光学素子及びそれを備える光学装置
【課題】光ファイバを用いた光学装置において光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子であって、光学装置を低背化できる光学素子を提供する。
【解決手段】光学素子20a、20bは、受発光素子11,12に対面する第1の光入出面21と、光ファイバ10に対面する第2の光入出面22と、光反射面23とを備えている。光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面21,22の他方側へ反射する。第2の光入出面22は、正の光学的パワーを有するレンズ面部22aを有する。
【解決手段】光学素子20a、20bは、受発光素子11,12に対面する第1の光入出面21と、光ファイバ10に対面する第2の光入出面22と、光反射面23とを備えている。光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面21,22の他方側へ反射する。第2の光入出面22は、正の光学的パワーを有するレンズ面部22aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及びそれを備える光学装置に関する。特に、本発明は、光ファイバを用いた光学装置において、光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子及びそれを備える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ転送の高速化を実現し得る装置として、光ファイバを用いた光学装置が大いに注目されている。この光学装置では、入力されたデータに応じた光が発光素子から出射される。その出射光は、光ファイバ内を伝搬して受光素子に導かれ、受光素子において再び電気信号に変換される。この光学装置においては、受光素子や発光素子と光ファイバとを光学的に結合する必要がある。この受発光素子と光ファイバとの結合は、光インターコネクタという光学素子により行われる。
【0003】
ところで、一般的に回路基板に実装された受発光素子の光軸は、回路基板の法線方向と平行である。このため、例えば、集光レンズを用いて光ファイバと受発光素子との間の光学的結合を行おうとすると、光ファイバの端部を回路基板に対して垂直に設け、かつ、光ファイバと受発光素子との間に集光レンズを配置する必要がある。また、光ファイバは、高い曲率で屈曲させることができない。従って、光学装置の高さ寸法が大きくなり、光学装置を低背化することが困難であるという問題がある。
【0004】
それに対して、下記の特許文献1に記載の光学装置では、屈折光学系を用い、光ファイバを回路基板と平行に配置することで低背化が図られている。具体的には、図9に示すように、特許文献1に記載の光学装置200は、コネクタ201を備えている。コネクタ201は、一体形成された透明樹脂製のコネクタ本体202を有する。コネクタ本体202には、回路基板203上に設けられた光素子204からの光を受光する凸レンズ状の受光面202aが形成されている。また、コネクタ本体202には、光ファイバ205の先端部が挿入されて固定される光ファイバ用有底穴202cが回路基板203と平行に形成されている。さらに、コネクタ本体202には、光素子204からの光を、光ファイバ用有底穴202cに挿入された光ファイバ205の先端部に導くための反射面202bが形成されている。反射面202bの上には、反射膜(図示せず)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−121973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光学装置200では、屈折光学系が採用されているため、光ファイバ205を回路基板と平行に配置することができる。従って、光学装置200の低背化を図ることができる。しかしながら、光学装置200では、コネクタ本体202が樹脂製であり、かつ、受光面202aが凸レンズ状に形成されているため、図9とは異なり、実際は、光素子204からの光を受光する受光面202aと光素子204との間の距離が長くなり、十分に低背化を図ることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバを用いた光学装置において光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子であって、光学装置を低背化できる光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の光学素子は、受発光素子と、先端部の光軸が受発光素子の光軸と垂直な光ファイバとを備える光学装置において、受発光素子と光ファイバとの光学的結合に用いられるガラス製の光学素子に関する。本発明に係る第1の光学素子は、第1の光入出面と、第2の光入出面と、光反射面とを備えている。第1の光入出面は、受発光素子に対面する。第2の光入出面は、光ファイバに対面する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0009】
本発明に係る第1の光学素子では、光ファイバ側の第2の光入出面に正の光学的パワーを有するレンズ面部が形成されている。このため、受発光素子側の第1の光入出面における光束径を小さくすることができる。さらに、本発明に係る第1の光学素子は、ガラス製であるため、光学素子の屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離を短くすることができる。よって、本発明に係る第1の光学素子を用いることにより、光学装置の低背化を図ることができる。
【0010】
なお、本発明において、「受発光素子」は、受光素子と発光素子との総称である。すなわち、「受発光素子」には、「受光素子」と「発光素子」とが含まれる。
【0011】
本発明において、「光ファイバと受発光素子との光学的結合」とは、光ファイバから出射した光を受光素子の受光面に合焦させること、または、発光素子からの光を、光ファイバの端面に合焦させることをいう。
【0012】
本発明において、「光入出面」は、「光入射面」と「光出射面」との総称である。すなわち、「光入出面」には、「光入射面」と「光出射面」とが含まれる。
【0013】
本発明に係る第2の光学素子は、光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられるガラス製の光学素子に関する。本発明に係る第2の光学素子は、第1及び第2の光入出面と、光反射面とを有する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0014】
本発明に係る第2の光学素子を第2の光入出面が光ファイバと対面するように配置することにより、上記本発明に係る第1の光学素子と同様に、受発光素子側の第1の光入出面における光束径を小さくすることができる。また、本発明に係る第2の光学素子も、ガラス製であるため、光学素子の屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離を短くすることができる。よって、本発明に係る第2の光学素子を用いることにより、光学装置の低背化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、レンズ面部は、レンズ面部から入射した光が第1の光入出面上に合焦するような形状に形成されていることが好ましい。この場合、光学素子の第1の光入出面の直上に受発光素子を配置することができる。換言すれば、第1の光入出面と受発光素子との間のクリアランスをゼロにすることができる。従って、この構成の光学素子を用いることにより、光学装置をより低背化することができる。
【0016】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1及び第2の光入出面のそれぞれが、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有することが好ましい。この場合、第1の光入出面部と受発光素子との間の距離をより短くすることができる。従って、この構成の光学素子を用いることにより、光学装置をより低背化することができる。
【0017】
本発明に係る第1及び第2の光学素子のそれぞれのd線に対する屈折率(nd)が1.75以上であることが好ましい。この場合、第1及び第2の光入出面のそれぞれにおいて光を大きく屈折させることができる。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離をより短くすることができる。
【0018】
なお、「d線」とは、波長が588nmの光線である。
【0019】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、レンズ面部が、アレイ状に複数形成されていることが好ましい。この場合、一つの光学素子で複数の光ファイバを受発光素子と光学的に結合することができる。
【0020】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、第1及び第2の光入出面のそれぞれの上に形成されている反射抑制膜をさらに備えることが好ましい。この場合、第1及び第2の光入射面における光反射率を低減できる。従って、本発明に係る第1または第2の光学素子を用いることにより、光学装置における光伝搬損失を低減することができる。
【0021】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、モールドプレスにより形成されたものであることが好ましい。その場合、光学素子を安価に製造することができる。また、光学素子の稜線部や角部がR面取り状となるため、稜線部や角部に割れや欠けが生じ難くなる。
【0022】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、第1及び第2の光入出面と光反射面とを側面として有し、第2の光入出面と光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている略三角柱状であることが好ましい。この場合、光学素子を低背化及び軽量化できるため、この光学素子を用いることにより、光学装置のさらなる低背化及び軽量化を図ることができる。また、この光学素子をフォルダに固定する場合に、第2の光入出面と光反射面とで構成される角部に形成された面をフォルダに対する当接面とすることにより、光学素子とフォルダとの位置決めが容易となる。
