説明

光学的情報読取装置

【課題】カラー表示装置に表示される情報コードが読取対象となるような場合であっても、カラー表示装置特有の事情から生じる誤認識を抑えて正確に読み取ることができる光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】光学的情報読取装置1は、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタ28が設けられ、この光学フィルタ28を介して取り込まれる読取対象コードからの反射光を受光センサ26によって受光している。更に、受光センサ26における所定方向(素子配列方向)の受光波形に基づき、この所定方向における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成し、その生成された二値データにおける各明色領域に対し、光学フィルタ28によって表示光が抑制される画素要素に対応した所定幅の補正領域を追加した補正データを生成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーコードリーダ等の光学的情報読取装置では、一般的に、受光素子を複数配列してなる受光センサ(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ等)が用いられ、この受光センサによってバーコード等の情報コードから反射光を受光すると共に、情報コードの像に応じた受光信号(電気信号)を出力している。そして、その出力された受光信号を二値化回路によって二値化し、その二値データを解読手段によって解読している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−293327公報
【特許文献2】特開平10−320496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光学的情報読取装置では、受光信号に含まれるノイズを如何に除去するかが問題となっている。受光信号に含まれるノイズを除去する技術としては、例えば特許文献1、2のようなものがあり、特許文献1では、ローパスフィルタ等を用いて受光信号から高周波ノイズ成分を除去する技術が開示されている。また、特許文献2では、ローパスフィルタを用いたときの問題点を解消しようとする技術が開示されている。
【0005】
一方、ノイズ除去の方法としては、特定色の照明光を照射する照明光源を設けると共に、この特定色に対応する周波数帯の光を透過させ、他の周波数帯の光を遮断する光学フィルタを併用する構成なども考えられる。この構成によれば、照明光とは周波数が大きく異なる外乱光を良好に除去することができ、受光信号に外乱光に起因するノイズが含まれることを効果的に抑制することができる。
【0006】
また、上記ローパスフィルタを用いた構成も、光学フィルタを用いた構成も、それぞれ特有の利点を有しており、これらを併用する構成とすれば、より効果的なノイズ除去が期待できる。しかしながら、読取対象となる情報コードの表示態様は様々なケースが考えられ、場合によっては、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、ノイズ除去が十分に行われない場合があり得る。例えば、近年の光学的情報読取装置では、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とするニーズが増加しており、このようにカラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合、上記ローパスフィルタ及び光学フィルタを併用したとしても、カラー表示装置特有の事情から、ノイズ除去が適切になされない場合があった。
【0007】
例えば、赤色の照明光を照射する照明光源を用い、赤色に対応する所定周波数帯以外の光を抑制する光学フィルタを用いる場合、読取対象が紙媒体等に付された明暗コード(例えばバーコード)であれば、明色領域からの赤色の反射光を選択的に透過させることができ、赤色以外の外乱光を効果的に除去することができるため、明色領域と暗色領域のパターンを適切に反映した波形を得ることができる。しかしながら、液晶表示装置などのカラー表示装置に表示される明暗コード(例えばバーコード)を撮像する場合、明色領域から光学フィルタでの透過対象色(ここでは赤色)以外の光が発生するため、明色領域の一部の領域からの光がカットされてしまうという問題があった。
【0008】
例えば、図7のように、R画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)が組み合わされて一つの表示画素Sa(ピクセル)が構成され、このような表示画素Saが複数配列されてなる液晶表示装置の場合、ある表示画素Saで白色を表示するときには、実際には、R画素Ra,G画素Ga、B画素Ba(サブピクセル)をそれぞれ発光させることで視覚的に白色と認識しうる光を発生させている。このような液晶表示装置に表示される明暗コードを撮像する場合、図8(A)のように、R画素Raについては当該R画素Raからの発生する赤色光が光学フィルタFを通過するため、明色領域として認識されることとなる。しかしながら、G画素Ga、B画素Baについては、これら画素からの緑色光、青色光が光学フィルタFによって抑制されるため、図8(A)下段のように受光センサでの受光量が抑えられてしまい、本来的には図8(C)のように明色領域として認識されるべき領域であるはずなのに、図8(B)のように暗色領域として誤認識されてしまう。このような誤認識がなされると、情報コードの各明色領域のサイズを適切に認識できなくなり、情報コード全体のデコード不良を招いてしまうことになる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、カラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードをいずれも読み取ることができ、特にカラー表示装置に表示される情報コードを対象とする場合に、カラー表示装置特有の事情から生じる誤認識を抑えて正確に読み取ることができる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、複数色の各画素要素を組み合わせた表示画素を複数配列してなるカラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、前記受光センサにおける所定方向の受光波形に基づき、前記所定方向における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成する二値化手段と、前記二値化手段によって生成された前記二値データにおける各明色領域に対し、前記光学フィルタによって表示光が抑制される前記画素要素に対応した所定幅の補正領域を追加して補正データを生成する補正データ生成手段と、前記補正データ生成手段によって生成された前記補正データに基づいてデコード処理を実行可能なデコード手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