説明

光学走査装置

【課題】同期信号をとらない光源の光束が同期検知用の受光素子に到達しないように構成することで、同期信号の誤検知を防止できる、より信頼性の高い光学走査装置を提供する。
【解決手段】副走査方向に並列配置され、回転多面鏡21の同一反射面22に副走査方向に対して異なる角度で入射するようにレーザ光を出射する光源装置35K,35Mと、回転多面鏡21により偏向されたBD光3’Mが集光レンズ39を介して集光される受光センサ34と、を備え、感光体にレーザ光が走査される際に、受光センサ34により受光された光による信号に基づいて、光源装置35K,35Mの書き出し位置を制御する光学走査装置において、回転多面鏡21により偏向された非BD光3’Kが受光センサ34に入射することを遮る遮光部材36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザビームプリンタなどの画像形成装置に用いられる光学走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体としての感光ドラム上において主走査方向の走査光束の書き出し位置を決めるために、所謂同期検知光学系(BD光学系)を採用した光学走査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の光学走査装置では、複数設けられた光源のうち1つの光源より出射された光束を偏向器で偏向走査し、偏向走査された光束を、結像レンズを介して同期検知用の受光素子に導くように構成されている。そして、他の光源(BD光学系を採用しない光源)については、前記1つの光源(BD光学系を採用する光源)との相対的な時間差分を遅延させて駆動している。このようにBD光学系を省略することで、装置全体を簡易に構成することができる。
【0004】
また、特許文献1の光学走査装置では、複数の光源が、副走査方向に並列配置された2つの光源を含み、副走査方向に並列配置された2つの光源から出射された光束は、それぞれ偏向器の同一反射面に斜入射するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−205640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような斜入射系の光学走査装置においては、偏向器で偏向されたレーザ光を偏向器から同期検知用受光素子に到達させるまでの間に、複数の光源手段からの複数のレーザ光を分離する方法が問題となる。
【0006】
つまり、同期信号をとる光源(BD光学系を採用する光源)のレーザ光と、同期信号をとらない光源(BD光学系を採用しない光源)のレーザ光との副走査方向の分離距離を十分確保することが難しい。
【0007】
このため、同期信号をとらない光源手段のレーザ光やそのレーザ光が光学箱の壁や光学部品に反射することによって発生した散乱光が、同期検知用受光素子に入射し同期検知に誤検知を発生させることが懸念される。
【0008】
同期検知の誤検知が発生すると、たとえば画像形成装置の出力画像において書き出し位置が正規の位置からずれて印字されたり、偏向器の回転制御が不能となる可能性がある。
【0009】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、同期信号をとらない光源の光束が同期検知用の受光素子に到達しないように構成することで、同期信号の誤検知を防止できる、より信頼性の高い光学走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
光束を偏向する反射面を有する偏向器と、
副走査方向に並列配置され、前記偏向器に向けて第1光束及び第2光束をそれぞれ出射する第1光源及び第2光源であって、前記第1光束及び前記第2光束が、前記偏向器の同
一反射面に、副走査方向に対して異なる角度で入射するように設けられた第1光源及び第2光源と、
前記偏向器により偏向された前記第1光束が集光レンズを介して集光される受光センサと、
前記第1光源及び前記第2光源にそれぞれ対応する第1像担持体及び第2像担持体に前記第1光束及び前記第2光束が走査される際に、前記受光センサにより受光された光による信号に基づいて、前記第1光源及び前記第2光源の書き出し位置を制御する制御手段と、
を備えた光学走査装置において、
前記偏向器により偏向された前記第2光束が前記受光センサに入射することを遮る遮光部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同期信号の誤検知を防止できる、より信頼性の高い光学走査装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明は、光学走査装置の光源に半導体レーザを用いたレーザビームプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に関し、特にその同期信号の誤検知防止に関するものである。
