説明

光学装置

第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極を含む基板を提供する工程、第1のタイプの電荷輸送体の輸送用第1の材料並びに発光及び第1のタイプの電荷輸送体の輸送用第2の材料を含む組成物を基板上に蒸着することによって半導体領域を形成する工程、及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を半導体領域上に蒸着する工程を含む電子発光装置の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電子発光装置及びこれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学電子装置の1種類は、発光又は検出のための有機材料の使用にある。これら装置の基本構造は、負電荷輸送体(電子)を有機層に注入するためのカソード及び正電荷輸送体(正孔)を有機層に注入するためのアノードとの間に挟まれた発光有機層、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)(“PPV”)又はポリフルオレンからなる。電子及び正孔は有機層で結合して光子を発生する。国際公開90/13148号パンフレットにおいては、有機発光層はポリマーである。米国特許4,539,507号明細書においては、有機発光層は、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(“Alq3”)のような低分子材料として知られる種類の材料である。実用的装置においては、電極の1つは光子が装置から放出できるように透明である。
【0003】
典型的な有機発光装置はインジウム錫酸化物(ITO)のような透明第1電極で被覆されたガラス又はプラスチック上に形成される。電子発光有機材料の少なくとも1つは薄膜層は第1電極を覆う。最終的にカソードは電子発光有機材料層を覆う。カソードは典型的には金属又は合金であり、アルミニウムのような単層又はカルシウム及びアルミニウムのような複数層を含む。例えば、電極から有機層への電荷の注入を改良するために他の層も装置に追加することができる。例えば、アノードと電子発光材料との間にポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルフォネート(PEDOT−PSS)又はポリアニリンを供給することができる。電源から電極の間に電圧が印加されるとき、電極の1つはカソードとして働き、他方はアノードとして働く。
【0004】
有機半導体において、重要な特徴は、電子エネルギレベル、特に、「最高空準位」(HOMO)及び「最低空準位」(LUMO)レベルの真空レベルに関して測定される。これらは、光放射の測定、及び酸化還元の電子化学ポテンシャルの測定から推定される。この技術分野においては、このようなエネルギは、境界近傍の局部環境、及び値が決められる曲線(ピーク)上の点のような多くの要因によって影響される。したがって、そのような値の使用は定量的というより定性的である。
【0005】
駆動の際、正孔はアノードを通して装置に注入され、電子はカソードを通して装置に注入される。正孔と電子は有機電子発光層中で結合し、光を放出して放射崩壊に至る励起を形成する。
【0006】
OLEDの活性有機層は、典型的には材料の蒸発、又は溶液蒸着(ポリマー又はデンドリマー材料の場合)によって形成される。蒸発は、複数層の形成、特に、電荷の有機発光層への輸送を促進するための正孔輸送及び/又は電子輸送層の形成を可能にする。溶液蒸着層は次の層の蒸着に使用される溶媒に溶解してしまう傾向があるためそのような複数層の形成には不向きである。
【0007】
複数層の形成を必要とせずに溶液プロセス性システム用の電荷輸送材料を利用する手法は、国際公開99/48160号パンフレット及び国際公開02/28983号パンフレットに開示されており、正孔輸送構成材、電子輸送構成材及び発光構成材が一緒に混合される。
【0008】
他の手法は、国際公開99/48160号パンフレットに開示される電荷輸送単位を、一般式(a)の青色電子発光ポリマーを開示する国際公開00/55927号パンフレットに開示される電子発光ポリマーに組み込むことである。
【化6】

