光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法
本発明は、光学系、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法であって、光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を設定する少なくとも1つの偏光状態発生器(130、230、330)と、光学系から出る放射線の出射偏光状態を測定するよう構成された偏光状態検出器(140、240、340)とを備え、光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも10°の光ビームの角度スペクトルにわたって実質的に一定であるよう設計される構成体及び方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2010年1月28日付けの独国特許出願第10 2010 001 336.6号の優先権を主張する。当該出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの生産に使用される。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影対物レンズを有する投影露光装置と称するもので実行される。その場合、照明系により照明されたマスク(=レチクル)の像が、投影対物レンズにより、感光層(フォトレジスト)でコーティングされ投影対物レンズの像面に配置されている基板(例えば、シリコンウェーハ)に投影されることで、マスク構造を基板上の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
特に高開口数を有する、例えば上述のマイクロリソグラフィ投影露光装置等の高分解能結像系では、動作時に結像系を通過する放射線の偏光状態に対する結像系の影響をもはや無視できないことが知られている。これは、偏光影響効果(例えば、ホルダコンポーネントにより例えばレンズ又はミラー等の光学コンポーネントの材料に引き起こされる応力複屈折、誘電体層の偏光影響効果等)による結像コントラストの変化に起因するものとされる。
【0005】
したがって、特に高開口のこのような結像系の偏光特性を可能な限り確実に決定することが望ましく、これは、一方では偏光依存性結像品質に関する適切な結論を出すためであり、他方では偏光特性の操作に適している可能性のある措置を取ることができるようにするためである。
【0006】
特許文献1は、特に、光学結像系による光放射線の偏光状態の影響を決定する方法及び装置であって、所定の入射偏光状態を結像系の物体面に与え、結像系から出る放射線の出射偏光状態を結像系の予め決定可能な瞳領域内で瞳分解関係で測定する方法及び装置を開示している。結像系は、例えば、約248nm又は193nmの波長域用に設計された投影露光装置の投影対物レンズであり得る。
【0007】
ミラーは、EUV領域用に設計された投影対物レンズにおける、すなわち例えば約13nm又は約7nmの波長での、結像プロセスのための光学コンポーネントとして使用されるが、これは、適当な半透明屈折材料(translucent refractive materials)が利用可能でないことによる。その場合、偏光特性の上述の特性決定に関連して生じる問題は、反射光学コンポーネントを使用した上述のような測定構造の実施が、必要な構造空間に関して大きな問題につながり、実行不可能にまでなり得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,286,245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景を念頭に置き、本発明の目的は、光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法であって、EUVの使用波長でも、また同時に小型構造で、偏光特性の確実な特性決定を可能にする構成体及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項1の特徴に従った構成体及び請求項21の特徴に従った方法により達成される。
【0011】
光学系、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する構成体は、
光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を設定する少なくとも1つの偏光状態発生器と、
光学系から出る放射線の出射偏光状態を測定するよう構成された偏光状態検出器と
を備え、光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも10°の上記光ビームの角度スペクトルにわたって実質的に一定であるよう設計される。
【0012】
入射光ビームに対する偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器の「偏光光学作用」が一定となる基準は、偏光状態発生器又は偏光状態検出器が上記角度スペクトルにわたって同じ偏光状態をもたらすことを示し、この同じ偏光状態はさらに、偏光状態発生器又は偏光状態検出器に入射する光のいわゆるIPS値(=「好適な状態の強度」)が一定である場合に、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器から出る光に関して上記角度スペクトルにわたってIPS値が一定であることにより定義される。その点で、「実質的に一定」という表現は、最高10%、特に最高5%のIPS値の変動を包含することも意図される。さらに、所望の偏光状態は、必ずしも直線偏光ではなく、任意の他の偏光状態、例えば楕円偏光又は円偏光でもあり得る。
【0013】
本発明による構成体により、本発明は、偏光状態の特性決定に使用されるコンポーネントである偏光状態発生器及び偏光状態検出器を、EUV領域の使用波長において透過モードで動作するようそれぞれ設計するという概念を特に追求する。別の手法によれば、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する。そのようにすると、この場合も特に約13.5nmの使用波長を有する光学系において、比較的複雑なビーム経路及びより複雑で高価なアクチュエータを備える反射偏光光学コンポーネントが回避されるので、格段に小型の構造が達成される。
【0014】
その点で特に留意すべきは、DUV波長域で、すなわち例えば約248nm又は約193nmの波長で存在する、偏光光学コンポーネントを平行ビームの幾何学的形状(すなわち、各コンポーネントを通過するビームの相互に平行なビーム部分を有する)で動作させることができるという選択肢が、本発明に従って包含されるEUV領域では与えられなくなることであり、これは、レンズ系の形態のDUV領域で使用される適当な光学コンポーネントに、発散又は集束ビーム経路を平行ビーム経路に変えるために現在利用可能なものがないからである。
【0015】
本発明による構成のさらに別の利点は、透過モードで動作するコンポーネントをビーム経路内のそれぞれ適切な位置に比較的容易に組み込むことができ、その際にビーム経路の大幅な変更がそのために必要とならないことである。
【0016】
さらに、本発明によれば、上述の発散又は集束ビーム経路にもかかわらず、光学系から出る放射線の出射偏光状態の同時又は並行測定を実施することが可能である。これは、光学系の射出瞳が「一度に」測定される、すなわち、ビームをより大きな開口角で各偏光光学コンポーネントに同時に通過させるか又は例えばCCDカメラ等の構成体の端にある検出器要素により検出させることを意味する。これは、射出瞳の走査が不要である限り有利であるが、射出瞳の走査は、EUVの偏光特性に関する従来の測定動作では普通であり、また比較的狭い平行ビームを角度範囲全体にわたって連続して「変位」させて連続個別測定を行わなければならない。さらに、位置決め問題及びドリフト誤差の回避に関してさらなる利点を与える同時測定から、時間的利点が得られる。
【0017】
本発明の有利な用法は、投影対物レンズの偏光特性の測定であるが、本発明はこれに限定されない。正確には、本発明に従って偏光特性が特性決定される「光学系」という用語は、任意の他の光学系、及び特に例えばミラー等の個別光学素子も包含する。
【0018】
一実施形態では、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも15°、特に少なくとも20°の上記光ビームの角度スペクトルにわたって、さらに特に上記光ビームの角度スペクトル全体にわたって実質的に一定であるよう設計される。
【0019】
一実施形態では、偏光状態発生器は、出射偏光状態を瞳分解測定するよう構成される。その点で、瞳分解能に関して実施される値は、瞳半径にわたって、例えば少なくとも30画素、特に少なくとも40画素、さらに特に少なくとも50画素であり得る。
【0020】
一実施形態では、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、回転可能な偏光子を有する。さらに、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、回転可能なリターダを有し得る。
【0021】
一実施形態では、偏光子及び/又はリターダは、複数の個別層を有する少なくとも1つの多層系を有する。好ましくはその点で、多層系は、少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有する。本発明によれば、これは、特に多層系の厚さが変化することにより実施され得る。さらに別の実施形態では、複数の個別層は、少なくとも領域的に湾曲した基板に配置することもできる。
