説明

光学素子用内面反射防止黒色塗料

【課題】環境負荷の大きいコールタールやメチレンジアニリンを含有せず、塗料の経時保管安定性が高く、該塗料を塗工した光学素子を高温高湿環境で保管しても低い内面反射率を維持できる光学素子用内面反射防止黒色塗料を提供する。
【解決手段】塗料固形分に対し、カーボンブラック0.1乃至20.0質量%、二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアから選ばれる金属酸化物20乃至70質量%を含有し、塗料全体に対して、活性水素基または電子吸引性基を有するシランカップリング剤を0.5乃至10.0質量%で含有し、活性水素化合物および電子吸引性化合物を含有する塗料で、その分散粒径D90を50乃至800nmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズやプリズム等の光学素子の縁や稜部、コバなどの周辺部に塗布し、フレアやゴーストの発生原因となる迷光を吸収するための反射防止膜を形成するのに用いる、光学素子用内面反射防止黒色塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズやプリズム等の光学素子を組み合わせて構成された光学系では、各光学素子の縁や稜部などの周辺部で差し込んだ光が乱反射や散乱して迷光を生じ、結像した画像にゴーストやフレアが発生し、画質低下の原因の一つとなってしまう。
【0003】
そこで、このような迷光による光学性能の低下を抑制するため、光学素子の縁や稜部などの周辺部に黒色塗料を塗布して内面反射防止機能を持つ黒色塗膜を形成している。
【0004】
これら迷光の反射防止機能を持つ黒色塗料には、光吸収剤として光吸収能の高いコールタールを使用し、光学素子との塗膜密着性の良さからメチレンジアニリンを硬化剤としたエポキシ系の塗料が従来から広く用いられていた。
【0005】
しかしながら、コールタールやメチレンジアニリンは環境負荷が大きいため、近年では環境負荷の少ない代替材料による塗料構成が提案されてきた。
【0006】
コールタールを含有しない内面反射防止黒色塗料として、平均粒径0.1μm以下、屈折率1.5以上の非黒色無機微粒子と黒色顔料を含有する内面反射防止黒色塗料が提案されている(特許文献1)。しかし、この塗料では、平均粒径0.1μm以下、屈折率1.5以上の非黒色無機微粒子と黒色顔料の両者を均一に分散しておくことが難しく、塗料を製造して数日経つと所望の内面反射防止機能が得られなくなる(特に内面拡散反射率が高くなってしまう)。すなわち、塗料の経時安定性に問題があった。この原因は、異なる二種類の粒子同士間で相互作用が働き、ヘテロ凝集が起きてしまったためと推察される。
【0007】
他にも、コールタールやメチレンジアニリンを含有しない内面反射防止黒色塗料として、屈折率1.65以上のエポキシ樹脂前駆体と、硬化触媒と、黒色粒子とを含む反射防止塗料が提案されている(特許文献2)。しかし、ここで提案されている塗料は、塗料の経時保管安定性は幾分改善されているものの、塗工した光学素子を高温高湿環境で経時保管した場合、経時保管前の内面反射率に比べて劣化する(特に内面正反射率が高くなってしまう)現象が生じた。そして、このような現象は近年使われるようになってきた屈折率1.7以上と高い光学素子について、特に顕著に現れてきていた。
【0008】
このため、特に高い屈折率の光学素子に対応した、環境負荷の少ない材料で、塗料の経時保管安定性があり、塗工した光学素子の高温高湿環境経時における内面反射率の劣化がない、すなわち、内面拡散反射率、内面正反射率とも高くならない塗料の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−82510号公報
【特許文献2】特開2009−282488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、下記事項が達成された光学素子用内面反射防止黒色塗料を提供することである。
1)環境負荷の大きいコールタールやメチレンジアニリンを含有しないこと。
2)経時保管安定性が高いこと。
3)塗工成膜した光学素子を高温高湿環境下に経時保管しても低い内面反射率を維持しうること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、光吸収剤としてカーボンブラックを含む光学素子用内面反射防止黒色塗料であって、
該塗料は、カーボンブラックと共に、金属酸化物、活性水素化合物、該活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物、およびシランカップリング剤を含有し、
該活性水素化合物は、活性水素基として水酸基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる官能基を同一でも異なっていてもよい、少なくとも2個含有する化合物であり、
該カーボンブラックは、塗料固形分に対し0.1質量%以上20.0質量%以下含有され、
該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアから選ばれる少なくとも1種であり、かつ、塗料固形分に対し20質量%以上70質量%以下含有され、
該シランカップリング剤は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基およびビニル基から選ばれた官能基を有し、塗料全体に対し0.5質量%以上10.0質量%以下で含有され、
かつ、該塗料の分散粒径D90が50nm以上800nm以下である
ことを特徴とする光学素子用内面反射防止黒色塗料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、環境負荷の大きいコールタールやメチレンジアニリンを含有しない、高い経時保管安定性を有し、塗工成膜光学素子の高温高湿環境下の経時保管でも低い内面反射率を維持可能である光学素子用内面反射防止黒色塗料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光学素子用内面反射防止黒色塗料をカメラ用レンズに塗工して、反射防止膜を形成した一例を示す断面概略図である。
【図2】本発明の光学素子用内面反射防止黒色塗料を塗工したレンズコバ部(端面部)を拡大し、外部からの入射光が反射防止膜塗工したレンズ内面に到達した際の反射光の放出例(内面正反射光、内面拡散反射光)を表した概略図である。
【図3】本発明の光学素子用内面反射防止黒色塗料を直角三角プリズムに塗工して、反射防止膜を形成した内面正反射率評価用試料の概略図である。
【図4】分光光度計による内面正反射率の測定方法を説明するための概略図である。
【図5】分光光度計による内面拡散反射率の測定方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、光吸収剤としてカーボンブラックを使用した光学素子用内面反射防止黒色塗料(以下、「内面反射防止黒色塗料」と略すことがある。)にかかる。そして、この塗料は、カーボンブラック、金属酸化物、活性水素化合物、該活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物、およびシランカップリング剤を含有する。
【0016】
ここで、活性水素化合物は、活性水素基として水酸基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる官能基を、同一でも異なっていてもよく、少なくとも2個以上含有する化合物である。
【0017】
また、カーボンブラックは、塗料固形分に対し0.1質量%以上20.0質量%以下分散され含有されている。
【0018】
また、金属酸化物は、二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアから選ばれる少なくとも1種であり、塗料固形分に対し20質量%以上70質量%以下含有されている。
【0019】
また、シランカップリング剤は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基およびビニル基から選ばれた官能基を有するものであり、塗料全体に対し0.5質量%以上10質量%以下で含有されている。
【0020】
また、内面反射防止黒色塗料は、その分散粒径D90は50nm以上800nm以下であることを特徴とする。
【0021】
図1は、本発明の反射防止黒色塗料を光学素子の一形態であるカメラ用レンズに塗工した一例の断面概略図である。ここでは、レンズ1のコバ部に本発明の反射防止黒色塗料の塗膜2(反射防止膜)を形成している。この塗膜2により、レンズ外から差し込む入射光3のうちコバ縁に到達し内面反射する光(迷光)4を抑制・防止し、カメラで撮影した画像にいわゆるゴーストやフレアといった異常画像の発生を抑制している。
【0022】
図2は、図1の中央部の凸レンズ内部における入射光がレンズのコバ部での内面反射を詳しく示した模式図である。具体的には、内面反射光は、光学素子内部に入射した光がレンズのコバ部に到達した時の角度(入射角)と同じ角度でレンズ内側にはね返る内面正反射光4−aと、入射角とは異なるさまざまな角度にはね返る内面拡散反射光4−bの2種類に分けることができる。ここで内面正反射光4−aは、入射角度が高くなる(入射角度が90°に近くなる)につれ強度が増しやすい。一方、内面拡散反射光は、入射角度が低くなる(入射角度が0°に近くなる)につれ強度が増しやすい。
【0023】
内面正反射光は、主にカメラで撮影した画像へのゴーストやフレアといった異常画像の発生に大きく影響を与える。これに対し、内面拡散反射光は、フレアによる異常画像の発生以外にも、カメラのレンズを外部から目視した際に反射防止膜部分の漆黒性が得られないという、美観が損なわれる原因となってしまう。
【0024】
本発明の内面反射防止黒色塗料で形成した塗膜(反射防止膜)は、この2種類の内面反射光を同時に抑制・防止する作用が極めて高いことが特徴である。本発明者らは、内面正反射光は、レンズ材質と反射防止膜の屈折率差と反射防止膜の光吸収性能に影響されやすいのに対し、内面拡散反射光は、反射防止膜中の分散粒子の大きさ(特に分散粒径D90の大きさ)と光吸収性能に影響されやすいことを突き止めた。
【0025】
内面正反射光の抑制・防止の度合いは、例えば、図3のような直角三角プリズム5の底面全面に塗膜2を形成し、図4のような測定法にて内面正反射率を測定することで求めることができる。
【0026】
すなわち、光源6から放出された光をN偏光に設定した偏光板12に通し、スリット13にて集光した入射光7を、直角三角プリズム5内に差込ませ、塗膜2にて内面反射させ、三角プリズムから放出された(内面)反射光8を積分球・光受光器9で受光し、光強度を計測する。この時、内面反射光8の測定値は、偏光板12の向き、スリット13による入射光7の集光の程度や、直角三角プリズム5の大きさや積分球9との距離A、積分球9の大きさや同開口径の大きさBなどによって、値が異なってくるので注意が必要である。
【0027】
なお、塗膜2のない直角三角プリズム5において、その屈折率をn、空気の屈折率を1.0とした場合、プリズム底面での入射光7の全反射の臨界角は、プリズム底面に対する鉛直線(垂線)10とのなす角度をθとすると、スネルの法則により、下記式Aで求まる。
θ=sin-1(sin90°/n) (式A)
【0028】
すなわち、n=1.8の直角三角プリズム5では、
θ=sin-1(sin90°/1.8)≒33.7°
が全反射の臨界角であり、入射光7は入射角33.7°乃至90°の範囲で全反射を起こす。
【0029】
このような全反射を起こす角度領域を狭くするには、塗膜2の屈折率を直角三角プリズム5の屈折率に近づけるか、それ以上にすることが有効とされている。
【0030】
本発明の反射防止黒色塗料では、塗膜の屈折率を向上させて内面正反射光を抑制させるために、高屈折率の金属酸化物を塗膜固形分に対し20質量%以上添加している。本発明で使用する金属酸化物は、二酸化チタン(屈折率2.5乃至2.7)、酸化第二鉄(屈折率3.0)、四酸化三鉄(屈折率2.4乃至3.1)、オキシ水酸化鉄(屈折率2.3)およびジルコニア(屈折率2.2)から選ばれた少なくとも1種である。しかしこれらの金属酸化物は、その屈折率の高さゆえに光散乱作用が強いため、内面拡散反射率が高くなってしまう傾向にある。
【0031】
ここで内面拡散反射光の抑制・防止度合いは、例えば、図5のような装置を用いて分光光度計にて内面拡散反射率を測定することで求めることが可能である。
【0032】
分光光度計内に、積分球14、受光部15、入射光開口部21、正反射光トラップ開口部22、試料設置開口部23および光トラップ部17を設置しておく。試料開口部23の外側に上記で作成したガラス板18に内面反射防止塗料の塗膜19を備えた内面拡散反射評価用試料を、塗膜側の裏面を積分球に接触させて設置する。これにより、光源16から入射された光は直接、内面拡散反射評価用試料の塗膜の裏面側に到達させ、ガラス板内に入り込んだ光が塗膜19に到達し内面反射させる。この時、正反射光25は正反射光トラップ20により光を吸収させておき、内面拡散反射光26を積分球内部に放出・集積させて各波長における光の強度を受光部15にて測定する。
【0033】
本発明では、この内面拡散反射光を低減すべく下記三つの手段を採用している。
【0034】
第一に、この内面拡散反射光の放出を防止させるため、内面反射防止黒色塗料中に黒色顔料であるカーボンブラックを含有させる。しかし添加するカーボンブラックは塗膜強度を考えると塗膜固形分に対し20.0質量%が上限であり、上記金属酸化物と比較すると少量しか添加することができず、内面拡散反射光を十分に抑制することは困難である。さらにカーボンブラック自体も、適正な分散状態でなければ、強い外光にさらされると、内面拡散反射率を引き上げる原因になってしまう。
【0035】
そこで、第二に、塗料中に分散させる上記材料の総合的な分散粒径D90を800nm以下にすることで、上記高屈折率の金属酸化物を多く含有しつつ塗膜として内面拡散反射光を抑制するのに良好な黒色度を保つことが可能となった。
【0036】
さらに、第三に、金属酸化物とカーボンブラックという異種の微粒子が、塗料中に、共存し分散粒径D90を800nm以下に安定させる(塗料の保管安定性を確保する)ために、活性水素化合物と電子吸引性化合物を組み合わせて用いることが特に有効である。この理由としては、活性水素化合物の活性水素基である水酸基、アミノ基やメルカプト基が、塗料中においては、金属酸化物表面やカーボンブラック表面に吸着し、両者の分散安定化に寄与している。そして、塗工硬化時において、その活性水素化合物が電子吸引性化合物と付加反応して高分子量化することで、光学素子表面に強固な塗膜を形成することができるからである。
【0037】
上記高屈折率の金属酸化物は、それ自体の分散粒径をより微細にしていく程、内面拡散反射光は抑制される傾向にあり、これら金属酸化物の分散粒径は400nm以下とすることが好ましい。
【0038】
また、塗料中に分散させる上記材料の総合的な分散粒径D90は50nmより小さくすることは、塗料製造における上記材料の分散処理時間が極端に長くなるという弊害がある。さらに得られた塗料は、過分散により上記材料の分散性が不安定となってしまい、経時保管にてその分散粒径の維持が困難となる傾向があり、塗料の分散粒径D90としては50nm以上が必要である。
【0039】
ここで、分散粒径D90とは、下記のような粒度分布測定装置で計測した際、累積粒度分布の微粒子側から累積90%となる粒径のことである。
【0040】
使用する粒度分布測定装置は、測定領域10nm乃至5000nmで30以上の分割数で測定できるものが好ましく、例えば、レーザ回折・散乱法または動的光散乱法によるものが好ましく、市販のものでは以下のものが使用可能である。
【0041】
・レーザ回折・散乱法によるもの:
島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200(商品名、株式会社島津製作所製)
島津ナノ粒子径分布測定装置SALD−7100(商品名、株式会社島津製作所製)
レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置LA−950、同920、同750(いずれも商品名、株式会社堀場製作所製)
マイクロトラック粒度分布測定装置MT3000IIシリーズ(商品名、日機装株式会社製)
レーザ回折散乱法粒径分布測定装置LS13 320(商品名、ベックマン・コールター社製)
レーザ回折式粒度分布測定装置マスターサイザー2000(商品名、スペクトリス株式会社製)
等。
【0042】
・動的光散乱法によるもの:
ナノ粒度解析装置nanoPartica SZ−100(商品名、株式会社堀場製作所製)
粒度分布測定装置ナノトラックWaveシリーズ(商品名、日機装株式会社製)
サブミクロン粒子アナライザーDelsaNano(商品名、ベックマン・コールター社製)
動的光散乱式粒度分布計ゼータサイザーナノ(商品名、スペクトリス株式会社製)
動的光散乱式粒度分布計ELS−Z2(商品名、大塚電子株式会社製)
等。
【0043】
