説明

光学部品の洗浄方法及び洗浄装置

【課題】本発明は、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合して付着している光学部品を、部品に損傷を与えることなく、高効率、かつ、高度に汚れを除去するための洗浄装置及び洗浄方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の光学部品の洗浄装置は、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(1)と、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(2)と、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’により光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(3)とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の洗浄装置及び洗浄方法に関する。詳しくは、本発明は、光学部品に付着したピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合した汚れを除去するための洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの光学部品の製造において、研磨治具に光学部品を固定するためにバインダーとしてピッチ、ワックスなどが用いられ、研磨工程では研磨剤が用いられている。また、研磨後の光学部品表面は保護膜で被覆される場合もある。したがって、光学部品の表面には、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合して付着している。光学部品に蒸着膜を成膜する場合等には、光学部品の表面からこれらの汚れを高度に除去することが求められる。
【0003】
溶剤系洗浄剤は、ピッチ等の油性汚れに対して高い洗浄力を有する反面、研磨剤等の粒子汚れの除去性能は低い。したがって、光学部品は、通常、ピッチ等の油性汚れの除去を塩素系溶剤等の溶剤系洗浄剤で行った後に、研磨剤等の粒子汚れを弱アルカリ性の水系洗浄剤で除去して仕上げられる(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、耐水性の低い硝材からなる光学部品は、水系洗浄剤や水に浸漬させると潜傷、白焼け、青焼けといわれる損傷が発生する。また、水系洗浄剤や水の浸漬槽に超音波を印加すると、このような損傷に加えて洗傷が発生する。このような損傷は光学部品として致命的な欠陥となる。
【0005】
耐水性の低い硝材からなる光学部品については、溶剤系洗浄剤でピッチ等の油性汚れを除去した後に、表面に残存している研磨剤等の粒子汚れをクリーニングペーパーや布等にアルコール等の溶剤を染み込ませて、人手で拭き上げる方法がとられているが、作業に非常に時間がかかるため生産性が悪く、また、作業は熟練を要するものであった。
【0006】
そこで、光学部品を洗浄する方法として、非水系洗浄液又は準水系洗浄液に浸漬して洗浄する工程と、光学部品を回転しているブラシに当接して洗浄するブラシ洗浄工程と、光学部品を非水系洗浄液又は準水系洗浄液に浸漬して仕上げのリンス洗浄工程とを組み合わせる光学部品の洗浄方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、ブラシ洗浄工程で粒子の除去は行えるものの、ブラシによって光学部品に荷重がかかるために、荷重の調整が悪いと光学部品表面に洗傷が入る恐れがある。また、光学部品の形状が変わる度にブラシの調整が必要となり、非効率である。
【0007】
このため、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合して付着している光学部品の表面を、部品に損傷を与えることなく、効率よく、かつ、高度に除去する洗浄装置及び洗浄方法が求められていた。
【特許文献1】特開2002−273352号公報
【非特許文献1】日本産業洗浄協議会編、「はじめての洗浄技術」、2005年9月、p41(工業調査会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合して付着している光学部品を、部品に損傷を与えることなく、高効率、
かつ、高度に汚れを除去するための洗浄方法及び洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学部品の洗浄方法は、光学部品を、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(a)と、洗浄工程(a)により洗浄された光学部品を、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(b)と、洗浄工程(b)により洗浄された光学部品を、さらに界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’に少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(c)とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明の光学部品の洗浄方法は、洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)で使用された非水系洗浄剤の少なくとも一部を抜き出して蒸留し、蒸留で得られた留出液を洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)に再び使用することが好ましい。
【0011】
本発明の光学部品の洗浄方法は、洗浄工程(c)で使用された非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(b)の非水系洗浄剤として使用することが好ましい。
【0012】
