説明

光学結晶微粒子を用いた蛍光標識化合物およびそれを用いた生体高分子検出方法

【課題】生体高分子検出用の蛍光標識化合物においては、発光波長が安定した蛍光標識化合物を提供し、生体高分子の検出が容易となる方法を提供する。
【解決手段】蛍光物質として安定な無機光学結晶を用い、特定の生体高分子に吸着もしくは結合するように化学修飾された有機化合物と一体化することによって、安定な蛍光標識化合物を提供する。無機光学結晶としてはイットリウム、アルミニウム、酸素の元素からなるガーネット構造を有する結晶に、ドーパントとしてセリウム(Ce)を固溶させたものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学結晶微粒子を用いた蛍光標識化合物およびそれを用いた生体高分子検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の生体高分子に吸着もしくは結合する物質に蛍光物質を担持させた蛍光標識化合物を用いて、生体高分子を光学的に検出する種々の測定方法および物質の開発が行われている。そのような蛍光標識化合物を用いた測定としては、例えば、特定のDNA配列を検出するDNAチップや抗体を利用した抗原物質の検出等がある。また、そのような特定の物質あるいは特定の物質を有する生体細胞を検出するフローサイトメトリーへの応用、さらには、直接、生体内に蛍光標識化合物を分散させ、生体内でどのような場所に特定の物質が存在するかを蛍光を利用して可視化する、バイオイメージングにも利用されている。これらは生体高分子に吸着もしくは結合した蛍光標識化合物に光を照射し、蛍光物質がその光を吸収し、照射された光よりも長波長の特定の波長の光を発光するという現象を利用したものである。
そのような蛍光標識化合物に担持させる蛍光物質としては、通常、有機色素、金属錯体、半導体ナノ粒子等が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特表2003−524147
【特許文献2】特開2003−322654
【特許文献3】特開2004−77389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機色素を用いた蛍光標識化合物では、蛍光波長が不安定で、寿命が短いという問題があり、また、金属錯体をもちいた蛍光標識化合物では配位子等によって発光波長、発光強度が変化しやすいという問題がある。そのような不安定性を解決する材料として半導体ナノ粒子を蛍光物質に用いる方法が検討されている。しかしながら半導体ナノ粒子の粒径を制御することは容易ではなく、半導体ナノ粒子の粒径によって発光波長が異なり検出される蛍光強度が異なるという問題が生ずる。また、一般に、半導体ナノ粒子を効率よく発光させるためには、半導体ナノ粒子の表面を不動態化するため、他の半導体等でコーティングされたコアシェル構造と言われる構造の粒子を製造するということが行われており、製造コストがかかる。さらにカドミウムやセレンを原料とする半導体ナノ粒子は毒性があるという問題があった。
本発明は生体高分子を蛍光標識するための蛍光標識化合物およびそれを用いた生体高分子検出方法に関するものであって、より安定で安全な蛍光物質を用いて、安定な蛍光標識化合物を提供し、それらを用いた生体分子検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて、蛍光物質として安定な無機光学結晶を用い、特定の生体高分子に吸着もしくは結合するように化学修飾された有機化合物と一体化することによって、安定な蛍光標識化合物が得られることを見出したものである。
すなわち本発明は、
(1)無機光学結晶を、生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質と、一体化したことを特徴とする蛍光標識化合物
(2)前記無機光学結晶がイットリウム、アルミニウム、酸素からなるガーネット構造を有し、該ガーネット構造に他の元素が固溶した光学結晶であることを特徴とする(1)に記載の蛍光標識化合物、
(3)前記イットリウム、アルミニウム、酸素からなるガーネット構造に固溶した他の元素がクロム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ガリウム、ユーロピウム、テルビウム、サマリウム、ディスプロシウム、ルテチウムの何れか一つ、または複数であることを特徴とする(2)に記載の蛍光標識化合物、
(4)前記無機光学結晶がイットリウム、アルミニウム、酸素からなるガーネット構造を有し、該ガーネット構造に固溶した元素がセリウムであることを特徴とする(2)に記載の蛍光標識化合物、
(5)前記蛍光標識化合物が、波長400nm以上の光を照射することによって励起され、蛍光を発することを特徴とする(1)に記載の蛍光標識化合物、
(6)前記無機光学結晶の粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする(1)に記載の蛍光標識化合物、