上記、粒度分布測定装置を用いて分散粒径D90を計測する際には、測定精度を維持するために塗料を、溶剤、好ましくは塗料化時に使用する溶剤(後記)あるいはメチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈する。なお、本発明では、分散粒径D90を計測する際に、70mlガラスビンに分散液(塗料)0.030gをとり、溶剤30gを加え、ペイントシェーカーにて1分間撹拌混合して測定した。
【0044】
ここで、塗料中に分散させる材料が、本発明で用いるカーボンブラックと金属酸化物以外にも、補色として有機顔料、無機顔料を含有する場合にも、本発明で規定する塗料全体としての分散粒径D90として50nm以上800nm以下が適用される。また、金属酸化物の平均一次粒子径としては5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0045】
また、塗料中に一次粒子径が1μm以上の樹脂粒子や石英粉末、ガラス粉末などを追加し、塗膜表面を意図的に数μm程度の微小な凹凸をつけ、艶消し調にする塗料の場合、塗料での分散粒径D90の計測は、動的光散乱法に限定される。動的光散乱法では、上記艶消し粉末は、一次粒子径が1μm以上、屈折率が2.0以下で、塗料中に含有するカーボンブラックと金属酸化物の合計より少量である限り、粒度分布ピークにおいては、カーボンブラックと金属酸化物に比べて極めて微小である。そのため、動的光散乱法では、艶消し粉末の含有を近似的に無視した分散粒径D90が計測される。
【0046】
本発明にて塗料での分散粒径D90に着目した根拠は、塗料中に分散されている粗大粒子分が塗料の黒色度との相関が強く、通常分散度の指標として用いられる平均分散粒径(例えば分散粒径D50)との相関性が得られない場合が見受けられたためである。
【0047】
金属酸化物は塗料固形分に対して20質量%以上70質量%以下で分散されて含有される。すなわち、塗膜の内面反射率を低く抑えるために、金属酸化物は塗料固形分に対して20質量%以上含有されることが必要であり、より好ましくは30質量%以上である。20質量%より少ないと十分な内面反射防止機能を発揮しなくなる。また、この金属酸化物は塗料固形分に対し70質量%以下である必要がある。70質量%より多くなると、塗料中の分散させる材料の分散粒径D90が50nm以上800nm以下を経時保管にて維持させることが困難になってくる。
【0048】
本発明に使用する金属酸化物には、通常水分などの揮発性付着物が無視できない量付着しているため、塗料固形分中の金属酸化物量T(質量%)は、例えば、以下のように換算して求める。
【0049】
1)まず、下記の通り 通常保管している金属酸化物の揮発分(水分)を除いた金属酸化物の固形分A1(質量%)を求める。
【0050】
デシケータ内に保管して十分に乾燥したアルミ皿に、金属酸化物粉末X1(g)を計量する。次に、この金属酸化物粉末の入ったアルミ皿を120℃の乾燥機に入れ、金属酸化物に付着している揮発分を1時間揮発させる。乾燥機から取り出したアルミ皿を、デシケータ中に保管し、ゆっくり室温まで冷ます。このアルミ皿に残った乾燥金属酸化物X2(g)を再び計量する。そして、金属酸化物の固形分A1を下記(式1)で求める。
A1=[(X2)/(X1)]×100 ・・・(式1)
【0051】
2)次に、通常に保管しているこの金属酸化物を塗料に配合使用し、この塗料全体に対する金属酸化物の配合量をA2(質量%)とおく。
【0052】
3)配合した塗料Z1(g)を、デシケータに保管して十分に乾燥したアルミ皿に計量する。この塗料の入ったアルミ皿を室温にて30分放置した後、120℃の乾燥機に入れ、1時間乾燥・硬化させる。乾燥機から取り出したアルミ皿を、デシケータ中に保管し、ゆっくり室温まで冷ます。このアルミ皿に残った乾燥・硬化した塗料固形物Z2(g)を再び計量する。
【0053】
4)以上の測定結果より、塗料固形分中の金属酸化物量Tは、下記(式2)で求めることができる。
T=[{塗料中の金属酸化物の有効分比}/{塗料中の固形分比}]×100
=[{(A2)/100×(A1)/100}/{(Z2)/(Z1)}]×100
=[(Z1)×(A2)×(A1)]/[(Z2)×100] ・・・(式2)
【0054】
本発明の塗料の塗料固形分は、5質量%以上80質量%以下が好ましい。5質量%より少ないと塗料中に分散している材料(特に金属酸化物)が沈降・分離しやすくなり、この塗料を用いて光学素子に塗工した際に色別れなどの不具合が発生しやすくなる。また、80質量%を超えると、塗料としての流動性の確保が困難となり、特に塗料経時保管中に急激な粘度上昇が発生しやすくなってしまう。
【0055】
塗料中の固形分は、上記塗料固形分中の金属酸化物量Tを求める際に計算されたZ1(g)とZ2(g)の値より、下記式により、求められる。
塗料固形分(質量%)=[(Z2)/(Z1)]×100
【0056】
(金属酸化物)
本発明に用いる金属酸化物は、二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアから選ばれる少なくとも1種である。
【0057】
本発明の反射防止塗料に用いる金属酸化物が、数ある金属酸化物の中でも 二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアが好適である理由は定かではないが下記の通り推察される。
【0058】
一般に分散させる粒子表面の酸性・塩基性は、その分散系の安定性に関係があるとされている。また、金属酸化物表面の酸性・塩基性の程度は、その金属イオン電気陰性度と高い相関性があることも知られている(参考:外山茂樹監修「機能性粉体」信山社サイテック、P123−125(1991))。
【0059】
本発明に用いる上記の金属酸化物を構成する金属イオン電気陰性度は、Ti(四価):13.9、Fe(二価):9.2、Fe(三価):12.8、Zr(四価):12.0 である。なお、金属イオン電気陰性度の低いものとしてMg(二価):6.6、高いものとしてMo(六価):28.1が上げられる中で、これら5種の金属酸化物の構成金属イオンは比較的近い数値を示す。このことから本発明の金属酸化物表面の酸性・塩基性が類似していると推察され、本発明の内面反射防止黒色塗料を構成する分散系では、類似した分散安定性を得ることができると推察される。なお、金属イオン電気陰性度は、上記外山茂樹監修「機能性粉体」のP124に記載された数式(下記)から求め、少数第二位を四捨五入したものである。
金属イオンの電気陰性度=(1+2×Z)×χ0
ここで、Zは価数であり、χ0はポーリングの電気陰性度である。
【0060】
本発明では、金属酸化物の平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。ここで金属酸化物の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって1万倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、各粒子を画像解析によりフェレ径を求め、その数平均値である。一次粒子形状としては米粒、不定形、球状、粒状、多面体状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、鱗片状、板状などいずれの形状でも良いが、特に好ましくは、針状、鱗片状、板状である。なお、これら金属酸化物は少なくとも1種を用いるが、2種以上を混合して使用して良い。
【0061】
・二酸化チタン
二酸化チタンは一般に、白色顔料や紫外線吸収剤、光触媒などとして用いられ、アナタース型、ルチル型およびブルッカイト型の結晶形のものが知られている。本発明ではいずれの結晶形でも使用可能である。さらに、二酸化チタン中に鉄などをドープして着色したものであっても良い。
【0062】
また、本発明に使用する二酸化チタンは、結晶形の最小単位である平均一次粒子径が7nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0063】
このように平均一次粒子径が小さい二酸化チタンは、粒子同士の凝集力が極めて大きく、塗料として分散製造したのち経時保管するときその分散安定性の維持には困難が伴う。そのため、あらかじめ、アルミナ、シリカ、ジルコニア、有機シラン化合物、チタネートカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸エステルなどで表面処理しておくことが好ましい。
【0064】
ここで、表面処理二酸化チタンを配合に使用する場合には、その粉末表面に付着した揮発性付着物だけでなく、表面処理量(質量%)分を鑑みて塗料固形分中に含有させる二酸化チタン純度(質量%)を求める必要がある。その際には、例えば、以下のように換算する。
【0065】
1)表面処理二酸化チタンの処理量H(質量%)を求める。表面処理量は、例えば、原子吸光分析、ICP質量分析などにより、二酸化チタン中の「Ti」と表面処理元素(例えば、アルミナであれば「Al」、シリカや有機シラン化合物であれば「Si」)との構成比率から表面処理量A3(質量%)を定量・換算する。なお、ジルコニアを二酸化チタンの表面処理剤として使用した場合は、ジルコニア自体の屈折率が2.4で、二酸化チタンの屈折率2.5〜2.7と比較的近いので、二酸化チタン純度はジルコニアと二酸化チタンの合計(質量%)を二酸化チタン純度とする。
【0066】
2)表面処理二酸化チタンを金属酸化物として用いた場合、塗料固形分中に含まれる純二酸化チタン量TTi(質量%)は、上記(式2)に{100−(A3)}/100を乗じることにより、下記(式3)にて求めることができる。
Ti=T×[{100−(A3)}/100] ・・・(式3)
【0067】
二酸化チタンの表面処理としては、特に、有機シラン化合物による疎水化処理が好ましい。なお、処理に使用する有機シラン化合物としては、メチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。ここで、二酸化チタン表面をメタノール疎水化度30%以上80%以下であると、微粒子である二酸化チタンの疎水化表面が凝集力を適度に弱く保ちつつ、塗料中に含有するポリオール化合物と親和性を保ち、経時安定性の高い塗料を得ることができるので好ましい。
【0068】
二酸化チタン表面のメタノール疎水化度として上記範囲内が好ましい理由は定かではないが、以下のように推察される。二酸化チタン表面に存在する酸素原子中の電子は励起されやすく、そこに大気中の水分が吸着した際に水分子を電離させ、この電離状態が二酸化チタン表面を超親水性とする。このため、本発明に用いる他の金属酸化物と比較して同等な表面状態について鋭意検討を重ねた結果、二酸化チタンの表面の超親水性をある程度抑制して、メタノール疎水化度30%以上とした方が好ましいことを見出した。また、メタノール疎水化度が80%より高くなると、本発明に用いる活性水素化合物との親和性が弱くなり二酸化チタンの分散をさせることが難しくなる傾向があるため、好ましくはメタノール疎水化度80%以下となる。
【0069】
二酸化チタンのメタノール疎水化度(%)は、室温(約25℃)において、200mlのビーカーに試料0.1gを計量し、イオン交換水50gを加えマグネチックスターラで攪拌する。その中に、メタノールを、ビュレットから10秒ごとに約2ml滴下し、液面上に浮いた試料(二酸化チタン微粉)が完全になくなった状態を終点として、次式からメタノール疎水化度(%)を算出する。
メタノール疎水化度(%)=[滴定量/(滴定量+50)]×100
【0070】
・酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄
本発明に使用する酸化鉄系の金属酸化物は、酸化第二鉄(Fe23)、四酸化三鉄(Fe34)、オキシ水酸化鉄(FeOOH)である。以下において、総称して「酸化鉄」ということがある。
【0071】
酸化第二鉄は、結晶形としてα相、β相、γ相、ε相、アモルファスなどが知られているが、特に好ましくはα相である。
【0072】
オキシ水酸化鉄は、結晶形としてα相、β相、γ相、δ相などが知られているが、特に好ましくはα相である。
【0073】
本発明においては、使用する酸化鉄は、結晶形の最小単位である平均一次粒子径が5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0074】
このように平均一次粒子径が小さい酸化鉄は、微粒子同士の凝集力が極めて大きく、塗料として分散製造したのち塗料として経時保管安定性の維持は困難が伴う。そのため、あらかじめ、アルミナ、シリカ、ジルコニア、界面活性剤、有機シラン化合物、チタネートカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸エステルなどにより表面処理しておくことが好ましい。また、四酸化三鉄やオキシ水酸化鉄は、高温により変色する場合があるので、アルカリケイ酸塩、コバルトフェライト、亜鉛フェライトなどで表面処理して耐熱性を向上させたものでも良い。
【0075】
ここで、表面処理酸化鉄を配合に使用する場合には、表面処理量(質量%)分を鑑みて酸化鉄純度(質量%)を換算する必要がある。酸化鉄純度の換算方法は、表面処理二酸化チタンの純度を算出したのと同様に、原子吸光分析、ICP質量分析などにより、「Fe元素」と安定化剤元素(例えば、酸化イットリウムであれば「Y元素」)との構成比率から定量して求められる。なお、ジルコニアを表面処理剤として使用した場合には、ジルコニア自体の屈折率が2.2であり、本発明に使用する酸化鉄の屈折率2.3乃至3.0とほぼ同程度であることから、酸化鉄純度はジルコニアと酸化鉄の合計(質量%)を酸化鉄純度とする。
【0076】
また、酸化鉄としては他に、酸化第一鉄(FeO)や、価数が明確に定まらないものもあるが、適宜表面処理などして、本願のように使用可能とすることも考えられる。
【0077】
・ジルコニア
ジルコニアは酸化ジルコニウム(ZrO2)のことを表すが、そのジルコニウム元素と同族のハフニウム元素の酸化物であるハフニア(HfO2)と物理化学的性質が似ているため、一般には数%乃至数ppm程度のハフニアが混在したまま製造される。それで、ジルコニアの純度は通常ZrO2+HfO2の合計量である。また、ハフニアの屈折率は約2.2で、酸化ジルコニウムの屈折率2.2と同程度であるので、数質量%までのハフニア混在は特に差し支えなく、本発明ではジルコニア量をZrO2+HfO2の合計量(質量%)とする。
【0078】
ジルコニアは加熱−冷却の繰返し履歴には弱い傾向があるため、耐熱性改善を目的としてジルコニア結晶内に安定化剤(CaO、MgO、Y23など)を固溶化させた、いわゆる安定化ジルコニア(または部分安定化ジルコニア)として使用してもよい。ただし、これら安定化剤の屈折率は1.9以下と低いため、安定化剤の含有量を差し引いたジルコニア純度を換算する。
【0079】
ジルコニア純度の換算方法は、表面処理二酸化チタンの純度を算出したのと同様に、原子吸光分析、ICP質量分析などにより、「Zr元素(含むHf元素)」と安定化剤元素(例えば、Y23であれば「Y元素」)との構成比率から定量して求められる。
【0080】
(カーボンブラック)
本発明では光吸収剤としてカーボンブラックを使用する。カーボンブラックは赤外から紫外領域までの光を吸収する黒色顔料として極めて優れた材料である。
【0081】
本発明では、カーボンブラックは塗料固形分に対し0.1質量%以上20.0質量%以下含有させる。より好ましくは0.5質量%以上である。カーボンブラックが0.1質量%より少ないと、カーボンブラックの光吸収性が二酸化チタンの光散乱性と比較して弱くなり、急激に内面正反射率が高くなってしまう。また20.0質量%より多いと、塗料中のバインダ量が相対的に少なくなり、光学素子に塗工した際に塗膜として適切な強度を維持しづらくなってしまう。
【0082】
ここで、配合に使用するカーボンブラック粉末には、通常水分などの揮発性付着物が数質量%程度付着している。塗料固形分中のカーボンブラック量(質量%)は、二酸化チタン量(質量%)を求めたと同様にして求めることができる。なお、(式2)で「金属酸化物」を「カーボンブラック」に置き換える。
【0083】
本発明に使用するカーボンブラックは、特に限定されないが、例えば、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ボーンブラックなどを使用することができる。これらのカーボンブラックの中では、チャネルブラック、ガスファーネスブラックおよびオイルファーネスブラックが分散性に優れていて好ましい。
【0084】
本発明において、使用するカーボンブラックの平均一次粒子径が14nm以上80nm以下であることが好ましく、DBP吸収量は40ml/100g以上170ml/100g以下であることが好ましい。
【0085】
これらカーボンブラックは、1種を使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。
【0086】
(活性水素化合物)
本発明に用いる活性水素化合物とは、水酸基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる官能基を、同一でも異なっていてもよい、少なくとも2個含有する化合物である。例えばポリオール化合物、ポリアミン化合物、ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0087】
