説明

光学素子とその製造方法

【課題】水晶薄片の局所的な変形および破損を防止でき、耐光性に優れ、透過波面収差および焦点ムラのない光学素子とその製造方法を提供することである。
【解決手段】光学素子100Aは、基板110と、水晶薄片120と、基板110と水晶薄片120とを接合する接着剤130と、を備えている。水晶薄片120は、光学特性を発揮する光学有効エリアである薄肉部121と、薄肉部121の外周に肉厚に形成された枠部122と、を備えている。枠部122は基板110と接する側に突出し、水晶薄片120は断面略Π(パイ)字型に一体的に形成されている。枠部122は基板110と接する側に接合面122Aを有し、この接合面122Aが接着剤130を介して基板110と接合することにより、光学素子100Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置などに使用される光学素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルなどのコントラスト低下の原因となる液晶パネルの位相ずれを補償するため、光学異方性を有する光学素子が用いられている。
特に、プロジェクタ等ではより高輝度化、高コントラスト化とするために、耐熱性に優れた無機物質である水晶やサファイア等の光学異方性材料からなる光学補償板を用いて液晶パネルの光学補償を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−317752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1ではガラスの表面に接着剤が塗布され、接着剤の上に水晶等が貼り付けられる。また、光学補償板として水晶等を用いる場合、光学補償板を極めて薄くする必要がある。
しかしながら、薄板加工された水晶は強度が極めて弱いため局所的な変形や破損のおそれがあり、取り扱いに注意を要し、作業性および生産性が悪い。さらに、接着剤の粘性により水晶に厚みのムラが発生し、光学素子としての品質が低下するという問題がある。また、光学補償板の全面を貼り付けてしまうと、光学有効エリアに接着剤が存在し、この接着剤が有機物であるため、耐光性が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水晶薄片の局所的な変形および破損を防止でき、耐光性に優れ、透過波面収差および焦点ムラのない光学素子とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例は、水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、前記水晶薄片は、光学有効エリアと、この光学有効エリアの周囲に光学有効エリアよりも肉厚の枠部と、を備え、前記枠部が、前記基板と接合していることを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、水晶薄片の光学有効エリアにおいて、基板との間に空間が形成される。これにより、熱膨張による変形時において基板と水晶薄板の変形量が異なっても光学有効エリアで均一に変形量が吸収される。よって、全体を接合した場合に発生する局所的に集中する水晶薄片の変形がないので、光学的厚みが均一に保たれる。したがって、透過波面収差や焦点ムラが発生せず、光学素子としての機能を長期にわたって維持することができる。
また、水晶薄片の枠部を基板に貼り付けるため、基板が水晶薄片を支える役割を担う。したがって、水晶薄片が変形しないので、水晶薄片の破損を防止することができる。
さらに、光学有効エリアに接着剤等の有機物が存在しないため、耐光性に優れている。
【0008】
[適用例2]
本適用例は、水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、前記基板は、光学有効エリアと、この光学有効エリアの周囲に光学有効エリアよりも肉厚の枠部と、を備え、前記枠部が、前記水晶薄片と接合していることを特徴とする。
本適用例によれば、基板の光学有効エリアにおいて、水晶薄片との間に空間が形成される。したがって、前述と同様の作用効果を奏することができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2に係る本適用例では、前記水晶薄片の両面が、前記基板により挟まれていることが好ましい。
本適用例によれば、水晶薄片の光学有効エリアが直接外部に接触することがないため、水晶薄片が誤って破損することがない。したがって、取り扱い、メンテナンス、および信頼性に優れた光学素子を提供することができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1または適用例2に係る本適用例では、前記基板の両面が、前記水晶薄片により挟まれていることが好ましい。
本適用例によれば、水晶薄片を2枚用いているので、より高輝度化、高コントラスト化を実現することができるとともに、基板を1枚しか使用しないため、材料コストの低減を図ることができる。
【0011】
[適用例5]
本適用例は、水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、前記水晶薄片の光学有効エリア外と基板とが、スペーサを介して接合していることを特徴とする。
本適用例によれば、水晶薄片と基板とがスペーサを介して接合されていることにより、水晶薄片と基板との間に空間が形成される。したがって、水晶薄片に応力が加わることがないので、水晶薄片にムラが生じたり破損することがない。
また、スペーサに使用する材料として、金属やプラスチック、例えばステンレスや、ポリカーボネートなどの材料を用いることが好ましい。スペーサを先に水晶薄片に貼り付けることにより、枠部を形成していない水晶薄片は、光学素子の製造工程においてハンドリングできるだけの強度を有し、作業時の破損防止および作業性が向上する。
