説明

光学素子

【課題】重力方向や温度等に変化が生じた場合でも安定した光学特性を得ることが可能な光学素子を提供する。
【解決手段】この光学素子1は、互いに屈折率が異なる複数の液体5、6により形成される境界面7の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる液体レンズ2と、光透過面における屈折率分布を変化させることが可能な補助ユニット3と、重力方向と温度との少なくとも一方が変化したときの液体レンズ2の光学特性の変化を補正するように、液体レンズ2と補助ユニット3とを制御する制御手段20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を用いた屈折力可変素子を含む光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロウェッティング現象を用いて液体の境界面の形状を制御することにより屈折力を変化させることができる屈折力可変素子(可変焦点素子、以下、単に「液体レンズ」と表記する)が知られている。しかしながら、この液体レンズでは、重力の影響を受けて境界面の形状が変形し、光学特性が劣化する可能性がある。そこで、この重力の影響を抑える技術として、特許文献1は、境界面を形成する2つの液体の比重を一致させて両者の比重差をなくすことで、重力による境界面の歪みを抑える光走査装置を開示している。また、特許文献2は、通常、一方が電解液である2つの液体の境界面の形状を変化させるための電極が1つであるのに対して、この電極を複数に分割し、各々の電極に印加する電圧を異ならせることで、重力により歪んだ境界面を補正する可変光学系を開示している。更に、特許文献3は、コリメータレンズとして液体レンズを採用し、更に、そのユニット内に、重力による境界面の形状の歪みで発生するコマ収差を補正するための補正レンズを設置する光走査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−503016号公報
【特許文献2】特表2008−530587号公報
【特許文献3】特開2009−3053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す光走査装置のように、2つの液体の比重を一致させると、両者の屈折率の差が小さくなり、レンズとしての機能が低下しやすい。また、液体レンズでは、異なる2つの液体が混ざり合わないことが前提であるが、比重を一致させると混ざりやすくなる。更に、例えば、常温状態で2つの液体の比重を一致させても、環境が変化して低温状態又は高温状態になると次第に両者の比重が異なってくるため、結果的に重力の影響を受ける。
【0005】
また、特許文献2に示す可変光学系では、複数の電極を配置しなければならないため、機構上複雑化してしまう。更に、実際に電極を複数設置して、歪んだ境界面に非回転対称(屈折力成分)の補正を実施することで、球面形状は、ある程度戻るものの、完全な形状に戻すことは困難であり、また、非球面の補正も困難である。
【0006】
更に、特許文献3に示す光走査装置における補正レンズは、鉛直方向の重力の影響を補正する機能だけを有する。したがって、この補正レンズは、コリメータレンズユニットが傾いたりすれば、重力方向と補正レンズの鉛直方向とが一致しなくなるため、コマ収差の補正ができなくなり、結果的に光走査装置の光学特性が悪化する。更に、上述のように、環境が変化して低温状態又は高温状態になると次第に2つの液体の比重が異なってくるため、鉛直方向での境界面の形状の歪みも変化する。しかしながら、補正レンズの非回転対称の非球面形状は、温度の影響を受けないため、この場合も、結果的に光走査装置の光学特性が悪化する。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、重力方向や温度等の条件に変化が生じた場合でも安定した光学特性を得ることが可能な光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光学素子は、互いに屈折率が異なる複数の液体により形成される境界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる液体レンズと、光透過面における屈折率分布を変化させることが可能な補助ユニットと、重力方向と温度との少なくとも一方が変化したときの液体レンズの光学特性の変化を補正するように、液体レンズと補助ユニットとを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の光学素子は、互いに屈折率が異なる複数の液体により形成される境界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる液体レンズと、光透過面における屈折率分布を変化させることが可能な補助ユニットと、液体レンズの個体差を補正するように、液体レンズと補助ユニットとを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重力方向や温度等に変化が生じた場合でも安定した光学特性を得ることが可能な光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学素子の構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の光学素子における補正の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る光学素子の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る光学素子の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る光学素子について説明する。