説明

光学装置

【課題】雑音となる励起光(N;Noise)を効率的に取り除いて、蛍光(S;Signal)を取り出すことを可能とする光学装置を提供する。
【解決手段】観測者によって観測される対象物であり、蛍光試薬で染められたサンプル14aに、蛍光試薬を励起する励起光を照射する光源11、レンズ12及びレンズ13と、励起光を集光する励起光集光レンズ15と、励起光集光レンズ15によって励起光が集光される位置に配置されており、励起光を除去する遮光板16と、励起光がサンプル14aを介して透過してくる側に配置されており、励起光によってサンプル14aが発する蛍光を検出する撮像素子18とを光学装置10が備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測者によって観測される対象物であり、蛍光試薬で染められた観測対象物に、蛍光試薬を励起する励起光を照射する光源ユニットを備えた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞などの透明なサンプルを蛍光試薬で染めるとともに、蛍光試薬で染められたサンプルに励起光を照射することによって、サンプルを観察する方法が知られている。
【0003】
具体的には、蛍光試薬で染められたサンプルは、図5に示す光学装置100を用いて観察されていた。図5は、従来技術に係る光学装置100の構成を示す図である。
【0004】
図5に示すように、光学装置100は、光源110と、蛍光キューブ120と、対物レンズ130と、透明容器140とを有する。
【0005】
光源110は、白色光を発するLED(Light Emitting Diode)やハロゲンランプなどである。
【0006】
蛍光キューブ120は、励起フィルター121と、ダイクロイックミラー122と、ライトアブソーバ123と、吸収フィルター124とを有する。また、蛍光キューブ120は、サンプルや蛍光試薬の種類に応じて交換可能である。
【0007】
励起フィルター121は、光源110が発する白色光の中から、蛍光試薬を発光させる励起光を取り出すフィルターである。具体的には、励起フィルター121は、励起光(例えば、青色)を含む光に相当する波長(例えば、440nm〜510nm)を透過する。
【0008】
ダイクロイックミラー122は、励起フィルター121を透過した励起光を含む光を反射して、他の光を透過するミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー122は、励起光(例えば、青色)を含む光に相当する波長(例えば、450nm〜480nm)を反射して、他の光(例えば、紫色、緑色、赤色)に相当する波長(例えば、450nm以下、又は、480nm以上)を透過する。
【0009】
ライトアブソーバ123は、ダイクロイックミラー122を透過した光が反射しないように、ダイクロイックミラー122を透過した光を吸収する。
【0010】
吸収フィルター124は、蛍光試薬で染められたサンプル(サンプル140b)に励起光を照射することによって、蛍光試薬が発する蛍光を取り出すフィルターである。具体的には、吸収フィルター124は、蛍光(例えば、緑色)を含む光に相当する波長(例えば、495nm以上)を透過し、励起光(例えば、青色)を含む光に相当する波長(例えば、495nm未満)を透過しない。
【0011】
対物レンズ130は、1つのレンズ又は複数のレンズによって構成されており、蛍光試薬で染められたサンプル140bの像を像面上に結像する。なお、像面上には、接眼レンズやCCD(Charge Coupled Device)などが配置されており、観察者は、対物レンズ130によって結像された像を観察する。
【0012】
透明容器140は、蛍光試薬で染められたサンプル140bを収容する透明な容器である。また、透明容器140内には、サンプル140bを培養する培地140aが充填されている。
【0013】
ここで、屈折率が異なる2つの物質に対して光を照射すると、フレネル反射が起きる。上述した光学装置100でも、透明容器140に励起光を照射すると、フレネル反射が起きる。図6は、従来技術に係るフレネル反射について説明するための図である。
【0014】
なお、図6では、空気の屈折率が1であるものとして場合に、透明容器140の屈折率が約1.6であり、主成分が水である培地140aの屈折率が1.3であるものとして説明する。
【0015】
図6(a)及び図6(b)に示すように、空気と透明容器140との界面に励起光(I)が照射されると、空気の屈折率と透明容器140の屈折率とが異なるため、空気と透明容器140との界面でフレネル反射が起きてフレネル反射光(I’)が生じる。