記補正データ生成手段によって前記補正データの生成を行う補正モードと、前記補正データの生成を行わない通常モードとに切り替えるモード切替手段が設けられ、前記デコード手段が、前記通常モードのときに前記二値データに基づいてデコード処理を行い、前記補正モードのときに前記補正データに基づいてデコード処理を行う構成をなし、前記モード切替手段が、前記補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に前記補正モードに切り替えることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記モード切替手段が、前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、前記明色領域又は前記暗色領域の各長さが所定長さとなる領域、又は前記明色領域又は前記暗色領域の周期が所定周期となる領域を検出する領域検出手段を備え、前記領域検出手段によって前記所定長さ又は前記所定周期となる領域が検出されることを条件として前記補正モードに切り替えることを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記照明手段からの前記照明光を導出し、且つ前記読取対象コードからの前記反射光を取り込む読取口が設けられており、前記カラー表示装置を前記読取口に接触させた状態で前記読取対象コードを読み取るように構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記モード切替手段が、前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う前記明色領域及び前記暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備えており、前記所定比率領域検出手段によって前記所定比率となる領域が検出されることを条件として前記補正モードに切り替えることを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記モード切替手段が、前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う前記明色領域及び前記暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備えており、前記所定比率領域検出手段によって検出される前記所定比率領域が所定回数連続する場合に前記補正モードに切り替えることを特徴としている。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
において、更に、前記カラー表示装置が、R画素、G画素、B画素を所定の列方向に並べて構成される前記表示画素を、少なくとも前記列方向に複数配列した構成をなしている。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記照明手段が、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、前記光学フィルタは、G画素及びB画素から発せられる前記表示光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するように構成されている。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、更に、前記カラー表示装置が、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明は、照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタが設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタを介して受光センサによって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部の画素要素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素要素)からの光が光学フィルタによって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本発明では、受光センサにおける所定方向の受光波形に基づき、二値化手段によって所定方向における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成し、更に、補正データ生成手段により、その生成された二値データにおける各明色領域に対し、光学フィルタによって表示光が抑制される画素要素に対応した所定幅の補正領域を追加して補正データを生成している。そして、その生成された補正データに基づいてデコード手段によりデコード処理を行っている。
このようにすると、光学フィルタによって抑制される画素要素(本来明色領域として検出されるべきであるのに光学フィルタでの光の抑制によって暗色領域として検出されてしまう画素要素)の幅を考慮してこれを補う補正データを生成することができる。そして、この補正データに基づいてデコード処理を行っているため、カラー表示装置特有の事情から生じる誤認識を抑えて正確に読み取ることができる。
【0020】
請求項2の発明では、補正データ生成手段によって補正データの生成を行う補正モードと、補正データの生成を行わない通常モードとに切り替えるモード切替手段が設けられている。そして、デコード手段は、通常モードのときには二値データに基づいてデコード処理を行い、補正モードのときには補正データに基づいてデコード処理を行う構成をなしており、モード切替手段は、補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に補正モードに切り替えている。このようにすると、闇雲に補正データを生成するのではなく、補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に補正データを生成するため、補正データを生成する必要のない場合には、不要な補正処理を省略することでき、処理の効率化、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0021】
請求項3の発明では、二値化手段によって生成された二値データにおいて、明色領域又は暗色領域の各長さが所定長さとなる領域、又は明色領域又は暗色領域の周期が所定周期となる領域を検出する領域検出手段が設けられている。そして、この領域検出手段によって所定長さ又は所定周期となる領域が検出されることを条件として補正モードに切り替えている。カラー表示装置に表示される情報コードを撮像した場合には、カラー表示装置の画素要素の大きさ又は画素要素の配列に起因して、明色領域又は暗色領域の各長さが所定長さとなる領域、又は明色領域又は暗色領域の周期が所定周期となる領域が検出される可能性が高まるため、このような領域の検出を条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置が撮像された可能性を適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0022】
