光学部品
【課題】反射防止膜を用いることなく、光ファイバーへ入射する光又は光ファイバーから出射される光の反射を低減する。
【解決手段】石英部材3の光ファイバー装着面3aに光ファイバー1の端面1aが装着されている。石英部材3は、光ファイバー装着面3aとは反対側の反射防止構造形成面3bに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9を備えている。
【解決手段】石英部材3の光ファイバー装着面3aに光ファイバー1の端面1aが装着されている。石英部材3は、光ファイバー装着面3aとは反対側の反射防止構造形成面3bに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバーを備えた光学部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーを用いた技術において、光源からの光が光ファイバー等の光学部品に入射されるとき又は光学部品から出射されるときに、光学部品の内部と外部の光屈折率の差による光反射が生じていた。この光反射は光の伝送効率を低下させるだけでなく、反射光が光源へ入射することで光源そのものに悪影響を及ぼす等の問題があった。
【0003】
この問題の解決するため、光ファイバーの端面に反射防止膜(ARコート)を装着するなどの方法で対応した技術がある(例えば特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−227941号公報
【特許文献2】特開2003−255176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、反射防止膜が端面に装着された光学部品、例えば光ファイバーの端面に装着されたレンズなどの表面に反射防止膜が形成された光学部品にハイパワーレーザーが照射されると、反射防止膜が破壊(昇華)されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、反射防止膜を用いることなく、光ファイバーへ入射する光又は光ファイバーから出射される光の反射を低減できる光学部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光学部品の一態様は、光ファイバーと、上記光ファイバーの端面が装着される光ファイバー装着面をもつ石英部材と、を備え、上記石英部材は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を上記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えている光学部品である。このような反射防止構造はARS(Anti-Reflection Structure)と呼ばれている。
【0008】
本発明の光学部品において、上記石英部材の上記光ファイバー装着面に複数本の光ファイバーの端面が装着されている例を挙げることができる。ただし、光ファイバー装着面に装着される光ファイバーは1本であってもよい。
【0009】
また、上記石英部材は上記光ファイバーの断面よりも大きな寸法で形成されている例を挙げることができる。
【0010】
本発明にかかる光学部品の他の態様は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造がコアの端面に形成されている光ファイバーからなる光学部品である。
【0011】
コアの端面に上記反射防止構造が形成されている本発明の態様において、上記光ファイバーは1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーであり、各コアの端面に上記反射防止構造が形成されている例を挙げることができる。ただし、上記光ファイバーは1本のクラッド内に1本のコアが形成されたシングルコアファイバーであってもよい。なお、上記石英部材を備えている本発明の態様において、光ファイバーはシングルコアファイバーであってもよいし、マルチコアファイバーであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学部品は、光ファイバーの端面に装着される石英部材の表面又は光ファイバーのコアの端面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を上記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えているようにしたので、反射防止膜を用いることなく、光ファイバーへ入射する光又は光ファイバーから出射される光の反射を低減できる。さらに、光学部品にハイパワーレーザーが照射される場合であっても、反射防止構造の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例が模式的に示された断面図である。
【図2】反射防止構造の一例が模式的に示された断面図である。
【図3】反射防止構造の他の例が模式的に示された断面図である。
【図4】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図5】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図6】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図7】本発明の他の実施例が模式的に示された斜視図である。
【図8】図7の実施例の模式的な断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例が模式的に示された断面図である。
