説明

光学的情報読取装置

【課題】二次元コードの読取に要する時間を短縮し得る光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】二次元コードQの位置検出パターンから各画像データ領域に対する二次元コードQの中心位置がそれぞれ検出される。そして、このように検出される各中心位置を中心とする円領域および接線に基づいて、読取対象となる読取範囲が、画像データ領域に対して限定するように設定される。そして、このように限定して設定される読取範囲に対してデコード処理を行い、デコード処理が第1の所定回数以上失敗すると、上記読取範囲が再度設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出パターンを有する二次元コードの読み取りを行う光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、位置検出パターンを有する二次元コードの読み取りを行う光学的情報読取装置として、下記特許文献1に示す光学的情報読取装置が知られている。この光学的情報読取装置では、一画像領域分の画素信号を取込むと、画素信号を間引いた状態で取込画像領域内に情報コードが存在するか否かを推定し、情報コードの存在が推定されると、取込画像領域内のうちあらかじめ定められた中央部分の所定の取込対象エリア内の画素信号を取込むことにより、読取に要する時間を短縮している。
【特許文献1】特開2005−038374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に示す光学的情報読取装置では、情報コードが取込画像領域(画像データ)内に存在しても上記所定の取込対象エリア(読取範囲)内に存在しない場合には、当該所定の取込対象エリアが拡大される。そのため、使用者が、情報コードを取込画像領域の中央部とは異なる位置(例えば、取込画像領域に対して左側上部の位置等)で読み取る傾向を有している場合には、上記所定の取込対象エリア内における読取処理が失敗する確率が高くなるため、読取に要する時間を短縮することができないという課題がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二次元コードの読取に要する時間を短縮し得る光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学的情報読取装置では、複数の明色セル及び複数の暗色セルからなる二次元コード(Q)からの反射光(Lr)を受光する受光手段(28)と、前記受光手段による受光結果に基づいて前記二次元コードの画像データ(P)を生成する生成手段(40)と、前記生成手段にて生成された前記画像データのうちの読取対象となる読取範囲(S)に対してデコード処理を行うデコード手段(40)と、を備える光学的情報読取装置(10)であって、前記生成手段により生成される前記画像データに基づいて前記二次元コードの位置検出パターン(FP)から前記画像データに対する当該二次元コードの中心位置(C)を検出する中心位置検出手段(40)と、所定数(Npa)の前記各画像データから前記中心位置検出手段により前記中心位置をそれぞれ検出し当該各中心位置を中心とする各所定領域(Y)に基づいて、前記読取範囲を前記画像データに対して限定するように設定する読取範囲設定手段(40)と、を備え、前記デコード処理を第1の所定回数(Npc)以上失敗すると、前記読取範囲を前記読取範囲設定手段により再度設定することを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、所定数の各画像データに基づいて、二次元コードの位置検出パターンから画像データに対する当該二次元コードの中心位置がそれぞれ検出される。そして、このように検出される各中心位置を中心とする各所定領域に基づいて、読取対象となる読取範囲が、読取範囲設定手段により画像データに対して限定するように設定される。そして、デコード手段によりこのように限定して設定される読取範囲に対してデコード処理を行い、デコード処理を第1の所定回数以上失敗すると、上記読取範囲が読取範囲設定手段により再度設定される。
【0007】
上記各所定領域に基づいて設定される読取範囲は、使用者の画像データに対する二次元コードの読取位置の傾向を踏まえて画像データに対して限定するように設定される。このように設定される読取範囲に対してデコード処理を行うことにより、画像データの全てを読取対象としてデコード処理を行う場合と比較して、二次元コードが読取範囲内に存在しないことによるデコード失敗の確率を抑制しつつ読取に要する時間が短縮される。
【0008】
また、作業環境の変化や使用者の交代等により画像データに対する二次元コードの読取位置の傾向が変わる場合でも、デコード処理を第1の所定回数以上失敗したことに応じて読取範囲が再度設定されるので、常に最適な読取範囲が設定されることとなる。
したがって、二次元コードの読取に要する時間を短縮することができる。
【0009】
請求項2の発明では、読取範囲設定手段は、読取範囲を、各中心位置を中心とする一定直径の各円領域と、当該各円領域同士を結ぶ接線と、により囲まれる範囲に基づいて設定する。このように、読取範囲は、中心位置を中心とする円領域と当該各円領域同士を結ぶ接線とにより囲まれる範囲に基づいて設定されるで、例えば、中心位置を中心とする矩形状領域等により囲まれる領域に基づいて設定される場合と比較して、読取範囲を設定するための処理が単純になり、読取に要する時間をより短縮することができる。
【0010】
