説明

光導波構造体

【課題】大径部と小径部とを備えてなるPCFを、適切な手段或いは部材を用いてアセンブリすることにより、光ファイバその他の光導波路部品と適正に接続することを可能とし、この種のPCFを通じて好適に光を導波させる。
【解決手段】光導波構造体1として、中心軸が光導波方向に沿うスリーブ2の内周側に、光導波方向の一方側が大径部3aとされ且つ他方側が小径部3bとされたフォトニッククリスタルファイバ(PCF)3を固定する。必要に応じて、スリーブ2の内周面2aを基準としてPCF3の大径部3aを位置決め固定し、且つPCF3の小径部3bに光ファイバ5等を接続する。また、スリーブ2の内周に、光ファイバ5等の位置決め基準となる内孔4aが形成された支持体4を固定すると共に、支持体4の内孔4aを基準としてPCF3の小径部3bを位置決め固定し、且つ小径部3bに光ファイバ5等を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波構造体に係り、詳しくは、光導波方向の一方側が大径部とされ且つ他方側が小径部とされたフォトニッククリスタルファイバを用いて構成された光導波構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、フォトニッククリスタルファイバ(以下、単に「PCF」ともいう)は、ファイバの中心に導波コアを有すると共に、その周囲に複数の空孔を例えば蜂の巣状に規則性を持って形成してなる光導波部材である(下記の特許文献1参照)。このPCFは、光通信用途に一般に使用される光ファイバに比して、導波コアを大きく、且つシングルモードで光を導波することができ、而も屈曲等の極度な曲げが生じても光伝達損失が小さい等の種々の利点を有している。
【0003】
そして、PCFのコア径を上述の一般に使用される光ファイバよりも大径にした場合、PCFからその光ファイバに光を導波し或いはその光ファイバからPCFに光を導波する際に、適切且つ正確に導波を行わせるためには、両者の接続端部における径を同等にまたは対応させることが要求される。そこで、例えば下記の特許文献2によれば、PCFの一端側を加熱延伸してその端部のコア径を小径にし、その小径部と光ファイバとの両者の径を整合させることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特表2002−537575号公報
【特許文献2】特開2004−279745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のPCFのコア径及びファイバ径並びにこれらの比率は、任意に設定されるのが通例であり、その用途に応じて適正に設定すればよいのであるが、現存する用途の下においては、上述の小径部を有するPCFの最大ファイバ径(大径部のファイバ径)が、0.125mm程度とされている。したがって、この数値(0.125mm)から大きく掛け離れた大径部及びこれに連なる小径部を有するPCFについては、その用途或いは使用態様が見い出されていないのが実情である。
【0006】
そして、このような実情に関連して、この種の大径部と小径部とを有するPCFを構成要素として、上述の光通信用の光導波構造体を作製するには、どのような組み付け構造とするのが最適であるかという問題が生じる。すなわち、この種のPCFは、軸方向に沿って同径の柱状体ではなく、縮径して大径部から小径部に至る形状であるため、容易にアセンブリを行えるものではない。そのため、この種のPCFを、いかなる手段をもって或いはいかなる部材を用いて、光ファイバやその他の光導波路部品に接続すれば適正な光の導波を行えるかという重要且つ根本的な問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、大径部と小径部とを備えてなるPCFを、適切な手段或いは部材を用いてアセンブリすることにより、光ファイバその他の光導波路部品と適正に接続することを可能とし、この種のPCFを通じて好適に光を導波させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る光導波構造体は、中心軸が光導波方向に沿うスリーブの内周側に、光導波方向の一方側が大径部とされ且つ他方側が小径部とされたフォトニッククリスタルファイバを固定したことに特徴づけられる。この場合、フォトニッククリスタルファイバの大径部の端面は、平面や、凸面であることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、大径部と小径部とを備えてなるPCF(例えば、大径部からその外周面が縮径しつつ小径部に至る形状を呈するPCF)が、スリーブの内周側に固定され、且つPCFの光導波方向がスリーブの軸方向に沿うことになる。