・ポリオール化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、シリコーングリコール、ポリオレフィン系ポリオール、ひまし油ポリオール、硬化ひまし油ポリオール、アクリルポリオール、含リンポリオール、含ハロゲンポリオール、ポリマーポリオール、フェノール系ポリオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、これらの誘導体。
【0088】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどがある。
【0089】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジペート系ポリオール、フタレート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどがある。
【0090】
シリコーングリコールの例としては、分子中に活性水酸基を含有する反応性シリコーンオイルが挙げられる。
【0091】
ポリオレフィン系ポリオールの例としては、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水添イソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0092】
アクリルポリオールは、水酸基を有するアクリル(メタクリル)モノマーをアクリル(メタクリル)酸エステル、スチレンなどと共重合して得られる。
【0093】
含リンポリオールは、リン酸化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られ、含ハロゲンポリオールは、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキサイドを開環重合して得られる。
【0094】
ポリマーポリオールは、ポリオール中で重合開始剤の存在下でエチレン性不飽和単量体を重合させたものが挙げられる。
【0095】
フェノール系ポリオールは、例えばピロガロール、ハイドロキノン、フロログルシン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォン等のビスフェノール類;フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック)などが挙げられる
【0096】
上記で挙げたポリオール化合物のうち、好ましいものはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、フェノール系ポリオール、アクリルポリオールおよびポリカーボネートポリオールである。
【0097】
・ポリアミン化合物の具体例としては、芳香族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、これらの誘導体等が挙げられる。
【0098】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、以下のものを挙げられる。3−アミノベンジルアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−3
,3’−ジメチルジフェニルメタン、2,7−ジアミノフルオレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、トリメチレン−ビス(4−アミノベゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ビス(4−アミノベンゾエート)など。
【0099】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物など。
【0100】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、m−キシレンジアミンなど。
【0101】
アミノアルコールとしては、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどが挙げられる。
【0102】
・ポリチオール化合物の具体例としては、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、複素環含有ポリチオール、これらの誘導体などが挙げられる。
【0103】
脂肪族ポリチオールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、1−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−exo−cis−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)など。
【0104】
芳香族ポリチオールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(2−メルカプトエトキシ)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジチオール、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、2,4−ビス(4−メルカプトフェニル)ペンタンなど。
【0105】
複素環含有ポリチオールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジンなど。
【0106】
(活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物)
本発明に用いる活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物は、電子吸引性官能基を、2つ以上含有する化合物である。該電子吸引性官能基としては、イソシアネート基、ジイミド基、ケテン基、エポキシ基、アジリジン基、ラクトン基、ラクタム基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基などを挙げることができる。
【0107】
この中で特に好ましくは、イソシアネート基を含有するイソシアネート化合物、エポキシ基を含有するエポキシ化合物、アクリル基やメタクリル基を含有する(メタ)アクリル化合物である。
【0108】
・イソシアネート化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添TDI(HTDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族−脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI);これらの2量体、3量体、4量体以上の多量体のポリイソシアネート類;これらとトリメチロールプロパン等の多価アルコール、水または低分子量ポリエステル樹脂との付加物等。なお、多量体のポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート骨格を有するものが挙げられる。
【0109】
・エポキシ化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られる芳香族グリシジルエーテル類;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られる脂肪族ポリグリシジルエーテル類;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル類;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル類;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル類、あるいはアミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル類;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジ
アミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン類など。なお、多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られる芳香族グリシジルエーテルが好ましい
【0110】
・(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。ビスフェノールF エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレートなど。
【0111】
また、発明で用いる活性水素化合物とこの活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物は、その組み合わせによっては、混合直後から直ちに反応性が進行する(ポットライフが短い)場合があり、その際には下記の様に予め、官能基を保護しておいても良い。
【0112】
・イソシアネート基の保護
イソシアネート基を適当なブロック剤でブロックして、ブロックイソシアネート化合物として使用することもできる。
【0113】
ブロック剤としては特に限定されず、例えば、以下のものを挙げることができる。メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック化剤;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤;メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤;ε−カプロラクタム等のラクタム系ブロック化剤;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン系;チオフェノール等のメルカプタン系ブロック化剤;チオ尿素等の尿素系ブロック化剤;イミダゾール系ブロック化剤;カルバミン酸系ブロック化剤等。中でも、ラクタム系ブロック化剤、オキシム系ブロック化剤、アルコール系ブロック化剤やジケトン系ブロック化剤が好ましい。
【0114】
・アミノ基の保護
アミノ基はケトン類やアルデヒド類でブロックして、ブロックアミノ化合物として使用することもできる。具体的には、一級アミノ基はケトン類と脱水反応させてケチミンに、アルデヒド類と脱水反応させてアルジミンにする。
【0115】
(シランカップリング剤)
本発明では、シランカップリング剤を、反射防止黒色塗料を塗工した光学素子が高温高湿環境で経時保管された場合でも、経時前の内面反射率に比べて劣化する(内面反射率が高くなり、迷光の吸収力が低下してしまう)現象を抑制するために使用する。
【0116】
反射防止黒色塗料を塗工した光学素子が高温高湿環境で経時保管されると、塗膜と光学素子界面に1μm乃至50μm程度の微小の斑点が多数発生しているのを顕微鏡により観察される。そしてこの微小斑点は微小の界面剥離によるものであると考えられ、この箇所は内面反射防止能が無いため、全体としての内面反射率が上がってしまう。
【0117】
そこで本発明では、高温高湿環境で経時保管された場合でも微小の界面剥離が起きないよう、塗膜と光学素子の微小領域での密着性を高めるため、反応性の官能基として活性水素基または電子吸引性基を少なくとも一つ有するシランカップリング剤を添加することを採用する。
【0118】
なお、活性水素基としては、水酸基、アミノ基およびメルカプト基であり、電子吸引性基としてはイソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、スチリル基およびビニル基である。
【0119】
これらシランカップリング剤は、特にガラス製の光学素子に塗膜(反射防止膜)を形成する際に、光学素子表面とカップリング反応により化学結合を形成するとともに、活性水素化合物や電子吸引性化合物とも付加反応による化学結合を形成する。この両者の化学結合により、塗膜内部から光学素子表面まで連続した化学結合を形成し、光学素子を高温高湿環境で経時保管された場合でも、塗膜と光学素子との界面に微小の斑点が発生せず、経時保管前の内面反射率に比べて劣化するのを抑制できる。
【0120】
水酸基含有シランカップリング剤としては、以下のものを例示できる。N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2,2−ビス(3−トリエトキシシリルプロポキシメチル)ブタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシランなど。
【0121】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、以下のものを例示できる。3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ケチミンシランなど。
【0122】
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0123】
イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0124】
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなど。
【0125】
(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなど。
【0126】
スチリル基含有シランカップリング剤としては、例えば、p−スチリルトリメトキシシランが、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0127】
また、これらモノマータイプのシランカップリング剤だけでなく、比較的低分子のシリコーン骨格中に、アルコキシル基を含有するシリコーンアルコキシオリゴマーであってもよい。このようなシリコーンアルコキシオリゴマーの具体例としては、例えば以下のものを挙げることができる。信越化学工業株式会社より販売の、X−40−2651(製品名、アミノ基含有)、X−41−1805(製品名、メルカプト基含有)、X−41−1818(製品名、メルカプト基含有)、X−41−1810(製品名、メルカプト基含有)、X−41−1053(製品名、エポキシ基含有)、X−41−1059A(製品名、エポキシ基含有)、X−40−2655A(製品名、メタクリル基含有)、KR−513(製品名、アクリル基含有)など。これらシリコーンアルコキシオリゴマーの分子中のアルコキシ基量は、5質量%以上80質量%以下が好ましく、活性基当量は、100g/eq以上1000g/eq以下が好ましい。
【0128】
これらシランカップリング剤は、塗料全体に対して0.5質量%以上10.0質量%以下を含有させる。0.5質量%より少ないと、塗工した光学素子を高温高湿環境で経時保管した場合に、経時保管前の内面反射率と比べて劣化する現象(内面反射率が高くなり、迷光の吸収力が低下してしまう)を抑制することができなくなる。また10質量%より多いと、塗工の際に、溶剤蒸発後においてもしばらくは未反応のカップリング剤が液状として多く残った状態となり、「たれ」の発生が懸念される。
【0129】
これらシランカップリング剤は、1種を用いても良いし、2種以上を混合して、また、それぞれを別々に用いても良い。
【0130】
(内面反射防止黒色塗料の調合)
本発明の内面反射防止黒色塗料を調合する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば下記の方法を挙げることができる。カーボンブラック、金属酸化物、シランカップリング剤および活性水素化合物を含む主剤と、活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物を含む硬化剤を個別に製造しておき、光学素子に塗工する直前に攪拌混合して調合する方法である。以下、活性水素活性化合物としてポリオール化合物を、活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物としてイソシアネート化合物を用いた場合を例示する。
【0131】
・主剤の製造方法
まずステンレス容器に、ポリオール化合物と金属酸化物を、必要に応じて溶剤、添加剤などと共に加え、例えば、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザーなどの攪拌機により攪拌・混合してミルベースを得る。このミルベースを既知の湿式媒体分散機や湿式メディアレス分散機等により分散処理を行い、金属酸化物、例えば二酸化チタンの分散粒径を十分に小さくしておく。なお、湿式媒体分散機としては、例えば、ボールミル、遊星ミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノーミル、バスケットミル、アジテータミル、マイティミル、ウルトラビスコミル、アニュラー型分散機などがある。また、湿式メディアレス分散機としては、例えば、3本ロールミル、トルネード、ディスパミルなどがある。
【0132】
