光導波路の製造方法
【課題】小型かつ高性能にして多チャンネルの光導波路を容易に製造可能な光導波路の製造方法を提供する。
【解決手段】溝付き部材1の溝形成面上に適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2の遮光部2aとを対向に配置させて、溝付き部材1の溝形成面と板状部材2の遮光部形成面との間で紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝1a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。次に、板状部材2の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射して、溝1a内に充填された紫外線硬化樹脂3のみを選択的に硬化し、板状部材2の剥離後、未硬化の紫外線硬化樹脂3を除去する。最後に、溝付き部材1の溝形成面上にコア5を覆うクラッド材の上ハーフ6を被着して、クラッド材1,6の間にコア5が配置された光導波路を得る。
【解決手段】溝付き部材1の溝形成面上に適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2の遮光部2aとを対向に配置させて、溝付き部材1の溝形成面と板状部材2の遮光部形成面との間で紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝1a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。次に、板状部材2の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射して、溝1a内に充填された紫外線硬化樹脂3のみを選択的に硬化し、板状部材2の剥離後、未硬化の紫外線硬化樹脂3を除去する。最後に、溝付き部材1の溝形成面上にコア5を覆うクラッド材の上ハーフ6を被着して、クラッド材1,6の間にコア5が配置された光導波路を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に係り、特に、光導波路の形成時における紫外線硬化樹脂の展伸工程と硬化工程の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低コストで光導波路を形成する方法として、スタンパにより光導波路を形成するための溝が形成されたクラッド基板を複製し、前記溝内にコア材料である透明樹脂を充填して硬化する、スタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術が知られている。この光導波路の製造方法のうち、最も簡単で低コストな方法は、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を塗布し、塗布されたコア材料をそのままの状態で硬化する方法、及びクラッド基板の溝形成面に滴下されたコア材料を板状部材にて均一に展伸させ、溝内にコア材料を均一に充填させた後に硬化する方法である。
【0003】
しかし、これらの光導波路の製造方法のうち、前者は、コアの表面を平滑に形成することができないので、形成されたコアの表面にて光の乱反射が生じ、コア表面から光が漏れ出しやすくなる。一方、後者は、板状部材にてコアの表面を平滑に成形するので、コア表面からの光の漏れ出しは解消できるが、コア材料の展伸時にクラッド基板の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)と板状部材との間にコア材料層が形成されるため、形成されたコアの側面部分からコア材料層を通って光が漏れ出しやすくなる。このため、これらの各製造方法により製造された光導波路は、光信号のS/N比が低いなど高い光学特性が得られず、高性能が要求される用途には適用することができないという不都合がある。
【0004】
かかる不都合を改善するため、従来より、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を充填し、これを硬化した後、溝内からはみ出した余剰のコア材料を機械的に削り取る方法(例えば、特許文献1参照。)、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を充填した後、コア材料が硬化する前に、ゴム製のへらやスクレイパ等によって溝内からはみ出した余剰のコア材料を掻き取る方法(例えば、特許文献2参照。)、それに、クラッド基板の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設け、クラッド基板の表面部分と板状部材との間に形成されるコア材料層を薄肉化する方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−281351号公報
【特許文献2】特開平9−281351号公報
【特許文献3】特開2003−172841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溝内からはみ出した硬化後のコア材料層を機械的に削り取る方法は、クラッド基板とコアとの屈折率差があまり大きくなく、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出することが困難であることから、コアの表面をクラッド基板との境界面まで正確に削り取ることが困難で、高性能の光導波路を高能率に製造することができないと問題がある。即ち、所望の光学特性を有する光導波路を製造するためには、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出しつつコアの加工を慎重に行う必要があるが、このようにすると光導波路の加工に長時間を要し、製品コストが高価になる。反対に、光導波路の生産性を高めるため、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出することなくコアの定量加工を行うと、コアの加工量が不足してクラッド基板の表面にコア材料層が残存した光導波路が製造されたり、コアの加工量が過大になってクラッド基板の表面まで削り取られた光導波路が製造され、所要の光学特性を有する光導波路を高い歩留まりで製造することが困難になる。
【0006】
また、溝内からはみ出した未硬化の余剰コア材料をゴム製のへらやスクレイパ等によって掻き取る方法は、クラッド基板の表面部分に付着したコア材料を完全に取り除くことが実際上困難で、側面方向からの光漏れを生じない高性能の光導波路を製造することが困難である。また、クラッド基板の表面部分に付着したコア材料を完全に掻き取ろうとすると、表面張力により溝内に充填されたコア材料の表面部分が凹状に窪んだ形状となり、コアの表面部分からの光漏れが生じやすくなるので、この点からも高性能の光導波路を製造することが困難である。
【0007】
さらに、クラッド基板の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける方法では、光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができないので、光導波路のチャンネル数の増加及びそれによる光導波路の集積化が困難になる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の不備を解決するためになされたものであり、その目的は、小型かつ高性能にして多チャンネルの光導波路を容易に製造可能な光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、前記板状部材として、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用い、前記溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記板状部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記溝の内面部分を除く前記溝形成面の表面部分に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うという構成にした。
【0010】
かかる構成によると、光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を展伸するための板状部材として、溝付き部材の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用いるので、紫外線硬化樹脂の展伸時に溝付き部材の溝形成面の表面部分と板状部材の遮光部とを対向に位置合わせすることにより、樹脂硬化光の照射時において、遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができる。よって、溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行った後に未硬化の紫外線硬化樹脂を除去することにより、表面部分が平滑で側面部分に紫外線硬化樹脂層を有さず、したがって光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0011】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材を前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂よりもやや屈折率の低いクラッド材にて形成すると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝付き部材の溝形成面を前記クラッド材と同種のクラッド材にて覆うという構成にした。
