光学窓部材
【課題】本発明は太陽電池を覆う光学窓部材に関し、安価に製造できる構造を実現することを課題とする。
【解決手段】光学窓部材20は、所定の細かさの凹凸のパターンが形成された上面22を有する透明な合成樹脂製の板21と、この透明樹脂板21の上面22に形成された光学薄膜30とよりなる、二層構造である。光学薄膜30は、TiO2の薄膜31とSiO2の薄膜32とが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31及び各SiO2の薄膜32の厚さは共に74nmであり、光学薄膜30総膜厚t2は666nmである。光学窓部材20を太陽電池を覆うように設けると、光学窓部材20は明るい色に見え、太陽電池は視認出来ない。
【解決手段】光学窓部材20は、所定の細かさの凹凸のパターンが形成された上面22を有する透明な合成樹脂製の板21と、この透明樹脂板21の上面22に形成された光学薄膜30とよりなる、二層構造である。光学薄膜30は、TiO2の薄膜31とSiO2の薄膜32とが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31及び各SiO2の薄膜32の厚さは共に74nmであり、光学薄膜30総膜厚t2は666nmである。光学窓部材20を太陽電池を覆うように設けると、光学窓部材20は明るい色に見え、太陽電池は視認出来ない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学窓部材に係り、特に、太陽電池の前側に配置されて使用される光学窓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の中には、電源として太陽電池を組み込んだものがある。例えば腕時計にあっては、太陽電池は文字板の裏面の箇所に組み込んである。この場合には、太陽電池の前側には、太陽電池が視認できないようにすると共に装飾効果を発揮する光学窓部材が設けられる。また、この光学窓部材は、太陽電池の発電効率をできるだけ低下させないものであることが必要である。
【0003】
従来の光学窓部材は、例えば、図1に示すように、ガラス基板1の上面に、太陽電池10からの反射光を拡散して上方への出射光量を減少させる遮蔽層2と、干渉フィルタ層3と、太陽電池10からの反射光を拡散させる拡散層4とを有する構成である。太陽電池10は、ガラス基板1の下面に、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法で成膜することによって形成してある。
【0004】
光学窓部材の上方から見た場合に、太陽電池は視認できず、また、太陽電池は効率良く発電される。
【特許文献1】国際公開番号 W095/12897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成の光学窓部材は、ガラス基板1の上面に、遮蔽層2と、干渉フィルタ層3と、拡散層4との三つの層をする構成であり、製造コストを低く抑えることが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決した光学窓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光の拡散を起こさせる所定の細かさの凹凸パターンが形成された面を有する透明な合成樹脂製の板と、
該透明合成樹脂製の板の凹凸パターンを有する面に形成してあり、これを透過する光及びここで反射する光の成分を決める光学薄膜とよりなる。
【発明の効果】
【0008】
板部材と光学薄膜とよりなる二層構造であるため、従来の三層構造のものに比較して安価に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図2は本発明の実施例1になる光学窓部材20を概略的に示す。図3は光学窓部材20を具体的に示す。各部の形状は拡大して示してある。図4は太陽電池51とこれを覆う図3に示す光学窓部材20とよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20は、透明な合成樹脂製の板(以下、透明樹脂板という)21と、この透明樹脂板21の上面の光学薄膜30とよりなる二層構造である。
【0011】
透明樹脂板21は、熱可塑性樹脂であるポリカーボネイト(PC)製の板であり、厚さt1は0.5mmである。なお、透明樹脂板21は、共に熱可塑性であるポリアクリル樹脂(PMMA),ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はABS樹脂製でもよい。
【0012】
透明樹脂板21は、光の拡散を起こさせるに足る所定の細かさの凹凸のパターンを有する上面22を有する。凹凸のパターンは、図3中拡大して示すように、例えば、断面形状が、頂角αが160度であり、高さhが4.5μmである三角形の突条部23が、ピッチpが60μmで、同心円状に規則的に並んでいる構成である。
【0013】
光学薄膜30は、屈折率が2.17であるTiO2(酸化チタン)の薄膜31と屈折率が1.47であるSiO2(二酸化ケイ素)の薄膜32とが交互に例えば9層積層してある構造、即ち、SiO2の屈折率よりも高い屈折率を有するTiO2の薄膜31と、TiO2の薄膜31よりも低い屈折率を有するSiO2の薄膜32とが交互に積層してある構造である。図4に示すように、各TiO2の薄膜31の厚さは74nmであり、各SiO2の薄膜32の厚さも74nmである。総膜厚t2は666nmである。光学薄膜30は、これを透過する光及びここで反射する光の波長の成分を決める。また、光学薄膜30の上面33が光学窓部材20の上面20aを構成している。この光学薄膜30はスパッタリング或いは真空蒸着で透明樹脂板21の上面22に成膜されたものであるので、光学薄膜30の上面33(光学窓部材20の上面20a)は、透明樹脂板21自身の上面22と同じ凹凸パターンである。
【0014】
40は、透明樹脂板21の上面22と光学薄膜30の下面との境界の面である。
【0015】
この光学窓部材20は、例えば、図5に示すように、太陽電池51を組み込んである腕時計50の文字板の場所に組み込んで使用される。光学窓部材20は太陽電池51を覆っている。
【0016】
太陽電池51は、アモルファスシリコンであり、濃紫色である。
【0017】
なお、太陽電池51は例えばプラズマCVD法で透明樹脂板21の下面に成膜することによって形成してもよい。
[光学窓部材20の各部の作用及び腕時計50の文字板の見え方]
