光学的情報記録再生装置
【課題】拘束長5のPR等化器を用いたPRML処理による再生方式を用いる場合に、2Tを含んだマーク及びスペースの組み合わせのエッジシフト長を求めることができる光学的情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】検出したマーク及びスペースの組み合わせに2Tが含まれる場合には、交差レベルとして、再生波形と交差し得る2T交差レベルを選択し、含まれない場合には標準交差レベルを選択する。選択した交差レベルと交差する前後の再生波形情報の振幅値を基にエッジシフト長を算出し、記録ストラテジに反映させることで、最適品質の記録を実現する。
【解決手段】検出したマーク及びスペースの組み合わせに2Tが含まれる場合には、交差レベルとして、再生波形と交差し得る2T交差レベルを選択し、含まれない場合には標準交差レベルを選択する。選択した交差レベルと交差する前後の再生波形情報の振幅値を基にエッジシフト長を算出し、記録ストラテジに反映させることで、最適品質の記録を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報記録再生装置に関する。特に、情報記録媒体から再生した信号のエッジシフト長を測定し、測定したエッジシフト長を基に記録ストラテジ調整を行う手段を有する光学的情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク媒体へは、記録すべきデータを各種規定の方式でエンコードし、決められた長さを持った複数のマークとスペースの2値状態にして記録を行っている。例えば、ブルーレイでは1−7PP変調という方式で、2Tから10Tの長さの2値データに変調して記録している。ここで、Tは、チャネルクロック周期である。再生時はこの信号を読み取り、マークとスペースの各長さを検出して各種規定の方式でデコードし、元のデータへの復元を行っている。
【0003】
ここで、再生時に検出するマーク長、スペース長は記録した長さと全く同一であれば、性能的に劣化は生じないが、熱干渉等により所望でない形状のマークが形成され易く、記録時とはエッジ位置がシフトして多少異なった長さになる。つまりジッタが発生する。これが再生性能に影響を与え、ジッタが大きいほど再生データは記録データとは異なり、誤りが発生し易くなる。この実状については特許文献1に記されている。
【0004】
特許文献1では、再生データ列が、理想信号振幅の中心を交差レベルとして、交差レベルを交差する毎に、mTマーク、nTスペース(m、nは2以上の整数、Tはチャネルクロック周期)に分類している。更に、そのマーク、スペース毎に、極性反転時の基準レベルとの位相誤差を積算し、その累積値を発生数で除算することによりジッタ量を求めている。そして、mTマークとnTスペースの組み合わせに着目し、記録マークの前縁エッジ位置、後縁エッジ位置を調整し、再生時にジッタの少ない最適な記録条件になるエッジシフト長を求め再度記録を行っている。
【0005】
また、特許文献2では、交差レベルを交差する時の演算方法として、交差する前後のデータ値の傾きからエッジシフト長を求める方法が記されている。
【0006】
近年の再生処理の主流はPRML(Partial Response and Maximum Likelihood)である。PRMLは、図8に示すように再生信号をPR等化器4でPR特性へ等化した後、ビタビ復号器5でビタビ復号するという2段階のステップから構成されている。元来、符号間干渉は、マークとスペースの識別性能を低下させる要因であるが、PRMLでは、符号間干渉を積極的に用いている。図8に示すように、PR等化器4の出力を符号間干渉のある信号Pとし、ビタビ復号器5で復号し、2値化信号Vを得ている。このように、PRMLは、PR等化とビタビ復号の組み合わせにより、PRML全体で、マークとスペースの識別性能を高めることができる利点を持っている。
【0007】
図8に示すように、例えば、PR等化器係数が(1221)の場合は、PR等化器4の出力Pが符号干渉を持つ1、2、2、1を出力するとき、ビタビ復号はインパルスを出力するように調整される。PR等化器4は、FIRフィルタで構成され、フィルタ係数を調整することにより、PR等化器の出力が、1、2、2、1になるように調整される。
【0008】
本明細書では、PR等化係数が(abba)であるPR等化器を、PR(abba)と表わすことにする。また、PR等化係数の長さを拘束長と呼ぶ。例えば、PR(abba)は拘束長4のPR等化、PR(abcba)は拘束長5のPR等化である。
【0009】
図9に、拘束長4のPR(1221)の理想波形の例を示す。ここで、図9の記録データ列は、マーク、スペースが周期3T毎に繰り返すパターンになっている。すなわち2値データで表現すると、記録データ列は0、0、0、1、1、1の繰り返しパターンである。このような記録データ列を本明細書では、S3T、M3T繰り返しと表現する。この記録データを再生した場合、図8におけるPR等化器4の出力Pは、理想的には、記録データ列と、PR等化係数のコンボリューション演算結果となる。このようにして得られたPR等化器の出力を、PR理想波形と呼ぶ。PRMLでは、実際に記録された光ディスク媒体から再生したPR等化器4の出力信号Pは、理想波形に近くなるように、PR等化器4のFIRフィルタ係数の調整がなされるので、実際のPR等化器の出力信号Pは、PR理想波形と近い波形になる。また、図9の下部に示す信号NRZIは、ビタビ復号器の出力Vを表しており、図9では、元の記録データ列が、正確に再現できていることを示している。
【0010】
光学的記録再生装置のジッタは、通常、PR等化器4の出力信号が、零クロスする点の位置座標を測定することによって行われている。記録データ列において、0と1の頻度が等しいパターンの場合、直流成分は零になるから、PR理想波形及び実際のPR等化器の出力信号も、直流成分が0になるように信号を正規化する。そのとき、PR理想波形及び実際のPR等化器の出力信号は、通常、マーク位置では正の値、スペース位置では負の値を持つから、零交差する。よって、交差レベルを零として、その交差レベルとPR等化器の出力信号が交差した点の位置座標から、記録マーク前縁の立ち上がり位置及び記録マーク後縁の立ち下がり位置を測定し、エッジシフト長を算出することができる。
【0011】
この方法をmTマークとnTスペースの組み合わせに対して行うことにより、全ての組み合わせのエッジシフト長を算出する。そして、エッジシフト長に応じて、記録ストラテジ調整の補正パラメータを修正することにより、最適記録のための調整がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開02/084653号
【特許文献2】特開2006−120208号公報
【特許文献3】特開2004−213862号公報
【特許文献4】特開2003−006864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下の分析は、本発明により与えられる。
【0014】
図9、図10、図11のように、PR(1221)のPR等化器においては、PR等化器の出力波形は、マーク位置において正の値、スペース位置において負の値を持つ波形となる。図10において、記録データ列のマーク長は2T、図11において、記録データ列のスペース長は2Tである。図10、図11のPR理想波形は、正の部分と負の部分が非対称にはなるものの、零クロスするという条件は確保できている。
【0015】
しかしながら、近年、高密度化の要求から、拘束長5のPR等化器が多く採用されるようになってきている。例えば、高密度記録を実現しているHD−DVDでは、PR(12221)のPR等化器が採用されている。図13、図14に示すように、マーク、スペースのどちらかが、最短仕様の2Tである場合、PR等化器4の出力波形Pは、零を中心にして、上下に振幅を持つ波形にならないため、交差レベルを零とした場合、交点の検出ができない。(12221)以外の係数においても、拘束長が5の場合には、マーク、スペースのどちらかが、2Tを含む場合には、PR等化器4の出力波形Pは、一般に、零を中心にして上下に振幅を持つ波形にならないため、交差レベルを零とした場合、交点の検出ができない。すなわち、零クロスするという条件が成り立たなくなる場合が多くなる。
【0016】
ここで、従来の光学的情報記録再生装置の問題点は、PR(abcba)の拘束長5のPR等化器において、連続するマーク、スペースのどちらかが、2Tを含む場合、エッジシフト長が算出できず、最適記録を行うための記録ストラテジ調整ができないというということである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面による光学的情報記録再生装置は、情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、前記情報記録媒体のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器と、前記PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器と、Tをチャネルクロック周期として、前記ビタビ復号器で復元した連続した前記マーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器と、前記PR等化器の出力信号が、前記交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器と、前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置及び前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器と、を有する。
【0018】
本発明の第2の側面による記録ストラテジ調整方法は、情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、前記情報記録媒体からデータを再生するステップと、前記情報記録媒体からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップと、前記PR等化するステップでPR等化した信号を、ビタビ復号し、前記2値データを復元するステップと、Tをチャネルクロック周期として、復元した前記2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップと、前記連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップと、前記連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを前記交差レベルとするステップと、前記PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップと、前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップ、とを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。第1の効果は、拘束長5のPR等化器を用いた再生方式を用いる場合に、2Tを含めた記録ストラテジ調整が可能な高品質の光学的情報記録再生装置を提供することができるということである。その理由は、本発明の光学的情報記録再生装置は、連続したマーク、スペースのどちらかの長さが2Tを含んでいる場合であっても、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとして、PR等化器の出力信号と交差する点からエッジシフト長を求めることができるようにしたから、2Tを含む記録ストラテジ調整が可能になるためである。
【0020】