本発明の光学部品の洗浄方法は、非水系洗浄剤A及び非水系洗浄剤A’が、炭素数9〜18の芳香族炭化水素からなる洗浄剤であり、非水系洗浄剤Bが、炭素数9〜18の芳香族炭化水素60〜99重量%と、界面活性剤1〜30重量%とを含み、非水系洗浄剤Bに含まれる界面活性剤が、アニオン性界面活性剤5〜83重量%と、非イオン性界面活性剤17〜95重量%とからなることが好ましい。
【0013】
本発明の光学部品の洗浄装置は、前記の光学部品の洗浄方法において使用する装置であって、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(1)と、洗浄槽(1)の後段に設けられ、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(2)と、洗浄槽(2)の後段に設けられ、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’により光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(3)とを有することを特徴としている。
【0014】
本発明の光学部品の洗浄装置は、(A)洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)から排出される排出液の少なくとも一部を蒸留する手段と、蒸留で得られた留出液を洗浄槽(1)及び/又は(3)に導入する手段とを有することが好ましい。また、(B)洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(2)に導入する手段を有することも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、潜傷などの損傷を与えることなく、光学部品に付着したピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れと研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れの複合した汚れを高効率、かつ、高度に除去することのできる、光学部品の洗浄装置及び洗浄方法を提供することができる。また、被洗浄物の汚れにより汚染された非水系洗浄剤を蒸留により浄化・回収し、再利用する手段を有する場合には、洗浄剤の使用量を削減し、より効率的な光学部品の洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明が対象とする被洗浄物である光学部品としては、本発明に係る非水系洗浄剤により洗浄可能な素材で構成される光学部品を特に制限なく用いることができるが、たとえば、ピッチやワックスなどをバインダーとして研磨されたものなど、ピッチ、ワックス、保護膜、接着剤などの油性汚れと、研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れが複合して付着した光学部品が挙げられる。このうち特に、ピッチあるいはワックスをバインダーとして用いて研磨した、ガラス製あるいは硬質プラスチック製の光学レンズ、プリズムなど、光学部品表面に油性汚れと無機微粒子汚れとが付着した光学部品が、効果的に洗浄を行える被洗浄物として挙げられる。
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
洗浄方法
本発明の光学部品の洗浄方法は、光学部品を、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(a)と、洗浄工程(a)により洗浄された光学部品を、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(b)と、洗浄工程(b)により洗浄された光学部品を、さらに界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’に少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(c)とを有する。
【0018】
洗浄工程(a)で用いる非水系洗浄剤Aは、界面活性剤を実質的に含まない炭化水素系の洗浄剤であり、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れを溶解し得る炭化水素類を主成分とし、実質的に界面活性剤を含まない洗浄剤が用いられる。このような非水系洗浄剤Aとしては、好ましくは炭素数9〜18の芳香族炭化水素、より好ましくは炭素数9〜12の芳香族炭化水素であり、50重量%以上、より好ましくは60重量%以上含有する洗浄剤が挙げられる。非水系洗浄剤Aを構成する炭化水素類は、揮発性が高すぎると洗浄の際の危険性が増大するため、沸点範囲が150〜350℃、特には160〜300℃であることが好ましい。
【0019】
また、非水系洗浄剤Aは水分が0.1重量%以下、好ましくは0.03重量%以下であることが好ましい。水分が0.1重量%を超えると、油性汚れの溶解力が低下する可能性があるため好ましくない。
【0020】
本発明に係る非水系洗浄剤A、及び後述する非水系洗浄剤B並びにA’は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば脂肪族炭化水素などの、上述した以外の成分を含有してもよい。
【0021】
洗浄工程(a)は、被洗浄物である光学部品を最初に洗浄する工程であって、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aが充填された洗浄槽(1)で光学部品を洗浄する。非水系洗浄剤Aが充填された洗浄槽(1)は複数設置して構わない。洗浄工程(a)においては、被洗浄物である光学部品に付着している主に、ピッチ、ワックス、保護膜などの油性汚れの除去を行う。洗浄槽(1)内において、光学部品上の油性汚れの少なくとも一部は、非水系洗浄剤Aに移行する。
【0022】
洗浄工程(a)に続く洗浄工程(b)は、非水系洗浄剤Bが充填された洗浄槽(2)を有し、光学部品上に付着した粒子汚れ及び洗浄槽(1)での洗浄で残存した油性汚れを効果的に除去する。
【0023】