カーボンブラックについても金属酸化物と同様に、ポリオール化合物、溶剤、添加剤などと混合攪拌し、湿式媒体分散機や湿式メディアレス分散機等により分散処理を施す。
【0133】
上記で得られた、金属酸化物分散液とカーボンブラック分散液を計量し、攪拌機にて攪拌混合して主剤を得る。この時必要に応じて、ポリオール化合物や溶剤、添加剤などを追加して、混合してもよい。
【0134】
・硬化剤の製造
硬化剤は、上記したイソシアネート化合物自体をそのままで使用することができる。なお、イソシアネート化合物が固体であるときは、溶剤や各種添加剤により攪拌混合し溶解させ液状としたり、加温して溶解したりすることが好ましい。
【0135】
・塗料化
本発明において、主剤と硬化剤、シランカップリング剤を混合して光学素子用内面反射防止黒色塗料とする。この時、混合して硬化反応が顕著に現れる前(塗料化完了から5分以内)に、塗料をサンプリングして、粒度分布計により塗料中の材料の分散粒径D90を計測し50nm以上800nm以下の範囲内にあること確認する。以下、簡単のために、塗料中の材料の分散粒径D90を「塗料の分散粒径D90」という。
【0136】
ここで、塗料の分散粒径D90を計測する場合、カーボンブラックと金属酸化物が共存しているが、これらを上記で説明したレーザ回折・散乱法や動的光散乱法による粒度分布計にて計測する際は、粒子条件としてカーボンブラックの物性値を用いる。なお、カーボンブラックの物性値は、屈折率2.0、比重2.0g/cm3である。
【0137】
もし、上記塗料の分散粒径D90が800nmを超えている場合には、上記カーボンブラックまたは金属酸化物の分散処理が足りないことが推察される。そこで、再度分散処理時間を長めにして作成した各分散液を塗料化し、塗料の分散粒径D90を調整する。
【0138】
また、塗料の分散粒径D90が50nmより小さい場合には、あまりにも上記カーボンブラックや金属酸化物の分散処理が強すぎるため、塗料として急激な粘度上昇が発生しやすく塗工作業性が著しく損なわれてしまう。この場合には、別途各材料について分散処理時間を短くしたもので、塗料の分散粒径D90を調整する。
【0139】
上記のように塗料の分散粒径D90を制御する場合、カーボンブラック分散液や金属酸化物分散液を製造した際に、それぞれの分散粒径D90を50nm以上800nm以下の範囲内にあるようにしておく。そうすると、最終的に塗料化した際の塗料の分散粒径D90は50nm以上800nm以下に落ち着きやすく好適である。ここで、カーボンブラックの分散粒径D90を150nm以上800nm以下の範囲内にあるようにし、かつ金属酸化物の分散粒径D90を50nm以上400nm以下の範囲内にあるようにすることがより好ましい。
【0140】
また塗料固形分は、5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0141】
塗料中では、活性水素化合物、電子吸引性化合物およびシランカップリング剤の合計量は、2質量%以上40質量%以下が好ましい。この合計量が2質量%より少ないと、塗膜中の架橋密度が小さく、塗膜強度を弱くなりやすい。また40質量%より大きいと、相対的に本発明に用いるカーボンブラックと金属酸化物の含有量が下がり、内面反射防止機能が低下してしまう。
【0142】
また塗料中では、電子吸引性化合物とシランカップリング剤の電子吸引性基の官能基(合計モル量)と、活性水素化合物とシランカップリング剤の活性水素基(合計モル量)との比「(官能基)/(活性水素基)」が0.5以上3.0以下にあることが好ましい。ここで、上記「官能基(合計モル量)」および「活性水素基(合計モル量)」は以下のように定める。
【0143】
(官能基(合計モル量))
= (イソシアネート化合物配合量/イソシアネート当量)
+(エポキシ化合物配合量/エポキシ当量)
+{(メタ)アクリル化合物配合量/(メタ)アクリロイル当量}
+(ビニル化合物配合量/ビニル当量)
・イソシアネート当量とは、イソシアネート基の単位数量当たりの分子の大きさを表すものであり、(42×100)/{NCO含有率(質量%)}で表せる。ここで{NCO含有率(質量%)}は、JIS K7301に準じて求める。
・エポキシ当量とは、エポキシ基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、JIS K7236に準じて求める。
・(メタ)アクリロイル当量とは、(メタ)アクリロイル基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、(メタ)アクリル化合物1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基数で該化合物の分子量を除した値である。
・ビニル当量とは、ビニル基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、ビニル化合物1分子中に含まれるビニル基数で該化合物の分子量を除した値である。
【0144】
(活性水素基(合計モル量))
= (ポリオール化合物配合量/水酸基当量)
+(ポリアミン化合物配合量/アミン当量)
+(ポリチオール化合物配合量/(チオール当量)
・水酸基当量とは、水酸基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、56110/(ポリオール化合物の水酸基価)で表せる。ここで水酸基価はJIS K1557−1に準じて求める。
・アミン当量とは、アミノ基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、56110/(ポリアミン化合物のアミン価)で表せる。ここでアミン価はJIS K7237に準じて求める。
・チオール当量とは、チオール基の単位当たりのグラム当量数を表すものであり、以下のような方法で測定できる。
【0145】
ポリチオール化合物0.2gを精秤し、これにクロロホルム20mLを加えて試料溶液とする。デンプン指示薬として可溶性デンプン0.275gを30gの純水に溶解させたものを用いて、純水20mL、イソプロピルアルコール10mL、上記デンプン指示薬1mLを加え、スターラーで撹拌する。ヨウ素溶液(和光純薬工業株式会社製 0.05mol/Lのヨウ素溶液 ファクター:1.002(20℃))を滴下し、クロロホルム層が緑色を呈した点を終点とした。このとき下記式にて与えられる値を、該試料のチオール当量とする。
チオール当量=試料量(g)×10000/滴定量(ml)×ヨウ素溶液のファクター
【0146】
ヨウ素を滴下することによりチオール基は酸化されジスルフィドとなる。代表的な反応を下記式に示す。
2R−SH+I2 → R−S−S−R+2HI (Rは任意の有機基である。)
【0147】
全てのチオール基が消費されるとヨウ素とデンプンの間でヨウ素デンプン反応が起こり、発色するため、これを終点とすることができる。また、ここでいうファクターとは補正係数であり、体積による定量分析を行う際に、濃度や密度によって変化する体積の不確かさを相殺するために、滴定試薬ごとに決められた値である。
【0148】
さらに、塗料化の際、必要に応じて、溶剤や各種添加剤を加えることもできる。溶剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤など。
【0149】
各種添加剤は、塗料の粘度調整、塗膜のレベリング性向上、塗膜の表面艶消し、黒色の色調調整、防腐・防カビを図る、本発明に用いる活性水素化合物と電子吸引性化合物の付加反応を制御するために加えられる。例えば、粘度調整のためにはベントナイト、シリカ微粒子、シリコーン系エラストマーなどの増粘剤や希釈溶剤を添加する。塗膜のレベリング性向上のためは、シリコーンオイルなどのレベリング剤を、また、塗膜表面を艶消しするために1μm乃至100μmの樹脂粒子やガラス粉末、石英粉末、シリカ粉末などを添加する。黒色塗料の色調を調整するために、補色剤として着色染料や着色顔料を添加する。防腐・防カビにはベンズイミダゾール系、イソチアゾリル系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパルギル系、ベンゾチアゾール系、フェノール系、トリアジン系、アダマンタン系、ピリジン系などの防腐・防カビ剤を添加する。また、塗膜の硬度調整や添加剤の溶解性を向上、粘度調整などために、アルコール類、グリコール類なども加えられる。
【0150】
活性水素化合物と電子吸引性化合物の反応調整として、各種触媒を用いることもできる。
【0151】
触媒としては、例えば、以下のものを挙げることができる。トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン類;スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレエート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物。さらに、前記三級アミンのカルボン酸塩等も使用できるが、環境配慮の観点から、鉛、スズ、水銀などの重金属化合物は使用しない方が好ましい。
【0152】
これら各種の添加剤や溶剤は、それぞれ1種を用いても、2種以上を併用しても良く、塗料化の際に添加するか、予め主剤や硬化剤の一方あるいはそれらの両方に配合しておいても良い。
【0153】
上記のようにして製造された、本発明の光学素子用内面反射防止黒色塗料は、内面反射光を抑えるために、レンズやプリズム等の光学素子の縁や稜部、コバなどの周辺部に塗布して、反射防止膜を形成するのに有用である。
【実施例】
【0154】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明する。
【0155】
以下の実施例、比較例では下記の材料を用いた。
【0156】
○金属酸化物
・二酸化チタンA:表面処理二酸化チタン「SMT−150IB」(商品名、テイカ株式会社製)。平均一次粒子径15nm、表面処理7質量%、メタノール疎水化度53%、固形分98質量%。
・二酸化チタンB:下記製造例1にて製造した表面処理二酸化チタン。平均一次粒子径7nm、表面処理8質量%、メタノール疎水化度30%、固形分97質量%。
・二酸化チタンC:下記製造例2にて製造した表面処理二酸化チタン。平均一次粒子径50nm、表面処理8質量%、メタノール疎水化度33%、固形分98質量%。
・二酸化チタンD:表面処理二酸化チタン「JMT−150IB」(商品名、テイカ株式会社製)。平均一次粒子径15nm、表面処理14質量%、メタノール疎水化度74%、固形分99質量%。
・二酸化チタンE:二酸化チタン「MT−150A」(商品名、テイカ株式会社製)。平均一次粒子径15nm、表面未処理、メタノール疎水化度0%、固形分97質量%。
【0157】
・酸化鉄A:酸化第二鉄「FRO−3」(商品名、堺化学工業株式会社製)。平均一次粒子径30nm、表面未処理、固形分97質量%。
・酸化鉄B:オキシ水酸化鉄「ダイピロキサイドTMイエロー8170」(商品名、堺化学工業株式会社製)。平均一次粒子径70nm、表面未処理、固形分98質量%。
・酸化鉄C:酸化第二鉄「Sicotrans Red K2915」(商品名、BASF株式会社製)。平均一次粒子径100nm、表面未処理、固形分98質量%。
・酸化鉄D:四酸化三鉄「JC−MR01」(商品名、JFEケミカル株式会社製)。平均一次粒子径80nm、表面未処理、固形分98質量%。
【0158】
・ジルコニアA:酸化ジルコニウム「UEP−100」(商品名、第一稀元素化学工業株式会社)。平均一次粒子径15nm、表面未処理、固形分96質量%。
・ジルコニアB:酸化ジルコニウム「HT」(商品名、日本電工株式会社)。平均一次粒子径100nm、表面未処理、固形分98質量%。
【0159】
〔製造例1(二酸化チタンBの製造)〕
平均一次粒子径7nmの二酸化チタン「ST−01」(商品名、石原産業株式会社製)99質量部を純水500質量部に分散し、アンモニア水溶液を加えてpH9に調整しておく。そこにケイ酸ナトリウム2質量部を溶かした水溶液を加え、90℃に加温し、10%硫酸溶液を滴下してpHを2まで徐々に下げて、二酸化チタン上にシリカ処理を施した。
【0160】
さらに、このシリカ処理二酸化チタン100質量部に対し、イソブチルトリメトキシシラン9質量部を攪拌しながら、粒子が合一しないように添加混合し、その後電気炉で乾燥し、室温に戻してから解砕して表面処理を施した二酸化チタンBを得た。この二酸化チタンBの表面処理量は「式3」を用いて、シリカ処理後およびイソブチルトリメトキシシラン処理後それぞれについて求め、合計したものである。
【0161】
〔製造例2(二酸化チタンCの製造)〕
二酸化チタン「ST−01」に替えて、二酸化チタン「MT−600B」(商品名、平均一次粒子径50nm、テイカ株式会社製)を用い、イソブチルトリメトキシシランを5質量部にしたこと以外は、製造例1と同様にして、表面処理を施した二酸化チタンCを得た。
【0162】
○カーボンブラック
・カーボンブラックA:三菱カーボンブラックMA100(商品名、三菱化学株式会社製)。平均一次粒子径24nm、DBP吸収量100ml/100g、固形分97質量%。
・カーボンブラックB:三菱カーボンブラックMA8(商品名、三菱化学株式会社製)。平均一次粒子径24nm、DBP吸収量51ml/100g、固形分97質量%。
・カーボンブラックC:トーカブラック#8500(商品名、東海カーボン株式会社製)。平均一次粒子径14nm、DBP吸収量96ml/100g、固形分95質量%。
・カーボンブラックD:SUNBLACK240(商品名、旭カーボン株式会社製)。平均一次粒子径80nm、DBP吸収量63ml/100g、固形分97質量%。
・カーボンブラックE:Printex35(商品名、エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製)。平均一次粒子径31nm、DBP吸収量42ml/100g、固形分98質量%。
・カーボンブラックF:三菱導電カーボンブラック#3350B(商品名、三菱化学株式会社製)。平均一次粒子径24nm、DBP吸収量165ml/100g、固形分96質量%。
【0163】
○活性水素化合物
・ポリオール化合物A:カプロラクトン変性ポリカーボネートジオール「ニッポラン983」(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)、水酸基価115mgKOH/g。
・ポリオール化合物B:ポリプロピレングリコール系ポリオール「アクトコールEP−950」(商品名、三井化学株式会社製)、水酸基価34mgKOH/g。
・ポリオール化合物C:ポリカーボネートジオール「デュラノールT5650J」(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)、水酸基価140mgKOH/g。
【0164】
・ポリアミン化合物A:ポリテトラメチレンオキシド−ジ−アミノベンゾエート「エラストマー250P」(商品名、イハラケミカル工業株式会社製)、アミン価230mgKOH/g。
・ポリアミン化合物B:イソホロンジアミン「VESTAMIN IPD」(商品名、エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製)、アミン当量42.6g/eq。
・ポリアミン化合物C:芳香族アミンの混合物「カヤハードAA」(商品名、日本化薬株式会社製)、アミン当量63.5g/eq。
【0165】
・ポリチオール化合物A:ポリサルファイドポリマー「チオコールLP−3」(商品名、東レ・ファインケミカル株式会社製)、メルカプト当量486g/eq。
【0166】
○電子吸引性化合物
・イソシアネートA:HDIのイソシアヌレート体「デュラネートTPA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)。NCO含有量23.1質量%。
・イソシアネートB:IPDIのイソシアヌレート体の70質量%酢酸ブチル溶液「VESTANAT T1890E」(商品名、エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製)。NCO含有量12.0質量%。
・イソシアネートC:IPDIのMEKオキシムブロック−イソシアヌレート体「VESTANAT B1358/100」(商品名、エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製)。NCO含有量12.0質量%(相当)。
・イソシアネートD:HDIのアダクト体「デュラネートP301−75EP」(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)。NCO含有量12.5質量%。
【0167】
・エポキシ化合物A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER828」(商品名、三菱化学株式会社製)。エポキシ当量190g/eq。
・アクリル化合物A:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート「FANCRYL FA−731A」(商品名、日立化成工業株式会社製)。官能基当量141g/eq。
【0168】
○シランカップリング剤