図1は、本実施形態に係る光学素子1の構成と、光学素子1の周辺構成とを示す概略図である。まず、本実施形態の光学素子1は、光入射側から順に、液体レンズ(屈折力可変素子)2と、該液体レンズ2の透過面に隣接する屈折型光学素子3とを備える。
【0014】
液体レンズ2は、屈折率の異なる2種類の液体を使用し、該2種類の液体で形成される境界面の形状をエレクトロウェッティング駆動(EW駆動)にて制御するものである。図1に示すように、液体レンズ2は、略円筒形の筐体4を有し、該筐体4の内部に、光入射側から順に、第1液体5と第2液体6との2種類の液体を光軸方向に2層配置する。第1液体5及び第2液体6としては、両液体5、6で形成される境界面7において、互いに混ざり合わず、異なる屈折率を有する物質を採用する。例えば、第1液体5として、水を中心とした電解液(屈折率:1.4)を採用し、第2液体6として、シリコンオイル等の非電解液(屈折率:1.6)を採用する。また、液体レンズ2は、それぞれ筐体4の内周部に円環状に構成され、第1液体5及び第2液体6と接する絶縁膜8と、該絶縁膜8の外周部に位置する電極9とを備え、更に、電極9と電解液からなる第1液体5との間に電圧を印加する電源10を備える。この場合、電極9は、電源10からの印加電圧により境界面7との接触角を制御することで、境界面7の形状(曲率半径)を変化させる。更に、液体レンズ2は、光入射側と光出射側との両端に、それぞれ第1液体5及び第2液体6を内部に封止する第1保護板11及び第2保護板12を備える。この各保護板11、12は、石英ガラス等の透過部材で形成される。
【0015】
屈折型光学素子3は、上記第2保護板12を共有し、液体レンズ2の筐体4と同等の筐体13の内部に、屈折率が可変の物質14を備え、更に、該物質14を内部に封止する、第2保護板12と同等の第3保護板15を備えた補助ユニットである。この場合、物質14としては、例えば、液晶が採用可能であるが、屈折率が変化するものであれば、特に限定しない。この屈折型光学素子3は、光学有効面内で、微小なセル毎にマトリックス電気駆動が可能であり、外部からの印加電圧をセル毎に変化させることで、この特定の部位(セル:光透過面)の屈折率分布を変化させることができる。
【0016】
更に、光学素子1は、液体レンズ2のEW駆動、及び屈折型光学素子3のマトリックス電気駆動を制御する制御手段として制御部20を備え、更に、検知手段として温度センサー21と重力方向検知センサー22とを備える。制御部20は、温度センサー21が取得する温度情報(温度)、重力方向検知センサー22が検知する重力方向、及び電源10が印加する電圧情報(信号)に基づいて、予めテーブル23を作成し、各駆動制御の際に参照する。更に、制御部20は、テーブル23における不適切な光学特性を示すデータから、回転対称の屈折力成分、非回転対称の屈折力成分、非回転対称の非球面成分、及び回転対称の非球面成分のそれぞれを抽出する情報抽出部24を備える。なお、この情報抽出部24は、制御部20とは異なる制御装置に設置してもよい。
【0017】
次に、光学素子1の作用について説明する。本実施形態では、光学素子1は、環境変化により液体レンズ2の境界面7に形状変化が発生し、光学特性が悪化した場合、液体レンズ2と屈折型光学素子3との両者で分担して、光学特性を示す各種数値を正常値に補正する。ここで、「環境変化」とは、液体レンズ2の外部環境の温度の変化、及び重力方向の変化を示す。また、本実施形態の光学素子1は、この環境変化の他にも、例えば、液体レンズ2の個体差(駆動電圧値)の影響にも対応可能である。更に、光学特性を示す各種数値とは、例えば、コマ収差等の収差量である。
【0018】
まず、外部環境の温度変化は、第1液体5と第2液体6との比重差に影響し、かつ、重力方向とは関係しない液体レンズ2全体の影響によるピント移動(回転対称の屈折力成分)や、収差等の光学特性(回転対称の非球面成分)等に影響する。そこで、本実施形態では、制御部20は、予め回転対称の屈折力成分や回転対称の非球面成分の不適切な光学特性を示すデータを各温度での補正用データとして取得し、テーブル23に記憶させ、適宜参照する。
【0019】
また、重力方向の変化は、上述の第1液体5と第2液体6との比重差、及び温度変化により、境界面7の異なる形状変化として影響する。そこで、本実施形態では、制御部20は、重力方向、及び温度の計測データからテーブル23内の各温度での補正用データを参照し、境界面7の補正量と、重力方向に合わせた屈折型光学素子3の補正量とを出力して情報抽出部24に送信する。