非水系洗浄剤Bは、界面活性剤と炭化水素類とを含有する。好ましくは、非水系洗浄剤Bは、界面活性剤含有量が1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%の非水系溶剤であることが望ましい。界面活性剤が1重量%未満であると洗浄性が低下し無機微粒子の除去が行えなくなるおそれがあり、30重量%を超えても洗浄性が格段に向上することはない。
【0024】
非水系洗浄剤Bを構成する界面活性剤は、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを含むことが好ましく、より好ましくは界面活性剤中のアニオン性界面活性剤が5〜
83重量%、非イオン性界面活性剤が17〜95重量%、さらに好ましくは界面活性剤中のアニオン性界面活性剤が17〜75重量%、非イオン性界面活性剤が25〜83重量%であることが望ましい。非水系洗浄剤Bが、このような量比でアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを含む界面活性剤を含有することにより、光学部品上に残存する研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの複数種の粒子が混在した粒子汚れを効率的に除去することができる。
【0025】
非水系洗浄剤Bを構成する炭化水素類としては、非水系洗浄剤Aと同様の炭化水素類が挙げられる。すなわち、非水系洗浄剤B中の炭化水素類が、好ましくは炭素数9〜18の芳香族炭化水素、より好ましくは炭素数9〜12の芳香族炭化水素であり、50重量%以上、より好ましくは60重量%以上含有することが望ましく、沸点範囲が150〜350℃、特には160〜300℃であることが望ましい。本発明では、非水系洗浄剤Bを構成する炭化水素類が、洗浄槽(1)における非水系洗浄剤Aと同組成であることが特に好ましい。
【0026】
このような組成を有する非水系洗浄剤Bを用いることにより、光学部品上に付着した粒子汚れ及び洗浄槽(1)での洗浄で残存した油性汚れを効果的に除去することができる。
非水系洗浄剤Bは、あらかじめ調製して洗浄槽(2)に導入されてもよく、また、各成分をそれぞれ導入して、洗浄槽(2)中で所望組成の非水系洗浄剤Bとなるよう調製してもよい。非水系洗浄剤Bを洗浄槽(2)中で調製する場合、あるいは別途非水系洗浄剤Bを調製する場合においては、たとえば、非水系洗浄剤B中における所望濃度の2〜20倍の濃度である界面活性剤の濃縮液を、界面活性剤を含まない炭化水素類に添加する形で供給することができる。
【0027】
また、非水系洗浄剤Bは水分が0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、かつ、10.0重量%以下、好ましくは5.0重量%以下であることが望ましい。水分が0.05重量%より少ないと無機微粒子の除去効率が悪くなり、10.0重量%を超えると、潜傷、白焼け、青焼けなどの問題が生じる可能性がある。
【0028】
洗浄槽(2)での洗浄を終えた光学部品は、通常、洗浄前に付着していた油性汚れ及び粒子汚れがほぼ除去された状態となる。しかしながら、洗浄槽(2)での洗浄を終えたままの光学部品の表面には、非水系洗浄剤Bが付着しているため、そのまま乾燥させると、洗浄後の光学部品表面に非水系洗浄剤Bに含有されている界面活性剤が残存する場合がある。このため本発明では、洗浄工程(b)に続き、洗浄工程(c)において洗浄する。洗浄工程(c)は、非水系洗浄剤A’が充填された洗浄槽(3)を有し、洗浄槽(2)にて洗浄した光学部品をさらに洗浄する工程であって、主に、洗浄槽(2)における洗浄により光学部品上に付着した界面活性剤成分を充分に除去する。
【0029】
洗浄槽(3)では、洗浄槽(1)及び(2)での洗浄を終えた光学部品を、さらに非水系洗浄剤A’により洗浄する。非水系洗浄剤A’としては、上述した洗浄工程(a)で用いた非水系洗浄剤Aと同様のものを用いることができる。洗浄槽(3)で用いる非水系洗浄剤A’は、洗浄槽(1)で用いる非水系洗浄剤Aと同じ組成であっても、異なる組成であってもよいが、洗浄槽(1)で用いる非水系洗浄剤Aと同じ組成であることが好ましい。
【0030】
また、非水系洗浄剤A’は水分が0.1重量%以下、好ましくは0.03重量%以下であることが好ましい。水分が0.1重量%を超えると、シミなどの問題を生じる可能性がある。
【0031】
洗浄工程(a)、(b)及び(c)では、それぞれ、各工程で用いる洗浄剤に、被洗浄
物である光学部品を1回以上浸漬する。一つの洗浄工程において、浸漬を2回以上行う場合には、同一の非水系洗浄剤に複数回浸漬してもよいが、洗浄剤組成が同じであって、汚れがないか、又は汚れの程度が順次低くなる非水系洗浄剤に、順次浸漬するのが望ましい。
【0032】
各洗浄工程において、浸漬による洗浄時には、洗浄効果を高める目的で、超音波を照射することが好ましく、また、揺動を加えることも好ましい。
このような本発明の光学部品の洗浄方法は、好適には、後述する本発明の光学部品の洗浄装置を用いて行うことができる。
【0033】
また、近年の環境への影響を考えると、環境負荷の低減という観点から、洗浄剤をリサイクルして再利用することが望まれる。
洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)に使用される非水系洗浄剤(汚染された非水系洗浄剤AあるいはA’)の少なくとも一部を抜き出して、洗浄槽外に設けた蒸留手段に導入して蒸留し、汚染がないかあるいは少ない留出液を得て、これを洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)に再導入して用いることができる。また、この留出液は、洗浄槽(2)で用いる非水系洗浄剤Bの原料としても用いることができる。このように汚染された非水系洗浄剤A及び/又はA’を蒸留によりリサイクル使用すると、用いる非水系洗浄剤の総量を減少させることができるため好適である。
【0034】
洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)からの抜き出し液の少なくとも一部を蒸留する手段は、単独であっても複数であってもよいが、洗浄槽(1)で用いる非水系洗浄剤Aと、洗浄槽(3)で用いる非水系洗浄剤A’の組成が同様である場合には、単独で双方を処理することができるため好ましい。
【0035】
非水系洗浄剤A及び/又はA’の蒸留手段では、汚れ成分を含んだ非水系洗浄剤を
蒸留によりほぼ炭化水素類のみとして得られる留出液と、汚れ成分と炭化水素分とを含む残留成分とに分離する。留出液は、炭化水素類の純度が99%以上となることが好ましい。この純度は、導電率測定、吸光度測定、屈折率測定、比重測定、粘度測定、不揮発分定量、ガスクロマトグラム分析等の一般的な方法で行うことができる。得られた留出液は、回収して非水系洗浄剤A又はA’として、あるいは非水系洗浄剤Bの原料として用いることができる。蒸留手段における残留成分には、汚れ成分が濃縮されるため、系外へ搬出し、適宜産業廃棄物等として処理する。
【0036】
本発明の光学部品の洗浄方法では、洗浄槽(2)において非水系洗浄剤Bが用いられ、その後段に設けられた洗浄槽(3)において非水系洗浄剤A’が用いられるが、洗浄時における非水系洗浄剤A’の汚染程度は、非水系洗浄剤Bよりも低く保たれる。本発明で用いる非水系洗浄剤Bは界面活性剤を含むが、非水系洗浄剤A’は被洗浄物に同伴された微量の界面活性剤が混入する場合などを除き、界面活性剤を実質的に含まない。そして通常、本発明で用いる非水系洗浄剤Bは、界面活性剤以外の組成を非水系洗浄剤A及び/又はA’と同様とすることができる。このため、非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、非水系洗浄剤Bの原料として用いることが可能であり、本発明の洗浄装置は、洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄槽(2)に導入する機構を有する構成とすることができる。非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を洗浄槽(2)に導入する機構は、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよいが、洗浄槽(3)からオーバーフローにより抜き出した非水系洗浄剤A’を、界面活性剤などの追加成分とともに非水系洗浄剤Bの原料として用い、混合槽などで非水系洗浄剤Bを調製して洗浄槽(2)に導入する手段が挙げられる。
【0037】
また、洗浄槽(3)内の非水系洗浄剤A’は、洗浄槽(1)内の非水系洗浄剤Aよりも
汚染程度が低いため、非水系洗浄剤Aと非水系洗浄剤A’の組成が同等である場合には、洗浄槽(3)内の非水系洗浄剤A’の一部をオーバーフローなどにより抜き出し、非水系洗浄剤Aの一部として洗浄槽(1)に導入して用いることもできる。
【0038】
本発明では、各洗浄工程において、被洗浄物である光学部品を非水系洗浄剤に浸漬するため、光学部品上の汚れは、浸漬した非水系洗浄剤側に移行する。このため、各工程で用いる非水系洗浄剤の汚れの程度を一定範囲以内に制御することが好ましい。
【0039】
各工程における非水系洗浄剤の汚染程度の管理は、どのような方法で行ってもよく、たとえば、導電率測定、吸光度測定、屈折率測定、比重測定、粘度測定、不揮発分定量、ガスクロマトグラム分析等の手段を適宜採用することができる。
【0040】
非水系洗浄剤の汚染程度は、汚染された非水系洗浄剤の一部を抜き出して排出し、汚染されていないか又は汚染の程度の少ない非水系洗浄剤を添加することで制御してもよく、汚染された非水系洗浄剤を濾過、吸着などの浄化処理手段で処理しながら用いることで制御してもよく、これらを組み合わせて制御してもよい。
【0041】
各洗浄槽が複数の槽から構成されている場合には、その後段の槽から前段の槽へ、非水系洗浄剤の一部を導入する手段を有することが好ましく、後段の槽から前段の槽へ、非水系洗浄剤の一部をオーバーフローさせて導入する機構を有することがより好ましい。
【0042】
たとえば、洗浄槽(1)が2つ以上の洗浄槽からなる場合、洗浄槽(1)内の前段にある洗浄槽から、汚染された非水系洗浄剤Aの一部を排出液として排出するとともに、洗浄槽(1)内の後段にある洗浄槽内の非水系洗浄剤Aの一部をオーバーフローさせて、前段にある洗浄槽内に導入し、後段の洗浄槽内には汚染のない新たな非水系洗浄剤Aを追加導入する態様が好ましく挙げられる。このような態様が好ましいことは、洗浄槽(2)あるいは洗浄槽(3)が2つ以上の洗浄槽を有する場合にも同様である。
【0043】
本発明の光学部品の洗浄方法では、洗浄工程(a)において、光学部品上に付着した汚れのうち主に油性の汚れを除去することができ、洗浄工程(b)において、残存する粒子状の汚れと洗浄工程(a)で除去しきれなかった油性の汚れとを除去することができ、さらに洗浄工程(c)において、洗浄工程(b)で付着した界面活性剤を光学部品表面から除去することができる。
【0044】
このような洗浄方法では、油性汚れと粒子状汚れとの複合汚れを有するような光学部品から、水系洗浄剤に浸漬することなく複合汚れを高度に除去でき、しかも界面活性剤の残存などの問題もないので、潜傷、白焼け、青焼けなどの問題を生じることなく、高度な光学特性を求められる用途の光学部品をも好適に洗浄することができる。
【0045】
洗浄装置
本発明の光学部品の洗浄装置は、非水系洗浄剤Aにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(1)と、非水系洗浄剤Bにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(2)と、非水系洗浄剤A’により光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(3)とを有し、洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部が、洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(2)に導入される機構を有する。
【0046】
