説明

光学的情報記録再生装置

【課題】 多層ディスクの層間において、集光スポットの現在アドレスから目的アドレスへのアクセスする際に、球面収差発生手段の駆動に要するアクセス時間を抑えることを目的とする。
【解決手段】 対物レンズと、光源との間の光路中に配置され、選択された前記記録層に応じて光源からの光束に球面収差を発生させるための球面収差発生手段と、光学ヘッドを前記媒体の半径方向に移動させるための第1の駆動手段とを有する光学的情報記録再生装置において、集光スポットを現在アドレス位置から異なる前記記録層上の目的アドレス位置へアクセスする際に、前記第1の駆動手段の駆動中に前記球面収差発生手段を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層以上の多層の光媒体を用いる光学的情報記録再生装置に関し、特に球面収差発生手段の制御とシーク動作の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在知られている多層ディスクとして、DVDが挙げられる。
【0003】
DVDでは、第1の層のあるアドレス位置から、第2の層の別のアドレス位置へのアクセスを行う場合、現在のアドレス位置から、目的のアドレス位置への半径方向の移動をシークによって行い、現在の層から目的の層へのディスクの厚さ方向の移動をフォーカスジャンプによって行っている。
【0004】
一般に、光ディスクの基板(光透過層)の厚みに設計値に対する誤差があると球面収差が発生し、光記録媒体上でのスポット品位が劣化し(スポットサイズが変化し、相対的にピーク強度が低下する)、記録再生性能が低下することが知られている。また、発生する球面収差量は、概ね、対物レンズNAの4乗に比例し、波長に反比例することが知られている。
【0005】
近年、光ディスク装置において、半導体レーザーの発振波長が短波長化すると共に、使用される対物レンズが高NA化している。例えば、BD(ブルーレイディスク)装置では、波長は405nm、対物レンズNAは0.85である。
【0006】
従って、BD装置の場合、DVD装置等に比較して、非常に球面収差が発生しやすく、光ディスクが交換された場合や、同じ光ディスクでも記録再生位置が大きく変わった場合、また多層ディスクにおいて、ひとつの層から他の層に移った場合にはその球面収差を補正する必要がある。
【0007】
その球面収差を補正する装置がいろいろと提案されている。
【0008】
例えば、特開2002-312971号公報によれば、球面収差補正手段としてコリメートレンズと対物レンズの間に2枚のレンズを配し、一方のレンズをDCモーターに光軸方向で動かし、レンズ間隔を可変にすることで球面収差を発生させる手段が提案されている。
【0009】
また、特開平10−269611号公報によれば、液晶を利用した球面収差発生手段が提案されている。
【0010】
このような多層ディスクにおいては、第1の層のあるアドレス位置から、第2の層の別のアドレス位置へのアクセスを行う場合、DVDの場合と同様に、現在のアドレス位置から、目的のアドレス位置への半径方向の移動をシークによって行い、現在の層から目的の層へのディスクの厚さ方向の移動をフォーカスジャンプによって行い、さらに、球面収差発生手段による球面収差の状態を、現在の層に最適な状態から目的の層に最適な状態に駆動する必要がある。
【0011】
球面収差発生手段を現在の層に最適な状態から、他の層に最適な状態に駆動するには、上記2枚のレンズで構成され、一方のレンズをモーターで駆動する方式では、数百mSの時間が必要となり、液晶を駆動する方法でも、数10mSの時間が必要となる。
【0012】
このことは、DVDなどの場合に比べて、数10mSから数100mSのアクセス時間の増大を意味している。
【特許文献1】特開2002-312971号公報
【特許文献2】特開平10−269611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記ようなアクセス時間の増大は、アクセス時間が性能を左右するコンピュータなどの周辺機器としては、致命的な欠点となる。
【0014】
そのため、本発明の目的は、多層ディスクのアクセスにおいて球面収差発生手段の駆動によるアクセス時間増大を抑えたアクセスを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下の発明によって達成される。
【0016】