請求項3の発明では、読取範囲設定手段は、読取範囲を、各中心位置を中心とする一定直径の各円領域と、中心間距離が上記一定直径に対して大きく設定される所定距離より短い各円領域同士を結ぶ接線と、により囲まれる範囲に基づいて設定する。円領域同士が大きく離間している場合、画像データにおいて両円領域の間に二次元コードが存在する確率は低くなる。そこで、各円領域と上記所定距離より短い各円領域同士を結ぶ接線とに基づいて読取範囲を設定することにより、二次元コードが存在する確率が高い読取範囲をより限定して設定することができる。
【0011】
請求項4の発明では、一定直径は、所定数の各画像データにおいて、最も離間した各位置検出パターンを有する二次元コードの当該パターン間距離に基づいて設定される。これにより、読取範囲は、各二次元コードのうち最大のものを除き、画像データに対する各二次元コードの大きさに影響されることなく設定される。このため、読取範囲の設定時に、ある二次元コードが画像データに対して比較的小さく取り込まれた場合であっても、読取範囲が必要以上に小さく設定されることをなくすことができる。
【0012】
請求項5の発明では、デコード手段は、読取範囲設定手段により設定された読取範囲に対するデコード処理を失敗した場合であって当該読取範囲の設定後におけるデコード失敗回数が第1の所定回数よりも少なく設定される第2の所定回数以上かつ第1の所定回数未満である場合には、画像データの全てを読取対象とする全画像データデコード処理を行う。
【0013】
このように、デコード失敗回数が第2の所定回数以上かつ第1の所定回数未満である場合には、読取範囲を再度設定することなく画像データの全てを読取対象としてデコード処理を行うので、一時的に画像データに対する二次元コードの読取位置の傾向が変わった場合でも読取範囲が変わってしまうことをなくすとともに、設定された読取範囲のみをデコードすることによるデコード失敗頻度を少なくすることができる。
【0014】
請求項6の発明では、全画像データデコード処理中に位置検出パターンが検出された場合であって当該位置検出パターンを含む二次元コードに対するデコード処理を失敗した場合には、その旨を使用者に報知する報知手段が設けられている。これにより、使用者は、取得された画像データ内に二次元コードが存在すべきであるが読み取り不可能であるためデコード処理を失敗した状態であることを、把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る光学的情報読取装置について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光学的情報読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、物品に付された二次元コード(図1では物品Rに付されたQRコードQを例示)を読み取る装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0017】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、QRコードQが付された物品Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0018】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、QRコードQに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。なお、受光センサ28は、特許請求の範囲に記載の「受光手段」に相当し得るものである。
【0019】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがQRコードQにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0020】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0021】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0022】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有すると共に、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0023】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、QRコードQの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該光学的情報読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0024】
次に、光学的情報読取装置10の読取処理について説明する。図2は、本実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。図3は、図2の読取範囲設定処理のサブルーチンを例示するフローチャートである。図4は、位置検出パターンFPから求められるQRコードQの中心位置Cおよび読取直径Dを例示する説明図である。図5は、画像データ領域Pに対する読取範囲Sを例示する説明図である。
【0025】
まず、図2のステップS100おいて、読取範囲設定処理のサブルーチンが実行される。この読取範囲設定処理のサブルーチンでは、図3に示すように、まず、後述するNaが0(ゼロ)に設定された後、ステップS103において、画像データが取得されたか否かについて判定され、画像データが取得されるまでNoとの判定が繰り返される。