本発明に係る洗浄槽(1)、(2)、(3)は、それぞれ、被洗浄物である光学部品を非水系洗浄剤A、非水系洗浄剤Bあるいは非水系洗浄剤A’により洗浄する洗浄槽である。これらの各洗浄槽は、光学部品を各非水系洗浄剤で洗浄する手段としての機能を有していればよく、光学部品を非水系洗浄剤に浸漬して洗浄するもの、光学部品に非水系洗浄剤を吹き付けて洗浄するもの等のいずれの形態であってもよいが、光学部品を非水系洗浄剤に浸漬して洗浄する手段であることが好ましい。
【0047】
本発明の洗浄装置では、洗浄槽(2)は洗浄槽(1)の後段に、洗浄槽(3)は洗浄槽(2)の後段にそれぞれ設けられる。洗浄槽(1)、(2)、(3)はそれぞれ、1槽から構成されていてもよく、複数の槽から構成されていてもよい。洗浄槽(1)、(2)あるいは(3)が複数の槽を有する場合、前段の槽で洗浄された光学部品は、順次後段の槽で洗浄される。
【0048】
各槽における洗浄で、被洗浄物を汚染していた汚れは、槽内の非水系洗浄剤に移行していくが、非水系洗浄剤の汚染の度合は、前段で高く後段で低いものとなる。
本発明の洗浄装置は、洗浄槽(1)、(2)、(3)のそれぞれにおいて、洗浄槽内の非水系洗浄剤の汚染程度を所定のレベル以内に管理することが望ましく、汚染程度を監視する手段を有することが好ましい。汚染程度を監視する手段としては、前述した公知の方法を制限なく用いることができ、たとえば、導電率測定、吸光度測定、屈折率測定、比重測定、粘度測定、不揮発分定量、ガスクロマトグラム分析等の手段が挙げられる。
【0049】
非水系洗浄剤の汚染程度は、汚染された非水系洗浄剤の一部を抜き出して排出し、汚染されていないか又は汚染の程度の少ない非水系洗浄剤を添加することで制御してもよく、汚染された非水系洗浄剤を濾過、吸着などの浄化処理手段で処理しながら用いることで制御してもよく、これらを組み合わせて制御してもよい。
【0050】
各洗浄槽が複数の槽から構成されている場合には、その後段の槽から前段の槽へ、非水系洗浄剤の一部を導入する手段を有することが好ましく、後段の槽から前段の槽へ、非水系洗浄剤の一部をオーバーフローさせて導入する機構を有することがより好ましい。
【0051】
たとえば、洗浄槽(1)が2つ以上の洗浄槽からなる場合、洗浄槽(1)内の前段にある洗浄槽から、汚染された非水系洗浄剤Aの一部を排出液として排出するとともに、洗浄槽(1)内の後段にある洗浄槽内の非水系洗浄剤Aの一部をオーバーフローさせて、前段にある洗浄槽内に導入し、後段の洗浄槽内には汚染のない新たな非水系洗浄剤Aを追加導入する態様が好ましく挙げられる。このような態様が好ましいことは、洗浄槽(2)あるいは洗浄槽(3)が2つ以上の洗浄槽を有する場合にも同様である。
【0052】
ここで、洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)から排出された排出液(汚染された非水系洗浄剤AあるいはA’)は、洗浄槽外に設けた蒸留手段に導入して蒸留し、汚染がないかあるいは少ない留出液を得て、これを洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)に再導入して用いることができる。また、この留出液は、洗浄槽(2)で用いる非水系洗浄剤Bの原料としても用いることができる。このように汚染された非水系洗浄剤A及び/又はA’を蒸留によりリサイクル使用すると、用いる非水系洗浄剤の総量を減少させることができるため好適である。このため本発明の洗浄装置は、(A)洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)から排出される排出液の少なくとも一部を蒸留する手段と、蒸留で得られた留出液を洗浄槽(1)及び/又は(3)に導入する手段とを有することが好ましい。排出液の少なくとも一部を蒸留する手段は、単独であっても複数であってもよいが、洗浄槽(1)で用いる非水系洗浄剤Aと、洗浄槽(3)で用いる非水系洗浄剤A’の組成が同様である場合には、単独で双方を処理することができるため好ましい。
【0053】
非水系洗浄剤A及び/又はA’の蒸留手段では、汚れ成分を含んだ非水系洗浄剤を蒸留によりほぼ炭化水素類のみとして得られる留出液と、汚れ成分と炭化水素分とを含む残留成分とに分離する。留出液は、炭化水素類の純度が99%以上となることが好ましい。この純度は、導電率測定、吸光度測定、屈折率測定、比重測定、粘度測定、不揮発分定量、
ガスクロマトグラム分析等の一般的な方法で行うことができる。得られた留出液は、回収して非水系洗浄剤A又はA’として、あるいは非水系洗浄剤Bの原料として用いることができる。蒸留手段における残留成分には、汚れ成分が濃縮されるため、系外へ搬出し、適宜産業廃棄物等として処理する。
【0054】
本発明の光学部品の製造装置では、洗浄槽(2)において非水系洗浄剤Bが用いられ、その後段に設けられた洗浄槽(3)において非水系洗浄剤A’が用いられるが、洗浄時における非水系洗浄剤A’の汚染程度は、非水系洗浄剤Bよりも低く保たれる。本発明で用いる非水系洗浄剤Bは界面活性剤を含むが、非水系洗浄剤A’は被洗浄物に同伴された微量の界面活性剤が混入する場合などを除き、界面活性剤を実質的に含まない。そして通常、本発明で用いる非水系洗浄剤Bは、界面活性剤以外の組成を非水系洗浄剤A及び/又はA’と同様とすることができる。このため、非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、非水系洗浄剤Bの原料として用いることが可能であり、本発明の洗浄装置は、洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄槽(2)に導入する手段を有する構成とすることができる。非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を洗浄槽(2)に導入する機構は、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよいが、洗浄槽(3)からオーバーフローにより抜き出した非水系洗浄剤A’を、界面活性剤などの追加成分とともに非水系洗浄剤Bの原料として用い、混合槽などで非水系洗浄剤Bを調製して洗浄槽(2)に導入する手段が挙げられる。