複数の記録層を有する光記録再生媒体の夫々の前記記録層に対し、光源からの光束で集光スポットを生成するための対物レンズと、前記光源と前記対物レンズの間の光路中に配置され、選択された前記記録層に応じて前記光束に球面収差を発生させるための球面収差発生手段と、前記対物レンズを含む光学ヘッドを前記媒体の半径方向に移動させるための第1の駆動手段とを有する光学的情報記録再生装置において、前記集光スポットを現在アドレス位置から異なる前記記録層上の目的アドレス位置へアクセスする際に、前記第1の駆動手段の駆動中に前記球面収差発生手段を駆動させることを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、多層ディスクの層間において、集光スポットの現在アドレスから目的アドレスへのアクセスする際に、球面収差発生手段の駆動に要するアクセス時間を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施例)
図1は、本発明による光学的情報記録再生装置のブロック図である。
【0019】
図において、1は光ディスク、2は光ヘッド、3は光ヘッド内の光検出器の出力を演算して各種信号を出力するエラー信号生成回路、4は演算回路3の出力信号のうちフォーカスエラー信号を入力とするフォーカス制御回路、5は光ヘッド内のフォーカスアクチュエータを駆動するためのドライバ回路、6はエラー信号生成回路3の出力信号のうちトラックエラー信号を入力とするトラック制御回路、7は光ヘッド内のトラックアクチュエータを駆動するためのドライバ回路、8は光ヘッド2全体をディスク半径方向に移動するためのヘッド送り用ステッピングモータ、9はヘッド送り用ステッピングモータを駆動するためのドライバ回路、10は光学ヘッド2内の球面収差発生用のステッピングモータを駆動するためのドライバ回路、11はサーボコントローラ、12はシステムコントローラ、13はスピンドルである。
【0020】
光学ヘッド2は、図2で示すように構成される。
【0021】
図2において、半導体レーザー101から出射したビームは、回折格子102で3ビームに分けられ、コリメーター103で平行光とされ、ビーム整形付き偏光ビームスプリッター104に入射する。ビームの一部は反射させられ、APC用センサー105に入射し、半導体レーザー101からの出射光量のモニターに利用される。透過したビームは、1/4波長板106、レンズ107、レンズ108を介して、対物レンズ112により、光ディスク1上で光透過層を経て記録層面へ集光され、情報の再生、記録に利用される。光ディスク1で反射されたビームは、ビーム整形付き偏光ビームスプリッター104で反射させられ、センサーレンズ114を介して、光検出器115に入射し、情報信号の再生に利用される。
【0022】
ここで、レンズ107は固定、レンズ108は電磁駆動手段110によりレンズ107との光軸方向の間隔が可変であるように保持されて、球面収差発生手段111を形成している。レンズ107、レンズ108の形状、硝材は、レンズ間隔が変わった時に球面収差のみが発生するように構成されている。電磁駆動手段110はステッピングモータを用いてリードスクリューによりミクロンオーダーでレンズ108を移動させるものである。
【0023】
光検出器115の出力は、エラー信号生成回路3で演算され、フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、RF信号などとして出力される。それらの信号のうち、フォーカスエラー信号は、フォーカス制御回路4、ドライバ回路5を経て、光ヘッド2内のフォーカスアクチュエータに接続され、フォーカス制御ループを構成する。また、トラックエラー信号は、トラック制御回路6、ドライバ回路7を経て、光学ヘッド2内のトラッキングアクチュエータに接続され、トラック制御ループを構成する。
【0024】
エラー信号生成回路3の出力のうちRF信号は、図示しないRF信号処理回路に入力され、情報信号、ディスクのアドレス信号などを検出し、システムコントローラ12に入力される。
【0025】
サーボコントローラ11は、フォーカス制御回路4、トラック制御回路6をコントロールし、ループの開閉、ジャンプ信号発生などを行う。
【0026】
また、サーボコントローラ11は、ステッピングモータ9をコントロールし、光学ヘッド2を所望の半径位置に移動させる。
【0027】
また、サーボコントローラ11は、光ヘッド2内の図2に示す球面収差発生手段111を、ドライバ回路10をコントロールすることで球面収差を最適な状態に調整する。