【0023】
また、本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1の光入出面と光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されていることがさらに好ましい。この場合、光学素子をさらに小型化及び軽量化できるため、この光学素子を用いることにより、光学装置のさらなる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0024】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうちの少なくともひとつの光路上に位置する部分以外の部分に凹凸が形成されていることが好ましい。この構成では、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうち、凹凸が形成されている面をフォルダに接着する場合に、光路上に位置する部分以外の部分に接着剤を塗布することによって、接着剤が光路上に位置する部分に流入することを抑制することができる。また、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうちの少なくともひとつに形成されている凹凸に対応した形状の凹凸をフォルダに形成しておくことによって、光学素子とフォルダとの位置決めが容易となる。
【0025】
本発明に係る光学装置は、受発光素子と、光ファイバと、ガラス製の光学素子とを備えている。光ファイバの先端部の光軸は、受発光素子の光軸と垂直である。光学素子は、受発光素子と光ファイバとを光学的に結合している。光学素子は、第1の光入出面と、第2の光入出面と、光反射面とを備えている。第1の光入出面は、受発光素子に対面する。第2の光入出面は、光ファイバに対面する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0026】
すなわち、本発明に係る光学装置は、上記本発明に係る第1または第2の光学素子を備えている。このため、本発明に係る光学装置では、高さ寸法を低くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光ファイバを用いた光学装置において光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子であって、光学装置を低背化できる光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における光学素子の略図的斜視図である。
【図3】第1の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図4】第2の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図5】第3の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図6】第4の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図7】第1の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図8】第2の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図9】特許文献1に記載の光学装置の略図的断面図である。
【図10】第3の変形例に係る光学装置の模式図である。
【図11】第4の変形例における光学素子の略図的斜視図である。
【図12】第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的分解斜視図である。
【図13】第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的側面図である。
【図14】図13のXIV略図的矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1,7,8に示す光学装置を例に挙げて説明する。但し、図1,7,8に示す光学装置は、単なる例示である。本発明に係る光学装置は、図1,7,8に示す光学装置に何ら限定されない。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光学装置の模式図である。図2は、第1の実施形態における光学素子の略図的斜視図である。
【0031】
図1に示す光学装置1は、回路基板13上に設けられた発光素子11及び受光素子12と、光ファイバ10とを備えている。発光素子11は、図示しない制御部から入力されたデータに応じて発光する素子である。発光素子11は、例えば、回路基板13に対し、垂直方向の光を出射することが可能な面発光型レーザー等により構成することができる。
【0032】
受光素子12は、発光素子11から出射され、光ファイバ10を介して伝送された光を受光し、受光した光に応じた電気信号を出力する。受光素子12は、例えば、暗電流が少なく、高速応答が可能なP−i−n型フォトダイオード等により構成することができる。
【0033】
発光素子11と受光素子12とは、光ファイバ10を介して光学的に接続されている。具体的には、光ファイバ10の一方側の端部10aは、ガラス製の光学素子20aによって光学的に結合されている。一方、光ファイバ10の他方側の端部10bは、ガラス製の光学素子20bによって光学的に結合されている。
【0034】
光学素子20a、20bのそれぞれは、光軸を屈折させる機能と、入射光を光ファイバ10または受光素子12に対して合焦させる機能とを有する。このため、発光素子11から出射された光は、屈折され、発光素子11の光軸A1に対して垂直な光軸A3を有する光ファイバ10に合焦し、光ファイバ10内に入射する。光ファイバ10から出射された光は、屈折され、光ファイバ10の光軸A3に対して垂直な光軸A2を有する受光素子12の受光面12aに合焦する。
【0035】
光学素子20aと、光学素子20bとは、実質的に同じ構成を有している。このため、ここでは、図1及び図2を参照しながら、光学素子20a、20bの構成について説明する。
【0036】
光学素子20a、20bは、略三角柱状に形成されている。具体的には、光学素子20a、20bは、端面が直角二等辺三角形である三角柱状に形成されている。但し、本発明において、光学素子は、端面が直角二等辺三角形である三角柱状に形成されている必要は必ずしもない。光学素子の形状は、第1及び第2の光入出面と、光反射面とが、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光が光反射面で反射され、第1及び第2の光入出面の他方から出射するように設けられている限りにおいて特に限定されない。光学素子は、例えば、頂角が直角ではない三角形状の端面を有する三角柱状に形成されていてもよいし、多角形状に形成されていてもよい。
【0037】
光学素子20a、20bの角部や稜線部は、R面取り状に形成されていることが好ましい。そうすることにより、光学素子20a、20bの角部や稜線部に割れや欠けが生じにくくなる。角部や稜線部がR面取り状に形成された光学素子20a、20bは、例えば、モールドプレスにより形成することができる。
【0038】
光学素子20a、20bは、第1の光入出面21と、第2の光入出面22と、光反射面23とを有する。第1の光入出面21は、発光素子11または受光素子12と対面している。第2の光入出面22は、光ファイバ10の端面と対面している。
【0039】
図1に示すように、第1及び第2の光入出面21,22のそれぞれの上には、反射抑制膜24,25(図2では、反射抑制膜24,25の描画を省略している。)が形成されている。この反射抑制膜24,25により、第1及び第2の光入出面21,22における光反射率が低減されている。なお、反射抑制膜24,25は、例えば、相対的に屈折率が高い高屈折率層と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された誘電体積層膜により構成することができる。高屈折率層は、例えば、酸化チタン等により形成することができる。低屈折率膜は、酸化ケイ素などにより形成することができる。
【0040】
本実施形態では、第1及び第2の光入出面21,22のうち、光ファイバ10と対面している第2の光入出面22には、複数のレンズ面部22aがアレイ状に形成されている。なお、本実施形態では、複数のレンズ面部22aは、直線状に配列されている例について説明するが、本発明において、複数のレンズ面部22aの配列は直線状に限定されない。本発明においては、複数のレンズ面部は、マトリクス状に配列されていてもよい。また、第2の光入出面にレンズ面部が一つのみ形成されていてもよい。
【0041】
光反射面23は、平面状に形成されている。光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光が光反射面23により反射されて第1及び第2の光入出面21,22の他方から出射するように設けられている。詳細には、本実施形態では、光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光が光反射面23により全反射されて第1及び第2の光入出面21,22の他方から出射するように設けられている。このため、光反射面23の上に、光反射膜を別途設ける必要がない。よって、光学素子20a、20bの製造が容易である。
【0042】
また、光反射膜を設けた場合、発光素子11からのレーザー光により光反射膜が劣化してしまう場合がある。特に、発光素子11から出射される光が高出力のレーザー光である場合は、光反射膜が劣化しやすい。それに対して、本実施形態では、光反射面23の上に光反射膜が形成されていないため、光反射膜の劣化に起因する光反射面23における光反射率の低下を抑制することができる。
【0043】
具体的に、光学素子20a、20bの光反射面23において、空気(屈折率1.0)に対して全反射が生じるようにするためには、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率をnとし、発光素子11からの光の入射角をθとしたときに、光反射面23を、sinθ≧1/nを満たすように設ければよい。