【0012】
[適用例6]
適用例1から適用例5に係る本適用例では、前記水晶薄片および前記基板について、少なくともいずれか一方の片面あるいは両面に反射防止膜が積層されていることが好ましい。
本適用例によれば、反射防止膜により、光学有効エリアの光線の透過率が大幅に向上する。したがって、光学素子としての機能である高輝度化、高コントラスト化をより実現することができる。ここで、反射防止膜は、前記水晶薄片と前記基板の双方について両面に積層されていることが好ましい。
【0013】
[適用例7]
適用例1から適用例6に係る本適用例では、前記水晶薄片の光学有効エリアと、前記基板の光学有効エリアに挟まれた空間は密閉されており、前記空間には、露点−10℃以下の乾燥ガスが封入されていることが好ましい。
ここで、乾燥ガスとしては、空気でもよいが、窒素、アルゴンなどの不活性ガスでもよい。このような露点を有する乾燥ガスは、例えば、液体窒素を沸騰させて得られる。露点は、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下である。
本適用例によれば、水晶薄片と基板との間に形成された空間において、結露の発生を抑制することができる。したがって、結露による光学特性の変化を防止することができる。
【0014】
[適用例8]
適用例1から適用例7に係る本適用例では、前記水晶薄片の表面は有機物質材料および/または無機物質材料によりコーティングされていることが好ましい。
本適用例によれば、水晶薄片自体をコーティング材料により強化することができるので、水晶薄片の破損を防止することができる。有機物質材料および/または無機物質材料としては、例えば、エチルシリケート等の混合物を用いることが好ましい。
【0015】
[適用例9]
本適用例は、光学素子の製造方法であって、前記水晶薄片または前記基板をエッチングすることを特徴とする。
本適用例によれば、エッチングにより簡単かつ正確に水晶薄片または基板を所定の形状に加工することができる。特に、強度の小さい水晶薄片についても破損するおそれが少ないので、前述の作用効果を有する光学素子を効果的に製造することができる。
前述の作用効果を有する光学素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
<光学素子100Aの構成>
図1は、本発明の第一実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図1に示すように、光学素子100Aは、基板110と、水晶薄片120と、基板110と水晶薄片120とを接合する接着剤130と、を備えている。
【0017】
基板110は、平坦な薄板で、厚みは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。基板110の厚みが50μm未満であると、十分な補強効果が得られない。
基板110に使用される材料は、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、石英、シリコン、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0018】
水晶薄片120は、光学特性を発揮する光学有効エリアを形成する薄肉部121と、薄肉部121の外周に肉厚に形成された枠部122と、を備えている。枠部122は基板110と接する側に突出し、水晶薄片120は断面略Π(パイ)字型に一体的に形成されている。枠部122は基板110と接する側に接合面122Aを有し、この接合面122Aが接着剤130を介して基板110と接合することにより、光学素子100Aを形成する。
【0019】
光学有効エリアである薄肉部121の厚みは3μm以上15μm以下、好ましくは5μm以上10μm以下である。薄肉部121の厚みが3μmよりも小さいと、液晶表示素子の屈折率異方性を充分に打ち消すことができず、コントラスト補償効果が得られない。また、15μmよりも大きいと、水晶の屈折率異方性が大きくなりすぎ過補償となり、コントラストの低下を招く。
また、このような光学素子100Aにおいては、基板110と水晶薄片120との間に空間Pが形成される。この空間Pの厚みは、150μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下である。空間Pの厚みが150μmを超えると、水晶薄片120の変形量が大きくなるため破損しやすい。また、水晶薄片120をエッチングで形成する際に、掘り込む量が多くなり製造時に欠陥が発生する可能性が大きくなるため実用的でない。
以上より、枠部122の厚みは水晶薄片120の厚みと空間Pの厚みの和である165μm以下であることが好ましい。
【0020】
接着剤130は、基板110と、水晶薄片120の枠部122の接合面122Aと、を接合させるためのものである。
接着剤130としては、一般に使用されている接着剤および粘着剤を使用することができるが、例えば、(株)アーデル社製の「UT20」(商品名)などのUV硬化接着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0021】
次に、光学素子100Aの製造方法について説明する。
<光学素子100Aの製造方法>
光学素子100Aを製造するには、まず、基板110および水晶薄片120について、所定の形状、厚さ、表面状態にそれぞれ形成しておく。本実施形態の場合、水晶薄片120は、枠部122の厚さ、例えば、110μm程度の厚さで、表面が鏡面加工された平板を形成しておく。なお、水晶薄片120の厚さ、表面状態は、これに限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定される。
【0022】
そして、水晶薄片120は、その表面に成膜パターンが形成され、この成膜パターンに沿ったエッチングにより断面略Π(パイ)字型に加工される。
【0023】