【0012】
かかる構成によると、2つのクラッド材の間に紫外線硬化樹脂よりなるコアが配置された光導波路が得られる。
【0013】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材に形成された光導波路を形成するための溝の一端に光入射用の傾斜面を形成すると共に、前記溝付き部材の溝形成面を覆うクラッド材にマイクロレンズを形成又は設定するという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、光導波路が形成された光学部品自体に光入射用の傾斜面とマイクロレンズとを形成したので、光入射用の傾斜面を有する他の光学部品及びマイクロレンズを備えた他の光学部品を光導波路が形成された光学部品に組み合わせる必要がなく、光導波路を含む光学回路の集約化を図ることができる。
【0015】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材として金型を用いると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂の表面にプリント配線板を接着し、前記溝付き部材と前記プリント配線板に接着された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得るという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、金型にて形成された光導波路をそのままプリント配線板に転写することができるので、光導波路とプリント配線板とを別個に形成し、しかる後にプリント配線板の所望の位置に光導波路を1つずつ設定する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板を容易に製造することができる。
【0017】
また、本発明は、前記とは異なる光導波路の製造方法として、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、前記溝付き部材として、透光性素材からなり、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に遮光部が形成されたものを用い、当該溝付き部材の溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記溝付き部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記遮光部上に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うという構成にした。
【0018】
かかる構成によると、溝付き部材として、溝形成面の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)に遮光部が形成されたものを用いるので、樹脂硬化光の照射時において、遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができる。よって、溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行った後に未硬化の紫外線硬化樹脂を除去することにより、表面部分が平滑で側面部分に紫外線硬化樹脂層を有さず、したがって光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0019】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記板状部材としてプリント配線板を用い、前記プリント配線板による紫外線硬化樹脂の展伸と前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化とを行った後、前記溝付き部材と前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得るという構成にした。
【0020】
かかる構成によると、プリント配線板への光導波路の転写を光導波路の形成工程で行うことができるので、板状部材を用いて所要の光導波路を形成した後に、形成された光導波路をプリント配線板に転写する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板の製造をより容易化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光導波路の製造方法は、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材又は光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を展伸するための板状部材のいずれかに所要の遮光部を形成したので、樹脂硬化光の照射時において遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができ、光の漏れ出しがない高性能の光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る光導波路の製造方法を、各実施形態ごとに項を分けて説明する。
【0023】
〈第1実施形態〉
図1は第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図2は第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図3は第1実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、遮光部を有する板状部材を用いて光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂の展伸を行い、樹脂硬化光の照射範囲を光導波路の形成範囲にのみ規制することを特徴とする。
【0024】
図1乃至図3に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝1aが複数本平行に形成された溝付き部材1と、片面に遮光部2aが形成された板状部材2とが用いられる。
【0025】
本例の溝付き部材1は、光導波路のクラッド基板となるものであって、所要の屈折率を有する樹脂材料をもってスタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術により作製される。溝1aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0026】
一方、本例の板状部材2は、樹脂硬化光のマスク部材となるものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材1とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部2aは、図2に示すように、溝付き部材1の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝1aの内面を除く部分)1bに対応する形状に形成される。なお、この遮光部2aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成することができる。
【0027】
光導波路の製造に際しては、図3(a)に示すように、まず溝付き部材1の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、硬化後の屈折率が溝付き部材1の構成材料よりもやや高いものが用いられる。次に、図3(b)に示すように、溝付き部材1の溝形成面と板状部材2の遮光部形成面との間で溝付き部材1の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝1a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材1の溝形成面の表面部分1bと板状部材2の遮光部2aとが対向に配置されるように溝付き部材1に対する板状部材2の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2に形成された遮光部2aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図3(c)に示すように、板状部材2の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝1a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2に形成された遮光部2aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部2aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材2との界面から板状部材2を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図3(d)に示すように、溝1a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路(コア)5が形成されたものが得られる。最後に、図3(e)に示すように、溝付き部材1の溝形成面上にコア5を覆うクラッド材の上ハーフ6を被着して、2つのクラッド材1,6の間に紫外線硬化樹脂よりなるコア5が配置された光導波路を得る。なお、クラッド材の上ハーフ6は、溝付き部材1の構成材料と屈折率が同一の材料をもって形成される。
【0028】