【0026】
そして、トリガースイッチ42の操作に応じて制御回路40により画像データが生成されて取得されると(S103でYes)、ステップS105において、公知の手法により画像データの全領域(以下、画像データ領域Pともいう)に対してデコード処理がなされる。
【0027】
次に、ステップS107において、ステップS105におけるデコード処理が失敗であると判定されると(S107でNo)、上記ステップS103からの処理に戻る。
【0028】
一方、ステップS105におけるQRコードQに対するデコード処理が成功であると判定されると(S107でYes)、ステップS111において、当該QRコードQの3つ位置検出パターンFPから、これら各位置検出パターンFPを有するQRコードQの画像データ領域Pに対する中心位置Cが検出されるとともに、この中心位置Cを中心とする読取直径Dが設定される。具体的には、図4に示すように、中心位置Cは、最も離間する位置検出パターンFP同士の中間位置に応じて検出されるとともに、読取直径Dは、最も離間する位置検出パターンFP同士の離間距離Xoの2倍に等しくなるように設定される。そして、中心位置Cおよび読取直径Dがメモリ35に記憶される。なお、読取直径Dは、離間距離Xoの2倍に等しくなるように設定されることに限らず、読取状況に応じて、離間距離Xoの2倍より大きくなるように設定されてもよいし、離間距離Xoの2倍より小さくなるように設定されてもよい。なお、ステップS111における処理は、特許請求の範囲に記載の「中心位置検出手段」に相当し、読取直径Dは、特許請求の範囲に記載の「一定直径」に相当し、離間距離Xoは、特許請求の範囲に記載の「パターン間距離」に相当し得るものである。
【0029】
次に、ステップS113にてNaに1が加算されて、ステップS115にてNaがNpa以上であるか否かについて判定される。ここで、Naは、中心位置Cおよび読取直径Dがメモリ35に記憶されている記憶回数を示し、Npaは、例えば、5回に設定されている。すなわち、中心位置Cおよび読取直径Dが5回以上メモリ35に記憶されるまでステップS103からの処理が繰り返されることとなる。
【0030】
ここで、Npaは、特許請求の範囲に記載の「所定数」に相当し得るものである。なお、Npaは、使用環境に応じて、画像データ領域Pに対するQRコードQの読取位置の傾向が網羅されるように5回よりも多くなるように設定されてもよい。また、Npaは、画像データ領域Pに対するQRコードQの読取位置の傾向の変動が少ない使用環境であれば、5回よりも少なくなるように設定されてもよい。
【0031】
そして、中心位置C(C〜C)および読取直径D(D〜D)が5つメモリ35に記憶されてNaがNpa以上になると(S115でYes)、ステップS117において、中心間距離演算処理がなされる。この処理では、メモリ35に記憶されている5つの中心位置C〜Cのそれぞれの中心間距離Xが演算される。具体的には、中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X12,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X13,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X14,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X15,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X23,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X24,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X25,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X34,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X35,中心位置Cと中心位置Cとの中心間距離X45,がそれぞれ演算される。
【0032】
次に、ステップS119において、読取範囲設定処理がなされる。この処理では、各中心位置C〜Cを中心とし直径が読取直径D〜Dである円領域Y〜Yがそれぞれ設定される。そして、ステップS117にて演算される中心間距離Xが所定距離Xpより短い中心位置Cを中心とする円領域Y同士が接線Zで結ばれ、各円領域Yおよび各接線Zにより囲まれる領域が、画像データ領域Pのうちの読取対象となる読取範囲Sとして設定されるとともにメモリ35に記憶されることにより、読取範囲設定処理のサブルーチンが終了する。なお、ステップS100における処理は、特許請求の範囲に記載の「読取範囲設定手段」に相当し、円領域Y〜Yは、特許請求の範囲に記載の「所定領域」または「円領域」に相当し、接線Zは、特許請求の範囲に記載の「接線」に相当し、所定距離Xpは、特許請求の範囲に記載の「所定距離」に相当し得るものである。また、本実施形態においては、所定距離Xpは、離間距離Xoの2倍に等しくなるように設定されているが、読取状況に応じて、離間距離Xoの2倍より大きくなるように設定されてもよいし、離間距離Xoの2倍より小さくなるように設定されてもよい。
【0033】