まず、成膜パターンの形成方法について説明する。
図2は、成膜パターンを形成する成膜用治具200の概略断面図である。
図2に示すように、成膜用治具200は、ベース部材210、マスク部材220、磁石230から構成されている。なお、図2は、水晶薄片120がベース部材210とマスク部材220との間に挟まれた状態で図示されている。
ベース部材210は片面に磁石230が埋め込まれているため、磁力を有する。なお、磁石230はベース部材210の両面に埋め込まれていてもよい。
ベース部材210の上には水晶薄片120を介してマスク部材220が配置される。
【0024】
マスク部材220は磁性体で構成され、例えば、磁性を有する種類のステンレススチールからなり、ベース部材210の一方の面210A上であって、ベース部材210の磁力により引き付けられる位置に配置される。ベース部材210に配置された水晶薄片120は、ベース部材210とマスク部材220との間に介在し、ベース部材210に埋め込まれた磁石230とマスク部材220との間に発生した磁力によりその位置を固定されている。
マスク部材220は、平面視して水晶薄片120よりも外形が小さく、水晶薄片120の一部が、マスク部材220から全周にわたり露出している。なお、マスク部材220の外形の大きさは、水晶薄片120に形成される成膜パターンの形状により決められる。
【0025】
水晶薄片120は、ベース部材210の磁石230側の面に配置されてもよく、ベース部材210の両面に配置されてもよい。両面に配置された場合は、マスク部材220も両面に配置される。
【0026】
そして、このような構成の成膜用治具200の上から、図示しない蒸着装置やスパッタリング装置などにより、Cr/Auなどの金属膜を成膜して、図3に示すような成膜パターン125を形成する。
次に、マスク部材220を取り外した後、ベース部材210から水晶薄片120を取り外す。
こうして、水晶薄片120は、マスク部材220で覆われていた中央部分の外側に、枠状に全周が繋がっている成膜パターン125が形成される。
【0027】
このような構成の成膜用治具200は、マスク部材220が、ベース部材210の一方の面210Aに引き付けられていることにより、マスク部材220が、水晶薄片120から浮き上がらず、水晶薄片120に、輪郭ボケのない成膜パターン125を形成することができる。
【0028】
そして、水晶薄片120の各面のうち、成膜パターン125が形成された面以外にCr/Au膜などの耐食膜126を形成する。これにより、図3(A)のように、水晶薄片120は、水晶薄片120の中央部分(光学有効エリア)を除いて成膜パターン125及び耐食膜126によりマスクされた状態となる。
【0029】
次に、水晶薄片120のエッチングの方法について説明する。
成膜パターン125および耐食膜126でマスクされた水晶薄片120を、フッ酸、又はフッ酸とフッ化アンモニウムなどのエッチング液に浸漬する。そして、中央部分(光学有効エリア)が150μm以下の厚み、例えば、100μm程度になるまでエッチングする。これにより、図3(B)に示すように、水晶薄片120の中央部分(光学有効エリア)が薄肉部121および枠部122とで凹状に形成される。
水晶薄片120の壁面122Bは、前述したように成膜パターン125にボケがなく、その輪郭125Aがシャープに形成されていることにより、略平滑にエッチングされている。
【0030】
そして、水晶薄片120を剥離液に浸漬して、成膜パターン125、耐食膜126を剥離し、剥離後、水晶薄片120を純水などで洗浄し、乾燥を行う。これにより、中央部分(光学有効エリア)の厚さが薄い、すなわち、薄肉部121を備えた水晶薄片120を得ることができる。
なお、剥離液は、成膜パターン125および耐食膜126がCrの場合は硝酸カリウムと塩素酸を混合させたもの、成膜パターン125および耐食膜126がAuの場合はヨウ化カリウムと塩素酸を混合させたものを使用することができる。
【0031】
このようにエッチングにより加工された水晶薄片120の接合面122Aに接着剤130を塗布し、基板110を貼り合わせることで、基板110と水晶薄片120との間に空間Pが形成された光学素子100Aを得ることができる。
【0032】
以上に述べた第一実施形態においては次に示す効果がある。
第一実施形態では、基板110と水晶薄片120との間に空間Pが形成されるので、水晶薄片120に応力がかかることがない。したがって、水晶薄片120の変形や破損を防止できるので、透過波面収差や焦点ムラの発生を抑制することができるとともに、長寿命の光学素子を提供することができる。
【0033】
また、従来技術のように基板110と水晶薄片120との間に接着剤等の有機物が存在しないため、耐光性に優れている。
さらに、空間Pは略密封されているので、空間P内部への異物の混入を防止することができる。
【0034】
そして、第一実施形態では、水晶薄片120をエッチングにより加工した。水晶薄片120は強度が弱いため、加工する際に変形や破損のおそれがあるが、エッチングで加工することにより、水晶薄片120に応力が加わることがない。したがって、変形や破損のおそれがなく、所定の形状に加工することができる。すなわち、作業効率がよい。
【0035】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
[第二実施形態]
図4は、本発明の第二実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図4に示すように、光学素子100Bは、基板110と水晶薄片120の表面に反射防止膜140をそれぞれ設けた以外は、第一実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
反射防止膜140は、基板110と水晶薄片120の空気との界面にそれぞれ設けられる。なお、反射防止膜140は、蒸着装置やスパッタリング装置などにより積層することができる。