次に、光学窓部材20が図5に示すように機器の一つとしての腕時計50の文字板の箇所に使用されている場合における、光学窓部材20の各部の作用及び腕時計50の文字板52の見え方について説明する。図2において、光を示す矢印の幅は、光の強さの程度を概略的に示す。
【0018】
図2中、60は外部から腕時計40の文字板に入射する光である。65は太陽電池51の表面で反射した反射光である。人の目70には、光60のうち光学薄膜30で反射し、拡散された光62と、太陽電池51の表面で反射した反射光65のうち光学窓部材20を透過し拡散された光67とが、入り、所定の色合いに見える。
【0019】
図6は、上記の構造の光学窓部材20を太陽電池51の代わりとしてのフィルムシリコン上に配置しなる構造体の解析モデル、即ち、図4に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が光の拡散を起こさせるに足る所定の細かさの凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、図5の下面側に太陽電池51が設けられた腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0020】
線Iは分光反射率を示す。約500〜650nmの波長の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、イエローに見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0021】
図6中、線IIは分光透過率を示す。波長が約500nmより短い光成分及び波長が約650nmより長い光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約500nmより短い光成分及び波長が約650nmより長い光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0022】
なお、上記の図6に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20を太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
【0023】
なお、透明樹脂板21の上面の凹凸のパターンは、突条部が同心円状に並んだ構造に限らず、直線状の突条部が平行に並んでいる構成でもよく、突起部が並んでいる構成でもよい。また、光学薄膜30の層の数は9に限らず、3〜数10(例えば40、50)でもよく、奇数に限らず偶数でもよい。光学薄膜30の総膜厚も666nmに限るものではない。
[光学窓部材20の製造方法]
次に、上記の光学窓部材20の製造方法について説明する。
【0024】
透明樹脂板21は、一例として、内面に微細なパターンを有する成形金型を準備することによって、射出成形によって製造する。
【0025】
透明樹脂板21は、別の例としては以下記載するようにナノインプリント技術によって製造する。即ち、図7(A)に示すように、微細形状金型80を準備し、且つ例えばポリカーボネイト(PC)製の円板90を準備し、微細形状金型80と円板90とをポリカーボネイト樹脂のガラス転移点を越える程度の温度に加熱し、同図(B)に示すように、微細形状金型80を円板90に適宜な圧力で且つ適宜な時間押し付け、その後に、同図(C)に示すように、冷却し、微細形状金型80と円板90とを剥離することによって、円板90に凹凸のパターンが転写されて形成され、透明樹脂板21が製造される。円板90はポリカーボネイトに限らず、他の熱可塑性樹脂であればよい。
【0026】
微細形状金型80は、例えば図7に示すフォトリソグラフ技術及び電気鋳造技術を使用した製造工程で製造される。先ず、図8(A)に示すように、基板100の上面にレジストを塗布してレジスト膜101を形成し、次いで、レジスト膜101を露光し(同図(B))、現像し(同図(C))、エッチングし(同図(D))、レジストを除去して(同図(E))、微細凹凸パターン110を形成してマスター(原盤)111を形成する。次いで、このマスター111に対して電気鋳造(同図(F))を行って複製品113を製造し(同図(G))、複製品113をマスター111から取り外し(同図(H))、最後に離型処理(同図(I))をして微細形状金型80が完成する。なお、離型処理は行わなくてもよい。また、上記のマスター(原盤)111を光造形技術によって形成することも可能である。
【0027】
光学薄膜30は、TiO2の薄膜31とSiO2の薄膜32とを共にスパッタリングによって成膜することによって形成される。
【0028】
よって、光学窓部材20は成形された透明樹脂板21の上面にスパッタリングによって成膜された光学薄膜30を有する二層の構造であり、従来のものに比較して製造コストは安価である。
[光学窓部材20の別の実施例]
次に、光学窓部材20の別の実施例について説明する。
【0029】
光学窓部材20は、以下に説明する光学薄膜30の変形例と透明樹脂板21の変形例とを適当に組み合わせることによって多種類形成可能である。
【0030】
光学薄膜30は光学フィルタとして機能し、その構造及び厚さ等を変えることによって、光学窓部材20の表面の色が変わる。光学薄膜30の層の数は9に限らず、3〜数10(例えば40、50)でもよく、奇数に限らず偶数でもよい。また、透明樹脂板21の上面22の凹凸のパターンの細かさを変えることによって光の拡散の状況が変化し光学窓部材20の表面の色の明るさ及びあざやかさが変わる。
[第2実施例]
図9(A)は第2実施例になる光学窓部材20Aを示す。図10は太陽電池51とこれを覆う図9(A)に示す光学窓部材20Aとよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20Aは、図3に示す光学窓部材20において、光学薄膜を変更したもの、即ち、透明樹脂板21の上面に光学薄膜30Aが成膜された構成である。光学薄膜30Aは、図9(B)及び図10に示すように、TiO2の薄膜31AとSiO2の薄膜32Aとが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31Aの厚さは104nmであり、各SiO2の薄膜32Aの厚さも104nmである。総膜厚t2Aは936nmである。
【0031】
図11は図10に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、下面側に太陽電池51が設けられた図5の腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0032】
