説明

光学素子搭載用パッケージ及び光モジュール

【課題】簡単な構成で、コストをかけることなく、インピーダンス不整合による多重反射の発生を防止して、反射損失を小さくできる光学素子搭載用パッケージを提供する。
【解決手段】光学素子搭載用パッケージは、LD7と、PD6と、LD7及びPD6を実装するステム5とを備える。光学素子搭載用パッケージは、LD7のカソード電極に接続された第1のリードピン1と、PD6のカソード電極に接続された第2のリードピン2と、LD7のアノード電極に接続された第3のリードピン3と、ステム5に直接接続された第4のリードピン4とを備え、第1〜第4のリードピン1〜4は、ステム5に同心円状に配置され、第1のリードピン1と第3のリードピン、第2のリードピンと第4のリードピンがそれぞれ同心円の中心を挟んで対角上に配置され、第1のリードピン1と第3のリードピン3の軸間距離が、第2のリードピン2と第4のリードピン4の軸間距離よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子や受光素子などの光学素子を搭載し、高速通信を行うための光学素子搭載用パッケージ及び該パッケージを備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信の分野において、発光素子(LD:Laser Diode)や受光素子(PD:Photo Diode)などの光学素子を搭載した光学素子搭載用パッケージ(CANパッケージともいう)が知られている。このようなCANパッケージにおいては、近年の高速通信に対する需要の高まりに伴い、伝送信号の高周波化及び伝送速度の高速化が進められているが、より高い周波数の信号を伝送する場合には、信号線路上の接続部分における僅かなインピーダンスギャップでも多重反射による損失が大きくなり、伝送効率を低下させてしまうという問題があった。
【0003】
上記問題に対して、例えば、特許文献1には、通信速度が6Gbpsを超えるような高周波信号の入出力時における反射損失を小さくできる電子部品搭載用パッケージが記載されている。この特許文献1に記載の技術によれば、図6に示すセラミック基板101を、LDを実装した配線基板に貼り付ける、あるいは、図7に示すガラス封止部102の比誘電率を変化させるなどにより、信号線路上のインピーダンスを整合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−62512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示した方法では、配線基板上にセラミック基板を半田付け等で取り付ける必要があるため、セラミック基板の材料コストがかかる上に、セラミック基板の取付工程が増えるために製造コストが高くなり、また、セラミック基板の取り付けを自動化することは難しいという問題がある。また、図7に示した方法では、ガラス封止部において所望のインピーダンスを得るために、ステムの貫通孔の中心にリードピンを正確に封止する必要があるが、製造上の誤差があるため、現実的には難しく、インピーダンスにバラツキが出てしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、コストをかけることなく、インピーダンス不整合による多重反射の発生を防止して、反射損失を小さくできる光学素子搭載用パッケージ及び該パッケージを備えた光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光学素子搭載用パッケージは、一端面から信号光を出射する発光素子と、発光素子の一端面の反対側の面から出射される漏洩光を受信する受光素子と、発光素子及び受光素子を実装するステムとを備えた光学素子搭載用パッケージであって、発光素子のカソード電極に接続された第1のリードピンと、受光素子のアノード電極またはカソード電極のいずれかに接続された第2のリードピンと、発光素子のアノード電極に接続された第3のリードピンと、ステムに直接接続された第4のリードピンとを備え、第1〜第4のリードピンは、ステムに同心円状に配置され、第1のリードピンと第3のリードピンが、同心円の中心を挟んで対角上に配置され、第2のリードピンと第4のリードピンが、同心円の中心を挟んで対角上に配置され、第1のリードピンと第3のリードピンの軸間距離が、第2のリードピンと第4のリードピンの軸間距離よりも短い。
【0008】
また、発光素子のカソード電極と第1のリードピンとがワイヤで接続されると共に、発光素子のアノード電極と第3のリードピンとがワイヤで接続され、カソード電極からワイヤを介して第1のリードピンのステム下面と交わる位置までのカソード側信号線路長及びアノード電極からワイヤを介して第3のリードピンのステム下面と交わる位置までのアノード側信号線路長は、それぞれ発光素子が出射する信号速度の波長換算値の1/4未満であることが望ましい。