【0044】
例えば、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が1.75である場合は、θが約34.9°以上となるように光反射面23を設ければよい。発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が1.6である場合は、θが約38.7°以上となるように光反射面23を設ければよい。
【0045】
このように、光反射面23における全反射の臨界角は、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が高くなるにつれて小さくなる。このため、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率を高くすることにより、光学素子20a、20bの設計自由度が向上する。従って、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率は、高い方が好ましい。発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率は、1.70以上であることが好ましく、1.75以上であることがより好ましい。通常、d線に対する光学素子20a、20bの屈折率が高いと、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率も高くなる。このため、光学素子20a、20bのd線に対する屈折率(nd)は1.75以上であることが好ましく、1.80以上であることがより好ましい。
【0046】
なお、本実施形態では、より具体的には、光学素子20a、20bのd線に対する屈折率は、1.806、波長850nmにおける屈折率は、1.790、波長1050nmにおける屈折率は、1.784、波長1310nmにおける屈折率は、1.779、波長1550nmにおける屈折率は、1.775であり、光反射面23は、入射角が45°となるように設けられている。第1及び第2の光入出面21,22のそれぞれは、入射角が90°となるように設けられている。
【0047】
レンズ面部22aは、正の光学的パワーを有する。具体的には、本実施形態では、レンズ面部22aは、凸状に形成されており、光を屈折させる屈折面である。より具体的には、本実施形態では、レンズ面部22aは、非球面である。ここで、「非球面」とは、球面ではない面のうち、回転対称軸を有する面のことをいう。
【0048】
但し、本発明において、レンズ面部は、正の光学的パワーを有するものである限りにおいて特に限定されない。レンズ面部は、例えば、回転対称軸を有さない自由曲面であってもよい。また、レンズ面部は、複数のレンズ面が不連続に配列されたフレネルレンズ面により構成されていてもよいし、光を回折させる回折面により構成されていてもよい。
【0049】
本実施形態のように、レンズ面部が凸状に形成された屈折面である場合は、光学素子の製造が容易となる。それに対して、レンズ面部が回折面やフレネルレンズ面により構成されている場合は、レンズ面部の高さを抑制することができる。また、より高い正の光学的パワーを実現しやすい。
【0050】
一方、第1の光入出面21には、レンズ面部は形成されていない。本実施形態では、第1の光入出面21は、平面状に形成されている。
【0051】
次に、主として図1を参照しながら、光学装置1の動作について説明する。
【0052】
図示しない制御部から発光素子11に信号が入力されると、発光素子11は、入力された信号に応じた光を出射する。ここでは、具体的には、発光素子11は、放射光を出射する。
【0053】
発光素子11からの光は、光学素子20aの第1の光入出面21(光入射面)から光学素子20a内に入射し、光反射面23において反射された後に、第2の光入出面22のレンズ面部22aから光学素子20a外に出射する。ここで、上述のように、発光素子11から出射される光は放射光であり、第1の光入出面21は、平面状に形成されている。このため、光学素子20a内を伝搬する光は発散光となる。そして、光学素子20aから出射する際に、正の光学的パワーを有するレンズ面部22aにより屈折し、集束光となり、光ファイバ10の端面に合焦する。
【0054】
合焦した光は、光ファイバ10内を伝搬し、端部10bの端面から発散光として出射する。出射光は、光学素子20bの第2の光入出面22のレンズ面部22aから入射し、光反射面23において反射された後に、第1の光入出面21から出射する。ここで、本実施形態では、レンズ面部22aは、正の光学的パワーを有する。このため、光学素子20bに入射した光は、集束光となる。そして、平面状に形成された第1の光入出面21においてさらに屈折し、受光素子12の受光面12aに合焦する。
【0055】
受光素子12は、受光面12aにおいて受光した光に応じた電気信号を出力する。以上の工程により、発光素子11に入力された信号に応じた電気信号が受光素子12から出力される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の光学素子20a、20bでは、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光は光反射面23により反射されることにより、屈折する。従って、光学素子20a、20bを用いることにより、光ファイバ10を発光素子11、受光素子12の光軸に対して傾斜して配置することができる。例えば、光ファイバ10を発光素子11、受光素子12の光軸に対して垂直に配置することができる。また、本実施形態の光学素子20a、20bでは、光ファイバ10側の第2の光入出面22に正の光学的パワーを有するレンズ面部22aが形成されている。このため、受光素子12または発光素子11側の第1の光入出面21における光束径を小さくすることができる。さらに、光学素子20a、20bは、ガラス製であるため、屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面21と受光素子12または発光素子11との間の距離を短くすることができる。よって、光学装置1を低背化することができる。
【0057】
以下、この理由についてさらに詳細に説明する。
【0058】
図3は、第1の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図3に示す光学装置では、反射面を有さないレンズ103により光ファイバ101と受光素子102とが光学的に結合されている。このため、光ファイバ101の端部101aを、光軸が受光素子102の光軸と一致するように配置する必要がある。よって、受光素子102の光軸方向に、レンズ103、光ファイバ101の端部101aが配列されることとなる。従って、光学装置を低背化することが困難である。
【0059】
図4は、第2の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図4に示す光学装置では、レンズ103の上に、反射部材104を設けることにより、屈折光学系が構成されている。このため、図4に示す光学装置では、受光素子102の光軸上とは異なる場所において、光ファイバ101の端部101aの光軸を受光素子102の光軸と垂直に配置することができる分、低背化を図ることができる。しかしながら、受光素子102、レンズ103及び反射部材104を受光素子102の光軸方向に配列する必要がある。このため、光学装置の低背化を十分に図ることができない。
【0060】
図5は、第3の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図5に示す光学装置では、レンズ103及び反射部材104の代わりに、プリズム106が配置されている。そして、プリズム106の光入出面106a、106bのうち、受光素子102側の光入出面106bに正の光学的パワーを有するレンズ面部106b1が設けられている。この光学装置では、受光素子102の光軸方向にプリズム106のみを配置すればよいため、光学装置を低背化することができる。
【0061】
しかしながら、図5に示す光学装置では、光ファイバ101側の光入出面106aが平面状に形成されている。このため、プリズム106に入射した光は、発散光としてプリズム106内を伝搬する。よって、プリズム106内を伝搬するにつれて光束径が拡大していく。従って、例えば、図5に示すように、光入出面106aから入射した光の一部が光入出面106bに伝搬されなくなる場合がある。光入出面106aから入射した光が光入出面106bに確実に伝搬するようにするためには、プリズム106を大型化する必要がある。しかしながら、プリズム106を大型化すると、光学装置が大型化してしまう。
【0062】
また、光入出面106aから入射した光が光入出面106bに確実に伝搬するようにするために、図6に示すように、プリズム106の光入出面106aに入射する光のスポット径を小さくすることも考えられる。しかしながら、この場合であっても、光出射面である光入出面106bにおける光束径が大きくなる。このため、光入出面106bから焦点までの距離が長くなる。従って、光学装置を十分に低背化することができない。
【0063】
例えば、レンズ面部106b1の光学的パワーを大きくすれば光入出面106bから焦点までの距離を短くできるものの、レンズ面部106b1と受光素子102とが位置的に干渉してしまう虞がある。また、例えば、レンズ面部106b1を屈折面により構成する場合、レンズ面部106b1の曲率が大きくなるため、光学素子の作製が困難となる。特に、光学素子をモールドプレスにより作製しようとする場合は、光学素子の作製がより困難となる。
【0064】
それに対して、本実施形態では、図1に示すように、レンズ面部22aは、光ファイバ10側の第2の光入出面22に形成されている。このため、光学素子20b内を伝搬するに従って光束径は小さくなる。よって、受光素子12側の第1の光入出面21における光束径が小さくなる。また、第1の光入出面21に入射する光が集束光であるため、光学素子20bから出射する際に屈折することにより、さらに焦点距離が短くなる。特に本実施形態では、光学素子20bは、ガラス製であり、高い屈折率を有するため、非常に短い焦点距離となる。従って、光学素子20bの第1の光入出面21と受光素子12の受光面12aとの間の距離を短くすることができる。同様に、発光素子11側に関しても、発光素子11と光学素子20aの第1の光入出面21との間の距離を短くすることができる。従って、光学装置1を低背化することができる。
