説明

光安定性に優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤

【課題】 光安定性に優れ、含有されたキノロン系抗菌薬の有効性を長期間に亘り確保することができる、キノロン系抗菌薬含有液体製剤を提供すること。
【解決手段】 キノロン系抗菌薬、1種又は2種以上のクエン酸塩を水に溶解させ、必要により酸又はアルカリ剤によりこの溶液のpHを5.5〜7.5に調整し、かつ、中性塩により浸透圧比を0.85〜1.20に調整することを特徴とする光安定性が向上されたキノロン系抗菌薬含有液体製剤であり、特にキノロン系抗菌薬がレボフロキサシンであり、点眼用剤としての液体製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光安定性に優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤、特にレボフロキサシンを含有する液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
キノロン系抗菌薬は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し、優れた抗菌作用を示し、これを主剤とする各種製剤が開発されている。しかし、キノロン系抗菌薬自体は光に対する安定性が低いため、キノロン系抗菌薬含有製剤について、その光安定性を向上させるための方法が種々報告されている。
【0003】
キノロン系抗菌薬を含有する液体製剤のなかで、点眼液として、例えば、レボフロキサシンを主成分とした点眼液(商品名:クラビット(登録商標)点眼液、レボフロキサシン0.5wt%含有)が市販されている。この点眼液は、有効成分としてレボフロキサシンを含有し、添加物として塩化ナトリウム(等張化剤)、pH調節剤を含有し、pHが6.2〜6.8、浸透圧比が1.0〜1.1に調整された液剤であり、その性状は、微黄色〜淡黄色澄明である無菌水性点眼剤である。
【0004】
このレボフロキサシン点眼液は、レボフロキサシン自体が幅広い抗菌スペクトラムを有していることから、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を含まないものである。さらに、本剤の遮光下での保存によるpH変動は少なく、レボフロキサシン自身が緩衝能を有しているために緩衝剤を配合する必要性もない特徴を有している。
【0005】
レボフロキサシン点眼液の光に対する安定性については、保存条件が25℃、1,000lx、保存状態:5mLポリエチレン製容器(ラベルなし、露光)での苛酷試験(光に対する安定性)の結果、30万lx・hr、60万lx・hr、120万lx・hrでは、照射前の点眼液のpHが6.6であったものが、それぞれpH6.5、pH6.4、pH6.2に低下することが知られている。
【0006】
また、有効成分であるレボフロキサシンの含量(%)も、照射前の101%に対してそれぞれ92%、90%、84%と低下することと、保存条件が25℃、1,000lx、保存状態:5mLポリエチレン製容器(ラベルなし、茶色遮光袋入り)では安定であることも知られている(非特許文献1)。
【0007】
さらに、レボフロキサシン点眼液は、ポリエチレン性容器に充填された状態で、遮光袋に封入されていれば、多少の温度変化に対しては安定であるが、遮光袋から取り出した状態で保管すると含量が低下し、規格外となるため、必ず遮光袋に入れて保管するよう指導する必要があることが報告されている(非特許文献2)。
【0008】
しかしながら、レボフロキサシンを始めとするキノロン系抗菌薬の点眼液については、製造時に外部からの視認等の品質検査等が容易に行えるように、充填する包装容器(包装体)が透明であることが要請される。したがって、キノロン系抗菌薬液剤の包装容器を外部からの光の入射を完全に遮断する容器とすることができない。
【0009】
そのため、レボフロキサシンを始めとするキノロン系抗菌薬含有液体製剤について、光安定性を向上させるための技術が報告されている。
例えば、キノロン系抗菌薬に対して緩衝作用を有する少なくとも1種又は2種以上のリン酸塩水溶液にキノロン系抗菌薬を溶解させ、酸又はアルカリ剤によりこの溶解溶液のpHを5.5〜7.5にすると共に、中性塩により浸透圧比を0.85〜1.20に調整し、リン酸塩の配合量を無水物として0.5〜3.3wt/v%とすることにより光安定性を向上させるキノロン系抗菌薬液体製剤、及びこの液体製剤を、緑色透明性ないし半透明性材製の包装容器内に充填するキノロン系抗菌薬液体製剤の包装体が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許3648132号公報