【0022】
一実施形態では、複数の個別層は、自立若しくは無基板関係で、又は最大400nm、好ましくは最大100nm、さらに好ましくは最大50nmの厚さの基板上に配置されることで、十分に大きな割合の透過光を得る。考慮すべき適当な基板材料は、特に比較的低い透過率のもの、例えばケイ素(Si)、石英ガラス(=溶融石英、SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、ポリマー、石英(SiO2)、ジルコニウム(Zr)、ダイヤモンド、ニオブ(Nb)、及びモリブデン(Mo)である。
【0023】
一実施形態では、偏光子及び/又はリターダは、多層系をそれぞれ設けられた複数の基板を有することもできる。その点で、これら基板の少なくとも2つ(特に、同じくこれら基板の全部)を相互に対して傾斜配置して、多層系をそれぞれ設けられた基板からなる構成体に、角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性を提供することができる。
【0024】
一実施形態では、各偏光子は、少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらに特に少なくとも99%の、偏光子から出る放射線の直線出射偏光度をもたらす。その点で、「直線出射偏光度」という表現は、光の全強度に対する直線偏光成分の強度の比を示すために使用され、この比は各偏光子から出る光に当てはまる。
【0025】
一実施形態では、本構成体はさらに、ここでも所定の波長帯域を(測定)構成体の光源の波長スペクトルから濾波するよう構成されることが好ましい波長フィルタを有する。これは、EUV用に設計された投影露光装置において、投影対物レンズの透過帯域幅が約13.5±0.3nmで比較的大きく、照明系の光源として使用されるプラズマ光源の帯域幅も下回るという点で有利である。
【0026】
これらの比較的広帯域の波長域の積分を伴う測定は、測定動作で使用されるプラズマ光源のスペクトルと実際のリソグラフィ手順で使用されるプラズマ光源のスペクトルとが同一でない場合、投影対物レンズの実際の動作特性に容易に適用することができなかった。一方、波長フィルタ(十分に狭い帯域であり、例えば、投影対物レンズの透過帯域幅の最大でも1/20の帯域幅を有する)を使用することにより、各入射スペクトルに関する投影対物レンズの偏光特性を予測することができるように波長分解測定を行うことが可能である。
【0027】
一実施形態では、光学系は、少なくとも0.3、特に少なくとも0.5、さらに特に少なくとも0.7の開口数で設計される。開口数を増加させることで、本発明が特に有利なのは、射出瞳で生じる大きな開口角に関する問題をこのとき克服することが特に有用だからである。
【0028】
本発明はさらに、EUVで動作するよう設計された投影対物レンズと当該投影対物レンズの偏光特性を特性決定する構成体とを備えるEUVリソグラフィ用の装置であって、当該構成体が光学系の偏光特性を特性決定する上述の構成体のように設計される装置に関する。
【0029】
さらに、本発明は、光学系の、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する方法であって、
光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を偏光状態発生器で設定するステップと、
光学系から出る放射線の出射偏光状態を偏光状態検出器で測定するステップと
を含み、光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する方法に関する。
【0030】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項に含まれる。本発明を、添付図面を参照して例として好ましい実施形態を用いて以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の本発明による偏光特性を特性決定する構成体の構造を示す概略図である。
【図2】図1に関して簡略化した本発明のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図3】図1に関して簡略化した本発明のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図4a】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図4b】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図4c】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図5a】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図5b】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図6】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図7】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図8】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図9】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図10】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図11】本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、最初に、本発明による構成体を使用する可能な測定構造の概略図を示す。この構成体は、投影対物レンズ120の偏光特性を特性決定する役割を果たし、投影対物レンズ120は、EUV領域で動作するよう設計され、同じくEUV用に設計された照明系110と共にマイクロリソグラフィ投影露光装置を形成する。
【0033】
図1に示す測定構造を使用して実施される方法は、DUV領域の波長(例えば、約193nm又は約248nm)に関して米国特許第7,286,245号明細書からそれ自体が既知である。しかしながら、本願の主題は、EUV領域での、すなわち15nm未満の波長での上記方法の使用であり、後述するようにその使用で生じる問題を偏光光学コンポーネントの適当な設計構成により考慮に入れたものである。より正確には、本発明による方法は、波長スペクトルに関しても角度スペクトルに関しても広帯域偏光光学コンポーネントの使用により区別される。
【0034】
その点で、本発明は特に、EUV領域での使用にもかかわらず透過モードで偏光光学コンポーネントを使用することで、比較的なビーム経路及び同じくより複雑で高価なアクチュエータを備える反射偏光光学コンポーネントを回避するという概念を追求する。
【0035】
図1に示すように、本発明による構成体は、光伝播方向で照明系110の下流に偏光状態発生器130を含み、偏光状態発生器130は、光伝播方向に連続して、回転可能な偏光子131及び回転可能なリターダ132を有する。偏光子131及びリターダ132の構成は、図4a〜図6を参照してより詳細に後述する。
【0036】
偏光子131は、少なくとも直線に非常によく近似した(linear at least to a good level of approximation)偏光状態をもたらすよう設計されることが好ましく、好ましい偏光方向は偏光子131の回転により可変である。偏光子131により可能な限り完全に直線偏光された光の生成は、偏光状態検出器140におけるさらなる手順で行われる偏光状態を決定する動作に対する光寄与を最大化するようにもなっている(一方、偏光子131から出た際に残る非偏光成分は、本発明による測定手順に寄与しない)。
【0037】
リターダ132は、系の使用波長λの1/4(すなわち、例えば(13.5/4)nm)の実効リタデーションを有することが好ましく、その場合、偏光状態発生器130は、任意の(円形を含む)偏光状態を設定することを可能にする。したがって、偏光状態発生器130は、投影対物レンズ120の入射瞳において種々の楕円偏光状態を設定することを可能にする。
【0038】
光伝播方向で偏光状態発生器130の下流には、孔あきマスク150(=ピンホール)が配置され、これは投影対物レンズ120の(入射)視野平面に点光源を概ね形成する。
【0039】
ピンホール150からの光は、続いて投影対物レンズ120を通過し、ピンホール150により形成された点光源からのビーム部分の角度は、投影対物レンズ120の瞳平面(図示せず)における位置座標に対応し、位置座標はさらに、投影対物レンズ120の射出瞳に角度をなして結像される。射出瞳における偏光分布、すなわち投影対物レンズ120から出る光の出射偏光状態は、偏光状態検出器140で瞳分解関係で確認される。出射偏光状態を決定するこの動作は、基本的に同じく既知の方法で射出瞳において同時に行われる。すなわち、ビームが比較的大きな開口角で各偏光光学コンポーネントを同じく同時に通過するか、又は例えばCCDカメラ等の構成体の端にある検出器要素により検出される限り、系の射出瞳は「一度に」測定される。
【0040】
その目的で、偏光状態検出器140はさらに、回転可能なリターダ141と、光伝播方向でその下流に同じく回転可能であることが好ましい偏光子142と、例えばCCDカメラの形態の検出器要素143とを有する。したがって、CCDカメラは、投影対物レンズ120の射出瞳の歪んだ投影像を測定する。
【0041】