【0065】
さらに、本実施形態のように、所謂プリズム機能とレンズ機能とを兼ね備えた光学素子20a、20bを用いることにより、光学装置1の部品点数を削減することができる。
【0066】
また、本実施形態の光学素子20a、20bでは、レンズ面部22aがアレイ状に複数形成されている。このため、各一つの光学素子20a、20bで複数の光ファイバ10を受光素子12、発光素子11と光学的に結合することができる。光ファイバ毎に光学素子を設けた場合と比較して、光学装置を小型化でき、光学素子のアライメントが容易となる。
【0067】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0068】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【0069】
本実施形態では、レンズ面部22aが、レンズ面部22aから入射した光が第1の光入出面21上に合焦するような形状に形成されている。このため、図7に示すように、光学素子20bの第1の光入出面21の直下に受光素子12を配置することができる。同様に、光学素子20aの第1の光入出面21の直下に発光素子11を配置することができる。従って、光学装置をさらに低背化することができる。
【0070】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【0071】
上記実施形態では、第1及び第2の光入出面21,22のうち、光ファイバ10側の第2の光入出面22のみにレンズ面部22aが形成されている場合について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図8に示すように、光ファイバ10側の第2の光入出面22にレンズ面部22aが形成されていると共に、受光素子12,発光素子11側の第1の光入出面21にも、正の光学的パワーを有するレンズ面部21aが形成されている。本変形例では、第1の光入出面21と焦点との間の距離をさらに短くすることができる。従って、光学装置をさらに低背化することができる。
【0072】
(第3の変形例)
図10は、第3の変形例に係る光学装置の模式図である。
【0073】
上記第1の実施形態では、光学素子20a、20bのそれぞれが、第1及び第2の光入出面21,22と光反射面23とを側面とする略三角柱状に形成されている場合について説明した。但し、本発明において、光学素子の形状は、これに限定されない。光学素子は、第1及び第2の光入出面と光反射面とを有する限り、どのような形状を有するものであってもよい。
【0074】
例えば、図10に示すように、光学素子20a、20bのそれぞれにおいて、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部と、第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部とのそれぞれが面取り状に形成されていてもよい。
【0075】
第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部を面取り状に形成することによって、光学素子20a、20bのy方向に沿った寸法を小さくすることができる。よって、光学装置のさらなる低背化を図ることができる。
【0076】
一方、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部を面取り状に形成することによって、光学装置のx方向に沿った寸法を小さくし得る。
【0077】
また、角部の少なくとも一つを面取り状に形成することにより、光学素子20a、20b、ひいては光学装置の軽量化を図ることができる。
【0078】
また、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部と、第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部とのそれぞれに形成されており、x方向またはy方向に対して垂直な平面部26,27を、光学素子のフォルダに対する当接面として利用することにより、光学素子20a、20bの位置決めが容易となる。
【0079】
なお、本変形例では、面取り状に形成されている角部に平面部が形成されている例について説明した。但し、面取り状に形成されている角部の表面は、曲面状であってもよい。
【0080】
(第4の変形例)
図11は、第4の変形例における光学素子の略図的斜視図である。図12は、第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的分解斜視図である。図13は、第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的側面図である。図14は、図13のXIV略図的矢視図である。
【0081】
図11に示すように、本変形例における光学素子20cでは、第2の光入出面22の光路上に位置する部分以外の部分に、線条の凸部22bが形成されている。凸部22bは、第2の光入出面22の幅方向において一方側端部から他方側端部にわたって形成されている。
【0082】
図12〜図14に示すように、光学素子20cは、フォルダ30に取り付けられている。詳細には、フォルダ30の当接面30aに、凸部22bの形状に対応した形状の凹部30a1が形成されている。そして、凸部22bと凹部30a1とが嵌合するように、光学素子20cの第2の光入出面22と当接面30aとが当接している。第2の光入出面22と当接面30aとは、第2の光入出面22のうち、光路上に位置する部分から凸部22bにより隔てられた部分22cに塗布された接着剤28により接着されている。
【0083】
本変形例のように、凸部22bを設けておくことにより、接着剤28が光路上に位置する部分に流入することを抑制することができる。また、凸部22bと凹部30a1とによりフォルダ30に対する光学素子20cの位置決めが容易となる。
【0084】
なお、本変形例では、凸部22bを形成したが、凸部22bに替えて、または凸部22bと共に凹部を形成してもよい。その場合であっても、接着剤28の光路上に位置する部分への流動を抑制することができる。
【0085】
接着剤28の光路上に位置する部分への流動をより効果的に抑制する観点からは、複数の凹凸を設けることが好ましい。
【0086】
また、形成する凹凸の形状は、特に限定されない。例えば、横断面台形状または横断面半円形状の線条の凸部または凹部、円柱状、円錐状、円錐台状の凸部または凹部を設けてもよい。
【0087】
また、本変形例では、第2の光入出面22に凹凸を設ける例について説明したが、第1の光入出面21や光反射面23に凹凸を設けてもよい。また、第1及び第2の光入出面21,22並びに光反射面23のうちの2つ以上の面に凹凸を設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…光学装置
10…光ファイバ
10a、10b…光ファイバの端部
11…発光素子
12…受光素子
12a…受光素子の受光面
13…回路基板
20a、20b、20c…光学素子
21…第1の光入出面
21a…レンズ面部
22…第2の光入出面
22a…レンズ面部
22b…凸部
23…光反射面
24,25…反射抑制膜
26,27…平面部
28…接着剤
30…フォルダ
30a…当接面
30a1…凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及びそれを備える光学装置に関する。特に、本発明は、光ファイバを用いた光学装置において、光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子及びそれを備える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ転送の高速化を実現し得る装置として、光ファイバを用いた光学装置が大いに注目されている。この光学装置では、入力されたデータに応じた光が発光素子から出射される。その出射光は、光ファイバ内を伝搬して受光素子に導かれ、受光素子において再び電気信号に変換される。この光学装置においては、受光素子や発光素子と光ファイバとを光学的に結合する必要がある。この受発光素子と光ファイバとの結合は、光インターコネクタという光学素子により行われる。
【0003】
ところで、一般的に回路基板に実装された受発光素子の光軸は、回路基板の法線方向と平行である。このため、例えば、集光レンズを用いて光ファイバと受発光素子との間の光学的結合を行おうとすると、光ファイバの端部を回路基板に対して垂直に設け、かつ、光ファイバと受発光素子との間に集光レンズを配置する必要がある。また、光ファイバは、高い曲率で屈曲させることができない。従って、光学装置の高さ寸法が大きくなり、光学装置を低背化することが困難であるという問題がある。
【0004】
それに対して、下記の特許文献1に記載の光学装置では、屈折光学系を用い、光ファイバを回路基板と平行に配置することで低背化が図られている。具体的には、図9に示すように、特許文献1に記載の光学装置200は、コネクタ201を備えている。コネクタ201は、一体形成された透明樹脂製のコネクタ本体202を有する。コネクタ本体202には、回路基板203上に設けられた光素子204からの光を受光する凸レンズ状の受光面202aが形成されている。また、コネクタ本体202には、光ファイバ205の先端部が挿入されて固定される光ファイバ用有底穴202cが回路基板203と平行に形成されている。さらに、コネクタ本体202には、光素子204からの光を、光ファイバ用有底穴202cに挿入された光ファイバ205の先端部に導くための反射面202bが形成されている。反射面202bの上には、反射膜(図示せず)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−121973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光学装置200では、屈折光学系が採用されているため、光ファイバ205を回路基板と平行に配置することができる。従って、光学装置200の低背化を図ることができる。しかしながら、光学装置200では、コネクタ本体202が樹脂製であり、かつ、受光面202aが凸レンズ状に形成されているため、図9とは異なり、実際は、光素子204からの光を受光する受光面202aと光素子204との間の距離が長くなり、十分に低背化を図ることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバを用いた光学装置において光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子であって、光学装置を低背化できる光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の光学素子は、受発光素子と、先端部の光軸が受発光素子の光軸と垂直な光ファイバとを備える光学装置において、受発光素子と光ファイバとの光学的結合に用いられるガラス製の光学素子に関する。本発明に係る第1の光学素子は、第1の光入出面と、第2の光入出面と、光反射面とを備えている。第1の光入出面は、受発光素子に対面する。第2の光入出面は、光ファイバに対面する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0009】