(7)前記無機光学結晶の表面に、生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質を修飾したことを特徴とする(1)〜(6)に記載の蛍光標識化合物、
(8)蛍光物質である無機光学結晶を機能性ビーズ内に含有させ、該機能性ビーズを生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合させることを特徴とする(1)〜(6)に記載の蛍光標識化合物、を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蛍光標識化合物もしくはその蛍光標識化合物をもちいた生体高分子検出法においては、発光波長が安定した蛍光標識化合物を提供し、生体高分子の検出が容易となる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の蛍光標識化合物は無機光学結晶を蛍光物質として用いることを特徴とし、生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質と直接化学結合した化合物であっても、あるいは生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質で化学修飾された機能性ビーズ内に分散させてもよい。
【0008】
本発明で言う無機光学結晶とは結晶構造を有する無機材料であって、光の刺激によって蛍光を発するものを言い、例えば固体レーザーの動作物質として使用される無機光学結晶が使用しうる。そのような無機光学結晶材料は、通常、固有抵抗率が10Ωcm以上の酸化物結晶であり、例えば、Nd:YVO4、Nd:GdVO4、Er:YAlO3、Er:KGd(WO42等の材料がある。なお、ここで、例えば、Nd:YVO4とは、Y(イットリウム)、V(バナジウム)、O(酸素)からなる結晶構造に、Ndが固溶した結晶材料を示すものである。これらの無機光学結晶を本発明の蛍光物質として使用する場合、その粒径は1nm〜100nmの範囲にあるナノ粒子とすることが好ましい。このような粒径のナノ粒子を使用することによって、生体高分子に吸着もしくは反応させるために分散させた際に細胞培養液などの液体中での拡散が速やかにおこなわれ、細胞膜等の透過も容易となる。また、粒径を小さくすることで発光効率を増加させることができる。
【0009】
本発明で使用される無機光学結晶は数種の元素からなる結晶構造にドーパントとして他の異なる元素が固溶しているが、これらのドーパントの元素を変えることで発光波長の異なる蛍光材料を得ることが可能である。またこのようにして発光波長を変えた複数の材料に、各々異なる生体高分子に特異的に吸着もしくは結合する有機化合物あるいは無機化合物あるいは有機化合物と無機化合物の複合体と一体化して、蛍光波長の異なる蛍光標識化合物を提供することが可能である。これらの波長の異なる蛍光標識化合物を同時に生体高分子の標識に使用し各々の蛍光波長ごとの蛍光強度を測定することにより、異なる生体高分子を同時に検出することが可能である。
【0010】
本発明の蛍光標識化合物は上記のような性質を有する無機光学結晶から適宜選択された材料を使用しうるが、その際波長400nm以上の光によって励起される材料を選択することが好ましく、より好ましくは450nm以上の光によって励起される材料が好ましい。このような波長の光は一般に可視光と言われるもので人体や生体細胞への影響が少なく、また可視であるため取り扱い上も容易だからである。
そのような無機光学結晶として、例えば、イットリウム、アルミニウム、酸素の元素からなるガーネット構造を有する(以下、YAGと言う。)材料がある。特に上記YAG結晶にドーパントとしてセリウム(Ce)を使用したものは、可視光で励起され、発光波長が530nm付近にあり、生体高分子標識用の蛍光材料として好ましい。
【0011】
上記のような無機光学結晶を生体由来の物質に特異的に吸着させるか、もしくは結合する物質と一体化させることによって、特定の生体高分子を、標識可能な蛍光標識化合物として得ることができる。そのような物質との一体化の方法としては特に限定するものではないが、無機光学結晶表面に修飾基を設けて化学反応により有機分子に直接結合させてもよく、あるいは無機材料やポリマー材料等からなるビーズの表面に、特定の生体高分子と吸着もしくは結合するような分子が化学修飾された機能性ビーズ内に分散させてもよい。
【0012】
