説明

光導波路シートの加工方法

【課題】光導波路シートの光導入・導出部に対応する位置に光を直角方向に変換するために45度に傾斜した光路変換ミラーを形成するとともに、光導波路シートの両端側を効率よく高精度に切断することができる光導波路シートの加工方法を提供する。
【解決手段】光導波路シートのシート基板100の表面をダイシングテープTの表面に貼着する光導波路シート支持工程と、光導波路シートの光導入・導出部に対応する位置に45度の傾斜面を有する光路変換ミラー116a,116bを形成するミラー形成工程と、ミラー形成工程が実施された光導波路シートを反射板635上に保持し、光路変換ミラー116a,116bに光を導入し反射板635で反射した光が導出される位置を検出し、光の検出位置から側方に設定された所定距離の切断位置において光導波路シートの端部を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を備えた光導波路シートを所定の位置で切断するための加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子素子間の信号伝送を光によって伝送する光伝送が行われている。特に、携帯電話やノートパソコン等のヒンジには可撓性を有するフレキシブルな光導波路を備えた光導波路デバイスが用いられている。この光導波路デバイスは、シート基板と、該シート基板の裏面に形成された第1のクラッド層と、該第1のクラッド層に形成され光導波路を形成するコアパターンと、該コアパターンを覆うように積層された第2のクラッド層とからなり、シート基板の表面における光導波路を形成するコアパターンの一端側に直角方向から光を導入または導出する第1の光導入・導出部および光導波路を形成するコアパターンの他端側に直角方向から光を導入または導出する第2の光導入・導出部を有している。なお、第2のクラッド層とコアパターンおよび第1のクラッド層における第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部に対応する位置には、光を直角方向に変換するために45度に傾斜した光路変換ミラーが形成される。このように構成された光導波路デバイスは、シート基板上に複数並列に形成されている。この光導波路デバイスが複数形成された光導波路シートの両端側を所定の位置で切断するとともに、隣接する光導波路デバイスの中間部である分割予定ラインに沿って切断することにより、個々の光導波路デバイスを製造している。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−93747号公報
【特許文献2】特開2009−58923号公報
【0004】
しかるに、光導波路シートの両端側は第1の光導入・導出部と第2の光導入・導出部からそれぞれ所定距離隔たった位置で正確に切断する必要があるが、光導入側および光導出側を含む領域は透明体で形成されているので、第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部を検出することができないため、光導波路シートの両端側を所定位置で切断することが困難である。
【0005】
このような問題を解消するために本出願人は、第1の光導入・導出部または第2の光導入・導出部の一方に光を導入するとともに該第2の光導入・導出部または該第1の光導入・導出部から導出される光の位置を検出し、該光の検出位置から側方に設定された所定距離の切断位置において光導波路シートの端部を切断する加工方法を特願2009−125054号として提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、光導波路シートの第2のクラッド層とコアパターンおよび第1のクラッド層における第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部に対応する位置に、光を直角方向に変換するために45度に傾斜した光路変換ミラーを形成するので、上記特願2009−125054号として提案した加工方法を実施するためには、シート基板の表面側をダイシングテープに貼着してシート基板の裏面に配設された第2のクラッド層とコアパターンおよび第1のクラッド層に光路変換ミラーを形成した後に、光導波路シートをダイシングテープから剥離し表裏を反転して第2のクラッド層をダイシングテープに張り替えて光導波路シートの端部を切断しなければならず、生産性の面で必ずしも満足し得るものではない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、光導波路シートの第2のクラッド層とコアパターンおよび第1のクラッド層における第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部に対応する位置に光を直角方向に変換するための45度に傾斜した光路変換ミラーを形成するとともに、光導波路シートの両端側を効率よく高精度に切断することができる光導波路シートの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、シート基板と、該シート基板の裏面に形成された第1のクラッド層と、該第1のクラッド層に形成され光導波路を形成するコアパターンと、該コアパターンを覆うように積層された第2のクラッド層とからなり、該シート基板の表面における該光導波路を形成するコアパターンの一端側に直角方向から光を導入または導出する第1の光導入・導出部と、光導波路を形成するコアパターンの他端側に直角方向から光を導入または導出する第2の光導入・導出部とを有する光導波路デバイスが複数並列に形成された光導波路シートの両端部を所定位置で切断する光導波路シートの加工方法であって、
該光導波路シートの該シート基板の表面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着する光導波路シート支持工程と、
該ダイシングテープに貼着された該光導波路シートを該ダイシングテープを介して切削装置のチャックテーブルに保持し、該第2のクラッド層と該コアパターンおよび該第1のクラッド層における該第1の光導入・導出部および該第2の光導入・導出部に対応する位置に45度の傾斜面を有する切削ブレードによって該光導波路に対して45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラーおよび第2の光路変換ミラーを形成するミラー形成工程と、
該ミラー形成工程が実施された該光導波路シートを該ダイシングテープを介して切削装置のチャックテーブルに配設された反射板上に保持し、該第1の光路変換ミラーまたは第2の光路変換ミラーの一方に光を導入し該反射板で反射した光が該第1の光路変換ミラーまたは該第2の光路変換ミラーと該コアパターンと該第2の光路変換ミラーまたは該第1の光路変換ミラーおよび該反射板を介し該第2の光路変換ミラーまたは該第1の光路変換ミラーから洩れて該第2の光導入・導出部または該第1の光導入・導出部から導出される位置を検出し、該光の検出位置から側方に設定された所定距離の切断位置において光導波路シートの端部を切断する切断工程と、を含む
