堆積層の積層体を示す。
【図7】複数の層から成る積層体のSEMマイクログラフを示す。
【図8】PVDプロセス全体の配置構成の概略図を示す。
【図9】プロセス制御のための閉ループ制御回路を示す。
【図10】CCD検出器の測定信号を示す(ステージI)。
【図11】反射強度の時間的経過のグラフを示す(ステージI)。
【図12】CCD検出器の測定信号を示す(ステージII)。
【図13】反射強度の時間的経過のグラフを示す(ステージII)。
【図14】本発明の測定信号と従来技術の測定信号を比較する。
【図15】粗い層での測定信号をコヒーレント光源と非コヒーレント光源とで比較する。
【0028】
実施例
I)本発明による方法の理論的基礎
本発明による方法の開発の発端は波動理論にある。この理論は誘電媒体中の波動の伝搬を記述するものであり、例えば高周波技術の分野では周知である。本発明では、光学的に薄い層に波動理論を転用する。各層は、伝搬定数、波動インピーダンス及び(伝送線路長に応じた)厚さから成るパラメータセットを有する個々の伝送線路として解釈され、一意的に記述される(図1A参照)。図1Aの左側部分には、2つの波動インピーダンスZF1、ZF2と真っ直ぐに成長する上方層の厚さdによって2つの光学的に薄い層が示されている。
【0029】
波動インピーダンスZFは波動の中にある誘電体を介して決まる。材料は透磁率μと誘電率εにより一意に記述される。
【0030】
【数1】
波動インピーダンスZFは式(1)に従って上記2つの値により決まる。同様に、別の書き方では、波動インピーダンスZFに対して以下が成り立つ。
【0031】
【数2】
値nは(実)屈折率であり、κは消衰係数(虚屈折率)である。ZF0はここでは真空の波動インピーダンスであり、自然定数である。2つの未知数(nとκ)が現れるので、系を解くには、1つの層ですでに2つの異なる波長が必要である。
【0032】
ここでさらに別の未知の層が既知の層の上に成長するならば、層の厚さも考慮した以下の式が有効である。この式の起源は電信方程式(波動方程式の一般形)である。既知の層(ZF1;堆積させられる第1の層は基板であり、その他の各層はその下の層である)と(未知の)成長層(ZF2;つねに最上層)は、厚さと複素屈折率とに依存した1つの共通の層(ZG)にまとめられる。それゆえ、検出の際には、3つの未知数を求めるために3つの異なる波長が必要となる。
【0033】
図1Bには、空気("air")に対して層抵抗ZF1、ZF2(光学的に薄い層)及びZF3(基板、選択実施例ではモリブデンからなる)を有する光学的に薄い層での干渉法が示されている。第1の層(層厚20〜30nm)は蒸発させたセレンと基板のモリブデンとの化合物から成り、次の層はガリウムとセレンとの化合物から成る。(蒸発源の既知の温度における)層厚Δd、III族のガリウムの屈折率n(実部)
波動インピーダンス理論では、2つの層は1つの全体抵抗ZGにまとめられる。
【0034】
【数3】
2つの層の全体抵抗ZGを得たことによって、層系からの入射光線の反射強度Rを計算することができる。ZF0を真空の波動インピーダンスとして次の式が成り立つ。
【0035】
【数4】
値γ(伝搬定数)は波動の伝搬を記述するものであり、虚屈折率と使用している波長のみによって規定される。
【0036】
【数5】
蒸発プロセスでは、厚さと複素屈折率を求めるために、計算ユニットが式(2)及び(3)の計算をインシトゥで実行する。そのために、光検出器の測定信号が3つの異なる波長で前記光学的層モデルによって数値的に適応され(複素屈折率と層厚の様々な値を用いて「当てはめ」られ)、式2及び3の結果と比較される。
【0037】
II)複素屈折率と既知の基板の上の蒸発させた層の厚さの計算の流れ
予備的注意:3つの波長λ1、λ2、λ3の使用が本発明による方法にとっては不可欠である。その理由は入射光の基準値がないことにある。通常、光は入射窓を介して蒸発チャンバー内に達する。しかし、入射窓はいつも意図せずに曇ってしまう。それゆえ、放射源の強度に関する情報も役に立たない。というのも、光が通過する曇った入射窓は光の特性に強く影響を与えるからである。それゆえ、反射を測定するに際して、本発明では他の基準を見つけなければならなかった。基準としては、3つの未知数(実及び虚屈折率ならびに厚さ)のうちの1つを使用すべきであろう。しかし、複素屈折率は波長に依存しているので、引き合いに出すことができない。ところが、厚さは測定されたすべての波長に対して同一でなければならないため、波長に依存していないので、基準として利用することができる。それゆえ、本発明による方法は「自己参照的」と呼ばれうる。
【0038】
本発明による方法の計算の出発点は3つの異なる波長λ1、λ2、λ3で反射強度を測定することである。このために、光検出器として、特に有利にはCCD(「電荷結合素子」)を使用してよい。CCDにより、3つの波長λ1、λ2、λ3(赤、緑及び青)に対する反射強度Rが得られ、これら反射強度Rは個別に評価される。ここで注意すべきことは、反射強度は経時的であるということである。時間から厚さへの変換は発生する干渉最大値に基づいて堆積プロセス初期の間に行われる。計算された厚さは光学的厚さdoptである。つまり、これまでのところ未知である屈折率が差し当たって厚さに含まれたままである。次の式が成り立つ。
【0039】
【数6】
ここで、mは干渉次数であり、φは入射角であり、λは入射光の波長である。この式により、時間に依存した表現から厚さに依存した表現への変換が理解される。
【0040】
【数7】
光学的層厚doptは、与えられた関係の下で、反射強度の時間的経過の波長λRの1/2として計算される。
【0041】
【数8】
【0042】
図2には、反射強度Rの時間依存性を厚さ依存性に変換するためのグラフ(縦座標:RGB信号、横座標:時間(任意単位))が示されている。パラメータdoptは実層厚dSchichtと複素屈折率nkomplexとの比から計算される。
【0043】
【数9】
反射強度は式(3)による波動インピーダンスによって決まる。真空の波動インピーダンスZF0は既知であるから、式3の変形により、蒸着した層の全体抵抗ZGを考慮することができる。抵抗ZGは蒸着した層とその下にある基板を記述するものである。これら2つの層を互いから分けるために、式(4)を考慮してまた式(2)を適用する。
【0044】
当てはめにより、式(2)は測定された反射強度と比較される。その際、測定された3つの波長のすべてに対して個別に式(2)の当てはめによる測定値の決定が行われる。
【0045】
計算ステップの概観
I)3つの波長すべてについて、実際の厚さdが数値的に計算される。その際、堆積した層の厚さは3つの波長すべてで同じ値を有していなければならない。
II)各波長について、ステップ1で計算した厚さを用いて式(2)が解かれる。この際、式(5)と当てはめられる式(2)とによって個々の波長の反射測定値の当てはめが行われる。この当てはめでは、既知の基板と式(2)における既知の厚さが使用される。値γは式(4)によって記述することができる。それゆえ、堆積した層の波動インピーダンスのための数値式はまだ残っている。この式に当てはめが行われ、誤差が最小のときに、実際の厚さと屈折率が求まる。
III)プロセス全体にわたって、干渉法の限界に達する(層が厚すぎる又は層の吸収性が高すぎる)までステップ1及び2が繰り返される。
【0046】
図3Aには、堆積の際のプロセスに関して、Ga2Se3の測定された反射強度値(+)へ当てはめられた反射(実線)が示されている(縦座標:RBG信号、横座標:時間(任意単位))。図3Bには、本発明による方法がどのように動作するかが例として示されている。測定中、当てはめ(光学的層モデル)が同時に進行し、プロセス中の厚さと複素屈折率を計算する。図3Bにおいて厚さが良く見える形で軸として時間に対置されているのに対して、複素屈折率の測定値は可視的には含まれていない。光学的に薄い系では、厚さと複素屈折率は一緒に求めることしかできない。というのも、両者は互いに相関しているからである。したがって、屈折率を求めるには、より多くの情報が必要である。干渉法から3つの波長で十分であることが知られている(厚さ及び複素屈折率)。白色光では、測定に無限に多くの波長が使用される。図3Cには、基板であるモリブデンフィルムの上にGaとSeを同時蒸発させたとき(CuとInは閉じ込められている)の赤色(円)及び青色(正方形)反射の強度の時間的経過が示されている。まず先に形成されるMoSeの影響は矢印で表されている。図3Bからも良く分かるように、光学的層厚は2つの最小値の間の距離の半分に相当する。ステージIにおけるこの第1の蒸発段階の終わりには、複素屈折率と実層厚の情報により、堆積した層の組成が正確に知られており、後続のIn及びSeの蒸着(Ga及びCuは閉じ込められている)のための基準として、堆積した層が使用される。図3Dには、ステージIにおける赤色(円)及び青色(正方形)反射の強度の時間的経過が相応して示されている。また、堆積した層により生じる吸収も曲線の包絡線を相応にシミュレートすることにより示されている。ステージIIにおける第2の蒸発相の終わりには、計算された光学的層パラメータから、In+Gaの割合に対するGaの割合(Ga/Ga+In)として0.5028の割合のGa/IIIが得られる。したがって、この層の組成は後続のプロセスにとって既知であり、適切に考慮されうる。
【0047】
示されたルーチンは3つの波長すべてに対して実行される。図4(縦座標:RGB信号、横座標:時間(任意単位))には、ガリウムとセレンの蒸発相(ステージI、ガリウムの逐次蒸発(ガリウムがゼロの場合はインジウムが蒸発)、セレンの連続蒸発)に関して、3つの評価された波長のすべてが同時に示されている。三角形は青の波長の評価、緑の波長の正方形、及び赤の波長の円を示している。
【0048】
III)具体的な実施例への計算の適用
本発明による方法の実施例は、V族からVII族の金属元素及び非金属元素の逐次的な同時蒸発に関している。なお、少なくとも1つの蒸発シーケンスが存在する。元素A(例えばIn)、B(例えばGa)、C(例えばCu)及びD(例えばSe)の蒸発の考えられる時間的経過が図5に示されている。ここに記載されたプロセスは、Ga+Se、続いてIn+Seの逐次的な同時蒸発であり、Ga2Se3とIn2Se3から成る積層体を得るためのものである。図6には、ステージIにおいてこの蒸発プロセスによって生成できる光学的に薄い層から成る積層体が概略的に示されている。図7の写真は、本発明によるプロセス制御によって生成される、複数の互いに積み重なった光学的に薄い層から成る複雑な積層体の高解像度SEMマイクログラフを示したものである。本発明による方法を用いれば、つねにそのときの最も上の堆積層をその下の層との関係において基準層としてその物質組成を分析することができる。それゆえ、本方法は任意の数の個別層を有する積層体に適用可能である。上記プロセスのステージIIでは、干渉法には適用できない、Cuを含有した吸収層が形成される。しかし、ここでは、本発明による方法を化学量論量の推定のために参照することができない。ステージIIIでは、再び分析可能な光学的に薄い層が堆積させられる。
【0049】
図8には、本発明による方法を実行するための装置の基本構造が示されている。PVDチャンバPVDの中では、元素A,B,C,Dが逐次蒸発させられ、実施例において回転する基板Sの堆積面上に接合層として堆積する。堆積する層はその組成に従って入射光を非コヒーレント光の拡散反射又は直接反射として(全反射ではない)反射する。堆積プロセスの全体にわたって、拡散反射又は直接反射は少なくとも1つの空間分解型光検出器D1によって記録される。第1の検出器D1に対して例えば直交するように基板Sの側方に別の検出器D2を設けてもよい。光放射は、蒸着した層の組成に直接関係する品質が検出器D1,D2によって反射から判断でき、閉ループ制御回路に何らかの不具合があった場合にプロセスの修正を行うことができるように、蒸着した光学的に薄い層と独特な仕方で相互作用する。選択実施例では、基板Sの堆積面に種々異なる波長の光を入射させるために、蒸発源A,B,C,D,X,Yが非コヒーレント光源ILQとして同時に利用される。あるいは、又はこれに加えて、無限の波長スペクトルを有する白色光源ILQ(蒸発作用なし)を使用してもよい。さらに、堆積層の表面粗さの影響を考慮できるように、コヒーレント光源KLQ(ここではレーザ)を設けてもよい。同様に、例えば非金属元素を蒸発させるために、さらなる蒸発源X,Yを設けてもよい。
