説明

光導波路の製法

【課題】成形型を用いてオーバークラッド層を形成する場合に、その成形型を位置決めする際に利用するアライメントマークを、CCDカメラ等の認識装置により容易に認識できるようにする光導波路の製法を提供する。
【解決手段】基板10上に形成したアンダークラッド層1の上面に、コア2とアライメントマークとをフォトリソグラフィ法により突出形成し、そのアライメントマークを目印として位置決めされる成形型を用いてオーバークラッド層を形成する光導波路の製法において、上記アライメントマークの形成に、フォトマスク20として、アライメントマーク形成用の開口パターン23が、開口部23aと、この開口部23aの周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域23bとからなるものを用い、アライメントマークの周側面を傾斜面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,位置センサ,その他一般光学で広く用いられる光導波路の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、通常、アンダークラッド層の上面に、光の通路であるコアを所定の突出パターンに形成し、そのコアを被覆した状態で、オーバークラッド層を形成して構成されている。このような光導波路を作製する際には、通常、ステンレス箔等の基板上に、感光性樹脂組成物等を形成材料として、フォトリソグラフィ法等により、アンダークラッド層,コア,オーバークラッド層が、この順で積層形成される。
【0003】
上記光導波路をタッチパネルの触れ位置センサとして用いる場合等には、オーバークラッド層における光出射部および光入射部をレンズ形状に形成することがあるが、このように、オーバークラッド層を特定の形状にする場合には、オーバークラッド層の形成に、成形型が用いられる。
【0004】
上記成形型を用いる光導波路の製法としては、例えば、その成形型として、オーバークラッド層の表面形状に対応する型面を有する凹部が形成されている成形型を準備する。そして、基板上に、アンダークラッド層およびコアを順に形成した後、そのコアを被覆するよう、オーバークラッド層形成用の感光性樹脂組成物等を塗布し、その塗布層を上記成形型でプレスしてオーバークラッド層の形状に成形する。その状態で、その成形された上記塗布層の部分を硬化させ、オーバークラッド層に形成する(例えば、特許文献1参照)。他の例では、上記成形型として、上記凹部に連通する貫通孔が形成されたものを準備し、その成形型の上記凹部の開口面をアンダークラッド層の上面に密着させ、その状態で、上記凹部内にオーバークラッド層形成用の感光性樹脂組成物等を上記貫通孔から注入した後、硬化させ、オーバークラッド層に形成する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
これらの製法において、上記成形型の位置決めは、通常、アンダークラッド層の上面に突出形成したアライメントマークを基準にして行われる。そのアライメントマークは、通常、コア形成時にフォトリソグラフィ法によりコア形成用の材料で形成される。そして、上記成形型の位置決め精度の向上およびタクトタイムの短縮のために、上記アライメントマークをCCDカメラで自動認識することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−203431号公報
【特許文献2】特開2008−281654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記アライメントマークをCCDカメラで自動認識して上記成形型の位置決めしても、コアに対するオーバークラッド層のアライメント精度が低下したり、成形型の位置決めに時間を要したりすることがあった。このようにコアに対するオーバークラッド層のアライメント精度が低下すると、オーバークラッド層における光出射部から出射する光の強度が低下し、そのような光導波路をタッチパネルの触れ位置センサとして用いると、センサ性能が低下する。また、上記のように成形型の位置決めに時間を要すると、光導波路の生産性が低下する。
【0008】
そこで、本発明者らが上記アライメント精度低下等の原因を追求した結果、上記アライメントマークがCCDカメラで自動認識し難い場合があることがわかった。すなわち、上記アライメントマークは、フォトリソグラフィ法により、例えば、図6(a)に示すように、円柱形状に形成され、その円柱形状のアライメントマーク8を、真上から上記CCDカメラで撮影し、上記円柱形状のアライメントマーク8の頂面8aの円部分を自動認識するようになっているが、そのCCDカメラによる自動認識の際の照明が同軸落射照明等、上記円柱形状のアライメントマーク8の周側面8bに対する照明角度が0°になる照明(真上かちの照明)の場合、上記CCDカメラの画像では、図6(b)に示すように、上記円柱形状の頂面8aの円部分とその周囲の部分(アンダークラッド層1の上面1a)とのコントラストが明瞭にならないことがわかった。この場合、上記円部分の周端縁(周囲の部分との境界線)8cが不鮮明となるため、誤認識が発生したり、認識に時間を要したりし、それが原因で、上記アライメント精度低下等が起こることがわかった。このような点で改善の余地があった。なお、図6(a)において、符号2はコアであり、符号10は基板である。
【0009】