リターダ141も、使用波長の1/4(=λ/4)に相当するリタデーションを有することが好ましい。これにより、測定動作時に最適な信号対雑音比が得られるが、それは、このとき測定動作中に検出器要素143又はCCDカメラで生じる強度変動が、リターダ141の回転位置及び投影対物レンズ120の偏光特性に応じて最大になるからである。
【0042】
ここで、図示の構成体の本質的な特性は、光が偏光状態検出器140及び同じく偏光状態発生器130の偏光光学コンポーネントに異なる入射角で入射することであるが、その理由は、本明細書の冒頭部分ですでに説明したように、DUV領域で通常使用されるレンズ系が発散ビーム経路を平行ビーム経路へ変換するのに利用可能でないからである。本発明によれば、偏光状態発生器130の側及び偏光状態検出器140の側両方で光が傾斜して通過することから生じる問題は、図4a〜図6を参照してより詳細に後述するように、偏光光学コンポーネントに関して適当な設計により解決される。
【0043】
図1を参照して前述した測定構造は、光学系の偏光特性を決定することを可能にする。より具体的な偏光特性で光学系を特性決定するための簡略化した測定構造を、図2及び図3を参照して以下で説明する。
【0044】
図2は、図1における測定構造の代替形態である実施形態を示し、相互に対応するコンポーネント又は実質的に同じ機能のコンポーネントは、「100」を足した参照符号で示す。
【0045】
図2における測定構造が図1におけるものと異なる点は、偏光状態発生器230又は偏光状態検出器240がそれぞれ回転可能な偏光子231及び241を有するだけで、リターダを有しないことである。図1と比較して単純化されたこのような構造は、瞳ジョーンズ行列が近似的に直線偏光のみの固有偏光を有する投影対物レンズ230の偏光特性を決定するのに適している。
【0046】
偏光子231及び241は、(暗視野偏光計を作るように)相互に交差関係又は(明視野偏光計を作るように)相互に平行関係の向きにあり、投影対物レンズ230の光軸に関して相互に同期回転することができる。その回転中、検出器素子143又はCCDカメラにより強度変動が測定され、そこからさらに投影対物レンズの偏光特性、すなわちリタデーション(すなわち、2つの直交偏光状態間の位相差)及び消光比(diattenuation)(すなわち、2つの直交偏光状態間の振幅の比)が計算される。
【0047】
図3は、さらに別の単純化した測定構造を示し、この場合も図2と同様の、又は本質的に同じ機能を含むコンポーネントは「100」を足した参照符号で示す。
【0048】
図3における測定構造が図2におけるものと異なる点は、回転可能な偏光子331が偏光状態発生器330内にしか設けられず、したがって偏光状態発生器330における偏光子331が図3における測定構造の唯一の偏光光学素子となることである。一方、偏光状態検出器340は、射出瞳における強度分布の記録及び(例えば干渉手段による)射出波面の測定を可能にするCCDカメラを有する測定ヘッドのみを含む。
【0049】
図3に示す構成体の動作では、偏光子331を投影対物レンズ320の光軸又は光伝播方向に関して回転させる。その場合、偏光子331の回転位置に応じて(すなわち、直線入射偏光の方向に応じて)、射出瞳において得られる強度変動及び波面が確認される。リタデーション及び同じく消光比(いずれの場合も大きさ及び軸方向に関する)は、それ自体が既知の方法でその強度変動の振幅及び位相から確認することができる。
【0050】
次に、図4a及び図4bを参照し、図1〜図3に示す構成体で使用される偏光光学コンポーネントを具現するためにここで使用される多層系の実施形態を例として説明する。
【0051】
これらの実施形態では、本発明に従って使用される偏光光学素子(偏光子及び/又はリターダ)で使用される多層系はそれぞれ、(例えば、約193nm又は約248nmの)DUV領域の波長で動作する投影露光装置とは対照的に、本願の場合、すなわちEUV領域において、依然として許容可能な構造空間を与えるのに適した屈折光学素子に、光軸と平行なビーム経路を生成するのに利用可能なものがないことを考慮に入れるよう設計される。
【0052】
本発明によれば、投影対物レンズ320に関して入射側及び出射側の両方において、図4a及び図4bのそれぞれに示す発散ビーム経路にもかかわらず、多層系がもたらす偏光光学効果の均一性が入射瞳及び射出瞳の両方における角度スペクトルで達成されることで、この問題が解決される。
【0053】
図4a及び図4bに示す実施形態に共通するのは、いずれの場合も多層系460及び470がそれぞれ少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有するよう設計されることである。
【0054】
図4aに示すように、この湾曲した光入射面は、参照符号462で示す複数の個別層を湾曲基板461に施して、ビーム部分S1、S2、及びS3のそれぞれが系の開口に関してほぼ同じ入射角γで多層系460に入射するように行われる。
【0055】
多層系では入射放射線の多重反射が起こり、多層系を最終的に透過する、したがって最大限となる割合が考慮される。その目的で、基板461は、例えば400nm以下の比較的小さな厚さであることが好ましい。
【0056】
適当な基板材料は、例えば、ケイ素(S),窒化ケイ素(Si3N4)、又は炭化ケイ素(SiC)である。多層系460及び470はそれぞれ、比較的高屈折の層及び低屈折の層(例えば、連続したモリブデン(Mo)及びケイ素(Si))を交互に備える。
【0057】
図4bは、多層系470の代替的な構成を示し、この場合、参照符号472で示す複数の個別層が多層系470を生成するために平坦基板471に層厚を変えて設けられる(図4bでは誇張した縮尺で示す)。多層系470は、光学的に異方性の層材料から構成され、その点で、異方性及び層厚変動の結果として、この場合もすべてのビーム部分S1、S2、及びS3が系の開口に関して同じ偏光作用又は同じリタデーションを示すことが利用される。
【0058】
図4cは、図4bの実施形態と同様の、参照符号482で示す複数の個別層を有する厚さプロファイルが変わる多層系480を示し、個別層がビーム経路又は系の光軸と傾斜関係で閉端基板481上に配置されることで、系の開口に関して角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性を達成する。
【0059】
図5a及び図5bは、上述の偏光光学素子を具現するためのさらに他の実施形態を示す。これらの実施形態では、図4a〜図4cに示す構成に従った湾曲した光入射面でも、各所望の偏光光学作用を十分に大きな入射角範囲にわたって達成できないことを想定する。
【0060】
その場合、図5aに示すように、本例では平面平行板の形態であり、そのうち5つの基板561〜565を例として図5aに示す複数の基板に各多層系を設けること、及び多層系をビーム経路内の種々の位置に適切な傾斜関係で配置することが有利である。基板561〜565は、例えば最大400nm、好ましくは最大100nm、及びさらに好ましくは最大50nmの比較的小さな厚さを有することも好ましい。
【0061】
平行ビームの幾何学的形状で使用される複数の基板561〜565を備える図5aに示す構成体560は、光伝播方向に対して個々の基板561〜565でそれぞれ同じ角度を有するが、図5bに示す非平行ビームの幾何学的形状によれば、構成体570の個々の基板571〜575は光軸に対して異なる角度で傾斜している。したがって、図5a及び図5bにおける両実施形態において、系の開口に関して、角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性がこの場合も達成される。
【0062】
図6に概略的に示すさらに別の実施形態において、波長フィルタを実施するために、1以外の屈折率を有する材料(例えば、モリブデン(Mo)又はルテニウム(Ru))を有する楔形コーティング682も、例えば変位可能なオリフィス板部材を使用して基板681に施され、それにより、最終的に得られる効果が複数の個別プリズムの効果に相当し、傾斜により「調整可能」である。その場合、屈折率の分散によるプリズムにおける偏向角の波長依存性が利用される。
【0063】
図7a〜図11及び表1〜表4を次に参照し、本発明に従って使用される偏光光学コンポーネントでの使用に適した多層系の実施形態を例として説明する。
【0064】
最初に、表1は、例えば偏光状態発生器130、230、若しくは330、又は偏光状態検出器140、240、若しくは340における、偏光子を用いるのに適した多層系の設計を示す。表1の層設計は、モリブデン(Mo)及びケイ素(Si)のみを層材料として使用する。この層設計は、準ブルースター角付近(約45°)の角度43°で透過モードにおいて最適化される。この層設計に関して、s偏光がp偏光よりもMo−Si界面において著しく大きなフレネル反射を示すことが利用される。この層設計は、対応の入射角に合わせて設計されたミラーの層設計に相当し、通常の個別層厚は使用波長の1/4程度である。一般的には、偏光子及び波長フィルタの両方の層設計の構成において、全厚が大きくなりすぎると透過光の割合が小さくなりすぎるので、全厚が大きくなりすぎないよう留意すべきである。
【0065】
図7aに示す透過特性から分かるように、s偏光及びp偏光それぞれの入射角に応じて、s偏光は約43°の関連角度範囲で大きく反射されるが、主にp偏光は透過される。
【0066】
図8a及び図8bは、表1の層設計に関して、種々の波長(図8a)及び種々の層厚(図8b)での入射角に対するs偏光又はp偏光それぞれの透過依存性を示す。図8aから、多層系は、いずれの場合も所望の作用を示す制限された波長範囲及び角度範囲でのみ適切であるので、より大きな範囲にわたって波長が変動する場合、多層系を対応した傾斜関係で配置すべきであることが分かるであろう。図8bは、多層系が所望の作用を示す入射角が、全層厚を変える(個々の厚さ全てを同じ係数だけ変える)ことにより変わり得ることをさらに示す。