ここで、w+x+Y=1、w<0.5、0≦x+y≦0.5、及びn<2である。
【0009】
簡潔化すると、国際公開99/48160号パンフレットに開示される別々の正孔輸送、電子輸送及び発光構成要素が単一分子に組み込まれる。F8繰り返し単位の共役鎖は電子輸送を提供する。正孔輸送の目的のためにTFB単位が供給される。混合ではなく単一電子発光ポリマーの使用の方が、電子発光材料、特に、電荷輸送構成要素によって効率が改良されている青色電子発光材料の寿命が改良されることがわかった(「寿命」は、交流で一定の電流で稼動されているOLEDの輝度が半分になるのに要する時間を意味する)。単一ポリマーへの単位の組み合わせは混合より好ましく、例えば、分子内電荷輸送は分子間電荷輸送より好ましく、混合物中の層分離の好ましくない形によって引き起こされる潜在的な困難が避けられる。
【0010】
共同出願であるPCTGB03/01991号は、(a)正孔輸送“TFB”繰り返し単位の除去によって、正孔輸送と発光が共に“PFB”繰り返し単位によって供給されるポリマーが供給されるポリマーの寿命の改良について記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
混合ポリマーを非混合ポリマーに取り替えることによる青色寿命の改良は、フルカラーOLEDが赤、緑及び青色発光材料を必要とするため特に重要である。しかしながら、上述の開発にもかかわらず、青色発光材料は赤及び緑色材料に比較して相対的に短い寿命を被ることが知られている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、電子発光装置、特に、改良された寿命を有する青色発光体を含む電子発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、驚くべきことに、正孔輸送材料及び正孔輸送単位を含む電子発光材料を含む混合物の蒸着によって寿命が改良されることを発見した。
【0014】
したがって、第1の側面において、本発明は次のステップを含む電子発光装置の形成方法を提供する。
第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極を含む基板を提供する
第1のタイプの電荷輸送体の輸送用第1の材料並びに発光及び第1のタイプの電荷輸送体の輸送用第2の材料を含む組成物を基板上に蒸着することによって半導体領域を形成する
第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を半導体領域上に蒸着する
【0015】
「正孔輸送材料」は正孔注入材料から電子発光材料に正孔を輸送することができる材料を意味する。好ましくは、正孔輸送材料のHOMOは、アノード又は正孔注入材料のHOMOから0.7eV以下であり、より好ましくは0.5eV以下であり、最も好ましくは0.2eV以下である。典型的な電子発光装置は仕事関数4.8eVを有するアノードを含む。したがって、正孔輸送材料のHOMOレベルは4.8eVより小さく、アノードから正孔注入への障壁は存在しない。
【0016】
典型的な装置のカソードは約3eVの仕事関数を有する、したがって、電子輸送材料のLUMOレベルは好ましくは約3−3.5eVである。
【0017】
第2の材料の発光区域は最も小さいバンドギャップを有する第2の材料によって決められる。
【0018】
好ましくは、第1の電極はアノードである。第2の電極はカソードである。第1のタイプの電荷輸送体は正孔であり、第2のタイプの電荷輸送体は電子である。
【0019】
第2の材料は別々の電荷輸送及び発光領域又は単位を含む。あるいは、電荷輸送及び発光の機能は発光材料の同じ領域又は単位によって供給される。
【0020】
好ましくは、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つ(より好ましくは両者)はポリマー、より好ましくは共役ポリマーである。
【0021】
好ましくは、第1の材料は選択的に置換される一般式(I)の繰り返し単位を含む。
【化7】

ここで、各Arは選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールから独立して選択される。
【0022】
好ましくは、各Arは選択的に置換されるフェニルである。より好ましくは、第1の繰り返し単位は選択的に置換される一般式(II)の繰り返し単位である。
【化8】

ここで、各Rは水素又は置換基から選択される。好ましい置換基Rはアルキル又はアルコキシ基のような溶解性基、電子誘引基のような繰り返し単位の電子親和性を改良する基を含む。
【0023】
好ましくは、一般式(II)の繰り返し単位は主鎖に単一窒素原子を含む。
【0024】
好ましくは、第2の材料は選択的に置換される一般式(III)の繰り返し単位を含む。
【化9】