【0050】
同時蒸発の制御には個々の蒸発シーケンスの空間的な分離は必要ないが、個々の蒸発シーケンスの空間的な分離を排除するものでもない。蒸着プロセスの制御にとって重要なことは、動く基板に当たる光放射の反射の測定と評価である。そのためには、個々の放射をシステム内で評価できるように、放射を空間的に互いに分離しなければならない。この目的で、空間分解型光検出器D、例えば光学機器を備えたCCDカメラが、PVDチャンバPVDの内側又は外側に取り付けられる。PVDチャンバPVDの外側に取り付ける場合、チャンバ壁に相応の窓Fが設けられる。この窓Fは蒸発プロセス中は堆積層で覆われるので、閉ループ制御システムの外部参照は不可能である。これは本発明による方法では自己参照能力により不要となる。CCDカメラは光センサ装置によって受信した波長400nm〜700nmの光放射を色度に変換する。これら色度は発生した波長に対応しており、CCDチップの個々のセンサのスペクトル感度とともに計算済みである。CCDカメラは光センサのアレイから成っており、これら光センサによって生じた信号を局所的に分離する。CCDカメラを使用することにより、光放射の種類は限定されない。むしろ、これにより、可視スペクトル域の任意の光放射を監視に使用することができる。さらに、CCDカメラの個数と場所は任意であり、使用するカメラの品質に従って自由に選択してよい。同様に、空間分解型光検出器と共に動く又は動かない基板の一般的な制御も、基板の方向に向いた光学系を有するCCDカメラを使用することにより、特にエレガントに解決される。
【0051】
好ましくは、本発明による方法は上で説明した種類の蒸発プロセスのためのプロセス制御として使用することができる。光学的層パラメータの数値計算により、方法パラメータを操作することでプロセスの定量的な制御が可能である。この点が、この制御を、光学的層パラメータの数値に関する正確な情報がないために定性的な制御(所定の特徴点による)しかできないこの分野における公知の制御から区別する重要な点である。図9には、一般の場合(図8参照)について、関連する閉ループ制御回路の機能が概略的に示されている。検出器D1及びD2は反射強度の測定に使用され、測定信号を制御ユニットCUに伝送する。制御ユニットCUは閉ループ制御に使用される種類の光源(ILQ,KLQ)を用いて測定された信号を利用する。その際、光源の動作は自由に選択できる。ここで、光源の動作は光信号をチョッピングするものであっても、チョッピングしないものであってもよい。制御ユニットは、使用する光源と相関する測定された信号から、基板Sと蒸発源A,B,C,D,X,Y(X,Yは例えば非金属蒸発源であってよい)の動きを制御する。時として必要になる材料源の変化(蒸発速度の変更)又は基板の変化(動きの速度)の後、制御ユニットCUは改めて入来する測定信号を使用し、これにより連続的にかつインシトゥで蒸発プロセスを制御する。図10には、例えば、例として選択されたCu(In,Ga)Se2薄層の3段階蒸着プロセスのステージIについて、CCD光検出器の測定信号が光源の可視反射と蒸発源の温度とともに示されている。この測定信号記録のために、CCDカメラはPVDチャンバの底面にあり、このCCDカメラの光学系は基板Sの方向に対して垂直の方向を向いている(図8参照)。
【0052】
個別的には、図10において:
【表1】
【0053】
CCDカメラを使用して異なる複数の光源の空間分解測定をすることの他に、CCDカメラの使用により、蒸発源の機能を制御ユニットCUを介して蒸発源の温度を推定することにより監視する可能性が開かれる。図10のグレー表示では、元々の測定プロトコルの色がグレー値だけで再現されている。元々の測定プロトコルは、光源AC及びBの赤色反射、光源ABと蒸発源B及びXと外部雑音の場合の緑色反射、蒸発源A及びCにおける青色反射(赤色の島あり)を示している。蒸発源A及びBが近似的に同じ温度を有し、それにより類似した温度放射、温度分布及び温度色を有しているのに対し、蒸発源Cは明らかにより高い温度で動作する。このより高い温度はCCDカメラによって青色として表される。機能不良の際には、この蒸発源が青い色合いを帯びず、不可視となることもありえる。蒸発源Cはその高温ゆえに温度分布内の青以外の色によって測定される集中点を有している。CCDカメラは人間の目に適合させてあるので、最も強度の高い領域は緑色で表される。というのも、人間の目は緑に対する感度が最も高いからである。
【0054】
図10には、個々の光源(蒸発源も)の反射が示されている。閉ループ制御回路のための測定信号として使用するためには、まず半透明の光学的に薄い層について、測定信号を制御ユニットCUによって評価しなければならない。CCDカメラは反射を局所的に互いに分離し、これにより制御ユニット内での別々の評価を可能にする。続いて、制御ユニットが個々の光源の測定された別々の反射強度を数値的な強度に変換し、時間的な経過としてプロットする。
【0055】
図11には、制御ユニットにより処理された、基板表面における局所的に分離された反射強度の時間的経過が(RGB強度が経時的に任意単位で)示されている。光源A及びBの波長はそれらの波長とともに示されている。例として使用されている蒸発設備では、光源Bとしてレーザモジュールが使用されている。光源Aは源A(ここではガリウム溶融)の温度放射に起因している。光学的に薄い層を求めるために十分に知られている物理法則から、2つの異なる波長を用いて、発生した層の厚さと堆積した層の複素屈折率(2つの成分)を求めることが可能である(上記参照)。さらには、源Aの短波温度放射の特性と光源Bの長波放射の特性の違いが図11から分かる。この放射の強度は目に見えて減衰している。このため、制御ユニットによって、堆積した物質が青色放射を吸収していることが確認できる。これとは逆に、赤色放射は吸収されず、干渉信号がごく僅かしか減衰しないことによって可視となる。制御ユニットは基板上の予想される層に関するデータを有しており、ステージダイアグラムと波長に依存する複素屈折率との形態をとったデータを用いて、光学的層パラメータを求め、光学的層パラメータに依存して、形成された物質の層組成を求める。図11に示されている例では、制御ユニットは堆積した層がGa2Se3であるという情報を提供する。この物質は2.4の屈折率を有し、波長が580nm未満でなければ吸収しない。
【0056】
本発明による方法の限界は堆積層の厚さのみによるものである。というのも、厚さが衝突光の波長のおよそ10倍以上になると、干渉法はもはや有効な結果を出さないからである。しかし、本発明を光学的に薄い層に限定すれば、この限界に達することはなく、無視することができる。光学的に薄い層については、図8による本発明の方法の実施形態は干渉法計算に関して十分な制御を可能にし、プロセス制御の目的で使用しうる。それにもかかわらず、本発明による方法を用いれば、独特の光学的評価のおかげで、吸収層に関して少なくとも1つの化学量論量の推定を行うことができる。このような推定は例えばDE 102 56 909 B3から公知である。
【0057】
CuInGaSe2層の蒸着を例として、動作手順を説明する。ステージIでは、インジウム、ガリウム及びセレンからなる半透明層を基板上に堆積させた。図12には、ステージIIにおいて銅を上記半透明層上に蒸着させるためのCCDカメラの測定信号が示されている。検出器の測定信号の1つの例がステージIIにおける光源の可視反射と蒸発源の温度とともに示されている。
【0058】
個別的には、図12において:
【表2】
【0059】
図12には、プロセスの制御に使用される、CCDカメラの記録領域が示されている。図10と比べると、図12では、外部放射の妨害信号が切り取られている。これは測定信号の空間分解により実現できる。この例示したプロセスの間、回転のせいで2つの光源A及びBが部分的に覆われる。しかし、制御ユニットは連続測定信号の処理のおかげで両方の反射を分離し、個別に評価することができる。光源Bの上記反射は、既に述べた、動作証明を目的とする蒸発源の温度推定のための例示した光源に対応している。
【0060】
この例示したプロセスの目的は、金属のインジウム及びガリウムならびに金属の銅からなる物質量における化学量論量の推定である。化学量論量にあるCu(In,Ga)Se2薄層の場合、インジウム及びガリウムの量は基板上の銅の量に一致していなければならない。制御ユニットはこの物質の目標組成に基づいて校正されており、化学量論量の推定を実行しうる。この具体的な例では、CCDカメラは、制御ユニットが処理された測定信号から堆積層の表面にセレン化銅(Cu2-xSe)コーティングが発生したことを検出するまで、プロセスを測定する。CCDカメラにとって、この効果は、例示したシステムにおいて、光源Aの反射の強度が連続的に上昇し、それと同時に光源Bの反射の減衰が生じることによって、目に見えるようになる。
【0061】
図13には、制御ユニットによって評価されたCCDカメラの測定値の時間的経過が(RGB強度が経時的に任意単位で)示されている。銅源の温度反射の経過(上の曲線、緑色、光源Aからの強度)は光源B(ここでは波長635nmのレーザ、下の曲線、赤色、光源Bからの強度)の反射とともに図示されている。図13では、上記方法は長円(化学量論量の近似)によりそれと分かる。この特性が生じれば、堆積層内での化学量論量を推定するという要請は満たされる。
【0062】
光反射を測定するための本発明による方法を制御するために、制御ユニットの評価をDE 102 56 909 B3による制御システムの評価と比較する。この公知の制御システムでは、下記のロックイン増幅器を用いたフォトダイオードが使用される。このフォトダイオードは基板表面からの変調された反射信号を受信し、信号全体を積分し、分析のために、変調された信号を抽出する。したがって、異なる複数の信号の空間分解は行われない。それにもかかわらず、既に述べたように、DE 102 56 909 B3の公知の方法により、個々の特徴点に基づいて定性的な制御は可能である。図14には、DE 102 56 909 B3の方法による経過をさらに示した上で、本発明による制御プロセスの全体の時間的経過(RGB強度が経時的に任意単位(a.u.)で)における上記2つの方法の比較が示されている。ステージIにおける下側の明るいグレーの曲線は緑色の反射強度の時間的経過を示すものであり、上側の黒くて太い曲線は本発明によるレーザスポット(赤色)の反射強度の時間的経過を示すものである。対して、真ん中の黒くて細い曲線はDE 102 56 909 B3の方法の信号経過を示したものである。ステージIでは、測定の際に非常に似た結果が認識されうる(上の2つの曲線を参照)。基板/層が滑らかな場合、本発明による方法に対応する下側の曲線は、ステージIの間、レーザ信号の一般的な不感性を示す。ただし、DE 102 56 909 B3による測定は、プロセスにおいて粗い層を前提としなければならないため、非常に誤りがちである。この場合、問題なのは、レーザ信号、すなわち、コヒーレント放射は、非コヒーレント放射よりも表面の粗さに強く影響を受けてしまうということである。
【0063】