【0067】
表2、図9a、及び図9bは、表1、図7a、及び図7bの実施形態と同様の、モリブデン(Mo)及びケイ素(Si)に加えてルテニウム(Ru)もさらに別の層材料として使用される、多層系のさらに別の実施形態の図を示す。さらに別の層材料としてのルテニウム(Ru)の使用は、この場合は単なる例にすぎず、異なる又は逸脱した屈折率n及び比較的軽微な減衰を伴う他の適当な材料、例えば、ケイ素(Si)、カリウム(K)、炭化ケイ素(SiC)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、炭化ホウ素(B4C)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、ニオブ(Nb)、炭化モリブデン(MoC)、モリブデン(Mo)、又はロジウム(Rh)等を用いることも可能である。
【0068】
表3、図10a、及び図10bは、例えば偏光状態発生器130、230、若しくは330、又は偏光状態検出器140、240、若しくは340で使用するためのリターダ層の実施形態を示す。層系は、約55°の入射角に最適化され、表1における実施形態と同様である限り、この場合もモリブデン(Mo)及びケイ素(Si)のみが層材料として使用され、個々の層厚はこの場合も使用波長の1/4程度である。
【0069】
表4及び図11は、上述の測定構成体での波長フィルタ又は「モノクロメータ層」の具現に適した層設計の実施形態を示す。この実施形態では、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、及びルテニウム(Ru)が層材料として使用されるが、これは絶対に必要というわけではなく、上述の実施形態と同様に、2つの異なる層材料(例えば、モリブデン及びケイ素)のみを使用して層設計を実施することも可能である。
【0070】
入射光の所与の波長を透過させる表4の層系の特性は、入射角(凡例で指定)により図11に示すように「調整可能」であり、すなわち、透過させる波長は、基板の傾斜角により予め決定するか又は選択することができる。特に、ほぼ垂直な光入射での動作も可能である。
【0071】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多くの変更及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、このような変更及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲及びその等価物においてのみ制限されることが、当業者には理解されるであろう。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2−1】
【表2−2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2010年1月28日付けの独国特許出願第10 2010 001 336.6号の優先権を主張する。当該出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの生産に使用される。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影対物レンズを有する投影露光装置と称するもので実行される。その場合、照明系により照明されたマスク(=レチクル)の像が、投影対物レンズにより、感光層(フォトレジスト)でコーティングされ投影対物レンズの像面に配置されている基板(例えば、シリコンウェーハ)に投影されることで、マスク構造を基板上の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
特に高開口数を有する、例えば上述のマイクロリソグラフィ投影露光装置等の高分解能結像系では、動作時に結像系を通過する放射線の偏光状態に対する結像系の影響をもはや無視できないことが知られている。これは、偏光影響効果(例えば、ホルダコンポーネントにより例えばレンズ又はミラー等の光学コンポーネントの材料に引き起こされる応力複屈折、誘電体層の偏光影響効果等)による結像コントラストの変化に起因するものとされる。
【0005】
したがって、特に高開口のこのような結像系の偏光特性を可能な限り確実に決定することが望ましく、これは、一方では偏光依存性結像品質に関する適切な結論を出すためであり、他方では偏光特性の操作に適している可能性のある措置を取ることができるようにするためである。
【0006】
特許文献1は、特に、光学結像系による光放射線の偏光状態の影響を決定する方法及び装置であって、所定の入射偏光状態を結像系の物体面に与え、結像系から出る放射線の出射偏光状態を結像系の予め決定可能な瞳領域内で瞳分解関係で測定する方法及び装置を開示している。結像系は、例えば、約248nm又は193nmの波長域用に設計された投影露光装置の投影対物レンズであり得る。
【0007】
ミラーは、EUV領域用に設計された投影対物レンズにおける、すなわち例えば約13nm又は約7nmの波長での、結像プロセスのための光学コンポーネントとして使用されるが、これは、適当な半透明屈折材料(translucent refractive materials)が利用可能でないことによる。その場合、偏光特性の上述の特性決定に関連して生じる問題は、反射光学コンポーネントを使用した上述のような測定構造の実施が、必要な構造空間に関して大きな問題につながり、実行不可能にまでなり得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,286,245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景を念頭に置き、本発明の目的は、光学系の偏光特性を特性決定する構成体及び方法であって、EUVの使用波長でも、また同時に小型構造で、偏光特性の確実な特性決定を可能にする構成体及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項1の特徴に従った構成体及び請求項21の特徴に従った方法により達成される。
【0011】
光学系、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する構成体は、
光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を設定する少なくとも1つの偏光状態発生器と、
光学系から出る放射線の出射偏光状態を測定するよう構成された偏光状態検出器と
を備え、光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも10°の上記光ビームの角度スペクトルにわたって実質的に一定であるよう設計される。
【0012】
入射光ビームに対する偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器の「偏光光学作用」が一定となる基準は、偏光状態発生器又は偏光状態検出器が上記角度スペクトルにわたって同じ偏光状態をもたらすことを示し、この同じ偏光状態はさらに、偏光状態発生器又は偏光状態検出器に入射する光のいわゆるIPS値(=「好適な状態の強度」)が一定である場合に、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器から出る光に関して上記角度スペクトルにわたってIPS値が一定であることにより定義される。その点で、「実質的に一定」という表現は、最高10%、特に最高5%のIPS値の変動を包含することも意図される。さらに、所望の偏光状態は、必ずしも直線偏光ではなく、任意の他の偏光状態、例えば楕円偏光又は円偏光でもあり得る。
【0013】
本発明による構成体により、本発明は、偏光状態の特性決定に使用されるコンポーネントである偏光状態発生器及び偏光状態検出器を、EUV領域の使用波長において透過モードで動作するようそれぞれ設計するという概念を特に追求する。別の手法によれば、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する。そのようにすると、この場合も特に約13.5nmの使用波長を有する光学系において、比較的複雑なビーム経路及びより複雑で高価なアクチュエータを備える反射偏光光学コンポーネントが回避されるので、格段に小型の構造が達成される。
【0014】
その点で特に留意すべきは、DUV波長域で、すなわち例えば約248nm又は約193nmの波長で存在する、偏光光学コンポーネントを平行ビームの幾何学的形状(すなわち、各コンポーネントを通過するビームの相互に平行なビーム部分を有する)で動作させることができるという選択肢が、本発明に従って包含されるEUV領域では与えられなくなることであり、これは、レンズ系の形態のDUV領域で使用される適当な光学コンポーネントに、発散又は集束ビーム経路を平行ビーム経路に変えるために現在利用可能なものがないからである。
【0015】
本発明による構成のさらに別の利点は、透過モードで動作するコンポーネントをビーム経路内のそれぞれ適切な位置に比較的容易に組み込むことができ、その際にビーム経路の大幅な変更がそのために必要とならないことである。
【0016】
さらに、本発明によれば、上述の発散又は集束ビーム経路にもかかわらず、光学系から出る放射線の出射偏光状態の同時又は並行測定を実施することが可能である。これは、光学系の射出瞳が「一度に」測定される、すなわち、ビームをより大きな開口角で各偏光光学コンポーネントに同時に通過させるか又は例えばCCDカメラ等の構成体の端にある検出器要素により検出させることを意味する。これは、射出瞳の走査が不要である限り有利であるが、射出瞳の走査は、EUVの偏光特性に関する従来の測定動作では普通であり、また比較的狭い平行ビームを角度範囲全体にわたって連続して「変位」させて連続個別測定を行わなければならない。さらに、位置決め問題及びドリフト誤差の回避に関してさらなる利点を与える同時測定から、時間的利点が得られる。