第2の効果は、拘束長5のPR等化器を用いた再生方式において、2Tを含めた記録ストラテジ調整方法を提供することができるということである。その理由は、本発明の記録ストラテジ調整方法は、連続したマーク、スペースのどちらかの長さが2Tを含んでいる場合であっても、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとして、PR等化器の出力信号と交差する点からエッジシフト長を求めることができるようにしたから、2Tを含む記録ストラテジ調整が可能になるためである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1による光学的情報記録再生装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1による光学的情報記録再生装置における記録ストラテジ調整方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の記録ストラテジ調整を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1におけるエッジシフト長算出を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1のエッジシフト長とPRSNRとの関係図である。
【図6】本発明の実施例2における2T交差レベル算出のブロック図である。
【図7】本発明の実施例2におけるPR理想波形生成部を説明するための図である。
【図8】PR等化及びビタビ復号を説明するための原理図である。
【図9】PR理想波形を示す図である。
【図10】PR理想波形を示す図である。
【図11】PR理想波形を示す図である。
【図12】PR理想波形を示す図である。
【図13】PR理想波形を示す図である。
【図14】PR理想波形を示す図である。
【図15】PR理想波形を示す図である。
【図16】PR理想波形を示す図である。
【図17】PR理想波形を示す図である。
【図18】PR理想波形を示す図である。
【図19】PR理想波形を示す図である。
【図20】本発明の記録ストラテジ調整の補正テーブルを示す図である。
【図21】従来の記録ストラテジ調整の補正テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。本発明の実施形態を、図1、図2を必要に応じて参照して説明する。
【0023】
本発明による第1の実施形態の光学的情報記録再生装置16は、図1に示すように、情報記録媒体1にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、情報記録媒体1のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器4と、PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器5と、Tをチャネルクロック周期として、ビタビ復号器5で復元した連続したマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器9と、PR等化器4の出力信号が、交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器11と、エッジシフト長に基づいて、マーク前縁の立ち上がり位置及びマーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器14と、を有する。
【0024】
本発明による第2の実施形態の記録ストラテジ調整方法は、図2に示すように、情報記録媒体1にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、情報記録媒体1からデータを再生するステップS20と、情報記録媒体1からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップS21と、PR等化するステップS21でPR等化した信号を、ビタビ復号し、2値データを復元するステップS22と、Tをチャネルクロック周期として、復元した2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップS23と、連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップS24と、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとするステップS25と、PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップS26と、エッジシフト長に基づいて、マーク前縁の立ち上がり位置またはマーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップS27と、を含む。
【0025】
以下、実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
[実施例1の構成]
図1は本発明の実施例1を示す全体ブロック図である。光ディスクなどの情報記録媒体1から光ヘッド2により再生されたRF波形はA/D変換器3によりサンプリングされディジタル信号に変換される。ディジタル化されたRF信号は、PR等化器4、ビタビ復号器5で、PRML処理により、最も確からしい2値データに復号される。
【0027】
PR等化器4におけるPR等化係数は、自在に設定可能なように構成され、実施例1では、拘束長5の(12221)が設定されている。また、設定されたPR等化係数に応じて、図8に示すように、所望のPR等化特性が得られるように、PR等化器4内部のFIRフィルタ係数が調整される。
【0028】
記録ストラテジ調整のための記録データパターンは、記録データ生成器13により与えられ、実施例1では、2Tのマーク長、2Tのスペース長が含まれている。
【0029】
ビタビ復号された2値データは、2T検出器6及び3T以上検出器7に与えられる。まず、2T検出器6ではビタビ復号された2値データの長さが2Tと一致しているかを検出する。3T以上T長検出器7では2値データが3T以上の場合のデータ長を検出する。遅延器8は、PR等化器4出力を、ビタビ復号器5、2T検出器6、3T以上T長検出器7での演算、検出処理に要する時間分の保持を行っている。交差レベル選択器9では、連続するマーク及びスペースの組み合わせにおいて、2T検出器6によりどちらかの長さが2Tである場合は2T交差レベルを、両方とも3T以上である場合は標準交差レベルを、交差レベルとして選択する。その選択値は交差レベル前後点検出器10での交差レベルになり、遅延器8出力の等化波形が交差レベルを交差する際の前後点を検出する。エッジシフト長算出器11では、その交差レベル前後点を用いてエッジシフト長を算出する。
【0030】
mTnT組み合わせ毎の統計処理器12では、2T検出器6、3T以上T長検出器7の結果を基に、マーク及びスペースのmTからnTへの遷移の組み合わせを判別し、その際のエッジシフト長を得る。そして、mTnT組み合わせ毎にエッジシフト長を統計処理し、それを記録ストラテジ調整器14へ反映して、記録データ生成器13からの記録データに対し記録用の位相調整を行い、光ヘッド2を経由して光ディスクなどの情報記録媒体1への記録を行う。
【0031】
[実施例1の動作]
図2は、実施例1の記録ストラテジ調整の動作を示すフローチャートである。ステップS20のデータ再生で光ディスクからデータを再生し、ステップS21のPR等化処理で再生データをPR等化処理し、ステップS22のビタビ復号で、PR等化の出力信号をビタビ復号する。そして、ステップS23において、連続するマーク、スペースのどちらかが2Tを含む組み合わせかどうか判別し、Yesと判定した場合は、ステップS25で、2T交差レベルを交差レベルとして選択し、Noと判定した場合には、ステップS24で、標準交差レベルを交差レベルとして選択する。ステップS24、S25の後、ステップS26で、交差レベルが、PR等化波形を交差する前後点に基づいてエッジシフト長を算出する。ステップS26で使用するPR等化波形は、ステップS21で得られたPR等化の出力信号を使用する。ステップS27において、ステップS26で得られたエッジシフト長に基づいて、マークの立ち上がり位置/立下り位置の調整を行う。以上により、最適品質の記録を行う。
【0032】
次に、実施例1において、PR(12221)の拘束長5のPR等化器において、2Tを含むPR等化器の出力信号Pのエッジシフト長の算出方法について、より詳細に説明する。図13は、PR(12221)のS3T、M2T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であり、マークに2T長を含んだ場合である。また、図14は、PR(12221)のS2T、M3T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であり、スペースに2T長を含んだ場合である。図13、図14のどちらの波形も、零に接していはいるが、交差はしていないため、交差する位置を算出することができない。
【0033】
従って、本発明では、交差レベルを、マーク長、スペース長の両方が3T以上の場合には、標準交差レベルを交差レベルとし、マーク長、スペース長のどちらかが2Tの場合には、標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする。ここで、標準交差レベルとしては、零を用いる。特に、0、1の頻度が等しい記録データ列に対して、PR等化器の出力信号のDC成分が0になるように正規化されている場合には、マーク長、スペース長の両方が3T以上のPR等化波形は0を中心に上下に振幅を持つので、標準交差レベルを零にすることが望ましい。但し、それに限定されず、マーク長、スペース長の両方が3T以上のPR等化波形に対して交差する条件を満たす値であればよい。
【0034】
一方、2T交差レベルは、例えば、マーク長に2Tを含む図13の場合には、点Eと点Fの中間、点Gと点Hの中間である−0.125にし、スペース長に2Tを含む図14の場合には、点E’と点F’の中間、点G’と点H’の中間である0.125に設定すると交差する。ここで、2T交差レベルは、マーク長に2Tを含む場合と、スペース長に2Tを含む場合では、別の値を設定することが必要になる。
【0035】
また、2Tを含むPR等化波形は、PR等化係数に依存して変化するので、2T交差は、設定されているPR等化係数に応じて、設定することが望ましい。例えば、図15は、PR(23332)のS3T、M2T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であるが、この場合、点Iと点Jの中間、点Kと点Lの中間に2T交差レベルを設定することが望ましい。その場合、最適な2T交差レベルは、図13における最適な2T交差レベル−0.125とは異なる値になる。
【0036】
以上、纏めると、交差レベルとして、標準交差レベル、マーク長に2Tを含む場合の2T交差レベル、スペース長に2Tを含む場合の2T交差レベルの3つを設定することになる。図1の交差選択器には、これらの3つの値が設定されており、2T検出器6の結果に応じて、交差レベルを切り替えるようにしている。また、図2のフローチャートのステップS25をより詳細に説明すると、マークが2Tを含む場合には、マーク長に2Tを含む場合の2T交差レベル、スペースが2Tを含む場合には、スペース長に2Tを含む場合の2T交差レベルを選択することになる。
【0037】
また、PR等化係数毎の2T交差レベルは、PR理想波形に基づいて、予め求めて、交差レベル選択器9に格納しておき、設定したPR等化係数に応じて、参照して使用する。
【0038】