【0020】
更に、液体レンズ2の固体差の影響は、以下の通りである。通常、液体レンズでは、絶縁膜(本実施形態の絶縁膜8に対応)の膜厚が均一であれば、境界面内のどのアジムス(Azimuth:方位)方向でも曲率半径が同一であり、境界面は、完全な球面形状となる。したがって、この場合、印加電圧を変化させても、境界面の球面形状は、完全な別の曲率半径の球面形状に変化するだけである。しかしながら、絶縁膜の膜厚にバラツキがあると、電圧を印加させたときに境界面内のアジムス方向で接触角度θが異なってしまい、境界面は、アジムス方向により曲率半径が異なる非回転対称の形状となり、結果的に、歪みが発生する。一般的に、絶縁膜の膜厚は、ほぼ均一であるため、これにより境界面が歪んで光学特性に影響することは少ないが、特殊な絶縁膜を使用した液体レンズでは、膜厚のバラツキが発生する可能性が高い。そこで、本実施形態では、制御部20は、予め個々の液体レンズにおける膜厚のバラツキによる不適切な光学特性を示すデータを補正用データとして駆動電圧毎に取得し、テーブル23に記憶させ、適宜参照する。
【0021】
次に、光学素子1における光学特性の補正の流れについて説明する。図2は、本実施形態の光学素子1における光学特性の補正の流れを示すフローチャートである。まず、制御部20は、常温状態(23℃程度)で、かつ、光学素子1の鉛直方向と重力方向とを一致させた状態で、液体レンズ2においてEW駆動を実行する。この際、制御部20は、光学素子1の光学特性を示すデータを以下の工程の基準データとして、電源10が印加する電圧情報に関連付けて取得する(ステップS101)。なお、この基準データが、予め計測されていれば、又は、特に収差が発生していない等、各種数値が正常値であると見なされる場合には、この工程は不要である。次に、制御部20は、光学素子1の使用状態で、液体レンズ2においてEW駆動を実行する。この際、制御部20は、光学素子1の光学特性を示す性能データを、温度センサー21が取得する外部環境の温度情報と、重力方向検知センサー22が検知する重力方向情報と、更にEW駆動時の電圧情報とを関連付けながら取得する(ステップS102)。次に、制御部20は、ステップS102にて取得した性能データ、及び各情報(計測データ)を含むテーブル23を作成し、記憶する(ステップS103)。次に、制御部20は、ステップS101で取得した基準データと、テーブル23とを比較することで、基準データと差異のある不適切な光学特性を示すデータを選択する(ステップS104)。ここで、「不適切な光学特性を示すデータ」とは、例えば、収差が大きく発生する時の収差量、及びこの収差量発生時の電源10が印加する電圧値等が相当する。更に、この不適切な光学特性を示すデータを選択する際には、制御部20は、上述した環境変化による補正用データも参照する。次に、制御部20内の情報抽出部24は、ステップS104にて選択された不適切な光学特性を示すデータから、回転対称境界面である境界面7の球面曲率で補正可能な成分、即ち、回転対称の屈折力成分のみの補正量を抽出する(ステップS105)。ここで、抽出する回転対称の屈折力成分の補正量は、波面収差量として10λ以上のものが望ましく、更に好適には30λ以上のものが望ましい。次に、情報抽出部24は、ステップS104にて選択された不適切な光学特性を示すデータから、回転対称の屈折力成分以外の成分、即ち、非回転対称の屈折力成分、非回転対称の非球面成分、及び回転対称の非球面成分の各補正量を抽出する(ステップS106)。そして、情報抽出部24は、液体レンズ2のEW駆動の際、ステップS105で抽出した回転対称の屈折力成分の補正量を送信し、電源10の印加電圧を適宜変更しつつ制御することで、光学特性の補正を実行する(ステップS107)。同時に、情報抽出部24は、ステップS106で抽出した各成分の補正量を屈折型光学素子3に送信し、マトリックス駆動を制御することで、光学特性の補正を実行する(ステップS108)。
【0022】
以上のように、本実施形態の光学素子1によれば、重力方向や温度等の変化により光学特性が悪化した場合でも、これらの変化に対応して液体レンズ2と屈折型光学素子3との分担により補正し、安定した光学特性を得ることができる。また、本実施形態では、光入射側に対して液体レンズ2の後方に屈折型光学素子3を配置している。したがって、例えば、光学素子1を撮像光学系に用いる場合、屈折型光学素子3が撮像素子側となるため、この撮像素子が受光する光は、良好に光学特性が補正されたものとなり効率が良い。
【0023】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光学素子について説明する。図3は、本実施形態に係る光学素子30の構成と、光学素子30の周辺構成とを示す概略図である。この光学素子30では、液体レンズ2と屈折型光学素子3との各構成は、第1実施形態の光学素子1と同一である。その上で、光学素子30の特徴は、第1実施形態の制御部20が有するテーブル23を、回転対称の屈折力成分補正用の第1テーブル23aと、その他の成分補正用の第2テーブル23bとに分割する点にある。
【0024】