【0017】
本発明の有利な用法は、投影対物レンズの偏光特性の測定であるが、本発明はこれに限定されない。正確には、本発明に従って偏光特性が特性決定される「光学系」という用語は、任意の他の光学系、及び特に例えばミラー等の個別光学素子も包含する。
【0018】
一実施形態では、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも15°、特に少なくとも20°の上記光ビームの角度スペクトルにわたって、さらに特に上記光ビームの角度スペクトル全体にわたって実質的に一定であるよう設計される。
【0019】
一実施形態では、偏光状態発生器は、出射偏光状態を瞳分解測定するよう構成される。その点で、瞳分解能に関して実施される値は、瞳半径にわたって、例えば少なくとも30画素、特に少なくとも40画素、さらに特に少なくとも50画素であり得る。
【0020】
一実施形態では、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、回転可能な偏光子を有する。さらに、偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、回転可能なリターダを有し得る。
【0021】
一実施形態では、偏光子及び/又はリターダは、複数の個別層を有する少なくとも1つの多層系を有する。好ましくはその点で、多層系は、少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有する。本発明によれば、これは、特に多層系の厚さが変化することにより実施され得る。さらに別の実施形態では、複数の個別層は、少なくとも領域的に湾曲した基板に配置することもできる。
【0022】
一実施形態では、複数の個別層は、自立若しくは無基板関係で、又は最大400nm、好ましくは最大100nm、さらに好ましくは最大50nmの厚さの基板上に配置されることで、十分に大きな割合の透過光を得る。考慮すべき適当な基板材料は、特に比較的低い透過率のもの、例えばケイ素(Si)、石英ガラス(=溶融石英、SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、ポリマー、石英(SiO2)、ジルコニウム(Zr)、ダイヤモンド、ニオブ(Nb)、及びモリブデン(Mo)である。
【0023】
一実施形態では、偏光子及び/又はリターダは、多層系をそれぞれ設けられた複数の基板を有することもできる。その点で、これら基板の少なくとも2つ(特に、同じくこれら基板の全部)を相互に対して傾斜配置して、多層系をそれぞれ設けられた基板からなる構成体に、角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性を提供することができる。
【0024】
一実施形態では、各偏光子は、少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらに特に少なくとも99%の、偏光子から出る放射線の直線出射偏光度をもたらす。その点で、「直線出射偏光度」という表現は、光の全強度に対する直線偏光成分の強度の比を示すために使用され、この比は各偏光子から出る光に当てはまる。
【0025】
一実施形態では、本構成体はさらに、ここでも所定の波長帯域を(測定)構成体の光源の波長スペクトルから濾波するよう構成されることが好ましい波長フィルタを有する。これは、EUV用に設計された投影露光装置において、投影対物レンズの透過帯域幅が約13.5±0.3nmで比較的大きく、照明系の光源として使用されるプラズマ光源の帯域幅も下回るという点で有利である。
【0026】
これらの比較的広帯域の波長域の積分を伴う測定は、測定動作で使用されるプラズマ光源のスペクトルと実際のリソグラフィ手順で使用されるプラズマ光源のスペクトルとが同一でない場合、投影対物レンズの実際の動作特性に容易に適用することができなかった。一方、波長フィルタ(十分に狭い帯域であり、例えば、投影対物レンズの透過帯域幅の最大でも1/20の帯域幅を有する)を使用することにより、各入射スペクトルに関する投影対物レンズの偏光特性を予測することができるように波長分解測定を行うことが可能である。
【0027】
一実施形態では、光学系は、少なくとも0.3、特に少なくとも0.5、さらに特に少なくとも0.7の開口数で設計される。開口数を増加させることで、本発明が特に有利なのは、射出瞳で生じる大きな開口角に関する問題をこのとき克服することが特に有用だからである。
【0028】
本発明はさらに、EUVで動作するよう設計された投影対物レンズと当該投影対物レンズの偏光特性を特性決定する構成体とを備えるEUVリソグラフィ用の装置であって、当該構成体が光学系の偏光特性を特性決定する上述の構成体のように設計される装置に関する。
【0029】
さらに、本発明は、光学系の、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する方法であって、
光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を偏光状態発生器で設定するステップと、
光学系から出る放射線の出射偏光状態を偏光状態検出器で測定するステップと
を含み、光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
偏光状態発生器及び/又は偏光状態検出器は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する方法に関する。
【0030】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項に含まれる。本発明を、添付図面を参照して例として好ましい実施形態を用いて以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の本発明による偏光特性を特性決定する構成体の構造を示す概略図である。
【図2】図1に関して簡略化した本発明のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図3】図1に関して簡略化した本発明のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図4a】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図4b】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図4c】図1〜図3に示す構成体で使用される多層系の実施形態を例として示す概略図を示す。
【図5a】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図5b】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図6】本発明による多層系のさらに別の実施形態を示す概略図を示す。
【図7】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図8】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図9】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図10】aは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。bは、本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【図11】本発明に従って使用される多層系の一実施形態を特性決定するためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、最初に、本発明による構成体を使用する可能な測定構造の概略図を示す。この構成体は、投影対物レンズ120の偏光特性を特性決定する役割を果たし、投影対物レンズ120は、EUV領域で動作するよう設計され、同じくEUV用に設計された照明系110と共にマイクロリソグラフィ投影露光装置を形成する。
【0033】
図1に示す測定構造を使用して実施される方法は、DUV領域の波長(例えば、約193nm又は約248nm)に関して米国特許第7,286,245号明細書からそれ自体が既知である。しかしながら、本願の主題は、EUV領域での、すなわち15nm未満の波長での上記方法の使用であり、後述するようにその使用で生じる問題を偏光光学コンポーネントの適当な設計構成により考慮に入れたものである。より正確には、本発明による方法は、波長スペクトルに関しても角度スペクトルに関しても広帯域偏光光学コンポーネントの使用により区別される。
【0034】
その点で、本発明は特に、EUV領域での使用にもかかわらず透過モードで偏光光学コンポーネントを使用することで、比較的なビーム経路及び同じくより複雑で高価なアクチュエータを備える反射偏光光学コンポーネントを回避するという概念を追求する。
【0035】
図1に示すように、本発明による構成体は、光伝播方向で照明系110の下流に偏光状態発生器130を含み、偏光状態発生器130は、光伝播方向に連続して、回転可能な偏光子131及び回転可能なリターダ132を有する。偏光子131及びリターダ132の構成は、図4a〜図6を参照してより詳細に後述する。
【0036】
偏光子131は、少なくとも直線に非常によく近似した(linear at least to a good level of approximation)偏光状態をもたらすよう設計されることが好ましく、好ましい偏光方向は偏光子131の回転により可変である。偏光子131により可能な限り完全に直線偏光された光の生成は、偏光状態検出器140におけるさらなる手順で行われる偏光状態を決定する動作に対する光寄与を最大化するようにもなっている(一方、偏光子131から出た際に残る非偏光成分は、本発明による測定手順に寄与しない)。