【非特許文献1】化学療法の領域、Vol.16, No.6, p.103-106 (2000)
【非特許文献2】医薬ジャーナル、Vol.42, No.6, p.1725-1729 (2006)
【0010】
しかしながら、かかる手段を採用したとしても、キノロン系抗菌薬含有液体製剤は、光による着色、pHの低下、含量の低下、分解物の出現等の影響を受け易いことから、患者が長期に亘って使用又は保管しても、この液剤中のキノロン系抗菌薬の光安定性をより十分に確保できる製剤の開発が望まれているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は上記の現状に鑑み、光安定性に優れ、含有されたキノロン系抗菌薬の有効性を長期間に亘り確保することができる、キノロン系抗菌薬含有液体製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するための本発明は、
(1)キノロン系抗菌薬、1種又は2種以上のクエン酸塩を水に溶解させ、必要により酸又はアルカリ剤によりこの溶液のpHを5.5〜7.5に調整し、かつ、中性塩により浸透圧比を0.85〜1.20に調整することを特徴とする光安定性が向上されたキノロン系抗菌薬含有液体製剤、
(2)キノロン系抗菌薬に対して少なくとも1種又は2種以上のクエン酸塩を0.2〜0.85wt/v%とすることを特徴とする上記(1)に記載の液体製剤、
(3)キノロン系抗菌薬がレボフロキサシンである上記(1)又は(2)に記載の液体製剤、
(4)液体製剤が点眼用剤である上記(1)に記載の液体製剤、
である。
【0013】
すなわち、本発明者の検討の結果、特にクエン酸塩の配合による緩衝効果、等張化等により、溶液中に溶解されたキノロン系抗菌薬が、光に対して安定して存在することに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、有効成分であるキノロン系抗菌薬、特にレボフロキサシンの有効性を維持し、安全性に優れ、光に対する安定性並びに使用感に優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤、特に点眼用剤を提供することができる。
また、本発明のキノロン系抗菌薬含有液体製剤は、光に対する安定性に優れたものであることから、その液体製剤を充填する包装容器(包装体)は透明性のものであっても良いことから、その品質検査等を外部からの視認により容易に行うことが可能であり、より安全性に優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤を提供することができる。
特に、本発明にあっては、レボフロキサシンに対する安定化剤として添加するクエン酸塩による緩衝作用と、レボフロキサシン自身の緩衝作用が相乗的に作用することにより、少数の配合成分にもかかわらず、上記した特定範囲のpH値及び浸透圧比の下で、その光安定性を著しく向上させる作用が発揮され、その効果は特異的なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における有効成分としてのキノロン系抗菌薬とは、縮合ピリドンカルボン酸骨格を有する合成抗菌薬であり、例えば、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、トスフロキサシン、スパフロキサシン、ロメフロキサシン、ナリジスク酸、ピペミド酸、ピロミド酸等を挙げることができる。
また、本発明のキノロン系抗菌薬含有液体製剤とは、上記したキノロン系抗菌薬を有効成分として含有する液状製剤をいい、具体的には、例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤等を挙げることができる。なかでも点眼剤としての液体製剤が特に好ましい。
【0016】
以下に、本発明のキノロン系抗菌薬含有液体製剤について、代表的なキノロン系抗菌薬であるレボフロキサシンを用いたレボフロキサシン含有液体製剤の実際を説明することにより、詳細に説明する。
【0017】
本発明が目的とするレボフロキサシン含有液体製剤は、有効成分としてのレボフロキサシン、1種又は2種以上のクエン酸塩を水に溶解させ、必要により酸又はアルカリ剤によりこの溶液のpHを5.5〜7.5に調整し、かつ、中性塩により浸透圧比を0.85〜1.20に調整することを特徴とする光安定性の向上したレボフロキサシン含有液体製剤である。
