説明

光導波路用樹脂組成物およびそれを用いた光導波路

【課題】アルカリ現像液によるコアパターンの形成が容易であり、その際にアルカリ現像液の劣化が抑制されて生産性の向上が図られる光導波路用樹脂組成物およびそれを用いた光導波路を提供する。
【解決手段】特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂〔(A)成分〕を主成分とし、その硬化用として光重合開始剤〔(B)成分〕を含有する光導波路用樹脂組成物であって、前記(A)成分は、(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基、エポキシ基及び水酸基の全ての官能基を一分子中に有する。そして、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に、光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路において、上記コア部を上記光導波路用樹脂組成物によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を構成するコア部の形成材料として用いられる光導波路用樹脂組成物ならびにそれを用いた光導波路に関するものである。詳しくは、アルカリ現像液によるコアパターン形成が容易である光導波路形成用樹脂組成物、およびそれを用いた光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスに組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。光導波路は、通常、光の通路であるコアが所定パターンに形成され、そのコアを覆うように、アンダークラッド層とオーバークラッド層とが形成されている。
【0003】
これらコア,アンダークラッド層およびオーバークラッド層を所定パターンに形成する場合、通常、各種形成材料が用いられている。例えば、上記コアをパターン形成する際には、感光性高分子材料が用いられ、つぎのようにしてコアが形成される。すなわち、アンダークラッド層上に、上記感光性高分子材料を用いて塗膜層を形成し、この塗膜層に対してパターンフィルムを介して紫外線照射し露光する。ついで、未露光部を溶剤類で除去してコアをパターン状に形成する方法が行なわれている。このようなコアの形成方法は、簡便でかつ低コスト化に適しているが、パターン化するために上記のように溶剤を使用する必要があり、作業上の安全および環境に対する負荷が問題となっている。
【0004】
このような背景のもと、溶剤に代わりアルカリ現像液によるコアパターンの形成が可能となる上記コア形成材料として、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ樹脂を含有するアルカリ現像型光導波路形成材料の開発が従来から行なわれてきた(特許文献1参照)。
【0005】
このようなアルカリ現像型光導波路形成材料となる樹脂組成物を用いて、コアパターン形成後に、アルカリ可溶性樹脂中の酸性官能基であるカルボキシル基と、エポキシ樹脂中のエポキシ基を熱硬化によりエステル化することで、耐熱性および耐湿性等の信頼性の特性向上を図ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−338202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載等の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の構成成分であるエポキシ樹脂が酸性官能基であるカルボキシル基を有しておらず、アルカリ現像液に対して、不溶成分となる。そのため、現像後のアルカリ現像液に、不溶成分である浮遊物や沈殿物等が発生し、現像液としての効率が悪くなり、液管理の点から量産性低下が課題となっていた。さらに、上記不溶成分である浮遊物や沈殿物が生じた状態のアルカリ現像液を用いて連続して現像を行った場合、コアパターン表面に浮遊物が再付着し、良好な形状のパターンが得られなくなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、アルカリ現像液によるコアパターンの形成が容易であり、その際にアルカリ現像液の劣化が抑制されて生産性の向上が図られる光導波路用樹脂組成物およびそれを用いた光導波路の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)成分を主成分とし、その硬化用に下記の(B)成分を含有する光導波路用樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の一般式(1)で表される構造単位を備えたアルカリ可溶性樹脂。
【化1】

(B)光重合開始剤。
【0010】
そして、本発明は、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記コア部が、上記第1の要旨である光導波路用樹脂組成物によって形成されている光導波路を第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、光導波路を構成するコアの形成材料として利用することができる樹脂組成物を求め、鋭意検討を重ねた。その検討の過程にて、(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基のこれら全ての官能基を一分子中に備えた構造を有する化合物を用いると、前述のような問題が生じず、アルカリ現像による不溶成分が生じないのではないかと想起し、このような化合物を突き止めるべくさらに研究を重ねた。その結果、前記一般式(1)で表される特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂を光導波路用樹脂組成物の構成成分として用いると、このアルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基の全ての官能基を一分子中に備えた特殊な構造を備えていることから、アルカリ現像液中に、不溶成分である浮遊物や沈殿物等が生じず、結果、形成されるコアパターン表面に上記不溶成分が付着するという問題が解決され、良好な形状のコアパターンが形成された光導波路が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明は、前記一般式(1)で表される構造単位を有する特殊なアルカリ可溶性樹脂〔(A)成分〕を主成分とし、その硬化用に光重合開始剤〔(B)成分〕を含有する光導波路用樹脂組成物であり、これをコア部形成に用いた光導波路である。このため、アルカリ現像の際に現像液に不溶成分が生じず、現像液の使用効率が向上し、現像液の管理の点からも光導波路の量産性向上が図られる。そして、光導波路のコア部が、上記光導波路用樹脂組成物によって形成されているため、コアパターン表面にアルカリ現像後の不溶成分が付着せず、良好な形状のコアパターンが得られ、その結果、信頼性の高い光導波路が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光導波路の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の光導波路の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
《光導波路用樹脂組成物》
本発明の光導波路用樹脂組成物は、主成分となる特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)と、光重合開始剤(B成分)とを用いて得られるものである。
【0016】
上記特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)は、下記の一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂である。
【0017】
【化2】