【0016】
また、透明容器140を透過した励起光(I)が透明容器140と培地140aとの界面に照射されると、透明容器140の屈折率と培地140aの屈折率とが異なるため、透明容器140と培地140aとの界面でフレネル反射が起きてフレネル反射光(I’)が生じる。
【0017】
さらに、培地140aを透過した励起光(I)が培地140aと空気との界面に照射されると、培地140aの屈折率と空気の屈折率とが異なるため、培地140aと空気との界面でフレネル反射が起きてフレネル反射光(I’)が生じる。
【0018】
従って、フレネル反射光(I’total)は、フレネル反射光(I’)、フレネル反射光(I’)及びフレネル反射光(I’)の合計となる。
【0019】
なお、一般に、2つの物質の屈折率をそれぞれn、nとした場合に、励起光に対するフレネル反射光の比率(R)は、以下の式(1)によって算出される。
【数1】

【0020】
励起光(I)に対するフレネル反射光(Itotal)の比率(Rtotal)を式(1)に従って算出すると、比率(Rtotal)は約8%となる。
【0021】
一方で、上述した光学装置100では、ダイクロイックミラー122及び吸収フィルター124は、励起フィルター121が透過する励起光をほとんど透過せずに、サンプル140bが発する蛍光を透過する。このように、光学装置100は、蛍光(S;Signal)と励起光(N;Noise)との比率(S/N比)を低く抑えていた。
【0022】
なお、蛍光を検出するための装置として、蛍光が入射する開口部(入射開口部)を有する積分球も知られている。具体的には、積分球は、入射開口部から入射した蛍光を積分球の内面で反射するとともに、積分球の内面で反射した蛍光を検出する。このような積分球によれば、入射開口部から入射した蛍光の輝度が低くても、蛍光を効率的に検出することができた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−326051号公報(請求項1、図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、励起フィルター121が透過する光の波長の一部と、ダイクロイックミラー122や吸収フィルター124が透過する光の波長の一部とは一般に重複する。具体的には、図7に示すように、励起フィルター121は、励起光に相当する波長(例えば、440nm〜510nm)の光を透過する。また、ダイクロイックミラー122は、励起光に相当する波長(例えば、450nm〜480nm)の光を反射して、蛍光に相当する波長(例えば、450nm以下、480nm以上)の光を透過する。さらに、吸収フィルター124は、励起光に相当する波長(例えば、495nm未満)の光を透過せずに、蛍光に相当する波長(495nm以上)の光を透過する。
【0024】
このように、励起フィルター121が透過する波長の一部と、ダイクロイックミラー122や吸収フィルター124が透過する波長の一部とは、領域a(500nm近傍)で重複する。
【0025】
従って、励起フィルター121が透過する励起光の一部がダイクロイックミラー122や吸収フィルター124を透過してしまうため、光学装置100は、雑音となる励起光を完全に取り除くことができない。
【0026】
特に、サンプル140bが発する蛍光(S;Signal)の輝度が低い場合には、励起光0(N;Noise)を低く抑えたとしても、S/N比が悪化してしまうため、サンプル140bの像を良好に観察することができない。
【0027】
また、励起フィルター121が透過する励起光の全てを透過しないダイクロイックミラー122や吸収フィルター124を製造できるとしても、ダイクロイックミラー122や吸収フィルター124の製造コストが高くなってしまう。
【0028】
なお、上述した従来技術では、蛍光試薬で染められたサンプル140bについて例示したが、これらの課題は、蛍光試薬で染められていなくても、励起光によって蛍光を発する物質(例えば、プラスチックなどの高分子材料や細胞内のタンパク質など)についても共通する課題である。
【0029】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、装置の製造コストの上昇を招くことなく、雑音となる励起光(N;Noise)を効率的に取り除いて、蛍光(S;Signal)を取り出すことを可能とする光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の一の特徴は、観測者によって観測される対象物であり、蛍光を発する観測対象物(サンプル14a)に、前記蛍光を励起する励起光を照射する光源ユニット(光源11、レンズ12及びレンズ13)と、前記励起光を集光する励起光集光部材(励起光集光レンズ15)と、前記励起光集光部材によって前記励起光が集光される位置に配置されており、前記励起光を除去する励起光除去部材(遮光板16)と、前記励起光が前記観測対象物を介して透過されてくる側に配置されており、前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を検出する蛍光検出部材(撮像素子18)とを光学装置が備えることを要旨とする。