無機光学結晶表面に直接有機化合物を結合させる方法としては、例えば、光学結晶粒子をAPS(アミノプロピルシラン)等、アミノ基を有するシランカップリング剤と反応させ表面処理を施すことにより表面にアミノ基を付与し、このアミノ基を利用してアビジン若しくはストレプトアビジン、アビジン若しくはストレプトアビジンの融合タンパク質、ビオチン、抗原、抗体、DNA、RNAを結合することができる。また、光学結晶粒子表面にアミノ基を付与する方法としては、アミノエタンチオールのようなアミノアルキルチオールを用いて光学結晶粒子とチオールの結合を利用して付与しても良い。アミノ基が表面に露出した光学結晶粒子はEMCS(N-(6-マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミド)等の二価架橋剤を利用したり、あるいはNHSエステル(N-ヒドロキシサクシンイミジルエステル)等で活性化されたカルボキシル基とアミド結合を形成することによって、アビジン若しくはストレプトアビジン、アビジン若しくはストレプトアビジンの融合タンパク質、ビオチン、抗体、抗原と連結することが出来る。これら光学結晶の結合したアビジン若しくはストレプトアビジン、アビジン若しくはストレプトアビジンの融合タンパク質、ビオチン、抗体、抗原はサンドイッチ法の検出抗体や検出用酵素として利用できる。
また、光学結晶を機能性ビーズに取り込ませた場合には、フローサイトメトリーによって生体分子の検出や濃度の測定等に利用できる。この際の機能性ビーズとはポリスチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ、架橋アクリルビーズ、ポリ乳酸ビーズ等のポリマービーズや、磁気ビーズ、ガラスビーズ、金属ビーズ等の大きさ0.1μm〜100μmのビーズの表面に生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合するような化学修飾を施こしたものを言う。そのような機能性ビーズに光学結晶を分散させる方法としては、特に限定されないが、例えばポリマービーズを使用した機能性ビーズでは、溶媒中に予め光学結晶粒子を分散させておき、その溶媒中でビーズを膨潤させることによって光学結晶粒子を機能性ビーズ内に取り込ませることができる。
【0013】
以下、実施例を用いて詳細に説明する。
なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【0014】
実施例1 (抗体と結合したYAG:Ce3+蛍光粒子による白血球の標識)
ここではYAG:Ce3+蛍光粒子を抗体で修飾する方法、及び抗体修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子を用いてCD4陽性細胞の割合を求める方法の実施例を示す。
【0015】
(YAG:Ce3+蛍光粒子へのアミノ基の導入)
YAG:Ce3+蛍光粒子10 mgを0.5% APS(アミノプロピルトリエトキシシラン)水溶液3 mlに分散させ、30分撹拌後、分散液を限外ろ過し未反応のAPSを除去する。
【0016】
(YAG:Ce3+蛍光粒子と抗体の連結)
得られたYAG:Ce3+蛍光粒子をPBS(Phosphate Buffered Saline) 500μlに分散させ、これにEMCS(N-(6-マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミド)を添加する(100 mg/ ml DMSO(ジメチルスルホキシド)溶液を10μl)。3時間撹拌後、限外ろ過を行って未反応のEMCSを除去した後、PBS 500μlに分散させる。
続いて抗マウスCD4抗体(100μg/ ml)を50μl加え、3時間混合し、ゲルろ過によって未反応の抗マウスCD4抗体を除去することによってYAG:Ce3+蛍光粒子で標識された抗マウスCD4抗体が得られる。
【0017】
(マウス脾細胞の抗CD4抗体による標識)
マウス3匹から摘出した脾臓よりマウス脾細胞を取り出す。
マウス脾細胞を0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)添加PBSで1回洗浄後、遠心分離し上清を除去する。ここに赤血球除去用トリス緩衝液(ACTB)を10 ml加えピペッティングによって混合後、5分間放置して赤血球破砕処理を行う。続いて0.1%BSA添加PBSを20 ml加えて希釈し、遠心分離を行って上清を除去後0.1%BSA添加PBSで2回脾細胞を洗浄し、0.1%BSA添加PBS 5 mlに分散させる。
得られたマウス脾細胞分散液500μlに、YAG:Ce3+蛍光粒子で標識した抗マウスCD4抗体を100μl加え0 ℃で3時間、抗原抗体反応を行う。
反応後、マウス脾細胞を0.1%BSA添加PBSで2回洗浄し、500μl の0.1%BSA添加PBSに分散させる。
得られたマウス脾細胞分散液をフローサイトメーターで測定し、488 nm励起光による530 nmの蛍光強度を横軸に、図1に示すようにカウント数を縦軸にしてヒストグラムを作成する。このヒストグラムからCD4陽性細胞の割合を求めることが出来る。
【0018】
実施例2 (抗体修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子のバイオイメージングへの応用)
ここでは表面に抗体修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子を用いて神経細胞のイメージングを行う実施例を示す。