具体的には、例えば、図5に示すように、中心間距離X12,X13,X23,X45のみが所定距離Xpより短い場合には、円領域Y,Y同士が接線Z12で結ばれ、円領域Y,Y同士が接線Z13で結ばれ、円領域Y,Y同士が接線Z23で結ばれ、円領域Y,Y同士が接線Z45で結ばれる。そして、円領域Y〜Yおよび各接線Z12,Z13,Z23により囲まれる領域と、円領域Y,Yおよびその接線Z45により囲まれる領域とを含めた領域が読取範囲Sとして設定されることとなる(図5の斜線領域参照)。
【0034】
上述のように、読取範囲設定処理のサブルーチンにて読取範囲Sが画像データ領域Pに対して限定されるように設定されると、通常の読取処理に戻り、図2のステップS201,S203にて後述するNbおよびNcが0(ゼロ)に設定される。そして、ステップS205にて画像データが取得されたか否かについて判定され、画像データが取得されるまでNoとの判定が繰り返される。
【0035】
ここで、トリガースイッチ42の操作に応じて制御回路40により画像データが生成されて取得されると(S205でYes)、ステップS207において、公知の手法により画像データ領域Pに対して限定された読取範囲Sに対してデコード処理がなされる。
【0036】
そして、ステップS209において、ステップS207におけるデコード処理が成功であると判定されると(S209でYes)、上述したステップS201からの処理がなされる。このように、画像データ領域Pに対して限定された読取範囲Sに対してデコード処理を行うので、画像データ領域Pの全てに対してデコード処理を実施する場合と比較して、読取に要する時間が短縮される。
【0037】
一方、ステップS207におけるデコード処理が失敗であると判定されると(S209でNo)、ステップS211にてNbに1が加算されて、ステップS213にてNbがNpb以上であるか否かについて判定される。ここで、Nbは、読取範囲Sに対するデコード処理が失敗した失敗回数を示し、Npbは、例えば、3回に設定されている。すなわち、Nbは読取範囲Sに対するデコード成功すると(S209でYes)ステップS201にて0(ゼロ)に設定されるので、読取範囲Sに対するデコード処理が連続して3回以上失敗するまでステップS205からの処理が繰り返されることとなる。
【0038】
ここで、Npbは、特許請求の範囲に記載の「第2の所定回数」に相当し得るものである。なお、Npbは、トリガースイッチ42の操作から5秒以内に相当する回数に応じて設定されてもよい。
【0039】
そして、読取範囲Sに対するデコード処理を連続して3回以上失敗すると(S213でYes)、ステップS215において、全画像データデコード処理がなされる。この処理では、読み取り範囲が限定された読取範囲Sではなく画像データ領域Pの全てに対してデコード処理がなされる。なお、ステップS215における処理は、特許請求の範囲に記載の「全画像データデコード処理」に相当し得るものである。
【0040】
そして、ステップS217にて、ステップS215におけるデコード処理が失敗していると判定されると(S217でNo)、ステップS219において、画像データ領域P内に位置検出パターンFPが存在するか否かについて判定される。ここで、画像データ領域P内に位置検出パターンFPが1つでも存在する場合にはステップS221における失敗報知処理がなされた後に上記ステップS205からの処理がなされ、画像データ領域P内に位置検出パターンFPが存在しない場合には上記失敗報知処理がなされることなく上記ステップS205からの処理がなされる。
【0041】
ステップS221における失敗報知処理は、例えば、発光部43の点灯、ブザー44の鳴動、バイブレータ45の振動や液晶表示器46の表示等の少なくともいずれか1つにより、読取処理が失敗である旨が使用者に報知される。このように読取範囲Sに対するデコード処理が失敗し、かつ、画像データ領域P内に位置検出パターンFPが1つでも存在する状態で当該画像データ領域Pの全てに対するデコード処理が失敗した場合のみ、読取処理が失敗である旨が報知される。このため、使用者は、トリガースイッチ42の操作に応じて取得された画像データ領域P内にQRコードが存在すべきであるが読み取り不可能であるためデコード処理を失敗した状態であることを、把握することができる。なお、発光部43、ブザー44、バイブレータ45および液晶表示器46の少なくともいずれか1つは、特許請求の範囲に記載の「報知手段」に相当し得るものである。
【0042】
一方、ステップS215におけるデコード処理が成功していると(S217でYes)、ステップS223にてNcに1が加算されて、ステップS225にてNcがNpc以上であるか否かについて判定される。ここで、Ncは、読取範囲S内に存在しないQRコードに対するデコード処理が成功した回数を示し、Npcは、例えば、3回に設定されている。すなわち、Ncは読取範囲Sに対するデコード成功すると(S209でYes)ステップS203にて0(ゼロ)に設定されるので、読取範囲S内に存在しないQRコードQに対するデコード処理が連続して3回以上成功するまで、ステップS205からの処理が繰り返されることとなる。
【0043】
ここで、Npcは、特許請求の範囲に記載の「第1の所定回数」に相当し得るものである。なお、Npcは、例えば、使用者が代わったとみなされる回数に応じて設定されてもよい。
【0044】
そして、読取範囲Sに対するデコード処理が連続して3回以上失敗した状態で(S213でYes)、読取範囲S内に存在しないQRコードQに対するデコード処理が連続して3回以上成功すると(S225でYes)、画像データ領域Pに対するQRコードQの読取位置の傾向が変わったため読取範囲Sを再度設定し直す必要があると判断されて、上述したステップS100における読取範囲設定処理のサブルーチン以降の処理が実行される。