層の堆積の定量的な制御はDE 102 56 909 B3による公知の方法では不可能である。というのも、測定された干渉に蒸着した層の粗さが重ね合わされてしまうからである。非コヒーレント光が使用できるならば、本発明による方法におけるこの依存性は生じないので、CCDカメラを用いた相応する制御システムは、厚さを数値的に求め、屈折率を計算することで、堆積層の特徴付けをすることができる。ステージIIに関しては、両方のシステムにより、化学量論量の一意な出現を観測することができる。ただし、化学量論量の一意な出現は様々な形をとる。図14にはもはや図示されていないステージIIIについては、本発明による方法を用いて、再び層の組成の定量的な分析が行われる。しかし、これはふつうは必要ない。というのも、ステージIIIでは、いずれにしても銅の多い堆積の領域ではステージIIを出ることだけが問題となっているからである。
【0064】
図15には、粗い基板の上でのコヒーレント光源と非コヒーレント光源の比較が示されている。図示されているのは、本発明による方法とDE 102 56 909 B3(LLS)による方法とでの同時測定である。グラフでは、プロセスが開始され、第1のガリウム層と後続の第1のインジウム層が堆積する。LLS(曲線c)の測定信号が非常に弱い信号を示しているのに対し、本発明による方法の信号ははっきりと認識できる。第1のインジウム相では、レーザ信号への粗さの影響が再び矢印で明らかにされている。LLSの反射信号の見かけの位相シフトが正確な測定を不可能にするのに対し、白色光源を用いた本発明による方法は位相シフトを示さない。
【0065】
IV)本発明による方法、プロセス装置、及びその使用の可能な変更形態に関する概観
I. 前記した蒸発源A,B,C,D,X,Yは任意の元素のための蒸発源である。A,B,C,D:任意の金属、X,Y:V−VII族の任意の非金属元素。
II. 前記した光源A,Bは下記の任意の光源である。
a.) コヒーレント源:任意の性質のレーザ(例えば、ガス放電レーザ、レーザダイオード、及びコヒーレント光放射の他の源)。
b.) 単色の非コヒーレント光(例えば、任意の光波長の発光ダイオード、例えばモノクロメータ、フィルタなどの光学的方法による連続的な光スペクトルの分割)。
c.) 非単色の非コヒーレント光(例えば、ハロゲンランプ、ガス放電ランプなどのような白色光源、さらには、白色発光ダイオードないし光放射を発生させるダイオード群)。
d.) 他の光源(例えば、金属溶融の光放射、源A,B,C,D内で発生した溶融の光放射、及び上記源X,Yの溶融の光放射)。
III. 前記光源A,Bの位置決めは、加熱した又は加熱していない透明の装置(例えば窓)を用いて、
a.) プロセス装置内で任意の角度αで
b.) プロセス装置外で任意の角度αで
行うことができる。
IV. 前記光源A,Bの放射の入射は以下のようにして行われる。
a.) 制御すべき蒸着プロセスの間、光学機器なしで、II.で述べた光源により基板を直接照明することによって。
b.) 制御すべき蒸着プロセスの間、直列に接続された任意の光学機器(例えば、直線偏光子及び円偏光子、結像させるための凸レンズ及び凹レンズ、干渉フィルタ又は光源の波長を調節する他のフィルタ)を用いて、II.で述べた光源により基板を直接照明することによって。
c.) 制御すべき蒸着プロセスの間、ライトガイド(例えば、シングルモード及びマルチモード光ファイバ、光放射を偏向させ、基板上での位置及び入射角を調節するためのミラー系)により光放射を誘導しつつ、IIで述べた光源により基板を直接照明することによって。
V. 上記検出器は下記の形態の任意の空間分解型光検出器である。
a.) 光学機器(例えば、フォトダイオード列又はフォトダイオードアレイ、光放射の測定に適した列CCD及びラインCCD、空間的に分離された複数のフォトダイオード)なしの空間分解型積分検出器。
b.) 光学機器(例えば、凸もしくは凹結像レンズ、干渉フィルタ、又は所定の波長に対する感度を調節するための他のフィルタ、単色プリズムもしくはフィルタによる光信号の分解機能を有する上記V.a.)の素子)付きの空間分解型積分検出器。
c) 光学機器(例えば、任意の様々な解像度及び構造のCCDカメラ、写真乾板、感光紙(フィルム)、撮像カメラ系)なしの空間分解型非積分検出器。
d.) V.c.)による光学機器(例えば、結像光学装置(凹及び凸レンズ系、ディジタル及びアナログ撮像カメラ用の対物レンズ)付きのカメラ)を有する空間分解型非積分検出器。
VI. 上記基板は任意の性質の基板(例えば、金属箔、ガラス板、プラスチックフィルム。場合によっては、モリブデンのような導電性材料や、フッ化ナトリウムのような層の形成を促進するのに適した材料で覆われている)である。
VII. 上記基板の動きは任意である(例えば、回転、垂直及び水平方向の直線運動、これら2つの動きの任意の組合せ。基板の静止も含む)。
VIII. 蒸発プロセス中に堆積する層は任意の性質のものであり、下記の目的で使用することができる。
a.) 光起電用途で利用するために吸収層を得る(例えば、Cu(InxGa1-x)(SySe1-y)2のような構造ABCXY2、及び、Cu2(ZnSn)xGa1-x(SySe1-y)4のような構造A2(BC)xD1-x(XyY1-y)4)。ただし、x、yは0と1の間の任意の値である)。
b.) VII.a.)に記載されたABXYタイプの吸収層への二価結合及び三価結合の前駆層を得る(例えば、様々な組成の可能性の例として、InS、GaS、InSe、GaSe)。
c.) 光起電用途以外でも利用しうる二価、三価及び四価の層を得る。
d.) X又はYの蒸発中に反応プロセスによりVIII.b.)に記載された前駆層から吸収半導体層を得る(例えば、前駆層のセレン化及び硫化)。
e.) 本発明による方法によって制御しうる、VIII.a.)−d.)に記載されていない別の層系を形成する。
IX. 制御システムを使用する設備は任意であり、下記の制御に使用できる。
a.) VIII.に従って光学的に薄い層を得るために、I.による少なくとも1つの金属及び非金属をシーケンスごとに蒸発させる(例えば、物理蒸着(PVD))、逐次的な単段又は多段システムの制御。
b.) VIII.d.)による方法を実行する熱プロセスの制御。
X. 本発明による制御システムの制御ユニットは、V.による機器を用いた撮像及び積分方法によるディジタル及びアナログ読込み、読み込んだ測定信号のディジタル技術(例えばコンピュータ)による処理を用い、制御ユニットからの制御信号はディジタル技術を用いてI.,VII.に従って制御すべきシステムに伝送される。
【0066】
制御ユニットは下記のことを行う。
a.) V.の検出器による測定信号を評価する。
b.) I.の源の温度、VI.の基板の温度、及びVII.の基板の動き(例えば、I.の源の温度変化又は被覆)を制御する。
c.) テスト及び校正のために、関連するすべてのシステムの外部測定を制御システムと相関させる(例えば、I.による出力及び温度の測定、VI.及びVII.による基板の速度測定)。
XI. 制御ユニットの使用は任意であり、下記のことに適している。
a.) VIIIによる光学的に薄い層を得るための、IX.による連続的プロセスのインシトゥ制御。
b.) VIII.による光学的に薄い層を得るための、IX.による逐次的プロセスのインシトゥ制御。
【符号の説明】
【0067】
A,B,C,D,X,Y 元素/蒸発源/光源
AA,AB,AC 光源としての蒸発源
CCD 電荷結合素子(空間分解型光検出器)
CU 制御ユニット
D 空間分解型光検出器
dopt 光学的厚さ
dSchicht 実層厚
F 窓
γ 伝搬定数
ILQ 非コヒーレント光源
KLQ コヒーレント光源
κSchicht 消衰係数(複素屈折率の虚部)
λ 波長
LLS レーザ光散乱法
m 干渉次数
nkomplex 複素屈折率
nSchicht 屈折率(複素屈折率の実部)
PVD PVDチャンバー
φ 入射角
R 反射強度
RGB 赤緑青信号
S 基板
SLS 光散乱分光法
ZF 光学的に薄い層の波動インピーダンス
ZF0 真空の波動インピーダンス
ZG 全波動インピーダンス
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ(屈折率nSchichtを実部とし、吸収係数κSchichtを虚部とする複素屈折率nkomplexと、実層厚dSchicht)間の相関によりインシトゥで求める方法、及びこの方法を実行及び適用するための装置に関する。
【0002】
先行技術
DE 69917 899 T2には、反射分光法によりシリコンウェーハのドーピングを決定することが記載されている。それによれば、基準測定と試験測定が行われ、複素屈折率に関する既知の物理的な計算方法に従って、光学的に薄い層の厚さが計算される。光線の光学的な反射の式が詳細に説明されており、このため、測定すべき層のモデル形成を理解することができる。ただし、ここで測定そのものはエクスシトゥでしか不可能である。測定は赤外領域で実行される。なぜならば、考察される層の厚さが属している厚さ範囲では、厚さを求めるための干渉波を評価するのにIR測定が必要となるからである。
【0003】
DE 197 23 729 A1からは、プラズマビームとイオンビームを援用したエッチング及びコーティングにおける光学的厚さ定数をインシトゥで求める方法が公知である。この文献では、光学的定数を表面加工源の特性放射による光の反射から求める方法が説明されている。表面加工中に、発生した干渉から反射のスペクトルを記録する。波長フィルタを介して4つの異なる波長を個別に検出する。規格化された光線の測定信号から層の絶対(実)厚さを求める。しかし、この方法は表面加工にプラズマビーム又はイオンビームを用いるシステムでしか適用できない。というのも、プラズマビーム又はイオンビームの強さも記録しなければならないからである。基板自体は測定されない。規格化された屈折率が測定され、その実際の値は後で求められる。使用される式は三層系(空気−非吸収性媒体−基板)に対するフレネルの式に相当する。
【0004】
EP 1 435 517 A1には、分光エリプソメータを使用して薄い多層系を測定することが記載されている。しかし、楕円偏光法は非常に滑らかな層でしか信頼性をもって機能しない。その上、楕円偏光法による測定はエクスシトゥでしか可能でない。というのも、反射を偏光測定法によって評価しなければならないからである。この評価は入射光の偏光とそれによって生じる反射光線への影響とを変化させることによって行われる。複素屈折率は決められた波長変更によって求められる。この方法は光学的モデルを用いた多層系に対して機能するが、この光学的モデルは、周波数に依存する(高速フーリエ変換FFTに似た)厚さ及び屈折率の関数の数値的な調整(当てはめ)に基づいている。
【0005】
EP 1 467 177 A1からも多層系の厚さ測定法が公知である。この方法はエクスシトゥ測定とそれに続くフーリエ変換による評価に基づいている。この方法では、プローブに光が照射され、FFTにより周波数スペクトルが求められる。FFTのピークの評価により、個々の層の厚さが求められる。様々な波長に対する空間分解型光学検出器として、CCD(電荷結合素子)を使用する。
【0006】
DE 10 2005 023 735 A1からは、表面分析をエクスシトゥで自動的に実行する方法が公知である。この方法は理論上の曲線をFFT法や勾配法によって測定曲線に適合させる。しかし、この方法では、もはや光学的に薄い層には分類されない10μmを超える層の厚さが考察される。反射スペクトルは計算されたスペクトルと比較される。また、もっぱらFFTスペクトルのみが評価され、このスペクトルの発生したピークが考察される。層の数はFFTスペクトルによって求められる。それゆえ、層はすでに処理が完了していなければならない。というのも、そうでなければ、スペクトルをこのように捕捉することはできないからである。つぎに、このスペクトルから様々な近似法が導出される。
