説明

光学装置

【課題】迅速に広視野と狭視野が切替え自在で、例えば天文観測における流星、高速で飛行する航空機、海上を高速で航行する船舶などの敏速な動きを観察できるようにする。
【解決手段】対物レンズと結像レンズの間に変倍レンズを設け、その変倍レンズをレンズホルダに保持し、そのレンズホルダをアームに取りつけ、そのアームを駆動手段により旋回可能とし、かつ、駆動手段によりレンズホルダをガイドレール上で光軸に沿った方向に進退可能に移動させる。それに伴って、変倍レンズを移動させて、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関し、例えば望遠鏡などの光学式観察装置である光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な視野切替え機構を有する光学装置、例えば望遠鏡などの光学装置が、知られている。主に下記3方式(1)〜(3)の視野切替え機構を有する光学装置が公知である。
【0003】
(1)2眼方式のミラー切替えによる光路切替え機構を有する光学装置の光学系。
【0004】
(2)1眼方式の変倍レンズユニットの出し入れによる切替え機構を有する光学装置の光学系。
【0005】
(3)1眼方式の変倍レンズユニットの光軸方向への移動による切替え機構を有する光学装置の光学系。
【0006】
また、特許文献1の段落0036〜0038、図6および7には、テレ(望遠)状態での対物レンズ群およびカム部材、ワイド(広角)状態での対物レンズ群およびカム部材が示されている。回転枠の回転により回転部材と駆動部材を介してカム部材が回転すると、カム部に沿って第1の変倍レンズおよび第2の変倍レンズが光軸方向に移動する。
【0007】
また、特許文献2の第3頁右欄第23行〜第25行には、視野切替ユニットは視野切替ユニット移動装置によって駆動される旨記載されている。特許文献2の第3頁右欄第48行〜第4頁第1行、図2には、視野切替ユニットは視野切替ユニット支持部材に支持され、軸受け部を介して案内軸につながっており、軸受け部は案内軸に沿って軸方向に移動することができる旨記載されている。
【特許文献1】特許3372304号公報
【特許文献2】特開平10−115787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の切替え機構には下記問題点がある。
【0009】
前記(1)の視野切替え機構の場合、狭視野・広視野の2系統の光路(レンズ)が必要となり、装置は大型化・質量増となり、コストも高くなってしまう。
【0010】
前記(2)の視野切替え機構の場合、変倍レンズユニットを出し入れする為のスペースが必要となり、装置の大型化となってしまう。
【0011】
また、前記(3)の視野切替え機構の場合、移動のためにボールねじなどの送り機構や、カムによる送り機構が必要となり、切替え時間の短縮が難しくなってしまう。
【0012】
また、特許文献1に示すようなカム送り機構を採用すると、迅速に切替えを行うことができない。
【0013】
また、特許文献2には、視野切替ユニット移動装置の構造が具体的に記載されていない。
【0014】
そこで、本発明は、従来のボールねじ機構やカムによる送り機構を採用せず、迅速に広視野と狭視野が切替え自在で、例えば天文観測における流星、高速で飛行する航空機、海上を高速で航行する船舶などの敏速な動きを観察できる光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0016】
(1)対物レンズと結像レンズの間に変倍レンズを設け、その変倍レンズをレンズホルダに保持し、そのレンズホルダを光軸に沿った方向に進退可能に移動させ、それに伴って変倍レンズを移動させ、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行うことを特徴とする光学装置。
【0017】
(2)対物レンズと結像レンズの間に変倍レンズを設け、その変倍レンズをレンズホルダに保持し、そのレンズホルダをアームに取りつけ、そのアームを駆動手段により旋回可能とし、かつ、駆動手段によりガイドレール上で光軸に沿った方向にレンズホルダを進退可能に移動させ、それに伴って変倍レンズを移動させ、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行うことを特徴とする光学装置。
【0018】
(3)前述の光学装置において、アームは、基部と、その基部に固定された第1円筒部と、その第1円筒部にテレスコープ式に組み合わされる第2円筒部と、それらの第1および第2円筒部の軸心方向に内装されている圧縮ばねを有し、変倍レンズとレンズホルダを有する変倍レンズユニットが両ストッパ間を移動するとき、圧縮ばねの作用で、第1および第2円筒部が伸縮することを特徴とする光学装置。
【0019】
(4)前述の光学装置において、変倍レンズユニットがガイドレールの両端に配置されたストッパの間で移動可能となっていて、変倍レンズユニットが各ストッパの位置に弾性力で保持されることを特徴とする光学装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の1つの実施形態においては、光学式観察装置(例えば望遠鏡)が、視野を切替える視野切替え機構を有する。それは、好ましくは、短い切替え時間で視野を切替えることのできる視野切替え機構である。
【0021】
また、好ましくは、変倍レンズユニットがガイドレールの両端に配置されたストッパの間で移動可能となっていて、変倍レンズユニットが各ストッパの位置に弾性力で保持されるようにして、切替前後の状態を保持するために特別な電力を必要としない構造とする。
【0022】
また、ガイドレール上に配置された、変倍レンズを保持するレンズホルダ(セル)がアクチュエータで駆動され旋回するアームにより移動させられる機構を有する切り替え機構とする。
【0023】