光学部品は光ファイバー1と石英部材3を備えている。光ファイバー1は例えば石英ガラスからなるコア5とクラッド7を備えている。光ファイバー1の端面1aは石英部材3の光ファイバー装着面3aに装着されている。光ファイバーの端面1aと光ファイバー装着面3aは熱融着又は接着剤によって密着されている。
【0015】
石英部材3は、光ファイバー装着面3aとは反対側の反射防止構造形成面3bに反射防止構造9を備えている。反射防止構造9は石英部材3の反射防止構造形成面3bが微細加工されて形成されたものである。反射防止構造9は、使用される光の波長よりも短い周期(ピッチ)で形成された凹凸構造からなる。
【0016】
図2から図6は反射防止構造の例が模式的に示された断面図である。
図2の反射防止構造9において、反射防止構造9のピッチは120nm(ナノメートル)であり、突起の高さは800nmである。図3の反射防止構造9において、ピッチは300nmであり、突起の高さは1000nmである。図4の反射防止構造9において、ピッチは600nmであり、突起の高さは1200nmである。図5の反射防止構造9において、ピッチは150nmであり、突起の高さは330nmである。図6の反射防止構造9において、ピッチは140nmであり、突起の高さは800nmである。
【0017】
図2から図6の反射防止構造について、使用波長域(nm)、透過率(%)、反射率(%)、反射防止構造の損傷が発生する照射密度(J/cm2)をまとめた結果を表1に示す。なお、使用波長域は一例であり、図2から図6の反射防止構造に関して使用可能な波長域を限定するものではない。透過率及び反射率の数値における括弧数値は測定した波長域を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
反射防止構造の損傷が発生する照射密度(レーザー耐久性)の測定は次の条件で行なわれた。
照射レーザー波長:355nm、パルスの時間幅:9ナノ秒、スポットサイズ:縦/横=200μm/200μm(マイクロメートル)、照射角度:0°、偏光:直線偏光。
この条件にて、断続的に照射強度を上げ、反射防止構造について、照射による損傷の有無を確認した。
【0020】
照射密度(DTp)は、ガウス分布のピーク密度(Peak Fluence)であり、次の計算式で求められた。
DTp=2E/(πr2)
ここで、E:照射エネルギー(J)、r:ビーム半径(1/e2)である。
【0021】
図2から図6の反射防止構造について、良好な透過率及び反射防止機能が得られた。
また、照射密度について、光学多層膜によるARコート(参考)は、DTp=1〜2(J/cm2)で膜が破壊された。これに対し、図2〜6の反射防止構造は、いずれもDTp=40(J/cm2)以上の密度のレーザーが照射されても、損傷等が確認されなかった。
【0022】
本発明の光学部品では、石英部材又は光ファイバーのコアに直接微細加工が施されている。これにより、膜の界面が存在しないため、光ファイバーを介して得られる高いエネルギーのレーザー光に対して、光エネルギーの吸収による発熱が抑制される。すなわち、本発明の光学部品は光学特性の変化や劣化を抑制できるというメリットがある。
また、光学部品に反射防止膜が用いられている場合、膜界面の密着性の問題がある。さらに、反射防止膜成膜時の突沸(異常蒸発)やコンタミネーションによって異物が膜中に取り込まれるという問題がある。反射防止膜成膜中の異物は、レーザー光エネルギーを熱に変え、反射防止膜成膜の劣化や蒸発(破壊)、光学常数の変化の原因になる。
本発明の光学部品は反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0023】
さらに、石英部材又は光ファイバーのコアに形成された、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造は、直線偏光、円偏光、無偏光など全ての光に対応できる。さらに、(1)光学素子(ファイバー先端)に対する入射角依存性が少ない、(2)光学特性の波長依存性が少ない、(3)ハイパワーレーザーに対する耐久性が高い(4)熱膨張係数が小さいので温度変化に対して特性の変化が小さい、(5)長期間使用時の特性の変化が小さい、等の多くの利点がある。
【0024】
本発明の光学部品をファイバーレーザー加工機に適用すれば、これまで実現できなかった高耐久性反射防止機能が実現できる。
図2の反射防止構造9を備えた石英部材3が光ファイバー1に装着された実施例をファイバーレーザー加工機に適用して耐久性の試験を行なった。比較例として光学多層膜からなる反射防止膜が光ファイバーの先端に形成されたもの(従来技術)についても耐久性の試験を行なった。
【0025】
試験は次の条件で行なわれた。光ファイバーの直径Φ:0.6mm(ミリメートル)、照射レーザー波長:355nm、パルスの時間幅:10ミリ秒、パルスエネルギー:110J、パルスの繰返し周波数:6Hz。
【0026】
従来技術については、5分後には反射防止膜が破壊された。実施例については全くダメージが発生しなかった。これにより、本発明の光学部品の耐久性が確認された。
【0027】
図7は本発明の他の実施例が模式的に示された斜視図である。図8はこの実施例の模式的な断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0028】
この実施例では、石英部材3は光ファイバー1の断面よりも大きな寸法で形成されている。さらに、石英部材3の光ファイバー装着面3aに複数本の光ファイバー1の端面1aが装着されている。
【0029】