請求項4の発明は、照明手段からの照明光を導出し、且つ読取対象コードからの反射光を取り込む読取口が設けられており、カラー表示装置を読取口に接触させた状態で読取対象コードを読み取るように構成されている。このようにすると、コード撮像時に読取口とカラー表示装置との距離を一定の近距離に保つことができるため、明色領域又は暗色領域の各長さ或いは明色領域又は暗色領域の周期が、画素要素に対応した長さ或いは画素要素に対応した周期であるか否かをより正確に判断し易くなる。
【0023】
請求項5の発明は、二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備えており、所定比率領域検出手段によって所定比率となる領域が検出されることを条件として補正モードに切り替えている。
カラー表示装置に表示される情報コードを撮像した場合には、画素要素の規則的な配列、及び一部の画素要素からの光の抑制に起因して、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率となる可能性が高まるため、このような所定比率の検出を条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置が撮像された可能性を一層適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0024】
請求項6の発明は、二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備えており、所定比率領域検出手段によって検出される所定比率領域が所定回数連続する場合に補正モードに切り替えている。
カラー表示装置に表示される情報コードを撮像した場合には、画素要素の規則的な配列、及び一部の画素要素からの光の抑制に起因して、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率となる可能性が高まるため、このような所定比率の検出を条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置が撮像された可能性をより一層適切に判断して補正処理を行うことができる。また、カラー表示装置でコード周辺のマージンを表示する場合、例えば白色を表示する表示画素がある程度の広さで配置されることになるため、当該マージン表示領域では光学フィルタによって抑制される画素要素が一定間隔おきに多数含まれることになる。従って、所定比率領域(明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率となるが領域)が所定回数連続することを条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置が撮像された可能性をより一層適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0025】
請求項7の発明は、カラー表示装置が、R画素、G画素、B画素を所定の列方向に並べて構成される表示画素を、少なくとも列方向に複数配列した構成をなしている。本発明によれば、このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置を読取対象物として当該カラー表示装置に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0026】
請求項8の発明は照明手段が、赤色の照明光を照射する構成をなし、光学フィルタは、G画素及びB画素から発せられる表示光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するように構成されている。このようにすると、物体に付された情報コードを読取対象コードとして読み取る場合に、照明光が明色領域にて反射した光(赤色光)を光学フィルタにて選択的に透過させることができ、外乱光を良好に除去できる。一方、カラー表示装置に表示される情報コードを読み取る場合、明色パターンを表示する領域においてG画素、B画素からの光が光学フィルタによって抑制され、明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。しかしながら、本発明では、このようなG画素、B画素からの光の抑制に起因するノイズを補正した補正データを生成することができ、このようなノイズ(G画素、B画素に起因するノイズ)を適切に除去した上でデコードを良好に行うことができる。
【0027】
請求項9の発明は、カラー表示装置が、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴としている。このようにすると、様々な場所で広く用いられる携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置を例示するブロック図である。
【図2】図2(A)は、図1の光学的情報読取装置の内部構成を概略的に説明する説明図であり、図2(B)は、読取対象物を読取口に接触させて読み取る様子を説明する説明図である。
【図3】図3は、図1の光学的情報読取装置にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】図4は、紙に印刷された情報コードの読み取りを説明する説明図である。
【図5】図5は、カラー表示装置に表示される情報コードを読取対象とする場合について説明する説明図である。
【図6】図6(A)は、カラー表示装置に表示される情報コードを撮像したときの受光信号の波形(受光波形)を例示しており、図6(B)は、その受光波形を二値化した二値データを概念的に示す説明図である。また、図6(C)は、その二値データの補正について説明する説明図であり、図6(D)は、図6(B)の二値データを補正した補正データを概念的に示す説明図である。
【図7】図7は、従来から用いられているカラー表示装置の画素構成を概念的に説明する説明図である。
【図8】図8は、カラー液晶表示装置に表示されるバーコードを読み取るときの問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る光学的情報読取装置について図面を参照しつつ説明する。
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図であり、 図2は、図1の光学的情報読取装置の内部構成を概略的に説明する説明図である。まず、図1、図2等を参照して本実施形態に係る光学的情報読取装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、バーコード等の情報コードBを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、図示しないケースによって外郭が構成され、このケース内に各種電子部品が収容された構成をなしている。