これにより、この種のPCFがスリーブ内に適切に組み込まれた状態とすることができ、しかも光ファイバその他の光導波路部品とPCFとを適正に接続することが可能となる。すなわち、スリーブ内にPCFを上記の態様で組み込んでおくことにより、そのスリーブを有効利用して、例えば光ファイバをスリーブの中心軸に芯合わせした状態で固定することができ、且つその光ファイバの先端部にPCFの小径部を正確に合致させた状態で接続することが可能となる。付言すれば、スリーブを有効利用して、PCF及び光ファイバ等を位置決めしておけば、これらの接続を正確且つ容易に行い得ることになり、アセンブリが適正に行われると共に、そのアセンブリに要する作業も簡素化されるという利点を享受できる。この場合、PCFの大径部におけるコア部は広い領域を有しているため、この大径部を通じて光信号または光束が送受信(送受波)される場合、特に受信される場合には、光束が多少位置ずれを来たしていても、支障なく受信することができる。そして、この受信した光束は、PCFの小径部で適正に集光される。尚、必要に応じてキャピラリー等からなる支持体を、スリーブと大径部との間に配設してもよい。
【0010】
このような基本的構成において、スリーブの内周面を基準として、フォトニッククリスタルファイバの大径部で位置決め固定し、且つフォトニッククリスタルファイバの小径部に光ファイバまたはその他の光導波路素子を接続することにより、光導波構造体を形成することができる。ここで、上記の「接続」とは、物理的に接触して接続されている場合のみならず、物理的には非接触であっても光学的に接続されている場合をも含む意味である(以下、同様)。
【0011】
このようにすれば、スリーブの内周面を基準として、PCFの大径部の位置決め固定が行われることから、PCFの大径部のコア部がスリーブの中心軸に対して正確に芯合わせされた状態とすることができる。したがって、PCFの大径部のコア部に対して光束を正確に送受波させることが可能となると共に、大径部のコア部における広い領域が正確に位置決めされることになり、光信号の送受信等をPCFの大径部を通じて適正に行う上で極めて有利となる。そして、光ファイバ等は、PCFの小径部に接続される構成であるから、例えばPCFの大径部を通じて受信した光信号は、その小径部で集光されて光ファイバ等に正確に導波される。尚、このような構成とすれば、PCFについては、それらの大径部を位置決め固定するだけで充分となり、製作時や組み付け時の作業能率が改善される。但し、PCFの小径部については、適正な位置決めがなされていなくてもよいが、キャピラリー等の支持体によって位置決めされている方が好ましい。
【0012】
そして、このような構成を備えた光導波構造体は、光信号の送信器またはそれらの一部として使用することができる。
【0013】
このようにすれば、上記の光導波構造体を、例えば光信号の送信器(もしくはその一部)として使用した場合には、PCFの大径部における広い領域の正確な位置で光信号を受けて、その小径部で集光させた後に光ファイバ等に正確に光導波を行うことができるという利点が得られる。
【0014】
一方、上記のようにスリーブの内周側にフォトニッククリスタルファイバを固定するという基本的構成において、スリーブの内周に、光ファイバその他の光導波路素子の位置決め基準となる内孔が形成された支持体を固定すると共に、この支持体の内孔を基準として、フォトニッククリスタルファイバの小径部を位置決め固定し、且つその小径部に光ファイバその他の光導波路素子を接続することにより、光導波構造体を形成することができる。
【0015】
このようにすれば、スリーブの内周に固定された支持体の内孔を基準として、PCFの小径部の位置決め固定が行われることから、光ファイバその他の光導波路素子とPCFとの相互間で極めて正確に光信号の受け渡しを行うことが可能となる。すなわち、光ファイバ等は、PCFの小径部に接続される構成であるから、スリーブ内におけるその接続部において、例えば光ファイバのコア径と、PCFの小径部のコア径とを同一もしくは対応したものとすることができる。しかも、スリーブ内の支持体の内孔は、光ファイバ等の位置決め基準となるものである。したがって、PCFの小径部を、スリーブ内の支持体の内孔を基準として位置決め固定しておけば、PCFの小径部のコア部と、光ファイバ等のコア部等とを正確に合致させることができ、これによりPCFの大径部から入射した光信号を、その小径部で集光させて正確に光ファイバ等に導波させることが可能となる。尚、このような構成とすれば、PCFについては、その小径部を適正に位置決め固定するだけで充分となり、製作時や組み付け時の作業能率が改善される。但し、PCFの大径部については、適正な位置決めがなされていなくてもよいが、位置決めされている方が好ましい。