【0045】
このように、例えば、使用者が代わったことにより、画像データ領域Pに対するQRコードQの読取位置の傾向が変わると、読取範囲Sが再度設定されるので、常に最適な読取範囲Sが設定されることとなる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、QRコードQの位置検出パターンFPから各画像データ領域Pに対する当該QRコードQの中心位置Cがそれぞれ検出される。そして、このように検出される各中心位置Cを中心とする円領域Yおよび接線Zの一部に基づいて、読取対象となる読取範囲Sが、画像データ領域Pに対して限定するように設定される。そして、このように限定して設定される読取範囲Sに対してデコード処理を行い、ステップS225にてNc≧Npcと判定されると(デコード処理を第1の所定回数以上失敗すると)、上記読取範囲Sが再度設定される。
【0047】
円領域Yおよび接線Zの一部に基づいて設定される読取範囲Sは、使用者の画像データ領域Pに対する当該QRコードQの読取位置の傾向を踏まえて画像データ領域Pに対して限定するように設定される。このように設定される読取範囲に対してデコード処理を行うことにより、画像データ領域Pの全てを読取対象としてデコード処理を行う場合と比較して、QRコードQが読取範囲S内に存在しないことによるデコード失敗の確率を抑制しつつ読取に要する時間が短縮される。
【0048】
また、作業環境の変化や使用者の交代等により画像データ領域Pに対する当該QRコードQの読取位置の傾向が変わる場合でも、デコード処理を上記第1の所定回数以上失敗したことに応じて読取範囲Sが再度設定されるので、常に最適な読取範囲Sが設定されることとなる。
したがって、QRコードQの読取に要する時間を短縮することができる。
【0049】
また、読取範囲Sは、中心位置Cを中心とする円領域Yと当該各円領域Y同士を結ぶ接線Zの一部とにより囲まれる範囲に基づいて設定されるで、例えば、中心位置Cを中心とする矩形状領域等により囲まれる領域に基づいて設定される場合と比較して、読取範囲Sを設定するための処理が単純になり、読取に要する時間をより短縮することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、読取範囲Sは、各中心位置Cを中心とする一定直径Dの各円領域Yと、中心間距離Xが所定距離Xpより短い各円領域Y同士を結ぶ接線Zと、により囲まれる範囲に基づいて設定される。円領域Y同士が大きく離間している場合、画像データ領域Pにおいて両円領域Yの間にQRコードQが存在する確率は低くなるので、各円領域Yと所定距離Xpより短い各円領域Y同士を結ぶ接線Zとに基づいて読取範囲Sを設定することにより、QRコードQが存在する確率が高い読取範囲をより限定して設定することができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、読取直径Dは、各画像データ領域Pにおいて、最も離間した各位置検出パターンFPを有するQRコードQの離間距離Xoに基づいて設定される。これにより、読取範囲Sは、各QRコードQのうち最大のものを除き、画像データ領域Pに対する各QRコードQの大きさに影響されることなく設定される。このため、読取範囲Sの設定時に、あるQRコードQが画像データ領域Pに対して比較的小さく取り込まれた場合であっても、読取範囲Sが必要以上に小さく設定されることをなくすことができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、読取範囲Sに対するデコード処理を失敗した場合であってステップS213にてNb≧Npbと判定される場合(読取範囲Sの設定後におけるデコード失敗回数が第2の所定回数以上である場合)には、画像データ領域Pの全てを読取対象とする全画像データデコード処理が実施される。これにより、一時的に画像データ領域Pに対するQRコードQの読取位置の傾向が変わった場合でも読取範囲Sが変わってしまうことをなくすとともに、設定された読取範囲Sのみをデコードすることによるデコード失敗頻度を少なくすることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、上記全画像データデコード処理中に位置検出パターンFPが検出された場合であって当該位置検出パターンFPを含むQRコードQに対するデコード処理が失敗した場合には、その旨が使用者に、発光部43の点灯、ブザー44の鳴動、バイブレータ45の振動や液晶表示器46の表示等の少なくともいずれか1つにより、報知される。これにより、使用者は、取得された画像データ領域P内にQRコードQが存在すべきであるが読み取り不可能であるためデコード処理を失敗した状態であることを、把握することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)図6は、画像データ領域Pに対する読取範囲Sの変形例を例示する説明図である。
図3のステップS117の読取範囲設定処理において、各円領域Yは、ステップS111にて各中心位置Cに対応してメモリ35に記憶される読取直径Dに基づいてそれぞれ個別に設定されることに限らず、全ての円領域Yにおける読取直径が、メモリ35に記憶される読取直径Dのうちの最大値、換言すると、最も離間した各位置検出パターンFPを有するQRコードQの離間距離Xoに基づいて設定されてもよい。
【0055】