【0031】
かかる特徴によれば、励起光除去部材が励起光集光部材によって励起光が集光される位置に配置されていることにより、励起光除去部材が効率的に励起光を除去することができる。
【0032】
従って、光学装置は、雑音となる励起光(N;Noise)を効率的に取り除いて、蛍光(S;Signal)を取り出すことができ、S/N比の改善を図ることができる。また、透過しない波長が設計条件に合致するように厳密に製造された吸収フィルターやダイクロックミラーを用いる必要がないため、光学装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0033】
本発明の一の特徴は、本発明の上述した特徴において、前記励起光除去部材が、前記励起光を透過しない遮光板であることを要旨とする。
【0034】
本発明の一の特徴は、本発明の上述した特徴において、前記励起光除去部材が、前記励起光を反射する反射ミラーであることを要旨とする。
【0035】
本発明の一の特徴は、本発明の上述した特徴において、前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を集光して、前記観測対象物の像を像面上に結像する結像部材(蛍光集光レンズ17)を光学装置がさらに備え、前記蛍光検出部材が、前記像面上に配置されており、前記観測対象物の像を撮像する撮像素子であることを要旨とする。
【0036】
本発明の一の特徴は、本発明の上述した特徴において、前記蛍光検出部材が、前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を電気に変換する光電変換素子(光電変換素子38)であることを要旨とする。
【0037】
本発明の一の特徴は、前記励起光が前記観測対象物を介して透過してくる側に配置されており、前記励起光及び前記蛍光が入射する開口部(開口部37b)を有する積分球(積分球37)を光学装置がさらに備え、前記積分球の内面(内面37a)が、前記蛍光を反射する反射面によって構成されており、前記光電変換素子が、前記積分球の内面で反射される前記蛍光を電気に変換し、前記励起光除去部材が、前記励起光集光部材によって集光される前記励起光を吸収して熱に変換する熱変換部材であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、装置の製造コストの上昇を招くことなく、雑音となる励起光(N;Noise)を効率的に取り除いて、蛍光(S;Signal)を取り出すことを可能とする光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下において、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0040】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0041】
[第1実施形態]
(光学装置の構成)
以下において、本発明の第1実施形態に係る光学装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る光学装置10を示す図である。
【0042】
図1に示すように、光学装置10は、光源11と、レンズ12と、レンズ13と、培養プレート14と、励起光集光レンズ15と、遮光板16と、蛍光集光レンズ17と、撮像素子18とを有する。
【0043】
光源11は、励起光(例えば、青色光)を発するレーザ発光装置などであり、直線状の励起光を発する。
【0044】
レンズ12は、光源11が発する光の光軸に沿って配置されており、光源11が発する直線状の励起光を拡げる片面凹レンズである。
【0045】
レンズ13は、光源11が発する光の光軸に沿って配置されており、レンズ12によって拡げられた励起光を平行光化する片面凸レンズである。
【0046】
なお、第1実施形態において、レンズ12及びレンズ13は、光源11が発するレーザビーム(直線状の励起光)を拡げるビームエキスパンダとして機能する。また、光源11、レンズ12及びレンズ13は、培養プレート14(サンプル14a)に励起光を照射する光源ユニットとして機能する。