【0055】
また、洗浄槽(3)内の非水系洗浄剤A’は、洗浄槽(1)内の非水系洗浄剤Aよりも汚染程度が低いため、非水系洗浄剤Aと非水系洗浄剤A’の組成が同等である場合などには、洗浄槽(3)内の非水系洗浄剤A’の一部をオーバーフローなどにより抜き出し、非水系洗浄剤Aの一部として洗浄槽(1)に導入する手段を有する構成とすることもできる。
【0056】
このように本発明の洗浄装置は、(B)洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(2)に導入する手段を有することも好ましい。本発明の洗浄装置は、上述した手段(A)および(B)のいずれか一方を有していることも好ましく、また、兼ね備えて有していることも好ましい。
【0057】
本発明に係る洗浄槽(1)、(2)あるいは(3)は、少なくとも一部に、洗浄槽内に超音波照射を行えるよう、超音波振動子が備えていることが好ましい。洗浄槽の少なくとも一部が超音波振動子を備えている場合、超音波振動子はそれを具備する洗浄槽の底部に備えられていることが好ましく、それにより洗浄槽内に超音波を発振し、超音波照射下での洗浄を行うことができる。超音波照射下での洗浄は、光学部品上に付着した研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子状物の除去に効果的である。
【0058】
また、本発明の洗浄装置は、洗浄性を向上させるために、洗浄槽(1)、(2)、(3)の少なくとも一部が、被洗浄物である光学部品を揺動する手段を備えていることも好ましく、洗浄剤を撹拌する手段を備えていることも好ましい。
【0059】
非水系洗浄剤Aは、界面活性剤を実質的に含まないため、洗浄槽(1)においては、光学部品上に付着した研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れを完全に除去することは困難なため、洗浄槽(1)での洗浄を終えた光学部品は、後続する洗浄槽(2)において、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bによりさらに洗浄する。
【0060】
光学部品は、洗浄槽(1)での洗浄の後、洗浄槽(2)へ導入して洗浄されるため、洗浄槽(1)内の汚れを含んだ非水系洗浄剤Aの一部は、通常、光学部品に同伴されて洗浄槽(2)内に持ち込まれる。また、洗浄槽(2)内の汚れを含んだ非水系洗浄剤Bの一部
は、通常、光学部品に同伴されて洗浄槽(3)内に持ち込まれる。このため、非水系洗浄剤A、非水系洗浄剤B、ならびに非水系洗浄剤A’は、類似の成分を含んでいることが望ましく、いずれもが炭素数9〜18の芳香族炭化水素を含有することが好ましい。
【0061】
なお、洗浄槽(1)と(2)との間、及び/又は洗浄槽(2)と(3)との間には、光学部品上に付着した洗浄液を除去する手段が設けられていてもよい。
洗浄槽(2)は、洗浄槽(1)にて洗浄した光学部品をさらに洗浄する槽であって、主に、光学部品上に残存する研磨剤、研磨屑、チリ、埃などの粒子汚れの除去を行う。
【0062】
洗浄槽(2)においては、非水系洗浄剤Bの汚染程度を、洗浄槽(1)と同様に管理することが望ましく、これに加えて界面活性剤濃度を所定のレベルに管理するのが望ましい。非水系洗浄剤Bの界面活性剤濃度は、屈折率測定、比重測定、不揮発分定量などの一般的な方法で測定することができ、洗浄槽(2)はこれらを測定する手段を具備することができる。
【0063】
また、洗浄槽(2)においては、通常、光学部品表面の微粒子状の付着物が非水系洗浄剤Bに移行して、光学部品が洗浄される。洗浄槽(2)内の非水系洗浄剤Bの汚染程度を一定範囲以内に保つためには、汚染した非水系洗浄剤Bの少なくとも一部を洗浄槽(2)から抜き出し、汚染されていないか汚染の程度の低い非水系洗浄剤Bあるいはその構成成分を洗浄槽(2)に導入する態様を取ることができる。また、汚染した非水系洗浄剤B中の微粒子状物を除去することによっても、非水系洗浄剤Bの汚染程度を制御することができる。微粒子状物の除去は、たとえば、非水系洗浄剤Bを連続して、又は間欠的に、フィルター材などでろ過処理する方法が好適であり、洗浄槽(2)がろ過手段を具備することが好ましい。非水系洗浄剤Bのろ過は、洗浄槽(2)の内部で行っても、外部で行ってもよい。
【0064】
本発明では、洗浄槽(1)で用いる非水系洗浄剤A、洗浄槽(2)で用いる非水系洗浄剤B、及び洗浄槽(3)で用いる非水系洗浄剤A’が、すべて同じ種類の炭化水素系洗浄剤を含んでいることが好ましく、これらのいずれもが、炭素数9〜18の芳香族炭化水素を含むことが好ましい。
【0065】
このような本発明の洗浄装置では、水系洗浄剤に浸漬することなく光学部品を高度に複合汚れを除去でき、しかも界面活性剤の残存などの問題もないので、潜傷、白焼け、青焼けなどの問題を生じることなく、光学部品を高度に洗浄することができる。
【0066】
このような本発明の洗浄装置及び洗浄方法としては、たとえば図1に示すような態様が挙げられる。図1は、各1槽の洗浄槽(1)(図中の1)、洗浄槽(2)(図中の2)及び洗浄槽(3)(図中の3)からなる、全3槽の洗浄槽を有する洗浄装置である。
【0067】
被洗浄物である複合汚れを有する光学部品は、洗浄槽(1)、洗浄槽(2)及び洗浄槽(3)において、順次各槽内の洗浄液に浸漬されて洗浄される。
洗浄槽(1)及び(3)には、同一組成の炭化水素洗浄剤である非水系洗浄剤Aが、洗浄槽(2)には、非水系洗浄剤Aと界面活性剤とからなる非水系洗浄剤Bが充填されている。洗浄槽(1)及び(3)において、洗浄に伴い汚れを含むようになった非水系洗浄剤Aは、それぞれラインe又はラインgから抜き出され、一方炭化水素洗浄剤タンク5からラインa又はラインcを通じて汚れを含まない炭化水素洗浄剤が添加され、これにより洗浄槽(1)及び(3)内の非水系洗浄剤Aの汚れ程度は所定の一定レベル以下に保たれる。また、洗浄槽(2)において洗浄に伴い汚れを含むようになった非水系洗浄剤Bは、ラインfから抜き出され、一方炭化水素洗浄剤タンク5からラインbを通じて導入される汚れを含まない非水系洗浄剤Aと、界面活性剤濃縮液タンク6からラインiを通じて導入される界面活性剤濃縮液とが、非水系洗浄剤Bの組成となる量で添加されることにより、洗浄槽(2)内の非水系洗浄剤Bの汚れ程度は一定レベル以下に保たれる。