【0030】
この光学的情報読取装置1は、主に、照明光源20、受光センサ26、結像レンズ27、光学フィルタ28、反射鏡29等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41等の電源系と、から構成されている。なお、これらは、基板4に実装あるいはケース2(図2)内に内装されている。
【0031】
光学系は、照明光源20、受光センサ26、結像レンズ27、光学フィルタ28、反射鏡29等から構成されている。照明光源20は、「照明手段」の一例に相当するものであり、例えば、赤色のLEDと、このLEDの出射側に設けられる拡散レンズ、集光レンズ等を備え、赤色の照明光Lfを照射する構成をなしている。本実施形態では、受光センサ26を挟んだ両側に照明光源20が設けられており、ケースに形成された読取口3(図2)を介して読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射可能に構成されている。この読取対象物Rとしては、例えば、樹脂材料、金属材料、紙等の様々な物体、或いは後述するカラー表示装置などが挙げられ、本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、このような読取対象物Rにおいて、印刷、ダイレクトマーキングなどによる加工、或いは表示装置による表示等によって示された情報コード(図1ではバーコード)を「読取対象コード」としている。なお、以下の説明では、情報コードBとしてバーコードを例示して説明するが、QRコード、データマトリックコード、マキシコードなどの二次元コードに置き換えてもよい。
【0032】
受光センサ26は、読取対象物Rや情報コードBに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサ、或いは2次元に配列したエリアセンサが、これに相当する。この受光センサ26は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光面26aで受光し得るように基板4に実装されている。また、受光センサ26は、制御回路40から設定された周波数のパルス信号(駆動信号)が入力される構成をなしており、制御回路40からの各パルスの入力と同期させて各受光素子の信号が順番に出力される構成となっている。
【0033】
なお、以下の説明では、受光センサ26がラインセンサからなる構成を代表例として説明する。この代表例では、受光センサ26の各受光素子において、受光量が大きいほど低い電圧の受光信号が出力されるようになっている。また、この場合、このラインセンサの配列方向(所定方向)における各位置の受光量の信号が順次出力され、これら信号が受光波形としてローパスフィルタ回路31に入力されるようになっている。
【0034】
光学フィルタ28は、照明光Lfに対応する所定周波数帯の光を通過させ、当該所定周波数帯以外の光を抑制する機能を有している。具体的には、照明光源20から照射される赤色光の波長が含まれる所定赤色光波長帯の光の通過を許容し、当該所定赤色光波長帯から外れた光(例えば、緑色光、青色光)の通過を遮断する光学的なフィルタとして構成されており、例えば、ケースに形成された読取口3(図2)と結像レンズ27との間に設けられている。これにより、照明光Lfが読取対象物Rで反射した光(反射光Lr)を選択的に受光し、当該反射光Lrの波長から大きく外れた不要な光が受光センサ26に入射することを抑制している。
【0035】
結像レンズ27は、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとによって構成されており、本実施形態では、ケースに形成された読取口(図示略)に入射する反射光Lrを集光し、受光センサ26の受光面26aに情報コードBのコード画像を結像するように構成されている。
【0036】
マイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40及びメモリ35を中心として構成され、前述した光学系によって撮像された情報コードBの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。
【0037】
制御回路40は、光学的情報読取装置1全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるものであり、情報処理機能を有している。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)が接続されており、本実施形態の場合、電源スイッチ41、操作スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。また、通信インタフェース48には、光学的情報読取装置1の上位システムに相当するホストコンピュータHSTなどを接続できるようになっている。
【0038】
メモリ35は、半導体メモリ装置であり、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、前述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する読取処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源20、受光センサ26等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0039】
ローパスフィルタ回路31は、受光センサ26の出力側に設けられ、受光センサ26から出力される受光信号を入力信号として、当該受光信号の高周波成分を除去する機能を有している。このローパスフィルタ回路31は、公知のローパスフィルタとして構成されており、予め規定されたカットオフ周波数以下の周波数の信号を減衰させずに通過させ、カットオフ周波数を超える高周波領域の信号については、入力信号の周波数が高くなるほど、フィルタを通った出力信号が抑制(減衰)される構成をなしている。
【0040】
ローパスフィルタ回路31は、反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタ(オペアンプを用いた公知のローパスフィルタ)であってもよく、非反転増幅回路として構成される公知のローパスフィルタであってもよい。或いは、オペアンプを用いない公知のCRフィルタであってもよい(この場合、受光センサ26とローパスフィルタ回路31との間に別途増幅回路を設けることが望ましい。
【0041】
二値化回路33は、「二値化手段」の一例に相当するものであり、ローパスフィルタ回路31から出力された信号(受光センサ26における所定方向(素子配列方向)の受光波形から高周波成分が除去された信号)に基づき、受光センサ26の所定方向(素子配列方向)における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成するように機能している。この二値化回路は、ローパスフィルタ回路31からの出力信号(高周波ノイズが除去された受光信号)を設定された閾値と比較して、閾値以上の場合には、Lレベル信号を出力し、閾値未満の場合にはHレベル信号を出力している。なお、二値化回路33から出力される信号は、情報コードBのパターンデータとしてメモリ35に蓄積されるようになっている。