線IBは分光反射率を示す。約400nmの波長の付近の光成分と約700nmの波長の付近の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、バイオレットに見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0033】
図11中、線IIAは分光透過率を示す。波長が約450〜650nmの光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約450〜650nmの光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0034】
なお、上記の図11に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20Aを太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
[第3実施例]
図12(A)は第3実施例になる光学窓部材20Bを示す。図13は太陽電池51とこれを覆う図9(A)に示す光学窓部材20Bとよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20Bは、図3に示す光学窓部材20において、光学薄膜を変更したもの、即ち、透明樹脂板21の上面に光学薄膜30Bが成膜された構成である。光学薄膜30Bは、図12(B)及び図13に示すように、TiO2の薄膜31BとSiO2の薄膜32Bとが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31Bの厚さは88nmであり、各SiO2の薄膜32Bの厚さも88nmである。総膜厚t2Bは792nmである。
【0035】
図14は図13に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、下面側に太陽電池51が設けられた図5の腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0036】
線IBは分光反射率を示す。波長が約600nmより長い波長の光成分と波長が約400nmより短い波長の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、ローズピンク(桃色に近い赤色)に見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0037】
図14中、線IIBは分光透過率を示す。波長が約400〜600nmの光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約400〜600nmの光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0038】
なお、上記の図14に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20Bを太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
[第4実施例]
図15(A)、(B)は第4実施例になる光学窓部材20Cを示す。光学窓部材20Cは、透明樹脂板21Cの上面22Cに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Cの上面22Cの凹凸のパターンは、断面形状が台形の突条部23Cが同心円状に規則的に並んでいる形状である。
【0039】
この光学窓部材20Cを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第5実施例]
図16(A)、(B)は第5実施例になる光学窓部材20Dを示す。光学窓部材20Dは、透明樹脂板21Dの上面22Dに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Dの上面22Dの凹凸のパターンは、断面形状が半円形の突条部23Dが同心円状に規則的に並んでいる形状である。
【0040】
この光学窓部材20Dを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第6実施例]
図17(A)、(B)は第6実施例になる光学窓部材20Eを示す。光学窓部材20Eは、透明樹脂板21Eの上面22Eに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Eの上面22Eの凹凸のパターンは、突条部23Eが同心円状に規則的に並んでいる形状であり、この突条部23Eの断面形状が、長さの相違する三つの長方形を長さが長いものから順に積み上げた場合の形状、即ち、台形の両側の斜辺が階段状である形状である構成である。
【0041】
この光学窓部材20Eを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第7実施例]
図18(A)、(B)は第7実施例になる光学窓部材20Fを示す。光学窓部材20Fは、透明樹脂板21Fの上面22Fに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Fの上面22Fの凹凸のパターンは、多数の突起部120が放射状に且つ同心円状に並んでいる構成である。各突起部120は、直径の相違する三つの円盤121,122,123を直径が長いものから順に積み上げた形状である。
【0042】
この光学窓部材20Fを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第8実施例]
図19(A)、(B)は第8実施例になる光学窓部材20Gを示す。光学窓部材20Gは、透明樹脂板21Gの上面22Gに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Gの上面22Gは、周方向に6つの部分に区画されており、各区画130a〜130fは、夫々、断面が三角形であって円弧状に延在している突条部131a等が同心円状に形成してあるパターンである。突条部131a等のピッチは全部の区画130a〜130fにおいて同じであり、p10である。突条部131a等の断面である三角形は区画毎に大きさが相違し、区画130aでは、高さがh10であり、区画130bの突条部131bの三角形断面は高さがh10よりも低いh11であり、区画130cの突条部131cの三角形断面は高さがh11よりも低いh12である。