【0019】
(YAG:Ce3+蛍光粒子のストレプトアビジンによる修飾)
YAG:Ce3+蛍光粒子10 mgから調製した表面にアミノ基を導入したYAG:Ce3+蛍光粒子(50 nm-100 nm)をPBS 500μlに分散させる。そこにEMCS(100 mg/ ml DMSO溶液)を10μl加え30分混合後、PBS 2 lに対して3回透析を行って未反応のEMCSを除去する。続いてストレプトアビジンを加え3時間混合する。ゲルろ過を行って未反応のストレプトアビジンを除去し、更に限外ろ過によって5 mlに濃縮し、ストレプトアビジンで修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子の分散液を得る。
【0020】
(抗mAb2b抗体を用いたマウス神経細胞のイメージング)
マウス神経細胞にmAb2b一次抗体を加え(2.5μg/ml)37℃で10分間混合する。培地で2回洗浄後、ビオチン化抗マウスFab抗体を加え(2.8μg/ml)37℃で10分間混合した後細胞を培地で2回洗浄する。続いてストレプトアビジンで修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子の分散液を加え1分間放置し神経細胞の染色を行う。
得られた標識神経細胞を488 nmで励起し530 nmの蛍光を蛍光顕微鏡で観測することによって、抗mAb2b抗体で標識されたマウス神経細胞が観察される。
【0021】
実施例3 (表面を抗体修飾したビーズをフローサイトメトリーに応用することによる多種類サイトカインの同時定量法)
ここではYAG:Ce3+蛍光粒子を導入した蛍光ビーズの調製法、及び蛍光ビーズを利用した多種類サイトカインの同時定量法の実施例を示す。
【0022】
(蛍光ビーズの調製)
YAG:Ce3+蛍光粒子10 mgをメタノール5 mlに分散させる。ここにカルボキシル基が導入された架橋アクリルビーズ(粒子径10μm)を100 mg加え一昼夜室温で撹拌する。得られたビーズ分散液を5μmのろ過フィルターを用いて遠心分離を行い、ビーズのみを回収し蛍光ビーズを得る。
【0023】
(ビーズの多種類化)
粒子径が15μm, 20μmの、カルボキシル基が導入された架橋スチレンビーズに関しても同様の方法でYAG:Ce3+蛍光粒子を取り込み、大きさの異なる3種類の蛍光ビーズを調製する。フローサイトメーターを用いると、粒子径の違いと蛍光強度の違いで多種類のビーズを識別できる。これら3種類の蛍光ビーズ及びYAG:Ce3+蛍光粒子を導入していない、無蛍光のビーズ(粒子径が10μm, 15μm, 20μm)はフローサイトメーターで区別が可能であるので、フローサイトメーターで区別が可能な計6種類のビーズが用意される。
【0024】
(蛍光ビーズの抗体修飾)
得られた蛍光ビーズ(粒子径10μm)にSulfo-NHS(3-スルホ-N-ヒドロキシサクシンイミド)とEDC(1-エチル-3 (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)の混合物(0.05 M Sulfo-NHS, 0.2 M EDC, PBS(Phosphate Buffered Saline)に溶解)を500μl加え10分間混合後、抗マウスIL-2抗体(100μg/ ml)を50μl加え、さらに1時間混合する。遠心分離によってビーズを沈殿させ上清を除去した後、PBS 500μlでビーズを2回洗浄し、ビーズ表面に抗マウスIL-2抗体が導入された機能性ビーズが得られる。表面にカルボキシル基を有する高分子ビーズと、抗体を結合させる反応の一例として、図2に反応式を示す。
【0025】
(ビーズの多種類化)
YAG:Ce3+蛍光粒子を取り込んだ、粒子径が15μm, 20μmの蛍光ビーズ、及びYAG微粒子を取り込んでいない粒子径が10μm, 15μm, 20μmの無蛍光ビーズに関しても同様の方法でそれぞれ抗マウスIL-4抗体、抗マウスIL-5抗体、抗マウスIL-10抗体、抗マウスTNF-α抗体、抗マウスIFN-γ抗体を修飾し、表1に示すような、ビーズの種類と抗体の対応関係を有する6種類のビーズを調製する。
【0026】
【表1】

【0027】
(ビーズ上での抗原抗体反応)
サイトカイン標準サンプルとして、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、IFN-γそれぞれが5μg/mlずつ混合されたサンプルを用意する。このサンプルを1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、1/128、1/256倍に希釈し9種類の標準サンプルを調製する。