具体的には、例えば、図6に示すように、3つの中心位置C〜Cと読取直径D〜Dとがメモリ35に記憶されており、各読取直径のうちDが最大値である場合には、円領域Y〜Yは、各中心位置C〜Cを中心とし直径が読取直径Dとなるように設定される(図6の斜線領域参照)。
【0056】
これにより、読取範囲Sの設定時に、あるQRコードが画像データ領域Pに対して比較的小さく取り込まれた場合であっても、読取範囲Sが必要以上に小さく設定されることをなくすことができる。
【0057】
(2)本実施形態に係る光学的情報読取装置10の読み取り対象は、QRコードに限らず、位置検出パターンFP等の位置を検出するためのパターンを有する複数の明色セル及び複数の暗色セルからなる二次元コードを読み取り対象としてもよい。
【0058】
(3)上述したステップ100の読取範囲設定処理のサブルーチンにより設定される読取範囲Sは、各中心位置Cを中心とする複数の円領域Yと各接線Zとにより囲まれる領域に応じて設定されることに限らず、例えば、各中心位置Cを中心とする複数の矩形状領域に応じて設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図3】図2の読取範囲設定処理のサブルーチンを例示するフローチャートである。
【図4】位置検出パターンから求められるQRコードの中心位置および読取直径を例示する説明図である。
【図5】画像データ領域に対する読取範囲を例示する説明図である。
【図6】画像データ領域に対する読取範囲の変形例を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0060】
10…光学的情報読取装置
20…回路部
28…受光センサ(受光手段)
35…メモリ
40…制御回路(生成手段,デコード手段,中心位置検出手段,読取範囲設定手段)
43…発光部(報知手段)
44…ブザー(報知手段)
45…バイブレータ(報知手段)
46…液晶表示器(報知手段)
C,C〜C…中心位置
D,D〜D…読取直径(一定直径)
P…画像データ領域
Q…QRコード(二次元コード)
S…読取範囲
X…中心間距離
Xo…離間距離(パターン間距離)
Y,Y〜Y…円領域(所定領域)
Z…接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の明色セル及び複数の暗色セルからなる二次元コードからの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段による受光結果に基づいて前記二次元コードの画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段にて生成された前記画像データのうちの読取対象となる読取範囲に対してデコード処理を行うデコード手段と、
を備える光学的情報読取装置であって、
前記生成手段により生成される前記画像データに基づいて前記二次元コードの位置検出パターンから前記画像データに対する当該二次元コードの中心位置を検出する中心位置検出手段と、
所定数の前記各画像データから前記中心位置検出手段により前記中心位置をそれぞれ検出し当該各中心位置を中心とする各所定領域に基づいて、前記読取範囲を前記画像データに対して限定するように設定する読取範囲設定手段と、を備え、
前記デコード処理を第1の所定回数以上失敗すると、前記読取範囲を前記読取範囲設定手段により再度設定することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記読取範囲設定手段は、前記読取範囲を、前記各中心位置を中心とする一定直径の各円領域と、当該各円領域同士を結ぶ接線と、により囲まれる範囲に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記読取範囲設定手段は、前記読取範囲を、前記各中心位置を中心とする一定直径の各円領域と、中心間距離が前記一定直径に対して大きく設定される所定距離より短い前記各円領域同士を結ぶ接線と、により囲まれる範囲に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記一定直径は、前記所定数の前記各画像データにおいて、最も離間した前記各位置検出パターンを有する前記二次元コードの当該パターン間距離に基づいて設定されることを特徴とする請求項2または3に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記デコード手段は、前記読取範囲設定手段により設定された前記読取範囲に対する前記デコード処理を失敗した場合であって当該読取範囲の設定後におけるデコード失敗回数が前記第1の所定回数よりも少なく設定される第2の所定回数以上かつ前記第1の所定回数未満である場合には、前記画像データの全てを読取対象とする全画像データデコード処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記全画像データデコード処理中に前記位置検出パターンが検出された場合であって当該位置検出パターンを含む前記二次元コードに対する前記デコード処理を失敗した場合には、その旨を使用者に報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−86182(P2010−86182A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252918(P2008−252918)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】