【0007】
DE 10 2005 023 737 A1には、どのようにして全反射から薄層の層厚又は屈折率を求めることができるのかが示されている。層厚又は拡散パラメータは反射スペクトルから求められることが記載されている。このために、測定値がモデルスペクトルと比較される。しかし、現時点で変化した層しか顧慮されず、使用されるモデルもそれ以上説明されていない。
【0008】
前記の刊行物は滑らかな表面における光線の反射の分析という範疇に入る。すべての方法が全反射の測定に基づいており、反射光の測定又はそれに続く他の方法による屈折率の測定のいずれかによる規格化を必要とする。使用される光学モデルはフレネル式の使用に基づいている。これらの方法は光学的に薄い層を得るために材料の蒸発プロセスを制御する目的では使用されていない。
【0009】
黄銅鉱薄層を基板上に堆積させるプロセスのための方法は例えばDE 102 56 909 B3から公知である。この文献では、堆積プロセスと黄銅鉱薄層の形成を制御するために、光源としてある波長のコヒーレント光が動いている基板に向けられる。この方法における制御は粗い表面でのレーザ光の散乱に基づいている。Cu(In,Ga)Se2層の蒸着プロセスは3段階に分割される。段階Iはインジウムとガリウムの蒸発を含み、段階IIは銅の同時蒸発を含み、段階IIIはインジウムとガリウムの同時蒸発を含む。さらに、プロセス全体の間、セレニウムを蒸発させる。基板の材料(ガラス、チタン又はプラスチック)と特性は包括的に説明されている。基板運動の様々なコンセプト(通り抜け、回転、ロール・ツー・ロール)が示されている。使用されるレーザを動かすコンセプトも提示されている。この公知の方法を用いれば、プロセスを制御しながら実行することが可能である。この公知の方法におけるプロセス制御はレーザ光散乱法(LLS)に基づいており、個々の特徴点を利用する。その際、個々の段階の間、レーザ光の制御信号が記録される。とりわけ、堆積される層の化学量論比を推定するために、第2の段階の制御信号が利用される。しかし、この制御では、プロセスを再現可能に実行する可能性はもたらされない。というのも、そのためには光学的な層パラメータの数値情報を用いた制御が必要となるからである。したがって、プロセスの定性的な監視しか行われない。質的な偏差がある場合には、「蒸発源の温度」や「基板の速度」といった製造パラメータが相応して変更される。
【0010】
R. Scheer他による刊行物I"Cu(In1-xGax)Se2 growth studies by in situ spectroscopic light scattering"(Applied Physics Letters 82 (2003), p.2091-2093)では、堆積させる層の粗さと制御信号との間の依存関係を認識することができるように、LLSの方法がスペクトル光散乱へと拡張されている。コヒーレントレーザ光は粗い表面でしか機能しない。プロセス開始時の基板は通常滑らかであるが、そのような滑らかな表面では、評価しうる測定信号が生じない。SLSの場合、レーザの代わりに白色光源が使用され、SSDスペクトロメータが検出器として使用される。同様に、SLSに基づいたプロセス制御がK. Sakurai他による刊行物II"In situ diagnostic methods for thin-film fabrication: utilization of heat radiation and light scattering"(Progress in Photovoltaics: Research and Applications 12 (2004), p.219-234)から公知であり、本発明は最も近い先行技術としてこの刊行物を前提としている。しかし、プロセス制御については論じられていない。この場合でも、光学的層パラメータの数値が知られていないため、薄層の成長の定量的な制御を行うことができず、ひいては操作量(方法パラメータ)を調節ことにより制御量(光学的層パラメータ)の実際値を目標値へと制御することもできない。
【0011】
薄層の成長を定量的に制御する方法は例えばUS 5 450 250に示されている。この公知の方法では、レーザとCCDカメラを用いて、光学的に薄い層の厚さが干渉法により測定される。レーザはシリコン基板の表面を照明する。CCDカメラは入射レーザ光の反射を記録及び評価する。この方法は干渉法に基づいている(DE 10 2005 050 795 A1及びDE 10 2006 016 132 A1の干渉法を参照せよ)。この方法では、入射光と反射光は極端なケースでは破壊的又は建設的に重畳しうるように重なり合う。これにより、薄層の絶対厚さを測定することができる。しかし、これは測定された材料の光学的特性が十分に知られていない限り不可能である。そのためには、何よりも複素屈折率の大きさが知られていなければならない。さらに、前記した材料特性が堆積プロセス中に頻繁に変化を被るということが考慮されない。それゆえ、上記の方法では、定量的なプロセス制御及び調整は原理的に可能というだけである。
【0012】
本当の閉ループ制御という意味でのプロセス制御のためには、例えばUS 7 033 070 B2に記載されているように、制御されるべき要素を測定可能にすることも不可欠である。シリコン単結晶を得るための結晶引き上げ法(浮遊帯域法)を監視するために、CCDカメラを用いてシリコン溶融の温度が監視される。この方法では、引き上げられた結晶はハロゲンランプによって局所的に加熱される。カメラはハロゲンランプにより加熱される結晶の領域に向けられている。ここで、CCDカメラは光源の反射光と散乱光のフィルタリングによって溶融の光度を測定し、これにより温度を推定する。このためにCCDカメラには赤外光を可視化するフィルタが装備される。こうして、この公知の方法はシリコンの溶融を溶融の固有光度によって数値的に監視する。ただし、この方法によっては材料の組成又は厚さに関する情報はまったく得られない。むしろ、引き上げられるべき結晶がどの程度まで溶融しているかがカメラによって監視される。
【0013】
発明の課題
本発明の課題は、冒頭に述べた、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ間の相関によりインシトゥで求める方法において、堆積した層の物質的な組成を光学的な層パラメータに基づいて求めることができるようにすることである。しかも、この方法は低コストかつ妨害に強くリアルタイムで実行可能でなければならない。この方法を実行する好適な装置は相応の構成要素を有していなければならない。
【0014】
さらに、連続的な同時蒸発プロセス中の光起電性にとって効率の良い半導体層が再現可能に製造されることが絶対に保証されなければならない。蒸発プロセスの連続性が、蒸発プロセスの各時点における制御を可能にするインシトゥ法の必要性をもたらす。しかし、閉ループ制御によってプロセスを制御できるようにするためには、閉ループ制御機構がエラーや妨害の影響から自由に動作でき、制御量が測定可能であることが必要である。同じように、避けられない妨害源の影響を無視できる程度に保つことも必要である。それゆえ、本発明による方法の適用の際には、具体的な光学的層パラメータに定量的にアクセスする閉ループ制御という意味でのプロセス制御も実行可能でなければならない。このためには、制御される要素(層パラメータ)を測定可能にすることも不可欠である。
【0015】
これらの課題の解決手段は、方法、製品及び使用に関する独立請求項に記載されている。有利な実施形態はそれぞれの従属請求項に示されており、以下において本発明との関連でより詳しく説明される。
【0016】
本発明による方法は、気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求めるのに適している。ここで、光学的に薄い層とは、複素屈折率nkomplex(実部:屈折率nSchicht;虚部:吸収係数κSchicht)と実層厚dSchichtとが干渉法によって評価可能な相関において互いに依存しているような層である。干渉法は、層が厚すぎるか、吸収性が高すぎる場合に限界に達する。通常、光学層は最大で入射波長の10倍までの厚さ又は1000nm未満の厚さを示す。
【0017】
本発明による方法は、このような光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求めるために、層の製造中に少なくとも以下の方法ステップを含む。
【0018】
光学的に薄い層を堆積させる間、基板は堆積面上で可視光領域の非コヒーレント光によって照射される。その際、少なくとも3つの異なる波長λ1、λ2、λ3の光が堆積された層に向けられる。未知の光学的層パラメータ(屈折率nSchicht、吸収係数κSchicht及び層厚dSchicht)も3つ求めなければならないので、3つの異なる波長が必要である。非コヒーレント光は粗い表面でも滑らかな表面でも使用することができる。コヒーレント光の使用は粗い表面に限定されている。
【0019】
堆積した層から発する拡散性光散乱又は直接光散乱は3つの異なる波長λ1、λ2、λ3において空間分解されて光学的に検出される。それぞれについて反射強度Rの時間的経過が測定される。しかし、その際、全反射が生じないように光を入射させる。同様に、全反射も光学的に薄い層には生じない。
【0020】
異なる波長λ1、λ2、λ3について検出された反射強度Rの数値は測定と時間的に並行して光学的層モデルに供給される。したがって、光学的層モデルは堆積プロセスと時間的に同期して動作する。この光学的層モデルは電気通信技術から公知の一般的な伝送線路理論に基づいている。伝送線路理論では、堆積した各層は、可変の波動インピーダンスZG、伝搬定数γ、及び導体の長さに等しい層厚dSchichtをもつ電磁導体として解釈される。
【0021】
光学的層モデルは異なる波長λ1、λ2、λ3ごとに数値的に評価される。層モデル又は層モデルを記述する関数を検出された反射強度の時間的経過に適応させることにより、堆積させた層の光学的層パラメータ(屈折率nSchicht、吸収係数κSchicht及び層厚dSchicht)の実数値が得られる。その際、波長に依存する実層厚dSchichtが基準値として定められるので、本発明による方法は自己参照的である。従来の技術から公知のように、付加的に検出される量を用いて外部から基準を形成しなくてもよい。
【0022】
光学的層パラメータの数値的に求められた値から、検出された堆積層のそのときの材料組成が求められる。これは既知の材料組成の光学的層パラメータの値を標準値と比較することにより行われる。
【0023】
本発明による方法の1つの有利な実施形態では、異なる層の間で材料組成が変わる場合、先行する層の光学的層パラメータの求められた値が記憶され、次の層のための基準値として使用される。それゆえ、本発明による方法は光学的に薄い層の任意の積み重ねに対しても使用することができる。というのも、本発明による方法はつねに最上層をその下の層に対して基準値として分析するからである。さらに、有利には、入射する単一波長のコヒーレント光によって生じる反射の強度をさらに測定してもよい(LLS)。これにより、堆積層の表面の粗さの影響を考慮することができる。しかし、これは粗い表面が存在することを前提としている。滑らかな表面はコヒーレント光では分析できない。
【0024】
本発明による方法の個々の求め方及び実施形態と、本方法を実行するための好適な装置、特に例えば赤色、青色及び緑色に対する光学検出器としてのCCD又はCMOSカメラと白色光源を有する光学的撮像装置とに関する詳細は、個別的な実施部分からうかがえる。
【0025】
本発明による方法は、好ましくは、気相から基板上に堆積させられる光学的に薄い層を形成する際のインシトゥプロセス制御として適用される。本方法は閉ループ制御回路に組み込まれ、この閉ループ制御回路が、光学的に薄い層の光学的層パラメータの計算された実際値を制御量として、光学的層パラメータの求められた実際値に応じ、操作量である製造パラメータの調節により所定の目標値へと制御する。