ことを特徴とする光導波路シートの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による光導波路シートの加工方法においては、光導波路シートのシート基板の表面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態で、光導波路シートの第2のクラッド層とコアパターンおよび第1のクラッド層における第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部に対応する位置に光を直角方向に変換するための45度に傾斜した光路変換ミラーを形成するミラー形成工程と、チャックテーブルに配設された反射板を用いて第1の光導入・導出部および第2の光導入・導出部をシート基板の裏面側から検出して光導波路シートの両端側を所定位置で切断する切断工程を実施することができるので、ミラー形成工程を実施した後に光導波路シートをダイシングテープから剥離し表裏を反転して張り替える必要がないため、光導波路シートを効率よく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光導波路シートの加工方法によって加工される光導波路シートの平面図。
【図2】図1に示す光導波路シートの断面図。
【図3】本発明による光導波路シートの加工方法を実施するための切削装置の斜視図。
【図4】図3に示す切削装置を構成する第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットを簡略化して示す説明図。
【図5】図3に示す第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットに装着される第1の切削ブレードおよび第2の切削ブレードの説明図。
【図6】図3に示す第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットに装着される第1の発光兼光検出手段および第2の発光兼光検出手段のブロック図。
【図7】図3に示す切削装置に装備される制御手段のブロック図。
【図8】図1に示す光導波路シートを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態を示す平面図。
【図9】本発明による光導波路シートの加工方法におけるミラー形成工程の説明図。
【図10】図9に示すミラー形成工程が実施された光導波路シートの断面図。
【図11】本発明による光導波路シートの加工方法における切断工程を実施する際に、図3に示す切削装置に装備されたチャックテーブルに配設された反射板上に光導波路シートをダイシングテープを介して保持した状態を示す説明図。
【図12】本発明による光導波路シートの加工方法における切断位置検出工程の説明図。
【図13】図12に示す切断位置検出工程における第1の切断位置検出工程と第2の切断位置検出工程の説明図。
【図14】本発明による光導波路シートの加工方法における第1の切断工程の説明図。
【図15】本発明による光導波路シートの加工方法における第2の切断工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による光導波路シートの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明による光導波路シートの加工方法によって個々の光導波路デバイスに切断される光導波路シート10の平面図が示されている。図1に示す光導波路シート10は、シート基板100に複数の光導波路デバイス110が平行に形成されている。この各光導波路デバイス110は、図2に示すようにシート基板100の裏面100b(図2において下面)に形成された第1のクラッド層111と、該第1のクラッド層111に形成され光導波路を形成するコアパターン112と、該コアパターン112を覆うように積層された第2のクラッド層113とからなっている。シート基板100は例えばポリイミド樹脂によって形成され、第1のクラッド層111および第2のクラッド層113は例えばフッ素ポリイミド等の光透過性を有する透明樹脂によって形成されている。また、光導波路を形成するコアパターン112は、第1のクラッド層111および第2のクラッド層113の屈折率より高い屈折率を有するフッ素ポリイミド等の光透過性を有する透明樹脂によって形成されている。このように構成された光導波路シート10は、シート基板100の表面100aにおける光導波路を形成するコアパターン112の一端側に直角方向から光を導入または導出する第1の光導入・導出部114aと、光導波路を形成するコアパターン112の他端側に直角方向から光を導入または導出する第2の光導入・導出部114bが設定されている。このような構成の光導波路デバイス110が図1に示すようにシート基板100に分割予定ライン115に仕切られて複数並列に形成され光導波路シート10を構成している。このような構成の光導波路シートの製造方法については、例えば特開2007−93747号公報および特開2009−58923号公報を参照されたい。
【0013】
このように構成された光導波路シート10は、第1のクラッド層111および第2のクラッド層113とコアパターン112における第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bに対応する位置に図2において2点差線で示すように45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成するとともに、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離隔たった切断位置で切断し、更に、各光導波路デバイス110を仕切る分割予定ライン115に沿って切断することにより、個々の光導波路デバイス110を形成する。
【0014】
次に、光導波路シート10に上記第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成するとともに、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離隔たった切断位置で切断するための切削装置について、図3乃至図7を参照して説明する。
図3には、本発明による光導波路シートの加工方法を実施するための切削装置の一実施形態の斜視図が示されている。
図示の実施形態における切削装置は、静止基台2を具備している。この静止基台2の側面にはカセット載置機構3が配設されている。カセット載置機構3は、静止基台2の側面に上下方向に設けられた2本のガイドレール31、31に摺動可能に配設されたカセット載置台32と、カセット載置台32をガイドレール31、31に沿って上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させるための昇降手段33を具備している。そして、カセット載置台32の上面には、被加工物である上記光導波路シート10を収納するカセット4が載置される。このカセット4に収容される光導波路シート10は、後述するように環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態でカセット4に収容される。
