説明

光学装置及び光学機器

【課題】好適なブレ補正を行うことができる光学装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】光学機器(20)に取り付け可能な第1取付け部(30A)と、光学機器(20)を支持するための支持装置に取り付け可能な第2取付け部(30B)と、第1取付け部(30A)と第2取付け部(30B)との間隔に対応する情報を光学機器(20)に送信可能な送信部(31)とを含むことを特徴とする光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光学装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学系による像を撮像する撮像装置の振れを検出する振れ検出部と、振れ検出部の出力に基づいて像のブレを補正するための補正量を演算する演算部とを含む光学装置が知られている(下記特許公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に光学装置は三脚の使用を可能にする三脚座を有し、三脚座には高さの異なるものがある。ユーザの好みにより三脚座を交換することができる。
【0005】
しかし、三脚座の高さの違いに応じて三脚のブレ特性が変化するため、例えば三脚座の高さが高くなると三脚のブレが変化し、十分なブレ補正を行うことができないおそれがある。
【0006】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は好適なブレ補正を行うことができる光学装置及び光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、光学機器に取り付け可能な第1取付け部と、前記光学機器を支持するための支持装置に取り付け可能な第2取付け部と、前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応する情報を前記光学機器に送信可能な送信部とを含むことを特徴とする光学装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された光学装置であって、前記送信部は、前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応して構成された電気回路を有し、前記電気回路を用いて前記情報を前記光学機器に送信することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載された光学装置であって、前記情報が記憶されたメモリを有し、前記送信部は、前記メモリに記憶された前記情報を前記光学機器に送信することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、光学機器に取り付け可能な第1取付け部と、前記光学機器を支持するための支持装置に取り付け可能な第2取付け部と、前記支持装置に対する前記光学機器の取り付け状態に関する情報が記憶されたメモリと、前記メモリに記憶された前記情報を前記光学機器に送信可能な送信部とを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載された光学装置であって、前記メモリには、前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応する情報、前記光学装置が一脚に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、前記光学装置が三脚に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、前記光学装置の剛性に関する情報、前記光学装置の材質に関する情報、前記第1取付け部の断面積に関する情報、及び、前記第2取付け部の断面積に関する情報のうち、少なくとも1つが記憶されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、像を形成する光学系と、前記光学系による像のブレを補正するために駆動するブレ補正部と、支持装置に取り付け可能な座に取付け可能な取付け部と、前記座から情報を受信可能な受信部と、前記情報を用いて前記ブレ補正部を制御する制御部とを含むことを特徴とする光学機器である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載された光学機器であって、前記光学系の外側に備えられた円筒状の部材を有するレンズ鏡筒であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載された光学機器であって、前記受信部は、前記円筒状の部材の円周方向に沿って形成された、前記座に形成された導電部材と電気的に導通可能な導電部を有し、前記導電部を介して前記情報を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、好適なブレ補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係る光学装置の構成を示す概念図である。
【図2】図2は三脚座の高さがL2であるときの三脚座の高さを判定する方法を説明する図である。
【図3】図3は三脚座の高さがL3であるときの三脚座の高さを判定する方法を説明する図である。
【図4】図4はこの発明の第2実施形態に係る光学装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1はこの発明の第1実施形態に係る光学装置1の構成を示す概念図である。
【0019】
カメラ(光学装置)1は、カメラ本体10と、カメラ本体10に着脱可能な交換レンズ(光学機器)20と、交換レンズ20を図示しない三脚(支持装置)に取り付けるための三脚座(座)30とを備えている。
【0020】
カメラ本体10と交換レンズ20とで光学機器が構成される。
【0021】
カメラ本体10は、交換レンズ20を介して入射した光の強弱の光学像をその強弱に応じた電気信号に変換する撮像素子であるCCD12と、画像を表示するLCD表示部13と、CCD12及びLCD表示部13を制御するCPU11と備えている。