【0026】
さらに、本発明による方法は、光学的に薄い層ではなく、吸収性のある層を成長させる場合にも、インシトゥプロセス制御として使用することができる。この場合、少なくとも化学量論量の推定のために本発明による方法を考慮することができる。基板上に堆積させた層から発する全反射以外の拡散性光散乱又は直接光散乱の反射強度Rも少なくとも2つの波長λ1、λ2において相応に解釈される。明らかな経過の変化は化学量論量に達した時点を示す。さらに、本発明による方法では、複数の蒸発源の同時温度監視が空間分解型光検出を介してこれら蒸発源の温度放射の色度を解釈することによって行われる。最後に、粗い基板又は粗い堆積層への適用も可能である。というのも、非コヒーレント光の使用により相互干渉が生じないからである。しかし、粗さの影響も考慮したいならば、相応にコヒーレント(レーザ)光を使用しなければならない。好適な適用形態に関する詳細は同様に個々の説明部分から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】伝送線路理論を光学的に薄い層に橋渡しするための図を示す。
【図1B】光学的に薄い層での干渉法の基本図を示す。
【図2】反射強度の時間依存性から厚さ依存性への変換の図を示す。
【図3A】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3B】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3C】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図3D】堆積プロセスにおける反射の当てはめの図を示す。
【図4】画像信号の3つの色成分すべての測定信号を表した図を示す。
【図5】PVDプロセス全体の基本図を示す。
【図6】PVDプロセス全体の光学的に薄い堆積層の積層体を示す。
【図7】複数の層から成る積層体のSEMマイクログラフを示す。
【図8】PVDプロセス全体の配置構成の概略図を示す。
【図9】プロセス制御のための閉ループ制御回路を示す。
【図10】CCD検出器の測定信号を示す(ステージI)。
【図11】反射強度の時間的経過のグラフを示す(ステージI)。
【図12】CCD検出器の測定信号を示す(ステージII)。
【図13】反射強度の時間的経過のグラフを示す(ステージII)。
【図14】本発明の測定信号と従来技術の測定信号を比較する。
【図15】粗い層での測定信号をコヒーレント光源と非コヒーレント光源とで比較する。
【0028】
実施例
I)本発明による方法の理論的基礎
本発明による方法の開発の発端は波動理論にある。この理論は誘電媒体中の波動の伝搬を記述するものであり、例えば高周波技術の分野では周知である。本発明では、光学的に薄い層に波動理論を転用する。各層は、伝搬定数、波動インピーダンス及び(伝送線路長に応じた)厚さから成るパラメータセットを有する個々の伝送線路として解釈され、一意的に記述される(図1A参照)。図1Aの左側部分には、2つの波動インピーダンスZF1、ZF2と真っ直ぐに成長する上方層の厚さdによって2つの光学的に薄い層が示されている。
【0029】
波動インピーダンスZFは波動の中にある誘電体を介して決まる。材料は透磁率μと誘電率εにより一意に記述される。
【0030】
【数1】
波動インピーダンスZFは式(1)に従って上記2つの値により決まる。同様に、別の書き方では、波動インピーダンスZFに対して以下が成り立つ。
【0031】
【数2】
値nは(実)屈折率であり、κは消衰係数(虚屈折率)である。ZF0はここでは真空の波動インピーダンスであり、自然定数である。2つの未知数(nとκ)が現れるので、系を解くには、1つの層ですでに2つの異なる波長が必要である。
【0032】
ここでさらに別の未知の層が既知の層の上に成長するならば、層の厚さも考慮した以下の式が有効である。この式の起源は電信方程式(波動方程式の一般形)である。既知の層(ZF1;堆積させられる第1の層は基板であり、その他の各層はその下の層である)と(未知の)成長層(ZF2;つねに最上層)は、厚さと複素屈折率とに依存した1つの共通の層(ZG)にまとめられる。それゆえ、検出の際には、3つの未知数を求めるために3つの異なる波長が必要となる。
【0033】
図1Bには、空気("air")に対して層抵抗ZF1、ZF2(光学的に薄い層)及びZF3(基板、選択実施例ではモリブデンからなる)を有する光学的に薄い層での干渉法が示されている。第1の層(層厚20〜30nm)は蒸発させたセレンと基板のモリブデンとの化合物から成り、次の層はガリウムとセレンとの化合物から成る。(蒸発源の既知の温度における)層厚Δd、III族のガリウムの屈折率n(実部)
波動インピーダンス理論では、2つの層は1つの全体抵抗ZGにまとめられる。
【0034】
【数3】
2つの層の全体抵抗ZGを得たことによって、層系からの入射光線の反射強度Rを計算することができる。ZF0を真空の波動インピーダンスとして次の式が成り立つ。
【0035】
【数4】
値γ(伝搬定数)は波動の伝搬を記述するものであり、虚屈折率と使用している波長のみによって規定される。
【0036】
【数5】
蒸発プロセスでは、厚さと複素屈折率を求めるために、計算ユニットが式(2)及び(3)の計算をインシトゥで実行する。そのために、光検出器の測定信号が3つの異なる波長で前記光学的層モデルによって数値的に適応され(複素屈折率と層厚の様々な値を用いて「当てはめ」られ)、式2及び3の結果と比較される。
【0037】
II)複素屈折率と既知の基板の上の蒸発させた層の厚さの計算の流れ
予備的注意:3つの波長λ1、λ2、λ3の使用が本発明による方法にとっては不可欠である。その理由は入射光の基準値がないことにある。通常、光は入射窓を介して蒸発チャンバー内に達する。しかし、入射窓はいつも意図せずに曇ってしまう。それゆえ、放射源の強度に関する情報も役に立たない。というのも、光が通過する曇った入射窓は光の特性に強く影響を与えるからである。それゆえ、反射を測定するに際して、本発明では他の基準を見つけなければならなかった。基準としては、3つの未知数(実及び虚屈折率ならびに厚さ)のうちの1つを使用すべきであろう。しかし、複素屈折率は波長に依存しているので、引き合いに出すことができない。ところが、厚さは測定されたすべての波長に対して同一でなければならないため、波長に依存していないので、基準として利用することができる。それゆえ、本発明による方法は「自己参照的」と呼ばれうる。
【0038】
本発明による方法の計算の出発点は3つの異なる波長λ1、λ2、λ3で反射強度を測定することである。このために、光検出器として、特に有利にはCCD(「電荷結合素子」)を使用してよい。CCDにより、3つの波長λ1、λ2、λ3(赤、緑及び青)に対する反射強度Rが得られ、これら反射強度Rは個別に評価される。ここで注意すべきことは、反射強度は経時的であるということである。時間から厚さへの変換は発生する干渉最大値に基づいて堆積プロセス初期の間に行われる。計算された厚さは光学的厚さdoptである。つまり、これまでのところ未知である屈折率が差し当たって厚さに含まれたままである。次の式が成り立つ。
【0039】
【数6】
ここで、mは干渉次数であり、φは入射角であり、λは入射光の波長である。この式により、時間に依存した表現から厚さに依存した表現への変換が理解される。
【0040】
【数7】
光学的層厚doptは、与えられた関係の下で、反射強度の時間的経過の波長λRの1/2として計算される。
【0041】
【数8】
【0042】
図2には、反射強度Rの時間依存性を厚さ依存性に変換するためのグラフ(縦座標:RGB信号、横座標:時間(任意単位))が示されている。パラメータdoptは実層厚dSchichtと複素屈折率nkomplexとの比から計算される。
【0043】
【数9】
反射強度は式(3)による波動インピーダンスによって決まる。真空の波動インピーダンスZF0は既知であるから、式3の変形により、蒸着した層の全体抵抗ZGを考慮することができる。抵抗ZGは蒸着した層とその下にある基板を記述するものである。これら2つの層を互いから分けるために、式(4)を考慮してまた式(2)を適用する。
【0044】
当てはめにより、式(2)は測定された反射強度と比較される。その際、測定された3つの波長のすべてに対して個別に式(2)の当てはめによる測定値の決定が行われる。
【0045】
計算ステップの概観
I)3つの波長すべてについて、実際の厚さdが数値的に計算される。その際、堆積した層の厚さは3つの波長すべてで同じ値を有していなければならない。
II)各波長について、ステップ1で計算した厚さを用いて式(2)が解かれる。この際、式(5)と当てはめられる式(2)とによって個々の波長の反射測定値の当てはめが行われる。この当てはめでは、既知の基板と式(2)における既知の厚さが使用される。値γは式(4)によって記述することができる。それゆえ、堆積した層の波動インピーダンスのための数値式はまだ残っている。この式に当てはめが行われ、誤差が最小のときに、実際の厚さと屈折率が求まる。
III)プロセス全体にわたって、干渉法の限界に達する(層が厚すぎる又は層の吸収性が高すぎる)までステップ1及び2が繰り返される。
【0046】
図3Aには、堆積の際のプロセスに関して、Ga2Se3の測定された反射強度値(+)へ当てはめられた反射(実線)が示されている(縦座標:RBG信号、横座標:時間(任意単位))。図3Bには、本発明による方法がどのように動作するかが例として示されている。測定中、当てはめ(光学的層モデル)が同時に進行し、プロセス中の厚さと複素屈折率を計算する。図3Bにおいて厚さが良く見える形で軸として時間に対置されているのに対して、複素屈折率の測定値は可視的には含まれていない。光学的に薄い系では、厚さと複素屈折率は一緒に求めることしかできない。というのも、両者は互いに相関しているからである。したがって、屈折率を求めるには、より多くの情報が必要である。干渉法から3つの波長で十分であることが知られている(厚さ及び複素屈折率)。白色光では、測定に無限に多くの波長が使用される。図3Cには、基板であるモリブデンフィルムの上にGaとSeを同時蒸発させたとき(CuとInは閉じ込められている)の赤色(円)及び青色(正方形)反射の強度の時間的経過が示されている。まず先に形成されるMoSeの影響は矢印で表されている。図3Bからも良く分かるように、光学的層厚は2つの最小値の間の距離の半分に相当する。ステージIにおけるこの第1の蒸発段階の終わりには、複素屈折率と実層厚の情報により、堆積した層の組成が正確に知られており、後続のIn及びSeの蒸着(Ga及びCuは閉じ込められている)のための基準として、堆積した層が使用される。図3Dには、ステージIにおける赤色(円)及び青色(正方形)反射の強度の時間的経過が相応して示されている。また、堆積した層により生じる吸収も曲線の包絡線を相応にシミュレートすることにより示されている。ステージIIにおける第2の蒸発相の終わりには、計算された光学的層パラメータから、In+Gaの割合に対するGaの割合(Ga/Ga+In)として0.5028の割合のGa/IIIが得られる。したがって、この層の組成は後続のプロセスにとって既知であり、適切に考慮されうる。
【0047】
示されたルーチンは3つの波長すべてに対して実行される。図4(縦座標:RGB信号、横座標:時間(任意単位))には、ガリウムとセレンの蒸発相(ステージI、ガリウムの逐次蒸発(ガリウムがゼロの場合はインジウムが蒸発)、セレンの連続蒸発)に関して、3つの評価された波長のすべてが同時に示されている。三角形は青の波長の評価、緑の波長の正方形、及び赤の波長の円を示している。
