説明

光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置

【課題】 作製容易で、且つ、入射光を介して励起発光した光を所定の振動面を有する直線偏光として均一に出射し得る光学素子等を提供する。
【解決手段】 光学素子1は、透光性樹脂11aと透光性樹脂中に含有され励起光源2から入射した光によって励起発光する発光性材料11bとを具備して板状に形成された発光導光体11と、発光導光体に積層され、発光導光体で励起発光した光のうち所定の振動面を有する直線偏光を反射して外部に出射するための複屈折を示す微細構造12aを具備して板状に形成された偏光分離層12とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置に関し、特に、作製容易で、且つ、入射光を介して励起発光した光を所定の振動面を有する直線偏光として均一に出射し得る光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その原理上、液晶セルに偏光を入射させる必要がある。このため、従来は、バックライトの出射面側に偏光子を配置することにより偏光を得て、当該偏光を液晶セルに入射させる構成を専ら採用してきた。しかしながら、例えば、偏光子として吸収型偏光子(ヨウ素や二色性染料を用いて、S偏光及びP偏光のうち一方の偏光を吸収し、他方の偏光を透過させる偏光子)を用いる限り、バックライトから出射した光の利用効率は50%以下とならざるを得なかった。
【0003】
このため、バックライトの出射面側に、コレステリック液晶からなる円偏光分離膜(特許文献1参照)や、屈折率異方性を有する多層薄膜積層体からなる直線偏光分離膜(特許文献2参照)を配置することにより、上記吸収型偏光子を用いる場合には吸収損失となって失われていた方向の偏光を再利用し、光の利用効率を高める提案がなされている。
【0004】
一方、バックライトを構成する導光体(光源から出射した光を液晶セルに導くための板状の透光性材料)自体に微細なプリズム構造等を設けることにより偏光分離機能を付与し、これにより効率良く偏光を得る提案もなされている(特許文献3、4参照)。
【0005】
しかしながら、バックライトを構成する導光体自体に偏光分離機能を付与する場合、導光体内部に伝搬する光の強度が光源近傍と遠方とでは異なるため、導光体の光出射面の全面から均一な強度の光を出射するためには、偏光分離機能を有する微細構造のパターンを厳密に設計する必要がある。例えば、出射される偏光の強度が導光体の光出射面の全面で均一になるように、光源の近傍では微細構造の分布状態を粗にし、光源の遠方では微細構造の分布状態を密にするが如くである。
【0006】
上記のような微細構造の設計は極めて手間が掛かる他、微細構造を形成するために必要な部材の互換性に乏しいという問題がある。すなわち、微細構造の設計は、導光体の寸法や光源の配置(サイドライト型、直下型)に応じて個別に行う必要があり手間が掛かる他、転写成形やマスク露光成形などによって微細構造を作製する場合、微細構造の分布状態に応じて個別に型を用意する必要があった。
【特許文献1】特開平9−304770号公報
【特許文献2】米国特許第6025897号明細書
【特許文献3】特開2005−504412号公報
【特許文献4】米国特許第5729311号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、作製容易で、且つ、入射光を介して励起発光した光を所定の振動面を有する直線偏光として均一に出射し得る光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の如く、透光性樹脂と当該透光性樹脂中に含有され外部から入射した光によって励起発光する発光性材料とを具備して板状に形成された発光導光体と、前記発光導光体に積層され、前記発光導光体で励起発光した光のうち所定の振動面を有する直線偏光を反射して外部に出射するための複屈折を示す微細構造を具備して板状に形成された偏光分離層とを備えることを特徴とする光学素子を提供するものである。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、発光導光体に外部から入射した光(励起光)によって発光性材料が励起発光し、当該励起発光した光の大部分は、光学素子と空気との屈折率差に応じて空気界面で全反射され、光学素子内で伝送される。斯かる伝送光の内、発光導光体に積層された偏光分離層の複屈折性を示す微細構造に衝突した光は、斜め入射光の偏光の偏りに関するフレネルの式に従って、所定の振動面を有する直線偏光(P偏光又はS偏光)のみが選択的に反射(残りの光はそのまま透過)される。そして、斯かる反射光の内、全反射角よりも小さい角度で反射した光が外部に出射することになる。
【0010】