・シランカップリング剤A:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製)、活性水素当量179g/eq、有効成分98質量%。
・シランカップリング剤B:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製)、活性水素当量196g/eq、有効成分97質量%。
・シランカップリング剤C:N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピル−トリメトキシシラン(アヅマックス株式会社製)、活性水素当量237g/eq、有効成分75質量%。
・シランカップリング剤D:3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、NCO含有量20.5質量%、有効成分95質量%。
・シランカップリング剤E:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)、官能基当量234g/eq、有効成分97質量%。
【0169】
○添加剤
・添加剤A:高分子系分散剤「SOLSPERSE 24000 SC」(商品名、日本ルーブリゾール株式会社製)40質量部をメチルイソブチルケトンMIBK60質量部に溶解させた溶液。
・添加剤B:銅フタロシアニン化合物「EFKA6745」(商品名、BASFジャパン株式会社製)。
【0170】
〔製造例3(金属酸化物分散液(A)、(D)の製造)〕
ステンレス製タンクにポリオール化合物A 0.483質量部、ポリオール化合物B 0.483質量部、二酸化チタンA 4.116質量部およびMIBK 4.918質量部を入れ、プロペラ攪拌機により12時間攪拌・混合した。この混合液10.0kgを、メディア(平均粒径0.8mmのガラスビーズ)をベッセルの80容積%の充填率で充填した湿式媒体分散機(ウルトラビスコミルUVM−2(商品名)、株式会社アイメックス製)を用いて、1パス分散を実施した。なお、処理条件はディスク周速6m/s、処理速度200ml/minであった。
【0171】
この1パス分散処理を実施したミルベースをステンレス製循環用タンクに移し、同分散機にてディスク周速6m/s、処理速度200ml/minにて循環分散を12時間実施し、金属酸化物分散液(A)を得た。なお、この金属酸化物分散液(A)の分散粒径D90を動的光散乱法による粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置UPA(商品名))にて測定したところ、110nmであった。また、上記で1パス分散処理後のミルベースで測定した金属酸化物粒子の分散粒径D90は352nmであった。このミルベースをそのまま金属酸化物分散液(D)とした。
【0172】
〔製造例4(金属酸化物分散液(B)の製造)〕
循環分散を4時間実施した以外は、製造例3と同様にして、分散粒径D90が148nmである金属酸化物分散液(B)を得た。
【0173】
〔製造例5(金属酸化物分散液(C)の製造)〕
循環分散を36時間実施した以外は、製造例3と同様にして、分散粒径D90が54nmである金属酸化物分散液(C)を得た。
【0174】
〔製造例6(金属酸化物分散液(E)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.023質量部、二酸化チタンA 4.281質量部、添加剤A 1.950質量部およびMIBK 3.746質量部とした。そして、循環分散を14時間とした以外は製造例3と同様にして、分散粒径D90が114nmである金属酸化物分散液(E)を得た。
【0175】
〔製造例7(金属酸化物分散液(F)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.071質量部、ポリオール化合物B 0.071質量部、二酸化チタンB 4.204質量部、添加剤A 1.950質量部およびMIBK 3.704質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が131nmである金属酸化物分散液(F)を得た。
【0176】
〔製造例8(金属酸化物分散液(G)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.068質量部、ポリオール化合物B 0.069質量部、二酸化チタンC 4.167質量部、添加剤A 1.950質量部およびMIBK 3.746質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が136nmである金属酸化物分散液(G)を得た。
【0177】
〔製造例9(金属酸化物分散液(H)の製造)〕
混合組成を、二酸化チタンD 4.407質量部、添加剤A 1.575質量部およびMIBK 4.018質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を24時間実施した。その結果、分散粒径D90が84nmである金属酸化物分散液(H)を得た。
【0178】
〔製造例10(金属酸化物分散液(I)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.235質量部、ポリオール化合物B 0.235質量部、二酸化チタンE 3.866質量部、添加剤A 1.950質量部およびMIBK 3.714質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が99nmである金属酸化物分散液(I)を得た。
【0179】
〔製造例11(金属酸化物分散液(J)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.966質量部、二酸化チタンA 4.116質量部およびMIBK 4.918質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施して、分散粒径D90が122nmである金属酸化物分散液(J)を得た。
【0180】
〔製造例12(金属酸化物分散液(K)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.400質量部、イソシアネートC 1.000質量部、添加剤A 1.500質量部、酸化鉄A 3.093質量部およびMIBK 4.007質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が452nmである金属酸化物分散液(K)を得た。
【0181】
〔製造例13(金属酸化物分散液(L)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.098質量部、添加剤A 0.630質量部、酸化鉄B 3.214質量部およびMIBK 5.058質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が189nmである金属酸化物分散液(L)を得た。
【0182】
〔製造例14(金属酸化物分散液(M)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.063質量部、添加剤A 0.630質量部、二酸化チタンA 1.729、酸化鉄B 1.607質量部およびMIBK 4.971質量部とし、以下製造例3と同様にした。その結果、循環分散を12時間実施して、分散粒径D90が162nmである金属酸化物分散液(M)を得た。
【0183】
〔製造例15(金属酸化物分散液(N)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.098質量部、添加剤A 0.630質量部、酸化鉄C 3.214質量部およびMIBK 5.058質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が197nmである金属酸化物分散液(N)を得た。
【0184】
〔製造例16(金属酸化物分散液(O)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.098質量部、添加剤A 0.630質量部、酸化鉄D 3.214質量部およびMIBK 5.058質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が152nmである金属酸化物分散液(O)を得た。
【0185】
〔製造例17(金属酸化物分散液(P)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.098質量部、添加剤A 0.630質量部、ジルコニアA 3.281質量部およびMIBK 4.991質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が136nmである金属酸化物分散液(P)を得た。
【0186】
〔製造例18(金属酸化物分散液(Q)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 1.098質量部、添加剤A 0.630質量部、ジルコニアB 3.214質量部およびMIBK 5.058質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が455nmである金属酸化物分散液(Q)を得た。
【0187】
〔製造例19(金属酸化物分散液(R)の製造)〕
混合組成を、酸化鉄C 1.607質量部、ジルコニアA 1.641質量部、添加剤A 1.575質量部およびMIBK 5.177質量部とし、以下製造例3と同様にして、循環分散を12時間実施した。その結果、分散粒径D90が106nmである金属酸化物分散液(R)を得た。
【0188】
〔製造例20(カーボンブラック分散液(A)の製造)〕
ステンレス製タンクにポリオール化合物A 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、MIBK 5.689質量部および添加剤A 1.225質量部を入れ、プロペラ攪拌機により12時間攪拌・混合を実施した。この混合液10.0kgを、メディアを平均粒径1.5mmのガラスビーズに替えた製造例3で使用した湿式媒体分散機を用いて、ディスク周速6m/s、処理速度400ml/minにて、1パス分散を実施した。
【0189】
この1パス分散処理を実施したミルベースを、ステンレス製の循環用タンクに移し変え、同分散機にて、ディスク周速6m/s、処理速度400ml/minにて、循環分散を6時間実施した。循環分散処理中にミルベース1mlをサンプリングし、製造例3で用いた粒度分布測定装置によりカーボンブラック粒子の分散粒径D90を計測した。循環分散処理を6時間行った時、分散粒径D90が280nmとなり、循環分散処理を停止して、カーボンブラック分散液(A)を得た。
【0190】
〔製造例21(カーボンブラック分散液(B)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.100質量部、カーボンブラックA 3.093質量部、添加剤A 1.500質量部、添加剤B 0.300質量部およびMIBK 5.007質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を4時間実施した。その結果、分散粒径D90が185nmであるカーボンブラック分散液(B)を得た。
【0191】
〔製造例22(カーボンブラック分散液(C)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物A 0.900質量部、ポリオール化合物B 0.900質量部、カーボンブラックA 1.237質量部およびMIBK 6.963質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が789nmであるカーボンブラック分散液(C)を得た。
【0192】
〔製造例23(カーボンブラック分散液(D)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.334質量部、カーボンブラックB 2.887質量部、添加剤A 1.443質量部、添加剤B 0.289質量部およびMIBK 5.047質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が154nmであるカーボンブラック分散液(D)を得た。
【0193】
〔製造例24(カーボンブラック分散液(E)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が225nmであるカーボンブラック分散液(E)を得た。
【0194】
〔製造例25(カーボンブラック分散液(F)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.560質量部、カーボンブラックC 2.579質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.636質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が1570nmであるカーボンブラック分散液(F)を得た。
【0195】
〔製造例26(カーボンブラック分散液(G)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.560質量部、カーボンブラックD 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が356nmであるカーボンブラック分散液(G)を得た。
【0196】
〔製造例27(カーボンブラック分散液(H)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.560質量部、カーボンブラックE 2.500質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.715質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が277nmであるカーボンブラック分散液(H)を得た。
【0197】
〔製造例28(カーボンブラック分散液(I)の製造)〕
混合組成を、ポリオール化合物C 0.560質量部、カーボンブラックF 2.552質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.663質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が701nmであるカーボンブラック分散液(I)を得た。
【0198】
〔製造例29(カーボンブラック分散液(J)の製造)〕
製造例21で、1パス分散処理したミルベースを、そのままカーボンブラック分散液(J)とした。この分散粒径D90は1570nmであった。
【0199】
〔製造例30(カーボンブラック分散液(K)の製造)〕
混合組成を、ポリアミン化合物A 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が265nmであるカーボンブラック分散液(K)を得た。
【0200】
〔製造例31(カーボンブラック分散液(L)の製造)〕
混合組成を、ポリアミン化合物B 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が373nmであるカーボンブラック分散液(L)を得た。
【0201】
〔製造例32(カーボンブラック分散液(M)の製造)〕
混合組成を、ポリチオール化合物A 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が332nmであるカーボンブラック分散液(M)を得た。
【0202】
〔製造例33(カーボンブラック分散液(N)の製造)〕
混合組成を、ポリアミン化合物C 0.560質量部、カーボンブラックA 2.526質量部、添加剤A 1.225質量部およびMIBK 5.689質量部とし、以下製造例20と同様にして、循環分散を6時間実施した。その結果、分散粒径D90が277nmであるカーボンブラック分散液(N)を得た。
【0203】
〔製造例34(硬化剤Aの製造)〕
イソシアネートA 60.0質量部とMIBK 40.0質量部を広口ガラス瓶にとり、ペイントシェーカーで1分攪拌混合して、硬化剤Aを得た。
【0204】
〔製造例35(硬化剤Cの製造)〕
製造例34で得られた硬化剤A 80.8質量部とシランカップリング剤D 21.1質量部を広口ガラス瓶にとり、ペイントシェーカーで1分攪拌して硬化剤Cを得た。
【0205】
〔製造例36(硬化剤Dの製造)〕
製造例34で得られた硬化剤A 24.3質量部とシランカップリング剤D 73.7質量部を広口ガラス瓶にとり、ペイントシェーカーで1分攪拌して硬化剤Dを得た。
【0206】
〔製造例37(硬化剤Eの製造)〕
アクリル化合物A 83.8質量部、メタノール 100.0質量部を広口ガラス瓶にとり、ペイントシェーカーで120分攪拌混合して、硬化剤Eを得た。
【0207】
上記製造例の各試料を用いて、各実施例を行った。
【0208】
〔実施例1〕
(主剤1の製造)
下記材料を広口ガラス瓶にとり、ペイントシェーカーで1分攪拌混合し主剤1を得た。
金属酸化物分散液(A) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.281質量部