【0043】
この光学窓部材20Gを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は区画130a〜130f毎に光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第9実施例]
図20(A)、(B)は第9実施例になる光学窓部材20Hを示す。光学窓部材20Hは、透明樹脂板21Hの上面22Hに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Hの上面22Hは、周方向に6つ区画140a〜140fに区画されている。区画140aは、図20(C)に示すように、断面が三角形であって高さが相違する円弧状の突条部141がピッチp20で並んでいるパターンである。区画140cは、図20(D)に示すように、断面が三角形であって高さが相違する円弧状の突条部141がピッチp20で並んでいるパターンである。図20(C)、(D)に示すように、高さが相違する断面が三角形の突条部の並びの順は、区画140aと区画140cとでは相違している。他の区画140b、140d〜140fも、高さが相違する三角形の円弧状の突条部がピッチp20で並んでいるパターンである。区画毎に、高さが相違する突条部の並びの順は相違している。即ち、凹凸のパターンは、区画毎に相違しており、且つ、同じ区間内でも場所によって相違している。
【0044】
この光学窓部材20Hを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、光学窓部材20の場合とは異なる色の調子で、且つ、区画140a〜140f毎に、且つ、各区画140a〜140f内でも場所毎に、特有な色合いに見える。
[光学窓部材20の別の使用態様]
光学窓部材20〜20Hは、図21に示すように、光学薄膜30等が形成された面が、太陽電池に向いた姿勢で使用することも可能である。この場合にも、太陽電池は視認されない。
[光学窓部材20の別の適用例]
上記の光学窓部材20〜20Gは、例えば、図22(A),(B)に示すように、液晶表示部201を備えた機器の一つとしてのカード200において、液晶表示のための電源として太陽電池202を組み込んだ場合に、太陽電池202を覆う光学窓部材203として適用が可能である。
【0045】
また、図23に示すように、機器の一つとしての携帯電話機210に電源として太陽電池212を組み込んだ場合に、太陽電池212を覆う光学窓部材213として適用が可能である。
【0046】
また、光学窓部材20は、発光する物体、例えばLEDの発光面を覆うように配置して使用することも可能である。この場合には、LEDの発光は視認できるけれども、LEDの輪郭は見えないように出来る。また、LEDが発光していないときでもLEDの輪郭が見えないように出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の一例の光学窓部材を示す図である。
【図2】本発明の実施例1になる光学窓部材を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施例1になる光学窓部材を示す図である。
【図4】太陽電池とこれを覆う図3の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図5】光学窓部材の適用例である腕時計を示す図である。
【図6】図4の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図7】ナノインプリント技術を利用して透明樹脂板の面に凹凸パターンを形成する工程を示す図である。
【図8】微細形状金型を製造する工程を示す図である。
【図9】本発明の実施例2になる光学窓部材を示す図である。
【図10】太陽電池とこれを覆う図9の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図11】図10の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図12】本発明の実施例3になる光学窓部材を示す図である。
【図13】太陽電池とこれを覆う図12の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図14】図13の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図15】本発明の実施例4になる光学窓部材を示す図である。
【図16】本発明の実施例5になる光学窓部材を示す図である。
【図17】本発明の実施例6になる光学窓部材を示す図である。
【図18】本発明の実施例7になる光学窓部材を示す図である。
【図19】本発明の実施例8になる光学窓部材を示す図である。
【図20】本発明の実施例9になる光学窓部材を示す図である。
【図21】本発明の実施例1になる光学窓部材の別の使用態様を示す図である。
【図22】本発明の光学窓部材が適用されたカードを示す図である。
【図23】本発明の光学窓部材が適用された携帯電話機を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
20、20A〜20H、203,213 光学窓部材
21 透明樹脂板
22 凹凸のパターンを有する上面
23 突条部
30、30A,30B 光学薄膜
31 TiO2の薄膜
32 SiO2の薄膜
50 腕時計
51、202、212 太陽電池
200 カード
210 携帯電話機
【技術分野】
【0001】
本発明は光学窓部材に係り、特に、太陽電池の前側に配置されて使用される光学窓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の中には、電源として太陽電池を組み込んだものがある。例えば腕時計にあっては、太陽電池は文字板の裏面の箇所に組み込んである。この場合には、太陽電池の前側には、太陽電池が視認できないようにすると共に装飾効果を発揮する光学窓部材が設けられる。また、この光学窓部材は、太陽電池の発電効率をできるだけ低下させないものであることが必要である。
【0003】
従来の光学窓部材は、例えば、図1に示すように、ガラス基板1の上面に、太陽電池10からの反射光を拡散して上方への出射光量を減少させる遮蔽層2と、干渉フィルタ層3と、太陽電池10からの反射光を拡散させる拡散層4とを有する構成である。太陽電池10は、ガラス基板1の下面に、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法で成膜することによって形成してある。