【0028】
次に本実施例におけるアクセス方法を図3のフローチャートにそって説明する。
【0029】
本実施例の光学的情報記録再生装置は、フォーカス、トラッキング制御がかけられ、ある層のある半径位置のトラック上にビームが焦点を結んでいるものとする。
【0030】
システムコントローラ12は図示しない上位の装置から所定のアドレスへの再生命令をうけると、現在のアドレスと、目的のアドレスとの半径方向の距離を計算し、また、1層目か2層目かなど判断する。
【0031】
半径方向の距離と層がわかると、システムコントローラ12は、移動すべき距離と方向と目的の層をサーボコントローラ11に命令する。(S1)
サーボコントローラ11は、距離と方向の情報、層の命令を受け取り、まず、層が、現在の層と異なるのかを判断する。(S2)
層が異なる場合、サーボコントローラ11は、トラック制御回路6を制御し、トラック制御をオフする。(S3)
次に、距離が光学ヘッドを動かす必要がある距離か判断する。(S4)
光学ヘッドを動かす必要がある場合は、サーボコントローラ11は、移動するステップ数をセットし、ドライバ9によりステッピングモータ8を駆動開始すると同時に、球面収差発生用ステッピングモータの移動ステップ数を目的の層までのステップ数にセットし、ドライバ10により、球面収差発生用のステッピングモータを駆動開始する。(S5)
光学ヘッドを動かす必要がない場合は、サーボコントローラ11は、球面収差発生用ステッピングモータの移動ステップ数を目的の層までのステップ数にセットし、ドライバ10により、球面収差発生用のステッピングモータを駆動開始する。(S6)
ステップS3からS6までは、サーボコントローラにより瞬時に行われる。
【0032】
次に、サーボコントローラ11は、フォーカス制御回路4を制御して、フォーカスアクチュエータにフォーカスジャンプパルスを与えてフォーカスジャンプを行う。(S7)
フォーカスジャンプ終了後、サーボコントローラ11は、球面収差発生用のステッピングモータ、および光学ヘッド移動用のステッピングモータが、所定のステップ数駆動し終わったのを確認して、(S6を通った場合は、球面収差のみでよい)トラック制御回路6を制御しトラック制御をオンとする。(S8)S3からS5経由でS8までの各コントロール信号のタイミングチャートを図4に示す。トラック制御オフ(S3)後すぐに、光学ヘッド移動と球面収差素子の移動を開始(S5)、その後にフォーカスジャンプを行い(S7)光学ヘッド移動、球面収差素子移動が終了したらトラック制御をオン(S8)している。図4では、光学ヘッド移動の時間が球面収差素子移動の時間よりも長い例を示しているが、アクセス距離によって、逆の場合もある。S6を通った場合は、光学ヘッドの移動はないので、球面収差素子移動が終了した時点で、トラック制御オンとなる。フォーカスジャンプは、光学ヘッド移動と球面収差素子移動開始後で、かつ、それぞれの移動時間が終わる前にフォーカスジャンプが終了するようなタイミングで行っている。
【0033】
この状態で、ビームは目的の層の目的のトラックの近くにいることになる。さらに目的のトラックまで移動するには、再度システムコントローラ12が、現在のアドレスを読み、目的のアドレスとの距離をサーボコントローラ11へ命令する(S1)ことになる。
【0034】
こんどは、層は同じなので、距離だけ判断することになる。
【0035】
次に、距離が光学ヘッドを動かす必要がある距離か判断する。(S9)
光学ヘッドを動かす必要がある場合は、サーボコントローラ11は、トラック制御回路6を制御しトラック制御オフとすると同時に、移動するステップ数をセットし、ドライバ9によりステッピングモータ8を駆動し、目的ステップ数に至ったところで、トラック制御回路を制御し、トラック制御オンとする。(S10)
距離が光学ヘッドを動かす必要がない場合は、距離に応じたトラック数だけトラックアクチュエータによるトラックジャンプを行う。(S11)
以上の動作を繰り返し、目的トラックに達した時点で再生動作を行う。
【0036】
本実施例においては、球面収差発生素子を動作せせるときに、光学ヘッドの移動と同時に行うので、数百mSかかる球面収差発生素子移動時間と、それと同程度の時間のかかる光学ヘッド移動時間を足し合わせることなく、効率よく動作させることができる。
【0037】