ポリオール化合物B 0.338質量部
MIBK 0.671質量部
【0209】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤1 8.977質量部、硬化剤A 0.819質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を製造例3で用いた粒度分布測定装置にて測定したところ、232nmであった。なお、上記攪拌混合には、羽型攪拌機(スリーワンモータ BL600(商品名);HEIDON社製)を用いた。
【0210】
前記「式1」を用いてこの塗料固形分を求めたところ49.6質量%であった。また、前記「式2」および「式3」を用いて、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0211】
[各種評価]
(内面正反射率評価用試料の作成)
上記で得られた塗料を、評価用の直角三角プリズムを底面が上向き水平になるようスピンコータの回転台にセットし、底面全体に均一膜厚に広がるようスピンコートした。これを室温で30分乾燥した後、電気炉にて140℃で1時間硬化して、図3に示すような内面正反射率評価用試料を得た。この塗膜の厚みは塗膜の透明性が無くなる膜厚10μm以上となるよう調整した。直角三角プリズムとして、S−LAH53(株式会社オハラ製,n=1.8)を用いた。この直角三角プリズムの大きさは直角を挟む2辺の長さをそれぞれ30mmであった。またこの直角三角プリズムの全ての面は鏡面に研磨した。
【0212】
〈内面正反射率の測定方法〉
図4のように分光光度計内に塗膜2を作成した三角プリズム5を試料設置部に設置し、光源6から入射光7を通すと、プリズム内へ入射角θで屈折した後、塗膜2との界面で反射し、内面正反射光8が放出される。その内面正反射光8を積分球、光検出器9で受光し、各波長における光の強度を測定する。
【0213】
塗膜2を設けない未塗工の三角プリズム5について、あらかじめ波長400nm乃至700nmの光に対する内面正反射光強度を5nm間隔で測定しておき、この各波長の光強度を内面正反射率100%とする。その後、上記で作成した内面正反射率測定用試料(塗工した三角プリズム)について5nm間隔で測定した波長400nm乃至700nmの光に対する内面正反射光強度を%換算し、その結果の算術平均の値をとり、当該試料の内面正反射率(L)とした。
【0214】
なお、内面正反射率(L)は小さい程良い結果であるが、少なくとも40%以下でなければ、本発明の効果があるとは見なせない。
【0215】
(塗工成膜した光学素子の高温高湿環境での経時保管耐久性)
上記で作製した内面正反射率評価用試料(塗工成膜後の三角プリズム)を、60℃95%RHの恒温高湿槽内に入れ、外部からの光を遮断して30日間は保管した。保管後の評価用試料を上記「内面正反射率の測定方法」と同様にして「塗工成膜した光学素子の高温高湿環境での経時保管後の内面正反射率(N)」を測定する。そして、下記に式にて、塗工成膜した光学素子の高温高湿保管耐久性を評価した。
「塗工成膜した光学素子の高温高湿環境での経時保管耐久性」= N/L
【0216】
なお、「塗工成膜した光学素子の高温高湿環境での経時保管耐久性」は、1のとき最も安定性が高く、1より大きくなるにつれて安定性が悪いと見なすことができる。また1より小さくなる場合も安定性が悪いと見なすことができる。ここでN/Lの値は、少なくとも0.5以上2.5以下でなければ、本発明の効果があるとは見なせない。
【0217】
(内面拡散反射率評価用試料の作成)
上記の内面反射防止黒色塗料を、S−LAH53(株式会社オハラ製,n=1.8)のガラス板(φ30mm、厚さ1.5mm、両面光学研磨)の片面に内面正反射率評価用試料作製と同じ条件でスピンコート、乾燥、硬化して内面拡散反射率評価用試料を作成した。
【0218】
〈内面拡散反射率の測定方法〉
分光光度計内に図5のような、積分球14、受光部15、入射光開口部21、正反射光トラップ開口部22、試料設置開口部23、光トラップ部17を設置しておく。試料開口部23の外側に上記で作成したガラス板18に内面反射防止塗料の塗膜19を備えた内面拡散反射評価用試料を、塗膜側の裏面を積分球に接触させて設置する。これにより、光源16から入射された光は直接、内面拡散反射評価用試料の塗膜の裏面側に到達させ、ガラス板内に入り込んだ光が塗膜19に到達し内面反射させる。この時正反射光25は正反射光トラップ20により光を吸収させておき、内面拡散反射光26を積分球内部に放出・集積させて各波長における光の強度を受光部15により測定する。
【0219】
試料設置開口部に、標準白板を設置して、あらかじめ測定した400nm乃至700nmの光に対する内面拡散反射光強度を5nm間隔で測定しておき、この各波長の光強度を内面拡散反射率100%とする。その後、上記で作成した内面拡散反射率測定用試料(塗工したガラス板)について5nm間隔で測定した波長400nm乃至700nmの光に対する内面拡散反射光強度を%換算し、その結果の算術平均の値をとり、当該試料の内面拡散反射率(J)とした。
【0220】
なお、内面拡散反射率(J)は小さい程良い結果であるが、少なくとも1.0%以下でなければ、本発明の効果があるとは見なせない。
【0221】
(塗料の経時保管安定性評価)
上記で作成した主剤1をガラス瓶に密閉し、10℃環境下で30日間経時保管する。この経時保管した主剤1をペイントシェーカーにかけ30分間攪拌したものを主剤1として用い、上記で示したと同様に塗料化する。得られた塗料を用いて、内面拡散反射率測定用試料を作成し、上記「内面拡散反射率の測定方法」と同様にして「塗料の経時保管後の内面拡散反射率(K)」を測定する。そして、下記に式にて、塗料の経時保管安定性を評価した。
「塗料の経時保管安定性」= K/J
【0222】
なお、「塗料の経時保管安定性」は、1のとき最も安定性が高く、1より大きくなるにつれて安定性が悪いと見なすことができる。また1より小さくなる場合も安定性が悪いと見なすことができる。ここでK/Jの値は、少なくとも0.5以上2.5以下でなければ、本発明の効果があるとは見なせない。
【0223】
(顕微鏡による斑点の有無)
上記の内面拡散反射率(J)の測定で作成したと同様に作成した内面拡散反射率測定用試料を、60℃95%RHの恒温恒質槽内に入れ、外部からの光を遮断して500時間保管する。保管後の成膜試料について、ガラスと塗膜との界面をガラス板側から顕微鏡にて拡大して観察し、微小の界面剥離とみられる1μm乃至50μmの斑点の有無を、ガラス板全域について調査する。この結果を下記基準で3水準に区分けして、評価した。
・なし:斑点の発生は確認されない。
・僅か:極微小の斑点が数個見られる。
・発生:斑点が10個以上確認される。
【0224】
なお、この評価結果において、少なくとも「なし」又は「僅か」でなければ、本発明の効果があるとは見なせない。
【0225】
上記、各種評価結果を表1にまとめた。
【0226】
〔実施例2〕
(主剤2の製造)
金属酸化物分散液(A)に替えて金属酸化物分散液(B)を用いる以外は、実施例1の主剤2の製造と同様にして、主剤Bを得た。
【0227】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
ついで、得られた主剤2を主剤1に替えて用いる以外は実施例1の反射防止黒色塗料の調製と同様にして内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ254nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.1質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0228】
〔実施例3〕
(主剤3の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤3を得た。
金属酸化物分散液(C) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.105質量部
ポリオール化合物B 0.162質量部
MIBK 0.565質量部
【0229】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤3 8.519質量部、硬化剤A 1.073質量部およびシランカップリング剤A 0.408質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ191nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.0質量%および1.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は4.0質量%であった。
【0230】
〔実施例4〕
(主剤4の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤4を得た。
金属酸化物分散液(A) 4.133質量部
カーボンブラック分散液(A) 2.041質量部
ポリオール化合物A 0.646質量部
ポリオール化合物B 0.760質量部
MIBK 1.193質量部
【0231】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤4 8.773質量部、硬化剤A 1.023質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ255nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.8質量%、30.3質量%および9.5質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0232】
〔実施例5〕
(主剤5の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤5を得た。
金属酸化物液(E) 8.974質量部
カーボンブラック分散液(B) 0.500質量部
ポリオール化合物A 0.003質量部
MIBK 0.113質量部
【0233】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤5 9.590質量部、硬化剤A 0.240質量部およびシランカップリング剤A0.170質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ203nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、69.3質量%および2.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.7質量%であった。
【0234】
〔実施例6〕
(主剤6の製造)
材料を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤6を得た。
金属酸化物分散液(F) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.327質量部
ポリオール化合物B 0.385質量部
MIBK 0.733質量部
【0235】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤6 9.132質量部、硬化剤A 0.664質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ242nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.3質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0236】
〔実施例7〕
(主剤7の製造)
材料を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤7を得た。
金属酸化物分散液(G) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.416質量部
ポリオール化合物B 0.472質量部
MIBK 0.786質量部
【0237】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤7 9.361質量部、硬化剤A 0.537質量部およびシランカップリング剤A 0.102質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ244nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.3質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.0質量%であった。
【0238】
〔実施例8〕
(主剤8の製造)
材料を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤8を得た。
金属酸化物分散液(H) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.336質量部
ポリオール化合物B 0.393質量部
MIBK 0.742質量部
【0239】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤8 9.158質量部硬化剤A 0.638質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ216nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0240】
〔実施例9〕
(主剤9の製造)
材料を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤9を得た。
金属酸化物分散液(I) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.044質量部
ポリオール化合物B 0.101質量部
MIBK 0.552質量部
【0241】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤9 8.384質量部、硬化剤A 1.106質量部およびシランカップリング剤A 0.510質量部を容器にとり、羽型攪拌機で泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ220nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.0質量%および4.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は5.0質量%であった。
【0242】
〔実施例10〕
(主剤10の製造)
材料を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして、主剤10を得た。
金属酸化物分散液(A) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(C) 2.083質量部
ポリオール化合物A 0.170質量部
ポリオール化合物B 0.170質量部
MIBKは未添加
【0243】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤10 9.090質量部、硬化剤A 0.833質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ764nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.8質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0244】
〔実施例11〕
(主剤11の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤11を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(D) 0.893質量部
ポリオール化合物C 0.366質量部
MIBK 0.632質量部
【0245】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤11 8.558質量部、硬化剤A 1.238質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ139nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.1質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0246】
〔実施例12〕
(主剤12の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤12を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 0.102質量部
ポリオール化合物C 0.414質量部
MIBK 1.160質量部