ここで、各Ar1は独立して選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールを表す。
【0025】
好ましくは、各Ar1は選択的に置換されるフェニルである。より好ましくは、第1の繰り返し単位は一般式(IV)の選択的に置換される繰り返し単位を含む。
【化10】

ここで、Rは上記のように定義される。
【0026】
好ましくは、第1及び第2の材料の少なくとも1つ(より好ましくは両者)は、選択的に置換されるフルオレン、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン又はオリゴフェニレンであり、好ましくはフルオレン、より好ましくは9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイルから選ばれる追加の繰り返し単位を含むポリマーである。
【0027】
特に好ましい追加の繰り返し単位は選択的に置換される一般式(V)の繰り返し単位から選択される。
【化11】

ここで、各R1は、選択的に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリールから独立して選ばれる。特に好ましい置換基R1は分岐状又は直鎖C1−10アルキル及び炭化水素アリールから選ばれる。
【0028】
特に好ましい追加の繰り返し単位は選択的に置換される9,9−ジアルキル又は9,9−ジアルコキシ2,7−フルオレニル、最も好ましくは9,9−ジ(n−オクチル)フルオレンである。
【0029】
好ましくは、第2の材料は波長範囲400〜500nm、最も好ましくは430〜500nmにおける電子発光ができるものである。
【0030】
好ましくは、第1材料:第2材料の比は、5:95〜30:70、より好ましくは10:90〜20:80である。
【0031】
好ましくは、組成物は溶媒中の溶液から蒸着される。
【0032】
組成物のための溶媒は単一溶媒又は2以上の溶媒の混合液である。好ましくは、溶媒は置換されるベンゼン、より好ましくは単一又はポリ−アルキレートベンゼンである。
【0033】
好ましくは、第1の材料の中心平均分子量は15〜150kDa、より好ましくは25〜100kDa、より好ましくは30〜80kDa、最も好ましくは40〜60kDaである。
【0034】
好ましくは、第1の材料及び第2の材料は実質的に完全に層分離する。層分離は、基板上に組成物を蒸着した後に生じる。
【0035】
第2の側面において、本発明は、本発明の第1の側面の方法によって得られる電子発光装置を提供する。
【0036】
図1を参照すると、本発明の光学装置、特に、透明ガラス又はプラスチック基板1、インジウム錫酸化物のアノード2及びカソード4を含む電子発光装置の標準的な構造が示されている。半導体領域はアノード2とカソード4の間に位置する。
【0037】
半導体領域3は本発明の第1及び第2の材料のみ、又は追加の材料を含むことができる。第1及び第2の材料は好ましくは混合液の形で溶液から蒸着され、溶媒の蒸発によって部分的又は全体的に層分離が生じる。もし、第1又は第2の材料が正孔輸送又は電子輸送の機能の1つを提供しないとき、国際公開99/48160号パンフレットに開示される第1及び第2の材料と混合された別の材料として、又は第1若しくは第2の材料に組み込まれる単位、特に国際公開00/55927号パンフレットに開示されるポリマーの繰り返し単位として、この機能を提供する追加の材料が半導体領域3に含有される。追加の材料は半導体領域3内の別の層として提供されることもできる。
【0038】
第2の材料がポリマーである場合、発光及び電荷輸送機能はポリマーの単一繰り返し単位を含む領域、又は電子輸送領域として機能するポリフルオレン単位の共役鎖のような繰り返し単位の鎖として提供される。このようなポリマー内の異なる領域は米国特許6353083号明細書のようにポリマー主鎖に沿って、又はWO01/62869のようにポリマー主鎖からの分岐基として提供することができる。
【0039】
第1及び第2の材料がポリマーである場合、それは、好ましくは、フルオレン、特に2,7−結合9,9ジアルキルフルオレン又は2,7−結合9,9ジアリールフルオレンのようなアリーレン又はヘテロアリーレン、2,7−結合9,9−スピロフルオレンのようなスピロフルオレン、2,7−結合インデノフルオレンのようなインデノフルオレン、又はアルキル若しくはアルコキシ置換1,4−フェニレンのようなフェニルを含むコポリマーである。これらの各基は置換され得る。