本発明は、このような知見に鑑みなされたもので、成形型を用いてオーバークラッド層を形成する場合に、その成形型を位置決めする際に利用するアライメントマークを、CCDカメラ等の認識装置により容易に認識できるようにする光導波路の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の光導波路の製法は、アンダークラッド層の上面に、コアとアライメントマークとをフォトリソグラフィ法により突出形成し、そのアライメントマークを目印としてオーバークラッド層形成用の成形型を位置決めしオーバークラッド層を形成する工程を備えた光導波路の製法であって、上記フォトリソグラフィ法に用いるフォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンが、開口部と、この開口部の周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域とからなるものを用い、上記透光量減少領域を透過する照射線の減少に起因して、アライメントマークの周側面を傾斜面に形成し、認識装置によるアライメントマークの認識性を高めるという構成をとる。
【0011】
本発明者らは、成形型を用いてオーバークラッド層を形成する光導波路の製法において、その成形型を位置決めする際に利用するアライメントマークの、CCDカメラ等の認識装置による認識性を高めるべく、先の知見に基づき、アライメントマークの周側面を傾斜面に形成することを着想し、その傾斜面を形成する方法について研究を重ねた。その結果、アライメントマークの形成に用いるフォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンが、開口部と、この開口部の周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域とからなるものを用いると、上記透光量減少領域を透過する照射線により形成される、アライメントマークの部分が、傾斜した周側面に形成され、そのアライメントマークが、例えば、円錐台状になることを突き止めた。そして、その傾斜した周側面を有するアライメントマークは、CCDカメラ等の認識装置により容易に認識できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、フォトマスクの上記透光量減少領域を透過する照射線は、強度が弱められるため、その強度の弱い照射線により形成される、アライメントマークの周側面は、傾斜面に形成される。そして、CCDカメラ等の認識装置により、上記アライメントマークを真上から自動認識すると、その際の照明が、同軸落射照明であっても他の照明角度の照明であっても、上記アライメントマークの上記傾斜部分(周側面)は、アライメントマークの水平部分(頂面等)およびアンダークラッド層の水平部分(上面)と明瞭なコントラストをつけた状態で、上記認識装置の画像に映し出される。そのため、その画像におけるアライメントマークの周端縁(周囲の部分との境界線)が鮮明となり、上記アライメントマークは、上記認識装置により容易に認識できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光導波路の製法では、突出状のアライメントマークの形成に用いるフォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンが、開口部と、この開口部の周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域とからなるものを用いるため、アライメントマークの周側面を、傾斜面に形成し、全体を、例えば、円錐台状にすることができる。そのため、上記アライメントマークをCCDカメラ等の認識装置により認識する際には、アライメントマークの上記円錐台状の傾斜面部分と、アライメントマークの水平部分(頂面等)およびアンダークラッド層の水平部分(上面)とのコントラストが明瞭になり、上記アライメントマークを容易に認識することができる。その結果、アライメントマークの誤認識も認識に時間を要することも防止され、コアに対するオーバークラッド層のアライメント精度に優れた光導波路を効率よく生産することができる。
【0014】
特に、上記透光量減少領域が、多数の微小開口部が所定間隔をあけて形成されてなる領域となっている場合には、上記透光量減少領域における開口率を、容易に所定値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の光導波路の製法の一実施の形態の一部分を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)は、上記光導波路の製法において、コアおよびアライメントマークを形成する際に用いるフォトマスクのアライメントマーク形成部分を拡大して模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)の透光量減少領域部分を拡大して模式的に示す平面図である。
【図3】(a)〜(c)は、上記図1に示す工程に続く光導波路の製法の一部分を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)は、アライメントマークの認識画像を模式的に示す説明図であり、(b)〜(c)は、上記図3に示す工程に続く光導波路の製法の一部分を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の光導波路の製法の他の実施の形態の一部分を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)は、従来の光導波路の製法におけるコアおよびアライメントマーク形成工程を模式的に示す説明図であり、(b)は、アライメントマークの認識画像を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0017】