ここで、偏光分離層を設けない場合を考えれば、上記のような選択的な反射が生じないため、光学素子内の発光性材料によって励起発光した光は、立体角の関係上、約80%が光学素子内に閉じ込められて全反射を繰り返している状態である。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、前記閉じ込められた光が、偏光分離層の複屈折性を示す微細構造による反射により、全反射条件が崩れた場合にのみ光学素子外部に出射することになるため、微細構造の分布状態によって出射効率を任意に制御可能である。
【0012】
一方、微細構造での反射によって全反射角よりも大きい角度で反射した光、微細構造に衝突しなかった光、及び、微細構造で反射されなかった光は、光学素子内に閉じ込められて全反射を繰り返しつつ伝送され、微細構造に衝突して全反射角よりも小さい角度で反射することにより外部に出射する機会を待つことになる。以上の動作が繰り返されることにより、結果的に、光学素子から所定の振動面を有する直線偏光が効率良く出射されることになる。
【0013】
ここで、光学素子から出射される直線偏光は、発光導光体に含有された発光性材料によって励起発光された光である。すなわち、発光導光体に含有された発光性材料が光源としての機能を奏することになる。従って、従来のように光源からの距離に応じて微細構造のパターンを厳密に設計する必要がなく、例えば、発光導光体に発光性材料を均一に含有させれば、たとえ単純な一定の繰り返し構造の微細構造にしたとしても、所定の振動面を有する直線偏光を均一に出射することが可能である。
【0014】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、導光体の寸法や光源の配置に応じて個別に微細構造の設計を行う必要がなく作製容易で、且つ、入射光を介して励起発光した光を所定の振動面を有する直線偏光として均一に出射することが可能である。
【0015】
なお、本発明における「透光性樹脂」とは、少なくとも外部から入射した光(励起光)及び発光性材料が励起発光した光の波長に対して透明性を有する樹脂を意味する。
【0016】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項2に記載の如く、前記偏光分離層は、複屈折性を示す第1層と屈折率が等方性を示す第2層とが積層されて形成されており、前記第1層と前記第2層との界面に前記微細構造が形成されていると共に、前記第1層及び前記第2層の特定方向の屈折率が略等しいものとされる。
【0017】
また、好ましくは、特許請求の範囲の請求項3に記載の如く、前記微細構造は、それぞれ略三角形状の断面を有し互いに略平行に形成された複数条の凹溝と、前記各凹溝にそれぞれ嵌合する複数条の凸条との組合せで構成される。
【0018】
なお、特許請求の範囲の請求項4に記載の如く、前記第2層を前記発光導光体と一体化することも可能である。すなわち、発光導光体の一部が偏光分離層の第2層を兼ねる構成を採用することも可能である。また、特許請求の範囲の請求項5に記載の如く、前記第1層は、液晶材料から形成することが可能である。
【0019】
また、本発明は、特許請求の範囲の請求項6に記載の如く、請求項1から5のいずれかに記載の光学素子と、前記光学素子に含有された発光性材料を励起し得る波長の光を出射する励起光源とを備えることを特徴とする偏光面光源としても提供される。
【0020】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項7に記載の如く、前記発光性材料は、紫外光を吸収して可視光を励起発光する材料とされ、前記励起光源は、紫外線を発光する光源とされる。
【0021】
さらに、本発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載の如く、請求項7に記載の偏光面光源を備えることを特徴とする表示装置としても提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、作製容易で、且つ、入射光を介して励起発光した光を所定の振動面を有する直線偏光として均一に出射することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る偏光面光源の概略構成を示す縦断面図であり、図1(a)は励起光源の近傍位置にある発光性材料で励起発光された光が外部に出射する状態を、図1(b)は励起光源から離れた位置にある発光性材料で励起発光された光が外部に出射する状態を示す。図1に示すように、本実施形態に係る偏光面光源10は、光学素子1と、光学素子1の側面に沿って配置された励起光源2とを備えている。
【0024】
光学素子1は、発光導光体11と、発光導光体11に積層された偏光分離層12とを備えている。発光導光体11は、透光性樹脂11aと、透光性樹脂11a中に含有され外部から入射した光(励起光源2から入射した図中破線の矢符で示す光)によって励起発光する発光性材料11bとを具備して板状に形成されている。
【0025】
励起光源2として紫外線を発光する光源を用いる場合、紫外線に対して十分な透明性を有するという点で、透光性樹脂11aとしては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ノルボルネン系樹脂などを好適に用いることができる。