また、受光素子の受光面は、発光素子の光軸に対して傾いていることが望ましい。
また、本発明による光モジュールは、上記の光学素子搭載用パッケージを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LDと接続される2つのリードピン間の軸間距離を短くし、ステム下面からLDに至るまでの信号線路長を、信号波長の1/4未満にしたため、簡単な構成で、コストをかけることなく、インピーダンスの不整合点を少なくして多重反射の発生を防止して、送信光信号の波形の歪みを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光学素子搭載用パッケージの一例を示す図である。
【図2】図1の光学素子搭載用パッケージにおける第1〜第4のリードピンの配置状態を模式的に示した図である。
【図3】図1(A)のXX断面を示す図である。
【図4】図1に示した光学素子搭載用パッケージに蓋部が合体された状態の一例を示す図である。
【図5】図1に示した光学素子搭載用パッケージを備えた光モジュールの一例を示す図である。
【図6】特許文献1に記載の従来技術を示す図である。
【図7】特許文献1に記載の従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明による光学素子搭載用パッケージの一例を示す図である。図1(A)は光学素子搭載用パッケージを上面から見たときの図、図1(B)は光学素子搭載用パッケージを側面から見たときの図、図1(C)は光学素子搭載用パッケージを斜め上から見たときの図である。図2は、図1の光学素子搭載用パッケージにおける第1〜第4のリードピンの配置状態を模式的に示した図である。図3は、図1(A)のXX断面を示す図である。図中、1は第1のリードピン、2は第2のリードピン、3は第3のリードピン、4は第4のリードピン、5はステム、6は受光素子(PD:Photo Diode)、7は発光素子(LD:Laser Diode)、8はヒートシンク、8aは発光素子を搭載するサブマウント、9は受光素子を搭載するサブマウント、10は傾斜凹部を示す。
【0012】
光学素子搭載用パッケージは、一端面から信号光を出射するLD7と、LD7の一端面の反対側の面から出射される漏洩光を受信するPD6と、LD7及びPD6を実装するステム5とを備える。ステム5は、鉄(Fe)、コバール(Kovar)、SPC等の金属板をプレス加工して円板状に成型し、その表面にAuメッキを施したもので、ステム5の上面部の略中央には、傾斜凹部10(図3)とヒートシンク8が一体的に形成されている。ヒートシンク8は、ステム5の上面部に半円柱状に突出しており、その側面に、サブマウント8aを介してLD7が取り付けられ、LD7で発生した熱を放熱するための放熱板として機能する。
【0013】
傾斜凹部10は、図3に示すように、底面が所定の角度で傾斜しており、この傾斜底面に、サブマウント9を介して、あるいは、サブマウント9を介さず直接にPD6がダイボンドされる。換言すれば、PD6の受光面は、LD7の光軸に対して傾いて取り付けられる。これは、LD7からの出射光がPD6の受光面で反射して戻り光となることを防止するためである。本例の場合、PD6は、サブマウント9を介してステム5の上面部に実装されるが、傾斜凹部10の底面は第4のリードピン4から第2のリードピン2に向かう方向に徐々に深くなっているため、PD6の受光面がLD7の実装面と反対側(第2のリードピン2の方向)に傾斜される。これにより、PD6の受光面での反射光がLD7に戻ることをより確実に防止することができる。
【0014】
図1(A)において、ステム5には、3つの貫通孔が形成されており、これら3つの貫通孔に第1リードピン1、第2のリードピン2、及び第3のリードピン3がそれぞれ低融点ガラスなどの封止材(比誘電率er)で機密封止され、ステム5に固定される。これにより第1〜第3のリードピン1〜3それぞれとステム5との間に封止部1a〜3aが形成される。また、ステム5の下面部には第4のリードピン4が直付け固定される。
【0015】
ステム5および第1〜第3のリードピン1〜3の各部品は電気的接続が必要となることから例えば鉄系の合金で構成される。ステム5と第1〜第3のリードピン1〜3の間は気密封止のためガラス材料にて封止されているが、材料の線膨張係数の違いによる気密封止の破壊を防ぐために、適切な材料を選定する必要がある。既存の技術では、前述のコバール(Kovar)等の低線膨張材を用いたマッチドシールと、SPC等の通常の鉄系材料を用いたコンプレッションシールがある。各金属部品は酸化等の影響を排除するためにAuメッキ加工されている。Auメッキされることで、ワイヤボンディング性も良好となる。