【0015】
図示の実施形態における切削装置は、上記カセット載置台32上に載置されたカセット4に収納されている加工前の光導波路シートを搬出するとともに、カセット4に加工後の光導波路シートを搬入するための被加工物搬出入機構5を具備している。被加工物搬出入機構5は、光導波路シートを保持するハンド51と、該ハンド51を支持するハンド支持部材52と、該ハンド支持部材52に支持されたハンド51を矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめるハンド移動手段53とからなっている。ハンド51は、薄板材によってフォーク状に形成され、その表面には内部に形成された図示しない通路と連通する吸引保持孔511が形成されており、この吸引保持孔511は上記図示しない通路を介して図示しない吸引制御手段に連通されている。ハンド移動手段53は、静止基台2の前面にY軸方向に延在して配設され回転可能に支持された雄ネジロッド531と、該雄ネジロッド531を回転せしめる正転および逆転可能なパルスモータ532とからなっており、雄ネジロッド531に上記ハンド支持部材52の基端部に設けられた雌ネジ穴521が螺合するようになっている。従って、パルスモータ532を一方向に回転駆動するとハンド支持部材52に支持されたハンド51は矢印Y1で示す方向に移動せしめられ、パルスモータ532を他方向に回転駆動するとハンド支持部材52に支持されたハンド51は矢印Y2で示す方向に移動せしめられる。即ち、ハンド移動手段53は、ハンド51を上記カセット載置台32上に載置されたカセット4内に進入する進入位置と、後述するチャックテーブルの被加工物載置領域の上方位置である搬出位置と、該搬出位置から退避する退避位置に作動する。
【0016】
図示の実施形態における切削装置は、上記被加工物搬出入機構5によって搬出された被加工物を保持するチャックテーブル機構6と、該チャックテーブル機構6に保持された被加工物を切削する切削機構7と、該切削機構7によって切削された被加工物を洗浄する洗浄機構8と、上記被加工物搬出入機構5によって搬出された被加工物をチャックテーブル機構6の後述するチャックテーブルに搬送するとともに該チャックテーブルに保持された加工後の被加工物を洗浄機構8に搬送する被加工物搬送機構9を具備している。
【0017】
チャックテーブル機構6は、静止基台2上にY軸方向と直交する矢印Xで示す切削送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された2本のガイドレール61、61と、該2本のガイドレール61、61上に摺動可能に配設された移動基台62と、該移動基台62上に配設された円筒状の支持部材64に回転可能に支持された被加工物を保持するチャックテーブル63を具備している。このチャックテーブル63は、円筒状の支持部材64に回転可能に支持されたチャックテーブル本体631と、該チャックテーブル本体631の上面に配設された吸着チャック632とを具備している。吸着チャック632は、図示しない吸引手段に接続されており、適宜負圧が作用せしめられるようになっている。従って、吸着チャック632上に載置された被加工物は、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック632上に吸引保持される。また、チャックテーブル63は、円筒状の支持部材64内に配設されたパルスモータ65によって回動せしめられるようになっている。
【0018】
また、チャックテーブル機構6は、チャックテーブル63が配設された移動基台62を2本のガイドレール61、61に沿ってX軸方向に移動させるための切削送り手段66を具備している。切削送り手段66は、上記2本のガイドレール61、61の間に平行に配設された雄ネジロッド661と、移動基台62に装着され雄ネジロッド661に螺合する図示しない雌ネジブロックと、雄ネジロッド661を回転駆動するための図示しないパルスモータ等の駆動源を含んでいる。従って、図示しないパルスモータによって雄ネジロッド661を回動することにより、チャックテーブル63が配設された移動基台62がX軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態における切削装置は、上記チャックテーブル63のX軸方向位置を検出するためのチャックテーブル位置検出手段60を具備している。このチャックテーブル位置検出手段60は、上記ガイドレール61に隣接してX軸方向に沿って配設されたリニアスケール601と、チャックテーブル63が配設された支持台62に配設された読み取りヘッド602とからなっており、読み取りヘッド602は検出信号を後述する制御手段に送る。
【0020】
次に、上記切削機構7について説明する。
切削機構7は、上記静止基台2上に固定された門型の支持台71を具備している。この門型の支持台71は、上記切削領域6bを跨ぐように配設されている。支持台71の側壁にはY軸方向に沿って平行に配設された2本のガイドレール711、711が設けられているとともに、このガイドレール711、711に沿って第1の基部73aおよび第2の基部73bがそれぞれY軸方向に摺動可能に配設されている。図示の実施形態における切削機構7は、第1の基部73aおよび第2の基部73bをそれぞれガイドレール711、711に沿ってY軸方向に移動するための第1の割り出し送り手段72aおよび第2の割り出し送り手段72bを具備している。第1の割り出し送り手段72aおよび第2の割り出し送り手段72bは、それぞれ2本のガイドレール711、711の間に平行に配設された雄ネジロッド721a、721bと、該雄ネジロッド721aおよび721bを回転駆動するためのパルスモータ722aおよび722bを具備しており、パルスモータ722aおよび722bを駆動して雄ネジロッド721aおよび721bを回動することにより、第1の基部73aおよび第2の基部73bをガイドレール711、711に沿ってY軸方向に移動することができる。
【0021】
上記第1の基部73aおよび第2の基部73bにはそれぞれ一対のガイドレール731aおよび731bが矢印Zで示す切り込み送り方向(Z軸方向)に沿って設けられており、このガイドレール731aおよび731bに沿って第1の懸垂ブラケット74aおよび第2の懸垂ブラケット74bがそれぞれZ軸方向に摺動可能に配設されている。第1の基部73aおよび第2の基部73bにはそれぞれ第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75bが配設されている。この第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75bは、それぞれパルスモータ751aおよび751bと、該パルスモータ751aおよび751bによって回動せしめられる図示しない雄ネジロッドを備えており、該雄ネジロッドが第1の支持部74aおよび第2の支持部74bに装着された雌ネジブロックに螺合するように構成されている。従って、パルスモータ751aおよび751bによって図示しない雄ネジロッドを回動することにより、それぞれ第1の懸垂ブラケット74aおよび第2の懸垂ブラケット74bをガイドレール731aおよび731bに沿って上記チャックテーブル63の上面である保持面に垂直なZ軸方向に移動することができる。