【0026】
また、励起光源2として紫外線を発光する光源を用いる場合、紫外線によって励起発光するという点で、発光性材料11bとしては、クマリンなどの蛍光染料や、ZnSなどの蛍光顔料を好適に用いることができる。
【0027】
偏光分離層12は、発光導光体11で励起発光した光(図中実線の矢符で示す光)のうち所定の振動面を有する直線偏光を反射して外部に出射するための複屈折性を示す微細構造12aを具備して板状に形成されている。
【0028】
本実施形態に係る偏光分離層12は、複屈折性(異方性)を示す第1層121と屈折率が等方性を示す第2層122とが積層されて形成されており、第1層121と第2層122との界面に微細構造12aが形成されていると共に、第1層121及び第2層122の特定方向の屈折率が略等しくなるように形成されている。
【0029】
複屈折性を示す第1層121としては、延伸や押し出しによって配向したポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの樹脂や液晶ポリマーなどを好適に用いることができる。また、液晶材料を配向膜上に塗布した後、硬化重合させて得ることも可能である。また、後述するように、微細構造12aを形成する際に、第2層122に微細加工を施す場合には、第2層122の表面にナノオーダの微細な傷が形成されていることが多いため、特別な配向処理を行わなくても、第2層122の表面にそのまま液晶材料を塗布するだけで、複屈折性を示す液晶配向を得ることも可能である。さらに、第2層122に延伸加工を施しておけば、延伸軸方向への液晶配向能をある程度有することになるため、当該延伸加工を施した第2層122に液晶材料を塗布することによっても、複屈折性を示す液晶配向を得ることが可能である。
【0030】
また、屈折率が等方性を示す第2層122としては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エポキシ樹脂、ノルボルネン系樹脂などの屈折率異方性の小さい樹脂を好適に用いることができる。
【0031】
第1層121及び第2層122の略等しく設定された特定方向の屈折率と、透光性樹脂11aの屈折率とは、略等しくなるように材料を選択することが望ましいが、双方の屈折率に差異がある場合には、発光導光体11と偏光分離層12とを接着する接着層の屈折率を双方の屈折率の中間値とすることにより、屈折率差に起因した無用な反射を低減できる。
【0032】
本実施形態に係る微細構造12aは、それぞれ略三角形状の断面を有し互いに略平行に形成された複数条の凹溝3と、各凹溝3にそれぞれ嵌合する複数条の凸条4との組合せで構成されている。より具体的には、各凹溝3とこれに嵌合する各凸条4とは、空隙を有さないように密着嵌合されている。
【0033】
上記凹溝3及び凸条4は、例えば、精密に整形した金型に対して第1層121又は第2層122の材料となる樹脂板を加圧、加熱するなどして微細な金型形状を転写する方法や、樹脂表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、所望の形状が得られる露光量に対応するマスクを被せて露光する方法、精密フライス盤等を用いて直接切削する方法などによって形成することが可能である。
【0034】
以上に説明した構成を有する偏光面光源10によれば、励起光源2から発光導光体11に入射した光(励起光)によって発光性材料11aが励起発光し、当該励起発光した光の大部分が、光学素子1と空気との屈折率差に応じて空気界面で全反射され、光学素子1内で伝送される。斯かる伝送光の内、発光導光体11に積層された偏光分離層12の複屈折性を示す微細構造12aに衝突した光は、斜め入射光の偏光の偏りに関するフレネルの式に従って、所定の振動面を有する直線偏光(P偏光又はS偏光)のみが選択的に反射(残りの光はそのまま透過)される。そして、斯かる反射光の内、全反射角よりも小さい角度で反射した光が外部に出射することになる。
【0035】
ここで、光学素子1から出射される直線偏光は、発光導光体11に含有された発光性材料11aによって励起発光された光である。すなわち、図1(a)、(b)に示すように、発光導光体11に含有された各発光性材料11aがそれぞれ光源としての機能を奏することになる。従って、従来のように光源からの距離に応じて微細構造のパターンを厳密に設計する必要がなく、例えば、発光導光体11に発光性材料11aを均一に含有させれば、たとえ単純な一定の繰り返し構造の微細構造12aにしたとしても、所定の振動面を有する直線偏光を均一に出射することが可能である。なお、図1に示すように、発光性材料11aによって励起発光された光が外部に出射するまでに複数回の反射を繰り返す場合には、各種の方向から微細構造12aに向けて光が照射されるため、出射光分布の正面からの偏りを低減する上で、微細構造12aは左右対称の形状とすることが好ましい。
【0036】