【0247】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤12 8.343質量部、硬化剤B(イソシアネートBそのまま)1.453質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ193nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.8質量%、49.2質量%および0.49質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0248】
〔実施例13〕
(主剤13の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤13を得た。
金属酸化物分散液(J) 5.067質量部
カーボンブラック分散液(E) 4.082質量部
ポリオール化合物C 0.032質量部
【0249】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤13 9.181質量部、硬化剤B 1.151質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ215nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、37.4質量%および19.3質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.9質量%であった。
【0250】
〔実施例14〕
(主剤14の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤14を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(F) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.358質量部
MIBK 0.498質量部
【0251】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤14 8.543質量部、硬化剤A 1.253質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ425nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0252】
〔実施例15〕
(主剤15の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤15を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(G) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.371質量部
MIBK 0.504質量部
【0253】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤15 8.562質量部、硬化剤A 1.232質量部およびシランカップリング剤B 0.206質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ311nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.8質量%、49.3質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0254】
〔実施例16〕
(主剤16の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤16を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(H) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.024質量部
MIBK 0.937質量部
【0255】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤16 8.648質量部、硬化剤としてイソシアネートC 1.085質量部およびシランカップリング剤C 0.267質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら12時間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ242nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0256】
〔実施例17〕
(主剤17の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤17を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(I) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.625質量部
MIBK 0.669質量部
【0257】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤17 8.981質量部および硬化剤C 1.019質量部(追加のシランカップリング剤は使用せず)を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ638nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0258】
〔実施例18〕
(主剤18の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤18を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.570質量部
MIBK 0.542質量部
【0259】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤18 8.799質量部、硬化剤A 1.150質量部およびシランカップリング剤A 0.051質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ181nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.4質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は0.5質量%であった。
【0260】
〔実施例19〕
(主剤19の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤19を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.164質量部
MIBK 0.863質量部
【0261】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤19 8.714質量部、硬化剤D 0.980質量部およびシランカップリング剤A 0.306質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ215nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、48.8質量%および4.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は10.0質量%であった。
【0262】
〔実施例20〕
(主剤20の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤20を得た。
金属酸化物分散液(C) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 0.024質量部
ポリオール化合物C 0.737質量部
MIBK 1.164質量部
【0263】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤20 8.592質量部、硬化剤A 1.204質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ86nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.2質量%および0.11質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0264】
[各種評価]
実施例2乃至20で得られた塗料を実施例1と同様に各種評価を行い、得られた結果を表1にまとめた。
【0265】
〔実施例21〕
(内面反射防止黒色塗料の調製)
下記材料を容器にとり、羽型攪拌機で泡が立ちすぎないよう注意しながら1時間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。
金属酸化物分散液(A) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.081質量部
イソシアネート化合物C 0.929質量部
シランカップリング剤B 0.309質量部
MIBK 0.994質量部
【0266】
なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ217nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.1質量%、50.1質量%および5.0質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は3.0質量%であった。
【0267】
[各種評価]
得られた塗料を、塗料の経時保管安定性評価において主剤1の替わりに本実施例にて調製した内面反射防止黒色塗料そのものを経時保管した。以下実施例1と同様に各種評価を行い、得られた結果を表2にまとめた。
【0268】
〔実施例22〕
(内面反射防止黒色塗料の調製)
材料組成を下記とする以外は実施例21と同様にして、内面反射防止黒色塗料を得た。
金属酸化物分散液(A) 7.333質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.122質量部
ポリオール化合物C 0.071質量部
イソシアネート化合物C 1.270質量部
シランカップリング剤B 0.103質量部
MIBK 0.101質量部
【0269】
なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ261nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ54.9質量%、50.1質量%および5.0質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.0質量%であった。
【0270】
〔実施例23〕
(内面反射防止黒色塗料の調製)
材料組成を下記とする以外は実施例21と同様にして、内面反射防止黒色塗料を得た。
金属酸化物分散液(K) 8.333質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.047質量部
イソシアネート化合物C 0.130質量部
シランカップリング剤B 0.309質量部
MIBK 0.161質量部
【0271】
なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ782nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.1質量%、50.0質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は3.0質量%であった。
【0272】
[各種評価]
実施例22および23で得られた塗料を実施例21と同様に各種評価を行い、得られた結果を表2にまとめた。
【0273】
〔実施例24〕
(主剤21の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤21を得た。
金属酸化物分散液(L) 3.175質量部
カーボンブラック分散液(A) 0.408質量部
ポリオール化合物C 0.029質量部
MIBK 5.785質量部
【0274】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤21 9.397質量部、硬化剤A 0.500質量部およびシランカップリング剤B 0.103質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ225nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ19.7質量%、48.8質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.0質量%であった。
【0275】
〔実施例25〕
(主剤22の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤22を得た。
金属酸化物分散液(M) 7.937質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.018質量部
MIBKは未添加
【0276】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤22 8.975質量部、硬化剤A 1.257質量部およびシランカップリング剤B 0.309質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ261nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ47.0質量%、48.9質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.9質量%であった。
【0277】
〔実施例26〕
(主剤23の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤23を得た。
金属酸化物分散液(N) 7.142質量部
カーボンブラック分散液(A) 0.918質量部
ポリオール化合物C 0.004質量部
MIBK 0.506質量部
【0278】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤23 8.570質量部、硬化剤A 1.152質量部およびシランカップリング剤B 0.278質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ276nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ44.5質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.7質量%であった。
【0279】
〔実施例27〕
(主剤24の製造)
金属酸化物分散液(N)に替えて金属酸化物分散液(O)を用いる以外は実施例26の主剤23の製造と同様にして主剤24を得た。
【0280】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤24 8.570質量部、硬化剤A 1.152質量部およびシランカップリング剤B 0.278質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ236nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ44.6質量%、49.1質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.7質量%であった。
【0281】
〔実施例28〕
(主剤25の製造)
金属酸化物分散液(N)に替えて金属酸化物分散液(P)を用いる以外は実施例26の主剤23の製造と同様にして主剤25を得た。
【0282】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤25 8.570質量部、硬化剤A 1.152質量部およびシランカップリング剤C 0.278質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ229nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ44.5質量%、49.0質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.7質量%であった。
【0283】
〔実施例29〕
(主剤26の製造)
金属酸化物分散液(N)に替えて金属酸化物分散液(Q)とした以外は実施例26の主剤23の製造と同様にして主剤26を得た。