次に、交差レベル前後点検出器10が、交差レベル選択器9によって選択された交差レベルに基づいて、PR等化出力信号と交差レベルが交差する位置の前後点を検出する。図12において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点Aと点Bであり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点Cと点Dである。また、図13において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点Eと点Fであり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点Gと点Hである。また、図14において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点E’と点F'であり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点G’と点H’である。
【0039】
次に、エッジシフト長算出器11で行われるエッジシフト長の算出について説明する。図4は、図12における点Aと点Bの部分を拡大した図である。図4の下部には、対応する記録されたマーク位置を示している。ここで、記録されたマークが適正位置にある場合を実線で示し、適正位置から左方向にシフトした場合を破線で示し、適正位置から右方向にシフトした場合を一点鎖線で示す。また、適正位置から左にシフトした場合のPR等化波形は、破線で示す線分A’B’になり、適正位置から右にシフトした場合のPR等化波形は、一点鎖線A”B”になる。
【0040】
エッジシフト長の算出には、幾つかの方法がある。第1の方法は、PR等化波形と交差レベルとの交点の座標を算出することである。点Aの座標を(XA、YA)、点Bの座標を(XA+ΔX、YB)、点A’の座標を(XA、YA’)、点B’の座標を(XA+ΔX、YB’)、点A”の座標を(XA、YA”)、点B”の座標を(XA+ΔX、YB”)、線分ABが、交差レベルと交差する点を(XP、0)、線分A’B’が交差レベルと交差する点を(XP’、0)、線分A”B”が交差レベルと交差する点を(XP”、0)とすると、まず、線分AB、A’B’、A”B”の傾きは、各々、式(1)、式(2)、式(3)となる。
m=(YB−YA)/ΔX 式(1)
m’=(YB’−YA’)/ΔX 式(2)
m”=(YB”−YA”)/ΔX 式(3)
線分AB、A’B’、A”B”が交差レベルと交差する位置の座標は、各々、式(4)、式(5)、式(6)となる。
XP = XA+ΔX/2 式(4)
XP’= XA−YA’/m’ 式(5)
XP”= XA−YA”/m” 式(6)
XPを基準としたXP’のエッジシフト長は、式(7)、XPを基準としたXP”のエッジシフト長は、式(8)となる。
ES1’= XP’ − XP 式(7)
ES1”= XP” − XP 式(8)
式(7)に、式(4)、式(5)を代入して、式(9)が得られる。また、式(8)に式(4)、式(6)を代入して、式(10)が得られる。
ES1’= −1/2((YA’+YB’)/(YB’−YA’))
式(9)
ES1”= −1/2((YA”+YB”)/(YB”−YA”))
式(10)
式(9)、式(10)は、PR等化器の出力信号と交差レベルが交差する前後のPR等化器の出力信号から、PR等化器の出力信号と交差レベルの交点を算出し、PR等化器の理想波形と交差レベルとの交点の差分により算出したエッジシフト長を表している。ここで、図4から、YA’+YB’>0、YA”+YB”<0となるので、ES1’<0、ES1”>0となる。換言すると、PR等化波形が、適正位置よりも振幅軸上で上にある場合、立ち上がりエッジは左にシフトし、エッジシフト長は負値となり、PR等化波形が、適正位置よりも振幅軸上で下にある場合、立ち上がりエッジは右にシフトし、エッジシフト長は正値となる。
【0041】
図4において、交差レベルが標準交差レベルの零の場合について説明したが、交差レベルが2T交差レベルの場合は、まず、点A、点B、点A’、点B’、点A”、点B”のY座標から、交差レベルの値を差し引く。その後、同様に、式(9)、式(10)を用いて、エッジシフト長の算出を行えばよい。
【0042】
次に、エッジシフト長の第2の算出方法について、同様に図4を参照し、説明する。第2のエッジシフト長は、式(11)、式(12)、式(13)で定義される。
ES2 = YB/(YB−YA) 式(11)
ES2’ = YB’/(YB’−YA’) 式(12)
ES2” = YB”/(YB”−YA”) 式(13)
ここで、図4における各点のY座標をYA=−0.25、YB=0.25、YA’=−0.20、YB’=0.30、YA”=−0.30、YB”=0.20として代入すると、ES2=0.5、ES2’=0.6、ES2”=0.4が得られる。適正位置に対して、立ち上がりエッジが左にシフトしている場合は、適正位置よりもエッジシフト長は大きな値となり、適正位置に対して、立ち上がりエッジが右にシフトしている場合は、適正位置よりもエッジシフト長は小さな値となる。図4において、交差レベルは零であるが、2T交差レベルの場合には、予め、各点のY座標から、2T交差レベルの値を差し引いた後、式(11)、式(12)、式(13)による演算を行えばよい。
【0043】
次に、エッジシフト長の第3の算出方法について、同様に図4を参照し、説明する。第3のエッジシフト長は、式(14)、式(15)で表される。
ES3’ = (YA’+YB’)−(YA+YB) 式(14)
ES3” = (YA”+YB”)−(YA+YB) 式(15)
式(14)、式(15)は、PR等化器の出力信号と交差レベルが交差する前後のPR等化器の出力信号の加算値と、PR等化器の理想波形と交差レベルが交差する前後のPR等化器の理想波形の加算値の差分により、エッジシフト長を算出している。式(14)、式(15)に図4における各点のY座標を代入すると、ES3’=0.1、ES3”=−0.1となる。このエッジシフト長は、立ち上がりエッジが左にシフトしている場合は、負値となり、立ち上がりエッジが右にシフトしている場合は正値となる。図4は、交差レベルが、零であるが、2T交差レベルの場合でも、式(14)、式(15)は、そのまま適用可能である。
【0044】
以上、3通りのエッジシフト長について、図4の立ち上がりエッジについて考察したが、立ち下がりエッジに関しても同様な算出方法が適用可能である。
【0045】
次に、図12、図13、図14、図15以外のPR等化係数、記録データ列に対するPR理想波形の例を、図16、図17、図18、図19に示す。
【0046】
図16にPR(12321)のS3T、M2T繰り返し理想波形を示す。この場合、マーク2Tは零を超えた正値の振幅を持つが、交差レベルを標準交差レベルの零とすると、理想波形の交差前後点は上下対称位置ではないので、PR12221、PR23332と同様、理想信号値の中点、或いは、それに近い値の方が適切である。よって、2Tを含むマーク及びスペースの組み合わせが検出された際は、PR(12321)に対し最適な2T交差レベルを交差レベルとすることが望ましい。
【0047】
図17にPR(12221)の3T、2T、2T繰り返し理想波形を示す。PR(12221)ではM2T、S2TあるいはS2T、M2Tのように、2Tが連続すると、マーク、スペース共その振幅値は零となり、振幅を持たず差もないことになる。3Tと2Tの組み合わせ、2Tと3Tの組み合わせにおいて2T交差レベルを用いることで交差前後点を検出できたが、2Tと2Tの組み合わせでは交差前後点を検出できず、エッジシフト長を検出できない。よって、この場合には、調整できないことになる。
【0048】
図18に、PR(23332)の3T、2T、2T繰り返し理想波形を示す。この場合、2Tが2つ連続すると、PR(12221)とは異なり、マーク、スペースで異なった振幅を示す。しかし、3T以上の振幅とは異なり、本来期待する極性の振幅量は持てていないが、この場合は2T交差レベルを零とすればエッジシフト長は算出することはできる。このようにPR(12221)とPR(23332)では2Tと2Tの組み合わせ時の扱いが異なるが、これはPRクラスで決まることなので、用いるPR等化係数に応じて2Tと2Tの組み合わせ時の扱いをどうするか規定すれば良い。
【0049】
図19に、2Tを含む、2Tを含まない組み合わせでの実際の交差レベル選択動作例を示す。(1)のスペース3Tとマーク3Tの組み合わせ、(2)のマーク3Tとスペース3Tの組み合わせでは2Tを含まないので標準交差レベルの零を交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。(3)のスペース3Tとマーク2Tの組み合わせ、(4)のマーク2Tとスペース3Tの組み合わせでは2Tを含むので2T交差レベルを交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。尚、マーク2Tの場合は、2T交差レベルはマイナス値になる。(5)のスペース3Tとマーク3Tの組み合わせでは2Tを含まないでの標準交差レベルの零を交差レベルとし、その前後点からエッジシフト長を求める。(6)のマーク3Tとスペース2Tの組み合わせ、(7)のスペース2Tとマーク3Tの組み合わせでは2Tを含むので2T交差レベルを交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。尚、スペース2Tの場合は、2T交差レベルはプラス値になる。このように2Tを含んだ組み合わせかどうかにより、交差レベルを適宜切り替えることにより、その前後点からエッジシフト長を求めることができる。
【0050】
このようにして得られたエッジシフト長をマーク及びスペースのmTとnTの組み合わせ毎に分類し、統計処理を行う。すなわち、記録データ生成器13で、マーク及びスペースのmTとnTの組み合わせからなる記録データ列によって記録と再生を何回か繰り返し、得られたエッジシフト長のデータを保存しておき、マーク及びスペースのmTとnTの組み合わせ毎に、平均、分散値などを求める。ここで、分散値は、エッジシフト長のばらつきを評価するための評価値として用いられる。また、エッジシフト長の平均をストラテジ調整に使用するが、全データの平均長を用いてもよいし、長さ情報が得られるものならよく、種々の統計処理方法が考えられる。
【0051】
次に、記録ストラテジ調整器13について、説明する。図3は、記録ストラテジ調整を説明するための図である。図3は、特許文献4の図22を引用している。光ヘッド2における記録パルスは、図3の(b)のように、マルチパルスからなっている。ここで、ファーストパルス幅及びラストパルス幅が調整可能に構成されている。マーク前縁の立ち上がり位置は、ファーストパルス幅で調整される。例えば、ファーストパルス幅を広くすると、マーク前縁の立ち上がり位置は、左にシフトし、ファーストパルス幅を狭くすると、マーク前縁の立ち上がり位置は、右にシフトする。一方、マーク後縁の立ち下がり位置は、ラストパルス幅で調整される。例えば、ラストパルス幅を広くすると、マーク後縁の立ち下がり位置は、右にシフトし、ラストトパルス幅を狭くすると、マーク後縁の立ち下がり位置は、左にシフトする。
【0052】
記録ストラテジ調整器13において、mTnT組み合わせ毎の統計処理器12で得られたエッジシフト長に基づいて、mTnT組み合わせ毎のマーク前縁の立ち上がり位置、マーク後縁の立ち下がり位置を適正にするためのファーストパルス幅と、ラストパルス幅の補正量を求め、図20に示す補正テーブルを更新する。図20の(a)は、マーク前縁の立ち上がり位置を調整するためのファーストパルスの補正量テーブルであり、図20の(b)は、マーク後縁の立ち下がり位置を調整するためのラストパルスの補正量テーブルである。実施例1では、連続するマーク、スペースのうちのどちらかが、2Tの場合の記録ストラテジ調整が可能になったので、2Tの行と列が、加わっている。連続するマーク、スペースの両方が2Tの場合には、PR出力波形において、交差点を算出するためのコントラストは得られないので、エッジシフト長を算出できないため、テーブルに斜線を引いて除外してある。但し、記録データ列とPR等化係数によっては、図18のように、2T2Tの組み合わせでも検出できる場合もあり、その場合は、補正テーブルの2T2T組み合わせに補正データを入れるようにしてもよい。一方、図21は、従来の記録ストラテジ調整の補正テーブルである。従来技術の補正テーブルである図21では、PR(abcba)の拘束長5の場合、2Tを含むエッジシフト長の算出はできないので、2Tの行、列は補正テーブルには含まれていない。ここで、図21は、特許文献4の図23を引用している。以上のようにして、実施例1では、PR(abcba)の拘束長5のPR等化器を使用した場合で、連続するマーク、スペースのうち、どちらかが2T長であった場合においても、記録ストラテジ調整が可能になり、最適記録が可能な光学的情報記録再生装置を実現することができる。