なお、本発明に係る偏光面光源の構成としては、図1に示す構成に限るものではなく、図2に示すように、励起光源2を光学素子1の直下に配置した構成や、図3に示すように、偏光分離層12の第2層122を発光導光体11と一体化(すなわち、第2層122が透光性樹脂11bで形成されている)した構成を採用することも可能である。
【0037】
以下、本発明に係る偏光面光源において採用可能な偏光分離層の構成(第1の実施形態〜第8の実施形態)について、より具体的に説明する。
【0038】
<第1の実施形態>
図4は、本発明に係る偏光面光源において採用可能な偏光分離層の第1の実施形態を説明する説明図であり、図4(a)は屈折率が等方性を示す第2層122の斜視図を、図4(b)は複屈折性を示す第1層121の斜視図を、図4(c)は第2層122側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を、図4(d)は第1層121側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を示す。
【0039】
図4に示すように、本実施形態に係る偏光分離層においては、第1層121側に凹溝3が設けられ、第2層122側に凹溝3と嵌合する凸条4が設けられている。そして、第1層121に設けられた凹溝3を横断する方向の屈折率と第2層122の屈折率とが同一の値n1とされている。また、第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率n2がn1よりも大きな値とされている。
【0040】
以上の構成を有する偏光分離層において、図4(c)に示すように、第2層122側から入射した自然光L1は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突し、凹溝3と凸条4の屈折率が同じである方向(図4(c)の紙面に平行な方向)に振動面を有する光(P偏光)L2は界面を透過する一方、凹溝3と凸条4の屈折率が異なる方向(図4(c)の紙面に垂直な方向)に振動面を有する光(S偏光)L3は全反射条件を満足する場合に界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0041】
一方、図4(d)に示すように、第1層121側から入射した自然光L4は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突するが、入射角が小さいためP偏光及びS偏光の両方が全反射せず、界面を透過することになる。
【0042】
従って、本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第2層122側に積層されることになる。
【0043】
<第2の実施形態>
図5は、本発明に係る偏光面光源において採用可能な偏光分離層の第2の実施形態を説明する説明図であり、図5(a)は屈折率が等方性を示す第2層122の斜視図を、図5(b)は複屈折性を示す第1層121の斜視図を、図5(c)は第2層122側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を、図5(d)は第1層121側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を示す。
【0044】
図5に示すように、本実施形態に係る偏光分離層においても、第1の実施形態に係る偏光分離層と同様に、第1層121側に凹溝3が設けられ、第2層122側に凹溝3と嵌合する凸条4が設けられている。そして、第1層121に設けられた凹溝3を横断する方向の屈折率と第2層122の屈折率とが同一の値n1とされている。ただし、第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率n2がn1よりも小さな値とされている点で、第1の実施形態と異なる。
【0045】
以上の構成を有する偏光分離層において、図5(c)に示すように、第2層122側から入射した自然光L4は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突するが、入射角が小さいためP偏光及びS偏光の両方が全反射せず、界面を透過することになる。
【0046】
一方、図5(d)に示すように、第1層121側から入射した自然光L1は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突し、凹溝3と凸条4の屈折率が同じである方向(図5(d)の紙面に平行な方向)に振動面を有する光(P偏光)L2は界面を透過する一方、凹溝3と凸条4の屈折率が異なる方向(図5(c)の紙面に垂直な方向)に振動面を有する光(S偏光)L3は全反射条件を満足する場合に界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0047】
従って、本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第1層121側に積層されることになる。
【0048】
<第3の実施形態>