【0018】
本発明の液体製剤におけるレボフロキサシンの配合量は、好ましくは、0.3〜0.6wt/v%、より好ましくは0.3〜0.5wt/v%、特に好ましくは、約0.5wt/v%である。
この含有量は、目的とする液体製剤の用途に応じて適宜変更することができる。
【0019】
また、クエン酸塩としては、クエン酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等、又はこれらの結晶水付加物、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
本発明が提供するレボフロキサシン含有液体製剤中のクエン酸塩の配合量は、例えば、クエン酸ナトリウムの水和物として、0.1〜1.0wt/v%であることが好ましい。この配合量は液体製剤中に含有されるレボフロキサシンの含有量に対応して、当該レボフロキサシンの光に対する安定性を発揮する緩衝作用、等張化作用を確保する量であればよく、より好ましくは、0.2〜0.85wt/v%である。この配合量が、0.1wt/v%未満であると、適正なpHを維持できなくなる欠点があり、また1.0wt/v%を超えると、液体製剤が高等張化される等の欠点がある。
【0021】
本発明が提供するレボフロキサシン含有液体製剤のpHは、5.5〜7.5であればよく、液体製剤中に含有されるレボフロキサシンの生体への適用性が著しく向上する作用が効果的に発揮され、また、より安定な状態となる。より好ましくは、pH6.0〜7.0の範囲であり、特に好ましくはpHが約6.5である。
この液体製剤のpHは、必要に応じて、適量の水酸化ナトリウム等のアルカリ剤、又は塩酸、クエン酸、クエン酸水和物等の酸の添加により調整することができる。好ましくはクエン酸であり、クエン酸水和物としての配合量は、0〜0.1wt/v%であることが好ましい。より好ましくは、0〜0.06wt/v%である。
【0022】
本発明のレボフロキサシン含有液体製剤の浸透圧比は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の中性塩、好ましくは塩化ナトリウムを添加することにより調整することができる。浸透圧比は、0.85〜1.20が好ましく、より好ましくは、浸透圧比0.95〜1.1である。
【0023】
本発明のレボフロキサシン含有液体製剤は、上記した各配合成分を、常温あるいは加熱条件下で、混合溶解させることにより製造することができる。混合溶解は、先にレボフロキサシンを精製水に溶解させた後、少なくとも1種又は2種以上のクエン酸塩を溶解させてもよく、また、先に少なくとも1種又は2種以上のクエン酸塩を精製水に溶解させた後、レボフロキサシンを添加して溶解させてもよい。
【0024】
本発明が提供するレボフロキサシン含有液体製剤については、前記成分以外に、必要に応じて、任意の成分を添加することができる。そのような成分としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;ポリビニルピロリドン;塩化ベンザルコニウム等の防腐剤;l−メントール等の清涼化剤;アスコルビン酸等の抗酸化剤;エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0025】
上記により調製された本発明のレボフロキサシン含有液体製剤は、例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤等としてそれぞれの目的に応じた容器に充填され提供される。そのような容器としては、例えば、液剤を充填する容器として機能する透明〜半透明な材質からなる、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテレフタレート等の合成樹脂材、ガラス材等の各種素材のものを挙げることができ、好ましくは、ポリエチレン樹脂からなる容器である。
【0026】
これらの包装容器としては、無色透明性から半透明性のものまでのほか、白色、青色、緑色等に着色された透明性から半透明性のものまでを使用することができる。
本発明が提供するレボフロキサシン含有液体製剤は、特に光に対する安定性に優れたものであることより、容器として透明性の容器に充填することが可能となり、そのため、品質検査等を外部からの視認により容易に行うことが可能であり、より安全性に優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤を提供することができる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を、具体的実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例1〜10においては、点眼液の浸透圧比は塩化ナトリウムを用いて1.05に調整した。