本発明に係る第1の光学素子では、光ファイバ側の第2の光入出面に正の光学的パワーを有するレンズ面部が形成されている。このため、受発光素子側の第1の光入出面における光束径を小さくすることができる。さらに、本発明に係る第1の光学素子は、ガラス製であるため、光学素子の屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離を短くすることができる。よって、本発明に係る第1の光学素子を用いることにより、光学装置の低背化を図ることができる。
【0010】
なお、本発明において、「受発光素子」は、受光素子と発光素子との総称である。すなわち、「受発光素子」には、「受光素子」と「発光素子」とが含まれる。
【0011】
本発明において、「光ファイバと受発光素子との光学的結合」とは、光ファイバから出射した光を受光素子の受光面に合焦させること、または、発光素子からの光を、光ファイバの端面に合焦させることをいう。
【0012】
本発明において、「光入出面」は、「光入射面」と「光出射面」との総称である。すなわち、「光入出面」には、「光入射面」と「光出射面」とが含まれる。
【0013】
本発明に係る第2の光学素子は、光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられるガラス製の光学素子に関する。本発明に係る第2の光学素子は、第1及び第2の光入出面と、光反射面とを有する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0014】
本発明に係る第2の光学素子を第2の光入出面が光ファイバと対面するように配置することにより、上記本発明に係る第1の光学素子と同様に、受発光素子側の第1の光入出面における光束径を小さくすることができる。また、本発明に係る第2の光学素子も、ガラス製であるため、光学素子の屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離を短くすることができる。よって、本発明に係る第2の光学素子を用いることにより、光学装置の低背化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、レンズ面部は、レンズ面部から入射した光が第1の光入出面上に合焦するような形状に形成されていることが好ましい。この場合、光学素子の第1の光入出面の直上に受発光素子を配置することができる。換言すれば、第1の光入出面と受発光素子との間のクリアランスをゼロにすることができる。従って、この構成の光学素子を用いることにより、光学装置をより低背化することができる。
【0016】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1及び第2の光入出面のそれぞれが、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有することが好ましい。この場合、第1の光入出面部と受発光素子との間の距離をより短くすることができる。従って、この構成の光学素子を用いることにより、光学装置をより低背化することができる。
【0017】
本発明に係る第1及び第2の光学素子のそれぞれのd線に対する屈折率(nd)が1.75以上であることが好ましい。この場合、第1及び第2の光入出面のそれぞれにおいて光を大きく屈折させることができる。従って、第1の光入出面と受発光素子との間の距離をより短くすることができる。
【0018】
なお、「d線」とは、波長が588nmの光線である。
【0019】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、レンズ面部が、アレイ状に複数形成されていることが好ましい。この場合、一つの光学素子で複数の光ファイバを受発光素子と光学的に結合することができる。
【0020】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、第1及び第2の光入出面のそれぞれの上に形成されている反射抑制膜をさらに備えることが好ましい。この場合、第1及び第2の光入射面における光反射率を低減できる。従って、本発明に係る第1または第2の光学素子を用いることにより、光学装置における光伝搬損失を低減することができる。
【0021】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、モールドプレスにより形成されたものであることが好ましい。その場合、光学素子を安価に製造することができる。また、光学素子の稜線部や角部がR面取り状となるため、稜線部や角部に割れや欠けが生じ難くなる。
【0022】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、光学素子は、第1及び第2の光入出面と光反射面とを側面として有し、第2の光入出面と光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている略三角柱状であることが好ましい。この場合、光学素子を低背化及び軽量化できるため、この光学素子を用いることにより、光学装置のさらなる低背化及び軽量化を図ることができる。また、この光学素子をフォルダに固定する場合に、第2の光入出面と光反射面とで構成される角部に形成された面をフォルダに対する当接面とすることにより、光学素子とフォルダとの位置決めが容易となる。
【0023】
また、本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1の光入出面と光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されていることがさらに好ましい。この場合、光学素子をさらに小型化及び軽量化できるため、この光学素子を用いることにより、光学装置のさらなる小型化及び軽量化を図ることができる。
【0024】
本発明に係る第1または第2の光学素子において、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうちの少なくともひとつの光路上に位置する部分以外の部分に凹凸が形成されていることが好ましい。この構成では、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうち、凹凸が形成されている面をフォルダに接着する場合に、光路上に位置する部分以外の部分に接着剤を塗布することによって、接着剤が光路上に位置する部分に流入することを抑制することができる。また、第1及び第2の光入出面並びに光反射面のうちの少なくともひとつに形成されている凹凸に対応した形状の凹凸をフォルダに形成しておくことによって、光学素子とフォルダとの位置決めが容易となる。
【0025】
本発明に係る光学装置は、受発光素子と、光ファイバと、ガラス製の光学素子とを備えている。光ファイバの先端部の光軸は、受発光素子の光軸と垂直である。光学素子は、受発光素子と光ファイバとを光学的に結合している。光学素子は、第1の光入出面と、第2の光入出面と、光反射面とを備えている。第1の光入出面は、受発光素子に対面する。第2の光入出面は、光ファイバに対面する。光反射面は、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する。第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する。
【0026】
すなわち、本発明に係る光学装置は、上記本発明に係る第1または第2の光学素子を備えている。このため、本発明に係る光学装置では、高さ寸法を低くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光ファイバを用いた光学装置において光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられる光学素子であって、光学装置を低背化できる光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における光学素子の略図的斜視図である。
【図3】第1の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図4】第2の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図5】第3の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図6】第4の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図7】第1の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図8】第2の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【図9】特許文献1に記載の光学装置の略図的断面図である。
【図10】第3の変形例に係る光学装置の模式図である。
【図11】第4の変形例における光学素子の略図的斜視図である。
【図12】第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的分解斜視図である。
【図13】第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的側面図である。