【0040】
さらに適切なアリレーン又はヘテロアリレーン基は、例えば、国際公開00/55927号パンフレット及び国際公開00/46321号パンフレットのようにこの分野で公知であり、その内容は引用例として本明細書に組み込まれる。
【0041】
各上記ポリマーはホモポリマー、コポリマー、ターポリマー又は高次ポリマーである。これらコポリマー、ターポリマー又は高次ポリマーは、規則交替、不規則及びブロックポリマーを含み、ここで各モノマーの割合はポリマーが変えられるように使用される。
【0042】
プロセスの容易性のため、第1及び第2の材料は可溶性であることが好ましい。C1-10アルキル又はC1-10アルコキシのような置換基が特別な溶媒系においてポリマーの可溶性を与えるために選択される。典型的な溶媒は、トルエン及びキシレンのようなモノ−又はポリ−アルキレートベンゼン又はテトラヒドロフランのような溶媒を含む。
【0043】
第1及び第2の材料の溶液を蒸着するための適切な技術は欧州特許0880303号明細書に開示されるインクジェット印刷、スピンコート、ディップコート及びドクターブレードコートを含む。
【0044】
芳香族モノマーから共役ポリマーを製造するために特に適する2つの重合技術は、例えば、国際公開00/53656号に開示されるスズキ重合、及び例えば、"Macromolecules", 31, 1099-1103 (1998)に開示されるヤマモト重合である。スズキ重合は、ハロゲン化及びボロン誘導官能基の重合を伴う。ヤマモト重合は、ハロゲン化官能基の重合を伴う。したがって、各モノマーは2つの反応官能基Pが供給され、ここで、Pは、(a)ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選択されるボロン誘導官能基、並びに(b)ハロゲン化官能基から構成される群から独立して選択される。
【0045】
必須ではないが、アノードから半導体ポリマー層への正孔の注入を促進するためアノード2及びポリマー3の間に有機正孔注入材料層(図示しない)が望ましい。有機正孔注入材料の例としては、欧州特許0901176号明細書及び欧州特許0947123号明細書に開示されるポリ(チオフェン ジオキシチオフェン)(PEDT/PSS)又は米国特許5723873号明細書及び米国特許5798170号明細書に開示されるようなポリアニリンを含む。
【0046】
カソード4は電子を電子発光層へ注入するのを可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードと電子発光材料の間の不利な効果の可能性のような他の要因がカソードの選択に影響を与える。カソードはアルミニウム層のような単一層で構成することができる。あるいは、例えば、国際公開98/10621号パンフレットに開示されるようなカルシウムとアルミニウムの2層のような多層、国際公開98/57371号パンフレット、Appl. Phys. Lett. 2002,81(4),634及び国際公開02/84759号パンフレット、又は例えば国際公開00/48258号パンフレットに開示されるフッ化リチウム若しくはAppl. Phys. Lett. 2001,79(5) 2001に開示されるようなフッ化バリウムのような電子注入を促進する誘電材料の薄膜層を含むことができる。
【0047】
本発明の電子発光ディスプレイは、モノクロディスプレイ又はフルカラーディスプレイ(すなわち、赤、緑及び青色発光材料から形成される)であり得る。本発明の電子発光装置は、発光、特に、白色光源として使用することができる。例えば、本発明の装置は、例えば、発光層内に位置するナノ粒子によって低減変換を行う米国特許6515314号明細書、又は装置の外側表面に低減変換粒子を付着させるApplied Physics Letters 80(19), 3470-3472,2002に開示される赤、緑及び青色発光の混合から白色光を生成させるための赤及び緑の低減変換体による青色ポリーの一部を低減変換する手段を有する青色電子発光ポリマーを含む。
【0048】
実施例
モノマーの実施例
本発明のモノマーが下記のスキームに従って製造された。
【化12】