【0053】
次に、エッジシフト長と信号品質の関係について、以下に説明する。エッジシフトを発生させるために、意図的にS3T、S2Tの組み合わせ発生時に、N点のPR波形の振幅データにある値を加減算する。そのPR波形データに対して、2T交差レベルを−0.125として得られたエッジシフト長とPRSNRとの関係を、図5に示す。PRSNRは、PRML用の信号評価指数であり、詳細は特許文献3に示されている。ここで、N点の振幅に対して−3α、−2α、−α、0、α、2α、3αの加算を行っている。図5はその際に得られたマーク2Tのリーディングエッジシフト長とPRSNRである。ここで、リーディングエッジとは、立ち上がりエッジを意味する。また、エッジシフト長は、式(14)、式(15)で示した第3の方法を用いており、エッジシフト長は、加減算した振幅に比例して大きくなる。図5によると、マーク2Tのリーディングエッジシフト長に応じてPRSNRが山なりの波形を描いている。PRSNRは値が高いほど信号品質が良いことを示しており、マーク2Tリーディングエッジシフト長が適切であれば記録信号品質を良くすることができる。従って、エッジシフト長を算出した結果に基づいて、エッジシフト長が理想より少なければ増やす方向へ記録ストラテジを適量だけ調整し、理想より多ければ減らす方向へ記録ストラテジを適量だけ調整することで、記録信号品質を良くすることができることを示している。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、図1の実施例1に対して、さらに、図6のPR理想波形生成部20、2T交差レベル算出部21を含んだ構成になっている。ここで、PR理想波形生成部20は、記録データ生成器13で生成された記録データ列とPR等化係数に基づいて、PR理想波形を出力する。図7に、PR理想波形生成部20が行う処理内容を示す。図7は、記録データ列が、S3T、M3T繰り返しで、PR等化係数が1221の場合を示している。図7に示すように、記録データ列とPR等化係数のコンボリューション演算を行うことにより、PR理想波形(正規化前)のデータが得られる。次に、PR理想波形の正規化y=ax+bを行い、PR理想波形(正規化後)を得る。本明細書の図9〜図19のPR理想波形の算出は、図7に示した方法で算出したものである。
【0055】
その後、2T交差レベル算出部21は、例えば、PR(12221)の場合には、図13のPR理想波形から、最適な2T交差レベルを自動的に算出する。例えば、図13の場合、2Tマークにおける点F、点Gを求め、次に、各々が隣接する点E、点Hを求め、点Eと点Fの中点、あるいは、点Gと点Hの中点から2T交差レベルを算出するようにすればよい。このようにして2T交差レベル算出部21で算出された2つの交差レベルである2Tがマークの交差レベル、2Tがスペースの交差レベルを、交差レベル選択器9に供給する。実施例2では、予め、最適な2T交差レベルが得られていないPR等化係数などに対しても、自動的に最適な2T交差レベルを算出し、設定可能であるという利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高密度、大容量の光学的記録媒体を用いた記録再生装置に用いられる。
【0057】
なお、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 情報記録媒体
2 光ヘッド
3 A/D変換器
4 PR等化器
5 ビタビ復号器
6 2T検出器
7 3T以上T長検出器
8 遅延器
9 交差レベル選択器
10 交差レベル前後点検出器
11 エッジシフト長算出器
12 mTnT組み合わせ毎の統計処理器
13 記録データ生成器
14 記録ストラテジ調整器
15 T長検出器
16、17 光学的情報記録再生装置
18 PRSNR
19 マーク2Tリーディングエッジシフト長
20 PR理想波形生成部
21 2T交差レベル算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報記録再生装置に関する。特に、情報記録媒体から再生した信号のエッジシフト長を測定し、測定したエッジシフト長を基に記録ストラテジ調整を行う手段を有する光学的情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク媒体へは、記録すべきデータを各種規定の方式でエンコードし、決められた長さを持った複数のマークとスペースの2値状態にして記録を行っている。例えば、ブルーレイでは1−7PP変調という方式で、2Tから10Tの長さの2値データに変調して記録している。ここで、Tは、チャネルクロック周期である。再生時はこの信号を読み取り、マークとスペースの各長さを検出して各種規定の方式でデコードし、元のデータへの復元を行っている。
【0003】
ここで、再生時に検出するマーク長、スペース長は記録した長さと全く同一であれば、性能的に劣化は生じないが、熱干渉等により所望でない形状のマークが形成され易く、記録時とはエッジ位置がシフトして多少異なった長さになる。つまりジッタが発生する。これが再生性能に影響を与え、ジッタが大きいほど再生データは記録データとは異なり、誤りが発生し易くなる。この実状については特許文献1に記されている。
【0004】
特許文献1では、再生データ列が、理想信号振幅の中心を交差レベルとして、交差レベルを交差する毎に、mTマーク、nTスペース(m、nは2以上の整数、Tはチャネルクロック周期)に分類している。更に、そのマーク、スペース毎に、極性反転時の基準レベルとの位相誤差を積算し、その累積値を発生数で除算することによりジッタ量を求めている。そして、mTマークとnTスペースの組み合わせに着目し、記録マークの前縁エッジ位置、後縁エッジ位置を調整し、再生時にジッタの少ない最適な記録条件になるエッジシフト長を求め再度記録を行っている。
【0005】
また、特許文献2では、交差レベルを交差する時の演算方法として、交差する前後のデータ値の傾きからエッジシフト長を求める方法が記されている。
【0006】
近年の再生処理の主流はPRML(Partial Response and Maximum Likelihood)である。PRMLは、図8に示すように再生信号をPR等化器4でPR特性へ等化した後、ビタビ復号器5でビタビ復号するという2段階のステップから構成されている。元来、符号間干渉は、マークとスペースの識別性能を低下させる要因であるが、PRMLでは、符号間干渉を積極的に用いている。図8に示すように、PR等化器4の出力を符号間干渉のある信号Pとし、ビタビ復号器5で復号し、2値化信号Vを得ている。このように、PRMLは、PR等化とビタビ復号の組み合わせにより、PRML全体で、マークとスペースの識別性能を高めることができる利点を持っている。
【0007】
図8に示すように、例えば、PR等化器係数が(1221)の場合は、PR等化器4の出力Pが符号干渉を持つ1、2、2、1を出力するとき、ビタビ復号はインパルスを出力するように調整される。PR等化器4は、FIRフィルタで構成され、フィルタ係数を調整することにより、PR等化器の出力が、1、2、2、1になるように調整される。
【0008】
本明細書では、PR等化係数が(abba)であるPR等化器を、PR(abba)と表わすことにする。また、PR等化係数の長さを拘束長と呼ぶ。例えば、PR(abba)は拘束長4のPR等化、PR(abcba)は拘束長5のPR等化である。
【0009】
図9に、拘束長4のPR(1221)の理想波形の例を示す。ここで、図9の記録データ列は、マーク、スペースが周期3T毎に繰り返すパターンになっている。すなわち2値データで表現すると、記録データ列は0、0、0、1、1、1の繰り返しパターンである。このような記録データ列を本明細書では、S3T、M3T繰り返しと表現する。この記録データを再生した場合、図8におけるPR等化器4の出力Pは、理想的には、記録データ列と、PR等化係数のコンボリューション演算結果となる。このようにして得られたPR等化器の出力を、PR理想波形と呼ぶ。PRMLでは、実際に記録された光ディスク媒体から再生したPR等化器4の出力信号Pは、理想波形に近くなるように、PR等化器4のFIRフィルタ係数の調整がなされるので、実際のPR等化器の出力信号Pは、PR理想波形と近い波形になる。また、図9の下部に示す信号NRZIは、ビタビ復号器の出力Vを表しており、図9では、元の記録データ列が、正確に再現できていることを示している。
【0010】
光学的記録再生装置のジッタは、通常、PR等化器4の出力信号が、零クロスする点の位置座標を測定することによって行われている。記録データ列において、0と1の頻度が等しいパターンの場合、直流成分は零になるから、PR理想波形及び実際のPR等化器の出力信号も、直流成分が0になるように信号を正規化する。そのとき、PR理想波形及び実際のPR等化器の出力信号は、通常、マーク位置では正の値、スペース位置では負の値を持つから、零交差する。よって、交差レベルを零として、その交差レベルとPR等化器の出力信号が交差した点の位置座標から、記録マーク前縁の立ち上がり位置及び記録マーク後縁の立ち下がり位置を測定し、エッジシフト長を算出することができる。
【0011】
この方法をmTマークとnTスペースの組み合わせに対して行うことにより、全ての組み合わせのエッジシフト長を算出する。そして、エッジシフト長に応じて、記録ストラテジ調整の補正パラメータを修正することにより、最適記録のための調整がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開02/084653号
【特許文献2】特開2006−120208号公報
【特許文献3】特開2004−213862号公報
【特許文献4】特開2003−006864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下の分析は、本発明により与えられる。
【0014】
図9、図10、図11のように、PR(1221)のPR等化器においては、PR等化器の出力波形は、マーク位置において正の値、スペース位置において負の値を持つ波形となる。図10において、記録データ列のマーク長は2T、図11において、記録データ列のスペース長は2Tである。図10、図11のPR理想波形は、正の部分と負の部分が非対称にはなるものの、零クロスするという条件は確保できている。
【0015】
しかしながら、近年、高密度化の要求から、拘束長5のPR等化器が多く採用されるようになってきている。例えば、高密度記録を実現しているHD−DVDでは、PR(12221)のPR等化器が採用されている。図13、図14に示すように、マーク、スペースのどちらかが、最短仕様の2Tである場合、PR等化器4の出力波形Pは、零を中心にして、上下に振幅を持つ波形にならないため、交差レベルを零とした場合、交点の検出ができない。(12221)以外の係数においても、拘束長が5の場合には、マーク、スペースのどちらかが、2Tを含む場合には、PR等化器4の出力波形Pは、一般に、零を中心にして上下に振幅を持つ波形にならないため、交差レベルを零とした場合、交点の検出ができない。すなわち、零クロスするという条件が成り立たなくなる場合が多くなる。