本発明によれば、従来からのボールねじ機構やカムによる送り機構を採用せず、迅速に広視野と狭視野が切替え自在である。例えば天文観測における流星、高速で飛行する航空機、海上を高速で航行する船舶など物体の敏速な動きを観察することができる。
【実施例】
【0024】
本発明は、装置の小型・軽量化を考慮して、1眼方式の変倍レンズユニットの光軸方向への移動による切替え機構を有する光学装置を改良したものである。
【0025】
図1と図2は、本発明の1つの実施例による光学装置のレンズ系とその関連部材を示す。
【0026】
図1〜2において、対物レンズ1と結像レンズ2の間に変倍レンズ3aを設ける。変倍レンズ3aは、従来公知の構造を有するレンズホルダ15に保持されて、変倍レンズユニットを構成している。変倍レンズユニット3のレンズホルダ15はアーム12に取りつけられている。そのアーム12は駆動手段4により回転軸11を中心として旋回可能である。しかも、その駆動手段4によりガイドレール6上で光軸に沿った方向にレンズホルダ15を進退可能に移動させる。変倍レンズ3aの移動により、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行う。
【0027】
変倍レンズ3aの送り案内はリニア案内式のガイドレール6によって実行する。駆動手段4としては、好ましくはアクチュエータ4、例えばモータまたはロータリーソレノイドを使用する。
【0028】
アームがアーム5として構成されており、アクチュエータ4(駆動手段)の回転力をアーム5により変倍レンズユニット3へ伝え、変倍レンズ3aを光軸方向に移動させる。
【0029】
変倍レンズ3の広視野状態と狭視野状態の位置決めは、ガイドレール6の両端に設けられたストッパ7によって行う。
【0030】
変倍レンズユニット3は、これらのストッパ7の間でリニア移動可能となっている。図1は狭視野状態を示し、変倍レンズユニット3が左端のストッパ7に当接している。図2は広視野状態を示し、変倍レンズユニット3が右端のストッパ7に当接している。
【0031】
図3に示すように、アームを構成するアーム5は、基部5aと、その基部5aにネジ5bで固定された第1円筒部5cと、その第1円筒部5cにテレスコープ式に組み合わされる第2円筒部5dと、それらの第1および第2円筒部5c,5dの軸心方向に内装されている圧縮ばね8を有する。変倍レンズユニット3が両ストッパ7間を移動するとき、圧縮ばね8の作用で、第1および第2円筒部5c,5dが伸縮する。
【0032】
基部5aは、リニア方向の移動軸12を受容するための穴5eを有し、第2円筒部5dは、回転軸11を受容するための穴5fを有する。回転運動から直線運動への変換時に、アーム5の回転軸11と移動軸12の軸間距離の変化が調整される。アーム5の回転軸11は両ストッパ7のほぼ中間位置にあり、両ストッパ7のいずれに対しても変倍レンズユニット3を突き当てた後に圧縮ばね8の反力により各ストッパ7に変倍レンズユニット3を押し当てられた状態に保持する。それゆえ、変倍レンズ3の位置を保持することができる。そのため、アクチュエータ4には保持のために通電する必要は無い。電力・発熱を抑制することができる。
【0033】
また、本発明は、上記実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1つの実施例による光学装置、とくに狭視野を観察するときの光学装置の視野切替え機構を示す斜視図。
【図2】図1に示す光学装置において、広視野を観察するときの視野切替え機構を示す斜視図。
【図3】図1〜2に示すアームの好適例であるアームの詳細な構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1 対物レンズ
2 結像レンズ
3 変倍レンズ
4 駆動手段(アクチュエータ)
5 アーム
6 ガイドレール
7 ストッパ
8 圧縮ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと結像レンズの間に変倍レンズを設け、その変倍レンズをレンズホルダに保持し、そのレンズホルダを光軸に沿った方向に進退可能に移動させ、それに伴って変倍レンズを移動させ、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行うことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
対物レンズと結像レンズの間に変倍レンズを設け、その変倍レンズをレンズホルダに保持し、そのレンズホルダをアームに取りつけ、そのアームを駆動手段により旋回可能とし、かつ、駆動手段によりガイドレール上で光軸に沿った方向にレンズホルダを進退可能に移動させ、それに伴って変倍レンズを移動させ、狭い視野から広い視野に変化させる視野切替えを行うことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置において、アームがアームとして構成されており、基部と、その基部に固定された第1円筒部と、その第1円筒部にテレスコープ式に組み合わされる第2円筒部と、それらの第1および第2円筒部の軸心方向に内装されている圧縮ばねを有し、変倍レンズとレンズホルダを有する変倍レンズユニットが両ストッパ間を移動するとき、圧縮ばねの作用で、第1および第2円筒部が伸縮することを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置において、変倍レンズユニットがガイドレールの両端に配置されたストッパの間で移動可能となっていて、変倍レンズユニットが各ストッパの位置に弾性力で保持されることを特徴とする光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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