【0022】
上記第1の懸垂ブラケット74aおよび第2の懸垂ブラケット74bには、第1の切削手段としての第1のスピンドルユニット76aと第2の切削手段としての第2のスピンドルユニット76bが装着されている。この第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bについて、簡略化して示されている図4を参照して説明する。第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bは、それぞれ第1の懸垂ブラケット74aおよび第2の懸垂ブラケット74bに固定された第1のスピンドルハウジング761aおよび第2のスピンドルハウジング761bと、該第1のスピンドルハウジング761aおよび第2のスピンドルハウジング761bにそれぞれ回転可能に支持された第1の回転スピンドル762aおよび第2の回転スピンドル762bと、該第1の回転スピンドル762aおよび第2の回転スピンドル762bの一端部に装着された第1の切削ブレード763aおよび第2の切削ブレード763bと、第1の回転スピンドル762aおよび第2の回転スピンドル762bをそれぞれ回転駆動する第1のサーボモータ764aおよび第2の第1のサーボモータ764bとからなっている。このように構成された第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bは、第1の切削ブレード763aと第2の切削ブレード763bが互いに対向するように配設されている。即ち、第1のスピンドルユニット76aと第2のスピンドルユニット76bは、それぞれ軸芯がY軸方向に向くように一直線上に配設されている。なお、第1の切削ブレード763aと第2の切削ブレード763bは、上記図1および図2に示す光導波路シート10に第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成する場合には図5の(a)に示すように切れ刃に45度の傾斜面を有する切削ブレード763a1および763b1が用いられ、上記光導波路シート10を切断する場合には図5の(b)に示す切断用の切削ブレード763a2および763b2が用いられる。
【0023】
このように構成された第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bには、それぞれ発光手段の機能と光検出手段の機能を有する第1の発光兼光検出手段77aおよび第2の発光兼光検出手段77bが配設される。第1の発光兼光検出手段77aおよび第2の発光兼光検出手段77bは、図6に示すようにそれぞれ顕微鏡771と、CCDカメラ等の撮像手段772と、顕微鏡771と撮像手段772との間に配設されたハーフ反射鏡773と、該ハーフ反射鏡773に向けて光を投光する光源774とによって構成されている。このように構成された第1の発光兼光検出手段77aおよび第2の発光兼光検出手段77bは、それぞれ光源774が後述する制御手段によって制御されるとともに撮像手段772によって撮像された検出信号を制御手段に送る。
【0024】
図3に戻って説明を続けると、図示の実施形態における切削装置は、上記第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bのY軸方向位置を検出するための切削位置検出手段70を具備している。この切削位置検出手段70は、上記支持台71にY軸方向に沿って配設されたリニアスケール701と、第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bにそれぞれ配設された第1の読み取りヘッド702aおよび第2の読み取りヘッド702bとからなっており、第1の読み取りヘッド702aおよび第2の読み取りヘッド702bは検出信号を後述する制御手段に送る。
【0025】
図示の実施形態における切削装置の上記洗浄機構8は、上記カセット載置台32とチャックテーブル63の被加工物載置領域6aとを結ぶ延長線上に配設されており、スピンナーテーブル81を有する周知のスピンナー洗浄・乾燥手段からなっている。上記被加工物搬送機構9は、吸着パッド91と、該吸着パッド91を支持するパッド支持部材92と、該パッド支持部材92に支持された吸着パッド91をY軸方向に移動せしめるパッド移動手段93とからなっている。吸着パッド91は、図示しない吸引手段に接続されている。パッド支持部材92は、エアシリンダ921によって吸着パッド91を上下方向に移動可能に支持している。パッド移動手段93は、上記門型の支持台71にY軸方向に延在して配設され回転可能に支持された雄ネジロッド931と、該雄ネジロッド931を回転せしめる正転および逆転可能なパルスモータ932とからなっており、雄ネジロッド931に上記パッド支持部材92の基端部に設けられた雌ネジ穴922が螺合するようになっている。従って、パルスモータ932を一方向に回転駆動するとパッド支持部材92に支持された吸着パッド91は矢印Y1で示す方向に移動せしめられ、パルスモータ932を他方向に回転駆動するとパッド支持部材92に支持された吸着パッド91は矢印Y2で示す方向に移動せしめられる。
【0026】
図示の実施形態における切削装置は、図7に示す制御手段20を具備している。制御手段20はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206とを備えている。このように構成された制御手段20の入力インターフェース205には、第1の発光兼光検出手段77aの撮像手段772および第2の発光兼光検出手段77bの撮像手段772、チャックテーブル位置検出手段60の読み取りヘッド602、切削位置検出手段70の第1の読み取りヘッド702aおよび第2の読み取りヘッド702b等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース206からは上記昇降手段33、被加工物搬出入機構5、チャックテーブル63を回転駆動するパルスモータ65、切削送り手段66、第1の割り出し送り手段72aおよび第2の割り出し送り手段72b、第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75b、第1のサーボモータ764aおよび第2の第1のサーボモータ764b、第1の発光兼光検出手段77aの光源774および第2の発光兼光検出手段77bの光源774、洗浄機構8、被加工物搬送機構9等に制御信号を出力する。
【0027】
図示の実施形態における切削装置は以上のように構成されており、この切削装置によって光導波路シート10に第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成するとともに、光導波路シート10を所定位置で切断する加工方法について説明する。