反射防止構造9は平面状に形成されているので、石英部材3は多チャンネル用ファイバーに共通部品として使用できる。さらに、石英部材3の光ファイバー装着面3aに複数本の光ファイバー1の端面1aが装着されているので、アレイファイバーに対応可能である。例えば、複数の光ファイバーがアレイ状に配列される波長分離素子の出力側の端子に適用できる。
さらに、石英部材3を光ファイバー1よりも大きな寸法とすることで、外周位置決め機能を担わせることができる。なお、石英部材3を光ファイバー1よりも大きな寸法とする構成は図1に示された実施例にも適用できる。
【0030】
図1に示された実施例ならびに図7及び図8に示された実施例は、1本のクラッド7内に1本のコア5が形成された光ファイバー1を備えているが、光ファイバー1に替えて、1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーを備えていてもよい。
【0031】
また、石英部材3の反射防止構造形成面3bに、光の拡散、平行化、収束などを制御する光学的構造が形成されていてもよい。その場合、石英部材の反射防止構造形成面に形成された光学的構造の表面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造が形成される。ここで、光学的構造は、例えば回折格子、凸レンズ、凹レンズである。
【0032】
図9は、本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0033】
石英部材3の反射防止構造形成面3bに凹凸構造からなる回折格子3cが形成されている。回折格子3cの凸部の表面及び凹部の底面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。反射防止構造9により、回折格子3cの表面における光の反射が低減される。なお、回折格子3cの凹凸の周期は等間隔であってもよい。
【0034】
図10は、本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0035】
石英部材3の反射防止構造形成面3bに球面3dが形成されている。石英部材3は平凸レンズを形成している。球面3dの表面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。反射防止構造9により、球面3dにおける光の反射が低減される。なお、球面3dは、非球面であってもよいし、凹面であってもよい。
【0036】
図11は本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0037】
コア5とクラッド7を備えた光ファイバー11において、コア5の端面5aに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。
【0038】
この実施例についても、表1に示された結果と同様の測定結果が得られた。
この実施例でも、反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0039】
図12は本発明のさらに他の実施例が模式的に示された斜視図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0040】
この実施例は、1本のクラッド7内に複数本のコア5が形成されたマルチコアファイバー13によって構成されている。マルチコアファイバー13はクラッド7を覆う被覆15を備えている。各コア5の端面5aに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造(図示は省略)が形成されている。反射防止構造の形状は例えば図2から図6に示されたものである。
【0041】
この実施例でも、図1に示された実施例と同様に反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0042】
以上、本発明の実施例が説明されたが、材料、形状、配置、寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 光ファイバー
1a 光ファイバーの端面
3 石英部材
3a 光ファイバー装着面
3b 反射防止構造形成面
5 コア
5a コアの端面
7 クラッド
9 反射防止構造
11 光ファイバー
13 マルチコアファイバー
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバーを備えた光学部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーを用いた技術において、光源からの光が光ファイバー等の光学部品に入射されるとき又は光学部品から出射されるときに、光学部品の内部と外部の光屈折率の差による光反射が生じていた。この光反射は光の伝送効率を低下させるだけでなく、反射光が光源へ入射することで光源そのものに悪影響を及ぼす等の問題があった。
【0003】
この問題の解決するため、光ファイバーの端面に反射防止膜(ARコート)を装着するなどの方法で対応した技術がある(例えば特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−227941号公報