図1〜図4は、本発明の光導波路の製法の一実施の形態を示している。この実施の形態の光導波路の製法は、要約すると、まず、基板10上に形成したアンダークラッド層1の上面に、コア2およびアライメントマーク3を形成するための感光性樹脂層2Aを形成する〔図1(a)〜(b)参照〕。ついで、コア形成用の開口パターン22とアライメントマーク形成用の特徴的な開口パターン23とが形成されているフォトマスク20を用いたフォトリソグラフィ法により〔図1(c)〜図2(b)参照〕、上記感光性樹脂層2Aからコア2およびアライメントマーク3を形成する〔図3(a)参照〕。つぎに、これらコア2およびアライメントマーク3を被覆した状態で、オーバークラッド層4の形成材料からなる塗布層4Aを形成する〔図3(b)参照〕。そして、CCDカメラ等で自動認識した上記アライメントマーク3を目印として、成形型30を位置決めし〔図3(c)〜図4(a)参照〕、その位置決め状態で、上記塗布層4Aを上記成形型30でプレスしてオーバークラッド層4の形状に成形する〔図4(b)参照〕。その後、脱型し、オーバークラッド層4を得る〔図4(c)参照〕。このようにして、上記基板10上に、光導波路を作製する。
【0018】
上記光導波路の製法における特徴は、上記アライメントマーク3の形成に用いるフォトマスク20の、アライメントマーク形成用の開口パターン23が、開口部23aと、この開口部23aの周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域23bとからなっていることである〔図1(c),図2(a),(b)参照〕。
【0019】
すなわち、上記アライメントマーク形成用の特徴的な開口パターン23が形成されたフォトマスク20を用いることにより、そのフォトマスク20の上記透光量減少領域23bを透過する照射線Lの強度が弱められ〔図1(c)参照〕、その強度の弱い照射線Lにより形成されるアライメントマーク3の部分を、傾斜した周側面3bに形成する〔図3(a)参照〕。これにより、CCDカメラ等の認識装置を用いて上記アライメントマーク3を認識する際には、アライメントマーク3の上記傾斜面部分(周側面3b)と、アライメントマーク3の水平部分(頂面3a等)およびアンダークラッド層1の水平部分(上面1a)とのコントラストが明瞭になり、上記アライメントマーク3の認識性を高めることができる〔図3(c)参照〕。
【0020】
そして、上記のようにアライメントマーク3の認識性を高めることにより、アライメントマーク3の誤認識が防止され、オーバークラッド層4をコア2に対して正確な位置に形成することができる〔図4(c)参照〕。また、上記のようにアライメントマーク3の認識性を高めることにより、成形型30の位置決めが短時間でできるようになり、光導波路の生産性を向上させることができる。
【0021】
上記光導波路の製法について、以下に詳しく説明する。
【0022】
まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基板10〔図1(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、ガラス,ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂,ステンレス等の金属,石英,シリコン等があげられる。基板10の厚みは、例えば、20μm〜1.5mmの範囲内に設定される。
【0023】
ついで、図1(a)に示すように、上記基板10の上面に、アンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、熱硬化性樹脂組成物または感光性樹脂組成物があげられる。上記熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、その熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、それを加熱することにより、アンダークラッド層1に形成する。一方、上記感光性樹脂組成物を用いる場合は、その感光性樹脂組成物を塗布した後、それを紫外線等の照射線で露光することにより、アンダークラッド層1に形成する。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜60μmの範囲内に設定される。
【0024】
つぎに、図1(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の上面に、コア2およびアライメントマーク3〔図3(a)参照〕の形成材料である感光性樹脂組成物を塗布し、その感光性樹脂層2Aを形成する。
【0025】
そして、図1(c)に示すように、上記感光性樹脂層2Aの上方に、コア2およびアライメントマーク3のパターンに対応する開口パターン22,23が形成されているフォトマスク20を配置し、このフォトマスク20を介して上記感光性樹脂層2Aを紫外線等の照射線Lにより露光する。
【0026】
ここで、上記フォトマスク20は、先に述べたが、その一部分を拡大した平面図を図2(a)に示すように、アライメントマーク形成用の開口パターン23が、開口部23aと、この開口部23aの周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域23bとからなっている。このような特徴的なアライメントマーク形成用の開口パターン23が形成された上記フォトマスク20を用いることが、本発明の大きな特徴の一つである。
【0027】