本例の光導波路の製造方法は、光導波路(コア)5の形成材料である紫外線硬化樹脂3を展伸するための板状部材2として、溝付き部材1の溝形成面の表面部分1bに対応する形状の遮光部2aが片面に形成されたものを用いるので、樹脂硬化光4の照射時において遮光部2aと接する部分の紫外線硬化樹脂3の硬化を防止することができ、隣接して配置された複数本のコア5をそれぞれ光学的に独立した形状に形成することができる。また、溝付き部材1の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を板状部材2にて展伸するので、コア5の表面を平坦に形成することができる。よって、コア5の表面部分及び側面部分からの光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材1の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材1に光導波路を形成するための溝1aを小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0029】
〈第2実施形態〉
図4は第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図5は図4のA−A断面図、図6は第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図7は第2実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図、図8は第2実施形態に係る光導波路の製造方法にて製造される光導波路の断面図である。本例の光導波路の製造方法は、一端に光入射用の傾斜面とマイクロレンズとを備えた光導波路を製造することを特徴とする。
【0030】
図4乃至図7に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝11aが複数本平行に形成された溝付き部材11と、片面に遮光部12aが形成された板状部材12とが用いられる。
【0031】
本例の溝付き部材11は、光導波路のクラッド基板となるものであって、所要の屈折率を有する樹脂材料をもってスタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術により作製される。溝11aの一端には、図4及び図5に示すように、溝11aの軸線方向に対して直交する方向から入射された光信号を溝11aの軸線方向に反射するための傾斜面11cが形成されている。溝11aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0032】
一方、本例の板状部材12は、樹脂硬化光のマスク部材となるものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材11とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部12aは、図6に示すように、溝付き部材11の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝11aの内面を除く部分)11bに対応する形状に形成される。この遮光部12aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成される。
【0033】
光導波路の製造に際しては、図7(a)に示すように、まず溝付き部材11の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、硬化後の屈折率が溝付き部材1の構成材料よりもやや高いものが用いられる。次に、図7(b)に示すように、溝付き部材11の溝形成面と板状部材12の遮光部形成面との間で溝付き部材11の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝11a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材11の溝形成面の表面部分11bと板状部材12の遮光部12aとが対向に配置されるように溝付き部材11に対する板状部材12の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材11の表面部分11bと板状部材12に形成された遮光部12aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図7(c)に示すように、板状部材12の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝11a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材11の表面部分11bと板状部材12に形成された遮光部12aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部12aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材12との界面から板状部材12を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図7(d)に示すように、溝11a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路(コア)15が形成されたものが得られる。ここまでの工程に関しては、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同じである。最後に、図7(e)に示すように、溝付き部材11の溝形成面上にコア15を覆うクラッド材の上ハーフ16を被着して、2つのクラッド材11,16の間に紫外線硬化樹脂よりなるコア15が配置された光導波路を得る。本例の光導波路の製造方法が第1実施形態に係る光導波路の製造方法と異なるのは、図8に示すように、上ハーフ16の傾斜面11cと対向する部分に、マイクロレンズ17が形成又は設定されたクラッド材の上ハーフ16を被着することである。これにより、光導波路15と光入射用のマイクロレンズ17と光路変更用の傾斜面11cとが一体に備えられた光学部品が得られる。
【0034】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、光導波路15と光入射用のマイクロレンズ17と光路変更用の傾斜面11cとが一体に備えられた光学部品が得られるので、光導波路が形成された光学部品に光入射用の傾斜面を有する他の光学部品及びマイクロレンズを備えた他の光学部品を組み合わせる必要がなく、光導波路を含む光学回路の集約化を図ることができる。
【0035】
〈第3実施形態〉
図9は第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図10は第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図11は第3実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、金型を用いて光導波路を形成すること、及び形成された光導波路をプリント配線板と一体化することを特徴とする。
【0036】
図9乃至図11に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝21aが複数本平行に形成された溝付き部材21と、片面に遮光部22aが形成された板状部材22とが用いられる。
【0037】
本例の溝付き部材21は、光導波路を形成するための金型であって、ニッケルなどの金属材料をもって形成される。この金属材料よりなる溝付き部材21は、機械的な切削加工のほか、電解加工やエッチングそれに電鋳などの物理的又は化学的な加工方法を応用することにより製造することができる。溝21aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0038】
一方、本例の板状部材22は、第1実施形態に係る板状部材1と同様のものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材21とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部22aは、図10に示すように、溝付き部材21の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝21aの内面を除く部分)21bに対応する形状に形成される。この遮光部22aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成される。
【0039】