【0037】
リターダ132は、系の使用波長λの1/4(すなわち、例えば(13.5/4)nm)の実効リタデーションを有することが好ましく、その場合、偏光状態発生器130は、任意の(円形を含む)偏光状態を設定することを可能にする。したがって、偏光状態発生器130は、投影対物レンズ120の入射瞳において種々の楕円偏光状態を設定することを可能にする。
【0038】
光伝播方向で偏光状態発生器130の下流には、孔あきマスク150(=ピンホール)が配置され、これは投影対物レンズ120の(入射)視野平面に点光源を概ね形成する。
【0039】
ピンホール150からの光は、続いて投影対物レンズ120を通過し、ピンホール150により形成された点光源からのビーム部分の角度は、投影対物レンズ120の瞳平面(図示せず)における位置座標に対応し、位置座標はさらに、投影対物レンズ120の射出瞳に角度をなして結像される。射出瞳における偏光分布、すなわち投影対物レンズ120から出る光の出射偏光状態は、偏光状態検出器140で瞳分解関係で確認される。出射偏光状態を決定するこの動作は、基本的に同じく既知の方法で射出瞳において同時に行われる。すなわち、ビームが比較的大きな開口角で各偏光光学コンポーネントを同じく同時に通過するか、又は例えばCCDカメラ等の構成体の端にある検出器要素により検出される限り、系の射出瞳は「一度に」測定される。
【0040】
その目的で、偏光状態検出器140はさらに、回転可能なリターダ141と、光伝播方向でその下流に同じく回転可能であることが好ましい偏光子142と、例えばCCDカメラの形態の検出器要素143とを有する。したがって、CCDカメラは、投影対物レンズ120の射出瞳の歪んだ投影像を測定する。
【0041】
リターダ141も、使用波長の1/4(=λ/4)に相当するリタデーションを有することが好ましい。これにより、測定動作時に最適な信号対雑音比が得られるが、それは、このとき測定動作中に検出器要素143又はCCDカメラで生じる強度変動が、リターダ141の回転位置及び投影対物レンズ120の偏光特性に応じて最大になるからである。
【0042】
ここで、図示の構成体の本質的な特性は、光が偏光状態検出器140及び同じく偏光状態発生器130の偏光光学コンポーネントに異なる入射角で入射することであるが、その理由は、本明細書の冒頭部分ですでに説明したように、DUV領域で通常使用されるレンズ系が発散ビーム経路を平行ビーム経路へ変換するのに利用可能でないからである。本発明によれば、偏光状態発生器130の側及び偏光状態検出器140の側両方で光が傾斜して通過することから生じる問題は、図4a〜図6を参照してより詳細に後述するように、偏光光学コンポーネントに関して適当な設計により解決される。
【0043】
図1を参照して前述した測定構造は、光学系の偏光特性を決定することを可能にする。より具体的な偏光特性で光学系を特性決定するための簡略化した測定構造を、図2及び図3を参照して以下で説明する。
【0044】
図2は、図1における測定構造の代替形態である実施形態を示し、相互に対応するコンポーネント又は実質的に同じ機能のコンポーネントは、「100」を足した参照符号で示す。
【0045】
図2における測定構造が図1におけるものと異なる点は、偏光状態発生器230又は偏光状態検出器240がそれぞれ回転可能な偏光子231及び241を有するだけで、リターダを有しないことである。図1と比較して単純化されたこのような構造は、瞳ジョーンズ行列が近似的に直線偏光のみの固有偏光を有する投影対物レンズ230の偏光特性を決定するのに適している。
【0046】
偏光子231及び241は、(暗視野偏光計を作るように)相互に交差関係又は(明視野偏光計を作るように)相互に平行関係の向きにあり、投影対物レンズ230の光軸に関して相互に同期回転することができる。その回転中、検出器素子143又はCCDカメラにより強度変動が測定され、そこからさらに投影対物レンズの偏光特性、すなわちリタデーション(すなわち、2つの直交偏光状態間の位相差)及び消光比(diattenuation)(すなわち、2つの直交偏光状態間の振幅の比)が計算される。
【0047】
図3は、さらに別の単純化した測定構造を示し、この場合も図2と同様の、又は本質的に同じ機能を含むコンポーネントは「100」を足した参照符号で示す。
【0048】
図3における測定構造が図2におけるものと異なる点は、回転可能な偏光子331が偏光状態発生器330内にしか設けられず、したがって偏光状態発生器330における偏光子331が図3における測定構造の唯一の偏光光学素子となることである。一方、偏光状態検出器340は、射出瞳における強度分布の記録及び(例えば干渉手段による)射出波面の測定を可能にするCCDカメラを有する測定ヘッドのみを含む。
【0049】
図3に示す構成体の動作では、偏光子331を投影対物レンズ320の光軸又は光伝播方向に関して回転させる。その場合、偏光子331の回転位置に応じて(すなわち、直線入射偏光の方向に応じて)、射出瞳において得られる強度変動及び波面が確認される。リタデーション及び同じく消光比(いずれの場合も大きさ及び軸方向に関する)は、それ自体が既知の方法でその強度変動の振幅及び位相から確認することができる。
【0050】
次に、図4a及び図4bを参照し、図1〜図3に示す構成体で使用される偏光光学コンポーネントを具現するためにここで使用される多層系の実施形態を例として説明する。
【0051】
これらの実施形態では、本発明に従って使用される偏光光学素子(偏光子及び/又はリターダ)で使用される多層系はそれぞれ、(例えば、約193nm又は約248nmの)DUV領域の波長で動作する投影露光装置とは対照的に、本願の場合、すなわちEUV領域において、依然として許容可能な構造空間を与えるのに適した屈折光学素子に、光軸と平行なビーム経路を生成するのに利用可能なものがないことを考慮に入れるよう設計される。
【0052】
本発明によれば、投影対物レンズ320に関して入射側及び出射側の両方において、図4a及び図4bのそれぞれに示す発散ビーム経路にもかかわらず、多層系がもたらす偏光光学効果の均一性が入射瞳及び射出瞳の両方における角度スペクトルで達成されることで、この問題が解決される。
【0053】
図4a及び図4bに示す実施形態に共通するのは、いずれの場合も多層系460及び470がそれぞれ少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有するよう設計されることである。
【0054】
図4aに示すように、この湾曲した光入射面は、参照符号462で示す複数の個別層を湾曲基板461に施して、ビーム部分S1、S2、及びS3のそれぞれが系の開口に関してほぼ同じ入射角γで多層系460に入射するように行われる。
【0055】
多層系では入射放射線の多重反射が起こり、多層系を最終的に透過する、したがって最大限となる割合が考慮される。その目的で、基板461は、例えば400nm以下の比較的小さな厚さであることが好ましい。
【0056】
適当な基板材料は、例えば、ケイ素(S),窒化ケイ素(Si3N4)、又は炭化ケイ素(SiC)である。多層系460及び470はそれぞれ、比較的高屈折の層及び低屈折の層(例えば、連続したモリブデン(Mo)及びケイ素(Si))を交互に備える。
【0057】
図4bは、多層系470の代替的な構成を示し、この場合、参照符号472で示す複数の個別層が多層系470を生成するために平坦基板471に層厚を変えて設けられる(図4bでは誇張した縮尺で示す)。多層系470は、光学的に異方性の層材料から構成され、その点で、異方性及び層厚変動の結果として、この場合もすべてのビーム部分S1、S2、及びS3が系の開口に関して同じ偏光作用又は同じリタデーションを示すことが利用される。
【0058】
図4cは、図4bの実施形態と同様の、参照符号482で示す複数の個別層を有する厚さプロファイルが変わる多層系480を示し、個別層がビーム経路又は系の光軸と傾斜関係で閉端基板481上に配置されることで、系の開口に関して角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性を達成する。
【0059】
図5a及び図5bは、上述の偏光光学素子を具現するためのさらに他の実施形態を示す。これらの実施形態では、図4a〜図4cに示す構成に従った湾曲した光入射面でも、各所望の偏光光学作用を十分に大きな入射角範囲にわたって達成できないことを想定する。
【0060】
その場合、図5aに示すように、本例では平面平行板の形態であり、そのうち5つの基板561〜565を例として図5aに示す複数の基板に各多層系を設けること、及び多層系をビーム経路内の種々の位置に適切な傾斜関係で配置することが有利である。基板561〜565は、例えば最大400nm、好ましくは最大100nm、及びさらに好ましくは最大50nmの比較的小さな厚さを有することも好ましい。
【0061】
平行ビームの幾何学的形状で使用される複数の基板561〜565を備える図5aに示す構成体560は、光伝播方向に対して個々の基板561〜565でそれぞれ同じ角度を有するが、図5bに示す非平行ビームの幾何学的形状によれば、構成体570の個々の基板571〜575は光軸に対して異なる角度で傾斜している。したがって、図5a及び図5bにおける両実施形態において、系の開口に関して、角度スペクトルにおける偏光影響作用の所望の均一性がこの場合も達成される。
【0062】