【実施例1】
【0014】
以下、実施例1について説明する。
【0015】
(画像形成装置の説明)
図2は、本実施例のカラー画像形成装置15を示す概略断面図である。
【0016】
同図において、符号16a,16bはそれぞれ、後述する構成よりなる第1,第2の光学走査装置であって、各々おおよそ同一の構成を有する光学走査装置である。
【0017】
本実施例においては、画像情報に基づいて各々光変調された各レーザ光3C,3Y,3M,3Kが光学走査装置16a,16bから出射され、各々対応する像担持体としての感光体1C,1Y,1M,1K面上を照射して潜像が形成される。ここで、感光体1Mは第1像担持体を構成し、感光体1Kは第2像担持体を構成している。また、レーザ光3Mは第1光束を構成し、レーザ光3Kは第2光束を構成している。
【0018】
この潜像は1次帯電器2C,2Y,2M,2Kによって各々一様に帯電している感光体1C,1Y,1M,1K面上に形成されており、現像器4C,4Y,4M,4Kによって各々、シアン,イエロー,マゼンタ,ブラックの現像剤像として可視像化される。そして、可視像化された現像剤像が、転写ローラ5C,5Y,5M,5Kによって、転写ベルト7上を搬送されてくる記録材8に順に転写されることによって、カラー画像が形成される。
【0019】
記録材8は給送トレイ9上に積載されており、給送ローラ10によって1枚ずつ順に給送され、レジストローラ11によって画像の書き出しタイミングに同期をとって転写ベルト7上に送り出される。
【0020】
転写ベルト7上を精度よく搬送されている間に感光体1C,1Y,1M,1K面上に形成されたシアンの画像,イエローの画像,マゼンダの画像,ブラックの画像が順に記録材8上に転写されてカラー画像が形成される。駆動ローラ12は転写ベルト7の送りを精度よく行っており、回転ムラの小さな駆動モータ(図示しない)と接続している。
【0021】
記録材8上に形成されたカラー画像は定着器13によって熱定着されたのち、排出ローラ14などによって搬送されて装置外に出力される。
【0022】
(光学走査装置の説明)
図1は、本実施例の光学走査装置16b(16aも同一構成)の内部構成を説明するための概略斜視図である。図3は、本実施例の光学走査装置において、光源から出射された光束が偏向器としての回転多面鏡21に到達するまでの光路(入射光学系)について説明するための概略断面図である。
【0023】
以下の説明において、回転多面鏡21によって光束が偏向走査される方向を主走査方向といい、主走査方向と実質的に直交する方向であって、回転多面鏡21の回転軸と実質的に平行な方向を副走査方向という。
【0024】
半導体レーザ30K,30M(図3参照)から出射されたレーザ光3(3K,3M)は、コリメータレンズ31K,31M(図3,5参照)、シリンドリカルレンズ32を透過した後に回転多面鏡21の同一反射面22に集光される。ここで、半導体レーザ30K,30Mは、副走査方向(図3において上下方向)に並列配置されている。
【0025】
回転多面鏡21は、スキャナモータ23によって高速に回転駆動され、入射したレーザ光3K,3Mをそれぞれ同一方向に偏向する。
【0026】
偏向されたレーザ光3Kは第1fθレンズ20を通過し、反射ミラー25で反射された後、第2fθレンズ24Kを通過し、反射ミラー26により感光体1K(図2参照)上に集光、走査されることで静電潜像が形成される。また、偏向されたレーザ光3Mは、第1fθレンズ20を通過し、第2fθレンズ24Mを通過した後、反射ミラー27により反射され、感光体1M(図2参照)上に集光、走査されることで静電潜像が形成される。
【0027】
上述した回転多面鏡21、スキャナモータ23、反射ミラー25,26,27、fθレンズ20,24などの光学部品は樹脂製の光学箱29に内包されている。
【0028】
図3に示すように、回転多面鏡21へのレーザ光の入射光学系は、副走査方向に配置された光源装置35K,35Mが用いられている。ここで、光源装置35Mは第1光源に相当するものであり、光源装置35Kは第2光源に相当するものである。
【0029】
光源装置35K,35Mは、半導体レーザ30K,30Mから出射されたレーザ光3K,3Mをコリメータレンズ31K,31Mによって略平行光に変換し、回転多面鏡21の同一反射面22に、副走査方向に対して異なる角度で入射させている。すなわち、光源装置35K,35Mは、図3に示すように、副走査方向において、回転多面鏡21の同一反射面22に直交する方向Oに対して角度±θで同一反射面22に入射するように、レーザ光3K,3Mを出射する。
【0030】
光源装置35K,35Mにより、同一反射面22に向けて、副走査方向に対して異なる角度でレーザ光が出射されることにより、次のように構成することが可能になる。すなわち、光源装置35K,35Mにより、回転多面鏡21の同一反射面22の近接した位置に