光導波路の製造に際しては、図11(a)に示すように、まず溝付き部材21の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、任意の屈折率を有するものを用いることができる。次に、図11(b)に示すように、溝付き部材21の溝形成面と板状部材22の遮光部形成面との間で溝付き部材21の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝21a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材21の溝形成面の表面部分21bと板状部材22の遮光部22aとが対向に配置されるように溝付き部材21に対する板状部材22の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材21の表面部分21bと板状部材22に形成された遮光部22aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図11(c)に示すように、板状部材22の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝21a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材21の表面部分21bと板状部材22に形成された遮光部22aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部22aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材22との界面から板状部材22を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図11(d)に示すように、溝21a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路25が形成されたものが得られる。ここまでの工程に関しては、第1実施形態及び第2実施形態に係る光導波路の製造方法と同じである。次に、図11(e)に示すように、溝21a内に形成された光導波路25の表面に、図示しない接着剤を介してプリント配線板26を接着する。最後に、接着剤が固化するのを待って、図11(f)に示すように、溝付き部材21と光導波路25との界面から光導波路25を剥離し、プリント配線板26の片面に光導波路25が一体に形成された製品を得る。なお、プリント配線板26への搭載部品の実装は、光導波路25の接着前でも光導波路25の接着後でも良い。
【0040】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、金型21にて形成された光導波路25をそのままプリント配線板26に転写することができるので、光導波路とプリント配線板とを別個に形成し、しかる後にプリント配線板の所望の位置に光導波路を1つずつ設定する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板を容易に製造することができる。
【0041】
〈第4実施形態〉
図12は第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図13は第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の斜視図、図14は第4実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、透光性の材料にて形成された溝付き部材の表面部分に遮光部を形成したことを特徴とする。
【0042】
図12乃至図14に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝31aが複数本平行に形成された溝付き部材31と、片面に遮光部32aが形成された板状部材32とが用いられる。本例にあっては、板状部材として、プリント配線板が用いられる。
【0043】
本例の溝付き部材31は、光導波路を形成するための型材であって、ガラスなどの透光性材料をもって形成されており、溝形成面の表面部分(溝形成面における溝31aの内面を除く部分)に遮光部31bが形成されている。この透光性材料よりなる溝付き部材31は、機械的な切削加工のほか、エネルギビーム加工やエッチングなどの物理的又は化学的な加工方法を応用することにより製造することができる。また、遮光部31bは、印刷などによって形成することができる。溝31aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0044】
一方、板状部材であるプリント配線板32は、シート状に形成された絶縁基板に所要の回路パターンを形成してなる。
【0045】
光導波路の製造に際しては、図14(a)に示すように、まず溝付き部材31の溝形成面上に光導波路の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、任意の屈折率を有するものを用いることができる。次に、図14(b)に示すように、溝付き部材31の溝形成面とプリント配線板32との間で溝付き部材31の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝31a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材31に対する板状部材32の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材31の表面部分に形成された遮光部31bとプリント配線板32との間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図14(c)に示すように、溝付き部材31の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝31a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、遮光部31bとプリント配線板32との間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部31bによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。最後に、図14(d)に示すように、溝付き部材31と紫外線硬化樹脂3との界面から溝付き部材31を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、プリント配線板32の片面に光導波路35が一体に形成された製品が得られる。なお、プリント配線板32への搭載部品の実装は、紫外線硬化樹脂3を展伸前でも光導波路35の形成後でも良い。
【0046】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、プリント配線板32への光導波路35の転写を光導波路35の形成工程で行うことができるので、板状部材を用いて所要の光導波路を形成した後に、形成された光導波路をプリント配線板に転写する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板の製造をより容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図4】第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図8】第2実施形態に係る光導波路の製造方法にて製造される光導波路の断面図である。
【図9】第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図11】第3実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図12】第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図13】第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の斜視図である。
【図14】第4実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1,11,21,31 溝付き部材
1a,11a,21a,31a 溝
2,12,22 板状部材
32 板状部材(プリント配線板)
2a,12a,22a,31b 遮光部
3 紫外線硬化樹脂
4 樹脂硬化光
5,15,25,35 光導波路(コア)
6 クラッド材の上ハーフ
26 プリント配線板
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に係り、特に、光導波路の形成時における紫外線硬化樹脂の展伸工程と硬化工程の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低コストで光導波路を形成する方法として、スタンパにより光導波路を形成するための溝が形成されたクラッド基板を複製し、前記溝内にコア材料である透明樹脂を充填して硬化する、スタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術が知られている。この光導波路の製造方法のうち、最も簡単で低コストな方法は、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を塗布し、塗布されたコア材料をそのままの状態で硬化する方法、及びクラッド基板の溝形成面に滴下されたコア材料を板状部材にて均一に展伸させ、溝内にコア材料を均一に充填させた後に硬化する方法である。
【0003】
しかし、これらの光導波路の製造方法のうち、前者は、コアの表面を平滑に形成することができないので、形成されたコアの表面にて光の乱反射が生じ、コア表面から光が漏れ出しやすくなる。一方、後者は、板状部材にてコアの表面を平滑に成形するので、コア表面からの光の漏れ出しは解消できるが、コア材料の展伸時にクラッド基板の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)と板状部材との間にコア材料層が形成されるため、形成されたコアの側面部分からコア材料層を通って光が漏れ出しやすくなる。このため、これらの各製造方法により製造された光導波路は、光信号のS/N比が低いなど高い光学特性が得られず、高性能が要求される用途には適用することができないという不都合がある。
【0004】