【図14】図13のXIV略図的矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1,7,8に示す光学装置を例に挙げて説明する。但し、図1,7,8に示す光学装置は、単なる例示である。本発明に係る光学装置は、図1,7,8に示す光学装置に何ら限定されない。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光学装置の模式図である。図2は、第1の実施形態における光学素子の略図的斜視図である。
【0031】
図1に示す光学装置1は、回路基板13上に設けられた発光素子11及び受光素子12と、光ファイバ10とを備えている。発光素子11は、図示しない制御部から入力されたデータに応じて発光する素子である。発光素子11は、例えば、回路基板13に対し、垂直方向の光を出射することが可能な面発光型レーザー等により構成することができる。
【0032】
受光素子12は、発光素子11から出射され、光ファイバ10を介して伝送された光を受光し、受光した光に応じた電気信号を出力する。受光素子12は、例えば、暗電流が少なく、高速応答が可能なP−i−n型フォトダイオード等により構成することができる。
【0033】
発光素子11と受光素子12とは、光ファイバ10を介して光学的に接続されている。具体的には、光ファイバ10の一方側の端部10aは、ガラス製の光学素子20aによって光学的に結合されている。一方、光ファイバ10の他方側の端部10bは、ガラス製の光学素子20bによって光学的に結合されている。
【0034】
光学素子20a、20bのそれぞれは、光軸を屈折させる機能と、入射光を光ファイバ10または受光素子12に対して合焦させる機能とを有する。このため、発光素子11から出射された光は、屈折され、発光素子11の光軸A1に対して垂直な光軸A3を有する光ファイバ10に合焦し、光ファイバ10内に入射する。光ファイバ10から出射された光は、屈折され、光ファイバ10の光軸A3に対して垂直な光軸A2を有する受光素子12の受光面12aに合焦する。
【0035】
光学素子20aと、光学素子20bとは、実質的に同じ構成を有している。このため、ここでは、図1及び図2を参照しながら、光学素子20a、20bの構成について説明する。
【0036】
光学素子20a、20bは、略三角柱状に形成されている。具体的には、光学素子20a、20bは、端面が直角二等辺三角形である三角柱状に形成されている。但し、本発明において、光学素子は、端面が直角二等辺三角形である三角柱状に形成されている必要は必ずしもない。光学素子の形状は、第1及び第2の光入出面と、光反射面とが、第1及び第2の光入出面の一方から入射した光が光反射面で反射され、第1及び第2の光入出面の他方から出射するように設けられている限りにおいて特に限定されない。光学素子は、例えば、頂角が直角ではない三角形状の端面を有する三角柱状に形成されていてもよいし、多角形状に形成されていてもよい。
【0037】
光学素子20a、20bの角部や稜線部は、R面取り状に形成されていることが好ましい。そうすることにより、光学素子20a、20bの角部や稜線部に割れや欠けが生じにくくなる。角部や稜線部がR面取り状に形成された光学素子20a、20bは、例えば、モールドプレスにより形成することができる。
【0038】
光学素子20a、20bは、第1の光入出面21と、第2の光入出面22と、光反射面23とを有する。第1の光入出面21は、発光素子11または受光素子12と対面している。第2の光入出面22は、光ファイバ10の端面と対面している。
【0039】
図1に示すように、第1及び第2の光入出面21,22のそれぞれの上には、反射抑制膜24,25(図2では、反射抑制膜24,25の描画を省略している。)が形成されている。この反射抑制膜24,25により、第1及び第2の光入出面21,22における光反射率が低減されている。なお、反射抑制膜24,25は、例えば、相対的に屈折率が高い高屈折率層と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された誘電体積層膜により構成することができる。高屈折率層は、例えば、酸化チタン等により形成することができる。低屈折率膜は、酸化ケイ素などにより形成することができる。
【0040】
本実施形態では、第1及び第2の光入出面21,22のうち、光ファイバ10と対面している第2の光入出面22には、複数のレンズ面部22aがアレイ状に形成されている。なお、本実施形態では、複数のレンズ面部22aは、直線状に配列されている例について説明するが、本発明において、複数のレンズ面部22aの配列は直線状に限定されない。本発明においては、複数のレンズ面部は、マトリクス状に配列されていてもよい。また、第2の光入出面にレンズ面部が一つのみ形成されていてもよい。
【0041】
光反射面23は、平面状に形成されている。光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光が光反射面23により反射されて第1及び第2の光入出面21,22の他方から出射するように設けられている。詳細には、本実施形態では、光反射面23は、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光が光反射面23により全反射されて第1及び第2の光入出面21,22の他方から出射するように設けられている。このため、光反射面23の上に、光反射膜を別途設ける必要がない。よって、光学素子20a、20bの製造が容易である。
【0042】
また、光反射膜を設けた場合、発光素子11からのレーザー光により光反射膜が劣化してしまう場合がある。特に、発光素子11から出射される光が高出力のレーザー光である場合は、光反射膜が劣化しやすい。それに対して、本実施形態では、光反射面23の上に光反射膜が形成されていないため、光反射膜の劣化に起因する光反射面23における光反射率の低下を抑制することができる。
【0043】
具体的に、光学素子20a、20bの光反射面23において、空気(屈折率1.0)に対して全反射が生じるようにするためには、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率をnとし、発光素子11からの光の入射角をθとしたときに、光反射面23を、sinθ≧1/nを満たすように設ければよい。
【0044】
例えば、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が1.75である場合は、θが約34.9°以上となるように光反射面23を設ければよい。発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が1.6である場合は、θが約38.7°以上となるように光反射面23を設ければよい。
【0045】
このように、光反射面23における全反射の臨界角は、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率が高くなるにつれて小さくなる。このため、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率を高くすることにより、光学素子20a、20bの設計自由度が向上する。従って、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率は、高い方が好ましい。発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率は、1.70以上であることが好ましく、1.75以上であることがより好ましい。通常、d線に対する光学素子20a、20bの屈折率が高いと、発光素子11からの光の波長における光学素子20a、20bの屈折率も高くなる。このため、光学素子20a、20bのd線に対する屈折率(nd)は1.75以上であることが好ましく、1.80以上であることがより好ましい。
【0046】
なお、本実施形態では、より具体的には、光学素子20a、20bのd線に対する屈折率は、1.806、波長850nmにおける屈折率は、1.790、波長1050nmにおける屈折率は、1.784、波長1310nmにおける屈折率は、1.779、波長1550nmにおける屈折率は、1.775であり、光反射面23は、入射角が45°となるように設けられている。第1及び第2の光入出面21,22のそれぞれは、入射角が90°となるように設けられている。
【0047】
レンズ面部22aは、正の光学的パワーを有する。具体的には、本実施形態では、レンズ面部22aは、凸状に形成されており、光を屈折させる屈折面である。より具体的には、本実施形態では、レンズ面部22aは、非球面である。ここで、「非球面」とは、球面ではない面のうち、回転対称軸を有する面のことをいう。
【0048】
但し、本発明において、レンズ面部は、正の光学的パワーを有するものである限りにおいて特に限定されない。レンズ面部は、例えば、回転対称軸を有さない自由曲面であってもよい。また、レンズ面部は、複数のレンズ面が不連続に配列されたフレネルレンズ面により構成されていてもよいし、光を回折させる回折面により構成されていてもよい。
【0049】
本実施形態のように、レンズ面部が凸状に形成された屈折面である場合は、光学素子の製造が容易となる。それに対して、レンズ面部が回折面やフレネルレンズ面により構成されている場合は、レンズ面部の高さを抑制することができる。また、より高い正の光学的パワーを実現しやすい。
【0050】
一方、第1の光入出面21には、レンズ面部は形成されていない。本実施形態では、第1の光入出面21は、平面状に形成されている。
【0051】
次に、主として図1を参照しながら、光学装置1の動作について説明する。
【0052】
図示しない制御部から発光素子11に信号が入力されると、発光素子11は、入力された信号に応じた光を出射する。ここでは、具体的には、発光素子11は、放射光を出射する。
【0053】
発光素子11からの光は、光学素子20aの第1の光入出面21(光入射面)から光学素子20a内に入射し、光反射面23において反射された後に、第2の光入出面22のレンズ面部22aから光学素子20a外に出射する。ここで、上述のように、発光素子11から出射される光は放射光であり、第1の光入出面21は、平面状に形成されている。このため、光学素子20a内を伝搬する光は発散光となる。そして、光学素子20aから出射する際に、正の光学的パワーを有するレンズ面部22aにより屈折し、集束光となり、光ファイバ10の端面に合焦する。
【0054】