【0047】
培養プレート14は、光源11が発する光の光軸に沿って配置されており、細胞などの透明なサンプル14aを培養する透明なプレートである。なお、培養プレート14は、所定の光透過率を有していればよく、培養プレート14の光透過率は100%である必要はない。
【0048】
サンプル14aは、観察者によって観察される対象物であり、蛍光試薬で染められている。また、蛍光試薬は、励起光(例えば、青色)が照射されると、蛍光(例えば、緑色光)を発する。なお、サンプル14aは、培養プレート14と同様に、所定の光透過率を有していればよく、サンプル14aの光透過率は100%である必要はない。
【0049】
励起光集光レンズ15は、光源11が発する励起光が培養プレート14(サンプル14a)を介して透過してくる側に配置されており、レンズ13によって平行光化された励起光を遮光板16に集光する片面凸レンズである。なお、励起光集光レンズ15は、蛍光試薬で染められたサンプル14aが発する蛍光を遮光板16に集光しないように、培養プレート14(サンプル14a)に近接して配置されることが好ましい。
【0050】
遮光板16は、励起光集光レンズ15によって励起光が集光される位置に配置されており、励起光を取り除く励起光除去部材である。また、遮光板16は、光を遮断する材料によって構成されており、励起光集光レンズ15によって集光される励起光だけではなくて、蛍光試薬で染められたサンプル14aが発する蛍光も遮断する。
【0051】
ここで、遮光板16は、励起光集光レンズ15によって集光された励起光を遮断することが可能なサイズを有していればよく、蛍光試薬で染められたサンプル14aが発する蛍光を大きく遮断しないように小さいサイズを有していることが好ましい。
【0052】
また、遮光板16は、蛍光試薬で染められたサンプル14aが発する蛍光を遮断しないように、光源11が発する励起光が培養プレート14(サンプル14a)を介して透過してくる側であって、培養プレート14(サンプル14a)から光軸上で離れた位置に配置されていることが好ましい。
【0053】
蛍光集光レンズ17は、蛍光試薬で染められたサンプル14aが発する蛍光を撮像素子18に集光する両面凸レンズである。また、蛍光集光レンズ17は、サンプル14aの像を像面上に結像する結像部材である。
【0054】
撮像素子18は、蛍光集光レンズ17によってサンプル14aの像が結像される像面上に配置されており、サンプル14aの像を撮像する。なお、撮像素子18は、CCD(Charge Coupled Device)やC−MOSセンサなどである。
【0055】
(作用及び効果)
本発明の第1実施形態に係る光学装置10によれば、遮光板16が励起光集光レンズ15によって励起光が集光される位置に配置されていることにより、遮光板16が効率的に励起光を除去することができる。
【0056】
また、遮光板16が励起光集光レンズ15によって集光された励起光を除去することにより、遮光板16のサイズを小さく抑えることができる。従って、サンプル14aが発する蛍光が遮光板16で除去されることを抑制して、撮像素子18に到達する蛍光量の減少を抑えることができる。
【0057】
従って、光学装置10は、雑音となる励起光(N;Noise)を効率的に取り除いて、蛍光(S;Signal)を取り出すことができ、S/N比の改善を図ることができる。また、透過しない波長が設計条件に合致するように厳密に製造された吸収フィルターやダイクロックミラーを用いる必要がないため、光学装置10の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0058】
[第2実施形態]
(光学装置の構成)
以下において、本発明の第2実施形態に係る光学装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る光学装置20を示す図である。
【0059】
図2に示すように、光学装置20は、光源21と、励起フィルター22と、培養プレート24と、励起光集光レンズ25と、遮光板26と、レンズ27aと、レンズ27bと、撮像素子28と、吸収フィルター29とを有する。
【0060】
光源21は、白色光を発するハロゲンランプなどである。励起フィルター22は、光源21が発する光の光軸に沿って配置されており、光源21が発する白色光から励起光(例えば、青色)を取り出すフィルターである。具体的には、励起フィルター22は、励起光に相当する波長を透過する。
【0061】
なお、第2実施形態において、光源21及び励起フィルター22は、培養プレート24(サンプル24a)に励起光を照射する光源ユニットとして機能する。