かかる不都合を改善するため、従来より、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を充填し、これを硬化した後、溝内からはみ出した余剰のコア材料を機械的に削り取る方法(例えば、特許文献1参照。)、クラッド基板に形成された溝内にコア材料を充填した後、コア材料が硬化する前に、ゴム製のへらやスクレイパ等によって溝内からはみ出した余剰のコア材料を掻き取る方法(例えば、特許文献2参照。)、それに、クラッド基板の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設け、クラッド基板の表面部分と板状部材との間に形成されるコア材料層を薄肉化する方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−281351号公報
【特許文献2】特開平9−281351号公報
【特許文献3】特開2003−172841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溝内からはみ出した硬化後のコア材料層を機械的に削り取る方法は、クラッド基板とコアとの屈折率差があまり大きくなく、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出することが困難であることから、コアの表面をクラッド基板との境界面まで正確に削り取ることが困難で、高性能の光導波路を高能率に製造することができないと問題がある。即ち、所望の光学特性を有する光導波路を製造するためには、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出しつつコアの加工を慎重に行う必要があるが、このようにすると光導波路の加工に長時間を要し、製品コストが高価になる。反対に、光導波路の生産性を高めるため、クラッド基板とコアとの境界面を精密に検出することなくコアの定量加工を行うと、コアの加工量が不足してクラッド基板の表面にコア材料層が残存した光導波路が製造されたり、コアの加工量が過大になってクラッド基板の表面まで削り取られた光導波路が製造され、所要の光学特性を有する光導波路を高い歩留まりで製造することが困難になる。
【0006】
また、溝内からはみ出した未硬化の余剰コア材料をゴム製のへらやスクレイパ等によって掻き取る方法は、クラッド基板の表面部分に付着したコア材料を完全に取り除くことが実際上困難で、側面方向からの光漏れを生じない高性能の光導波路を製造することが困難である。また、クラッド基板の表面部分に付着したコア材料を完全に掻き取ろうとすると、表面張力により溝内に充填されたコア材料の表面部分が凹状に窪んだ形状となり、コアの表面部分からの光漏れが生じやすくなるので、この点からも高性能の光導波路を製造することが困難である。
【0007】
さらに、クラッド基板の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける方法では、光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができないので、光導波路のチャンネル数の増加及びそれによる光導波路の集積化が困難になる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の不備を解決するためになされたものであり、その目的は、小型かつ高性能にして多チャンネルの光導波路を容易に製造可能な光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、前記板状部材として、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用い、前記溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記板状部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記溝の内面部分を除く前記溝形成面の表面部分に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うという構成にした。
【0010】
かかる構成によると、光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を展伸するための板状部材として、溝付き部材の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用いるので、紫外線硬化樹脂の展伸時に溝付き部材の溝形成面の表面部分と板状部材の遮光部とを対向に位置合わせすることにより、樹脂硬化光の照射時において、遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができる。よって、溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行った後に未硬化の紫外線硬化樹脂を除去することにより、表面部分が平滑で側面部分に紫外線硬化樹脂層を有さず、したがって光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0011】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材を前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂よりもやや屈折率の低いクラッド材にて形成すると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝付き部材の溝形成面を前記クラッド材と同種のクラッド材にて覆うという構成にした。
【0012】
かかる構成によると、2つのクラッド材の間に紫外線硬化樹脂よりなるコアが配置された光導波路が得られる。
【0013】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材に形成された光導波路を形成するための溝の一端に光入射用の傾斜面を形成すると共に、前記溝付き部材の溝形成面を覆うクラッド材にマイクロレンズを形成又は設定するという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、光導波路が形成された光学部品自体に光入射用の傾斜面とマイクロレンズとを形成したので、光入射用の傾斜面を有する他の光学部品及びマイクロレンズを備えた他の光学部品を光導波路が形成された光学部品に組み合わせる必要がなく、光導波路を含む光学回路の集約化を図ることができる。
【0015】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記溝付き部材として金型を用いると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂の表面にプリント配線板を接着し、前記溝付き部材と前記プリント配線板に接着された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得るという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、金型にて形成された光導波路をそのままプリント配線板に転写することができるので、光導波路とプリント配線板とを別個に形成し、しかる後にプリント配線板の所望の位置に光導波路を1つずつ設定する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板を容易に製造することができる。
【0017】
また、本発明は、前記とは異なる光導波路の製造方法として、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、前記溝付き部材として、透光性素材からなり、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に遮光部が形成されたものを用い、当該溝付き部材の溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記溝付き部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記遮光部上に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うという構成にした。
【0018】
かかる構成によると、溝付き部材として、溝形成面の表面部分(溝形成面における溝の内面を除く部分)に遮光部が形成されたものを用いるので、樹脂硬化光の照射時において、遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができる。よって、溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行った後に未硬化の紫外線硬化樹脂を除去することにより、表面部分が平滑で側面部分に紫外線硬化樹脂層を有さず、したがって光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0019】
また、本発明は、前記構成の光導波路の製造方法において、前記板状部材としてプリント配線板を用い、前記プリント配線板による紫外線硬化樹脂の展伸と前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化とを行った後、前記溝付き部材と前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得るという構成にした。
【0020】