また、必要に応じて、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムのpH調節剤を用いて点眼液がpH6.5となるように調節した。
【0028】
実施例1:
常温下で、精製水80mLにレボフロキサシン500mgを添加し、撹拌して溶解させた後、クエン酸ナトリウム水和物850mgを添加し、撹拌して溶解させた。次いでこの溶液に塩化ナトリウム656mgを添加し、撹拌して溶解させた後、クエン酸水和物57mgを添加し、この溶解溶液のpH6.5に調整し、精製水を合計100mLになるように加えて、ろ過することにより、微黄色澄明な点眼液を得た。
【0029】
実施例2:
実施例1の処方において、クエン酸水和物57mgを30mgに変更し、塩酸により、この溶解溶液のpH6.5に調整した以外は、実施例1と同様に処理することにより、微黄色澄明な点眼液を得た。
【0030】
実施例3:
実施例2の処方において、クエン酸水和物30mgを0mg(すなわち、無添加)に変更した以外は、実施例2と同様に処理することにより、微黄色澄明な点眼液を得た。
【0031】
以下、実施例1〜3の処方と同様にして、実施例4〜10の点眼液を調製した。
これらの組成を表1にまとめた。なお、表中の数値は、試料1mL中のmgを示す。
【0032】
【表1】

【0033】
比較例1〜3:
市販品(商品名:クラビット(登録商標)点眼液、レボフロキサシンを0.5wt/v%含有する)を比較例1とした。ただし、この比較例1のpHは6.55であった。
比較例2として、生理食塩水にレボフロキサシンを添加溶解し、適量の塩酸を添加することによりpHを6.5とした試料を調製した。
比較例3として、リン酸緩衝液にレボフロキサシンを溶解したものに、酸又はアルカリのpH調製剤を添加することによりpHを6.5とした試料を調製した。
これら比較例1〜3の組成を表2にまとめた。
【0034】
【表2】

【0035】
表中の各成分の数値は、試料1mL中のmgを示す。また、*は市販品より不明であることを示す。
【0036】
試験例1:レボフロキサシンの光安定性試験
実施例1〜10及び比較例1〜3の各点眼液を、無色透明性のポリエチレン製容器(円筒形状、5mL容量、大成化工社製)に充填して密閉し、光安定性試験に供した。
各点眼液を充填した容器に対して、その上方から昼光色蛍光灯を3000lx・hrの光強度で照射した。
光照射量が60万lx・hrに達した時点で、各容器中に充填された点眼液についてレボフロキサシンの含有量を定量し、その定量値より、レボフロキサシンの残存率を算出した。
その結果を、表3に示した。
【0037】
【表3】

【0038】
その結果、レボフロキサシンの光安定性は、クエン酸ナトリウム水和物の処方量が多いほど安定化することが判明した。
実施例1〜10の試料におけるレボフロキサシンの残存率は、比較例1〜3の検体試料の残存率と対比した場合、その残存率が極めて高く、優れた光安定性を有していることが判明した。
【0039】
レボフロキサシンの残存率について対比すると、本発明の実施例における検体試料の残存率特性は、比較例1(市販品)と対比させると、残存率特性が顕著に改善されていることが判明する。
また、比較例2(本発明の液剤からクエン酸塩を除いたもの)と対比させると、本発明の液剤が、優れた光安定性を示すことが判明する。
さらに、比較例3(リン酸緩衝液を含む液剤)と対比させると、本発明の液剤が、優れた光安定性を示すことが判明する。
【0040】
なお、試料中のレボフロキサシンの定量法は、次のとおりである。
下記に従って、試料溶液、標準溶液及び内標準溶液を調製し、以下、日局一般試験法液体クロマトグラフ法により試験を行い、内標準物質のピーク面積に対するレボフロキサシンのピーク面積の比を求め、次の計算式に基づいて算出した。
【0041】
[試料溶液]
薬液(5mg/mL)2.5mL/0.01mol/L−塩酸50mL 0.25mg/mL
上記薬液10mL+内標4mL/精製水50mL
【0042】
[標準溶液]
レボフロキサシン50mg/0.01mol/L−塩酸100mL 0.5mg/mL
上記レボフロキサシン溶液の5mL+内標4mL/精製水50mL
【0043】