【0284】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤26 8.570質量部、硬化剤A 1.152質量部およびシランカップリング剤B 0.278質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ393nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ44.6質量%、49.3質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.7質量%であった。
【0285】
〔実施例30〕
(主剤27の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤27を得た。
金属酸化物分散液(A) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.204質量部
ポリオール化合物B 0.261質量部
MIBK 0.785質量部
【0286】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤27 8.937質量部、硬化剤としてイソシアネートD 0.859質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ265nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.2質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0287】
〔実施例31〕
(主剤28の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤28を得た。
ポリアミン化合物A 0.373質量部
金属酸化物分散液(R) 6.349質量部
カーボンブラック分散液(K) 0.833質量部
MIBK 1.184質量部
【0288】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤28 8.739質量部、イソシアネートB 1.055質量部およびシランカップリング剤B 0.206質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ210nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.6質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0289】
〔実施例32〕
(主剤29の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤29を得た。
ポリアミン化合物B 0.027質量部
金属酸化物分散液(R) 6.349質量部
カーボンブラック分散液(L) 0.833質量部
MIBK 1.035質量部
【0290】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤29 8.384質量部、イソシアネートB 1.550質量部およびシランカップリング剤B 0.206質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ243nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.7質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0291】
〔実施例33〕
(主剤30の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤30を得た。
ポリチオール化合物A 0.400質量部
金属酸化物分散液(R) 6.349質量部
カーボンブラック分散液(M) 0.833質量部
MIBK 1.194質量部
【0292】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤30 8.776質量部、イソシアネートB 1.018質量部およびシランカップリング剤B 0.206質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ233nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.6質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0293】
〔実施例34〕
(主剤31の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤31を得た。
ポリアミン化合物C 0.190質量部
金属酸化物分散液(R) 6.349質量部
カーボンブラック分散液(N) 0.833質量部
MIBK 1.502質量部
【0294】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記の主剤31 8.874質量部、エポキシ化合物A 0.922質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ215nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.6質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0295】
〔実施例35〕
(主剤33の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤33を得た。
ポリアミン化合物C 0.274質量部
金属酸化物分散液(R) 6.349質量部
カーボンブラック分散液(N) 0.833質量部
MIBK 0.500質量部
【0296】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤33 7.956質量部、硬化剤E 1.838質量部およびシランカップリング剤E 0.206質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ220nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.6質量%、49.7質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0297】
〔実施例36〕
(主剤34の製造)
材料組成を下記とする以外は実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤34を得た。
金属酸化物分散液(A) 2.799質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 1.143質量部
ポリオール化合物B 1.200質量部
MIBK 2.466質量部
【0298】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
得られた主剤34 8.628質量部、硬化剤A 1.168質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ191nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、20.3質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0299】
[各種評価]
実施例24乃至36で得られた塗料を実施例1と同様に各種評価を行い、得られた結果を表2にまとめた。
【0300】
〔比較例1〕
(主剤35の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤35を得た。
金属酸化物分散液(D) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(J) 1.020質量部
ポリオール化合物A 0.369質量部
ポリオール化合物B 0.426質量部
MIBK 0.723質量部
【0301】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤35 9.205質量部、硬化剤A 0.693質量部およびシランカップリング剤A 0.102質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ1130nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.5質量%および4.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は1.0質量%であった。
【0302】
〔比較例2〕
(主剤36の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤36を得た。
金属酸化物分散液(A) 2.000質量部
カーボンブラック分散液(A) 1.020質量部
ポリオール化合物A 1.286質量部
ポリオール化合物B 1.343質量部
MIBK 2.792質量部
【0303】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤36 8.441質量部、硬化剤A 1.355質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ266nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、14.9質量%および4.8質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0304】
〔比較例3〕
(主剤37の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤37を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 0.004質量部
ポリオール化合物C 0.437質量部
MIBK 1.219質量部
【0305】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤37 8.327質量部、硬化剤B 1.469質量部およびシランカップリング剤A 0.204質量部を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ146nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.7質量%、49.3質量%および0.02質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は2.0質量%であった。
【0306】
〔比較例4〕
(主剤38の製造)
材料組成を下記とする以外は、実施例1の主剤1の製造と同様にして主剤38を得た。
金属酸化物分散液(J) 6.667質量部
カーボンブラック分散液(E) 1.020質量部
ポリオール化合物C 0.640質量部
MIBK 0.557質量部
【0307】
(内面反射防止黒色塗料の調製)
上記主剤38 8.884質量部および硬化剤A 1.116質量部(シランカップリング剤を使用せず)を泡が立ちすぎないよう注意しながら1分間攪拌混合して、内面反射防止黒色塗料を得た。なお、この塗料の分散粒径D90を測定したところ223nm、この塗料の固形分、塗料固形分中の金属酸化物およびカーボンブラックの含有量を求めたところ、それぞれ49.9質量%、49.5質量%および4.9質量%であった。また、この塗料全体に対し配合したシランカップリング剤の有効成分は0.0質量%である。
【0308】
[各種評価]
比較例1乃至4で得られた塗料を実施例1と同様に各種評価を行い、得られた結果を表3にまとめた。
【0309】
【表1】

【0310】
【表2】

【0311】
【表3】

【符号の説明】
【0312】
1 レンズ
2 内面反射防止黒色塗料の塗膜
3 入射光(外光)
4 内面反射光(迷光)
4−a 内面正反射光(反射防止膜面の垂線となす角度が入射光の角度と同一)
4−b 内面拡散反射光(反射防止膜面の垂線となす角度が入射光の角度と異なる)
5 直角三角プリズム(30×30mm、t15mm、頂角90°)
6 光源(400nm乃至700nm間で5nm単位の分光が可能)
7 入射光
8 内面正反射光
9 光検出器付きのφ60mmの積分球
10 プリズム底面に対する鉛直線(垂線)
11 積分球入り口との接面
12 偏光板(N偏光に設定)
13 スリット(縦1mm×横3mm長方形のアパーチャ)
14 積分球(φ150mm)
15 受光部
16 光源(400nm乃至700nm間で5nm単位の分光が可能)
17 光トラップ部
18 ガラス板(φ30mm、厚さ1.5mm、両面光学研磨)
19 内面反射防止黒色塗料の塗膜
20 正反射光トラップ
21 入射光開口部(7×10mm)
22 正反射光トラップ開口部(25×25mm)
23 試料設置開口部(15×15mm)
24 入射光
25 内面正反射光
26 内面拡散反射光
θ 入射光7と垂線10とのなす角
A プリズム頂点からの垂線10から積分球入り口11の距離(15・√2mm)
B 積分球開口径(φ15mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収剤としてカーボンブラックを含む光学素子用内面反射防止黒色塗料であって、
該塗料は、カーボンブラックと共に、金属酸化物、活性水素化合物、該活性水素化合物と付加反応可能な電子吸引性化合物、およびシランカップリング剤を含有し、
該活性水素化合物は、活性水素基として水酸基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる官能基を同一でも異なっていてもよい、少なくとも2個含有する化合物であり、
該カーボンブラックは、塗料固形分に対し0.1質量%以上20.0質量%以下含有され、
該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化第二鉄、四酸化三鉄、オキシ水酸化鉄およびジルコニアから選ばれる少なくとも1種であり、かつ、塗料固形分に対し20質量%以上70質量%以下含有され、
該シランカップリング剤は、アミノ基、メルカプト基、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基およびビニル基から選ばれた官能基を有し、塗料全体に対し0.5質量%以上10.0質量%以下で含有され、
該塗料の分散粒径D90が50nm以上800nm以下である
ことを特徴とする光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項2】
前記金属酸化物の平均一次粒子径が5nm以上100nm以下である請求項1記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項3】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径が14nm以上80nm以下である請求項1または請求項2に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項4】
前記カーボンブラックのDBP吸収量が40ml/100g以上170ml/100g以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項5】
前記カーボンブラックの分散粒径D90が150nm以上800nm以下であり、前記金属酸化物の分散粒径D90が50nm以上400nm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項6】
前記電子吸引性化合物はイソシアネート基を少なくとも二つ以上含有する化合物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項7】
前記電子吸引性化合物はエポキシ基を少なくとも二つ以上含有する化合物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項8】
前記電子吸引性化合物はイソシアヌレート骨格を有するものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項9】
前記二酸化チタンのメタノール疎水化度が30%以上80%以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。
【請求項10】
前記塗料固形分が塗料全体に対して5質量%以上80質量%以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学素子用内面反射防止黒色塗料。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100456(P2013−100456A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171098(P2012−171098)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】