かかる構成によると、プリント配線板への光導波路の転写を光導波路の形成工程で行うことができるので、板状部材を用いて所要の光導波路を形成した後に、形成された光導波路をプリント配線板に転写する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板の製造をより容易化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光導波路の製造方法は、光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材又は光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を展伸するための板状部材のいずれかに所要の遮光部を形成したので、樹脂硬化光の照射時において遮光部と接する部分の紫外線硬化樹脂の硬化を防止することができ、光の漏れ出しがない高性能の光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材に光導波路を形成するための溝を小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る光導波路の製造方法を、各実施形態ごとに項を分けて説明する。
【0023】
〈第1実施形態〉
図1は第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図2は第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図3は第1実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、遮光部を有する板状部材を用いて光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂の展伸を行い、樹脂硬化光の照射範囲を光導波路の形成範囲にのみ規制することを特徴とする。
【0024】
図1乃至図3に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝1aが複数本平行に形成された溝付き部材1と、片面に遮光部2aが形成された板状部材2とが用いられる。
【0025】
本例の溝付き部材1は、光導波路のクラッド基板となるものであって、所要の屈折率を有する樹脂材料をもってスタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術により作製される。溝1aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0026】
一方、本例の板状部材2は、樹脂硬化光のマスク部材となるものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材1とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部2aは、図2に示すように、溝付き部材1の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝1aの内面を除く部分)1bに対応する形状に形成される。なお、この遮光部2aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成することができる。
【0027】
光導波路の製造に際しては、図3(a)に示すように、まず溝付き部材1の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、硬化後の屈折率が溝付き部材1の構成材料よりもやや高いものが用いられる。次に、図3(b)に示すように、溝付き部材1の溝形成面と板状部材2の遮光部形成面との間で溝付き部材1の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝1a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材1の溝形成面の表面部分1bと板状部材2の遮光部2aとが対向に配置されるように溝付き部材1に対する板状部材2の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2に形成された遮光部2aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図3(c)に示すように、板状部材2の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝1a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材1の表面部分1bと板状部材2に形成された遮光部2aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部2aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材2との界面から板状部材2を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図3(d)に示すように、溝1a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路(コア)5が形成されたものが得られる。最後に、図3(e)に示すように、溝付き部材1の溝形成面上にコア5を覆うクラッド材の上ハーフ6を被着して、2つのクラッド材1,6の間に紫外線硬化樹脂よりなるコア5が配置された光導波路を得る。なお、クラッド材の上ハーフ6は、溝付き部材1の構成材料と屈折率が同一の材料をもって形成される。
【0028】
本例の光導波路の製造方法は、光導波路(コア)5の形成材料である紫外線硬化樹脂3を展伸するための板状部材2として、溝付き部材1の溝形成面の表面部分1bに対応する形状の遮光部2aが片面に形成されたものを用いるので、樹脂硬化光4の照射時において遮光部2aと接する部分の紫外線硬化樹脂3の硬化を防止することができ、隣接して配置された複数本のコア5をそれぞれ光学的に独立した形状に形成することができる。また、溝付き部材1の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を板状部材2にて展伸するので、コア5の表面を平坦に形成することができる。よって、コア5の表面部分及び側面部分からの光の漏れ出しがない光導波路を形成することができる。また、硬化後の光導波路に機械加工を施す必要がないので、高性能の光導波路を高能率に製造することができる。さらには、溝付き部材1の表面部分に余剰のコア材料を逃がすためのくぼみを設ける必要がないので、溝付き部材1に光導波路を形成するための溝1aを小さなピッチで配列することができ、光導波路の多チャンネル化及びそれによる光導波路の集積化を図ることができる。
【0029】
〈第2実施形態〉
図4は第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図5は図4のA−A断面図、図6は第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図7は第2実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図、図8は第2実施形態に係る光導波路の製造方法にて製造される光導波路の断面図である。本例の光導波路の製造方法は、一端に光入射用の傾斜面とマイクロレンズとを備えた光導波路を製造することを特徴とする。
【0030】
図4乃至図7に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝11aが複数本平行に形成された溝付き部材11と、片面に遮光部12aが形成された板状部材12とが用いられる。
【0031】
本例の溝付き部材11は、光導波路のクラッド基板となるものであって、所要の屈折率を有する樹脂材料をもってスタンパ法或いは複製法と呼ばれる技術により作製される。溝11aの一端には、図4及び図5に示すように、溝11aの軸線方向に対して直交する方向から入射された光信号を溝11aの軸線方向に反射するための傾斜面11cが形成されている。溝11aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0032】
一方、本例の板状部材12は、樹脂硬化光のマスク部材となるものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材11とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部12aは、図6に示すように、溝付き部材11の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝11aの内面を除く部分)11bに対応する形状に形成される。この遮光部12aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成される。
【0033】