【0042】
電源系は、電源スイッチ41等により構成されており、制御回路40により管理される電源スイッチ41のオンオフによって、電源から供給される駆動電圧の導通や遮断が制御されている。
【0043】
(読取処理)
次に、本実施形態に係る光学的情報読取装置1で行われる読取処理について図3等を参照して説明する。なお、図3は、本実施形態に係る光学的情報読取装置1にて行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。図4は、紙に印刷された情報コードの読み取りを説明する説明図である。なお、図4では、上段に紙に印刷された情報コードの説明図を示し、中段には、その情報コードにおける撮像ラインL1上の部分を拡大して示している。また、下段には、その拡大部分の受光波形を示している。図5は、カラー表示装置に表示された情報コードの読み取りを説明する説明図である。なお、図5では、上段にカラー表示装置に表示された情報コードの説明図を示し、中段には、そのカラー表示装置における撮像ラインL1上の表示画素構成を拡大して示している。また、下段には、その拡大部分の受光波形を示している。また、図6(A)は、カラー表示装置に表示される情報コードを撮像したときの受光信号の波形を例示しており、図6(B)は、その受光信号を二値化した二値データを概念的に示す説明図である。また、図6(C)は、その二値データの補正について説明する説明図であり、図6(D)は、図6(B)の二値データを補正した補正データを概念的に示す説明図である。
【0044】
本実施形態では、例えば、ユーザによる所定操作(例えば操作スイッチ42に対する所定操作)をトリガとして図3に示す読取処理が開始され、まず情報コードを撮像する処理が行われる(S1)。この処理では、制御回路40から照明光源20に対して光源駆動信号が与えられて照明光源20から赤色の照明光Lfが照射され、その照射状態で、情報コードからの反射光が受光センサ26によって受光される。
【0045】
この受光センサ26は、読取対象コードにて反射され且つ光学フィルタ28を透過した反射光を各受光素子にて受光しており、各受光素子での受光量に基づいて、読取対象コードからの反射光に応じた受光信号を出力している。具体的には、制御回路40から与えられる所定周波数のパルス信号(駆動信号)に応じて駆動し、制御回路40から各パルスが入力される毎に、一列に配列された各受光素子の各信号を順番に出力している。例えば、受光センサ26がN個の受光素子を一列に並べたラインセンサとして構成されている場合には、制御回路40からN個のパルスが入力されることで全受光素子の信号が出力されることになる。
【0046】
例えば、図4のような紙Pに印刷された情報コードB(バーコード等)が読取対象コードとされる場合、ラインセンサとして構成される受光センサ26では、撮像対象となる情報コードをライン状に撮像することとなる。図4では、紙Pに記録された情報コードB(バーコード等)が受光センサ26によって撮像されるときの撮像位置をライン(撮像ラインL1)にて概念的に示しており、このように受光センサ26によってライン状に撮像され、各受光素子からの受光信号が順次出力されることにより図4の最下段のような受光波形が得られることとなる。この受光波形は、受光素子の位置が横軸、受光量が縦軸となっており、各受光素子の位置と受光量とが対応付けられた信号となっている。このように受光センサ26から出力される受光信号(受光波形)は、上述のローパスフィルタ回路31にて高周波成分が抑制された後、二値化回路33にて二値データに変換され、メモリ35に記憶される。
【0047】
S1の撮像処理の後には、S1の撮像処理で生成された受光波形において所定周期及び所定比率が存在するか否かを判断する処理が行われる(S2)。この判断処理は、S1で撮像された情報コードがカラー表示装置に表示された情報コードであるか否かを判断する処理に相当している。
【0048】
本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、図4のように物体(図4では紙)に付された情報コードを読取対象コートとして読み取ることができると共に、例えば図5のように、カラー表示装置100に表示された情報コードについても読取対象コートとして読み取ることができるようになっている。図5のカラー表示装置100は、例えば液晶表示装置として構成されており、複数色の各画素要素(R画素Ra、G画素Ga、B画素Ba)を組み合わせた表示画素Saを複数配列した構成をなしており、例えば携帯電話機などの情報機器に設けられるものであり、図示しない制御回路の制御によって情報コードBが表示されるようになっている。
【0049】
このカラー表示装置100は、図7と同様に、R画素Ra、G画素Ga、B画素Baを所定の列方向に並べて構成される表示画素Saを、少なくとも列方向に複数配列してなるものであり、上述したように、受光センサ26での撮像時に、光学フィルタ28においてG画素Ga及びB画素Baから発せられる光の通過が、R画素から発せられる光の通過よりも抑制されるようになっている(図5も参照)。S2の判断処理では、このような抑制によって受光波形に生じる所定周期及び所定比率の存在を検出することで、S1で撮像された情報コードがカラー表示装置に表示された情報コードであるか否かを判断している。
【0050】
具体的には、まず、隣接する明色領域と暗色領域との比率が1:2となる領域を検出している。図5のように、RGBの各画素要素が所定方向(図5では横方向)に並んでなる表示画素Saが配列されたカラー表示装置100を撮像する場合において、各画素要素が並ぶ方向(所定方向)に沿うように受光センサ26の撮像ラインL1(撮像位置)が配されて撮像されるときには、G画素Ga、B画素Baからの光が光学フィルタ28で抑制されることにより、これら画素要素(G画素Ga及びB画素Ba)を撮像する受光素子の受光量が抑えられる。これにより、図5最下段及び図6(A)のように、明色(例えば白色)を表示する明色表示画素Swからの受光信号は、明色領域を示す信号(閾値V1以上の信号)と暗色領域を示す信号(閾値V1未満の信号)とが混在した信号となる。このような信号を閾値V1を基準として二値化すると、図6(B)のように、明色表示画素Swからの受光信号を二値化した後の二値データにおいて、明色領域(受光量が閾値V1以上と特定される領域)の幅W1と、暗色領域(受光量が閾値V1未満と特定される領域)の幅B1との比率は1:2となる。即ち、明色表示画素Swからの受光信号の二値データでは、明色領域の幅W1は画素要素一つ分(R画素Raの分)に相当し、暗色領域の幅B1は画素要素2つ分(G画素Ga、B画素Baの分)に相当するため、W1:B1は、1:2となる。S2では、このように受光波形(より詳しくは二値化後の波形)によって特定された明色領域及び暗色領域において、隣接する明色領域及び暗色領域の幅が1:2となる部分が1つ又は所定数存在するか否かを検出している。なお、判断基準となる所定比率は、完全に1:2であってもよく、多少の誤差を含んだ幅をもった値であってもよい。例えば、所定比率を1:nとし、nが、2−α≦n≦2+α(但しαは所定の誤差値)となるような値であってもよい。