抗体で修飾した6種類のビーズをPBS中で混合する。得られたビーズ混合液を50μlずつ10本のマイクロチューブに分ける。9本のマイクロチューブには標準サンプルを1種類ずつ、残りの1本にはマウス血清をそれぞれ50μlずつ加え、さらに各マイクロチューブにPBSを400μlずつ加えて混合し、室温で30分抗原抗体反応を行う。反応後、ビーズを500μlのPBSで2回洗浄し、洗浄後450μlのPBSを加える。続いてIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNF-α、IFN-γそれぞれに対する、ビオチン化された二次抗体混合液(各二次抗体が10μg/ ml)を50μlずつ加え、室温にて30分抗原抗体反応を行う。反応後、ビーズを500μlのPBSで2回洗浄する。洗浄後各マイクロチューブに500μl のPBSを加えビーズを懸濁し、ストレプトアビジン-フィコエリスリン(1 mg/ ml)を2μlずつ加えて10分間反応させる。反応後ビーズを500μlのPBSで2回洗浄する。
【0028】
(フローサイトメーターによる測定とサイトカインの定量)
得られたビーズをフローサイトメーターで測定する。測定データより、初めに前方散乱光と蛍光(488 nmで励起したときの530 nmの蛍光)のドットプロットを図3に示すように作成し、6種類のビーズを1種類ずつ分けるようにゲートを掛ける。次に各ビーズの粒子数及び488 nmで励起したときの585 nmの蛍光強度のデータから1ビーズ当たりのフィコエリスリンの蛍光強度を算出する。
9種類の標準サンプルから得られる、各サイトカインの濃度と1ビーズ当たりのフィコエリスリンの蛍光強度の関係より図4に示すような標準曲線を作成し、この標準曲線を基にしてマウス血清サンプル中に含まれる6種類のサイトカインの量を各々算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の蛍光標識化合物は生体高分子検出のための試薬として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】抗マウスCD4抗体で修飾したYAG:Ce3+蛍光粒子を用いて染色したマウス脾細胞をフローサイトメーターで測定した結果を示す図である。
【図2】表面にカルボキシル基を有する高分子ビーズと抗体を結合させる反応の一例を示す図である。
【図3】フローサイトメーターでビーズの大きさ、蛍光の有無の違いで6種類のビーズを区別する測定結果を示す図である。
【図4】サイトカインの濃度を求めるため、濃度の異なる標準サンプルの測定結果から標準曲線を求めた測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機光学結晶を、生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質と一体化したことを特徴とする蛍光標識化合物。
【請求項2】
前記無機光学結晶がイットリウム、アルミニウム、酸素からなるガーネット構造を有し、該ガーネット構造に他の元素が固溶した光学結晶であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の該ガーネット構造に固溶した元素がクロム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ガリウム、ユーロピウム、テルビウム、サマリウム、ディスプロシウム、ルテチウムの何れか一つ、または複数であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識化合物。
【請求項4】
前記無機光学結晶がイットリウム、アルミニウム、酸素からなるガーネット構造を有し、該ガーネット構造に固溶した元素がセリウムであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光標識化合物。
【請求項5】
前記蛍光標識化合物が、波長400nm以上の光を照射することによって励起され、蛍光を発することを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識化合物。
【請求項6】
前記無機光学結晶の一次粒子径が1nm〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識化合物。
【請求項7】
前記無機光学結晶の表面に、生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合する物質を、修飾したことを特徴とする請求項1〜6に記載の蛍光標識化合物。
【請求項8】
蛍光物質である無機光学結晶を機能性ビーズ内に含有させ、該機能性ビーズを生体由来の物質に特異的に吸着もしくは結合させることを特徴とする請求項1〜6に記載の蛍光標識化合物。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−162284(P2006−162284A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350107(P2004−350107)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】