【0016】
そして、このような構成を備えた光導波構造体も、光信号の送信器またはそれらの一部として使用することができる。
【0017】
また、このようにフォトニッククリスタルファイバの大径部をスリーブの内周面を基準として位置決め固定する構成において、フォトニッククリスタルファイバを一対備え、この一対のフォトニッククリスタルファイバにおけるそれぞれの大径部を離隔して対向させて配置することもできる。
【0018】
このようにすれば、スリーブの内周面を基準として、一対のPCFの大径部が位置決め固定されていることから、一方のPCFの大径部と、他方のPCFの大径部との相互間で極めて正確に光信号の発信・受信を行うことが可能となる。すなわち、一対のPCFにおける対向する大径部の相互間で光信号を正確に発信・受信することが要求される光導波構造体である場合に、それらのPCFの大径部が同一の面(スリーブの内周面)を基準として位置決め固定されるため、それぞれの大径部の相対位置関係が正確となり、相互間での光信号の受け渡しが正確且つ確実化される。
【0019】
このようにスリーブの内周側に一対のPCFを配置してなる光導波構造体は、コリメータまたはその一部として使用することができる。
【0020】
このようにすれば、一対のPCFにおけるスリーブの内周面を基準として正確に位置決めされた対向する各大径部の相互間隙間でコリメート光が適正に発信・受信されることになり、高性能のコリメータを得ることができる。尚、この一対のPCFの各大径部の相互間隙間には、必要に応じて、フィルタや光アイソレータ等が介設される。
【0021】
上記の光導波構造体を、例えばコリメータ(もしくはその一部)として使用した場合には、PCFの大径部における広い領域で光信号を受ける際にその光信号の位置が多少ずれていても、その小径部が正確に位置決めされているので、光信号は小径部で適正に集光されて導波ロス等を生じることなく光ファイバ等に確実且つ正確に導波が行われるという利点が得られる。
【0022】
上記の全ての光導波構造体において、フォトニッククリスタルファイバの大径部の直径が、0.5〜2.5mmであり、且つその小径部の直径が、0.05〜0.25mmであることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、大径部と小径部とを有する構成のPCFとしては、上述のような用途或いは使用態様が見い出されたことから、大径部の直径(ファイバ径)及びコア径が従来よりも大幅に大きくなり、広い領域で光信号の送受信が可能となる。また、PCFの小径部の直径(ファイバ径)を上記の数値範囲とすれば、その小径部の直径と光ファイバの直径とを同一にすることができ、適正な光導波を行うことが可能となる。
【0024】
また、上記の全ての光導波構造体において、フォトニッククリスタルファイバの小径部の端部に、光ファイバをPC接続してもよく、或いは光ファイバを融着接続してもよい。
【0025】
このようにすれば、特にPCFの小径部の直径を既述のように光ファイバの直径と同一とすることにより、両者の接続部を最良の形態とすることができる。
【0026】
更に、上記の全ての光導波構造体において、フォトニッククリスタルファイバは、加熱延伸により形成することができる。
【0027】
このようにすれば、加熱延伸という手法を用いて、上述のように大径部は従来よりも大きく且つ小径部は光ファイバと同径のPCFを容易に製作することが可能となる。
【0028】
また、上記の全ての光導波構造体において、例えば図8に示すように、フォトニッククリスタルファイバの外周面を覆設部で覆い且つその覆設部の外周面が大径部側から小径部側に向って連続的に径が小さくなるように構成してもよい。
【0029】
このような構成とするには、加熱延伸による手法を採用することもできるが、その他の手法、例えば軟化状態にあるガラスや樹脂をPCFの外周面に塗布したり、或いは型成形を利用してもよい。このような構成によれば、小径部側の端部の径をコア径に比べて大きくできるので、PC接続するなどして光ファイバ等との接続を良好に行わせることができるという利点を享受し得る。
【0030】