【0048】
III)具体的な実施例への計算の適用
本発明による方法の実施例は、V族からVII族の金属元素及び非金属元素の逐次的な同時蒸発に関している。なお、少なくとも1つの蒸発シーケンスが存在する。元素A(例えばIn)、B(例えばGa)、C(例えばCu)及びD(例えばSe)の蒸発の考えられる時間的経過が図5に示されている。ここに記載されたプロセスは、Ga+Se、続いてIn+Seの逐次的な同時蒸発であり、Ga2Se3とIn2Se3から成る積層体を得るためのものである。図6には、ステージIにおいてこの蒸発プロセスによって生成できる光学的に薄い層から成る積層体が概略的に示されている。図7の写真は、本発明によるプロセス制御によって生成される、複数の互いに積み重なった光学的に薄い層から成る複雑な積層体の高解像度SEMマイクログラフを示したものである。本発明による方法を用いれば、つねにそのときの最も上の堆積層をその下の層との関係において基準層としてその物質組成を分析することができる。それゆえ、本方法は任意の数の個別層を有する積層体に適用可能である。上記プロセスのステージIIでは、干渉法には適用できない、Cuを含有した吸収層が形成される。しかし、ここでは、本発明による方法を化学量論量の推定のために参照することができない。ステージIIIでは、再び分析可能な光学的に薄い層が堆積させられる。
【0049】
図8には、本発明による方法を実行するための装置の基本構造が示されている。PVDチャンバPVDの中では、元素A,B,C,Dが逐次蒸発させられ、実施例において回転する基板Sの堆積面上に接合層として堆積する。堆積する層はその組成に従って入射光を非コヒーレント光の拡散反射又は直接反射として(全反射ではない)反射する。堆積プロセスの全体にわたって、拡散反射又は直接反射は少なくとも1つの空間分解型光検出器D1によって記録される。第1の検出器D1に対して例えば直交するように基板Sの側方に別の検出器D2を設けてもよい。光放射は、蒸着した層の組成に直接関係する品質が検出器D1,D2によって反射から判断でき、閉ループ制御回路に何らかの不具合があった場合にプロセスの修正を行うことができるように、蒸着した光学的に薄い層と独特な仕方で相互作用する。選択実施例では、基板Sの堆積面に種々異なる波長の光を入射させるために、蒸発源A,B,C,D,X,Yが非コヒーレント光源ILQとして同時に利用される。あるいは、又はこれに加えて、無限の波長スペクトルを有する白色光源ILQ(蒸発作用なし)を使用してもよい。さらに、堆積層の表面粗さの影響を考慮できるように、コヒーレント光源KLQ(ここではレーザ)を設けてもよい。同様に、例えば非金属元素を蒸発させるために、さらなる蒸発源X,Yを設けてもよい。
【0050】
同時蒸発の制御には個々の蒸発シーケンスの空間的な分離は必要ないが、個々の蒸発シーケンスの空間的な分離を排除するものでもない。蒸着プロセスの制御にとって重要なことは、動く基板に当たる光放射の反射の測定と評価である。そのためには、個々の放射をシステム内で評価できるように、放射を空間的に互いに分離しなければならない。この目的で、空間分解型光検出器D、例えば光学機器を備えたCCDカメラが、PVDチャンバPVDの内側又は外側に取り付けられる。PVDチャンバPVDの外側に取り付ける場合、チャンバ壁に相応の窓Fが設けられる。この窓Fは蒸発プロセス中は堆積層で覆われるので、閉ループ制御システムの外部参照は不可能である。これは本発明による方法では自己参照能力により不要となる。CCDカメラは光センサ装置によって受信した波長400nm〜700nmの光放射を色度に変換する。これら色度は発生した波長に対応しており、CCDチップの個々のセンサのスペクトル感度とともに計算済みである。CCDカメラは光センサのアレイから成っており、これら光センサによって生じた信号を局所的に分離する。CCDカメラを使用することにより、光放射の種類は限定されない。むしろ、これにより、可視スペクトル域の任意の光放射を監視に使用することができる。さらに、CCDカメラの個数と場所は任意であり、使用するカメラの品質に従って自由に選択してよい。同様に、空間分解型光検出器と共に動く又は動かない基板の一般的な制御も、基板の方向に向いた光学系を有するCCDカメラを使用することにより、特にエレガントに解決される。
【0051】
好ましくは、本発明による方法は上で説明した種類の蒸発プロセスのためのプロセス制御として使用することができる。光学的層パラメータの数値計算により、方法パラメータを操作することでプロセスの定量的な制御が可能である。この点が、この制御を、光学的層パラメータの数値に関する正確な情報がないために定性的な制御(所定の特徴点による)しかできないこの分野における公知の制御から区別する重要な点である。図9には、一般の場合(図8参照)について、関連する閉ループ制御回路の機能が概略的に示されている。検出器D1及びD2は反射強度の測定に使用され、測定信号を制御ユニットCUに伝送する。制御ユニットCUは閉ループ制御に使用される種類の光源(ILQ,KLQ)を用いて測定された信号を利用する。その際、光源の動作は自由に選択できる。ここで、光源の動作は光信号をチョッピングするものであっても、チョッピングしないものであってもよい。制御ユニットは、使用する光源と相関する測定された信号から、基板Sと蒸発源A,B,C,D,X,Y(X,Yは例えば非金属蒸発源であってよい)の動きを制御する。時として必要になる材料源の変化(蒸発速度の変更)又は基板の変化(動きの速度)の後、制御ユニットCUは改めて入来する測定信号を使用し、これにより連続的にかつインシトゥで蒸発プロセスを制御する。図10には、例えば、例として選択されたCu(In,Ga)Se2薄層の3段階蒸着プロセスのステージIについて、CCD光検出器の測定信号が光源の可視反射と蒸発源の温度とともに示されている。この測定信号記録のために、CCDカメラはPVDチャンバの底面にあり、このCCDカメラの光学系は基板Sの方向に対して垂直の方向を向いている(図8参照)。
【0052】
個別的には、図10において:
【表1】
【0053】
CCDカメラを使用して異なる複数の光源の空間分解測定をすることの他に、CCDカメラの使用により、蒸発源の機能を制御ユニットCUを介して蒸発源の温度を推定することにより監視する可能性が開かれる。図10のグレー表示では、元々の測定プロトコルの色がグレー値だけで再現されている。元々の測定プロトコルは、光源AC及びBの赤色反射、光源ABと蒸発源B及びXと外部雑音の場合の緑色反射、蒸発源A及びCにおける青色反射(赤色の島あり)を示している。蒸発源A及びBが近似的に同じ温度を有し、それにより類似した温度放射、温度分布及び温度色を有しているのに対し、蒸発源Cは明らかにより高い温度で動作する。このより高い温度はCCDカメラによって青色として表される。機能不良の際には、この蒸発源が青い色合いを帯びず、不可視となることもありえる。蒸発源Cはその高温ゆえに温度分布内の青以外の色によって測定される集中点を有している。CCDカメラは人間の目に適合させてあるので、最も強度の高い領域は緑色で表される。というのも、人間の目は緑に対する感度が最も高いからである。
【0054】
図10には、個々の光源(蒸発源も)の反射が示されている。閉ループ制御回路のための測定信号として使用するためには、まず半透明の光学的に薄い層について、測定信号を制御ユニットCUによって評価しなければならない。CCDカメラは反射を局所的に互いに分離し、これにより制御ユニット内での別々の評価を可能にする。続いて、制御ユニットが個々の光源の測定された別々の反射強度を数値的な強度に変換し、時間的な経過としてプロットする。
【0055】
図11には、制御ユニットにより処理された、基板表面における局所的に分離された反射強度の時間的経過が(RGB強度が経時的に任意単位で)示されている。光源A及びBの波長はそれらの波長とともに示されている。例として使用されている蒸発設備では、光源Bとしてレーザモジュールが使用されている。光源Aは源A(ここではガリウム溶融)の温度放射に起因している。光学的に薄い層を求めるために十分に知られている物理法則から、2つの異なる波長を用いて、発生した層の厚さと堆積した層の複素屈折率(2つの成分)を求めることが可能である(上記参照)。さらには、源Aの短波温度放射の特性と光源Bの長波放射の特性の違いが図11から分かる。この放射の強度は目に見えて減衰している。このため、制御ユニットによって、堆積した物質が青色放射を吸収していることが確認できる。これとは逆に、赤色放射は吸収されず、干渉信号がごく僅かしか減衰しないことによって可視となる。制御ユニットは基板上の予想される層に関するデータを有しており、ステージダイアグラムと波長に依存する複素屈折率との形態をとったデータを用いて、光学的層パラメータを求め、光学的層パラメータに依存して、形成された物質の層組成を求める。図11に示されている例では、制御ユニットは堆積した層がGa2Se3であるという情報を提供する。この物質は2.4の屈折率を有し、波長が580nm未満でなければ吸収しない。
【0056】
本発明による方法の限界は堆積層の厚さのみによるものである。というのも、厚さが衝突光の波長のおよそ10倍以上になると、干渉法はもはや有効な結果を出さないからである。しかし、本発明を光学的に薄い層に限定すれば、この限界に達することはなく、無視することができる。光学的に薄い層については、図8による本発明の方法の実施形態は干渉法計算に関して十分な制御を可能にし、プロセス制御の目的で使用しうる。それにもかかわらず、本発明による方法を用いれば、独特の光学的評価のおかげで、吸収層に関して少なくとも1つの化学量論量の推定を行うことができる。このような推定は例えばDE 102 56 909 B3から公知である。
【0057】
CuInGaSe2層の蒸着を例として、動作手順を説明する。ステージIでは、インジウム、ガリウム及びセレンからなる半透明層を基板上に堆積させた。図12には、ステージIIにおいて銅を上記半透明層上に蒸着させるためのCCDカメラの測定信号が示されている。検出器の測定信号の1つの例がステージIIにおける光源の可視反射と蒸発源の温度とともに示されている。
【0058】
個別的には、図12において:
【表2】
【0059】
図12には、プロセスの制御に使用される、CCDカメラの記録領域が示されている。図10と比べると、図12では、外部放射の妨害信号が切り取られている。これは測定信号の空間分解により実現できる。この例示したプロセスの間、回転のせいで2つの光源A及びBが部分的に覆われる。しかし、制御ユニットは連続測定信号の処理のおかげで両方の反射を分離し、個別に評価することができる。光源Bの上記反射は、既に述べた、動作証明を目的とする蒸発源の温度推定のための例示した光源に対応している。
【0060】
この例示したプロセスの目的は、金属のインジウム及びガリウムならびに金属の銅からなる物質量における化学量論量の推定である。化学量論量にあるCu(In,Ga)Se2薄層の場合、インジウム及びガリウムの量は基板上の銅の量に一致していなければならない。制御ユニットはこの物質の目標組成に基づいて校正されており、化学量論量の推定を実行しうる。この具体的な例では、CCDカメラは、制御ユニットが処理された測定信号から堆積層の表面にセレン化銅(Cu2-xSe)コーティングが発生したことを検出するまで、プロセスを測定する。CCDカメラにとって、この効果は、例示したシステムにおいて、光源Aの反射の強度が連続的に上昇し、それと同時に光源Bの反射の減衰が生じることによって、目に見えるようになる。
【0061】
図13には、制御ユニットによって評価されたCCDカメラの測定値の時間的経過が(RGB強度が経時的に任意単位で)示されている。銅源の温度反射の経過(上の曲線、緑色、光源Aからの強度)は光源B(ここでは波長635nmのレーザ、下の曲線、赤色、光源Bからの強度)の反射とともに図示されている。図13では、上記方法は長円(化学量論量の近似)によりそれと分かる。この特性が生じれば、堆積層内での化学量論量を推定するという要請は満たされる。