【0036】
以上に述べた第二実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、以下に示す効果を奏することができる。
第二実施形態では、反射防止膜140を設けたので、光線の透過率が大幅に向上する。したがって、光学素子としての機能(高輝度、高コントラスト)に優れている。
【0037】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
[第三実施形態]
図5は、本発明の第三実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図5に示すように、光学素子100Cは、空間Pに乾燥ガスとして露点−30℃の窒素ガス150を充填させたこと以外は、第一実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
この場合、チャンバー内を乾燥窒素で満たし、この雰囲気下で基板110と水晶薄片120の枠部122とを接着剤130を介して隙間なく貼り付ける。
【0038】
以上に述べた第三実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、次に示す効果を奏することができる。
第三実施形態では、窒素ガスを充填させているので、空間P内部の結露を防止することができる。したがって、光学素子としての機能を長寿命化させることができる。
【0039】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
[第四実施形態]
図6は、本発明の第四実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図6に示すように、光学素子100Dは、水晶薄片120の表面にコーティング材160を積層したこと以外は、第一実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
コーティング材160としては、有機物質材料や無機物質材料を使用することができる。例えば、エチルシリケート等の混合物が用いられる。
なお、コーティング材160は、蒸着装置やスパッタリング装置などにより水晶薄片120の表面に積層することができる。
【0040】
以上に述べた第四実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、次に示す効果を奏することができる。
第四実施形態では、水晶薄片120をコーティング材160によりコーティングしたので、水晶薄片120自体が強化される。したがって、水晶薄片120が破損されにくくなるため、長寿命な光学素子を提供することができる。
【0041】
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
[第五実施形態]
図7は、本発明の第五実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図7に示すように、光学素子100Eは、2枚の基板115と、2枚の基板115の間に配置された水晶薄片170と、接着剤130と、を備えている。
基板115は、第一実施形態の基板110と同様に平板状に形成されている。
水晶薄片170は、断面略H字状に形成され、光学有効エリアを形成する薄肉部171と、この薄肉部171の周囲に形成された肉厚の枠部172と、を備えている。枠部172は、水晶薄片170の両面に対して突出して形成されている。そして、それぞれの枠部172の接合面172Aと、基板115とが、接着剤130を介して接合されている。
【0042】
水晶薄片170は、水晶薄片170の両面に成膜パターンを形成し、この成膜パターンに沿ったエッチングにより断面略H字型に加工される。成膜パターンの形成方法およびエッチング方法は第一実施形態と同様に行えばよいので、説明は省略する。
【0043】
以上に述べた第五実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、次に示す効果がある。
第五実施形態では、水晶薄片170が直接外部と接触しないので、水晶薄片170に応力が加わったり、誤って触れてしまうことがない。したがって、光学素子100Eは、取り扱い、メンテナンス、信頼性に優れている。
【0044】
次に、本発明の第六実施形態について説明する。
[第六実施形態]
図8は、本発明の第六実施形態にかかる光学素子を示す断面図である。
図8に示すように、光学素子100Fは、基板110と、この基板110を間に挟んで配置された2枚の水晶薄片120と、基板110と水晶薄片120とを接合する接着剤130と、を備えている。
【0045】
基板110は、第一実施形態と同様に平板状に形成されている。
2枚の水晶薄片120は、第一実施形態と同様に断面略Π(パイ)字型にそれぞれ形成され、光学有効エリアである薄肉部121と、この薄肉部121の周囲に薄肉部121よりも肉厚の枠部122を備えている。
そして、枠部122の接合面122Aと基板110とが、接着剤130を介して接合している。基板110が2枚の水晶薄片120に挟まれているため、基板110の両面に空間Pが形成される。
【0046】
以上に述べた第六実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、次に示す効果がある。
第六実施形態では、水晶薄片を2枚用いているので、より高輝度化、高コントラスト化を実現することができる。また、基板を1枚しか使用しないため、材料コストの低減を図ることができる。
【0047】
次に、本発明の第七実施形態について説明する。
[第七実施形態]
図9は、本発明の第七実施形態を示す断面図である。
図9に示すように、光学素子100Gは、基板110と、水晶薄片180と、基板110と水晶薄片180との間に設けられるスペーサ190と、基板110および水晶薄片180とスペーサ190とを接合する接着剤130と、を備えている。