図6は、本発明に係る偏光面光源において採用可能な偏光分離層の第3の実施形態を説明する説明図であり、図6(a)は屈折率が等方性を示す第2層122の斜視図を、図6(b)は複屈折性を示す第1層121の斜視図を、図6(c)は第2層122側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を示す。
【0049】
図6に示すように、本実施形態に係る偏光分離層においても、第1の実施形態に係る偏光分離層と同様に、第1層121側に凹溝3が設けられ、第2層122側に凹溝3と嵌合する凸条4が設けられている。そして、第1の実施形態と同様に、第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率n2が、凹溝3を横断する方向の屈折率n1よりも大きな値とされている。ただし、第2層122の屈折率が、第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率と同一の値n2とされている点で、第1の実施形態と異なる。
【0050】
以上の構成を有する偏光分離層において、図6(c)に示すように、第2層122側から入射した自然光L1は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突し、凹溝3と凸条4の屈折率が同じである方向(図6(c)の紙面に垂直な方向)に振動面を有する光(S偏光)L3は界面を透過する一方、凹溝3と凸条4の屈折率が同じ方向(図6(c)の紙面に平行な方向)に振動面を有する光(P偏光)L2は全反射条件を満足する場合に界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0051】
一方、第1層121側から入射した自然光は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突するが、入射角が小さいためP偏光及びS偏光の両方が全反射せず、界面を透過することになる(図示省略)。
【0052】
従って、本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第2層122側に積層されることになる。
【0053】
<第4の実施形態>
図7は、本発明に係る偏光面光源において採用可能な偏光分離層の第4の実施形態を説明する説明図であり、図7(a)は屈折率が等方性を示す第2層122の斜視図を、図7(b)は複屈折性を示す第1層121の斜視図を、図7(c)は第1層121側から入射した自然光(無偏光の光)の偏光分離の状態を示す縦断面図を示す。
【0054】
図7に示すように、本実施形態に係る偏光分離層においても、第1の実施形態に係る偏光分離層と同様に、第1層121側に凹溝3が設けられ、第2層122側に凹溝3と嵌合する凸条4が設けられている。ただし、第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率n2が、凹溝3を横断する方向の屈折率n1よりも小さな値とされている点、第2層122の屈折率が第1層121に設けられた凹溝3に沿った方向の屈折率と同一の値n2とされている点で、第1の実施形態と異なる。
【0055】
以上の構成を有する偏光分離層において、図7(c)に示すように、第1層121側から入射した自然光L1は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突し、凹溝3と凸条4の屈折率が同じである方向(図7(c)の紙面に垂直な方向)に振動面を有する光(S偏光)L3は界面を透過する一方、凹溝3と凸条4の屈折率が同じ方向(図7(c)の紙面に平行な方向)に振動面を有する光(P偏光)L2は全反射条件を満足する場合に界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0056】
一方、第2層121側から入射した自然光は、第1層121の凹溝3と第2層122の凸条4との界面に衝突するが、入射角が小さいためP偏光及びS偏光の両方が全反射せず、界面を透過することになる(図示省略)。
【0057】
従って、本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第1層121側に積層されることになる。
【0058】
<第5の実施形態>
本実施形態に係る偏光分離層は、複屈折性を示す第1層121側に凸条4が設けられ、屈折率が等方性を示す第2層122側に凹溝3が設けられている点を除き、第1の実施形態に係る偏光分離層と同様の構成を有する(図示省略)。
【0059】
本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第1の実施形態と同様に第2層122側に積層され、S偏光が全反射条件を満足する場合、凹溝3と凸条4の界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0060】
<第6の実施形態>
本実施形態に係る偏光分離層は、複屈折性を示す第1層121側に凸条4が設けられ、屈折率が等方性を示す第2層122側に凹溝3が設けられている点を除き、第2の実施形態に係る偏光分離層と同様の構成を有する(図示省略)。