更に、上記の全ての光導波構造体において、例えば図9に示すように、フォトニッククリスタルファイバの外周面を覆設部により覆って柱状体となるように構成してもよい。
【0031】
このような構成とするための手法及びこれによる利点は、既述の覆設部を形成した場合と同様であるので、便宜上、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0032】
以上のように本発明によれば、大径部及び小径部を有するPCFが、スリーブの内周側に固定され、且つPCFの光導波方向がスリーブの軸方向に沿っていることから、PCFがスリーブ内に適切に組み込まれた状態とすることができると共に、光ファイバその他の光導波路部品と適正に接続することが可能となる。したがって、この種のPCFについてアセンブリが適正に行われると共に、そのアセンブリに要する作業も簡素化されるという利点を享受できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光導波構造体であって、具体的には光通信用の送信器またはコリメータとして使用される光導波構造体を例示している。同図に示すように、この光導波構造体1は、中心軸Xが光導波方向に沿うスリーブ2の内周側に、光導波方向の一方側が大径部3aとされ且つ他方側が小径部3bとされたPCF3を固定してなる。この場合、スリーブ2は、好ましくはガラスまたはセラミックで形成されるが、樹脂や金属等で形成することもできる。
【0035】
また、PCF3は、加熱延伸により形成されたガラス成形体であって、図2に示すように、中心軸X上にコア部3xが形成され、その周囲に複数の空孔3yが蜂の巣状に規則性を持って形成されている。そして、このPCF3の大径部3aの直径(ファイバ径)は、0.5〜2.5mm(具体的には、1mm、1.25mm、1.8mm、2.5mm)であり、且つその小径部3bの直径(ファイバ径)は、0.05〜0.25mm(具体的には、0.08mm、0.125mm)である。尚、図示例のPCF3は、大径部3aの端面3Aが平面とされているが、光信号の送受信の有利性を考慮して、この大径部3aの端面3Aは凸面とされていることが好ましい。
【0036】
更に、図1に示すように、PCF3の大径部3aは、スリーブ2の内周面2aを基準として位置決め固定されている。すなわち、このPCF3の大径部3aは、スリーブ2の内周面2aに密に嵌合された状態で位置決め固定され、これによりスリーブ2の中心軸Xと、PCF3の大径部3aの中心(コア部3xの中心)とが合致している。そして、このPCF3の小径部3bの端部3cには,光ファイバ5の端部5cがPC接続または融着接続されている。したがって、PCF3の大径部3aの端面3Aにおけるコア部3xは、スリーブ2の中心軸X上に高精度に位置決めされた状態にある。
【0037】
そして、PCF3の大径部3aのみが正確に位置決めされていることを要する送信器またはコリメータにあっては、小径部3bについてまでも正確な位置決め或いはスリーブ2に対する固定が必ずしも必要ではない。
【0038】
この実施形態では、PCF3の小径部3bは、以下に示すようにしてスリーブ2に固定支持されている。すなわち、図1に示すように、スリーブ2の内周には、中心部(中心軸X上)に内孔4aを有する支持体(ガラスキャピラリやセラミック支持体等)4が固定されており、この支持体4の内孔4aは、光ファイバ5の位置決め基準となるように構成されている。具体的には、例えば図外のフェルールに光ファイバ5を挿入固定し且つそのフェルールをスリーブ2の内周に嵌合させた場合には、光ファイバ5の中心と支持体4の内孔4aの中心とが同軸上に配置されるように設定されている。
【0039】
この場合、PCF3の小径部3bは、支持体4の内孔4aを基準として位置決め固定されている。すなわち、この実施形態では、支持体4の内孔4aに、PCF3の小径部3bが密に嵌合することにより、PCF3の小径部3bが内孔4aを基準として正確(高精度)に位置決め固定されている。したがって、PCF3の小径部3bの端面におけるコア部は、スリーブ2の中心軸X上に高精度に位置決めされた状態にある。尚、光ファイバ5が、フェルールの中心軸上に挿入された状態で固定される場合には、フェルールがスリーブ2の内周に嵌合された状態で支持体4の端面に当接することになる。
【0040】
そして、PCF3の小径部3bのみが正確に位置決めされていることを要する送信器またはコリメータにあっては、図示のように大径部3aについてまでも正確な位置決め或いはスリーブ2に対する固定が必ずしも必要ではない。
【0041】