【0062】
光反射を測定するための本発明による方法を制御するために、制御ユニットの評価をDE 102 56 909 B3による制御システムの評価と比較する。この公知の制御システムでは、下記のロックイン増幅器を用いたフォトダイオードが使用される。このフォトダイオードは基板表面からの変調された反射信号を受信し、信号全体を積分し、分析のために、変調された信号を抽出する。したがって、異なる複数の信号の空間分解は行われない。それにもかかわらず、既に述べたように、DE 102 56 909 B3の公知の方法により、個々の特徴点に基づいて定性的な制御は可能である。図14には、DE 102 56 909 B3の方法による経過をさらに示した上で、本発明による制御プロセスの全体の時間的経過(RGB強度が経時的に任意単位(a.u.)で)における上記2つの方法の比較が示されている。ステージIにおける下側の明るいグレーの曲線は緑色の反射強度の時間的経過を示すものであり、上側の黒くて太い曲線は本発明によるレーザスポット(赤色)の反射強度の時間的経過を示すものである。対して、真ん中の黒くて細い曲線はDE 102 56 909 B3の方法の信号経過を示したものである。ステージIでは、測定の際に非常に似た結果が認識されうる(上の2つの曲線を参照)。基板/層が滑らかな場合、本発明による方法に対応する下側の曲線は、ステージIの間、レーザ信号の一般的な不感性を示す。ただし、DE 102 56 909 B3による測定は、プロセスにおいて粗い層を前提としなければならないため、非常に誤りがちである。この場合、問題なのは、レーザ信号、すなわち、コヒーレント放射は、非コヒーレント放射よりも表面の粗さに強く影響を受けてしまうということである。
【0063】
層の堆積の定量的な制御はDE 102 56 909 B3による公知の方法では不可能である。というのも、測定された干渉に蒸着した層の粗さが重ね合わされてしまうからである。非コヒーレント光が使用できるならば、本発明による方法におけるこの依存性は生じないので、CCDカメラを用いた相応する制御システムは、厚さを数値的に求め、屈折率を計算することで、堆積層の特徴付けをすることができる。ステージIIに関しては、両方のシステムにより、化学量論量の一意な出現を観測することができる。ただし、化学量論量の一意な出現は様々な形をとる。図14にはもはや図示されていないステージIIIについては、本発明による方法を用いて、再び層の組成の定量的な分析が行われる。しかし、これはふつうは必要ない。というのも、ステージIIIでは、いずれにしても銅の多い堆積の領域ではステージIIを出ることだけが問題となっているからである。
【0064】
図15には、粗い基板の上でのコヒーレント光源と非コヒーレント光源の比較が示されている。図示されているのは、本発明による方法とDE 102 56 909 B3(LLS)による方法とでの同時測定である。グラフでは、プロセスが開始され、第1のガリウム層と後続の第1のインジウム層が堆積する。LLS(曲線c)の測定信号が非常に弱い信号を示しているのに対し、本発明による方法の信号ははっきりと認識できる。第1のインジウム相では、レーザ信号への粗さの影響が再び矢印で明らかにされている。LLSの反射信号の見かけの位相シフトが正確な測定を不可能にするのに対し、白色光源を用いた本発明による方法は位相シフトを示さない。
【0065】
IV)本発明による方法、プロセス装置、及びその使用の可能な変更形態に関する概観
I. 前記した蒸発源A,B,C,D,X,Yは任意の元素のための蒸発源である。A,B,C,D:任意の金属、X,Y:V−VII族の任意の非金属元素。
II. 前記した光源A,Bは下記の任意の光源である。
a.) コヒーレント源:任意の性質のレーザ(例えば、ガス放電レーザ、レーザダイオード、及びコヒーレント光放射の他の源)。
b.) 単色の非コヒーレント光(例えば、任意の光波長の発光ダイオード、例えばモノクロメータ、フィルタなどの光学的方法による連続的な光スペクトルの分割)。
c.) 非単色の非コヒーレント光(例えば、ハロゲンランプ、ガス放電ランプなどのような白色光源、さらには、白色発光ダイオードないし光放射を発生させるダイオード群)。
d.) 他の光源(例えば、金属溶融の光放射、源A,B,C,D内で発生した溶融の光放射、及び上記源X,Yの溶融の光放射)。
III. 前記光源A,Bの位置決めは、加熱した又は加熱していない透明の装置(例えば窓)を用いて、
a.) プロセス装置内で任意の角度αで
b.) プロセス装置外で任意の角度αで
行うことができる。
IV. 前記光源A,Bの放射の入射は以下のようにして行われる。
a.) 制御すべき蒸着プロセスの間、光学機器なしで、II.で述べた光源により基板を直接照明することによって。
b.) 制御すべき蒸着プロセスの間、直列に接続された任意の光学機器(例えば、直線偏光子及び円偏光子、結像させるための凸レンズ及び凹レンズ、干渉フィルタ又は光源の波長を調節する他のフィルタ)を用いて、II.で述べた光源により基板を直接照明することによって。
c.) 制御すべき蒸着プロセスの間、ライトガイド(例えば、シングルモード及びマルチモード光ファイバ、光放射を偏向させ、基板上での位置及び入射角を調節するためのミラー系)により光放射を誘導しつつ、IIで述べた光源により基板を直接照明することによって。
V. 上記検出器は下記の形態の任意の空間分解型光検出器である。
a.) 光学機器(例えば、フォトダイオード列又はフォトダイオードアレイ、光放射の測定に適した列CCD及びラインCCD、空間的に分離された複数のフォトダイオード)なしの空間分解型積分検出器。
b.) 光学機器(例えば、凸もしくは凹結像レンズ、干渉フィルタ、又は所定の波長に対する感度を調節するための他のフィルタ、単色プリズムもしくはフィルタによる光信号の分解機能を有する上記V.a.)の素子)付きの空間分解型積分検出器。
c) 光学機器(例えば、任意の様々な解像度及び構造のCCDカメラ、写真乾板、感光紙(フィルム)、撮像カメラ系)なしの空間分解型非積分検出器。
d.) V.c.)による光学機器(例えば、結像光学装置(凹及び凸レンズ系、ディジタル及びアナログ撮像カメラ用の対物レンズ)付きのカメラ)を有する空間分解型非積分検出器。
VI. 上記基板は任意の性質の基板(例えば、金属箔、ガラス板、プラスチックフィルム。場合によっては、モリブデンのような導電性材料や、フッ化ナトリウムのような層の形成を促進するのに適した材料で覆われている)である。
VII. 上記基板の動きは任意である(例えば、回転、垂直及び水平方向の直線運動、これら2つの動きの任意の組合せ。基板の静止も含む)。
VIII. 蒸発プロセス中に堆積する層は任意の性質のものであり、下記の目的で使用することができる。
a.) 光起電用途で利用するために吸収層を得る(例えば、Cu(InxGa1-x)(SySe1-y)2のような構造ABCXY2、及び、Cu2(ZnSn)xGa1-x(SySe1-y)4のような構造A2(BC)xD1-x(XyY1-y)4)。ただし、x、yは0と1の間の任意の値である)。
b.) VII.a.)に記載されたABXYタイプの吸収層への二価結合及び三価結合の前駆層を得る(例えば、様々な組成の可能性の例として、InS、GaS、InSe、GaSe)。
c.) 光起電用途以外でも利用しうる二価、三価及び四価の層を得る。
d.) X又はYの蒸発中に反応プロセスによりVIII.b.)に記載された前駆層から吸収半導体層を得る(例えば、前駆層のセレン化及び硫化)。
e.) 本発明による方法によって制御しうる、VIII.a.)−d.)に記載されていない別の層系を形成する。
IX. 制御システムを使用する設備は任意であり、下記の制御に使用できる。
a.) VIII.に従って光学的に薄い層を得るために、I.による少なくとも1つの金属及び非金属をシーケンスごとに蒸発させる(例えば、物理蒸着(PVD))、逐次的な単段又は多段システムの制御。
b.) VIII.d.)による方法を実行する熱プロセスの制御。
X. 本発明による制御システムの制御ユニットは、V.による機器を用いた撮像及び積分方法によるディジタル及びアナログ読込み、読み込んだ測定信号のディジタル技術(例えばコンピュータ)による処理を用い、制御ユニットからの制御信号はディジタル技術を用いてI.,VII.に従って制御すべきシステムに伝送される。
【0066】
制御ユニットは下記のことを行う。
a.) V.の検出器による測定信号を評価する。
b.) I.の源の温度、VI.の基板の温度、及びVII.の基板の動き(例えば、I.の源の温度変化又は被覆)を制御する。
c.) テスト及び校正のために、関連するすべてのシステムの外部測定を制御システムと相関させる(例えば、I.による出力及び温度の測定、VI.及びVII.による基板の速度測定)。
XI. 制御ユニットの使用は任意であり、下記のことに適している。
a.) VIIIによる光学的に薄い層を得るための、IX.による連続的プロセスのインシトゥ制御。
b.) VIII.による光学的に薄い層を得るための、IX.による逐次的プロセスのインシトゥ制御。
【符号の説明】
【0067】
A,B,C,D,X,Y 元素/蒸発源/光源
AA,AB,AC 光源としての蒸発源
CCD 電荷結合素子(空間分解型光検出器)
CU 制御ユニット
D 空間分解型光検出器
dopt 光学的厚さ
dSchicht 実層厚
F 窓
γ 伝搬定数
ILQ 非コヒーレント光源
KLQ コヒーレント光源
κSchicht 消衰係数(複素屈折率の虚部)
λ 波長
LLS レーザ光散乱法
m 干渉次数
nkomplex 複素屈折率
nSchicht 屈折率(複素屈折率の実部)
PVD PVDチャンバー
φ 入射角
R 反射強度
RGB 赤緑青信号
S 基板
SLS 光散乱分光法
ZF 光学的に薄い層の波動インピーダンス
ZF0 真空の波動インピーダンス
ZG 全波動インピーダンス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ(屈折率nSchichtを実部とし、吸収係数κSchichtを虚部とする複素屈折率nkomplexと、実層厚dSchicht)間の相関によりインシトゥで求める方法において、少なくとも
・ 堆積プロセス中に、前記基板の堆積面を可視光領域内の少なくとも3つの異なる波長λ1、λ2、λ3の非コヒーレント光で照射するステップ、
・ 堆積した層から発する、全反射以外の拡散光散乱又は直接光散乱の反射強度Rを前記3つの異なる波長λ1、λ2、λ3において空間分解して光学的に検出するステップ、
・ 検出した反射強度Rの数値を前記検出と時間的に並行して一般的な伝送線路理論に基づいた光学的層モデルに供給し、堆積した各層を可変の波動インピーダンスZF、伝搬定数γ、及び導体の長さに等しい実層厚dSchichtをもつ電磁導体として解釈するステップ、
・ 前記3つの異なる波長λ1、λ2、λ3について、波長に依存する実層厚dSchichtを基準値として使用して、検出した反射強度の時間的経過への数値的な当てはめにより、前記光学的層モデルから堆積した層の光学的層パラメータの値を求めるステップ、及び
・ 求めた光学的層パラメータの値を既知の物質組成の光学的パラメータの標準値と比較することにより、堆積した層の物質組成を定量的に求めるステップを有することを特徴とする、光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求める方法。
【請求項2】
堆積した層の光学的層厚doptを前記波長λ1、λ2、λ3の反射強度Rの干渉最大値の距離の1/2として求め、光学的層厚doptと複素屈折率nkomplexとの積から実層厚dSchichtを求める、請求項1記載の方法。