【特許文献2】特開2003−255176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、反射防止膜が端面に装着された光学部品、例えば光ファイバーの端面に装着されたレンズなどの表面に反射防止膜が形成された光学部品にハイパワーレーザーが照射されると、反射防止膜が破壊(昇華)されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、反射防止膜を用いることなく、光ファイバーへ入射する光又は光ファイバーから出射される光の反射を低減できる光学部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光学部品の一態様は、光ファイバーと、上記光ファイバーの端面が装着される光ファイバー装着面をもつ石英部材と、を備え、上記石英部材は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を上記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えている光学部品である。このような反射防止構造はARS(Anti-Reflection Structure)と呼ばれている。
【0008】
本発明の光学部品において、上記石英部材の上記光ファイバー装着面に複数本の光ファイバーの端面が装着されている例を挙げることができる。ただし、光ファイバー装着面に装着される光ファイバーは1本であってもよい。
【0009】
また、上記石英部材は上記光ファイバーの断面よりも大きな寸法で形成されている例を挙げることができる。
【0010】
本発明にかかる光学部品の他の態様は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造がコアの端面に形成されている光ファイバーからなる光学部品である。
【0011】
コアの端面に上記反射防止構造が形成されている本発明の態様において、上記光ファイバーは1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーであり、各コアの端面に上記反射防止構造が形成されている例を挙げることができる。ただし、上記光ファイバーは1本のクラッド内に1本のコアが形成されたシングルコアファイバーであってもよい。なお、上記石英部材を備えている本発明の態様において、光ファイバーはシングルコアファイバーであってもよいし、マルチコアファイバーであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学部品は、光ファイバーの端面に装着される石英部材の表面又は光ファイバーのコアの端面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を上記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えているようにしたので、反射防止膜を用いることなく、光ファイバーへ入射する光又は光ファイバーから出射される光の反射を低減できる。さらに、光学部品にハイパワーレーザーが照射される場合であっても、反射防止構造の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例が模式的に示された断面図である。
【図2】反射防止構造の一例が模式的に示された断面図である。
【図3】反射防止構造の他の例が模式的に示された断面図である。
【図4】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図5】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図6】反射防止構造のさらに他の例が模式的に示された断面図である。
【図7】本発明の他の実施例が模式的に示された斜視図である。
【図8】図7の実施例の模式的な断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例が模式的に示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例が模式的に示された断面図である。
光学部品は光ファイバー1と石英部材3を備えている。光ファイバー1は例えば石英ガラスからなるコア5とクラッド7を備えている。光ファイバー1の端面1aは石英部材3の光ファイバー装着面3aに装着されている。光ファイバーの端面1aと光ファイバー装着面3aは熱融着又は接着剤によって密着されている。
【0015】
石英部材3は、光ファイバー装着面3aとは反対側の反射防止構造形成面3bに反射防止構造9を備えている。反射防止構造9は石英部材3の反射防止構造形成面3bが微細加工されて形成されたものである。反射防止構造9は、使用される光の波長よりも短い周期(ピッチ)で形成された凹凸構造からなる。
【0016】
図2から図6は反射防止構造の例が模式的に示された断面図である。
図2の反射防止構造9において、反射防止構造9のピッチは120nm(ナノメートル)であり、突起の高さは800nmである。図3の反射防止構造9において、ピッチは300nmであり、突起の高さは1000nmである。図4の反射防止構造9において、ピッチは600nmであり、突起の高さは1200nmである。図5の反射防止構造9において、ピッチは150nmであり、突起の高さは330nmである。図6の反射防止構造9において、ピッチは140nmであり、突起の高さは800nmである。
【0017】
図2から図6の反射防止構造について、使用波長域(nm)、透過率(%)、反射率(%)、反射防止構造の損傷が発生する照射密度(J/cm2)をまとめた結果を表1に示す。なお、使用波長域は一例であり、図2から図6の反射防止構造に関して使用可能な波長域を限定するものではない。透過率及び反射率の数値における括弧数値は測定した波長域を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