【0068】
ここで、ラインe及びgから抜き出された汚れを有する非水系洗浄剤Aは、蒸留装置4に導入され、留出液として得られる汚れを含まない炭化水素洗浄剤成分と、濃縮された汚れを含む残留液とに分離され、ラインdを通じて炭化水素洗浄剤タンク5に移送される。留出液として得られた炭化水素洗浄剤成分は、蒸留条件にもよるが、通常非水系洗浄剤Aと同様の炭化水素組成を有しており、これを非水系洗浄剤Aとしてラインaあるいはラインcを通じて洗浄槽(1)あるいは(3)に導入して用いることができ、また、非水系洗浄剤Bを構成する炭化水素洗浄剤成分としてラインbを通じて洗浄槽(2)に導入して用いることもできる。なお、炭化水素洗浄剤タンク5には、蒸留装置から回収される炭化水素洗浄剤成分で不足する分の炭化水素洗浄剤を、外部から適宜導入することができる。また、炭化水素洗浄剤タンク5においては、非水系洗浄剤Aの組成が一定に保たれるよう、必要に応じて炭化水素洗浄剤の成分組成の調製を行ってもよい。
【0069】
蒸留装置4における残留液は、濃縮された汚れを含み、場合によっては界面活性剤成分をも含有するものであり、ラインkより系外に排出される。排出された残留液は、適宜産業廃棄物として処理されるのが望ましい。
【0070】
洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤Aの一部は、ラインjを通じて洗浄槽(1)に導入することができ、また、ラインhを通じて非水系洗浄剤Bの成分として洗浄槽(2)に導入することもできる。洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤Aの一部を洗浄槽(1)及び/又は(2)に導入する場合、洗浄槽(3)から非水系洗浄剤Aを抜き出す方法としては、特に限定されるものではないがオーバーフローによる方法を採用することができる。洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤Aは、洗浄槽(1)あるいは(2)中の非水系洗浄剤よりも汚染程度を低く保たれており、これにより光学部品を高度に洗浄する効果を達成することができる。このため、洗浄槽(3)内の非水系洗浄剤Aをそのまま洗浄槽(1)の非水系洗浄剤Aとして、あるいは洗浄槽(2)の非水系洗浄剤Bの成分として、直接導入することによっても、洗浄槽(1)あるいは(2)中の非水系洗浄剤の汚染程度を低下させることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
洗浄槽として3槽からなる洗浄装置を用いた。第1槽及び第3槽に、炭素数9〜12の芳香族炭化水素から成る非水系洗浄剤A(ジャパンエナジー製 EM2000E:沸点180〜192℃、水分0.02重量%)を充填した。第2槽には、前記EM2000E(ジャパンエナジー製)を85.0重量%、アニオン性界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを7.0重量%、非イオン性界面活性剤としてソルビタントリオレートを7.0重量、水分1.0重量%から成る非水系洗浄剤Bを充填した。尚、第1〜3の洗浄槽底部には超音波振動子が備えられているものを用いた。
【0073】
被洗浄部品として、光学レンズを研磨皿にアスファルトピッチで固定し、酸化セリウムを主成分とする研磨剤で研磨した後に、フェノール系樹脂からなる保護膜を塗布した耐水性の低い硝材からなる光学レンズ(直径15mm、厚さ5mm)を用いた。
【0074】
前記の光学レンズを第1槽に浸漬して25℃で2分間超音波を照射しながら洗浄を行った。次に第2槽においても25℃で2分間超音波を照射しながら洗浄を行い、第2槽での
洗浄後にさらに第3槽で25℃で2分間超音波を照射しながら洗浄を行った。第3槽での洗浄後、光学レンズを温風乾燥した。
【0075】
洗浄終了後の光学レンズは、ハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した。レンズ表面には、ピッチ等の油性汚れ及び研磨剤等の粒子汚れがなく、かつ、潜傷、白焼け、青焼け等の損傷がないことを確認した。
【0076】
[実施例2]
実施例1で使用した第1槽の汚染された非水系洗浄剤Aを蒸留機で蒸留して、得られた留出液を第3槽の非水系洗浄剤A’として使用した以外、実施例1と同様にして光学レンズの洗浄を行った。尚、蒸留により得られた留出液の汚染度は0.1重量%以下であった。
【0077】
洗浄終了後の光学レンズは、ハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した。レンズ表面には、ピッチ等の油性汚れ及び研磨剤等の粒子汚れがなく、かつ、潜傷、白焼け、青焼け等の損傷がないことを確認した。
【0078】
[実施例3]
実施例1での洗浄において、同様の被洗浄部品を順次同様に洗浄に供し、第1槽の汚染度が3重量%になったときに、第1槽の汚染された非水系洗浄剤Aの10容量%を抜き出した。また、第3槽の汚染度は0.5重量%以下になるようにモニターした。
【0079】
第1槽より抜き出された汚染された非水系洗浄剤Aは、蒸留機に導入して減圧蒸留により蒸留再生して汚染度0.1重量%以下の非水系洗浄剤Aを得た。蒸留再生により得られた非水系洗浄剤Aは貯留タンクに貯留し、貯留タンクから第3槽に一定の流速5mL/分で送液し、これにより第3槽からオーバーフローする洗浄剤は第1槽に流入させた。その後、再び、前記被洗浄部品の洗浄を実施例1と同条件で行ったところ、洗浄終了後の光学レンズには、ピッチ等の油性汚れ及び研磨剤等の粒子汚れがなく、かつ、潜傷、白焼け、青焼け等の損傷がないことを確認した。
【0080】
[比較例1]
実施例1において、第2槽内で用いた洗浄剤を、第1槽及び第3槽と同じEM2000Eにした以外、実施例1と同様にして光学レンズの洗浄を行った。
【0081】