【0016】
ここで、従来の光学的情報記録再生装置の問題点は、PR(abcba)の拘束長5のPR等化器において、連続するマーク、スペースのどちらかが、2Tを含む場合、エッジシフト長が算出できず、最適記録を行うための記録ストラテジ調整ができないというということである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面による光学的情報記録再生装置は、情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、前記情報記録媒体のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器と、前記PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器と、Tをチャネルクロック周期として、前記ビタビ復号器で復元した連続した前記マーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器と、前記PR等化器の出力信号が、前記交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器と、前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置及び前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器と、を有する。
【0018】
本発明の第2の側面による記録ストラテジ調整方法は、情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、前記情報記録媒体からデータを再生するステップと、前記情報記録媒体からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップと、前記PR等化するステップでPR等化した信号を、ビタビ復号し、前記2値データを復元するステップと、Tをチャネルクロック周期として、復元した前記2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップと、前記連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップと、前記連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを前記交差レベルとするステップと、前記PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップと、前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップ、とを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。第1の効果は、拘束長5のPR等化器を用いた再生方式を用いる場合に、2Tを含めた記録ストラテジ調整が可能な高品質の光学的情報記録再生装置を提供することができるということである。その理由は、本発明の光学的情報記録再生装置は、連続したマーク、スペースのどちらかの長さが2Tを含んでいる場合であっても、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとして、PR等化器の出力信号と交差する点からエッジシフト長を求めることができるようにしたから、2Tを含む記録ストラテジ調整が可能になるためである。
【0020】
第2の効果は、拘束長5のPR等化器を用いた再生方式において、2Tを含めた記録ストラテジ調整方法を提供することができるということである。その理由は、本発明の記録ストラテジ調整方法は、連続したマーク、スペースのどちらかの長さが2Tを含んでいる場合であっても、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとして、PR等化器の出力信号と交差する点からエッジシフト長を求めることができるようにしたから、2Tを含む記録ストラテジ調整が可能になるためである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1による光学的情報記録再生装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1による光学的情報記録再生装置における記録ストラテジ調整方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の記録ストラテジ調整を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1におけるエッジシフト長算出を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1のエッジシフト長とPRSNRとの関係図である。
【図6】本発明の実施例2における2T交差レベル算出のブロック図である。
【図7】本発明の実施例2におけるPR理想波形生成部を説明するための図である。
【図8】PR等化及びビタビ復号を説明するための原理図である。
【図9】PR理想波形を示す図である。
【図10】PR理想波形を示す図である。
【図11】PR理想波形を示す図である。
【図12】PR理想波形を示す図である。
【図13】PR理想波形を示す図である。
【図14】PR理想波形を示す図である。
【図15】PR理想波形を示す図である。
【図16】PR理想波形を示す図である。
【図17】PR理想波形を示す図である。
【図18】PR理想波形を示す図である。
【図19】PR理想波形を示す図である。
【図20】本発明の記録ストラテジ調整の補正テーブルを示す図である。
【図21】従来の記録ストラテジ調整の補正テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。本発明の実施形態を、図1、図2を必要に応じて参照して説明する。
【0023】
本発明による第1の実施形態の光学的情報記録再生装置16は、図1に示すように、情報記録媒体1にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、情報記録媒体1のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器4と、PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器5と、Tをチャネルクロック周期として、ビタビ復号器5で復元した連続したマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器9と、PR等化器4の出力信号が、交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器11と、エッジシフト長に基づいて、マーク前縁の立ち上がり位置及びマーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器14と、を有する。
【0024】
本発明による第2の実施形態の記録ストラテジ調整方法は、図2に示すように、情報記録媒体1にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、情報記録媒体1からデータを再生するステップS20と、情報記録媒体1からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップS21と、PR等化するステップS21でPR等化した信号を、ビタビ復号し、2値データを復元するステップS22と、Tをチャネルクロック周期として、復元した2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップS23と、連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップS24と、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとするステップS25と、PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップS26と、エッジシフト長に基づいて、マーク前縁の立ち上がり位置またはマーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップS27と、を含む。
【0025】
以下、実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
[実施例1の構成]
図1は本発明の実施例1を示す全体ブロック図である。光ディスクなどの情報記録媒体1から光ヘッド2により再生されたRF波形はA/D変換器3によりサンプリングされディジタル信号に変換される。ディジタル化されたRF信号は、PR等化器4、ビタビ復号器5で、PRML処理により、最も確からしい2値データに復号される。
【0027】
PR等化器4におけるPR等化係数は、自在に設定可能なように構成され、実施例1では、拘束長5の(12221)が設定されている。また、設定されたPR等化係数に応じて、図8に示すように、所望のPR等化特性が得られるように、PR等化器4内部のFIRフィルタ係数が調整される。
【0028】
記録ストラテジ調整のための記録データパターンは、記録データ生成器13により与えられ、実施例1では、2Tのマーク長、2Tのスペース長が含まれている。
【0029】
ビタビ復号された2値データは、2T検出器6及び3T以上検出器7に与えられる。まず、2T検出器6ではビタビ復号された2値データの長さが2Tと一致しているかを検出する。3T以上T長検出器7では2値データが3T以上の場合のデータ長を検出する。遅延器8は、PR等化器4出力を、ビタビ復号器5、2T検出器6、3T以上T長検出器7での演算、検出処理に要する時間分の保持を行っている。交差レベル選択器9では、連続するマーク及びスペースの組み合わせにおいて、2T検出器6によりどちらかの長さが2Tである場合は2T交差レベルを、両方とも3T以上である場合は標準交差レベルを、交差レベルとして選択する。その選択値は交差レベル前後点検出器10での交差レベルになり、遅延器8出力の等化波形が交差レベルを交差する際の前後点を検出する。エッジシフト長算出器11では、その交差レベル前後点を用いてエッジシフト長を算出する。
【0030】
mTnT組み合わせ毎の統計処理器12では、2T検出器6、3T以上T長検出器7の結果を基に、マーク及びスペースのmTからnTへの遷移の組み合わせを判別し、その際のエッジシフト長を得る。そして、mTnT組み合わせ毎にエッジシフト長を統計処理し、それを記録ストラテジ調整器14へ反映して、記録データ生成器13からの記録データに対し記録用の位相調整を行い、光ヘッド2を経由して光ディスクなどの情報記録媒体1への記録を行う。
【0031】
[実施例1の動作]
図2は、実施例1の記録ストラテジ調整の動作を示すフローチャートである。ステップS20のデータ再生で光ディスクからデータを再生し、ステップS21のPR等化処理で再生データをPR等化処理し、ステップS22のビタビ復号で、PR等化の出力信号をビタビ復号する。そして、ステップS23において、連続するマーク、スペースのどちらかが2Tを含む組み合わせかどうか判別し、Yesと判定した場合は、ステップS25で、2T交差レベルを交差レベルとして選択し、Noと判定した場合には、ステップS24で、標準交差レベルを交差レベルとして選択する。ステップS24、S25の後、ステップS26で、交差レベルが、PR等化波形を交差する前後点に基づいてエッジシフト長を算出する。ステップS26で使用するPR等化波形は、ステップS21で得られたPR等化の出力信号を使用する。ステップS27において、ステップS26で得られたエッジシフト長に基づいて、マークの立ち上がり位置/立下り位置の調整を行う。以上により、最適品質の記録を行う。