上記図1および図2に示す光導波路シート10に第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成するとともに、光導波路シート10を所定位置で切断する加工方法を実施するに際し、光導波路シート10は図8に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面にシート基板100の表面100a側を貼着する(光導波路シート支持工程)。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された光導波路シート10は、第2のクラッド層113が上側となる。なお、ダイシングテープTは光透過性を有する樹脂シートが用いられる。このように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された光導波路シート10は、上記カセット4に所定枚数収容される。そして、光導波路シート10が収容されたカセット4をカセット載置台32上に載置する。また、上記図1および図2に示す光導波路シート10を構成する各光導波路デバイス110の第1の光導入・導出部114aと第2の光導入・導出部114bの設計上の位置は、設計値として制御手段20のランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納される。そして先ず、光導波路シート10の第2のクラッド層113と光導波路を形成するコアパターン112および第1のクラッド層111における第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bに対応する位置に45度の傾斜面を有する切削ブレードによって光導波路に対して45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bを形成するミラー形成工程を実施する。なお、このミラー形成工程を実施する際には、第1の回転スピンドル762aおよび第2の回転スピンドル762bに図5の(a)に示す切削ブレード763a1および763b1が装着される。
【0028】
ミラー形成工程を実施するために切削加工開始スイッチ(図示せず)が投入されると、カセット載置機構3の昇降手段33を作動してカセット載置台32に載置されたカセット4を搬出入位置に位置付ける。カセット4が搬出入位置に位置付けられたら、被加工物搬出入機構5のハンド移動手段53を作動してハンド51を矢印Y1で示す方向に移動し、カセット10内に進入せしめて所定の棚上に載置された光導波路シート10(環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された状態)を保持する。次に、ハンド移動手段53を作動してハンド51を矢印Y2で示す方向に移動し、被加工物載置領域6aの上方である搬出位置に位置付ける。この間に、被加工物搬送機構9のパッド移動手段93を作動して吸着パッド91を被加工物載置領域6aの上方に位置付けている。この結果、搬出位置に位置付けられたハンド51上に支持されている光導波路シート10(環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された状態)は、被加工物載置領域6aに位置付けられた吸着パッド91の下側に位置付けられることになる。次に、被加工物搬送機構9のエアシリンダ921を作動して、吸着パッド91を光導波路シート10に接する位置まで下降させる。そして、図示しない吸引手段を作動して吸着パッド91に光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持する。
【0029】
吸着パッド91によって光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持したならば、被加工物搬出入機構5のハンド移動手段53を作動してハンド51を矢印Y2で示す方向に移動し、ハンド51を洗浄機構8が配設されている退避位置に位置付ける。次に、被加工物搬送機構9のエアシリンダ921を作動して、光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持した吸着パッド91を下降し、光導波路シート10を被加工物載置領域6aに位置付けられているチャックテーブル機構6のチャックテーブル63上に載置する。そして、吸着パッド91による光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFの吸引保持を解除するとともに、図示しない吸引手段を作動してチャックテーブル63上に光導波路シート10を吸引保持する。なお、光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは、チャックテーブル63に装着された図示しないフレーム支持手段によって支持される。このようにしてチャックテーブル63上に吸引保持された光導波路シート10は、所定の座標値に位置付けられたことになる。
【0030】
上述したように光導波路シート10をチャックテーブル63上に吸引保持したならば、制御手段20は切削送り手段66を作動して、光導波路シート10を保持したチャックテーブル63を加工領域6bに位置付ける。このようにして加工領域6bに位置付けられたチャックテーブル63に吸引保持されている光導波路シート10は、図9に示す座標値に位置付けられたことになる。次に、制御手段20は、図9に示すように第1の割り出し送り手段72aを作動して第1のスピンドルユニット76aの第1の切削ブレード763a1をチャックテーブル63に吸引保持された光導波路シート10における第1の光導入・導出部114aのランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている設計値に対応する第1の切削位置(y01)に位置付けるとともに、第2の割り出し送り手段72bを作動して第2のスピンドルユニット76bの第2の切削ブレード763b1を光導波路シート10における第2の光導入・導出部114bのランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている設計値に対応する第2の切削位置(y02)に対応した位置に位置付ける。次に、第1の切削ブレード763a1および第2の切削ブレード763b1を回転するとともに、第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75bを作動して第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bを下降し、所定の切り込み送り位置に位置付ける。
【0031】
次に、制御手段20は、第1の切削ブレード763a1および第2の切削ブレード763b1を図9において矢印で示す方向に所定の回転速度で回転しつつ、チャックテーブル移動手段64を作動してチャックテーブル63を図9において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で切削送りする。この結果、図10に示すように光導波路シート10の第2のクラッド層113と光導波路を形成するコアパターン112および第1のクラッド層111には、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bに対応する位置に45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bが形成される。