【0051】
更に、S2では、上述の二値データ(図6(B)参照)において明色領域(受光量が閾値V1以上と特定される領域)の周期が所定の長さとなる領域を検出している。本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、図2(A)のように、照明光源20からの照明光を導出し、且つ読取対象コードからの反射光を取り込む読取口3が設けられており、図2(B)のように、読取対象物Rを読取口3に接触させた状態で読取対象コードを読み取ることができるようになっている。このように、読取対象物Rと読取口3との位置関係が一定に定められたときには、装置構成に基づき、受光センサ26上で結像される読取対象物Rの像の倍率も一定に定まるため、この倍率を考慮することで撮像画像の縮尺を特定でき、撮像画像内の各部分の実際の長さを検出できるようになる。例えば、カラー表示装置100(図5)が読取口3に接触した状態で撮像された場合には、このカラー表示装置100がどの程度の倍率で受光センサ26上に結像するかを特定できるため、カラー表示装置100上の各部分の実際の長さ(例えば、カラー表示装置100に表示される情報コードBの明色バーや暗色バーの実際の長さ、或いは各表示画素Sa(1ドット)の実際の長さなど)を特定できるようになる。
【0052】
このように撮像画像の縮尺を特定できる構成を前提とし、S2では、二値データで特定されるいずれかの明色領域の周期が所定の長さとなっている部分が存在するか否かを検出している。具体的には、例えば、上述したような隣接する明色領域及び暗色領域の幅が1:2となる部分において、明色領域の周期T1(即ち、隣接する明色領域及び暗色領域の幅の比率が1:2となっている部分におけるこれら明色領域及び暗色領域の幅の和)の実際の長さが、VGA表示において1ドット分とされる所定第1サイズ(例えば、0.075mm)、又はQVGA表示において1ドット分とされる所定第2サイズ(例えば0.15mm)のいずれかに該当するか否かが判断される。例えば、撮像画像で周期T1とされる部分が、縮尺を考慮するとカラー表示装置100上で上記所定第1サイズ(VGA表示において1ドット分)又は所定第2サイズ(QVGA表示において1ドット分)に相当する場合、VGA表示又はQVGA表示のカラー表示装置100の明色(例えば白色)表示画素Saが撮像された上でG画素Ga及びB画素Baの光が抑制されている可能性が高いといえるため、S2では、このような場合に「二値データの明色領域が所定周期である」と判断されることになる。なお、「所定周期」は、完全に1つの値であってもよく、多少の誤差を含んだ幅を持った値であってもよい。
【0053】
本実施形態では、S2の判断処理を行う制御回路は、「領域検出手段」の一例に相当し、二値化手段によって生成された二値データにおいて、明色領域の周期が所定周期となる領域を検出しており、更に、所定比率領域検出手段の一例にも相当し、二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率(1:2)となる領域を検出している。更に、S2の判断処理を行う制御回路は「モード切替手段」の一例に相当し、補正データ生成手段によって補正データの生成を行う補正モードと、補正データの生成を行わない通常モードとに切り替えるように機能し、具体的には、補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合(領域検出手段によって明色領域が所定周期となる領域が検出される場合であって、且つ所定比率領域検出手段によって隣り合う明色領域及び暗色領域が所定比率(1:2)となる領域が検出される場合)に補正モードに切り替えるように機能している。
【0054】
S2において上述したような所定周期検出処理及び所定比率検出処理が行われたときに、「二値データの明色領域が所定周期である」と判断され、且つ「隣り合う明色領域及び暗色領域が所定比率(1:2)となる領域が検出された」と判断される場合には、S2でYesとなり、図6(B)のような二値データを補正する補正処理が行われる(S3)。
【0055】
S3の補正処理では、図6(B)のように得られた二値データにおいて各明色領域の一方側に幅L2の明色領域を加える補正を行う。即ち、S2でYesとなる場合、本来的には明色領域となるべきG画素分及びB画素分が抑制されて暗色領域と判断されているといえ、この抑制された部分の暗色領域の幅は、上述の所定周期T1の2/3であると考えられる。従って、S3の処理では、S1で得られた二値データの各明色領域の片側に対し、図6(C)のように、G画素分及びB画素分に相当する所定長さL1(上述の周期T1の2/3の長さ)の明色領域を追加した補正データを生成する。このようにして、図6(D)のような補正データが得られることとなる。
【0056】
なお、S3の処理を実行する制御回路10は、「補正データ生成手段」の一例に相当し、二値化手段によって生成された二値データにおける各明色領域に対し、光学フィルタ28によって表示光が抑制される画素要素(G画素Ga及びB画素Ba)に対応した所定幅L2の補正領域を追加して補正データを生成するように機能する。
【0057】
なお、S2において上述の所定周期及び所定比率のいずれか一方の条件を満たさないと判断される場合(即ち、二値データの明色領域が所定周期であると判断されない場合、又は隣り合う明色領域及び暗色領域が所定比率(1:2)となる領域が検出されない場合)には、S2にてNoに進む。この場合には、カラー表示装置100が撮像された可能性が低いためS3の補正処理は行われないことになる。
【0058】
S2又はS3の処理の後には、バーコードが存在するか否かを判断する処理が行われる。このバーコードの検出は、S1又はS3で得られた二値データ(S3の場合には補正データ)に基づいて公知の方法で行われる。そして、バーコードが検出される場合には、S4にてYesに進み、その検出されたバーコードについてのデコード処理が行われる(S5)。このデコード処理では、メモリ35に記憶された二値データに基づいて、各明色領域、各暗色領域のサイズ、位置が特定され、公知のデコード方法によって解読が行われる。このデコード処理の後には、デコード結果を液晶表示器46などに出力する処理が行われる(S7)。
【0059】
本実施形態では、制御回路40が「デコード手段」の一例に相当し、通常モードのときに二値データに基づいてデコード処理を行い、補正モードのときに補正データに基づいてデコード処理を行うように機能している。なお、本実施形態では、S2でYesとなる場合が補正モードであり、S2でNoとなる場合が通常モードである。