【0016】
図1(B)、(C)において、第1のリードピン1は、LD7のカソード電極にワイヤ7kを介して接続される。また、第2のリードピン2は、PD6のカソード電極(またはアノード電極でもよい)にワイヤ6kを介して接続される。第3のリードピン3は、LD7のアノード電極にワイヤ7aを介して接続される。また、図1(A)に示すように、第1〜第4のリードピン1〜4は、ステム5に同心円状に配置され、第1のリードピン1と第3のリードピン3が、同心円の中心を挟んで対角上に配置され、第2のリードピン2と第4のリードピン4が、同心円の中心を挟んで対角上に配置される。
【0017】
そして、図2に示すように、第1のリードピン1と第3のリードピン3の軸間距離m13が、第2のリードピン2と第4のリードピン4の軸間距離m24よりも短く構成される。つまり、第1〜第4のリードピン1〜4は、光学素子搭載用パッケージの上面から見たときに、対角線がステム5の中心を通る菱形状に配置されている。
【0018】
図1(B)において、LD7のカソード電極と第1のリードピン1とがワイヤ7kで接続されると共に、LD7のアノード電極と第3のリードピン3とがワイヤ7aで接続される。そして、LD7のカソード電極からワイヤ7kを介して第1のリードピン1のステム5下面と交わる位置までのカソード側信号線路長L1及びLD7のアノード電極からワイヤ7aを介して第3のリードピン3のステム5下面と交わる位置までのアノード側信号線路長L2を、それぞれLD7が出射する信号速度の波長換算値の1/4未満とする。
【0019】
すなわち、封止部1aの比誘電率をer、封止部1aの長さ(ステム厚)をd、第1のリードピン1のインナーリードの長さをd、インナーリードからLD7までのワイヤ7kの長さをdとした場合、カソード側信号線路長L1は、
L1=d×er+d+d …式(1)
と表され、上記の波長換算値をλとした場合、
λ/4>L1 …式(2)
の条件を満たすように、カソード側信号線路長L1が決定される。
【0020】
また、同様に、封止部3aの比誘電率をer、封止部3aの長さ(ステム厚)をd、第3のリードピン3のインナーリードの長さをd、インナーリードからLD7までのワイヤ7aの長さをdとした場合、アノード側信号線路長L2は、
L2=d×er+d+d …式(3)
と表され、波長換算値をλとした場合、
λ/4>L2 …式(4)
の条件を満たすように、アノード側信号線路長L2が決定される。
【0021】
上述の式(2)及び式(4)の条件を満たすためには、第1のリードピン1と第3のリードピン3の軸間距離m13を短くする必要がある。例えば、封止部の比誘電率erが4.1、第1のリードピン1と第3のリードピン3の軸間距離m13が1.35mm、封止部長dが1.0mm、インナーリード長dが0.9mm、LD7のチップ幅が0.25mm、PD6のチップ幅が0.38mm程度のものが使用される。なお、第2のリードピン2と第4のリードピン4の軸間距離m24は、第1のリードピン1と第3のリードピン3の軸間距離m13のように短くする必要はなく、PD6の実装エリアを確保しつつ、LD7やPD6のワイヤなどのビンディング工程に支障が無い程度に設定すればよい。
【0022】
このように、カソード側信号線路長L1及びアノード側信号線路長L2を、使用周波数で波長換算した波長換算値λの1/4未満に抑えることで、集中定数回路として扱うことができる。この集中定数回路とは、一般に、周波数の波長よりも十分小さい形状の電子部品や十分短い配線長で構成され、かつ、部品間の配線のインピーダンスが無視できるほど小さい回路のことをいう。そして、この集中定数回路の対義の概念として、分布定数回路がある。高周波回路の設計において、基本的に配線長がλ/4以上となる場合には、配線を分布定数線路として取り扱う必要があることが知られている。
【0023】
このため本実施形態では、集中定数回路と分布定数回路の境界となる信号線路長をλ/4とし、カソード側信号線路長L1及びアノード側信号線路長L2をλ/4未満に抑えることで、これらの信号線路を集中定数回路として扱えるように構成した。また、信号線路長をλ/4未満に抑えることにより、インピーダンス不整合点は実質的に1点となり、多重反射が発生しないので、良質な光波形を得ることができる。また、λ/4未満の線路は、インピーダンス整合を考慮した設計上の制約を受けることは無い。
【0024】