また、光学ヘッド移動中に、球面収差素子を、現在の層での最適位置から異ならせることで、トラッキングエラーなど、信号が劣化することが考えられるが、本実施例では、ステッピングモータのステップ数で光学ヘッドを移動しているために、トラックカウントを用いて移動動作を行う場合のようにトラッキングエラー信号の品位は気にする必要がない。
【0038】
また、最初にトラック制御オフにしてから、フォーカスジャンプが終了するまでトラック制御はオンとならないので、球面収差の状態によって、トラックエラー信号の品位が悪くなっても問題はない。また、トラック制御オン時は、球面収差は最適な状態となっているので、トラック制御オンで問題となることもない。
【0039】
また、光学ヘッド移動手段は、ステッピングモータではなく、移動位置のわかるようなエンコーダーのついたモーターでも良い。この場合もトラッキングエラーの品位によらず、光学ヘッドを移動できる。
【0040】
また、本実施例では、フォーカスジャンプを開始するタイミングが、光学ヘッド移動、および球面収差発生素子の移動開始の後としたが、光学ヘッド移動、および球面収差発生素子の移動動作が終了した後にフォーカスジャンプ(S7)を行うのでも良い。
【0041】
このようにした場合の、タイミングチャートを図5に示す。トラック制御オフ(S3)後すぐに、光学ヘッド移動と球面収差素子の移動を開始(S5)、光学ヘッド移動、球面収差素子移動が終了した後にフォーカスジャンプを行い(S7)トラック制御をオン(S8)している。図5では、光学ヘッド移動の時間が球面収差移動の時間よりも長い例を示しているが、アクセス距離によって、逆の場合もある。S6を通った場合は、光学ヘッドの移動はないので、球面収差素子移動が終了した時点で、フォーカスジャンプを行いトラック制御オンとなる。
【0042】
このようにした場合、フォーカスジャンプの時間だけ、アクセス時間は延びるが、光学ヘッドの移動による振動もなく、球面収差も目的の層に最適となっているので、安定したフォーカスジャンプが期待できる。また、フォーカスジャンプの時間は普通数mS程度であるので、大きく時間が伸びるものではない。
【0043】
本実施例では、球面収差発生手段の構成がレンズ2枚を使用し、一方をステッピングモータで駆動する方法であったが、この方法によらず、液晶によって球面収差を発生させたりする方法であっても良い。
【0044】
また、光学ヘッドを動かすか動かさないかの判断を単純に、目的トラックまでの距離としたが、光学ヘッドと対物レンズの相対位置を検出することができる場合は、光学ヘッドの中心位置からの目的トラックまでの距離を算出し、それをもとに判断をするのでも良い。
【0045】
この場合、トラック制御オフ時に対物レンズが中心に戻ることを考慮した正確な判断が可能となる。
【0046】
また、実施例は再生時の例であるが、記録時の場合も、目的のトラックに至るまでは再生と同じである。
【0047】
また、本実施例では、サーボコントローラ11とシステムコントローラ12の2つのコントローラを使用する構成となっているが、コントローラの能力しだいでひとつのコントローラでも可能である。
【0048】
以上により、ビデオ、オーディオ機器等では、アクセス中の映像、音声の途切れをなくすために、バッファーメモリを増大させなければならないが、本実施例によりコスト増を抑えることもできる。
【0049】
また、モバイル用途などの場合も、振動、衝撃などに対応するためのショックプルーフメモリの容量をアクセス時間分だけ余計に必要とすることになるが、コストを抑えるために、メモリを増やさない場合は、本実施例により、振動、衝撃に耐える時間を短くすることもできる。
【0050】
(第2の実施例)
第2の実施例のフローチャートを図7に示す。
【0051】
フローチャート以外の構成は第1の実施例と同じである。
【0052】
本実施例におけるアクセス方法を図7のフローチャートにそって説明する
本実施例の光学的情報記録再生装置は、第1の実施例と同様にフォーカス、トラッキング制御がかけられ、ある層のある半径位置のトラック上にビームが焦点を結んでいるものとする。
【0053】
システムコントローラ12は図示しない上位の装置から所定のアドレスへの再生命令をうけると、現在のアドレスと、目的のアドレスとの半径方向の距離を計算し、1層目か2層目かなど判断する。
【0054】
半径方向の距離と層がわかると、システムコントローラ12は、移動すべき距離と方向と目的の層をサーボコントローラ11に命令する。(S1)
サーボコントローラ11は、距離と方向の情報、層の命令を受け取り、まず、目的の層が、現在の層と異なるのかを判断する。(S2)