光導波路の製造に際しては、図7(a)に示すように、まず溝付き部材11の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、硬化後の屈折率が溝付き部材1の構成材料よりもやや高いものが用いられる。次に、図7(b)に示すように、溝付き部材11の溝形成面と板状部材12の遮光部形成面との間で溝付き部材11の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝11a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材11の溝形成面の表面部分11bと板状部材12の遮光部12aとが対向に配置されるように溝付き部材11に対する板状部材12の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材11の表面部分11bと板状部材12に形成された遮光部12aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図7(c)に示すように、板状部材12の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝11a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材11の表面部分11bと板状部材12に形成された遮光部12aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部12aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材12との界面から板状部材12を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図7(d)に示すように、溝11a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路(コア)15が形成されたものが得られる。ここまでの工程に関しては、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同じである。最後に、図7(e)に示すように、溝付き部材11の溝形成面上にコア15を覆うクラッド材の上ハーフ16を被着して、2つのクラッド材11,16の間に紫外線硬化樹脂よりなるコア15が配置された光導波路を得る。本例の光導波路の製造方法が第1実施形態に係る光導波路の製造方法と異なるのは、図8に示すように、上ハーフ16の傾斜面11cと対向する部分に、マイクロレンズ17が形成又は設定されたクラッド材の上ハーフ16を被着することである。これにより、光導波路15と光入射用のマイクロレンズ17と光路変更用の傾斜面11cとが一体に備えられた光学部品が得られる。
【0034】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、光導波路15と光入射用のマイクロレンズ17と光路変更用の傾斜面11cとが一体に備えられた光学部品が得られるので、光導波路が形成された光学部品に光入射用の傾斜面を有する他の光学部品及びマイクロレンズを備えた他の光学部品を組み合わせる必要がなく、光導波路を含む光学回路の集約化を図ることができる。
【0035】
〈第3実施形態〉
図9は第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図10は第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図、図11は第3実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、金型を用いて光導波路を形成すること、及び形成された光導波路をプリント配線板と一体化することを特徴とする。
【0036】
図9乃至図11に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝21aが複数本平行に形成された溝付き部材21と、片面に遮光部22aが形成された板状部材22とが用いられる。
【0037】
本例の溝付き部材21は、光導波路を形成するための金型であって、ニッケルなどの金属材料をもって形成される。この金属材料よりなる溝付き部材21は、機械的な切削加工のほか、電解加工やエッチングそれに電鋳などの物理的又は化学的な加工方法を応用することにより製造することができる。溝21aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0038】
一方、本例の板状部材22は、第1実施形態に係る板状部材1と同様のものであって、透光性材料をもって平面サイズが溝付き部材21とほぼ同等の平行平板状に形成される。遮光部22aは、図10に示すように、溝付き部材21の溝形成面の表面部分(溝形成面における溝21aの内面を除く部分)21bに対応する形状に形成される。この遮光部22aは、印刷やフォトリソグラフィなどによって形成される。
【0039】
光導波路の製造に際しては、図11(a)に示すように、まず溝付き部材21の溝形成面上に光導波路(コア)の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、任意の屈折率を有するものを用いることができる。次に、図11(b)に示すように、溝付き部材21の溝形成面と板状部材22の遮光部形成面との間で溝付き部材21の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝21a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材21の溝形成面の表面部分21bと板状部材22の遮光部22aとが対向に配置されるように溝付き部材21に対する板状部材22の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材21の表面部分21bと板状部材22に形成された遮光部22aとの間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図11(c)に示すように、板状部材22の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝21a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、溝付き部材21の表面部分21bと板状部材22に形成された遮光部22aとの間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部22aによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。次に、紫外線硬化樹脂3と板状部材22との界面から板状部材22を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、図11(d)に示すように、溝21a内に紫外線硬化樹脂3からなる光導波路25が形成されたものが得られる。ここまでの工程に関しては、第1実施形態及び第2実施形態に係る光導波路の製造方法と同じである。次に、図11(e)に示すように、溝21a内に形成された光導波路25の表面に、図示しない接着剤を介してプリント配線板26を接着する。最後に、接着剤が固化するのを待って、図11(f)に示すように、溝付き部材21と光導波路25との界面から光導波路25を剥離し、プリント配線板26の片面に光導波路25が一体に形成された製品を得る。なお、プリント配線板26への搭載部品の実装は、光導波路25の接着前でも光導波路25の接着後でも良い。
【0040】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、金型21にて形成された光導波路25をそのままプリント配線板26に転写することができるので、光導波路とプリント配線板とを別個に形成し、しかる後にプリント配線板の所望の位置に光導波路を1つずつ設定する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板を容易に製造することができる。
【0041】
〈第4実施形態〉
図12は第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図、図13は第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の斜視図、図14は第4実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。本例の光導波路の製造方法は、透光性の材料にて形成された溝付き部材の表面部分に遮光部を形成したことを特徴とする。
【0042】
図12乃至図14に示すように、本例の光導波路の製造方法には、片面に光導波路を形成するための溝31aが複数本平行に形成された溝付き部材31と、片面に遮光部32aが形成された板状部材32とが用いられる。本例にあっては、板状部材として、プリント配線板が用いられる。
【0043】
本例の溝付き部材31は、光導波路を形成するための型材であって、ガラスなどの透光性材料をもって形成されており、溝形成面の表面部分(溝形成面における溝31aの内面を除く部分)に遮光部31bが形成されている。この透光性材料よりなる溝付き部材31は、機械的な切削加工のほか、エネルギビーム加工やエッチングなどの物理的又は化学的な加工方法を応用することにより製造することができる。また、遮光部31bは、印刷などによって形成することができる。溝31aのサイズ及び本数は、作製しようとする光導波路の特性及びチャンネル数に応じて適宜調整される。
【0044】
一方、板状部材であるプリント配線板32は、シート状に形成された絶縁基板に所要の回路パターンを形成してなる。
【0045】
光導波路の製造に際しては、図14(a)に示すように、まず溝付き部材31の溝形成面上に光導波路の形成材料である適量の紫外線硬化樹脂3を滴下する。紫外線硬化樹脂3としては、任意の屈折率を有するものを用いることができる。次に、図14(b)に示すように、溝付き部材31の溝形成面とプリント配線板32との間で溝付き部材31の溝形成面上に滴下された紫外線硬化樹脂3を展伸し、溝31a内に紫外線硬化樹脂3を充填する。また、溝付き部材31に対する板状部材32の位置合わせを行う。この段階においては、溝付き部材31の表面部分に形成された遮光部31bとプリント配線板32との間にも、紫外線硬化樹脂3が介在されている。次に、図14(c)に示すように、溝付き部材31の外面から所定波長の樹脂硬化光4を照射し、溝31a内に充填された紫外線硬化樹脂3を硬化する。このとき、遮光部31bとプリント配線板32との間に介在された紫外線硬化樹脂3については、遮光部31bによって樹脂硬化光4が遮断されるため、未硬化のままの状態で残る。最後に、図14(d)に示すように、溝付き部材31と紫外線硬化樹脂3との界面から溝付き部材31を剥離し、未硬化の紫外線硬化樹脂3をリンスにより除去する。これにより、プリント配線板32の片面に光導波路35が一体に形成された製品が得られる。なお、プリント配線板32への搭載部品の実装は、紫外線硬化樹脂3を展伸前でも光導波路35の形成後でも良い。