【0062】
培養プレート24は、上述した培養プレート14と同様に、光源21が発する光の光軸に沿って配置されており、細胞などの透明なサンプル24aを培養する透明なプレートである。なお、培養プレート24は、所定の光透過率を有していればよく、培養プレート24の光透過率は100%である必要はない。
【0063】
サンプル24aは、上述したサンプル14aと同様に、観察者によって観察される対象物であり、蛍光試薬で染められている。また、蛍光試薬は、励起光(例えば、青色)が照射されると、蛍光(例えば、緑色光)を発する。なお、サンプル24aは、培養プレート24と同様に、所定の光透過率を有していればよく、サンプル24aの光透過率は100%である必要はない。
【0064】
励起光集光レンズ25は、光源21が発する光の光軸に沿って培養プレート24に対して光源21と同じ側に配置されており、励起フィルター22を透過する励起光を遮光板26に集光する両面凸レンズである。なお、励起光集光レンズ25は、蛍光試薬で染められたサンプル24aに励起光を照射するように、培養プレート24(サンプル24a)に近接して配置されることが好ましい。
【0065】
遮光板26は、励起光集光レンズ25によって励起光が集光される位置に配置されており、励起光を取り除く励起光除去部材である。また、遮光板26は、遮光板16と同様に、光を遮断する材料によって構成されており、励起光集光レンズ25によって集光される励起光だけではなくて、蛍光試薬で染められたサンプル24aが発する蛍光も遮断する。
【0066】
ここで、遮光板26は、励起光集光レンズ25によって集光された励起光を遮断することが可能なサイズを有していればよく、蛍光試薬で染められたサンプル24aが発する蛍光を遮断しないように小さいサイズを有していることが好ましい。
【0067】
また、遮光板26は、蛍光試薬で染められたサンプル24aが発する蛍光を遮断しないように、光源21が発する励起光が培養プレート24(サンプル24a)を介して透過してくる側であって、培養プレート24(サンプル24a)から光軸上で離れた位置に配置されていることが好ましい。
【0068】
レンズ27aは、蛍光試薬で染められたサンプル24aが発する蛍光を平行光化する片面凸レンズである。レンズ27bは、レンズ27aによって平行光化された蛍光を撮像素子28に集光する片面凸レンズである。また、レンズ27bは、サンプル24aの像を像面上に結像する結像部材である。
【0069】
撮像素子28は、レンズ27bによってサンプル24aの像が結像される像面上に配置されており、サンプル24aの像を撮像する。なお、撮像素子28は、CCD(Charge Coupled Device)やC−MOSセンサなどである。
【0070】
吸収フィルター29は、レンズ27aによって平行光化された蛍光を透過して、励起フィルター22を透過する励起光を透過しないフィルターである。具体的には、吸収フィルター29は、蛍光に相当する波長を透過して、励起光に相当する波長を透過しない。
【0071】
なお、吸収フィルター29は、培養プレート24の傷や傾きなどによって励起光が散乱、屈折されて、仮に励起光集光レンズ25が励起光を遮光板26に集光することができなかった場合であっても、励起光が撮像素子28に到達することを抑制するために設けられている。従って、励起光集光レンズ25が励起光を遮光板26に集光することができれば、吸収フィルター29が設けられていないくてもよいことは勿論である。
【0072】
[第3実施形態]
(光学装置の構成)
以下において、本発明の第3実施形態に係る光学装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係る光学装置30を示す図である。
【0073】
図3に示すように、光学装置30は、光源31と、レンズ31aと、レンズ31bと、励起フィルター32と、レンズ33と、透明容器34と、励起光集光レンズ35と、ビームダンプ36と、積分球37と、光電変換素子38と、吸収フィルター39(吸収フィルター39a及び吸収フィルター39b)とを有する。
【0074】
光源31は、白色光を発する白色LEDなどである。レンズ31aは、光源31が発する光の光軸に沿って配置されており、光源31が発する白色光を平行光化する片面凸レンズである。レンズ31bは、光源31が発する光の光軸に沿って配置されており、平行光化された白色光をレンズ33に集光する片面凸レンズである。
【0075】
励起フィルター32は、光源31が発する光の光軸に沿って配置されており、光源31が発する白色光から励起光(例えば、青色)を取り出すフィルターである。具体的には、励起フィルター32は、励起光に相当する波長を透過する。