反射防止構造の損傷が発生する照射密度(レーザー耐久性)の測定は次の条件で行なわれた。
照射レーザー波長:355nm、パルスの時間幅:9ナノ秒、スポットサイズ:縦/横=200μm/200μm(マイクロメートル)、照射角度:0°、偏光:直線偏光。
この条件にて、断続的に照射強度を上げ、反射防止構造について、照射による損傷の有無を確認した。
【0020】
照射密度(DTp)は、ガウス分布のピーク密度(Peak Fluence)であり、次の計算式で求められた。
DTp=2E/(πr2)
ここで、E:照射エネルギー(J)、r:ビーム半径(1/e2)である。
【0021】
図2から図6の反射防止構造について、良好な透過率及び反射防止機能が得られた。
また、照射密度について、光学多層膜によるARコート(参考)は、DTp=1〜2(J/cm2)で膜が破壊された。これに対し、図2〜6の反射防止構造は、いずれもDTp=40(J/cm2)以上の密度のレーザーが照射されても、損傷等が確認されなかった。
【0022】
本発明の光学部品では、石英部材又は光ファイバーのコアに直接微細加工が施されている。これにより、膜の界面が存在しないため、光ファイバーを介して得られる高いエネルギーのレーザー光に対して、光エネルギーの吸収による発熱が抑制される。すなわち、本発明の光学部品は光学特性の変化や劣化を抑制できるというメリットがある。
また、光学部品に反射防止膜が用いられている場合、膜界面の密着性の問題がある。さらに、反射防止膜成膜時の突沸(異常蒸発)やコンタミネーションによって異物が膜中に取り込まれるという問題がある。反射防止膜成膜中の異物は、レーザー光エネルギーを熱に変え、反射防止膜成膜の劣化や蒸発(破壊)、光学常数の変化の原因になる。
本発明の光学部品は反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0023】
さらに、石英部材又は光ファイバーのコアに形成された、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造は、直線偏光、円偏光、無偏光など全ての光に対応できる。さらに、(1)光学素子(ファイバー先端)に対する入射角依存性が少ない、(2)光学特性の波長依存性が少ない、(3)ハイパワーレーザーに対する耐久性が高い(4)熱膨張係数が小さいので温度変化に対して特性の変化が小さい、(5)長期間使用時の特性の変化が小さい、等の多くの利点がある。
【0024】
本発明の光学部品をファイバーレーザー加工機に適用すれば、これまで実現できなかった高耐久性反射防止機能が実現できる。
図2の反射防止構造9を備えた石英部材3が光ファイバー1に装着された実施例をファイバーレーザー加工機に適用して耐久性の試験を行なった。比較例として光学多層膜からなる反射防止膜が光ファイバーの先端に形成されたもの(従来技術)についても耐久性の試験を行なった。
【0025】
試験は次の条件で行なわれた。光ファイバーの直径Φ:0.6mm(ミリメートル)、照射レーザー波長:355nm、パルスの時間幅:10ミリ秒、パルスエネルギー:110J、パルスの繰返し周波数:6Hz。
【0026】
従来技術については、5分後には反射防止膜が破壊された。実施例については全くダメージが発生しなかった。これにより、本発明の光学部品の耐久性が確認された。
【0027】
図7は本発明の他の実施例が模式的に示された斜視図である。図8はこの実施例の模式的な断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0028】
この実施例では、石英部材3は光ファイバー1の断面よりも大きな寸法で形成されている。さらに、石英部材3の光ファイバー装着面3aに複数本の光ファイバー1の端面1aが装着されている。
【0029】
反射防止構造9は平面状に形成されているので、石英部材3は多チャンネル用ファイバーに共通部品として使用できる。さらに、石英部材3の光ファイバー装着面3aに複数本の光ファイバー1の端面1aが装着されているので、アレイファイバーに対応可能である。例えば、複数の光ファイバーがアレイ状に配列される波長分離素子の出力側の端子に適用できる。
さらに、石英部材3を光ファイバー1よりも大きな寸法とすることで、外周位置決め機能を担わせることができる。なお、石英部材3を光ファイバー1よりも大きな寸法とする構成は図1に示された実施例にも適用できる。
【0030】
図1に示された実施例ならびに図7及び図8に示された実施例は、1本のクラッド7内に1本のコア5が形成された光ファイバー1を備えているが、光ファイバー1に替えて、1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーを備えていてもよい。
【0031】
また、石英部材3の反射防止構造形成面3bに、光の拡散、平行化、収束などを制御する光学的構造が形成されていてもよい。その場合、石英部材の反射防止構造形成面に形成された光学的構造の表面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造が形成される。ここで、光学的構造は、例えば回折格子、凸レンズ、凹レンズである。
【0032】
図9は、本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0033】
石英部材3の反射防止構造形成面3bに凹凸構造からなる回折格子3cが形成されている。回折格子3cの凸部の表面及び凹部の底面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。反射防止構造9により、回折格子3cの表面における光の反射が低減される。なお、回折格子3cの凹凸の周期は等間隔であってもよい。