【0004】
光学窓部材の上方から見た場合に、太陽電池は視認できず、また、太陽電池は効率良く発電される。
【特許文献1】国際公開番号 W095/12897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成の光学窓部材は、ガラス基板1の上面に、遮蔽層2と、干渉フィルタ層3と、拡散層4との三つの層をする構成であり、製造コストを低く抑えることが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決した光学窓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光の拡散を起こさせる所定の細かさの凹凸パターンが形成された面を有する透明な合成樹脂製の板と、
該透明合成樹脂製の板の凹凸パターンを有する面に形成してあり、これを透過する光及びここで反射する光の成分を決める光学薄膜とよりなる。
【発明の効果】
【0008】
板部材と光学薄膜とよりなる二層構造であるため、従来の三層構造のものに比較して安価に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図2は本発明の実施例1になる光学窓部材20を概略的に示す。図3は光学窓部材20を具体的に示す。各部の形状は拡大して示してある。図4は太陽電池51とこれを覆う図3に示す光学窓部材20とよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20は、透明な合成樹脂製の板(以下、透明樹脂板という)21と、この透明樹脂板21の上面の光学薄膜30とよりなる二層構造である。
【0011】
透明樹脂板21は、熱可塑性樹脂であるポリカーボネイト(PC)製の板であり、厚さt1は0.5mmである。なお、透明樹脂板21は、共に熱可塑性であるポリアクリル樹脂(PMMA),ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はABS樹脂製でもよい。
【0012】
透明樹脂板21は、光の拡散を起こさせるに足る所定の細かさの凹凸のパターンを有する上面22を有する。凹凸のパターンは、図3中拡大して示すように、例えば、断面形状が、頂角αが160度であり、高さhが4.5μmである三角形の突条部23が、ピッチpが60μmで、同心円状に規則的に並んでいる構成である。
【0013】
光学薄膜30は、屈折率が2.17であるTiO2(酸化チタン)の薄膜31と屈折率が1.47であるSiO2(二酸化ケイ素)の薄膜32とが交互に例えば9層積層してある構造、即ち、SiO2の屈折率よりも高い屈折率を有するTiO2の薄膜31と、TiO2の薄膜31よりも低い屈折率を有するSiO2の薄膜32とが交互に積層してある構造である。図4に示すように、各TiO2の薄膜31の厚さは74nmであり、各SiO2の薄膜32の厚さも74nmである。総膜厚t2は666nmである。光学薄膜30は、これを透過する光及びここで反射する光の波長の成分を決める。また、光学薄膜30の上面33が光学窓部材20の上面20aを構成している。この光学薄膜30はスパッタリング或いは真空蒸着で透明樹脂板21の上面22に成膜されたものであるので、光学薄膜30の上面33(光学窓部材20の上面20a)は、透明樹脂板21自身の上面22と同じ凹凸パターンである。
【0014】
40は、透明樹脂板21の上面22と光学薄膜30の下面との境界の面である。
【0015】
この光学窓部材20は、例えば、図5に示すように、太陽電池51を組み込んである腕時計50の文字板の場所に組み込んで使用される。光学窓部材20は太陽電池51を覆っている。
【0016】
太陽電池51は、アモルファスシリコンであり、濃紫色である。
【0017】
なお、太陽電池51は例えばプラズマCVD法で透明樹脂板21の下面に成膜することによって形成してもよい。
[光学窓部材20の各部の作用及び腕時計50の文字板の見え方]
次に、光学窓部材20が図5に示すように機器の一つとしての腕時計50の文字板の箇所に使用されている場合における、光学窓部材20の各部の作用及び腕時計50の文字板52の見え方について説明する。図2において、光を示す矢印の幅は、光の強さの程度を概略的に示す。
【0018】
図2中、60は外部から腕時計40の文字板に入射する光である。65は太陽電池51の表面で反射した反射光である。人の目70には、光60のうち光学薄膜30で反射し、拡散された光62と、太陽電池51の表面で反射した反射光65のうち光学窓部材20を透過し拡散された光67とが、入り、所定の色合いに見える。
【0019】
図6は、上記の構造の光学窓部材20を太陽電池51の代わりとしてのフィルムシリコン上に配置しなる構造体の解析モデル、即ち、図4に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が光の拡散を起こさせるに足る所定の細かさの凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、図5の下面側に太陽電池51が設けられた腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0020】
線Iは分光反射率を示す。約500〜650nmの波長の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、イエローに見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0021】
図6中、線IIは分光透過率を示す。波長が約500nmより短い光成分及び波長が約650nmより長い光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約500nmより短い光成分及び波長が約650nmより長い光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0022】
なお、上記の図6に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20を太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
【0023】
なお、透明樹脂板21の上面の凹凸のパターンは、突条部が同心円状に並んだ構造に限らず、直線状の突条部が平行に並んでいる構成でもよく、突起部が並んでいる構成でもよい。また、光学薄膜30の層の数は9に限らず、3〜数10(例えば40、50)でもよく、奇数に限らず偶数でもよい。光学薄膜30の総膜厚も666nmに限るものではない。