なお、この実施の形態では、上記アライメントマーク形成用の開口パターン23の開口部23aが、円形に形成され、その開口部23aの周囲の上記透光量減少領域23bが、円環状に形成されている。また、上記透光量減少領域23bは、この実施の形態では、さらに拡大した平面図を図2(b)に示すように、多数の四角形の微小開口部23cが所定間隔をあけて形成されている。そして、この実施の形態では、上記透光量減少領域23bでの開口率が、上記範囲内の所定の一定値に設定されている。
【0028】
このように上記フォトマスク20を介して露光した後、図3(a)に示すように、現像液を用いて現像を行うことにより、上記感光性樹脂層2Aにおける未露光部分を溶解させて除去し、残存した感光性樹脂層2Aをコア2およびアライメントマーク3のパターンに形成する。その後、その残存感光性樹脂層2Aの表面等に残っている現像液を加熱処理により除去し、上記残存感光性樹脂層2Aをコア2およびアライメントマーク3に形成する。
【0029】
このようにして形成された上記アライメントマーク3の周側面3bは、上記フォトマスク20の透光量減少領域23bを透過して強度が弱められた照射線Lにより形成されるため、傾斜面に形成される。その結果、上記アライメントマーク3は、円錐台状に形成される。このように、上記特徴的なアライメントマーク形成用の開口パターン23が形成されたフォトマスク20を用いることにより、アライメントマーク3の周側面3bを傾斜面に形成することが、本発明の大きな特徴の一つである。
【0030】
ここで、上記フォトマスク20の透光量減少領域23bは、上記のように、多数の微小開口部23cが所定間隔をあけて形成されていることにより、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定されている。それは、上記開口率が上記範囲を外れると、アライメントマーク3の周側面3bを傾斜面に形成することができず、そのため、後のアライメントマーク認識工程において、明瞭なコントラストが得られず、アライメントマーク3の認識性が改善されないからである。
【0031】
このようにして上記コア2およびアライメントマーク3を形成した後、図3(b)に示すように、上記コア2およびアライメントマーク3を被覆するよう、オーバークラッド層4の形成材料である樹脂組成物を塗布し、その塗布層4Aを形成する。その形成材料としては、アンダークラッド層1と同様、熱硬化性樹脂組成物または感光性樹脂組成物があげられる。また、つぎの工程では、上記塗布層4Aを透して、アライメントマーク3を真上からCCDカメラ等の認識装置で自動認識する必要があるため、上記塗布層4Aは透光性を有している。
【0032】
そして、図3(c)に示すように、オーバークラッド層4の表面形状に対応する型面を有する凹部31が形成されている成形型30を準備する。この実施の形態では、上記成形型30の型面のうち、コア2の先端部に対応する部分が、レンズ曲面31aに形成されている。なお、つぎに説明するように、上記塗布層4Aを硬化させる処理は、オーバークラッド層4の形成材料によって異なっているため、その形成材料として感光性樹脂組成物を用いる場合は、上記成形型30として、露光用の照射線を透過させる必要性から、透光性を有する、例えば、石英製のものが用いられ、上記形成材料として熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、例えば、石英製,ポリマー製,金属製のものが用いられる。
【0033】
ついで、上記塗布層4Aを透して、アライメントマーク3を真上からCCDカメラ等の認識装置で自動認識させ、その自動認識させた上記アライメントマーク3の位置を基準に、上記成形型30を位置決めする。
【0034】
ここで、上記CCDカメラ等の認識装置による上記アライメントマーク3の自動認識では、その際の照明が、同軸落射照明であっても他の照明角度の照明であっても、図4(a)に示すように、上記アライメントマーク3の上記傾斜部分(周側面3b)は、アライメントマーク3の水平部分(頂面3a等)およびアンダークラッド層1の水平部分(上面1a)と明瞭なコントラストをつけた状態で、上記認識装置の画像に映し出される。そのため、その画像におけるアライメントマーク3の周端縁(周囲の部分との境界線)3cが鮮明となり、上記アライメントマーク3は、上記認識装置により容易に認識できるようになる。このように、アライメントマーク3の周側面3bを傾斜面に形成することにより、アライメントマーク3をCCDカメラ等の認識装置により認識し易くすることが、本発明の大きな特徴の一つである。
【0035】
そして、上記のように成形型30を位置決めした状態で、図4(b)に示すように、上記塗布層4Aを上記成形型30でプレスしてオーバークラッド層4の形状に成形する。その状態で、その成形された上記塗布層4Aの部分を硬化させ、オーバークラッド層4に形成する。上記塗布層4Aの硬化は、オーバークラッド層4の形成材料として熱硬化性樹脂組成物が用いられる場合は、加熱することが行われ、感光性樹脂組成物が用いられる場合は、上記成形型30を通して紫外線等の照射線で露光することが行われる。
【0036】
その後、図4(c)に示すように、脱型することにより、コア2に対して適正に位置決めされたオーバークラッド層4を得る。このようにして、上記基板10の上面に、アンダークラッド層1とコア2とアライメントマーク3とオーバークラッド層4とからなる光導波路を作製することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、フォトマスク20におけるアライメントマーク形成用の開口パターン23の中央の開口部23aの形状を円形とし、アライメントマーク3を円錐台状に形成したが、上記開口部23aおよびアライメントマーク3は、他の形状でもよく、例えば、上記開口部23aの形状を、三角形や四角形等の多角形,十字形等とし、アライメントマーク3を、三角錐台状や四角錐台状等の多角錐台状,十字錐台状等に形成してもよい。また、その開口部23aの周囲の透光量減少領域23bに形成した多数の微小開口部23cの形状を四角形としたが、他の形状でもよく、例えば、円形,三角形や五角形等の多角形等があげられる。さらに、上記透光量減少領域23bでの開口率を、10%を上回り80%を下回る範囲内の所定の一定値に設定したが、透光量減少領域23bの外側にいくにつれて徐々に、上記範囲内で減少するように設定してもよい。