【0022】
交換レンズ20は、像を形成する光学系を構成するフォーカシングレンズ21とVRレンズ22との外側に備えられた図示しない円筒状の部材を有するレンズ鏡筒である。フォーカシングレンズ21はフォーカスアクチュエータ(駆動手段)23で駆動され、フォーカシングレンズ21の焦点調節が行われる。光透過部材であるVRレンズ22はVRレンズ群駆動装置24で駆動され、光学機器のブレによる像面での像ブレが補正される。VRレンズ22とVRレンズ群駆動装置24とでブレ補正部が構成される。なお、ブレ補正部は、例えばカメラ本体10に収容されたミラー(図示せず)等の光を反射させる部材やCCD、CMOSセンサ等の撮像素子を有するものであってもよい。また、ブレ補正部は、例えば、CCD12から出力された画像信号をPSF(点像分布関数)等を用い、像ブレを電子的に補正するものであってもよい。
【0023】
CPU25は交換レンズ20の動作を制御するものであり、例えば図示しないROM、RAMを有するワンチップマイコンで構成される。CPU25はROMに格納されたシーケンスプログラムにしたがってフォーカスアクチュエータ23の駆動を制御したり、カメラ本体10のCPU11との間で信号の授受を制御したりする。また、CPU25は、ブレ補正の指示があったとき、後述する接点29a〜29cを介して受信された三脚座30の種類に対応する情報に基づいて、VRレンズ群駆動装置24を三脚座30に応じた最適のアルゴリズムを適用して制御する。
【0024】
フォーカシングレンズ21の位置はズームエンコーダ(図示せず)等のフォーカスレンズ群検出装置26で検出され、その検出結果を示す信号がCPU25に出力される。
【0025】
VRレンズ22の位置は角度センサ(図示せず)等のVRレンズ群位置検出部27で検出され、その検出結果を示す信号がCPU25に出力される。
【0026】
また、交換レンズ20の第3取付け部(取付け部)22Aには、三脚座30の第1取付け部30Aに設けられた複数の接点(導電部材)31a〜31cとそれぞれ電気的に導通可能な接点(導電部)29a〜29cが設けられている。接点29a〜29cはそれぞれCPU25に接続されている。接点29a〜29cが受信部29を構成する。
【0027】
なお、接点31a、接点29aはグランドレベル(GND)である。接点29a〜29cは交換レンズ20の周方向に沿って形成されている。なお、接点29a〜29cを全周に亘って形成してもよいし、そうでなくてもよい。
【0028】
三脚座30の接点31a〜31cは送信部31の一部を構成する。送信部31は、第1取付け部30Aと後述する第2取付け部30Bとの間隔(三脚座30の高さ)等に対応する情報をカメラ本体10や交換レンズ20に送信するための電気回路(図示せず)を有している。
【0029】
また、三脚座30は第1取付け部30Aの他に三脚を取り付けるための第2取付け部30Bを有する。三脚座30はメモリ(例えば電源の供給なしに情報を保持することができるEEPROM)36を有する。メモリ36には、例えば、三脚座30の高さに対応する情報、光学装置1が図示しない一脚(支持装置)に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、光学装置1が三脚に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、光学装置1の三脚座30の材質の違いに起因する剛性に関する情報、第1取付け部30Aの断面積に関する情報、及び、第2取付け部30Bの断面積に関する情報が記憶されている。
【0030】
三脚座30を交換レンズ20に取り付け、カメラ1の電源がオンになったとき、送信部31は電気回路を用いてメモリ36に記憶された情報を三脚座30から受信部29へ送信する。CPU25は受信部29から送られる三脚座30の情報に基づいて三脚座30の高さ等を認識することができる。
【0031】
なお、電気回路は図示しない抵抗、コンデンサ、コイルを備え、例えば三脚座30の高さに対応させて抵抗、コンデンサ、コイルの定数を変えたものであってもよい。また、三脚座30の高さに対応して交換レンズ20に接続される電気回路の接点29a〜29cの数や形状等を変えたものであってもよい。
【0032】
次に、三脚座の高さ(L2,L3)の判別方法の一例を図2及び図3に基づいて説明する。
【0033】
この例では、CPU25は信号Aに基づいて三脚座30の高さがL2であると認識し、信号A+Bに基づいて三脚座30の高さがL3であると認識するものとする。
【0034】
図2は三脚座30の高さがL2であるときの三脚座30の高さを判定する方法を説明する図である。
【0035】
図2では接点31aと接点31bとが接続されている。このとき、メモリ36から信号Aが送信部31及び受信部29(接点29a〜29c)を介してCPU25に送信される。信号Aには上述した三脚座30の高さ(L2)等に関する情報が含まれている。その結果、CPU25は交換レンズ20に取り付けられた三脚座30の高さがL2であることを認識することができる。
【0036】
その後、CPU25は三脚座30の高さに対応する情報に基づいてVRレンズ群駆動装置24の駆動を制御する。
【0037】
なお、図2では三脚座30に接点31cが形成されていないが、接点31cを形成してもよい。
【0038】
図3は三脚座30の高さがL3(<L2)であるときの三脚座の高さを判定する方法を説明する図である。
【0039】
図3では接点31aと接点31bと接点31cとが接続されている。メモリ36から信号A+Bが送信部31及び受信部29(接点29a〜29c)を介してCPU25に送信される。信号A+Bには三脚座30の高さ(L3)等に関する情報が含まれている。その結果、CPU25は交換レンズ20に取り付けられた三脚座30の高さがL3であることを認識することができる。
【0040】
その後、CPU25は三脚座30の高さに対応する情報に基づいてVRレンズ群駆動装置24の駆動を制御する。
【0041】