[光学窓部材20の製造方法]
次に、上記の光学窓部材20の製造方法について説明する。
【0024】
透明樹脂板21は、一例として、内面に微細なパターンを有する成形金型を準備することによって、射出成形によって製造する。
【0025】
透明樹脂板21は、別の例としては以下記載するようにナノインプリント技術によって製造する。即ち、図7(A)に示すように、微細形状金型80を準備し、且つ例えばポリカーボネイト(PC)製の円板90を準備し、微細形状金型80と円板90とをポリカーボネイト樹脂のガラス転移点を越える程度の温度に加熱し、同図(B)に示すように、微細形状金型80を円板90に適宜な圧力で且つ適宜な時間押し付け、その後に、同図(C)に示すように、冷却し、微細形状金型80と円板90とを剥離することによって、円板90に凹凸のパターンが転写されて形成され、透明樹脂板21が製造される。円板90はポリカーボネイトに限らず、他の熱可塑性樹脂であればよい。
【0026】
微細形状金型80は、例えば図7に示すフォトリソグラフ技術及び電気鋳造技術を使用した製造工程で製造される。先ず、図8(A)に示すように、基板100の上面にレジストを塗布してレジスト膜101を形成し、次いで、レジスト膜101を露光し(同図(B))、現像し(同図(C))、エッチングし(同図(D))、レジストを除去して(同図(E))、微細凹凸パターン110を形成してマスター(原盤)111を形成する。次いで、このマスター111に対して電気鋳造(同図(F))を行って複製品113を製造し(同図(G))、複製品113をマスター111から取り外し(同図(H))、最後に離型処理(同図(I))をして微細形状金型80が完成する。なお、離型処理は行わなくてもよい。また、上記のマスター(原盤)111を光造形技術によって形成することも可能である。
【0027】
光学薄膜30は、TiO2の薄膜31とSiO2の薄膜32とを共にスパッタリングによって成膜することによって形成される。
【0028】
よって、光学窓部材20は成形された透明樹脂板21の上面にスパッタリングによって成膜された光学薄膜30を有する二層の構造であり、従来のものに比較して製造コストは安価である。
[光学窓部材20の別の実施例]
次に、光学窓部材20の別の実施例について説明する。
【0029】
光学窓部材20は、以下に説明する光学薄膜30の変形例と透明樹脂板21の変形例とを適当に組み合わせることによって多種類形成可能である。
【0030】
光学薄膜30は光学フィルタとして機能し、その構造及び厚さ等を変えることによって、光学窓部材20の表面の色が変わる。光学薄膜30の層の数は9に限らず、3〜数10(例えば40、50)でもよく、奇数に限らず偶数でもよい。また、透明樹脂板21の上面22の凹凸のパターンの細かさを変えることによって光の拡散の状況が変化し光学窓部材20の表面の色の明るさ及びあざやかさが変わる。
[第2実施例]
図9(A)は第2実施例になる光学窓部材20Aを示す。図10は太陽電池51とこれを覆う図9(A)に示す光学窓部材20Aとよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20Aは、図3に示す光学窓部材20において、光学薄膜を変更したもの、即ち、透明樹脂板21の上面に光学薄膜30Aが成膜された構成である。光学薄膜30Aは、図9(B)及び図10に示すように、TiO2の薄膜31AとSiO2の薄膜32Aとが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31Aの厚さは104nmであり、各SiO2の薄膜32Aの厚さも104nmである。総膜厚t2Aは936nmである。
【0031】
図11は図10に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、下面側に太陽電池51が設けられた図5の腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0032】
線IBは分光反射率を示す。約400nmの波長の付近の光成分と約700nmの波長の付近の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、バイオレットに見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0033】
図11中、線IIAは分光透過率を示す。波長が約450〜650nmの光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約450〜650nmの光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0034】
なお、上記の図11に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20Aを太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
[第3実施例]
図12(A)は第3実施例になる光学窓部材20Bを示す。図13は太陽電池51とこれを覆う図9(A)に示す光学窓部材20Bとよりなる構造体の解析モデルを示す。光学窓部材20Bは、図3に示す光学窓部材20において、光学薄膜を変更したもの、即ち、透明樹脂板21の上面に光学薄膜30Bが成膜された構成である。光学薄膜30Bは、図12(B)及び図13に示すように、TiO2の薄膜31BとSiO2の薄膜32Bとが交互に9層積層してある構造である。各TiO2の薄膜31Bの厚さは88nmであり、各SiO2の薄膜32Bの厚さも88nmである。総膜厚t2Bは792nmである。
【0035】
図14は図13に示す解析モデルの分光反射率及び分光透過率の特性を示す。この解析モデルは、表面が凹凸のパターンとなっていない構成を除いては、下面側に太陽電池51が設けられた図5の腕時計50の文字板52と実質的に同じである。また、この分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果である。
【0036】
線IBは分光反射率を示す。波長が約600nmより長い波長の光成分と波長が約400nmより短い波長の光成分が強く反射されている。よって、上記の構造体、即ち、腕時計50の文字板52は、人の目70には、ローズピンク(桃色に近い赤色)に見える。また、人の目70には光学窓部材20の表面で拡散した光が届き、太陽電池51は視認できない。よって、光学窓部材20は装飾効果を発揮する。