上述の通り、液体レンズ2では、外部環境の温度変化がピント移動及び収差等の光学特性に影響し、一方、重力方向の変化が境界面7の歪みに影響する。ここで、もし、外部環境の温度変化が無視できるものであれば、重力の影響による境界面7の歪みは、非回転対称成分(屈折力成分と非球面成分)のみで補正可能である。そこで、この場合、制御部20は、回転対称の屈折力成分を除く第2テーブル23bのみを参照し、屈折型光学素子3による補正を実行すればよい。但し、屈折型光学素子3において、本実施形態のように屈折率を可変とする物質として液晶を採用した場合の波面収差量(補正量)は、一般に数十λ程度である。したがって、液体レンズ2に採用する2つの液体の比重差が大きく、境界面7での非回転対称成分が大きくなる場合には、屈折型光学素子3での所望の補正量が、補正可能な最大補正量を超える場合も考えられる。この場合、制御部20は、境界面7の回転対称の屈折力成分の補正と、屈折型光学素子3による補正とを組み合わせた割り振り補正を実行すればよい。
【0025】
一方、外部環境の温度変化の影響は、ピント移動(回転対称の屈折力成分)に対するものが主となり、収差等の光学特性(回転対称の非球面成分)に対するものは無視できる場合がある。そこで、この場合、制御部20は、第1テーブル23aのみを参照し、境界面7による回転対称の屈折力成分の補正を実行すればよい。但し、光学素子30に対して高い光学特性が要求されるときは、回転対称の非球面成分の補正も必要となる場合もある。この場合、制御部20は、同時に第2テーブル23bを参照し、屈折型光学素子3による補正と組み合わせた割り振り補正を実行すればよい。
【0026】
このように、本実施形態の光学素子30によれば、第1実施形態のように、制御部20内に情報抽出部を必要としないため、第1実施形態の構成及び作用を簡略化しつつ、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0027】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る光学素子について説明する。図4は、本実施形態に係る光学素子40の構成と、光学素子40の周辺構成とを示す概略図である。この光学素子40の特徴は、第1実施形態の光学素子1の構成における液体レンズ2と屈折型光学素子3との配置位置を、光入射側に対して逆にする点にある。なお、その他の構成は、第1実施形態の光学素子1と同様である。ここで、屈折型光学素子3では、屈折率を可変とする物質として液晶を採用しているが、液晶は、一般に視野角度特性が良好ではなく、入射角度によってはコントラストが落ちる場合がある。そこで、光学素子40では、屈折型光学素子3を液体レンズ2の前に配置することにより、液体レンズ2で屈折力が変化して光線の入射角度が変化することに起因して発生する可能性のあるコントラストの変化を回避できる。なお、本実施形態では、第1実施形態にて説明した液体レンズ2における絶縁膜8の膜厚のバラツキによる光学特性の劣化が小さいので、この場合、個体差のデータをテーブル23から除外しても構わない。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、液体レンズ2に隣接する補助ユニットとして、液晶を用いた屈折型光学素子3を採用したが、本発明は、これに限定するものではない。この補助ユニットは、屈折率を適宜変更可能なものであれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。したがって、例えば、屈折型光学素子3に換えて、誘電体の結晶に電場をかけて屈折率を変化させる電気光学効果、特に、電場の強さに比例して屈折率を変化させるポッケルス効果を利用した補助ユニットを採用することも可能である。この場合、誘電体の結晶としては、比較的大きな電気光学定数を有するニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶を採用することが望ましい。
【0030】
また、上記実施形態では、液体レンズ2は、屈折率の異なる2つの液体を使用し、EW駆動により境界面7の形状を制御するものとして説明したが、本発明は、これに限定するものではない。この液体レンズ2は、少なくとも2つ(複数)の液体が存在すればよく、例えば、3つの液体を使用し、これに伴い、境界面が2つ存在するものとしてもよい。また、境界面7の駆動は、EW駆動ではなく、例えば、境界面を透明膜で形成し、該透明膜を機械的に駆動するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 光学素子
2 液体レンズ
3 屈折型光学素子
5 第1液体
6 第2液体
7 境界面
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに屈折率が異なる複数の液体により形成される境界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる液体レンズと、
光透過面における屈折率分布を変化させることが可能な補助ユニットと、