【0061】
本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第2の実施形態と同様に第1層121側に積層され、S偏光が全反射条件を満足する場合、凹溝3と凸条4の界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0062】
<第7の実施形態>
本実施形態に係る偏光分離層は、複屈折性を示す第1層121側に凸条4が設けられ、屈折率が等方性を示す第2層122側に凹溝3が設けられている点を除き、第3の実施形態に係る偏光分離層と同様の構成を有する(図示省略)。
【0063】
本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第3の実施形態と同様に第2層122側に積層され、P偏光が全反射条件を満足する場合、凹溝3と凸条4の界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0064】
<第8の実施形態>
本実施形態に係る偏光分離層は、複屈折性を示す第1層121側に凸条4が設けられ、屈折率が等方性を示す第2層122側に凹溝3が設けられている点を除き、第4の実施形態に係る偏光分離層と同様の構成を有する(図示省略)。
【0065】
本実施形態に係る偏光分離層を採用する場合、前述した発光導光体11は、第4の実施形態と同様に第1層121側に積層され、P偏光が全反射条件を満足する場合、凹溝3と凸条4の界面で反射し、外部に出射されることになる。
【0066】
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
【0067】
<実施例1>サイドライト型偏光面光源(図1参照)
偏光分離層を構成する複屈折性を示す第1層として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(カネボウ合繊株式会社製:KANEBO PEN)を厚み200μmに成膜し、115℃で約5倍に延伸した。得られた延伸フィルムは、厚みが約40μmとなり、屈折率異方性Δn=約0.3となった。
【0068】
上記延伸フィルムの延伸軸方向に沿って、ルーリングエンジンを用いて精密刻線することにより、各辺が2μmの正三角形の断面形状を有する複数条の凹溝を10μmピッチで形成した。そして、凹溝を形成した側の面に、等方性を示す第2層として、ウレタンアクリル系ハードコート剤(大日本インキ社製:ユニディック17−813樹脂、光反応開始剤イルガキュア907 2重量%添加)を塗布して凹溝に包埋させ、紫外線によって重合硬化させて、偏光分離層の一体品を作製した。
【0069】
透光性樹脂としてのJSR製ARTON樹脂溶液(トルエン30重量%溶液)に、発光性材料としてのクマリンを1重量%だけ溶解分散し、キャスト成膜して厚み1mmの発光導光体を作製した。
【0070】
上記偏光分離層と発光導光体とを積層し、光学接着剤(NORLAND社製:NOA65)によって接着することにより、光学素子を作製した。
【0071】
以上のようにして作製した光学素子の側面(発光導光体の側面)から、フィリップス社製ブラックライト(主発光波長360nm以下)を照射すると、出射面の法線方向に対して±30°程度の範囲で直線偏光が出射し、S偏光とP偏光の強度比は、約1:5であった。
【0072】
<実施例2>直下型偏光面光源(図2参照)
偏光分離層を構成する等方性を示す第2層としての日本ゼオン社製ゼオノア(厚み2mm)に、精密金型の熱プレスを用いて形状転写することにより、各辺が2μmの正三角形の断面形状を有する複数条の凸条を10μmピッチで形成した。なお、前記精密金型は、ルーリングエンジンを用いて精密刻線することにより複数条の凹溝が形成されたものであり、凹溝の内部には、凹溝と平行方向の多数の微細な筋が存在していた。斯かる精密金型の形状を転写した第2層の凸条にも微細な筋が転写されていた。
【0073】
上記凸条を形成した側の面に、複屈折性を示す第1層として、高砂香料工業社製L42モノマー(RN=461055−10−7)20重量%トルエン溶液(光反応開始剤イルガキュア907 2重量%添加)を塗布し、90℃で2分間乾燥させた後、紫外線によって重合硬化させ、偏光分離層の一体品を作製した。
【0074】
透光性樹脂としてのクラレ社製PVA(重合度2400)水溶液(30重量%)に、発光性材料としての住友大阪セメント社製ZnSナノ粒子(粒径10nm)を4重量%添加し、厚み1mmに成膜して発光導光体を作製した。
【0075】
上記偏光分離層と発光導光体とを積層し、光学粘着材(日東電工社製:No.7厚み25μm)によって接着することにより、光学素子を作製した。
【0076】
以上のようにして作製した光学素子の下面(発光導光体の下面)から、フィリップス社製ブラックライト(主発光波長360nm以下)を照射すると、出射面の法線方向に対して±30°程度の範囲で直線偏光が出射し、S偏光とP偏光の強度比は、約1:4であった。
【0077】
<実施例3>サイドライト型偏光面光源(第2層と発光導光体の一体型)(図3参照)