図6に概略的に示すさらに別の実施形態において、波長フィルタを実施するために、1以外の屈折率を有する材料(例えば、モリブデン(Mo)又はルテニウム(Ru))を有する楔形コーティング682も、例えば変位可能なオリフィス板部材を使用して基板681に施され、それにより、最終的に得られる効果が複数の個別プリズムの効果に相当し、傾斜により「調整可能」である。その場合、屈折率の分散によるプリズムにおける偏向角の波長依存性が利用される。
【0063】
図7a〜図11及び表1〜表4を次に参照し、本発明に従って使用される偏光光学コンポーネントでの使用に適した多層系の実施形態を例として説明する。
【0064】
最初に、表1は、例えば偏光状態発生器130、230、若しくは330、又は偏光状態検出器140、240、若しくは340における、偏光子を用いるのに適した多層系の設計を示す。表1の層設計は、モリブデン(Mo)及びケイ素(Si)のみを層材料として使用する。この層設計は、準ブルースター角付近(約45°)の角度43°で透過モードにおいて最適化される。この層設計に関して、s偏光がp偏光よりもMo−Si界面において著しく大きなフレネル反射を示すことが利用される。この層設計は、対応の入射角に合わせて設計されたミラーの層設計に相当し、通常の個別層厚は使用波長の1/4程度である。一般的には、偏光子及び波長フィルタの両方の層設計の構成において、全厚が大きくなりすぎると透過光の割合が小さくなりすぎるので、全厚が大きくなりすぎないよう留意すべきである。
【0065】
図7aに示す透過特性から分かるように、s偏光及びp偏光それぞれの入射角に応じて、s偏光は約43°の関連角度範囲で大きく反射されるが、主にp偏光は透過される。
【0066】
図8a及び図8bは、表1の層設計に関して、種々の波長(図8a)及び種々の層厚(図8b)での入射角に対するs偏光又はp偏光それぞれの透過依存性を示す。図8aから、多層系は、いずれの場合も所望の作用を示す制限された波長範囲及び角度範囲でのみ適切であるので、より大きな範囲にわたって波長が変動する場合、多層系を対応した傾斜関係で配置すべきであることが分かるであろう。図8bは、多層系が所望の作用を示す入射角が、全層厚を変える(個々の厚さ全てを同じ係数だけ変える)ことにより変わり得ることをさらに示す。
【0067】
表2、図9a、及び図9bは、表1、図7a、及び図7bの実施形態と同様の、モリブデン(Mo)及びケイ素(Si)に加えてルテニウム(Ru)もさらに別の層材料として使用される、多層系のさらに別の実施形態の図を示す。さらに別の層材料としてのルテニウム(Ru)の使用は、この場合は単なる例にすぎず、異なる又は逸脱した屈折率n及び比較的軽微な減衰を伴う他の適当な材料、例えば、ケイ素(Si)、カリウム(K)、炭化ケイ素(SiC)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、炭化ホウ素(B4C)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、ニオブ(Nb)、炭化モリブデン(MoC)、モリブデン(Mo)、又はロジウム(Rh)等を用いることも可能である。
【0068】
表3、図10a、及び図10bは、例えば偏光状態発生器130、230、若しくは330、又は偏光状態検出器140、240、若しくは340で使用するためのリターダ層の実施形態を示す。層系は、約55°の入射角に最適化され、表1における実施形態と同様である限り、この場合もモリブデン(Mo)及びケイ素(Si)のみが層材料として使用され、個々の層厚はこの場合も使用波長の1/4程度である。
【0069】
表4及び図11は、上述の測定構成体での波長フィルタ又は「モノクロメータ層」の具現に適した層設計の実施形態を示す。この実施形態では、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、及びルテニウム(Ru)が層材料として使用されるが、これは絶対に必要というわけではなく、上述の実施形態と同様に、2つの異なる層材料(例えば、モリブデン及びケイ素)のみを使用して層設計を実施することも可能である。
【0070】
入射光の所与の波長を透過させる表4の層系の特性は、入射角(凡例で指定)により図11に示すように「調整可能」であり、すなわち、透過させる波長は、基板の傾斜角により予め決定するか又は選択することができる。特に、ほぼ垂直な光入射での動作も可能である。
【0071】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多くの変更及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、このような変更及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲及びその等価物においてのみ制限されることが、当業者には理解されるであろう。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2−1】
【表2−2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する構成体であって、
前記光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を設定する少なくとも1つの偏光状態発生器(130、230、330)と、
前記光学系から出る放射線の出射偏光状態を測定するよう構成された偏光状態検出器(140、240、340)と
を備え、前記光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(130、340、340)は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも10°の前記光ビームの角度スペクトルにわたって実質的に一定であるよう設計される構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも15°、さらに特に少なくとも20°の前記光ビームの角度スペクトルにわたって、さらに特に前記光ビームの角度スペクトル全体にわたって実質的に一定であるよう設計されることを特徴とする構成体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有することを特徴とする構成体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)は、前記出射偏光状態を瞳分解測定するよう構成されることを特徴とする構成体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、回転可能な偏光子(131、141、231、241、331)を有することを特徴とする構成体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、回転可能なリターダ(132、142)を有することを特徴とする構成体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)及び/又は前記リターダ(132、142)は、複数の個別層を有する少なくとも1つの多層系(460、470、480)を有することを特徴とする構成体。
【請求項8】
請求項7に記載の構成体において、前記多層系(460、470、480)は、少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有することを特徴とする構成体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の構成体において、前記多層系(470、480)は、厚さが変化することを特徴とする構成体。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の構成体において、前記複数の個別層は、少なくとも領域的に湾曲した基板(461)に施されることを特徴とする構成体。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の構成体において、前記複数の個別層は、自立形若しくは無基板で配置されるか、又は最大400nm、好ましくは最大100nm、さらに好ましくは最大50nmの厚さの基板(461、471、481)上に配置されることを特徴とする構成体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)及び/又は前記リターダ(132、142)は、各多層系がそれぞれに設けられる複数の基板(561〜565、571〜575)を有することを特徴とする構成体。
【請求項13】
請求項12に記載の構成体において、前記基板(571〜575)の少なくとも2つは、相互に対して傾斜して配置されることを特徴とする構成体。
【請求項14】
請求項5〜13のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)はそれぞれ、少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらに特に少なくとも99%の、前記偏光子から出る放射線の直線出射偏光度をもたらすことを特徴とする構成体。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか1項に記載の構成体において、前記リターダ(132、142)はそれぞれ、λ/4±40%、さらに特にλ/4±20%、さらに特にλ/4±10%の、前記リターダを通過する放射線のリタデーションをもたらし、λは前記光学系の使用波長であることを特徴とする構成体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の構成体において、所定の波長帯域を該構成体における光源の波長スペクトルから濾波するよう構成された波長フィルタをさらに有することを特徴とする構成体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の構成体において、前記光学系は、少なくとも0.3、特に少なくとも0.5、さらに特に少なくとも0.7の開口数で設計されることを特徴とする構成体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態検出器(140、240、340)は、前記光学系から出る放射線の角度スペクトルの少なくとも50%、特に角度スペクトルの少なくとも75%、さらに特に角度スペクトルの100%にわたって前記放射線の前記出射偏光状態を同時測定するよう構成されることを特徴とする構成体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の構成体において、前記光学系は少なくとも1つのミラーを有する構成体。