尚、スリーブ2は、上述のように単一のものである必要はなく、例えば図3に示すように、PCF3の小径部3bの位置決め用の支持体4が固定される第1スリーブ2Aと、この第1スリーブ2Aの先端部を覆うように嵌合固定され且つPCF3の大径部3aが内蔵される第2スリーブ2Bとの2個(或いは3個以上)で構成してもよい。この場合には、例えば第1スリーブ2Aをガラスやセラミックで形成する一方、第2スリーブ2Bを金属等で形成するなど、種々のバリエーションが可能である。
【0042】
また、PCF3の小径部3bと光ファイバ5との接続部の位置も、上記の位置に限定されるわけではなく、例えば図3に示すように、支持体4の内孔4aに光ファイバ5を挿通固定して、支持体4のPCF3側の端面近傍でその小径部3bの端面3cと光ファイバ5の端面5cとを接続するようにしてもよい。
【0043】
更に、支持体4も、上述のようにPCF3の小径部3bとして軸方向に同一径とされた部位のみを保持するものである必要はなく、例えば図4に示すように、PCF3の小径部3bとして軸方向に漸次縮径するテーパー部位3dをも含んで保持する支持体4であってもよい。
【0044】
以上のような構成を備えた光導波構造体1によれば、大径部3aからその外周面が湾曲しつつ小径部3bに至る複雑な形状を呈するPCF3が、スリーブ2の内周面aに嵌合固定され、且つPCF3の光導波方向がスリーブ2の軸方向に沿っていることから、PCF3がスリーブ2内に適切な状態で組み込まれ、しかも光ファイバ5への接続が適正に行われ得ることになる。換言すれば、スリーブ2を有効利用してPCF3を組み込むことにより、PCF3と光ファイバ5とをスリーブ2の中心軸Xに対して適正な状態で固定することが可能となる。これにより、PCF3とこれに接続される光ファイバ5(及びその他の光導波素子)との接続を正確且つ容易に行い得ることになり、アセンブリが適正に行われると共に、そのアセンブリに要する作業も簡素化されるという利点を享受できる。
【0045】
そして、以上のような構成を備えた光導波構造体1が、PCF3の大径部3aのみが正確に位置決めされている場合には、PCF3の大径部3aのコア部を、スリーブ2の中心軸Xに対して正確に芯合わせした状態とする。これにより、PCF3の大径部3aのコア部に対して光信号を正確に送受信させることが可能となると共に、大径部3aのコア部における広い領域が正確に位置決めされることを有効利用して、光信号の送受信等をPCF3の大径部3aを通じて適正に行うことが可能となる。そして、光ファイバ5は、PCF3の小径部3bに接続されているため、例えばPCF3の大径部3aを通じて受信した光信号は、その小径部3bで集光されて光ファイバ5に正確に導波され、また光ファイバ5から小径部3bを通じてPCF3に入射された光は、大径部3aからコリメータ光として正確に送信される。また、PCF3の別異に応じて光学特性にバラツキがあっても、光信号がPCF3の大径部3a側から小径部3bに至った時点においては、コア径が小さい上にその位置決めが正確になされているため、上記のバラツキによる悪影響を受ける確率が低くなる。
【0046】
この場合の具体的使用例として、図5に示すように、第1スリーブ2Cと第2スリーブ2Dとを同軸上に離隔して配置すると共に、この2個のスリーブ2C、2Dの内周面2Ca、2Daを基準として、2個のPCF3の大径部3aをそれぞれ位置決め固定する。そして、第1スリーブ2Cと第2スリーブ2Dとの相互間の隙間2Yに、フィルタや光アイソレータからなる光学部品8を介設する。このような構成によれば、2個のPCF3の大径部3aが相対的に正確に位置決めされることから、一方のPCF3の大径部3aから正確に送出されたコリメータ光が、光学部品8を介して、他方のPCF3の大径部3aによって正確に受光される。したがって、PCF3の大径部3aの位置に狂いが生じていることによる不当な導波ロスが生じ難くなり、高性能の送信器と受信器とを組み合わせてなる光導波機器(後述するコリメータと同種の機器)を得ることが可能となる。
【0047】
一方、以上のような構成を備えた光導波構造体1が、PCF3の小径部3aのみが正確に位置決めされている場合には、スリーブ2の内周に固定された支持体4の内孔4aを基準として、PCF3の小径部3bの位置決め固定を行い、且つPCF3の小径部3bのコア部と、光ファイバ5のコア部とを正確に合致させる。これにより、PCF3の大径部3aから入射した光信号は、その小径部3bで集光して正確に光ファイバ5に導波される。その場合に、PCF3の大径部3aにおけるコア部は、広い領域を有しているため、大径部3aを通じて入射される光信号(光束)が多少位置ずれを起こしても、良好に光信号を入射させることができ、しかもこの光信号はPCF3の小径部3bで集光されて光ファイバ5に正確に導波される。