層が異なる場合、サーボコントローラ11は、トラック制御回路6を制御し、トラック制御をオフする。(S3)
次に、サーボコントローラ11は、フォーカス制御回路4を制御して、フォーカスアクチュエータにフォーカスジャンプパルスを与えてフォーカスジャンプを行う。(S4)
フォーカスジャンプ終了後、(フォーカスジャンプ中でも良い)与えられた距離が光学ヘッドを動かす必要がある距離か判断する。(S5)
光学ヘッドを動かす必要がある場合は、サーボコントローラ11は、移動するステップ数をセットし、ドライバ9によりステッピングモータ8を駆動開始すると同時に、球面収差発生用ステッピングモータの移動ステップ数を目的の層までのステップ数にセットし、ドライバ10により、球面収差発生用のステッピングモータを駆動開始する。(S6)
光学ヘッドを動かす必要がない場合は、サーボコントローラ11は、球面収差発生用ステッピングモータの移動ステップ数を目的の層までのステップ数にセットし、ドライバ10により、球面収差発生用のステッピングモータを駆動開始する。(S7)
サーボコントローラ11は、球面収差発生用のステッピングモータ、および光学ヘッド移動用のステッピングモータが、所定のステップ数駆動し終わったのを確認して、(S7を通った場合は、球面収差のみでよい)トラック制御回路6を制御しトラック制御をオンとする。(S8)
S3からS5経由でS8までの各コントロール信号のタイミングチャートを図7に示す。トラック制御オフ(S3)後すぐに、フォーカスジャンプを行い(S4)フォーカスジャンプ終了後、光学ヘッド移動と球面収差素子の移動を開始(S6)、光学ヘッド移動、球面収差素子移動が終了したらトラック制御をオン(S8)している。図7では、光学ヘッド移動の時間が球面収差移動の時間よりも長い例を示しているが、アクセス距離によって、逆の場合もある。S7を通った場合は、光学ヘッドの移動はないので、球面収差素子移動が終了した時点で、トラック制御オンとなる。
【0055】
この状態で、ビームは目的の層の目的のトラックの近くにいることになる。さらに目的のトラックまで移動するには、再度システムコントローラ12が、現在のアドレスを読み、目的のアドレスとの距離をサーボコントローラ11へ命令する(S1)ことになる。
【0056】
こんどは、層は同じなので、距離だけ判断することになる。
【0057】
次に、距離が光学ヘッドを動かす必要がある距離か判断する。(S9)
光学ヘッドを動かす必要がある場合は、サーボコントローラ11は、トラック制御回路6を制御しトラック制御オフとすると同時に、移動するステップ数をセットし、ドライバ9によりステッピングモータ8を駆動し、目的ステップ数に至ったところで、トラック制御回路を制御し、トラック制御オンとする。(S10)
距離が光学ヘッドを動かす必要がない場合は、距離に応じたトラック数だけトラックアクチュエータによるトラックジャンプを行う。(S11)
以上の動作を繰り返し、目的トラックに達した時点で再生動作を行う。
【0058】
本実施例においては、球面収差発生素子を動作せせるときに、光学ヘッドの移動と同時に行うので、数百mSかかる球面収差発生素子移動時間と、それと同様の時間のかかる光学ヘッド移動時間を足し合わせることなく、効率よく動作させることができる。
【0059】
また、先に目的の層にジャンプしてしまうので、光学ヘッド移動中に、球面収差素子を、目的の層での最適位置へ移動することになる。
【0060】
つまりトラッキングエラーなど、信号が劣化した状態からはじまることが考えられるが、本実施例では、ステッピングモータ8のステップ数を指定して光学ヘッドを移動しているために、トラックカウントを用いて移動動作を行う場合のようにトラッキングエラー信号の品位を気にする必要がない。
【0061】
また、最初にトラック制御オフにしてから、球面収差素子移動と光学ヘッド移動が終了するまでトラック制御はオンとならないので、球面収差の状態によって、トラックエラー信号の品位が悪くなっても問題はない、また、最後にトラック制御オンとする時には、球面収差はその層での最適な状態となっているので、トラック制御オンで問題となることもない。
【0062】
また、光学ヘッド移動手段は、ステッピングモータではなく、移動位置のわかるようなエンコーダーのついたモーターでも良い。この場合もトラッキングエラーの品位によらず、光学ヘッドを移動できる。
【0063】