洗浄後の光学レンズをハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した結果、レンズ表面には、ピッチ等の油性汚れは見られなかったものの、研磨剤等の粒子汚れが一部残存していた。
【0082】
[比較例2]
実施例1において、第1槽を省略した以外は、実施例1と同様にして光学レンズの洗浄を行った。
洗浄後の光学レンズをハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した結果、レンズ表面には、ピッチ等の油性汚れが一部残存していた。
【0083】
[比較例3]
実施例1において、第3槽を省略した以外は、実施例1と同様にして光学レンズの洗浄を行った。
洗浄後の光学レンズをハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した結果、レンズ表面には、界面活性剤が残存していた。
【0084】
[比較例4]
実施例1において、第2槽内で用いた洗浄剤を、EM2000Eを85.0重量%、アニオン性界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを7.5重量%、非イオン性界面活性剤としてソルビタントリオレートを7.5重量から成る非水系洗浄剤B(水分0.02重量%)にした以外、実施例1と同様にして光学レンズの洗浄を行った。
【0085】
洗浄後の光学レンズをハロゲンランプの光路内に設置して、レンズ表面を目視観察した結果、レンズ表面には、ピッチ等の油性汚れは見られなかったものの、研磨剤等の粒子汚れが一部残存していた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の洗浄装置及び洗浄方法は、各種光学部品の洗浄に好適であり、特に、ピッチやワックスなどの油性の固定剤を用いて研磨して製造された、光学レンズなどの光学部品の洗浄に好適である。また本発明の洗浄装置及び洗浄方法は、輸送や保管などのために保護膜を設けた精密光学部品などの保護膜除去にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明に係る洗浄装置の態様の一例を示す。
【符号の説明】
【0088】
1:洗浄槽(1)
2:洗浄槽(2)
3:洗浄槽(3)
4:蒸留装置
5:炭化水素洗浄剤タンク
6:界面活性剤濃縮液タンク
a〜k:ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品を、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(a)と、洗浄工程(a)により洗浄された光学部品を、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bに少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(b)と、洗浄工程(b)により洗浄された光学部品を、さらに界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’に少なくとも1回浸漬して洗浄する洗浄工程(c)とを有することを特徴とする光学部品の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)で使用された非水系洗浄剤の少なくとも一部を抜き出して蒸留し、蒸留で得られた留出液を洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(c)に再び使用することを特徴とする請求項1に記載の光学部品の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄工程(c)で使用された非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄工程(a)及び/又は洗浄工程(b)の非水系洗浄剤として使用することを特徴とする請求項1または2に記載の光学部品の洗浄方法。
【請求項4】
非水系洗浄剤A及び非水系洗浄剤A’が、炭素数9〜18の芳香族炭化水素からなる洗浄剤であり、非水系洗浄剤Bが、炭素数9〜18の芳香族炭化水素60〜99重量%と、界面活性剤1〜30重量%とを含み、非水系洗浄剤Bに含まれる界面活性剤が、アニオン性界面活性剤5〜83重量%と、非イオン性界面活性剤17〜95重量%とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学部品の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学部品の洗浄方法において使用する装置であって、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤Aにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(1)と、洗浄槽(1)の後段に設けられ、界面活性剤を含む非水系洗浄剤Bにより光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(2)と、洗浄槽(2)の後段に設けられ、界面活性剤を実質的に含まない非水系洗浄剤A’により光学部品を洗浄する1以上の洗浄槽(3)とを有することを特徴とする光学部品の洗浄装置。
【請求項6】
さらに下記(A)及び/又は(B)の手段を有することを特徴とする請求項5に記載の光学部品の洗浄装置;
(A):洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)から排出される排出液の少なくとも一部を蒸留する手段、および、蒸留で得られた留出液を洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(3)に導入する手段、
(B):洗浄槽(3)中の非水系洗浄剤A’の少なくとも一部を、洗浄槽(1)及び/又は洗浄槽(2)に導入する手段。

【図1】
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