試料溶液及び標準溶液の10μLにつき、次の条件で、日局一般試験法液体クロマトグラフ法により試験を行い、内標準物質のピーク面積に対するレボフロキサシンのピーク面積の比Q及びQを求め、次の計算式に基づいて算出した。
【0044】
表示量に対するレボフロキサシンの含量(%)=
レボフロキサシン採取量(mg)×Qt/Qs×1/4×K×100
式中、1/4は希釈倍率、K=1/[表示量(mg)×試料採取量(mL)]を示す。
また、内標準溶液は、パラオキシ安息香酸メチル溶液(3→20000)である。
【0045】
[HPLC条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:内径約4.6mm、長さ150mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの。
カラム温度:40℃付近の一定温度。
注入量:10μL。
【0046】
移動相:1−オクタンスルホン酸ナトリウム1.298g及びリン酸二水素カリウム1.361gに水を加えて溶かし、1000mLとし、リン酸でpH3.0に調整する。この液とアセトニトリルを4:1の割合に混和する。
【0047】
流量:レボフロキサシンの保持時間が約13分となるように調整する。
【0048】
カラムの選定:標準水溶液10μLにつき、上記の条件で操作するとき、内標準物質、レボフロキサシンの順に溶出するものを用いる。
【0049】
純度試験法は、次のとおりである。先ず、検体試料1mLを正確に量り、水/メタノール混液(1:1)3mLを正確に加え、試料溶液とする。以下、レボフロキサシン水和物、純度試験(2)類縁物質(日本薬局方フォーラム Vol.16、No.4(2007)476−477)に従い、操作した。
【0050】
試験例2:純度試験
前記実施例1〜10及び比較例1〜3の各試料に含有される分解生成物の量を求めた。
その結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表中の数値は%表示である。
【0053】
上記の表4に示した結果から、レボフロキサシンの純度特性は、前記安定性の結果と全く同じ傾向であることが判明した。
【0054】
本発明のキノロン系抗菌薬含有液剤は、光安定性に優れ、例えば、レボフロキサシンの場合は、照射光量60万lx・hrの時点で、好ましくは、残存率が84.0%以上のものであり、より好ましくは、残存率が85.3%のものであり、さらに好ましくは86.2%以上のものである。
【0055】
本発明の検体試料を充填した包装体を、UVカットラベルで包装したときは、さらに検体試料が安定化することがわかった。実施例と比較例の試料の対比では、光安定性の結果と同じ傾向であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明が提供するキノロン系抗菌薬含有液体製剤は、光安定性に優れている。また、長期間に亘りその優れた性能を有効に発揮させることができる。
この光に対する安定性は、特にクエン酸塩の配合による緩衝効果、等張化等により、溶液中に溶解されたキノロン系抗菌薬が、光に対して安定して存在するものであり、その安定性は、従来のキノロン系抗菌薬含有液体製剤に比較してよりすぐれたものである。
したがって、より安定性の優れたキノロン系抗菌薬含有液体製剤を提供できる点で、本発明の医療上の有用性は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノロン系抗菌薬、1種又は2種以上のクエン酸塩を水に溶解させ、必要により酸又はアルカリ剤によりこの溶液のpHを5.5〜7.5に調整し、かつ、中性塩により浸透圧比を0.85〜1.20に調整することを特徴とする光安定性の向上したキノロン系抗菌薬含有液体製剤。
【請求項2】
キノロン系抗菌薬に対して少なくとも1種又は2種以上のクエン酸塩を0.2〜0.85wt/v%とすることを特徴とする請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
キノロン系抗菌薬がレボフロキサシンである請求項1又は2に記載の液体製剤。
【請求項4】
液体製剤が点眼用剤である請求項1記載の液体製剤。

【公開番号】特開2010−254584(P2010−254584A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103055(P2009−103055)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(594105224)東亜薬品株式会社 (15)
【Fターム(参考)】