【0076】
レンズ33は、光源31が発する光の光軸に沿って配置されており、透明容器34に照射される励起光の照度分布を均一化させる両面凸レンズである。
【0077】
なお、第3実施形態において、光源31、レンズ31a、レンズ31b、励起フィルター32及びレンズ33は、透明容器34(サンプル34a)に励起光を照射する光源ユニットとして機能する。また、光源31、レンズ31a、レンズ31b及びレンズ33は、透明容器34(サンプル34a)に照射される励起光の照度分布を均一化するケーラ照明ユニットとして機能する。
【0078】
透明容器34は、光源31が発する光の光軸に沿って配置されており、細胞などの透明なサンプル34aを収容しており、サンプル34aを培養する透明な培地34bで満たされている。なお、透明容器34は、所定の光透過率を有していればよく、透明容器34の光透過率は100%である必要はない。
【0079】
サンプル34aは、上述したサンプル14aと同様に、観察者によって観察される対象物であり、蛍光試薬で染められている。また、蛍光試薬は、励起光(例えば、青色)が照射されると、蛍光(例えば、緑色光)を発する。なお、サンプル34a及び培地34bは、透明容器34と同様に、所定の光透過率を有していればよく、サンプル34a及び培地34bの光透過率は100%である必要はない。
【0080】
励起光集光レンズ35は、光源31が発する励起光が透明容器34(サンプル34a)を介して透過してくる側に配置されており、励起フィルター32を透過する励起光をビームダンプ36に集光する両面凸レンズである。なお、励起光集光レンズ35は、蛍光試薬で染められたサンプル34aが発する蛍光をビームダンプ36に集光しないように、透明容器34(サンプル34a)に近接して配置されることが好ましい。
【0081】
ビームダンプ36は、励起光集光レンズ35によって励起光が集光される位置に配置されており、励起光を除去する励起光除去部材である。具体的には、ビームダンプ36は、積分球37内に配置されており、励起光を吸収して熱に変換する熱変換部材である。
【0082】
積分球37は、光源31が発する励起光が透明容器34(サンプル34a)を介して透過してくる側に配置されており、励起光集光レンズ35によって集光される励起光及び蛍光試薬で染められたサンプル34aが発する蛍光が入射する開口部37bを有している。なお、開口部37bのサイズは、積分球37内に取り込まれる蛍光量を増やすために、少なくともサンプル34aの観察面以上のサイズであることが好ましい。
【0083】
また、積分球37は、光電変換素子38が設けられる開口部37cを有している。具体的には、積分球37の内面37aで反射される蛍光は、開口部37cを通じて光電変換素子38に入射する。
【0084】
また、積分球37の内面37aは、開口部37bから入射した蛍光を反射する反射面によって構成されている。例えば、積分球37の内面37aには、白色の塗料などが塗布されており、蛍光が内面37aで反射される。
【0085】
光電変換素子38は、光源31が発する励起光が透明容器34(サンプル34a)を介して透過してくる側に配置されており、積分球37の内面37aで反射された蛍光を電気信号に変換するフォトダイオードなどである。具体的には、光電変換素子38は、積分球37の開口部37cに設けられている。
【0086】
吸収フィルター39a及び吸収フィルター39bは、積分球37の内面37aで反射された蛍光を透過して、励起フィルター32を透過する励起光を透過しないフィルターである。具体的には、吸収フィルター39a及び吸収フィルター39bは、蛍光に相当する波長を透過して、励起光に相当する波長を透過しない。ここで、吸収フィルター39aが透過しない波長は、吸収フィルター39bが透過しない波長と異なっているものとする。
【0087】
なお、吸収フィルター39a及び吸収フィルター39bは、透明容器34の傷や傾きなどによって励起光が散乱、屈折されて、仮に励起光集光レンズ35が励起光をビームダンプ36に集光することができなかった場合であっても、励起光が光電変換素子38に到達することを抑制するために設けられている。従って、励起光集光レンズ35が励起光をビームダンプ36に集光することができれば、吸収フィルター39a及び吸収フィルター39bが設けられていないくてもよいことは勿論である。また、吸収フィルター39は、吸収フィルター39a及び吸収フィルター39bのいずれか一方のみであってもよいことは勿論である。
【0088】
[第4実施形態]
以下において、本発明の第4実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、上述した第3実施形態と第4実施形態との差異について主として説明する。