【0032】
上述したようにミラー形成工程が終了したら、図3に示す加工領域6bに位置しているチャックテーブル63を被加工物載置領域6aに移動するとともに、光導波路シート10の吸引保持を解除する。そして、被加工物搬送機構9を作動して吸着パッド91によって光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持し、洗浄機構8のスピンナーテーブル81上に搬送する。この間に被加工物搬出入機構5のハンド51は、被加工物載置領域6aの上方である搬出位置に位置付けられる。スピンナーテーブル81上に搬送された加工後の光導波路シート10は、ここで洗浄および乾燥される(洗浄工程)。このようにして加工後の光導波路シート10が洗浄および乾燥されたならば、被加工物搬送機構9を作動して吸着パッド91によって加工後の光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持し、被加工物載置領域6aの上方である搬出位置に位置付けられている被加工物搬出入機構5のハンド51の上側に位置付ける。そして、吸着パッド91を下降して光導波路シート10をハンド51上に載置し、吸着パッド91による加工後の光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFの吸引保持を解除するとともに、ハンド51の上面に加工後の光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持した環状のフレームFを吸引保持する。次に、被加工物搬出入機構5のハンド移動手段53を作動し、ハンド51に吸引保持された環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている加工後の光導波路シート10をカセット4の所定の収容室に収容する。そして、カセット4に最初に収容された所定枚数の光導波路シート10に対して上述したようにミラー形成工程を実施する。
【0033】
上述したようにミラー形成工程を実施することにより光導波路シート10の第2のクラッド層113と光導波路を形成するコアパターン112および第1のクラッド層111には、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bに対応する位置に45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラー116aおよび第2の光路変換ミラー116bが形成されるが、第1の切削ブレード763a1および第2の切削ブレード763b1のZ軸方向の切り込み送り位置が所定値より僅かに変位してもコアパターン112の第1の光路変換ミラー116a位置および第2の光路変換ミラー116bのY軸方向の位置が変化する。この結果、光導波路シート10の第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bが設計値から僅かに変位する場合がある。
【0034】
上述した光導波路シート10は、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離隔たった切断位置で正確に切断するとともに、各光導波路デバイス110を仕切る分割予定ライン115に沿って切断することにより、個々の光導波路デバイス110を形成する。しかるに、上述したように第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bが設計値から僅かに変位すると、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bを含む領域は透明体で形成されているので、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bを検出することができないため、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離隔たった切断位置を特定することが困難である。
【0035】
以下、光導波路シート10を第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離隔たった切断位置で確実に切断することができる切断工程を上記図3乃至図7に示す切削装置を用いて実施する例について説明する。なお、この切断工程を実施する場合には、第1の回転スピンドル762aおよび第2の回転スピンドル762bに図5の(b)に示す切断用の切削ブレード763a2および763b2が装着される。また、上記切削装置のチャックテーブル63の吸着チャック632上には、図11に示すように反射板635を配設する。なお、反射板635には、中央部の領域に表面から裏面に貫通する複数の吸引孔635aが形成されている。このように、チャックテーブル63の吸着チャック632上に配設された反射板635の表面(上面)に、上記ミラー形成工程が実施されカセット4に収容されている光導波路シート10(環状のダイシングフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された状態)を搬出し、ダイシングテープTを介して載置する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、吸着チャック632および反射板635の複数の吸引孔635aを通してダイシングテープTの下面に負圧を作用せしめ、反射板20の表面(上面)にダイシングテープTを介して光導波路シート10を吸引保持する。なお、光導波路シート10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは、チャックテーブル63に装着された図示しないフレーム支持手段によって支持される。
【0036】
チャックテーブル63の吸着チャック632上に配設された反射板635の表面(上面)に上記ミラー形成工程が実施された光導波路シート10をダイシングテープTを介して吸引保持したならば、制御手段20は切削送り手段66を作動して、上述したミラー形成工程が実施された光導波路シート10を吸引保持したチャックテーブル63を上記第1の発光兼光検出手段77aと第2の発光兼光検出手段77bが配設されているY軸上のアライメント領域に位置付ける。チャックテーブル63がアライメント領域に位置付けられると、チャックテーブル63上の光導波路シート10は、図12に示す座標位置に位置付けられた状態となる。次に、制御手段20は第1の割り出し送り手段72aを作動して第1の基部73aに取り付けられた第1のスピンドルユニット76aに配設されている第1の発光兼光検出手段77aを図12に示すようにチャックテーブル63に保持された光導波路シート10の第1の光導入・導出部114aが位置する任意の領域における上方位置に位置付ける。次に、制御手段20は第1の発光兼光検出手段77aの光源774を点灯し、図13の(a)に示すように第1の光路変換ミラー116aに向けて光を導入する。