【0048】
この場合の具体的使用例として、図6に示すように、スリーブ2の内周側に、光ファイバ5が挿入固定されたフェルール7を嵌合させると共に、スリーブ2の軸方向一端側に連設されたホルダ9内に光源6を配設し、フェルール7と光源6との間にPCF3を介設する。このような構成によれば、光源6からの光をPCF3で受光する際には、PCF3の大径部3aにおける広い領域のコア部で受光が行われるため、光源6からの光束の多少のズレに拘わらず、支障なく受光を行うことができる。そして、PCF3の大径部3aで受けられた光は、正確に位置決め固定されたPCF3の小径部3bから、スリーブ2内のフェルール7に挿入固定されている光ファイバ5に光導波ロス等を生じることなく適正に伝搬される。また、これにより、従来使用されていたレンズを不要とできるが、もちろんレンズをホルダ9に固定してPCF3と光源6との間に配設してもよい。
【0049】
図7は、本発明の第2実施形態に係る光導波構造体であって、具体的には光通信用のコリメータとして使用される光導波構造体を例示している。同図に示すように、この光導波構造体1は、上述のPCF3と同一の構造のものを一対備え、この一対のPCF3のそれぞれの大径部3aが離隔して対向するように単一のスリーブ2の内周側に配置したものである。そして、これらのPCF3のそれぞれの大径部3aは、スリーブ2の内周面2aを基準として位置決め固定されている。すなわち、これらの大径部3aは、スリーブ2の内周面2aに適正に嵌合された状態で高精度に位置決め固定されている。また、これらの大径部3aの相互間の隙間2Xには、フィルタや光アイソレータからなる光学部品8が介設されると共に、それぞれの小径部3bには、光ファイバまたはその他の光導波素子(例えば3次元フォトニック結晶や、PLC)が接続されている(図示略)。尚、この第2実施形態に係る光導波構造体1において、上述の第1実施形態に係る光導波構造体1と共通の構成要件については、同一符号を使用してその詳細な説明を省略する。
【0050】
この第2実施形態に係る光導波構造体1によれば、一方のPCF3の大径部3aから送出されたコリメート光が、他方のPCF3の大径部3aで受けられることになるが、双方の大径部3aが正確に相対位置決めされていることから、コリメート光の送受信が適正に行われる。すなわち、一方のPCF3の大径部3aにおけるコア部と、他方のPCF3の大径部3aにおけるコア部とが、正確な姿勢及び正確な径方向位置で対向配置されていることから、両者のコア部の相互間でコリメート光が適正に発信・受信される。尚、一方のPCF3の大径部3aに連なる小径部3b、及び他方のPCF3の大径部3aに連なる小径部3bは何れも、大径部3aと同等に位置決めされる必要はないが、それらを同等に位置決めするようにしても差し支えない。
【0051】
以上の実施形態では、PCF3の外周面が裸面(非被覆面)とされているが、例えば図8に示すように、PCF3の外周面に樹脂やガラス等からなる覆設部10を被覆し、この覆設部10の外周面が大径部3a側から小径部3b側に向って連続的に径が小さくなるように形成してもよい。この覆設部10の最大外径は、PCF3の大径部3aの最大外径(端部の径)と同一もしくはそれよりも小径とされ、またPCF3の小径部3bの端部まで覆設部10が覆った状態となっている。そして、このような構造のPCF3は、覆設部10により覆われた状態で、図1及び図3〜図7に示すPCF3と同様の態様となるようにスリーブの内部に収納される。
【0052】
更に、例えば図9に示すように、PCF3の外周面に樹脂やガラス等からなる覆設部11を被覆し、この覆設部11が柱状体(例えば円柱形状)をなすように形成してもよい。この場合にも、覆設部11の最大外径は、PCF3の大径部3aの最大外径(端部の径)と同一もしくはそれよりも小径とされ、またPCF3の小径部3bの端部まで覆設部11が覆った状態となっている。そして、このような構造のPCF3は、覆設部11により覆われた状態で、図1及び図3〜図7に示すPCF3と同様の態様となるようにスリーブの内部に収納される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光導波構造体を示す縦断側面図である。
【図2】前記第1実施形態に係る光導波構造体の構成要素であるフォトニッククリスタルファイバ(PCF)を示す斜視図である。
【図3】前記第1実施形態に係る光導波構造体の一の変形例を示す縦断側面図である。