【0032】
次に、実施例1において、PR(12221)の拘束長5のPR等化器において、2Tを含むPR等化器の出力信号Pのエッジシフト長の算出方法について、より詳細に説明する。図13は、PR(12221)のS3T、M2T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であり、マークに2T長を含んだ場合である。また、図14は、PR(12221)のS2T、M3T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であり、スペースに2T長を含んだ場合である。図13、図14のどちらの波形も、零に接していはいるが、交差はしていないため、交差する位置を算出することができない。
【0033】
従って、本発明では、交差レベルを、マーク長、スペース長の両方が3T以上の場合には、標準交差レベルを交差レベルとし、マーク長、スペース長のどちらかが2Tの場合には、標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする。ここで、標準交差レベルとしては、零を用いる。特に、0、1の頻度が等しい記録データ列に対して、PR等化器の出力信号のDC成分が0になるように正規化されている場合には、マーク長、スペース長の両方が3T以上のPR等化波形は0を中心に上下に振幅を持つので、標準交差レベルを零にすることが望ましい。但し、それに限定されず、マーク長、スペース長の両方が3T以上のPR等化波形に対して交差する条件を満たす値であればよい。
【0034】
一方、2T交差レベルは、例えば、マーク長に2Tを含む図13の場合には、点Eと点Fの中間、点Gと点Hの中間である−0.125にし、スペース長に2Tを含む図14の場合には、点E’と点F’の中間、点G’と点H’の中間である0.125に設定すると交差する。ここで、2T交差レベルは、マーク長に2Tを含む場合と、スペース長に2Tを含む場合では、別の値を設定することが必要になる。
【0035】
また、2Tを含むPR等化波形は、PR等化係数に依存して変化するので、2T交差は、設定されているPR等化係数に応じて、設定することが望ましい。例えば、図15は、PR(23332)のS3T、M2T繰り返しデータ列に対するPR等化器の理想波形であるが、この場合、点Iと点Jの中間、点Kと点Lの中間に2T交差レベルを設定することが望ましい。その場合、最適な2T交差レベルは、図13における最適な2T交差レベル−0.125とは異なる値になる。
【0036】
以上、纏めると、交差レベルとして、標準交差レベル、マーク長に2Tを含む場合の2T交差レベル、スペース長に2Tを含む場合の2T交差レベルの3つを設定することになる。図1の交差選択器には、これらの3つの値が設定されており、2T検出器6の結果に応じて、交差レベルを切り替えるようにしている。また、図2のフローチャートのステップS25をより詳細に説明すると、マークが2Tを含む場合には、マーク長に2Tを含む場合の2T交差レベル、スペースが2Tを含む場合には、スペース長に2Tを含む場合の2T交差レベルを選択することになる。
【0037】
また、PR等化係数毎の2T交差レベルは、PR理想波形に基づいて、予め求めて、交差レベル選択器9に格納しておき、設定したPR等化係数に応じて、参照して使用する。
【0038】
次に、交差レベル前後点検出器10が、交差レベル選択器9によって選択された交差レベルに基づいて、PR等化出力信号と交差レベルが交差する位置の前後点を検出する。図12において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点Aと点Bであり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点Cと点Dである。また、図13において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点Eと点Fであり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点Gと点Hである。また、図14において、立ち上がりエッジにおける前後点は、点E’と点F'であり、立ち下がりエッジにおける前後点は、点G’と点H’である。
【0039】
次に、エッジシフト長算出器11で行われるエッジシフト長の算出について説明する。図4は、図12における点Aと点Bの部分を拡大した図である。図4の下部には、対応する記録されたマーク位置を示している。ここで、記録されたマークが適正位置にある場合を実線で示し、適正位置から左方向にシフトした場合を破線で示し、適正位置から右方向にシフトした場合を一点鎖線で示す。また、適正位置から左にシフトした場合のPR等化波形は、破線で示す線分A’B’になり、適正位置から右にシフトした場合のPR等化波形は、一点鎖線A”B”になる。
【0040】
エッジシフト長の算出には、幾つかの方法がある。第1の方法は、PR等化波形と交差レベルとの交点の座標を算出することである。点Aの座標を(XA、YA)、点Bの座標を(XA+ΔX、YB)、点A’の座標を(XA、YA’)、点B’の座標を(XA+ΔX、YB’)、点A”の座標を(XA、YA”)、点B”の座標を(XA+ΔX、YB”)、線分ABが、交差レベルと交差する点を(XP、0)、線分A’B’が交差レベルと交差する点を(XP’、0)、線分A”B”が交差レベルと交差する点を(XP”、0)とすると、まず、線分AB、A’B’、A”B”の傾きは、各々、式(1)、式(2)、式(3)となる。
m=(YB−YA)/ΔX 式(1)
m’=(YB’−YA’)/ΔX 式(2)
m”=(YB”−YA”)/ΔX 式(3)
線分AB、A’B’、A”B”が交差レベルと交差する位置の座標は、各々、式(4)、式(5)、式(6)となる。
XP = XA+ΔX/2 式(4)
XP’= XA−YA’/m’ 式(5)
XP”= XA−YA”/m” 式(6)
XPを基準としたXP’のエッジシフト長は、式(7)、XPを基準としたXP”のエッジシフト長は、式(8)となる。
ES1’= XP’ − XP 式(7)
ES1”= XP” − XP 式(8)
式(7)に、式(4)、式(5)を代入して、式(9)が得られる。また、式(8)に式(4)、式(6)を代入して、式(10)が得られる。
ES1’= −1/2((YA’+YB’)/(YB’−YA’))
式(9)
ES1”= −1/2((YA”+YB”)/(YB”−YA”))
式(10)
式(9)、式(10)は、PR等化器の出力信号と交差レベルが交差する前後のPR等化器の出力信号から、PR等化器の出力信号と交差レベルの交点を算出し、PR等化器の理想波形と交差レベルとの交点の差分により算出したエッジシフト長を表している。ここで、図4から、YA’+YB’>0、YA”+YB”<0となるので、ES1’<0、ES1”>0となる。換言すると、PR等化波形が、適正位置よりも振幅軸上で上にある場合、立ち上がりエッジは左にシフトし、エッジシフト長は負値となり、PR等化波形が、適正位置よりも振幅軸上で下にある場合、立ち上がりエッジは右にシフトし、エッジシフト長は正値となる。
【0041】
図4において、交差レベルが標準交差レベルの零の場合について説明したが、交差レベルが2T交差レベルの場合は、まず、点A、点B、点A’、点B’、点A”、点B”のY座標から、交差レベルの値を差し引く。その後、同様に、式(9)、式(10)を用いて、エッジシフト長の算出を行えばよい。
【0042】
次に、エッジシフト長の第2の算出方法について、同様に図4を参照し、説明する。第2のエッジシフト長は、式(11)、式(12)、式(13)で定義される。
ES2 = YB/(YB−YA) 式(11)
ES2’ = YB’/(YB’−YA’) 式(12)
ES2” = YB”/(YB”−YA”) 式(13)
ここで、図4における各点のY座標をYA=−0.25、YB=0.25、YA’=−0.20、YB’=0.30、YA”=−0.30、YB”=0.20として代入すると、ES2=0.5、ES2’=0.6、ES2”=0.4が得られる。適正位置に対して、立ち上がりエッジが左にシフトしている場合は、適正位置よりもエッジシフト長は大きな値となり、適正位置に対して、立ち上がりエッジが右にシフトしている場合は、適正位置よりもエッジシフト長は小さな値となる。図4において、交差レベルは零であるが、2T交差レベルの場合には、予め、各点のY座標から、2T交差レベルの値を差し引いた後、式(11)、式(12)、式(13)による演算を行えばよい。
【0043】
次に、エッジシフト長の第3の算出方法について、同様に図4を参照し、説明する。第3のエッジシフト長は、式(14)、式(15)で表される。
ES3’ = (YA’+YB’)−(YA+YB) 式(14)
ES3” = (YA”+YB”)−(YA+YB) 式(15)
式(14)、式(15)は、PR等化器の出力信号と交差レベルが交差する前後のPR等化器の出力信号の加算値と、PR等化器の理想波形と交差レベルが交差する前後のPR等化器の理想波形の加算値の差分により、エッジシフト長を算出している。式(14)、式(15)に図4における各点のY座標を代入すると、ES3’=0.1、ES3”=−0.1となる。このエッジシフト長は、立ち上がりエッジが左にシフトしている場合は、負値となり、立ち上がりエッジが右にシフトしている場合は正値となる。図4は、交差レベルが、零であるが、2T交差レベルの場合でも、式(14)、式(15)は、そのまま適用可能である。
【0044】
以上、3通りのエッジシフト長について、図4の立ち上がりエッジについて考察したが、立ち下がりエッジに関しても同様な算出方法が適用可能である。
【0045】
次に、図12、図13、図14、図15以外のPR等化係数、記録データ列に対するPR理想波形の例を、図16、図17、図18、図19に示す。
【0046】
図16にPR(12321)のS3T、M2T繰り返し理想波形を示す。この場合、マーク2Tは零を超えた正値の振幅を持つが、交差レベルを標準交差レベルの零とすると、理想波形の交差前後点は上下対称位置ではないので、PR12221、PR23332と同様、理想信号値の中点、或いは、それに近い値の方が適切である。よって、2Tを含むマーク及びスペースの組み合わせが検出された際は、PR(12321)に対し最適な2T交差レベルを交差レベルとすることが望ましい。
【0047】
図17にPR(12221)の3T、2T、2T繰り返し理想波形を示す。PR(12221)ではM2T、S2TあるいはS2T、M2Tのように、2Tが連続すると、マーク、スペース共その振幅値は零となり、振幅を持たず差もないことになる。3Tと2Tの組み合わせ、2Tと3Tの組み合わせにおいて2T交差レベルを用いることで交差前後点を検出できたが、2Tと2Tの組み合わせでは交差前後点を検出できず、エッジシフト長を検出できない。よって、この場合には、調整できないことになる。
【0048】
図18に、PR(23332)の3T、2T、2T繰り返し理想波形を示す。この場合、2Tが2つ連続すると、PR(12221)とは異なり、マーク、スペースで異なった振幅を示す。しかし、3T以上の振幅とは異なり、本来期待する極性の振幅量は持てていないが、この場合は2T交差レベルを零とすればエッジシフト長は算出することはできる。このようにPR(12221)とPR(23332)では2Tと2Tの組み合わせ時の扱いが異なるが、これはPRクラスで決まることなので、用いるPR等化係数に応じて2Tと2Tの組み合わせ時の扱いをどうするか規定すれば良い。
【0049】