この結果、第1の光路変換ミラー116aに向けて導入された光は、光導波路シート10およびダイシングテープTを通して反射板635に到達し、該反射板635で反射した光が第1の光路変換ミラー116aによって90度方向変換されてコアパターン112を通り、第2の光路変換ミラー116bによって図13の(a)において90度下方に方向変換されてダイシングテープTを通して反射板635に到達し、該反射板635で反射して第2の光路変換ミラー116bから洩れた光が第2の光導入・導出部114bに向けて導出される。このようにして第2の光導入・導出部114bに向けて導出された光は、第2の発光兼光検出手段77bの顕微鏡771およびハーフ反射鏡773を通して撮像手段772に達し、第2の光導入・導出部114bに向けて導出された光が検出される。そして、制御手段20は第2の割り出し送り手段72bおよび切削送り手段66を作動して第2の基部73bに取り付けられた第2のスピンドルユニット76bに配設されている第2の発光兼光検出手段77bの撮像手段772によって撮像された画像の中心を図12に示すように第2の光導入・導出部114bから導出された光の中心に合わせる。この状態で制御手段20は、スピンドル位置検出手段70の第2の読み取りヘッド702bからの検出信号を入力し、Y座標値(y2b)をランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納する(Y座標値検出工程)。このようにしてY座標値検出工程を実施したならば、制御手段20は第2の光導入・導出部114bから所定距離(S)(例えば5mm)側方(図12において上方)に隔たった第2の切断位置(y2)を求める。即ち、第2の切断位置(y2)は、(y2)=(y2b+S)で求めることができる。そして、制御手段20は求めた第2の切断位置(y2)をランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納する(第1の切断位置検出工程)。
【0037】
次に、制御手段20は第2の発光兼光検出手段77bの光源774を点灯し、図13の(b)に示すように第2の光路変換ミラー116bに向けて光を導入する。この結果、第2の光路変換ミラー116bに向けて導入された光は、光導波路シート10およびダイシングテープTを通して反射板635に到達し、該反射板635で反射した光が第2の光路変換ミラー116bによって90度方向変換されてコアパターン112を通り、第1の光路変換ミラー116aによって図13の(b)において90度下方に方向変換されてダイシングテープTを通して反射板635に到達し、該反射板635で反射して第1の光路変換ミラー116aから洩れた光が第1の光導入・導出部114aに向けて導出される。そして、制御手段20は第1の割り出し送り手段72aおよび切削送り手段66を作動して第1の基部73aに取り付けられた第1のスピンドルユニット76aに配設されている第1の発光兼光検出手段77aの撮像手段772によって撮像された画像の中心を図12に示すように第1の光導入・導出部114aから導出された光の中心に合わせる。この状態で制御手段20は、スピンドル位置検出手段70の第1の読み取りヘッド702aからの検出信号を入力し、Y座標値(y1a)をランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納する(Y座標値検出工程)。このようにしてY座標値検出工程を実施したならば、制御手段20は第1の光導入・導出部114aから所定距離(S)(例えば5mm)側方(図12において下方)に隔たった第1の切断位置(y1)を求める。即ち、第1の切断位置(y1)は、(y1)=(y1a−S)で求めることができる。そして、制御手段20は求めた第1の切断位置(y1)をランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納する(第2の切断位置検出工程)。
【0038】
次に、上述した第1の切断位置検出工程および第2の切断位置検出工程を実施したならば、制御手段20はチャックテーブル63を回転駆動するパルスモータ65を作動して、チャックテーブル63を90度回動する。そして、顕微鏡を備えた第1の発光兼光検出手段77aまたは第2の発光兼光検出手段77bを作動して分割予定ライン115(図1参照)を検出し、制御手段20は各分割予定ライン115のY軸座標値をランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納する(分割予定ライン検出工程)。このようにして分割予定ライン検出工程を実行したならば、制御手段20はチャックテーブル63を回転駆動するパルスモータ65を作動して、チャックテーブル63を90度回動してチャックテーブル63に保持された光導波路シート10の位置を上記図12に示す状態に戻す。
【0039】
次に、制御手段20は切削送り手段66を作動して、光導波路シート10を吸引保持したチャックテーブル63を加工領域6bに移動する。そして、制御手段20は、図14に示すように第1の割り出し送り手段72aを作動して第1のスピンドルユニット76aの第1の切削ブレード763a2をチャックテーブル63に吸引保持された光導波路シート10における第1の切断位置(y1)に対応した位置に位置付けるとともに、第2の割り出し送り手段72bを作動して第2のスピンドルユニット76bの第2の切削ブレード763b2を光導波路シート10における第2の切断位置(y2)に対応した位置に位置付ける。次に、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2を回転するとともに、第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75bを作動して第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bを下降し、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2の外周縁が光導波路シート10の下面即ちダイシングテープTに達する切り込み送り位置に位置付ける。
【0040】
次に、制御手段20は、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2を図14において矢印で示す方向に所定の回転速度で回転しつつ、チャックテーブル移動手段64を作動してチャックテーブル63を図14において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で切削送りする。この結果、チャックテーブル63に保持された光導波路シート10は、第1の光導入・導出部114aおよび第2の光導入・導出部114bから側方にそれぞれ所定距離(S)隔たった第1の切断位置(y1)および第2の切断位置(y2)で正確に切断される(第1の切断工程)。
【0041】
上述した第1の切断工程を実施したならば、制御手段20はチャックテーブル63を回転駆動するパルスモータ65を作動して、チャックテーブル63を90度回動する。このようにして90度回動したチャックテーブル63上の光導波路シート10は、図15に示す座標位置に位置付けられた状態となる。