【0037】
図14中、線IIBは分光透過率を示す。波長が約400〜600nmの光成分の透過率が高い。よって、太陽電池51には、波長が約400〜600nmの光成分が届き、太陽電池51は良好に発電する。
【0038】
なお、上記の図14に示す分光反射率及び分光透過率の特性はシミュレーションによる結果であるけれども、本発明者は実際に製造した光学窓部材20Bを太陽電池51に適用した場合にも、シミュレーションで得た結果と同様の色味の結果を得たことを確認した。
[第4実施例]
図15(A)、(B)は第4実施例になる光学窓部材20Cを示す。光学窓部材20Cは、透明樹脂板21Cの上面22Cに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Cの上面22Cの凹凸のパターンは、断面形状が台形の突条部23Cが同心円状に規則的に並んでいる形状である。
【0039】
この光学窓部材20Cを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第5実施例]
図16(A)、(B)は第5実施例になる光学窓部材20Dを示す。光学窓部材20Dは、透明樹脂板21Dの上面22Dに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Dの上面22Dの凹凸のパターンは、断面形状が半円形の突条部23Dが同心円状に規則的に並んでいる形状である。
【0040】
この光学窓部材20Dを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第6実施例]
図17(A)、(B)は第6実施例になる光学窓部材20Eを示す。光学窓部材20Eは、透明樹脂板21Eの上面22Eに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Eの上面22Eの凹凸のパターンは、突条部23Eが同心円状に規則的に並んでいる形状であり、この突条部23Eの断面形状が、長さの相違する三つの長方形を長さが長いものから順に積み上げた場合の形状、即ち、台形の両側の斜辺が階段状である形状である構成である。
【0041】
この光学窓部材20Eを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第7実施例]
図18(A)、(B)は第7実施例になる光学窓部材20Fを示す。光学窓部材20Fは、透明樹脂板21Fの上面22Fに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Fの上面22Fの凹凸のパターンは、多数の突起部120が放射状に且つ同心円状に並んでいる構成である。各突起部120は、直径の相違する三つの円盤121,122,123を直径が長いものから順に積み上げた形状である。
【0042】
この光学窓部材20Fを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第8実施例]
図19(A)、(B)は第8実施例になる光学窓部材20Gを示す。光学窓部材20Gは、透明樹脂板21Gの上面22Gに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Gの上面22Gは、周方向に6つの部分に区画されており、各区画130a〜130fは、夫々、断面が三角形であって円弧状に延在している突条部131a等が同心円状に形成してあるパターンである。突条部131a等のピッチは全部の区画130a〜130fにおいて同じであり、p10である。突条部131a等の断面である三角形は区画毎に大きさが相違し、区画130aでは、高さがh10であり、区画130bの突条部131bの三角形断面は高さがh10よりも低いh11であり、区画130cの突条部131cの三角形断面は高さがh11よりも低いh12である。
【0043】
この光学窓部材20Gを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、且つ、彩度、輝きの具合等は区画130a〜130f毎に光学窓部材20の場合とは異なって見える。
[第9実施例]
図20(A)、(B)は第9実施例になる光学窓部材20Hを示す。光学窓部材20Hは、透明樹脂板21Hの上面22Hに、前記の光学薄膜30或いは光学薄膜30A,30B等が形成してある構成である。透明樹脂板21Hの上面22Hは、周方向に6つ区画140a〜140fに区画されている。区画140aは、図20(C)に示すように、断面が三角形であって高さが相違する円弧状の突条部141がピッチp20で並んでいるパターンである。区画140cは、図20(D)に示すように、断面が三角形であって高さが相違する円弧状の突条部141がピッチp20で並んでいるパターンである。図20(C)、(D)に示すように、高さが相違する断面が三角形の突条部の並びの順は、区画140aと区画140cとでは相違している。他の区画140b、140d〜140fも、高さが相違する三角形の円弧状の突条部がピッチp20で並んでいるパターンである。区画毎に、高さが相違する突条部の並びの順は相違している。即ち、凹凸のパターンは、区画毎に相違しており、且つ、同じ区間内でも場所によって相違している。
【0044】
この光学窓部材20Hを使用した場合には、太陽電池は視認されず、腕時計の文字板は、光学薄膜30が形成してある場合にはイエロー、光学薄膜30Aが形成してある場合にはバイオレット、光学薄膜30Bが形成してある場合にはローズピンクであって、光学窓部材20の場合とは異なる色の調子で、且つ、区画140a〜140f毎に、且つ、各区画140a〜140f内でも場所毎に、特有な色合いに見える。
[光学窓部材20の別の使用態様]
光学窓部材20〜20Hは、図21に示すように、光学薄膜30等が形成された面が、太陽電池に向いた姿勢で使用することも可能である。この場合にも、太陽電池は視認されない。
[光学窓部材20の別の適用例]
上記の光学窓部材20〜20Gは、例えば、図22(A),(B)に示すように、液晶表示部201を備えた機器の一つとしてのカード200において、液晶表示のための電源として太陽電池202を組み込んだ場合に、太陽電池202を覆う光学窓部材203として適用が可能である。
【0045】
また、図23に示すように、機器の一つとしての携帯電話機210に電源として太陽電池212を組み込んだ場合に、太陽電池212を覆う光学窓部材213として適用が可能である。