【図4】前記第1実施形態に係る光導波構造体の他の変形例を示す縦断側面図である。
【図5】前記第1実施形態に係る光導波構造体が使用された光学機器の一例を示す縦断側面図である。
【図6】前記第1実施形態に係る光導波構造体が使用された光学機器の他の例を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る光導波構造体を示す縦断側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る光導波構造体の構成要素であるフォトニッククリスタルファイバ(PCF)が覆設部により覆われた一例を示す縦断側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る光導波構造体の構成要素であるフォトニッククリスタルファイバ(PCF)が覆設部により覆われた他の例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 光導波構造体
2 スリーブ
2A スリーブ
2B スリーブ
2C スリーブ
2D スリーブ
3 フォトニッククリスタルファイバ(PCF)
3a 大径部
3b 小径部
4 支持体
4a 支持体の内孔
X 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が光導波方向に沿うスリーブの内周側に、光導波方向の一方側が大径部とされ且つ他方側が小径部とされたフォトニッククリスタルファイバを固定したことを特徴とする光導波構造体。
【請求項2】
前記スリーブの内周面を基準として、前記フォトニッククリスタルファイバの大径部を位置決め固定し、且つ前記フォトニッククリスタルファイバの小径部に光ファイバまたはその他の光導波路素子を接続したことを特徴とする請求項1に記載の光導波構造体。
【請求項3】
前記スリーブの内周に、光ファイバその他の光導波路素子の位置決め基準となる内孔が形成された支持体を固定すると共に、該支持体の内孔を基準として、前記フォトニッククリスタルファイバの小径部を位置決め固定し、且つその小径部に光ファイバその他の光導波路素子を接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波構造体。
【請求項4】
光信号の送信器またはそれらの一部であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項5】
前記フォトニッククリスタルファイバを一対備え、この一対のフォトニッククリスタルファイバにおけるそれぞれの大径部を離隔して対向させて配置したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項6】
コリメータまたはその一部であることを特徴とする請求項5に記載の光導波構造体。
【請求項7】
前記フォトニッククリスタルファイバの大径部の直径が、0.5〜2.5mmであり、且つその小径部の直径が、0.05〜0.25mmであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項8】
前記フォトニッククリスタルファイバの小径部の端部に、光ファイバがPC接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項9】
前記フォトニッククリスタルファイバが、加熱延伸により形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項10】
前記フォトニッククリスタルファイバの外周面が覆設部により覆われて該覆設部の外周面が大径部側から小径部側に向って連続的に径が小さくなっていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の光導波構造体。
【請求項11】
前記フォトニッククリスタルファイバの外周面が覆設部により覆われて柱状体をなしていることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の光導波構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−9067(P2008−9067A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178386(P2006−178386)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】