【0049】
モノマーの実施例 M1:2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン
2,7−ジブロモフルオレン
【化13】

3Lのフランジフラスコフルオレン(100.006g,0.555mol)中にフォスフォラスペントオキサイド(110.148g,0.776mol)及びトリメチルフォスファート(1200mL)が混合された。機械的撹拌をしながら、トリメチルフォスファート(200mL)中の臭素溶液(63mL、1.23mol)が迅速に加えられた。次いで、この透明な溶液は120℃で22時間加熱された。混合物は室温まで冷却され、3Lの水中に注がれた。チオ硫酸ナトリウム(50.045g)が加えられ、混合物は黄色に変色した。1時間撹拌が行われ、次いで、黄色い固体がろ過された。この固体は、モノ臭化化合物を除去するためにメタノール中で加熱され、176.183g(HPLCによる98%純化、94%生成)が得られた。
1H NMR(CDCl3)7.73(2H,d,J2.0)、7.61(2H,dd,J7.6,2.0)、7.36(2H,d,J8.0);13C NMR(CDCl3
142.3,137.5,135.3,127.9,123.3,121.8,109.8
【0050】
4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸−1,1’−ビフェニル
【化14】

2Lのフランジフラスコ中に、2,7−ジブロモフルオレン(120.526g,0.356mol)水酸化カリウム(微細粉末フレーク,168.327g,3.000mol)及びトルエン(600mL)を入れた。この混合物は120℃で4時間加熱され、次いで室温まで冷却された。激しく撹拌しながら固体を溶解するために水(〜2L)が加えられた。緑がかった水溶層が除去され、黄色のトルエン層が水で2回洗浄された。結合された水溶層は濃塩酸で酸性化され、次いで凝固固体がろ過され、乾燥されトルエンから再結晶され白い結晶(79%生成)100.547gが得られた。1H NMR((CD32CO)8.00(1H,d,J2.0)、7.77(1H,dd,J8.0,2.4)、7.57(2H,d,J8.0);7.34(1H,d,J8.4),7.29(2H,d,J8.8);13C NMR((CD32CO)167.1,140.4,139.8,134.2,133.5,132.8,132.7,131.2,130.6,121.4,121.1
【0051】
4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸−1,1’−ビフェニルのメチルエステル
【化15】

4,4−ジブロモ−2−カルボン酸ビフェニル(171.14g,0.481mol)がメタノール(700mL)及び硫酸(15mL)中に浮遊され、80℃で21時間加熱された。溶媒は除去され、油がエチルアセテート中に溶解された。この溶液は、2Nの水酸化ナトリウム、水、飽和塩化ナトリウムで洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥され、ろ過され、蒸発されてオレンジの油が得られた。この油は熱いメタノールで処理され、冷却によってエステルを凝固させ、ろ過された。母液は蒸発され、固体が再結晶化されて追加の生成物が得られた。エステルはGCMSによって100%純化され、123.27gの生成物(69%)が得られた。1H NMR(CDCl3)、7.99(1H,d,J2.0)、7.64(1H,dd,J8.0,1.6)、7.51(2H,d,J8.4)、;7.19(1H,d,J8.8),7.13(2H,d,J8.8),3.67(3H,s);13C NMR(CDCl3)167.1,140.3,139.1,134.4,132.9,132.1,132.0,131.3,129.8,121.9,121.5,52.3;GCMS:M+=370
【0052】
4,4−ジブロモ−2−ジフェニルアルコール−1,1’−ビフェニル
【化16】