【0060】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、照明光源20からの照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタ28が設けられており、読取対象コードからの反射光を光学フィルタ28を介して受光センサ26によって受光する構成をなしている。このようにすることで、照明光が読取対象コードにて反射した反射光以外の外乱光を効果的に除去することができる。
一方、このような構成とすると、カラー表示装置100に表示される情報コードBを読取対象コードとした場合に、明色パターンを表示する領域の一部の画素要素(光学フィルタによって抑制される光を発する画素要素)からの光が光学フィルタ28によって抑制されてしまい、受光信号における明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。
これに対し、本発明では、受光センサ26における所定方向の受光波形に基づき、二値化手段によって所定方向における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成し、更に、補正データ生成手段により、その生成された二値データにおける各明色領域に対し、光学フィルタ28によって表示光が抑制される画素要素(G画素Ga、B画素Ba)に対応した所定幅L2の補正領域を追加して補正データを生成している。そして、その生成された補正データに基づいてデコード手段によりデコード処理を行っている。
このようにすると、光学フィルタ28によって抑制される画素要素(本来明色領域として検出されるべきであるのに光学フィルタでの光の抑制によって暗色領域として検出されてしまう画素要素)の幅を考慮してこれを補う補正データを生成することができる。そして、この補正データに基づいてデコード処理を行っているため、カラー表示装置特有の事情から生じる誤認識を抑えて正確に読み取ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、補正データ生成手段によって補正データの生成を行う補正モードと、補正データの生成を行わない通常モードとに切り替えるモード切替手段が設けられている。そして、デコード手段は、通常モードのときには二値データに基づいてデコード処理を行い、補正モードのときには補正データに基づいてデコード処理を行う構成をなしており、モード切替手段は、補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に補正モードに切り替えている。このようにすると、闇雲に補正データを生成するのではなく、補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に補正データを生成するため、補正データを生成する必要のない場合には、不要な補正処理を省略することでき、処理の効率化、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、二値化手段によって生成された二値データにおいて、明色領域の周期が所定周期となる領域を検出する領域検出手段が設けられている。そして、この領域検出手段によって所定周期となる領域が検出されることを条件として補正モードに切り替えている。カラー表示装置に表示される情報コードを撮像した場合には、カラー表示装置の画素要素の大きさ又は画素要素の配列に起因して、明色領域の周期が所定周期となる領域が検出される可能性が高まるため、このような領域の検出を条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置が撮像された可能性を適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では、照明光源20からの照明光を導出し、且つ読取対象コードからの反射光を取り込む読取口3が設けられており、カラー表示装置100を読取口3に接触させた状態で読取対象コードを読み取るように構成されている。このようにすると、コード撮像時に読取口3とカラー表示装置100との距離を一定の近距離に保つことができるため、明色領域の周期が画素要素に対応した周期であるか否かをより正確に判断し易くなる。
【0064】
また、本実施形態では、二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率(1:2)となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備えており、所定比率領域検出手段によって所定比率となる領域が検出されることを条件として補正モードに切り替えている。
図5のようにカラー表示装置100に表示される情報コードBを撮像した場合には、画素要素の規則的な配列、及び一部の画素要素からの光の抑制に起因して、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率(1:2)となる可能性が高まるため、このような所定比率の検出を条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置100が撮像された可能性を一層適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0065】
また、撮像対象となるカラー表示装置100は、R画素Ra、G画素Ga、B画素Baを所定の列方向に並べて構成される表示画素Saを、少なくとも列方向に複数配列した構成をなしている。本発明によれば、このように様々な場所で広く用いられるRGB方式のカラー表示装置100を読取対象物として当該カラー表示装置100に表示される情報コードBを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0066】
また、本実施形態では、照明光源20が、赤色の照明光を照射する構成をなし、光学フィルタ28は、G画素及びB画素から発せられる表示光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するように構成されている。このようにすると、図4のように物体に付された情報コードBを読取対象コードとして読み取る場合に、照明光が明色領域にて反射した光(赤色光)を光学フィルタにて選択的に透過させることができ、外乱光を良好に除去できる。一方、図5のようにカラー表示装置100に表示される情報コードBを読み取る場合、明色パターンを表示する領域においてG画素Ga、B画素Baからの光が光学フィルタ28によって抑制され、明色パターン部分の波形に暗色を示す波形成分がノイズとして含まれてしまうことが懸念される。しかしながら、本発明では、このようなG画素Ga、B画素Baからの光の抑制に起因するノイズを補正した補正データを生成することができ、このようなノイズ(G画素Ga、B画素Baに起因するノイズ)を適切に除去した上でデコードを良好に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態では、携帯端末(例えば携帯電話機等)に設けられたカラー表示装置100を読み取り対象としている。このようにすると、様々な場所で広く用いられる携帯端末を読取対象物として当該携帯端末に表示される情報コードを良好に読み取ることができ、ユーザの利便性を一層高めることができる。