【0038】
また、上記実施の形態の、オーバークラッド層形成用の成形型30に代えて、図5(a)に示すように、その成形型40の上記凹部41に貫通孔42が連通したものを用いてもよい。このような成形型40を用いてオーバークラッド層4を形成する場合には、上記実施の形態と同様にして、図5(b)に示すように、CCDカメラ等の認識装置で自動認識させたアライメントマーク3の位置を基準に、上記成形型40を位置決めした状態で、その成形型40の上記凹部41の開口面をアンダークラッド層1の上面に密着させ、その状態で、図5(c)に示すように、上記凹部41内にオーバークラッド層4の形成材料を上記貫通孔42から注入した後、硬化させ、オーバークラッド層4に形成することが行われる。
【0039】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0040】
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A(固形エポキシ樹脂):芳香環骨格を含むエポキシ樹脂(三菱化学社製、エピコート1002)70重量部。
成分B(固形エポキシ樹脂):脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)30重量部。
成分C(光酸発生剤):トリアリールスルホチニウム塩の50%プロピオンカーボネイト溶液(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部。
これら成分A〜Cを乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製)55重量部に撹拌溶解(温度80℃、撹拌250rpm×3時間)させ、アンダークラッド層の形成材料(感光性樹脂組成物)を調製した。
【0041】
〔コアの形成材料〕
成分D:O−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐡化学社製、YDCN−700−10)100重量部。
この成分Dと上記成分C1重量部とを乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製)60重量部に撹拌溶解(温度80℃、撹拌250rpm×3時間)させ、コアの形成材料(感光性樹脂組成物)を調製した。
【0042】
〔実施例1〕
〔アンダークラッド層の形成〕
SUS304箔(東洋製箔社製、厚み20μm)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコーター(ミカサ社製、1X−DX2)を用いて塗布した後、130℃×10分間の乾燥処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、露光機(ミカサ社製、MA−60F)および超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、USH−250D)を用いて、上記感光性樹脂層に対し、紫外線(波長365nm)を照射し、積算光量2000mJ/cm2 の露光を行った。つづいて、130℃×10分間の加熱処理を行い、アンダークラッド層を形成した〔図1(a)参照〕。
【0043】
〔コアおよびアライメントマークを形成するためのフォトマスク〕
コアおよびアライメントマークのパターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクを準備した。アライメントマーク形成用の開口パターンは、直径0.6mmの円形の開口部と、この開口部の周囲の、外径0.8mmの円環状の透光量減少領域とからなるものとした。上記透光量減少領域は、3μm×3μmの四角形状の微小開口部を7μmピッチで多数形成することにより、開口率を15%に設定した〔図2(a),(b)参照〕。
【0044】
〔コアおよびアライメントマークの形成〕
つぎに、上記アンダークラッド層の上面に、上記コアの形成材料を上記スピンコーターを用いて塗布した後、130℃×5分間の乾燥処理を行い、感光性樹脂層を形成した〔図1(b)参照〕。ついで、上記フォトマスクを介して、上記露光機および上記超高圧水銀灯を用いて、紫外線(波長365nm)を照射し、積算光量4000mJ/cm2 の露光を行った〔図1(c)参照〕。つづいて、130℃×15分間の加熱処理を行った。その後、γ−ブチロラクトン(三菱化学社製)の現像液に3分間浸して現像(ディップ現像)することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×10分間の加熱処理を行い、上記アンダークラッド層の上面に、コアおよびアライメントマークを形成した〔図3(a)参照〕。
【0045】
〔実施例2〕
上記実施例1において、フォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンの透光量減少領域に形成する多数の四角形状の微小開口部を、7μm×7μmの大きさで、11μmピッチで形成することにより、その透光量減少領域の開口率を40%に設定したものを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層の上面に、コアおよびアライメントマークを形成した。