図4はこの発明の第2実施形態に係る光学装置100の構成を示す概念図であり、第1実施形態と共通する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
この実施形態は三脚座30からの情報を接点を介して有線で受信するのではなく、電波等を用いて無線で受信するようにした点で第1実施形態と相違する。
【0043】
交換レンズ120には例えば受信用ICで構成された受信部29が設けられている。
【0044】
また、三脚座30には例えば送信用ICで構成された送信部31が設けられている。
【0045】
三脚座30が交換レンズ120に取り付けられたとき、送信部31は電気回路を用いてメモリ36に記憶された情報を三脚座30から受信部29へ無線(電波)で送信する。CPU25は受信部29から送信された三脚座30の情報に基づいて三脚座30の高さを認識することができる。例えば、三脚座30の高さがL1であるとき、メモリ36から三脚座30の高さL1等に関する情報がCPU25に送信されるので、CPU25は交換レンズ20に取り付けられた三脚座30の高さがL1であることを認識することができる。
【0046】
その後、CPU25は三脚座30の高さに対応する情報に基づいてVRレンズ群駆動装置24の駆動を制御する。
【0047】
なお、例えば赤外線発光ダイオードを備え、赤外線によって情報を交換レンズ120に送信するようにしてもよい。例えば、送信部31から送信する情報は、38kHz付近の周波数で振幅変調した赤外線を「1」、「0」で表わされる2値の情報で送る。また、受信部29は例えばフォトダイオードを備え、送信部31から送信された情報を受信する。
【0048】
この実施形態によれば、三脚座30の高さに応じて最適のアルゴリズムを適用して三脚ブレが補正されるので、十分な三脚ブレ補正を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施形態では光学機器が交換レンズ(レンズ鏡筒)20、120であるが、光学機器は例えばカメラ本体10、携帯電話、望遠鏡、スチルカメラ、ビデオカメラであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では交換レンズ20を取り付ける支持装置は三脚であるが、交換レンズ20を取り付ける支持装置は一脚であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:カメラ(光学装置)、10:カメラ本体、20:交換レンズ(光学機器)、21:フォーカシングレンズ、22:VRレンズ、22A:第3取付け部(取付け部)、25:CPU(制御部)、29:受信部、29a〜29c:接点(導電部)、30:三脚座(座)、30A:第1取付け部、30B:第2取付け部、31:送信部、31a〜31c:接点(導電部材)、36:メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機器に取り付け可能な第1取付け部と、
前記光学機器を支持するための支持装置に取り付け可能な第2取付け部と、
前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応する情報を前記光学機器に送信可能な送信部とを含むことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載された光学装置であって、
前記送信部は、前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応して構成された電気回路を有し、前記電気回路を用いて前記情報を前記光学機器に送信することを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1に記載された光学装置であって、
前記情報が記憶されたメモリを有し、
前記送信部は、前記メモリに記憶された前記情報を前記光学機器に送信することを特徴とする光学装置。
【請求項4】
光学機器に取り付け可能な第1取付け部と、
前記光学機器を支持するための支持装置に取り付け可能な第2取付け部と、
前記支持装置に対する前記光学機器の取り付け状態に関する情報が記憶されたメモリと、
前記メモリに記憶された前記情報を前記光学機器に送信可能な送信部とを含むことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載された光学装置であって、
前記メモリには、前記第1取付け部と前記第2取付け部との間隔に対応する情報、前記光学装置が一脚に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、前記光学装置が三脚に取り付け可能なものであるか否かに関する情報、前記光学装置の剛性に関する情報、前記光学装置の材質に関する情報、前記第1取付け部の断面積に関する情報、及び、前記第2取付け部の断面積に関する情報のうち、少なくとも1つが記憶されていることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
像を形成する光学系と、
前記光学系による像のブレを補正するために駆動するブレ補正部と、
支持装置に取り付け可能な座に取付け可能な取付け部と、
前記座から情報を受信可能な受信部と、
前記情報を用いて前記ブレ補正部を制御する制御部とを含むことを特徴とする光学機器。
【請求項7】
請求項6に記載された光学機器であって、
前記光学系の外側に備えられた円筒状の部材を有するレンズ鏡筒であることを特徴とする光学機器。
【請求項8】
請求項7に記載された光学機器であって、
前記受信部は、前記円筒状の部材の円周方向に沿って形成された、前記座に形成された導電部材と電気的に導通可能な導電部を有し、前記導電部を介して前記情報を受信することを特徴とする光学機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−17775(P2011−17775A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160778(P2009−160778)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】