【0068】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
上記実施形態では、S2の処理において、所定比率及び所定周期を両方検出していたが、いずれか一方のみであってもよい。例えば、S2の処理を変更し、上述の二値化回路33によって生成された二値データにおいて、上記実施形態と同様に、隣り合う明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率(1:2)となる領域を検出すると共に、この検出される所定比率領域が所定回数連続する場合にS2においてYesと判断する(補正モードに切り替える)ようにしてもよい。
カラー表示装置100でバーコード等の情報コードを表示する場合、コード周辺のマージンにより、明色(例えば白色)を表示する表示画素がある程度の広さで配置されることになり、当該マージン表示領域では光学フィルタ28によって抑制される画素要素(G画素Ga、B画素Ba)が一定間隔おきに多数含まれることになる。従って、所定比率領域(明色領域及び暗色領域の幅の比率が所定比率(1:2)となるが領域)が所定回数連続することを条件として補正モードに切り替えるようにすれば、カラー表示装置100においてバーコードなどの情報コードが撮像された可能性をより一層適切に判断して補正処理を行うことができる。
【0070】
上記実施形態では、受光波形の二値データにおいて明色領域が所定の周期となる部分を検出していたが、暗色領域が所定の周期となる部分を検出してもよい。或いは、明色領域が所定の長さとなる部分或いは暗色領域が所定の長さとなる部分を検出してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…光学的情報読取装置
3…読取口
20…照明光源(照明手段)
26…受光センサ
28…光学フィルタ
33…二値化回路(二値化手段)
40…制御回路(補正データ生成手段、デコード手段、モード切替手段、領域検出手段、所定比率領域検出手段)
100…カラー表示装置
B…バーコード(情報コード)
Sa…表示画素
Ra…R画素(画素要素)
Ga…G画素(画素要素)
Ba…B画素(画素要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の各画素要素を組み合わせた表示画素を複数配列してなるカラー表示装置に表示された情報コード及び物体に付された情報コードを読取対象コードとして読取可能な光学的情報読取装置であって、
前記読取対象コードに対して照明光を照射する照明手段と、
前記照明光に対応する所定周波数帯の光を通過させ、前記所定周波数帯以外の光の通過を抑制する光学フィルタと、
前記読取対象コードからの反射光を前記光学フィルタを介して受光し、前記反射光に応じた受光信号を出力する受光センサと、
前記受光センサにおける所定方向の受光波形に基づき、前記所定方向における明色領域及び暗色領域を特定可能な二値データを生成する二値化手段と、
前記二値化手段によって生成された前記二値データにおける各明色領域に対し、前記光学フィルタによって表示光が抑制される前記画素要素に対応した所定幅の補正領域を追加して補正データを生成する補正データ生成手段と、
前記補正データ生成手段によって生成された前記補正データに基づいてデコード処理を実行可能なデコード手段と、
を備えたことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記補正データ生成手段によって前記補正データの生成を行う補正モードと、前記補正データの生成を行わない通常モードとに切り替えるモード切替手段を備え、
前記デコード手段は、前記通常モードのときに前記二値データに基づいてデコード処理を行い、前記補正モードのときに前記補正データに基づいてデコード処理を行う構成をなしており、
前記モード切替手段は、前記補正モードの実行基準となる所定実行条件を満たす場合に前記補正モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記モード切替手段は、
前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、前記明色領域又は前記暗色領域の各長さが所定長さとなる領域、又は前記明色領域又は前記暗色領域の周期が所定周期となる領域を検出する領域検出手段を備え、
前記領域検出手段によって前記所定長さ又は前記所定周期となる領域が検出されることを条件として前記補正モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記照明手段からの前記照明光を導出し、且つ前記読取対象コードからの前記反射光を取り込む読取口を備え、
前記カラー表示装置を前記読取口に接触させた状態で前記読取対象コードを読み取ることを特徴とする請求項3に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記モード切替手段は、
前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う前記明色領域及び前記暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備え、
前記所定比率領域検出手段によって前記所定比率となる領域が検出されることを条件として前記補正モードに切り替えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記モード切替手段は、
前記二値化手段によって生成された二値データにおいて、隣り合う前記明色領域及び前記暗色領域の幅の比率が所定比率となる領域を検出する所定比率領域検出手段を備え、
前記所定比率領域検出手段によって検出される前記所定比率領域が所定回数連続する場合に前記補正モードに切り替えることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記カラー表示装置は、R画素、G画素、B画素を所定の列方向に並べて構成される前記表示画素を、少なくとも前記列方向に複数配列してなるものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記照明手段は、赤色の前記照明光を照射する構成をなし、
前記光学フィルタは、G画素及びB画素から発せられる前記表示光の通過を、R画素から発せられる光の通過よりも抑制するものであることを特徴とする請求項7に記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
前記カラー表示装置は、携帯端末に設けられた表示装置であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−197856(P2011−197856A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61980(P2010−61980)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】