【0046】
また、光学窓部材20は、発光する物体、例えばLEDの発光面を覆うように配置して使用することも可能である。この場合には、LEDの発光は視認できるけれども、LEDの輪郭は見えないように出来る。また、LEDが発光していないときでもLEDの輪郭が見えないように出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の一例の光学窓部材を示す図である。
【図2】本発明の実施例1になる光学窓部材を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施例1になる光学窓部材を示す図である。
【図4】太陽電池とこれを覆う図3の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図5】光学窓部材の適用例である腕時計を示す図である。
【図6】図4の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図7】ナノインプリント技術を利用して透明樹脂板の面に凹凸パターンを形成する工程を示す図である。
【図8】微細形状金型を製造する工程を示す図である。
【図9】本発明の実施例2になる光学窓部材を示す図である。
【図10】太陽電池とこれを覆う図9の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図11】図10の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図12】本発明の実施例3になる光学窓部材を示す図である。
【図13】太陽電池とこれを覆う図12の光学窓部材よりなる構造体の解析モデルを示す図である。
【図14】図13の解析モデルの分光反射率及び分光透過率を示す図である。
【図15】本発明の実施例4になる光学窓部材を示す図である。
【図16】本発明の実施例5になる光学窓部材を示す図である。
【図17】本発明の実施例6になる光学窓部材を示す図である。
【図18】本発明の実施例7になる光学窓部材を示す図である。
【図19】本発明の実施例8になる光学窓部材を示す図である。
【図20】本発明の実施例9になる光学窓部材を示す図である。
【図21】本発明の実施例1になる光学窓部材の別の使用態様を示す図である。
【図22】本発明の光学窓部材が適用されたカードを示す図である。
【図23】本発明の光学窓部材が適用された携帯電話機を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
20、20A〜20H、203,213 光学窓部材
21 透明樹脂板
22 凹凸のパターンを有する上面
23 突条部
30、30A,30B 光学薄膜
31 TiO2の薄膜
32 SiO2の薄膜
50 腕時計
51、202、212 太陽電池
200 カード
210 携帯電話機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の拡散を起こさせる所定の細かさの凹凸パターンが形成された面を有する透明な合成樹脂製の板と、
該透明合成樹脂製の板の凹凸パターンを有する面に形成してあり、これを透過する光及びここで反射する光の成分を決める光学薄膜とよりなる光学窓部材。
【請求項2】
前記透明合成樹脂製の板は、前記面が複数の区画を有し、前記凹凸のパターンが、区画毎に相違する請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項3】
前記凹凸パターンは、断面が三角形、台形、半円形、又は台形の両側の斜辺が階段状である形状である突条部が複数並んだ構成である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項4】
前記凹凸パターンは、直径の相違する複数の円盤を直径が長いものから順に積み上げた形状である突起部が複数並んだ構成である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項5】
前記光学薄膜は、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜とが交互に積層してある構造である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の光学窓部材を、太陽電池を覆うように設けてなる機器。
【請求項1】
光の拡散を起こさせる所定の細かさの凹凸パターンが形成された面を有する透明な合成樹脂製の板と、
該透明合成樹脂製の板の凹凸パターンを有する面に形成してあり、これを透過する光及びここで反射する光の成分を決める光学薄膜とよりなる光学窓部材。
【請求項2】
前記透明合成樹脂製の板は、前記面が複数の区画を有し、前記凹凸のパターンが、区画毎に相違する請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項3】
前記凹凸パターンは、断面が三角形、台形、半円形、又は台形の両側の斜辺が階段状である形状である突条部が複数並んだ構成である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項4】
前記凹凸パターンは、直径の相違する複数の円盤を直径が長いものから順に積み上げた形状である突起部が複数並んだ構成である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項5】
前記光学薄膜は、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜とが交互に積層してある構造である請求項1に記載の光学窓部材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の光学窓部材を、太陽電池を覆うように設けてなる機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図15】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図15】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−203526(P2008−203526A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39479(P2007−39479)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]