【0042】
次に、制御手段20は、図15に示すように第2の割り出し送り手段72bを作動して第2のスピンドルユニット76bの第2の切削ブレード763b2をチャックテーブル63に吸引保持された光導波路シート10に形成された分割予定ライン115における図15において最上位の分割予定ライン115に対応した位置に位置付けるとともに、第1の割り出し送り手段72aを作動して第1のスピンドルユニット76aの第1の切削ブレード763a2を光導波路シート10に形成された分割予定ライン115における図15において中間位置に対応した位置に位置付ける。そして、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2を回転するとともに、第1の切り込み送り手段75aおよび第2の切り込み送り手段75bを作動して第1のスピンドルユニット76aおよび第2のスピンドルユニット76bを下降し、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2の外周縁が光導波路シート10の下面即ちダイシングテープTに達する切り込み送り位置に位置付ける。
【0043】
次に、制御手段20は、第1の切削ブレード763a2および第2の切削ブレード763b2を図15において矢印で示す方向に所定の回転速度で回転しつつ、チャックテーブル移動手段64を作動してチャックテーブル63を図15において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で切削送りする。この結果、光導波路シート10は、図15において最上位の分割予定ライン115および中間位置の分割予定ライン115に沿って切断される(第2に切断工程)。このように図15において最上位の分割予定ライン115および中間位置の分割予定ライン115に沿って切断したならば、第1の切削ブレード763a2と第2の切削ブレード763b2の間隔を維持しながら分割予定ライン115の間隔に従ってY軸方向に割り出し送りして全ての分割予定ライン115に沿って第2に切断工程を実施する。この結果、光導波路シート10は個々の光導波路デバイス110に分割される。なお、個々に分割された光導波路デバイス110は、ダイシングテープTに貼着されているのでバラバラにはならず、光導波路シート10の形態が維持されている。
【0044】
なお、上記第2の切断工程において、光導波路シート10に分割予定ライン115が形成されていない場合には、各光導波路デバイス110に対して上述したY座標値検出工程を実施して各第2の光導入・導出部114bのX座標値を求め、この各第2の光導入・導出部114bのX座標値をY座標値に座標変換する。そして制御手段20は、隣接する第2の光導入・導出部114bのY座標値を2分する各切断位置で上記第2の切断工程を実施する。
【0045】
以上のようにして、第1の切断工程および第2の切断工程が実施された光導波路シート10は、上述した洗浄工程が実施されてカセット4に戻される。そして、カセット4に収容された所定枚数の光導波路シート10に対して上述したように第1の切断工程および第2の切断工程を実施する。
【0046】
以上のように本発明によれば、光導波路シート10のシート基板100の表面を環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着した状態で上記ミラー形成工程と第1の切断工程および第2の切断工程を実施することができるので、ミラー形成工程を実施した後に光導波路シート10をダイシングテープTから剥離し表裏を反転して張り替える必要がないため、光導波路シート10を効率よく加工することができる。
【符号の説明】
【0047】
2:静止基台
3:カセット載置機構
4:カセット
5:被加工物搬出入機構
6:チャックテーブル機構
60:チャックテーブル位置検出手段
61:ガイドレール
62:移動基台
63:チャックテーブル
66:チャックテーブル移動手段
7:切削機構
70:切削位置検出手段
71:支持台
711:ガイドレール
73a:第1の基部
73b:第2の基部
74a:第1の懸垂ブラケット
74b:第2の懸垂ブラケット
75a:第1の切り込み送り手段
75b:第2の切り込み送り手段
76a:第1のスピンドルユニット
763a:第1の切削ブレード
76b:第2のスピンドルユニット
763b:第2の切削ブレード
77a:第1の発光兼光検出手段
77b:第2の発光兼光検出手段
8:洗浄機構
9:被加工物搬送機構
10:光導波路シート
20:制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基板と、該シート基板の裏面に形成された第1のクラッド層と、該第1のクラッド層に形成され光導波路を形成するコアパターンと、該コアパターンを覆うように積層された第2のクラッド層とからなり、該シート基板の表面における該光導波路を形成するコアパターンの一端側に直角方向から光を導入または導出する第1の光導入・導出部と、光導波路を形成するコアパターンの他端側に直角方向から光を導入または導出する第2の光導入・導出部とを有する光導波路デバイスが複数並列に形成された光導波路シートの両端部を所定位置で切断する光導波路シートの加工方法であって、
該光導波路シートの該シート基板の表面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着する光導波路シート支持工程と、
該ダイシングテープに貼着された該光導波路シートを該ダイシングテープを介して切削装置のチャックテーブルに保持し、該第2のクラッド層と該コアパターンおよび該第1のクラッド層における該第1の光導入・導出部および該第2の光導入・導出部に対応する位置に45度の傾斜面を有する切削ブレードによって該光導波路に対して45度の傾斜面を有する第1の光路変換ミラーおよび第2の光路変換ミラーを形成するミラー形成工程と、
該ミラー形成工程が実施された該光導波路シートを該ダイシングテープを介して切削装置のチャックテーブルに配設された反射板上に保持し、該第1の光路変換ミラーまたは第2の光路変換ミラーの一方に光を導入し該反射板で反射した光が該第1の光路変換ミラーまたは該第2の光路変換ミラーと該コアパターンと該第2の光路変換ミラーまたは該第1の光路変換ミラーおよび該反射板を介し該第2の光路変換ミラーまたは該第1の光路変換ミラーから洩れて該第2の光導入・導出部または該第1の光導入・導出部から導出される位置を検出し、該光の検出位置から側方に設定された所定距離の切断位置において光導波路シートの端部を切断する切断工程と、を含む
ことを特徴とする光導波路シートの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−27768(P2011−27768A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170102(P2009−170102)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】