【請求項20】
EUVリソグラフィ用の装置において、
EUVで動作するよう構成された投影対物レンズと、
該投影対物レンズの偏光特性を特性決定する構成体と
を備え、該構成体は、請求項1〜19のいずれか1項に従って設計される装置。
【請求項21】
光学系の、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する方法であって、
前記光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を偏光状態発生器(130、230、330)で設定するステップと、
前記光学系から出る放射線の出射偏光状態を偏光状態検出器(140、240、340)で瞳分解関係で測定するステップと
を含み、前記光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記出射偏光状態を測定するステップは、前記光学系の射出瞳全体にわたって同時に行われることを特徴とする方法。
【請求項1】
光学系、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する構成体であって、
前記光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を設定する少なくとも1つの偏光状態発生器(130、230、330)と、
前記光学系から出る放射線の出射偏光状態を測定するよう構成された偏光状態検出器(140、240、340)と
を備え、前記光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(130、340、340)は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも10°の前記光ビームの角度スペクトルにわたって実質的に一定であるよう設計される構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、入射光ビームに対するそれらの偏光光学作用が少なくとも15°、さらに特に少なくとも20°の前記光ビームの角度スペクトルにわたって、さらに特に前記光ビームの角度スペクトル全体にわたって実質的に一定であるよう設計されることを特徴とする構成体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有することを特徴とする構成体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)は、前記出射偏光状態を瞳分解測定するよう構成されることを特徴とする構成体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、回転可能な偏光子(131、141、231、241、331)を有することを特徴とする構成体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、回転可能なリターダ(132、142)を有することを特徴とする構成体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)及び/又は前記リターダ(132、142)は、複数の個別層を有する少なくとも1つの多層系(460、470、480)を有することを特徴とする構成体。
【請求項8】
請求項7に記載の構成体において、前記多層系(460、470、480)は、少なくとも領域的に湾曲した光入射面を有することを特徴とする構成体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の構成体において、前記多層系(470、480)は、厚さが変化することを特徴とする構成体。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の構成体において、前記複数の個別層は、少なくとも領域的に湾曲した基板(461)に施されることを特徴とする構成体。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の構成体において、前記複数の個別層は、自立形若しくは無基板で配置されるか、又は最大400nm、好ましくは最大100nm、さらに好ましくは最大50nmの厚さの基板(461、471、481)上に配置されることを特徴とする構成体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)及び/又は前記リターダ(132、142)は、各多層系がそれぞれに設けられる複数の基板(561〜565、571〜575)を有することを特徴とする構成体。
【請求項13】
請求項12に記載の構成体において、前記基板(571〜575)の少なくとも2つは、相互に対して傾斜して配置されることを特徴とする構成体。
【請求項14】
請求項5〜13のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光子(131、141、231、241、331)はそれぞれ、少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらに特に少なくとも99%の、前記偏光子から出る放射線の直線出射偏光度をもたらすことを特徴とする構成体。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか1項に記載の構成体において、前記リターダ(132、142)はそれぞれ、λ/4±40%、さらに特にλ/4±20%、さらに特にλ/4±10%の、前記リターダを通過する放射線のリタデーションをもたらし、λは前記光学系の使用波長であることを特徴とする構成体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の構成体において、所定の波長帯域を該構成体における光源の波長スペクトルから濾波するよう構成された波長フィルタをさらに有することを特徴とする構成体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の構成体において、前記光学系は、少なくとも0.3、特に少なくとも0.5、さらに特に少なくとも0.7の開口数で設計されることを特徴とする構成体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の構成体において、前記偏光状態検出器(140、240、340)は、前記光学系から出る放射線の角度スペクトルの少なくとも50%、特に角度スペクトルの少なくとも75%、さらに特に角度スペクトルの100%にわたって前記放射線の前記出射偏光状態を同時測定するよう構成されることを特徴とする構成体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の構成体において、前記光学系は少なくとも1つのミラーを有する構成体。
【請求項20】
EUVリソグラフィ用の装置において、
EUVで動作するよう構成された投影対物レンズと、
該投影対物レンズの偏光特性を特性決定する構成体と
を備え、該構成体は、請求項1〜19のいずれか1項に従って設計される装置。
【請求項21】
光学系の、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学系の偏光特性を特性決定する方法であって、
前記光学系に入射する放射線の所定の偏光状態を偏光状態発生器(130、230、330)で設定するステップと、
前記光学系から出る放射線の出射偏光状態を偏光状態検出器(140、240、340)で瞳分解関係で測定するステップと
を含み、前記光学系は、15nm未満の使用波長用に設計され、
前記偏光状態発生器(130、230、330)及び/又は前記偏光状態検出器(140、240、340)は、透過モードで動作する少なくとも1つの光学素子を有する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記出射偏光状態を測定するステップは、前記光学系の射出瞳全体にわたって同時に行われることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−518418(P2013−518418A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550339(P2012−550339)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068713
【国際公開番号】WO2011/091891
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068713
【国際公開番号】WO2011/091891
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
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