【0034】
図10は、本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0035】
石英部材3の反射防止構造形成面3bに球面3dが形成されている。石英部材3は平凸レンズを形成している。球面3dの表面に、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。反射防止構造9により、球面3dにおける光の反射が低減される。なお、球面3dは、非球面であってもよいし、凹面であってもよい。
【0036】
図11は本発明のさらに他の実施例が模式的に示された断面図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0037】
コア5とクラッド7を備えた光ファイバー11において、コア5の端面5aに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造9が形成されている。反射防止構造9の形状は例えば図2から図6に示されたものである。
【0038】
この実施例についても、表1に示された結果と同様の測定結果が得られた。
この実施例でも、反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0039】
図12は本発明のさらに他の実施例が模式的に示された斜視図である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、それらの部分の詳細な説明は省略される。
【0040】
この実施例は、1本のクラッド7内に複数本のコア5が形成されたマルチコアファイバー13によって構成されている。マルチコアファイバー13はクラッド7を覆う被覆15を備えている。各コア5の端面5aに、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造(図示は省略)が形成されている。反射防止構造の形状は例えば図2から図6に示されたものである。
【0041】
この実施例でも、図1に示された実施例と同様に反射防止膜を備えていないので、耐光性、耐久性の性能に対して非常に高い信頼性が得られる。
【0042】
以上、本発明の実施例が説明されたが、材料、形状、配置、寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 光ファイバー
1a 光ファイバーの端面
3 石英部材
3a 光ファイバー装着面
3b 反射防止構造形成面
5 コア
5a コアの端面
7 クラッド
9 反射防止構造
11 光ファイバー
13 マルチコアファイバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーと、
前記光ファイバーの端面が装着される光ファイバー装着面をもつ石英部材と、を備え、
前記石英部材は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を前記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えている光学部品。
【請求項2】
前記石英部材の前記光ファイバー装着面に複数本の光ファイバーの端面が装着されている請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記石英部材は前記光ファイバーの断面よりも大きな寸法で形成されている請求項1に記載の光学部品。
【請求項4】
使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造がコアの端面に形成されている光ファイバーからなる光学部品。
【請求項5】
前記光ファイバーは1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーであり、各コアの端面に前記反射防止構造が形成されている請求項4に記載の光学部品。
【請求項1】
光ファイバーと、
前記光ファイバーの端面が装着される光ファイバー装着面をもつ石英部材と、を備え、
前記石英部材は、使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造を前記光ファイバー装着面とは反対側の反射防止構造形成面に備えている光学部品。
【請求項2】
前記石英部材の前記光ファイバー装着面に複数本の光ファイバーの端面が装着されている請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記石英部材は前記光ファイバーの断面よりも大きな寸法で形成されている請求項1に記載の光学部品。
【請求項4】
使用される光の波長よりも短い周期で形成された凹凸構造からなる反射防止構造がコアの端面に形成されている光ファイバーからなる光学部品。
【請求項5】
前記光ファイバーは1本のクラッド内に複数本のコアが形成されたマルチコアファイバーであり、各コアの端面に前記反射防止構造が形成されている請求項4に記載の光学部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−97164(P2013−97164A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239713(P2011−239713)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】
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