【0089】
具体的には、上述した第3実施形態では、ビームダンプ36は、積分球37内に配置されているが、第4実施形態では、ビームダンプ36は、積分球37外に配置されている。
【0090】
(光学装置の構成)
以下において、本発明の第4実施形態に係る光学装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、本発明の第4実施形態に係る光学装置30を示す図である。なお、図4では、上述した図3と同様の構成には同様の符号を付しているため、重複する説明については省略する。
【0091】
図4に示すように、積分球37は、励起光集光レンズ35によって集光された励起光を積分球37の外部に導く開口部37dを有している。また、積分球37の開口部37dには、励起光集光レンズ35によって集光された励起光を熱に変換するビームダンプ36が設けられている。
【0092】
なお、開口部37dのサイズは、励起光集光レンズ35によって集光された励起光を積分球37の外部に導くことが可能なサイズであればよく、蛍光を反射する積分球37の内面37aの面積を確保するために小さい方が好ましい。
【0093】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0094】
例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、励起光除去部材は、光を遮断する遮光板(遮光板16及び遮光板26)であるが、これに限定されるものではない。具体的には、励起光除去部材は、撮像素子(撮像素子18及び撮像素子28)に励起光が到達しないように励起光を反射する反射ミラーであってもよい。
【0095】
ここで、励起光除去部材は、蛍光を透過して励起光を反射するダイクロイックミラーであってもよいが、全ての光を反射する反射ミラーであることが好ましい。
【0096】
また、反射ミラーは、励起光集光部材(励起光集光レンズ15及び励起光集光レンズ25)によって集光された励起光を遮断することが可能なサイズを有していればよく、蛍光試薬で染められたサンプル(サンプル14a及びサンプル24a)が発する蛍光を遮断しないように小さいサイズを有していることが好ましい。
【0097】
また、反射ミラーは、蛍光試薬で染められたサンプル(サンプル14a及びサンプル24a)が発する蛍光を遮断しないように、光源(光源11及び光源21)が発する光がサンプル(サンプル14a及びサンプル24a)を介して透過してくる側であって、サンプル(サンプル14a及びサンプル24a)から光軸上で離れた位置に配置されていることが好ましい。
【0098】
上述した第4実施形態では、積分球37の開口部37dにビームダンプ36が設けられているが、これに限定されるものではない。具体的には、励起光集光レンズ35によって集光される励起光が積分球37の開口部37dを通じて積分球37の外部に導かれる場合には、ビームダンプ36が設けられていなくてもよい。
【0099】
上述した第1実施形態〜第4実施形態に設けられた各種レンズの形状は、上述した例示に限定されるものではなく、本発明の目的を達するために必要な形状であればよいことは勿論である。
【0100】
同様に、上述した第1実施形態〜第4実施形態に設けられた各種レンズの組合せは、上述した例示に限定されるものではなく、本発明の目的を達するために必要な組合せであればよいことは勿論である。
【0101】
また、上述した第1実施形態〜第4実施形態では、観測者によって観測される観測対象物は、蛍光試薬で染められたサンプル(サンプル14a、サンプル24a及びサンプル34a)であるが、これに限定されるものではない。例えば、観測対象物は、蛍光試薬で染められていなくても、プラスチックなどの高分子材料や細胞内のタンパク質などのように、励起光の照射によって微弱な蛍光を発する物質であってもよい。
【0102】
さらに、上述した蛍光検出部材(撮像素子18、撮像素子28及び光電変換素子38)は、光学的に観測対象物(サンプル14a、サンプル24a及びサンプル34a)から励起光が透過してくる側に配置されていればよい。
【0103】