重力方向と温度との少なくとも一方が変化したときの前記液体レンズの光学特性の変化を補正するように、前記液体レンズと前記補助ユニットとを制御する制御手段と、を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記制御手段は、前記液体レンズの個体差を補正するように、前記液体レンズと前記補助ユニットとを制御することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記重力方向、又は前記温度を計測する検知手段を備え、
前記制御手段は、予め基準となる光学特性を示す基準データを取得し、
次に、使用状態で前記境界面の形状を変化させることで、この場合の光学特性を示す性能データを、前記検知手段が取得した計測データと、前記境界面を駆動する信号とに関連付けて取得し、
次に、前記基準データ、及び前記性能データを含むテーブルを作成し、
次に、前記テーブルを参照して、前記基準データと前記性能データとを比較することにより、前記性能データにおける前記基準データと差異のある補正用データを選択し、
次に、前記補正用データから、回転対称の屈折力成分の補正量と、前記回転対称の屈折力成分以外の成分の補正量を抽出し、
そして、前記補正量に基づいて、前記液体レンズ、又は前記補助ユニットを駆動して補正する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記回転対称の屈折力成分以外の成分には、非回転対称の屈折力成分、非回転対称の非球面成分、又は回転対称の非球面成分のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記液体レンズは、前記回転対称の屈折力成分を補正することを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項6】
前記補助ユニットは、前記非回転対称の屈折力成分、前記非回転対称の非球面成分、又は前記回転対称の非球面成分のうちの少なくとも1つを補正することを特徴とする請求項3又は4に記載の光学素子。
【請求項7】
前記制御手段は、前記補正用データから、回転対称の屈折力成分の補正量と、前記回転対称の屈折力成分以外の成分の補正量を抽出する情報抽出部を備え、
前記情報抽出部は、前記回転対称の屈折力成分の補正量を前記液体レンズに送信し、
一方、前記回転対称の屈折力成分以外の成分の補正量を前記補助ユニットに送信することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記テーブルは、前記回転対称の屈折力成分の補正量を含む第1テーブルと、前記回転対称の屈折力成分以外の成分の補正量を含む第2テーブルとから構成され、
前記制御手段は、前記第1テーブルの補正量を前記液体レンズに送信し、
一方、前記第2テーブルの補正量を前記補助ユニットに送信することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記検知手段は、前記重力方向の変化を計測する重力方向検知センサー、又は前記温度を計測する温度センサーであり、
前記計測データは、前記重力方向検知センサーが取得した重力方向情報、又は前記温度センサーが取得した温度情報であることを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項10】
前記制御手段、又は前記情報抽出部は、前記回転対称の屈折力成分の補正量を抽出する際に前記温度情報を参照し、
一方、前記回転対称の屈折力成分以外の成分の補正量を抽出する際に前記重力方向情報を参照することを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記基準データは、常温状態、かつ、前記重力方向が前記光学素子の鉛直方向と一致する状態で前記境界面の形状を変化させ、前記境界面を駆動する信号に関連付けて取得することを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項12】
前記液体レンズは、エレクトロウェッティング駆動により前記境界面の形状を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
前記補助ユニットは、前記屈折力を可変とする物質として液晶を用いた屈折型光学素子であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
互いに屈折率が異なる複数の液体により形成される境界面の形状を変化させることによって屈折力を変化させることができる液体レンズと、
光透過面における屈折率分布を変化させることが可能な補助ユニットと、
前記液体レンズの個体差を補正するように、前記液体レンズと前記補助ユニットとを制御する制御手段と、を有することを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108428(P2012−108428A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258910(P2010−258910)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】