また、本実施例では、フォーカスジャンプ後に、光学ヘッド移動、球面収差発生素子移動を行っているので、フォーカスジャンプの時間だけ、アクセス時間は延びるが、光学ヘッドの移動による振動のない、安定したフォーカスジャンプが期待できる。また、フォーカスジャンプの時間は普通数mS程度であるので、大きく時間が伸びるものではない。
【0064】
本実施例では、球面収差発生手段の構成がレンズ2枚を使用し、一方をステッピングモータで駆動す方法であったが、この方法によらず、液晶によって球面収差を発生させたりする方法であっても良い。
【0065】
また、光学ヘッドを動かすか動かさないかの判断を単純に、目的トラックまでの距離としたが、光学ヘッドと対物レンズの相対位置を検出することができる場合は、光学ヘッドの中心位置からの目的トラックまでの距離を算出しそれをもとに判断をするのでも良い。
【0066】
この場合、トラック制御オフ時に対物レンズが中心に戻ることを考慮した正確な判断が可能となる。
【0067】
また、実施例は再生時の例であるが、記録時の場合も、目的のトラックに至るまでは再生と同じである。
【0068】
また、本実施例では、サーボコントローラ11とシステムコントローラ12の2つのコントローラを使用する構成となっているが、コントローラの能力しだいでひとつのコントローラでも可能である。
【0069】
以上により、ビデオ、オーディオ機器等では、アクセス中の映像、音声の途切れをなくすために、バッファーメモリを増大させなければならないが、本実施例によりコスト増を抑えることもできる。
【0070】
また、モバイル用途などの場合も、振動、衝撃などに対応するためのショックプルーフメモリの容量をアクセス時間分だけ余計に必要とすることになるが、コストを抑えるために、メモリを増やさない場合は、本実施例により、振動、衝撃に耐える時間を短くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による第1の実施例のブロック図
【図2】球面収差発生手段を含む光学系の構成
【図3】第1の実施例のフローチャート
【図4】第1の実施例のタイミングチャート
【図5】第1の実施例のタイミングチャートの別の例
【図6】第2の実施例のフローチャート
【図7】第2の実施例のタイミングチャート
【符号の説明】
【0072】
1 光ディスク
2 光学ヘッド
3 エラー信号生成回路
4 フォーカス制御回路
5 フォーカスドライバ回路
6 トラック制御回路
7 トラックドライバ回路
8 光学ヘッド移動用ステッピングモータ
9、10 ステッピングモータードライバ
11 サーボコントローラ
12 システムコントローラ
13 スピンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を有する光記録再生媒体の夫々の前記記録層に対し、光源からの光束で集光スポットを生成するための対物レンズと、
前記光源と前記対物レンズの間の光路中に配置され、選択された前記記録層に応じて前記光束に球面収差を発生させるための球面収差発生手段と、
前記対物レンズを含む光学ヘッドを前記媒体の半径方向に移動させるための第1の駆動手段とを有する光学的情報記録再生装置において、
前記集光スポットを現在アドレス位置から異なる前記記録層上の目的アドレス位置へアクセスする際に、前記第1の駆動手段の駆動中に前記球面収差発生手段を駆動させることを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】
前記光学的情報記録再生装置は、前記集光スポットを前記記録層間で移動させるための第2の駆動手段を有し、前記球面収差発生手段及び前記第1の駆動手段の駆動開始後に、前記第2の駆動手段が駆動されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項3】
前記光学的情報記録再生装置は、前記集光スポットを前記記録層間で移動させるための前記第2の駆動手段を有し、前記球面収差発生手段及び前記第1の駆動手段の駆動に先立って、前記第2の駆動手段が駆動されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−260707(P2006−260707A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79286(P2005−79286)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】