図19に、2Tを含む、2Tを含まない組み合わせでの実際の交差レベル選択動作例を示す。(1)のスペース3Tとマーク3Tの組み合わせ、(2)のマーク3Tとスペース3Tの組み合わせでは2Tを含まないので標準交差レベルの零を交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。(3)のスペース3Tとマーク2Tの組み合わせ、(4)のマーク2Tとスペース3Tの組み合わせでは2Tを含むので2T交差レベルを交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。尚、マーク2Tの場合は、2T交差レベルはマイナス値になる。(5)のスペース3Tとマーク3Tの組み合わせでは2Tを含まないでの標準交差レベルの零を交差レベルとし、その前後点からエッジシフト長を求める。(6)のマーク3Tとスペース2Tの組み合わせ、(7)のスペース2Tとマーク3Tの組み合わせでは2Tを含むので2T交差レベルを交差レベルとし、その前後点からそれぞれのエッジシフト長を求める。尚、スペース2Tの場合は、2T交差レベルはプラス値になる。このように2Tを含んだ組み合わせかどうかにより、交差レベルを適宜切り替えることにより、その前後点からエッジシフト長を求めることができる。
【0050】
このようにして得られたエッジシフト長をマーク及びスペースのmTとnTの組み合わせ毎に分類し、統計処理を行う。すなわち、記録データ生成器13で、マーク及びスペースのmTとnTの組み合わせからなる記録データ列によって記録と再生を何回か繰り返し、得られたエッジシフト長のデータを保存しておき、マーク及びスペースのmTとnTの組み合わせ毎に、平均、分散値などを求める。ここで、分散値は、エッジシフト長のばらつきを評価するための評価値として用いられる。また、エッジシフト長の平均をストラテジ調整に使用するが、全データの平均長を用いてもよいし、長さ情報が得られるものならよく、種々の統計処理方法が考えられる。
【0051】
次に、記録ストラテジ調整器13について、説明する。図3は、記録ストラテジ調整を説明するための図である。図3は、特許文献4の図22を引用している。光ヘッド2における記録パルスは、図3の(b)のように、マルチパルスからなっている。ここで、ファーストパルス幅及びラストパルス幅が調整可能に構成されている。マーク前縁の立ち上がり位置は、ファーストパルス幅で調整される。例えば、ファーストパルス幅を広くすると、マーク前縁の立ち上がり位置は、左にシフトし、ファーストパルス幅を狭くすると、マーク前縁の立ち上がり位置は、右にシフトする。一方、マーク後縁の立ち下がり位置は、ラストパルス幅で調整される。例えば、ラストパルス幅を広くすると、マーク後縁の立ち下がり位置は、右にシフトし、ラストトパルス幅を狭くすると、マーク後縁の立ち下がり位置は、左にシフトする。
【0052】
記録ストラテジ調整器13において、mTnT組み合わせ毎の統計処理器12で得られたエッジシフト長に基づいて、mTnT組み合わせ毎のマーク前縁の立ち上がり位置、マーク後縁の立ち下がり位置を適正にするためのファーストパルス幅と、ラストパルス幅の補正量を求め、図20に示す補正テーブルを更新する。図20の(a)は、マーク前縁の立ち上がり位置を調整するためのファーストパルスの補正量テーブルであり、図20の(b)は、マーク後縁の立ち下がり位置を調整するためのラストパルスの補正量テーブルである。実施例1では、連続するマーク、スペースのうちのどちらかが、2Tの場合の記録ストラテジ調整が可能になったので、2Tの行と列が、加わっている。連続するマーク、スペースの両方が2Tの場合には、PR出力波形において、交差点を算出するためのコントラストは得られないので、エッジシフト長を算出できないため、テーブルに斜線を引いて除外してある。但し、記録データ列とPR等化係数によっては、図18のように、2T2Tの組み合わせでも検出できる場合もあり、その場合は、補正テーブルの2T2T組み合わせに補正データを入れるようにしてもよい。一方、図21は、従来の記録ストラテジ調整の補正テーブルである。従来技術の補正テーブルである図21では、PR(abcba)の拘束長5の場合、2Tを含むエッジシフト長の算出はできないので、2Tの行、列は補正テーブルには含まれていない。ここで、図21は、特許文献4の図23を引用している。以上のようにして、実施例1では、PR(abcba)の拘束長5のPR等化器を使用した場合で、連続するマーク、スペースのうち、どちらかが2T長であった場合においても、記録ストラテジ調整が可能になり、最適記録が可能な光学的情報記録再生装置を実現することができる。
【0053】
次に、エッジシフト長と信号品質の関係について、以下に説明する。エッジシフトを発生させるために、意図的にS3T、S2Tの組み合わせ発生時に、N点のPR波形の振幅データにある値を加減算する。そのPR波形データに対して、2T交差レベルを−0.125として得られたエッジシフト長とPRSNRとの関係を、図5に示す。PRSNRは、PRML用の信号評価指数であり、詳細は特許文献3に示されている。ここで、N点の振幅に対して−3α、−2α、−α、0、α、2α、3αの加算を行っている。図5はその際に得られたマーク2Tのリーディングエッジシフト長とPRSNRである。ここで、リーディングエッジとは、立ち上がりエッジを意味する。また、エッジシフト長は、式(14)、式(15)で示した第3の方法を用いており、エッジシフト長は、加減算した振幅に比例して大きくなる。図5によると、マーク2Tのリーディングエッジシフト長に応じてPRSNRが山なりの波形を描いている。PRSNRは値が高いほど信号品質が良いことを示しており、マーク2Tリーディングエッジシフト長が適切であれば記録信号品質を良くすることができる。従って、エッジシフト長を算出した結果に基づいて、エッジシフト長が理想より少なければ増やす方向へ記録ストラテジを適量だけ調整し、理想より多ければ減らす方向へ記録ストラテジを適量だけ調整することで、記録信号品質を良くすることができることを示している。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、図1の実施例1に対して、さらに、図6のPR理想波形生成部20、2T交差レベル算出部21を含んだ構成になっている。ここで、PR理想波形生成部20は、記録データ生成器13で生成された記録データ列とPR等化係数に基づいて、PR理想波形を出力する。図7に、PR理想波形生成部20が行う処理内容を示す。図7は、記録データ列が、S3T、M3T繰り返しで、PR等化係数が1221の場合を示している。図7に示すように、記録データ列とPR等化係数のコンボリューション演算を行うことにより、PR理想波形(正規化前)のデータが得られる。次に、PR理想波形の正規化y=ax+bを行い、PR理想波形(正規化後)を得る。本明細書の図9〜図19のPR理想波形の算出は、図7に示した方法で算出したものである。
【0055】
その後、2T交差レベル算出部21は、例えば、PR(12221)の場合には、図13のPR理想波形から、最適な2T交差レベルを自動的に算出する。例えば、図13の場合、2Tマークにおける点F、点Gを求め、次に、各々が隣接する点E、点Hを求め、点Eと点Fの中点、あるいは、点Gと点Hの中点から2T交差レベルを算出するようにすればよい。このようにして2T交差レベル算出部21で算出された2つの交差レベルである2Tがマークの交差レベル、2Tがスペースの交差レベルを、交差レベル選択器9に供給する。実施例2では、予め、最適な2T交差レベルが得られていないPR等化係数などに対しても、自動的に最適な2T交差レベルを算出し、設定可能であるという利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高密度、大容量の光学的記録媒体を用いた記録再生装置に用いられる。
【0057】
なお、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 情報記録媒体
2 光ヘッド
3 A/D変換器
4 PR等化器
5 ビタビ復号器
6 2T検出器
7 3T以上T長検出器
8 遅延器
9 交差レベル選択器
10 交差レベル前後点検出器
11 エッジシフト長算出器
12 mTnT組み合わせ毎の統計処理器
13 記録データ生成器
14 記録ストラテジ調整器
15 T長検出器
16、17 光学的情報記録再生装置
18 PRSNR
19 マーク2Tリーディングエッジシフト長
20 PR理想波形生成部
21 2T交差レベル算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、
前記情報記録媒体のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器と、
前記PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器と、
Tをチャネルクロック周期として、前記ビタビ復号器で復元した連続した前記マーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器と、
前記PR等化器の出力信号が、前記交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器と、
前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置及び前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器と、を有することを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】
前記2T交差レベルは、前記連続したマーク、スペースのうち、マークの長さが2Tの場合とスペースの長さが2Tの場合とで、異なる値を設定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項3】
前記2T交差レベルは、前記PR等化器の理想波形と交差することが可能な条件に基づいて設定することを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項4】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号から、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項5】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号から、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルの交点を算出し、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルの交点と、前記PR等化器の理想波形と前記交差レベルの交点との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項4に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項6】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号を加算して第1の加算値を得て、
前記PR等化器の理想波形と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の理想波形の信号を加算して第2の加算値を得て、
前記第1の加算値と前記第2の加算値との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項4に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項7】
前記エッジシフト長算出器で算出された前記エッジシフト長に対し、マーク長とスペース長の組み合わせ毎に平均、分散の統計処理を行うことにより前記記録ストラテジ調整器で用いるエッジシフト長を算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項8】