合焦した光は、光ファイバ10内を伝搬し、端部10bの端面から発散光として出射する。出射光は、光学素子20bの第2の光入出面22のレンズ面部22aから入射し、光反射面23において反射された後に、第1の光入出面21から出射する。ここで、本実施形態では、レンズ面部22aは、正の光学的パワーを有する。このため、光学素子20bに入射した光は、集束光となる。そして、平面状に形成された第1の光入出面21においてさらに屈折し、受光素子12の受光面12aに合焦する。
【0055】
受光素子12は、受光面12aにおいて受光した光に応じた電気信号を出力する。以上の工程により、発光素子11に入力された信号に応じた電気信号が受光素子12から出力される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の光学素子20a、20bでは、第1及び第2の光入出面21,22の一方から入射した光は光反射面23により反射されることにより、屈折する。従って、光学素子20a、20bを用いることにより、光ファイバ10を発光素子11、受光素子12の光軸に対して傾斜して配置することができる。例えば、光ファイバ10を発光素子11、受光素子12の光軸に対して垂直に配置することができる。また、本実施形態の光学素子20a、20bでは、光ファイバ10側の第2の光入出面22に正の光学的パワーを有するレンズ面部22aが形成されている。このため、受光素子12または発光素子11側の第1の光入出面21における光束径を小さくすることができる。さらに、光学素子20a、20bは、ガラス製であるため、屈折率を高くし得る。従って、第1の光入出面21と受光素子12または発光素子11との間の距離を短くすることができる。よって、光学装置1を低背化することができる。
【0057】
以下、この理由についてさらに詳細に説明する。
【0058】
図3は、第1の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図3に示す光学装置では、反射面を有さないレンズ103により光ファイバ101と受光素子102とが光学的に結合されている。このため、光ファイバ101の端部101aを、光軸が受光素子102の光軸と一致するように配置する必要がある。よって、受光素子102の光軸方向に、レンズ103、光ファイバ101の端部101aが配列されることとなる。従って、光学装置を低背化することが困難である。
【0059】
図4は、第2の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図4に示す光学装置では、レンズ103の上に、反射部材104を設けることにより、屈折光学系が構成されている。このため、図4に示す光学装置では、受光素子102の光軸上とは異なる場所において、光ファイバ101の端部101aの光軸を受光素子102の光軸と垂直に配置することができる分、低背化を図ることができる。しかしながら、受光素子102、レンズ103及び反射部材104を受光素子102の光軸方向に配列する必要がある。このため、光学装置の低背化を十分に図ることができない。
【0060】
図5は、第3の比較例に係る光学装置の一部の模式図である。図5に示す光学装置では、レンズ103及び反射部材104の代わりに、プリズム106が配置されている。そして、プリズム106の光入出面106a、106bのうち、受光素子102側の光入出面106bに正の光学的パワーを有するレンズ面部106b1が設けられている。この光学装置では、受光素子102の光軸方向にプリズム106のみを配置すればよいため、光学装置を低背化することができる。
【0061】
しかしながら、図5に示す光学装置では、光ファイバ101側の光入出面106aが平面状に形成されている。このため、プリズム106に入射した光は、発散光としてプリズム106内を伝搬する。よって、プリズム106内を伝搬するにつれて光束径が拡大していく。従って、例えば、図5に示すように、光入出面106aから入射した光の一部が光入出面106bに伝搬されなくなる場合がある。光入出面106aから入射した光が光入出面106bに確実に伝搬するようにするためには、プリズム106を大型化する必要がある。しかしながら、プリズム106を大型化すると、光学装置が大型化してしまう。
【0062】
また、光入出面106aから入射した光が光入出面106bに確実に伝搬するようにするために、図6に示すように、プリズム106の光入出面106aに入射する光のスポット径を小さくすることも考えられる。しかしながら、この場合であっても、光出射面である光入出面106bにおける光束径が大きくなる。このため、光入出面106bから焦点までの距離が長くなる。従って、光学装置を十分に低背化することができない。
【0063】
例えば、レンズ面部106b1の光学的パワーを大きくすれば光入出面106bから焦点までの距離を短くできるものの、レンズ面部106b1と受光素子102とが位置的に干渉してしまう虞がある。また、例えば、レンズ面部106b1を屈折面により構成する場合、レンズ面部106b1の曲率が大きくなるため、光学素子の作製が困難となる。特に、光学素子をモールドプレスにより作製しようとする場合は、光学素子の作製がより困難となる。
【0064】
それに対して、本実施形態では、図1に示すように、レンズ面部22aは、光ファイバ10側の第2の光入出面22に形成されている。このため、光学素子20b内を伝搬するに従って光束径は小さくなる。よって、受光素子12側の第1の光入出面21における光束径が小さくなる。また、第1の光入出面21に入射する光が集束光であるため、光学素子20bから出射する際に屈折することにより、さらに焦点距離が短くなる。特に本実施形態では、光学素子20bは、ガラス製であり、高い屈折率を有するため、非常に短い焦点距離となる。従って、光学素子20bの第1の光入出面21と受光素子12の受光面12aとの間の距離を短くすることができる。同様に、発光素子11側に関しても、発光素子11と光学素子20aの第1の光入出面21との間の距離を短くすることができる。従って、光学装置1を低背化することができる。
【0065】
さらに、本実施形態のように、所謂プリズム機能とレンズ機能とを兼ね備えた光学素子20a、20bを用いることにより、光学装置1の部品点数を削減することができる。
【0066】
また、本実施形態の光学素子20a、20bでは、レンズ面部22aがアレイ状に複数形成されている。このため、各一つの光学素子20a、20bで複数の光ファイバ10を受光素子12、発光素子11と光学的に結合することができる。光ファイバ毎に光学素子を設けた場合と比較して、光学装置を小型化でき、光学素子のアライメントが容易となる。
【0067】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0068】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【0069】
本実施形態では、レンズ面部22aが、レンズ面部22aから入射した光が第1の光入出面21上に合焦するような形状に形成されている。このため、図7に示すように、光学素子20bの第1の光入出面21の直下に受光素子12を配置することができる。同様に、光学素子20aの第1の光入出面21の直下に発光素子11を配置することができる。従って、光学装置をさらに低背化することができる。
【0070】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係る光学装置の一部の模式図である。
【0071】
上記実施形態では、第1及び第2の光入出面21,22のうち、光ファイバ10側の第2の光入出面22のみにレンズ面部22aが形成されている場合について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図8に示すように、光ファイバ10側の第2の光入出面22にレンズ面部22aが形成されていると共に、受光素子12,発光素子11側の第1の光入出面21にも、正の光学的パワーを有するレンズ面部21aが形成されている。本変形例では、第1の光入出面21と焦点との間の距離をさらに短くすることができる。従って、光学装置をさらに低背化することができる。
【0072】
(第3の変形例)
図10は、第3の変形例に係る光学装置の模式図である。
【0073】
上記第1の実施形態では、光学素子20a、20bのそれぞれが、第1及び第2の光入出面21,22と光反射面23とを側面とする略三角柱状に形成されている場合について説明した。但し、本発明において、光学素子の形状は、これに限定されない。光学素子は、第1及び第2の光入出面と光反射面とを有する限り、どのような形状を有するものであってもよい。
【0074】
例えば、図10に示すように、光学素子20a、20bのそれぞれにおいて、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部と、第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部とのそれぞれが面取り状に形成されていてもよい。
【0075】
第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部を面取り状に形成することによって、光学素子20a、20bのy方向に沿った寸法を小さくすることができる。よって、光学装置のさらなる低背化を図ることができる。
【0076】
一方、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部を面取り状に形成することによって、光学装置のx方向に沿った寸法を小さくし得る。
【0077】
また、角部の少なくとも一つを面取り状に形成することにより、光学素子20a、20b、ひいては光学装置の軽量化を図ることができる。
【0078】
また、第1の光入出面21と光反射面23とにより構成されている角部と、第2の光入出面22と光反射面23とにより構成されている角部とのそれぞれに形成されており、x方向またはy方向に対して垂直な平面部26,27を、光学素子のフォルダに対する当接面として利用することにより、光学素子20a、20bの位置決めが容易となる。
【0079】
なお、本変形例では、面取り状に形成されている角部に平面部が形成されている例について説明した。但し、面取り状に形成されている角部の表面は、曲面状であってもよい。
【0080】
(第4の変形例)