透光性樹脂及び第2層として、重量部の比率がメタクリル酸:アクリル酸:トリメチロールプロパントリアクリレート=4:1:1の混合物に対して光反応開始剤イルガキュア184を5部(重量部)添加した配合液に、発光性材料としての蛍光剤Alqを3重量%添加し、これをガラス基板間に封入して紫外線により重合硬化させ、厚み3mmの発光導光体(第2層を含む)を作製した。
【0078】
上記発光導光体に実施例2と同様の表面加工を施し、実施例2と同様に複屈折性を示す第1層としての液晶を凹溝に包埋して配向させることにより、光学素子を作製した。
【0079】
以上のようにして作製した光学素子の側面(発光導光体の側面)から、ナイトライド社製紫外線発光LED(主発光波長370nm)を照射すると、出射面の法線方向に対して±30°程度の範囲で直線偏光が出射し、S偏光とP偏光の強度比は、約1:4であった。
【0080】
<比較例>
実施例1の発光導光体のみからなる光学素子の側面から、フィリップス社製ブラックライト(主発光波長360nm以下)を照射すると、出射した光は自然光であった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る偏光面光源の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る偏光面光源の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る偏光面光源の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係る偏光分離層の概略構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係る偏光分離層の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係る偏光分離層の概略構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施形態に係る偏光分離層の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・光学素子
2・・・励起光源
3・・・凹溝
4・・・凸条
10・・・偏光面光源
11・・・発光導光体
11a・・・透光性樹脂
11b・・・発光性材料
12・・・偏光分離層
12a・・・微細構造
121・・・第1層
122・・・第2層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性樹脂と当該透光性樹脂中に含有され外部から入射した光によって励起発光する発光性材料とを具備して板状に形成された発光導光体と、
前記発光導光体に積層され、前記発光導光体で励起発光した光のうち所定の振動面を有する直線偏光を反射して外部に出射するための複屈折性を示す微細構造を具備して板状に形成された偏光分離層とを備えることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記偏光分離層は、複屈折性を示す第1層と屈折率が等方性を示す第2層とが積層されて形成されており、前記第1層と前記第2層との界面に前記微細構造が形成されていると共に、前記第1層及び前記第2層の特定方向の屈折率が略等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記微細構造は、それぞれ略三角形状の断面を有し互いに略平行に形成された複数条の凹溝と、前記各凹溝にそれぞれ嵌合する複数条の凸条との組合せで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第2層は、前記発光導光体と一体化されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1層は、液晶材料から形成されていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の光学素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光学素子と、
前記光学素子に含有された発光性材料を励起し得る波長の光を出射する励起光源とを備えることを特徴とする偏光面光源。
【請求項7】
前記発光性材料は、紫外光を吸収して可視光を励起発光する材料とされ、
前記励起光源は、紫外線を発光する光源とされていることを特徴とする請求項6に記載の偏光面光源。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光面光源を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−343386(P2006−343386A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166594(P2005−166594)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】