レーザ光を照射し、さらには偏向されたレーザ光を各々対応の感光体に導光するべく分離するように構成することが可能になる。
【0031】
また、この斜入射角θが大きくなることにより、反射面の位置誤差(面の出入り)量が、感光体上での結像位置ずれ量に繋がる度合いを大きくしてしまうことが懸念される。このため、本実施例では、θの角度を3度以下に設定している。
【0032】
なお、本実施例の光学箱29の上部開口は図2に示すように、カバー部材19によって閉塞される。
【0033】
(同期検知光学系の説明)
次に、図4,5を用いて同期検知光学系(BD(beam detector)光学系)について説明する。
【0034】
図4は、本実施例の同期検知光学系の構成を説明するための概略斜視図である。図5は、本実施例の同期検知光学系を説明するために、光学走査装置を副走査方向に切断した状態を示す概略斜視図である。
【0035】
回転多面鏡21によって反射されたレーザ光3’(3’K,3’M)のうちレーザ光3’Mは、回転多面鏡21と、受光センサ34との間に配置されている集光レンズ39を介して受光センサ34に導かれる。ここで、受光センサ34は同期検知用の受光素子であり、集光レンズ(以下、BDレンズ)39は同期検知用の結像部材である。また、同期検知のために、回転多面鏡21によって反射され、受光センサ34に導光されるレーザ光を、以下、BD光3’Mという。
【0036】
そして、光源装置35K,35Mによりレーザ光3K,3Mが感光体1K,1Mに走査される際、受光センサ34により受光された光による信号に基づいて、光学走査装置16bに設けられた制御手段により、光源装置35K,35Mの書き出し位置が制御される。このことにより、感光体上のレーザ光による画像の主走査方向の書き出し位置を常に一致させることができ、画像形成装置の出力画像における書き出し位置がずれることなく常に一致させることができる。
【0037】
ここで、本実施例の光学走査装置16bにおいて、同期検知光学系は光源装置35Mに対してのみ設けられている。他の光源装置35Kにおいては、光学走査装置16bの制御手段により、光源装置35Mとの相対的な時間差分を遅延させて駆動させる方法がとられている。
【0038】
このように、BD光3’Mは、感光体1K,1M上を主走査方向に走査される走査光束の書き出しタイミングを決定する同期検知光学系を形成している。
【0039】
(遮光部材について)
図4,5に示すように、同期検知光学系を備えない光源装置35Kから出射され、回転多面鏡21で反射されたレーザ光(以下、非BD光)3’Kは、BDレンズ39によって散乱光103Kを発生させることが懸念される。
【0040】
そこで、本実施例においては、回転多面鏡21と受光センサ34との間に散乱光103Kを遮断する遮光部材36を備えている。このような遮光部材36によって散乱光103Kを遮断することにより、散乱光103Kが受光センサ34まで到達することを防ぐことができる。
【0041】
以上説明したように、本実施例によれば、非BD光3’Kが同期検知用の受光センサ34に入射することによる同期信号の誤検知を防止することができ、より信頼性の高い光学走査装置及び画像形成装置を提供することができる。
【0042】
ここで、本実施例の遮光部材36において、遮断する対象としては、BDレンズ39によって発生した散乱光103Kに限定されるものではなく、光学箱29の内部に設けられた壁等によって発生した迷光であってもよい。また、遮光部材36は、BD光3’M以外の迷光が受光センサ34へ入射することを防止することができる位置に最適化して1つ以上配置されるものであればよい。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2について図6,7を用いて説明する。
【0044】
図6は、本実施例の同期検知光学系の構成を説明するための概略斜視図である。図7は、本実施例の同期検知光学系を説明するために、光学走査装置を副走査方向に切断した状態を示す概略斜視図である。なお、本実施例においては、実施例1に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
【0045】
本実施例において、同期検知光学系を備えない光源装置35Kの非BD光3’Kを遮断する遮光部材37は、回転多面鏡21とBDレンズ39との間に配置されている。ここで、遮光部材37は、回転多面鏡21とBDレンズ39との間のうち、BDレンズ39近傍に配置されることが、より好ましい。
【0046】
このように配設された遮光部材37により、非BD光3’KがBDレンズ39に入射することを防止することができる。したがって、BDレンズ39によって散乱光(図5に示す散乱光103Kに相当)を発生させる可能性を排除し、散乱光による同期検知の誤検知を防ぐことができる。