【0048】
基板110および水晶薄片180は、平板状に形成されている。基板110と水晶薄片180とは略同じ形状に形成され、光学有効エリアである薄肉部181の周囲に枠部182を有している。スペーサ190は、この枠部182に沿って薄肉部181の周囲に設けられるものである。スペーサ190としては、強度の高いものが好ましい。例えば、金属やプラスチック、具体的にはステンレスや、ポリカーボネートなどの材料を用いることができる。
【0049】
そして、水晶薄片180とスペーサ190を接着剤130で接合し、その後基板110とスペーサ190を接着剤130によって接合すると、空間Pが形成される。
スペーサ190の厚みは、空間Pの厚みが150μm以下となるように決定される。
第七実施形態では、基板110および水晶薄片180を加工する必要がないので、エッチングなどの処理を行わない。
【0050】
以上に述べた第七実施形態においては前述の第一実施形態の効果の他に、次に示す効果がある。
第七実施形態では、スペーサ190を介して基板110と水晶薄片180とが接合される。スペーサ190は、まず最初に水晶薄片180と接合される。これにより研磨などで加工された水晶薄片で枠部を設けることができない場合にも、製造工程でハンドリングできるに足る強度を持たせることができる。
【0051】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態においては、水晶薄片120または170を断面略Π(パイ)字型に形成して空間Pを形成したが、基板110または115を断面略Π(パイ)字型に加工してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、画像表示装置などの光学素子として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図2】本発明の第一実施形態における成膜パターンの形成方法を示す断面図。
【図3】(A)は、本発明の第一実施形態におけるエッチング前の状態を示す断面図。(B)は、本発明の第一実施形態におけるエッチング後の状態を示す断面図。
【図4】本発明の第二実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図5】本発明の第三実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図6】本発明の第四実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図7】本発明の第五実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図8】本発明の第六実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【図9】本発明の第七実施形態にかかる光学素子を示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G 光学素子
110、115 基板
120、170 水晶薄片
130 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、
前記水晶薄片は、光学有効エリアと、この光学有効エリアの周囲に光学有効エリアよりも肉厚の枠部と、を備え、
前記枠部が、前記基板と接合していることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、
前記基板は、光学有効エリアと、この光学有効エリアの周囲に光学有効エリアよりも肉厚の枠部と、を備え、
前記枠部が、前記水晶薄片と接合していることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学素子において、
前記水晶薄片の両面が、前記基板により挟まれていることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光学素子において、
前記基板の両面が、前記水晶薄片により挟まれていることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
水晶薄片と基板とからなる光学素子であって、
前記水晶薄片の光学有効エリア外と基板とが、スペーサを介して接合していることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学素子において、
前記水晶薄片および前記基板について、少なくともいずれか一方の片面あるいは両面に反射防止膜が積層されていることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光学素子において、
前記水晶薄片の光学有効エリアと、前記基板の光学有効エリアに挟まれた空間は密閉されており、
前記空間には、露点−10℃以下の乾燥ガスが封入されていることを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光学素子において、
前記水晶薄片の表面は有機物質材料および/または無機物質材料によりコーティングされていることを特徴とする光学素子。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光学素子を製造する方法であって、
前記水晶薄片または前記基板をエッチングすることを特徴とする光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−92905(P2009−92905A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262994(P2007−262994)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】