情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、
前記情報記録媒体からデータを再生するステップと、
前記情報記録媒体からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップと、
前記PR等化するステップでPR等化した信号を、ビタビ復号し、前記2値データを復元するステップと、
Tをチャネルクロック周期として、復元した前記2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップと、
前記連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップと、
前記連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを前記交差レベルとするステップと、
前記PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップと、
前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップと、
を含むことを特徴とする記録ストラテジ調整方法。
【請求項9】
前記交差レベル選択器が選択する2T交差レベルは、前記連続したマーク、スペースのうち、マークの長さが2Tの場合とスペースの長さが2Tの場合とで、異なる値を設定することを特徴とする請求項8に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項10】
前記2T交差レベルは、前記PR等化の理想波形と交差することが可能な条件に基づいて設定することを特徴とする請求項8または9に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項11】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号から前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項12】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号から、前記PR等化した信号と前記交差レベルとの交点を算出し、前記PR等化の理想波形と前記交差レベルの交点との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項11に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項13】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号を加算して第1の加算値を得て、
前記PR等化の理想波形と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化の理想波形の信号を加算して第2の加算値を得て、
第1の加算値と第2の加算値との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項11に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項14】
前記エッジシフト長を算出するステップで算出されたエッジシフト長に対し、マーク長とスペース長の組み合わせ毎に平均、分散などの統計処理を行うことにより前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップで用いるエッジシフト長を算出することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項1】
情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する装置であって、
前記情報記録媒体のデータを再生した信号を拘束長5でPR等化するPR等化器と、
前記PR等化した信号をビタビ復号して、2値データを復元するビタビ復号器と、
Tをチャネルクロック周期として、前記ビタビ復号器で復元した連続した前記マーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合は、所定の標準交差レベルを交差レベルとし、どちらかの長さが2Tである場合は、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを交差レベルとする交差レベル選択器と、
前記PR等化器の出力信号が、前記交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を求めるエッジシフト長算出器と、
前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置及び前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整する記録ストラテジ調整器と、を有することを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】
前記2T交差レベルは、前記連続したマーク、スペースのうち、マークの長さが2Tの場合とスペースの長さが2Tの場合とで、異なる値を設定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項3】
前記2T交差レベルは、前記PR等化器の理想波形と交差することが可能な条件に基づいて設定することを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項4】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号から、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項5】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号から、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルの交点を算出し、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルの交点と、前記PR等化器の理想波形と前記交差レベルの交点との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項4に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項6】
前記エッジシフト長算出器において、前記PR等化器の出力信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の出力信号を加算して第1の加算値を得て、
前記PR等化器の理想波形と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化器の理想波形の信号を加算して第2の加算値を得て、
前記第1の加算値と前記第2の加算値との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項4に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項7】
前記エッジシフト長算出器で算出された前記エッジシフト長に対し、マーク長とスペース長の組み合わせ毎に平均、分散の統計処理を行うことにより前記記録ストラテジ調整器で用いるエッジシフト長を算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学的情報記録再生装置。
【請求項8】
情報記録媒体にマークおよびスペースによって2値データを記録および再生する光学的情報記録再生装置の記録ストラテジ調整方法であって、
前記情報記録媒体からデータを再生するステップと、
前記情報記録媒体からの読み出し信号を拘束長が5でPR等化するステップと、
前記PR等化するステップでPR等化した信号を、ビタビ復号し、前記2値データを復元するステップと、
Tをチャネルクロック周期として、復元した前記2値データから、連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tを含むかどうかを検出するステップと、
前記連続するマーク、スペースの長さがどちらも3T以上である場合には、所定の標準交差レベルを交差レベルとするステップと、
前記連続するマーク、スペースの長さのどちらかが2Tである場合には、前記所定の標準交差レベルとは異なる2T交差レベルを前記交差レベルとするステップと、
前記PR等化した信号が交差レベルと交差する位置に基づいて、エッジシフト長を算出するステップと、
前記エッジシフト長に基づいて、前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップと、
を含むことを特徴とする記録ストラテジ調整方法。
【請求項9】
前記交差レベル選択器が選択する2T交差レベルは、前記連続したマーク、スペースのうち、マークの長さが2Tの場合とスペースの長さが2Tの場合とで、異なる値を設定することを特徴とする請求項8に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項10】
前記2T交差レベルは、前記PR等化の理想波形と交差することが可能な条件に基づいて設定することを特徴とする請求項8または9に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項11】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号から前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項12】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号から、前記PR等化した信号と前記交差レベルとの交点を算出し、前記PR等化の理想波形と前記交差レベルの交点との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項11に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項13】
前記エッジシフト長を算出するステップは、前記PR等化した信号と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化した信号を加算して第1の加算値を得て、
前記PR等化の理想波形と前記交差レベルが交差する位置の前後の前記PR等化の理想波形の信号を加算して第2の加算値を得て、
第1の加算値と第2の加算値との差分により、前記エッジシフト長を算出することを特徴とする請求項11に記載の記録ストラテジ調整方法。
【請求項14】
前記エッジシフト長を算出するステップで算出されたエッジシフト長に対し、マーク長とスペース長の組み合わせ毎に平均、分散などの統計処理を行うことにより前記マーク前縁の立ち上がり位置または前記マーク後縁の立ち下がり位置を調整するステップで用いるエッジシフト長を算出することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の記録ストラテジ調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−253604(P2011−253604A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128908(P2010−128908)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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