4,4−ジブロモ−2−メチルエステルビフェニル(24.114g,65.1mol)が乾燥ジエチルエーテル(120mL)中に溶解され、溶液はイソプロパノール/ドライアイス浴を使用して−60℃まで冷却された。次いで、フェニルリチウム(シクロヘキサン−エーテル中1.8M溶液,91mL)が滴下された。混合物は撹拌され、室温まで加熱された。反応は4時間後に終了した。次いで、水(70mL)が加えられ、水溶層はジエチルエーテルにより洗浄された。結合された有機層は塩化ナトリウムで洗浄され、硫化マグネシウム上で乾燥され、ろ過され、蒸発されて黄色の粉末を得た。イソプロパノールからの再結晶により白い固体(59%生成)19gが得られた。GC−MS(m/z,相対的強度%)494(M+,100);1H NMR(CDCl3)7.43(1H,dd,J8.4,2.4)、7.28(6H,m)、7.23(2H,d,J8.0);7.11(4H,m),6.99(1H,d,J2.4),6.94(1H,d,J8.4),6.61(2H,d,J8.4);13C NMR(CDCl3)147.5,146.7,140.3,139.3,134.0,133.0,131.2,131.2,131.1,130.3,128.2,128.1,127.8,121.8,121.3,83.2
【0053】
2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン
【化17】

アルコール(69.169g,140mmol)及び氷酢酸(450ml)が撹拌され、還流するまで加熱され、次いで濃塩酸(0.5ml)が滴下された。添加が完了するとき、混合物は1時間加熱され、次いで冷却された。反応混合物は水(500ml)中に注がれ、その後固体がろ過された。白い固体がn−ブチルアセテートから3回再結晶化されて目標生成物(HPLCにより99.59%,30%生成)が20.03g得られた。
1H NMR(CDCl3),δ/ppm:7.58(2H,d,J7.6)、7.49(2H,d,1.2)、7.48(2H,dd,1.6)、7.25(6H,m),7.14(4H,m).
1H NMR(CDCl3),δ/ppm:153.2,144.6,138.3,131.1,129.6,128.7,128.2,127.4,122.0,121.7,65.8
【0054】
モノマーの実施例 M2−M4
下記の表1に示されるAr基を有するモノマーが上記のスキーム及び一般的実験プロセスにしたがって製造された。表1に示されるAr基に対応するアリールリチウム化合物が対応する臭化アリールから製造された。
【表1】

【0055】
ポリマーの実施例P1
本発明の青色電子発光ポリマーが9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレニルボロネート)(0.65価)、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン(0.30価)及びN,N’−ジ(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(4−n−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン(0.05価)の反応によって国際公開00/53656号パンフレットのプロセスにしたがって製造され、ポリマーP1が得られた。
【化18】

【0056】
装置の実施例
一般的手法
ガラス基板(Applied Films,Colorado,USAより入手可)上に支持されたインジウム錫酸化物上に、BayerからBaytron P(登録商標)として入手可能なPEDT/PSS層をスピンコートにより蒸着された。TFBとポリマーP1との混合溶液がPEDT/PSS上にスピンコートにより蒸着された。ポリマーP1上にバリウムの第1層からなるカソードと第2のアルミニウム封止層が蒸着された。
【0057】
寿命
本発明の装置が異なるP1:TFBの割合の範囲及び異なる溶媒を使用して一般的手法により製造された。比較の目的のため、TFBを含まない装置が製造された。それぞれの場合、少なくとも2つの装置が製造された。装置は、800cd/m2で稼動された。
【表2】

【0058】
結果からわかるように、本発明の混合物を含む装置の寿命は寿命が4〜5倍増加している。異なる溶媒を使用することによる寿命への影響は、混合液における層分離は装置特性を決定する役割を果たす。上記のポリマー(a)からTFB単位を除くと寿命が改良されると以前発見され、非混合ポリマーは混合ポリマーに比較して優れた寿命が得あれることが以前発見されたことを考慮すれば、F8−TFBコポリマーの混合によるP1の寿命の改良は驚くべきことである。理論に拘束されずに言うなら、本発明の混合物は垂直の層分離を起こし、F8−TFBコポリマーは装置のアノード側に移動し、その結果、アノードと電子発光層の間にF8−TFB正孔輸送層が形成され、これはITO及び/又はPEDOTからの不純物が電子発光層に浸入するのに対する障壁とると考えられる。正孔輸送層の蒸着に続いて電子発光層が形成されることは公知技術であるが、本発明は正孔輸送層と電子発光層を1つの工程で形成することを可能にする。さらに、本発明は、溶液プロセス可能な材料の複数層の形成における前述の難点を克服する多層装置の形成に影響を有する層分離の利点を有する。
【0059】
駆動電圧
図2からわかるように、駆動電圧の低減は、制御されたものに比較して混合系において達成されている。この低減は、TFB:ポリマー1の異なる比率及び異なる溶媒において得られた。
【0060】
量子効率
【表3】