図11は、第4の変形例における光学素子の略図的斜視図である。図12は、第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的分解斜視図である。図13は、第4の変形例に係る光学装置の一部の略図的側面図である。図14は、図13のXIV略図的矢視図である。
【0081】
図11に示すように、本変形例における光学素子20cでは、第2の光入出面22の光路上に位置する部分以外の部分に、線条の凸部22bが形成されている。凸部22bは、第2の光入出面22の幅方向において一方側端部から他方側端部にわたって形成されている。
【0082】
図12〜図14に示すように、光学素子20cは、フォルダ30に取り付けられている。詳細には、フォルダ30の当接面30aに、凸部22bの形状に対応した形状の凹部30a1が形成されている。そして、凸部22bと凹部30a1とが嵌合するように、光学素子20cの第2の光入出面22と当接面30aとが当接している。第2の光入出面22と当接面30aとは、第2の光入出面22のうち、光路上に位置する部分から凸部22bにより隔てられた部分22cに塗布された接着剤28により接着されている。
【0083】
本変形例のように、凸部22bを設けておくことにより、接着剤28が光路上に位置する部分に流入することを抑制することができる。また、凸部22bと凹部30a1とによりフォルダ30に対する光学素子20cの位置決めが容易となる。
【0084】
なお、本変形例では、凸部22bを形成したが、凸部22bに替えて、または凸部22bと共に凹部を形成してもよい。その場合であっても、接着剤28の光路上に位置する部分への流動を抑制することができる。
【0085】
接着剤28の光路上に位置する部分への流動をより効果的に抑制する観点からは、複数の凹凸を設けることが好ましい。
【0086】
また、形成する凹凸の形状は、特に限定されない。例えば、横断面台形状または横断面半円形状の線条の凸部または凹部、円柱状、円錐状、円錐台状の凸部または凹部を設けてもよい。
【0087】
また、本変形例では、第2の光入出面22に凹凸を設ける例について説明したが、第1の光入出面21や光反射面23に凹凸を設けてもよい。また、第1及び第2の光入出面21,22並びに光反射面23のうちの2つ以上の面に凹凸を設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…光学装置
10…光ファイバ
10a、10b…光ファイバの端部
11…発光素子
12…受光素子
12a…受光素子の受光面
13…回路基板
20a、20b、20c…光学素子
21…第1の光入出面
21a…レンズ面部
22…第2の光入出面
22a…レンズ面部
22b…凸部
23…光反射面
24,25…反射抑制膜
26,27…平面部
28…接着剤
30…フォルダ
30a…当接面
30a1…凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受発光素子と、先端部の光軸が前記受発光素子の光軸と垂直な光ファイバとを備える光学装置において、前記受発光素子と前記光ファイバとの光学的結合に用いられるガラス製の光学素子であって、
前記受発光素子に対面する第1の光入出面と、
前記光ファイバに対面する第2の光入出面と、
前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面と、
を備え、
前記第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学素子。
【請求項2】
光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられるガラス製の光学素子であって、
第1及び第2の光入出面と、
前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面とを有し、
第2の光入出面が、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学素子。
【請求項3】
前記レンズ面部は、前記レンズ面部から入射した光が前記第1の光入出面上に合焦するような形状に形成されている、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の光入出面のそれぞれが、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項5】
d線に対する屈折率(nd)が1.75以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記レンズ面部が、アレイ状に複数形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1及び第2の光入出面のそれぞれの上に形成されている反射抑制膜をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
モールドプレスにより形成された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1及び第2の光入出面と前記光反射面とを側面として有し、前記第2の光入出面と前記光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている略三角柱状である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の光入出面と前記光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている、請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1及び第2の光入出面並びに前記光反射面のうちの少なくともひとつの光路上に位置する部分以外の部分に凹凸が形成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
受発光素子と、
先端部の光軸が前記受発光素子の光軸と垂直な光ファイバと、
前記受発光素子と前記光ファイバとを光学的に結合しているガラス製の光学素子と、
を備え、
前記光学素子は、前記受発光素子に対面する第1の光入出面と、前記光ファイバに対面する第2の光入出面と、前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面とを備え、前記第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学装置。
【請求項1】
受発光素子と、先端部の光軸が前記受発光素子の光軸と垂直な光ファイバとを備える光学装置において、前記受発光素子と前記光ファイバとの光学的結合に用いられるガラス製の光学素子であって、
前記受発光素子に対面する第1の光入出面と、
前記光ファイバに対面する第2の光入出面と、
前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面と、
を備え、
前記第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学素子。
【請求項2】
光ファイバと受発光素子との光学的結合に用いられるガラス製の光学素子であって、
第1及び第2の光入出面と、
前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面とを有し、
第2の光入出面が、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学素子。
【請求項3】
前記レンズ面部は、前記レンズ面部から入射した光が前記第1の光入出面上に合焦するような形状に形成されている、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の光入出面のそれぞれが、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項5】
d線に対する屈折率(nd)が1.75以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記レンズ面部が、アレイ状に複数形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1及び第2の光入出面のそれぞれの上に形成されている反射抑制膜をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
モールドプレスにより形成された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1及び第2の光入出面と前記光反射面とを側面として有し、前記第2の光入出面と前記光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている略三角柱状である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の光入出面と前記光反射面とで構成される角部が面取り状に形成されている、請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1及び第2の光入出面並びに前記光反射面のうちの少なくともひとつの光路上に位置する部分以外の部分に凹凸が形成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
受発光素子と、
先端部の光軸が前記受発光素子の光軸と垂直な光ファイバと、
前記受発光素子と前記光ファイバとを光学的に結合しているガラス製の光学素子と、
を備え、
前記光学素子は、前記受発光素子に対面する第1の光入出面と、前記光ファイバに対面する第2の光入出面と、前記第1及び第2の光入出面の一方から入射した光を前記第1及び第2の光入出面の他方側へ反射する光反射面とを備え、前記第2の光入出面は、正の光学的パワーを有するレンズ面部を有する、光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−248312(P2011−248312A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126509(P2010−126509)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
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