具体的には、光源(光源11、光源21及び光源31)が発する光の光軸や観測対象物が発する蛍光の光軸が必ずしも直線状になっている必要はなく、観測対象物が発する蛍光がミラーなどによって折り返されて蛍光検出部材に導かれるならば、蛍光検出部材が設けられる位置は光学装置内の任意の位置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学装置10の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光学装置20の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る光学装置30の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る光学装置30の構成を示す図である。
【図5】従来技術に係る光学装置100の構成を示す図である。
【図6】従来技術に係るフレネル反射について説明するための図である。
【図7】従来技術に係る励起フィルター121、ダイクロイックミラー122及び吸収フィルター124の光透過率を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
10・・・光学装置、11・・・光源、12・・・レンズ、13・・・レンズ、14・・・培養プレート、14a・・・サンプル、15・・・励起光集光レンズ、16・・・遮光板、17・・・蛍光集光レンズ、18・・・撮像素子、20・・・光学装置、21・・・光源、22・・・励起フィルター、24・・・培養プレート、24a・・・サンプル、25・・・励起光集光レンズ、26・・・遮光板、27a・・・レンズ、17b・・・レンズ、28・・・撮像素子、29・・・吸収フィルター、30・・・光学装置、31・・・光源、31a・・・レンズ、31b・・・レンズ、32・・・励起フィルター、33・・・レンズ、34・・・透明容器、34a・・・サンプル、34b・・・培地、35・・・励起光集光レンズ、36・・・ビームダンプ、37・・・積分球、37a・・・内面、37b・・・開口部、37c・・・開口部、37d・・・開口部、38・・・光電変換素子、39・・・吸収フィルター、100・・・光学装置、110・・・光源、120・・・蛍光キューブ、121・・・励起フィルター、122・・・ダイクロイックミラー、123・・・ライトアブソーバ、124・・・吸収フィルター、130・・・対物レンズ、140・・・透明容器、140a・・・培地、140b・・・サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測者によって観測される対象物であり、蛍光を発する観測対象物に、前記蛍光を励起する励起光を照射する光源ユニットと、
前記励起光を集光する励起光集光部材と、
前記励起光集光部材によって前記励起光が集光される位置に配置されており、前記励起光を除去する励起光除去部材と、
前記励起光が前記観測対象物を介して透過してくる側に配置されており、前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を検出する蛍光検出部材とを備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記励起光除去部材は、前記励起光を透過しない遮光板であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記励起光除去部材は、前記励起光を反射する反射ミラーであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を集光して、前記観測対象物の像を像面上に結像する結像部材をさらに備え、
前記蛍光検出部材は、前記像面上に配置されており、前記観測対象物の像を撮像する撮像素子であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記蛍光検出部材は、前記励起光によって前記観測対象物が発する前記蛍光を電気に変換する光電変換素子であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記励起光が前記観測対象物を介して透過してくる側に配置されており、前記励起光及び前記蛍光が入射する開口部を有する積分球をさらに備え、
前記積分球の内面は、前記蛍光を反射する反射面によって構成されており、
前記光電変換素子は、前記積分球の内面で反射される前記蛍光を電気に変換し、
前記励起光除去部材は、前記励起光集光部材によって集光される前記励起光を吸収して熱に変換する熱変換部材であることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−298310(P2007−298310A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124445(P2006−124445)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】