P1ポリマーのみに比較して本発明の混合系の最大量子効率は十分な増加が見られ、また、100cd/m2における量子効率の限界的増加が見られる。
【0061】
電子発光ポリマー内のTFB vs 混合物中の分離された材料としてのTFB
比較ポリマーC1(下記に構造を示す)から“TFB”繰返し単位を除去し、ポリマーP1を得、“TFB”成分を同じポリマーの成分としてではなく混合物の分離された材料として提供することの影響は驚くべきことである。
【0062】
ポリマーC1及びP1のみを含む装置の比較は、ポリマーC1からの“TFT”繰り返し単位の除去が十分な特性の改良をもたらすことを示している。この観点から、混合物中に正孔輸送材料F8−TFBの形で“TFB”を含めることが装置特性を改良することは驚くべきことであり、層分離の優位な影響を示している。
【化19】

【0063】
スピンコート vs インクジェット印刷
上記に示されるように、正孔輸送機能を有する電子発光材料を含む層中への追加の正孔輸送材料の混合は、寿命の増加、駆動電圧の低下、量子効率の増加のような得られる装置に優位な影響を与えることが発見された。
【0064】
これら優位な影響は、スピンコート装置(上記に例示される)及び印刷された装置の両者において観察された、例えば、下記表は正孔輸送の混合はスピンコート及びインクジェット印刷層の両者の装置の寿命を増加させることを示している。装置は、1600cd/cm2で駆動される。
【表4】

結果からわかるように、混合物を含む装置の寿命はスピンコート及びインクジェット印刷層の両者で増加している。インクジェット印刷装置の寿命はスピンコート層よりわずかに長い。
【0065】
下記の表は、パルスの寿命は直流の場合と同様に、スピンコート及びインクジェット印刷装置の両者において大きな寿命の増加が観察されることを示している。装置は、14000cd/m2のパルスで駆動される。
【表5】

【0066】
下記の表からわかるように、ポリマーP1のみに比較して本発明の混合系が最大量子効率の十分な増加並びに100cd/m2における量子効率の限界的な増加が示されている。
【表6】

【0067】
混合物中の正孔輸送層の分子量依存性
混合物中の電子発光材料への正孔輸送材料の追加(電子発光ポリマー内で完全に正孔輸送層を結合する場合に比べて)によって特性が大きく改良されることは、正孔輸送層が垂直に層分離することを示唆している。正孔輸送層がアノード側に移動するので、最終的な構造は正孔輸送及び電子発光層が別々にスピンコート/印刷されやときと類似のものとなる。この層分離のプロセスはプロセスの多くの要因及び分子量のような材料特性に依存する。
【0068】
分子量を変えてTFBポリマーの一定の範囲が製造された。TFBの混合は導電性の増加をもたらす。この導電性の増加はTFBの分子量に敏感である。
【0069】
TFBの分子量の変化の寿命への影響は下記の表及び図3に示されている。装置は、800cd/m2で駆動される。
【表7】