【0046】
〔実施例3〕
上記実施例1において、フォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンの透光量減少領域に形成する多数の四角形状の微小開口部を、10μm×10μmの大きさで、13μmピッチで形成することにより、その透光量減少領域の開口率を60%に設定したものを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層の上面に、コアおよびアライメントマークを形成した。
【0047】
〔比較例1〕
上記実施例1において、フォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンの透光量減少領域に形成する多数の四角形状の微小開口部を、3μm×3μmの大きさで、9μmピッチで形成することにより、その透光量減少領域の開口率を10%に設定したものを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層の上面に、コアおよびアライメントマークを形成した。
【0048】
〔比較例2〕
上記実施例1において、フォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンの透光量減少領域に形成する多数の四角形状の微小開口部を、10μm×10μmの大きさで、12μmピッチで形成することにより、その透光量減少領域の開口率を80%に設定したものを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にして、アンダークラッド層の上面に、コアおよびアライメントマークを形成した。
【0049】
〔アライメントマークの認識性〕
上記実施例1〜3および比較例1,2のアライメントマークを、CCDカメラ(シャープマニュファクチャリングシステム社製、IV−S210X)により自動認識させた。このとき、CCDカメラ画像は、グレースケールとし、アライメントマークの検出は、直径0.6mmの円サーチで行った。その結果、1秒以内に自動認識できたものを○、5秒経過しても自動認識できなかったものを×と評価し、下記の表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1の結果から、アライメントマーク形成用の開口パターンの透光量減少領域の開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内にあるフォトマスクを用いて形成した実施例1〜3のアライメントマークは、上記範囲を外れるフォトマスクを用いて形成した比較例1,2のアライメントマークと比較して、CCDカメラによる認識性が高くなっていることがわかる。
【0052】
上記実施例1〜3および比較例1,2のアライメントマークを顕微鏡で観ると、上記実施例1〜3のアライメントマークは、円錐台状に形成されており、比較例1,2のアライメントマークは、略円柱状に形成されていた。
【0053】
また、上記フォトマスクのアライメントマーク形成用の開口パターンの開口部の形状を、三角形,四角形,十字形に変え、アライメントマークを、三角錐台状,四角錐台状,十字錐台状に形成した場合でも、上記と同様の結果が得られた。
【0054】
さらに、上記透光量減少領域に形成する微小開口部の形状および大きさを様々に変えてアライメントマークを形成した結果、上記と同様の結果が得られた。そして、その結果から、開口率が同じであれば、上記微小開口部の形状や大きさが変わっても、CCDカメラによるアライメントマークの認識性は、影響を受けないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光導波路の製法は、アライメントマークを基準にして成形型を位置決めしてオーバークラッド層を形成する場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 アンダークラッド層
2 コア
10 基板
20 フォトマスク
23 開口パターン
23a 開口部
23b 透光量減少領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダークラッド層の上面に、コアとアライメントマークとをフォトリソグラフィ法により突出形成し、そのアライメントマークを目印としてオーバークラッド層形成用の成形型を位置決めしオーバークラッド層を形成する工程を備えた光導波路の製法であって、上記フォトリソグラフィ法に用いるフォトマスクとして、アライメントマーク形成用の開口パターンが、開口部と、この開口部の周囲の、開口率が10%を上回り80%を下回る範囲内に設定された透光量減少領域とからなるものを用い、上記透光量減少領域を透過する照射線の減少に起因して、アライメントマークの周側面を傾斜面に形成し、認識装置によるアライメントマークの認識性を高めることを特徴とする光導波路の製法。
【請求項2】
上記透光量減少領域が、多数の微小開口部が所定間隔をあけて形成されてなる領域となっている請求項1記載の光導波路の製法。
【請求項3】
周側面が傾斜面に形成されている上記アライメントマークが、円錐台状または角錐台状のものである請求項1または2記載の光導波路の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133171(P2012−133171A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285791(P2010−285791)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】