【0046】
本例の光導波路の製造方法は、第1実施形態に係る光導波路の製造方法と同様の効果を有するほか、プリント配線板32への光導波路35の転写を光導波路35の形成工程で行うことができるので、板状部材を用いて所要の光導波路を形成した後に、形成された光導波路をプリント配線板に転写する場合に比べて、光導波路付きのプリント配線板の製造をより容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図4】第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】第2実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図8】第2実施形態に係る光導波路の製造方法にて製造される光導波路の断面図である。
【図9】第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の遮光部形成面側から見た斜視図である。
【図11】第3実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【図12】第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される溝付き部材の溝形成面側から見た斜視図である。
【図13】第4実施形態に係る光導波路の製造方法に適用される板状部材の斜視図である。
【図14】第4実施形態に係る光導波路の製造方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1,11,21,31 溝付き部材
1a,11a,21a,31a 溝
2,12,22 板状部材
32 板状部材(プリント配線板)
2a,12a,22a,31b 遮光部
3 紫外線硬化樹脂
4 樹脂硬化光
5,15,25,35 光導波路(コア)
6 クラッド材の上ハーフ
26 プリント配線板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、
前記板状部材として、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用い、前記溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記板状部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記溝の内面部分を除く前記溝形成面の表面部分に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記溝付き部材を前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂よりもやや屈折率の低いクラッド材にて形成すると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝付き部材の溝形成面を前記クラッド材と同種のクラッド材にて覆うことを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記溝付き部材に形成された光導波路を形成するための溝の一端に光入射用の傾斜面を形成すると共に、前記溝付き部材の溝形成面を覆うクラッド材にマイクロレンズを形成又は設定することを特徴とする請求項2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記溝付き部材として金型を用いると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂の表面にプリント配線板を接着し、前記溝付き部材と前記プリント配線板に接着された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得ることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、
前記溝付き部材として、透光性素材からなり、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に遮光部が形成されたものを用い、当該溝付き部材の溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記溝付き部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記遮光部上に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記板状部材としてプリント配線板を用い、前記プリント配線板による紫外線硬化樹脂の展伸と前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化とを行った後、前記溝付き部材と前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得ることを特徴とする請求項5に記載の光導波路の製造方法。
【請求項1】
光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、
前記板状部材として、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に対応する形状の遮光部が片面に形成されたものを用い、前記溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記板状部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記溝の内面部分を除く前記溝形成面の表面部分に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記溝付き部材を前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂よりもやや屈折率の低いクラッド材にて形成すると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝付き部材の溝形成面を前記クラッド材と同種のクラッド材にて覆うことを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記溝付き部材に形成された光導波路を形成するための溝の一端に光入射用の傾斜面を形成すると共に、前記溝付き部材の溝形成面を覆うクラッド材にマイクロレンズを形成又は設定することを特徴とする請求項2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記溝付き部材として金型を用いると共に、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化と前記溝付き部材からの前記板状部材の剥離とを行った後、前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂の表面にプリント配線板を接着し、前記溝付き部材と前記プリント配線板に接着された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得ることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
光導波路を形成するための溝が片面に形成された溝付き部材の溝形成面に前記光導波路の形成材料である紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、前記溝付き部材に滴下された紫外線硬化樹脂を板状部材にて展伸し、前記溝内に前記紫外線硬化樹脂を充填する工程と、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂に所定波長の樹脂硬化光を照射してこれを硬化する工程とを含む光導波路の製造方法において、
前記溝付き部材として、透光性素材からなり、前記溝の内面を除く前記溝形成面の表面部分に遮光部が形成されたものを用い、当該溝付き部材の溝形成面への紫外線硬化樹脂の滴下と前記板状部材による当該紫外線硬化樹脂の展伸とを行った後、前記溝付き部材の外面側から前記所定波長の樹脂硬化光を照射し、前記遮光部上に付着した紫外線硬化樹脂の硬化を防止しつつ、前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化を行うことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記板状部材としてプリント配線板を用い、前記プリント配線板による紫外線硬化樹脂の展伸と前記溝内に充填された紫外線硬化樹脂の硬化とを行った後、前記溝付き部材と前記溝内にて硬化された紫外線硬化樹脂との界面から前記溝付き部材を剥離し、光導波路付きのプリント配線板を得ることを特徴とする請求項5に記載の光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−139119(P2006−139119A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329310(P2004−329310)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]