【0070】
最適な寿命は中心平均分子量Mp〜50kDa周辺で生じる。混合物中に高分子量のTFBが使用されると寿命は大幅に低下する。
【0071】
TFBの分子量は混合系の特性に重要である。Mp〜50kを有するTFBは混合物の最適な特性を与え、より低い又は高い分子量のTFBは特性が低下する。
【0072】
混合層の上部を洗浄することにより、アノードに数ナノメータ近い組成物が分光分析により観察される。この技術により、正孔輸送(例えば、TFB)が好ましくはアノード方向に移動しながら混合物中で垂直の層分離が生じることが確認された。正孔輸送の分子量はこのプロセスにおいて重要で、高い分子量サンプルは正孔輸送のアノード方向への移動は示さない。
【0073】
本発明は特定の例示の実施例によって記載されているが、特許請求の範囲で規定される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、本明細書で開示した特徴の多くの改良、変更及び/又は組み合わせが当業者にとって自明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来の電子発光装置を示す。
【図2】種々の電子発光系における100cd/cm2の発光に必要な電圧の比較データを示す。
【図3】第1の材料の分子量の変化が装置の寿命へ与える影響を示す。
【符号の説明】
【0075】
1 透明ガラス又はプラスチック基板
2 インジウム錫酸化物アノード
3 半導体領域
4 カソード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極を含む基板を提供する工程、
第1のタイプの電荷輸送体の輸送用の第1の材料並びに発光及び第1のタイプの電荷輸送体の輸送用の第2の材料を含む組成物を基板上に蒸着することによって半導体領域を形成する工程、及び
第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を前記半導体領域上に蒸着する工程、
を含む電子発光装置の形成方法。
【請求項2】
前記第1の電極がアノードであり、前記第2の電極がカソードであり、前記第1のタイプの電荷輸送体は正孔であり、前記第2のタイプの電荷輸送体は電子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の材料及び前記第2の材料の少なくとも1つがポリマーであり、より好ましくは共役ポリマーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の材料は、選択的に置換される一般式(I)の繰返し単位を含み、
【化1】

ここで、各Arは選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールから独立して選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各Arは選択的に置換されるフェニルである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択的に置換される一般式(I)の繰返し単位は選択的に置換される一般式(II)の繰返し単位である請求項5に記載の方法であって、
【化2】

ここで、各Rは水素又は置換基から選択される方法。
【請求項7】
前記一般式(II)の繰返し単位はその主鎖上の単一の窒素原子からなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の材料が選択的に置換される一般式(III)の繰返し単位を含むポリマーである請求項3ないし7のいずれかに記載の方法であって、
【化3】

ここで、各Ar1は選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールを独立して表す方法。
【請求項9】
各Ar1は選択的に置換されるフェニルである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記選択的に置換される一般式(III)の繰返し単位が選択的に置換される一般式(IV)の繰返し単位である請求項9に記載の方法であって、
【化4】

ここで、Rは請求項6で規定されるものである方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の材料の少なくとも1つが電子輸送材である請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の材料の少なくとも1つは、選択的に置換されるフルオレン、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン又はオリゴフェニレン、好ましくはフルオレン、より好ましくは9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイルから選択される繰返し単位を含むポリマーである請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記繰返し単位は選択的に置換される一般式(V)の繰返し単位から選択される請求項12に記載の方法であって、
【化5】

ここで、R1は選択的に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され、2つのR1は結合される方法。
【請求項14】
前記第2の材料は400〜500nmの波長範囲、最も好ましくは430〜500nmの波長範囲の電子発光を行うことができる請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料対前記第2の材料の比の範囲が5:95〜30:70、最も好ましくは10:90、最も好ましくは10:90〜20:80である請求項1ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は溶媒中の溶液から蒸着される請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒が置換されるベンゼンを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒がモノ又はポリアクリレートベンゼンを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の材料の中心平均分子量が15と150kDaの間、好ましくは25と100kDaの間、より好ましくは30と80kDaの間、及び最も好ましくは40と60kDaの間である請求項1ないし18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第1の材料と前記第2の材料が実質的に完全に層分離する請求項1ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれかの方法によって得られる電子発光装置。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515041(P2007−515041A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540594(P2006−540594)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004883
【国際公開番号】WO2005/053052
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】