【0047】
ここで、上述したように、回転多面鏡21へのレーザ光の斜入射角度±θ(図3参照)が、およそ±3度以下に設定された場合、BD光3’Mと非BD光3’Kとの光線距離が近く、互いの光線を分離することが難しい場合がある。
【0048】
しかし、本実施例では、BD光3’Mと非BD光3’Kとの副走査方向の分離距離(離間距離)Lが十分確保できる場所として、BDレンズ39近傍に遮光部材37を設けているので、より確実に非BD光3’Kを遮光することができる。さらに、遮光部材37の配置精度や部品精度を緩くした場合や、環境変動等によりBD光3’Mの高さずれが発生した場合であっても、BD光3’Mが遮光部材37で遮られることを防ぐことができる。
【0049】
また、遮光部材37は、非BD光3’Mの光軸に対して傾きθ’を有している。これによって、非BD光3’Kが、遮光部材37に反射された後に、回転多面鏡21や結像レンズ(上述したfθレンズ(図1参照))等を介して画像領域内に到達することを防ぐことができる。
【0050】
このように、本実施例によれば、安価で、より信頼性の高い光学走査装置及び画像形成装置を提供することができる。
【0051】
ここで、遮光部材37は、光学箱29と一体で成形して設けられるものであるとよいが、これに限定されるものではない。この点について以下に説明する。
【0052】
図8,9は、遮光部材の変形例を示す概略斜視図である。
【0053】
すなわち、遮光部材37は、BDレンズ39と一体成形で設けられるものであってもよい(図8参照)。また、遮光部材として板金部材38を適用し、板金部材38をビスや接着などの任意の固定手段40によって光学箱29に固定するものであってもよい(図9参照)。なお、遮光部材37をBDレンズ39と一体で設ける場合は、遮光部材37が非BD光3’Kを透過しない部材で構成されるように、二色成形等によって形成するとよい。
【0054】
さらに、BDレンズ39の大きさが、BDレンズ39に非BD光が入射しないように必要十分に小さく設けられるものであるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の光学走査装置を示す概略斜視図。
【図2】実施例1の光学走査装置を用いたカラー画像形成装置を示す概略断面図。
【図3】実施例1の光学走査装置の入射光学系を示す概略断面図。
【図4】実施例1の光学走査装置の同期検知光学系を示す概略斜視図。
【図5】実施例1の同期検知光学系を説明するために、光学走査装置を副走査方向に切断した状態を示す概略斜視図。
【図6】実施例2の光学走査装置の同期検知光学系を示す概略斜視図。
【図7】実施例2の同期検知光学系を説明するために、光学走査装置を副走査方向に切断した状態を示す概略斜視図。
【図8】遮光部材の変形例を示す概略斜視図。
【図9】遮光部材の変形例を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0056】
1K,1M 感光体
3K,3M レーザ光
3’K,3’M 回転多面鏡によって反射されたレーザ光
21 回転多面鏡
22 同一反射面
34 受光センサ
35K,35M 光源装置
36 遮光部材
39 集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を偏向する反射面を有する偏向器と、
副走査方向に並列配置され、前記偏向器に向けて第1光束及び第2光束をそれぞれ出射する第1光源及び第2光源であって、前記第1光束及び前記第2光束が、前記偏向器の同一反射面に、副走査方向に対して異なる角度で入射するように設けられた第1光源及び第2光源と、
前記偏向器により偏向された前記第1光束が集光レンズを介して集光される受光センサと、
前記第1光源及び前記第2光源にそれぞれ対応する第1像担持体及び第2像担持体に前記第1光束及び前記第2光束が走査される際に、前記受光センサにより受光された光による信号に基づいて、前記第1光源及び前記第2光源の書き出し位置を制御する制御手段と、
を備えた光学走査装置において、
前記偏向器により偏向された前記第2光束が前記受光センサに入射することを遮る遮光部材が設けられていることを特徴とする光学走査装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、前記偏向器と前記集光レンズとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−271426(P2009−271426A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123497(P2008−123497)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】