図4は、図1に示した光学素子搭載用パッケージに蓋部が合体された状態の一例を示す図である。図4(A)は側面図、図4(B)は底面図を示す。図中、11はCANパッケージ、12は蓋部を示す。蓋部12は、ステム5と協働してステム5上にLDやPD等の光学素子搭載空間を実現する。蓋部12及びステム5は共に金属製であり、両者は蓋部12の根元部をステム5に対してプロジェクション溶接(抵抗溶接とも呼ばれる)することにより当該光学素子搭載空間を気密シールしつつ合体される。このように光学素子搭載用パッケージは、ステム5に蓋部12が合体されて、CANパッケージ11として構成される。
【0025】
蓋部12は、LD7と対向する部分に光を透過させる窓部を設けてもよい。この場合、蓋部12のLD7と対向する部分に孔を設け、この孔に、平板状あるいはレンズ状のガラス製部材を低融点ガラス等による接合や、成形によって一体的に窓部を形成する。なお、蓋部12の金属材料は、上記の平板状あるいはレンズ状のガラス製部材と同程度の熱膨張係数を有するものが好ましい。
【0026】
図5は、図1に示した光学素子搭載用パッケージを備えた光モジュールの一例を示す図である。図中、13は光モジュールを示す。本例の光モジュール13は、図4のCANパッケージ11を一体的に組み込んで構成される。この光モジュール13は、CANパッケージ11により、内部にPD、LD等の光学素子を搭載し、これら光学素子を光ファイバに光結合させるために、集光レンズ、スリーブ等の調芯機構を備えたものである。このように、本発明は、光学素子搭載用パッケージを備えた光モジュールの形態としてもよい。
【0027】
このように本発明によれば、LDと接続される2つのリードピン間の軸間距離を短くし、ステム下面からLDに至るまでの信号線路長を、信号波長の1/4未満にしたため、簡単な構成で、コストをかけることなく、インピーダンスの不整合点を少なくして多重反射の発生を防止して、送信光信号の波形の歪みを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…第1のリードピン、1a〜3a…封止部、2…第2のリードピン、3…第3のリードピン、4…第4のリードピン、5…ステム、6…PD、7…LD、6k,7a,7k…ワイヤ、8…ヒートシンク、8a,9…サブマウント、10…傾斜凹部、11…CANパッケージ、12…蓋部、13…光モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面から信号光を出射する発光素子と、該発光素子の一端面の反対側の面から出射される漏洩光を受信する受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子を実装するステムとを備えた光学素子搭載用パッケージであって、
前記発光素子のカソード電極に接続された第1のリードピンと、前記受光素子のアノード電極またはカソード電極のいずれかに接続された第2のリードピンと、前記発光素子のアノード電極に接続された第3のリードピンと、前記ステムに直接接続された第4のリードピンとを備え、
前記第1〜第4のリードピンは、前記ステムに同心円状に配置され、前記第1のリードピンと前記第3のリードピンが、前記同心円の中心を挟んで対角上に配置され、前記第2のリードピンと前記第4のリードピンが、前記同心円の中心を挟んで対角上に配置され、
前記第1のリードピンと前記第3のリードピンの軸間距離が、前記第2のリードピンと前記第4のリードピンの軸間距離よりも短いことを特徴とする光学素子搭載用パッケージ。
【請求項2】
前記発光素子のカソード電極と前記第1のリードピンとがワイヤで接続されると共に、前記発光素子のアノード電極と前記第3のリードピンとがワイヤで接続され、前記カソード電極からワイヤを介して前記第1のリードピンの前記ステム下面と交わる位置までのカソード側信号線路長及び前記アノード電極からワイヤを介して前記第3のリードピンの前記ステム下面と交わる位置までのアノード側信号線路長は、それぞれ前記発光素子が出射する信号速度の波長換算値の1/4未満であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子搭載用パッケージ。
【請求項3】
前記受光素子の受光面は、前記発光素子の光軸に対して傾いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子搭載用パッケージ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子搭載用パッケージを備えた光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238647(P2012−238647A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105247(P2011−105247)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】