【請求項3】
検出した反射強度Rと全波動インピーダンスZGとの間に関係
【数1】
が成り立つ、ここで、ZF0は真空の波動インピーダンスである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
積み重なった2つの層の全波動インピーダンスZGが
【数2】
に従って求められる、ここで、ZF1は第1の層の波動インピーダンスであり、ZF2は第2の層の波動インピーダンスであり、
【数3】
は伝搬定数である、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
層の光学的パラメータの求められた値を記憶し、記憶した値を層を替える際に次の層の基準値として使用する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
堆積した層の表面の粗さを考慮するために、さらにある波長のコヒーレント光によって生じた反射強度を評価する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を実行する装置であって、少なくとも1つの光源、光検出器及び評価ユニットを備えている形式の装置において、赤色、青色及び緑色用の光検出器(D)として、少なくとも1つの結像光学装置を有していることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記結像光学装置としてCCDカメラ又はCMOSカメラを有する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
少なくとも前記光検出器(D)が気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を堆積させるための蒸発チャンバー(PVD)の底面に取り付けられている、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を堆積させるために蒸発源(A,B,C,D,X,Y)を使用し、及び/又は、光源(ILQ,KLQ)としての白色光源を使用する、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7から9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記光源(ILQ,KLQ)と堆積した層(ZF1,ZF2)の間に遮蔽装置を有する、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7から10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する方法において、閉ループ制御回路が、光学的に薄い層の光学的層パラメータの計算された実際値を制御量として、操作量である製造パラメータの調節により所定の目標値へと制御するのと共に、気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を形成する際のインシトゥプロセス制御として請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用することを特徴とする使用方法。
【請求項13】
基板(S)上に堆積させた層から発する全反射以外の拡散性光散乱又は直接光散乱の反射強度Rを少なくとも2つの波長λ1、λ2において解釈することにより化学量論量を推定し、光学的に厚い層をさらに形成するプロセスの際に請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する、請求項12記載の使用方法。
【請求項14】
少なくとも1つの空間分解型光検出器(D)を介して蒸発源(A,B,C,D,X,Y)の温度を同時観測する、請求項12又は13記載の使用方法。
【請求項15】
粗い基板(S)又は粗い堆積層(ZF1,ZF2)に請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する、請求項12から14のいずれか1項記載の使用方法。
【請求項1】
気相から基板上に堆積させた光学的に薄い層の物質組成を、干渉法により評価できる、光学的な層パラメータ(屈折率nSchichtを実部とし、吸収係数κSchichtを虚部とする複素屈折率nkomplexと、実層厚dSchicht)間の相関によりインシトゥで求める方法において、少なくとも
・ 堆積プロセス中に、前記基板の堆積面を可視光領域内の少なくとも3つの異なる波長λ1、λ2、λ3の非コヒーレント光で照射するステップ、
・ 堆積した層から発する、全反射以外の拡散光散乱又は直接光散乱の反射強度Rを前記3つの異なる波長λ1、λ2、λ3において空間分解して光学的に検出するステップ、
・ 検出した反射強度Rの数値を前記検出と時間的に並行して一般的な伝送線路理論に基づいた光学的層モデルに供給し、堆積した各層を可変の波動インピーダンスZF、伝搬定数γ、及び導体の長さに等しい実層厚dSchichtをもつ電磁導体として解釈するステップ、
・ 前記3つの異なる波長λ1、λ2、λ3について、波長に依存する実層厚dSchichtを基準値として使用して、検出した反射強度の時間的経過への数値的な当てはめにより、前記光学的層モデルから堆積した層の光学的層パラメータの値を求めるステップ、及び
・ 求めた光学的層パラメータの値を既知の物質組成の光学的パラメータの標準値と比較することにより、堆積した層の物質組成を定量的に求めるステップを有することを特徴とする、光学的に薄い層の物質組成をインシトゥで求める方法。
【請求項2】
堆積した層の光学的層厚doptを前記波長λ1、λ2、λ3の反射強度Rの干渉最大値の距離の1/2として求め、光学的層厚doptと複素屈折率nkomplexとの積から実層厚dSchichtを求める、請求項1記載の方法。
【請求項3】
検出した反射強度Rと全波動インピーダンスZGとの間に関係
【数1】
が成り立つ、ここで、ZF0は真空の波動インピーダンスである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
積み重なった2つの層の全波動インピーダンスZGが
【数2】
に従って求められる、ここで、ZF1は第1の層の波動インピーダンスであり、ZF2は第2の層の波動インピーダンスであり、
【数3】
は伝搬定数である、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
層の光学的パラメータの求められた値を記憶し、記憶した値を層を替える際に次の層の基準値として使用する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
堆積した層の表面の粗さを考慮するために、さらにある波長のコヒーレント光によって生じた反射強度を評価する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を実行する装置であって、少なくとも1つの光源、光検出器及び評価ユニットを備えている形式の装置において、赤色、青色及び緑色用の光検出器(D)として、少なくとも1つの結像光学装置を有していることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記結像光学装置としてCCDカメラ又はCMOSカメラを有する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
少なくとも前記光検出器(D)が気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を堆積させるための蒸発チャンバー(PVD)の底面に取り付けられている、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を堆積させるために蒸発源(A,B,C,D,X,Y)を使用し、及び/又は、光源(ILQ,KLQ)としての白色光源を使用する、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7から9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記光源(ILQ,KLQ)と堆積した層(ZF1,ZF2)の間に遮蔽装置を有する、請求項1から6のいずれか1項又は請求項7から10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する方法において、閉ループ制御回路が、光学的に薄い層の光学的層パラメータの計算された実際値を制御量として、操作量である製造パラメータの調節により所定の目標値へと制御するのと共に、気相から基板(S)上に光学的に薄い層(ZF1,ZF2)を形成する際のインシトゥプロセス制御として請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用することを特徴とする使用方法。
【請求項13】
基板(S)上に堆積させた層から発する全反射以外の拡散性光散乱又は直接光散乱の反射強度Rを少なくとも2つの波長λ1、λ2において解釈することにより化学量論量を推定し、光学的に厚い層をさらに形成するプロセスの際に請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する、請求項12記載の使用方法。
【請求項14】
少なくとも1つの空間分解型光検出器(D)を介して蒸発源(A,B,C,D,X,Y)の温度を同時観測する、請求項12又は13記載の使用方法。
【請求項15】
粗い基板(S)又は粗い堆積層(ZF1,ZF2)に請求項1から6のいずれか1項記載の方法を使用する、請求項12から14のいずれか1項記載の使用方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−533874(P2010−533874A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517266(P2010−517266)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001130
【国際公開番号】WO2009/012748
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(591157202)ヘルムホルツ−ツェントルム ベルリン フュア マテリアリーエン ウント エネルギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz−Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Glienicker Str.100,D−14109 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001130
【国際公開番号】WO2009/012748
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(591157202)ヘルムホルツ−ツェントルム ベルリン フュア マテリアリーエン ウント エネルギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz−Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Glienicker Str.100,D−14109 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】
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