【0018】
すなわち、上記特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)は、(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基の全ての官能基を一分子中に有するという特徴を備えた樹脂である。上記一般式(1)中、特に好ましくはR1〜R3全てメチル基であり、R5およびR6が水素原子である。そして、上記一般式(1)で表される構造単位において、各繰り返し単位m,n,pは、ブロック重合であっても、ランダム重合であってもよいが、特に好ましくはブロック重合である。このような特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)としては、具体的には、カガワケミカル社製のENC材料等があげられる。
【0019】
上記特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)を光導波路用として用いる場合、光導波路用樹脂組成物に紫外線硬化性を付与するための前記光重合開始剤(B成分)が用いられる。
【0020】
上記光重合開始剤(B成分)としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類、フォスフィンオキサイド類等の光重合開始剤があげられる。具体的には、BASF社製のIRGACURE651、IRGACURE184、IRGACURE1173、IRGACURE500、IRGACURE2959、IRGACURE127、IRGACURE754、IRGACURE MBF、IRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE819、IRGACURE1800、DAROCURE TPO、DAROCURE4265、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE250、DAROCURE EHA等があげられる。これら光重合開始剤は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。さらに、上記光重合開始剤に加えて、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)およびその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)およびその誘導体、メラミンおよびその誘導体、グアナミンおよびその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミンの塩等の潜在性硬化剤を配合してもよい。
【0021】
そして、上記光重合開始剤(B成分)の配合量は、光導波路用樹脂組成物(溶剤を除く固形分)に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜10重量%である。すなわち、配合量が少なすぎると、充分な光硬化性を得ることが困難となり、配合量が多すぎると、良好なパターン形状が得られなくなる傾向がみられるからである。
【0022】
本発明の光導波路用樹脂組成物には、上記A成分およびB成分以外に、必要に応じて、例えば、接着性を高めるためにシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、オレフィン系オリゴマーやノルボルネン系ポリマー等のシクロオレフィン系オリゴマーやポリマー、合成ゴム、シリコーン化合物等の可撓性付与剤等の化合物、あるいは酸化防止剤、消泡剤等があげられる。これら添加剤は、本発明における効果を阻害しない範囲内にて適宜に配合される。
【0023】
《光導波路の作製》
つぎに、本発明の光導波路用樹脂組成物をコア部の形成に用いた光導波路について説明する。
【0024】
本発明の光導波路は、例えば、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備えており、上記クラッド層中に、光信号を伝搬する、所定パターンのコア部が形成されている。詳しくは、図1に示すように、基板1と、その基板1上に形成されたクラッド層2(アンダークラッド層2aとオーバークラッド層2bからなる)とを備え、上記クラッド層2中に、所定パターンで、光信号を伝搬するコア部3が形成された構成からなる。そして、本発明では、上記コア部3を、前述の特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A成分)および光重合開始剤(B成分)を含有する光導波路用樹脂組成物によって形成される。なお、本発明の光導波路において、上記クラッド層2は、コア部3よりも屈折率が小さくなるよう形成する必要がある。
【0025】
本発明において、光導波路は、例えば、図2に示すような工程を経由することにより製造することができる。すなわち、図2(a)に示すように、まず基板1を準備し、図2(b)に示すように、その基板1面に、アンダークラッド層形成材料となるワニスを塗布した後、紫外線照射等の光照射を行ない、さらに加熱処理を行なうことにより、アンダークラッド層2a(クラッド層2の下方部分)を形成する。ついで、図2(c)に示すように、上記アンダークラッド層2a上にコア部3形成用の本発明の光導波路用樹脂組成物からなるワニスを塗布することにより樹脂組成物層3’を形成する。上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法、ロールコート法等により行われる。そして、上記ワニスが有機溶剤で希釈された樹脂組成物である場合、必要に応じて、塗布部分を50〜150℃×1〜30分間の加熱処理による乾燥工程を経由してもよい。
【0026】
そして、図2(d)に示すように、この樹脂組成物層3’面上に、コアに対応する所定の開口パターン(光導波路パターン)が形成されたフォトマスク9を配置し、このフォトマスク9を介して上記樹脂組成物層3’の上記開口パターンに対応する部分を照射線により露光する。この露光において、上記照射線は、上記樹脂組成物層3’に対して直角に照射され、その照射による露光部分では光反応が進行し硬化するのである。その後、上記樹脂組成物層3’の未露光部分をアルカリ現像液を用いて溶解除去する。
【0027】
つぎに、上記アルカリ現像液による現像後、パターン形成されたコア部の表面および内部等に残存する塩を除去するため、リンスを行う。リンス液には、市水、イオン交換水、界面活性剤が含まれる水溶液、酸性水溶液あるいは有機溶剤により行われる。
【0028】
その後、加熱処理にて熱硬化を行う。加熱処理は、通常、120〜200℃×1〜60分間の範囲内で行われる。これにより、図2(e)に示すように、コア部3をパターン形成する。上記コア部3の厚みは、通常、10〜150μmの範囲内に設定され、好ましくは、30〜60μmの範囲内に設定される。また、コア部3の幅は、通常、8〜70μmの範囲内に設定され、好ましくは、30〜60μmの範囲内に設定される。
【0029】
そして、図2(f)に示すように、上記コア部3上に、上記アンダークラッド層形成材料と同じオーバークラッド層形成材料(ワニス)を塗布した後、紫外線照射等の光照射を行ない、さらに加熱処理を行なうことにより、オーバークラッド層2b(クラッド層2の上方部分)を形成する。これにより、目的とする光導波路を得ることができる。
【0030】
上記基板1形成材料としては、例えば、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、上記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0031】
上記露光用の照射線としては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。この紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができる。上記紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀蒸気アークランプ、カーボンアークランプ等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは50〜5000mJ/cm2 、より好ましくは500〜3000mJ/cm2 程度があげられる。
【0032】
上記露光後、光反応を完結させるために行なわれる加熱処理条件としては、通常、80〜250℃、好ましくは、100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行なわれる。
【0033】
また、上記のようなフォトリソグラフィ法におけるフォトマスクを介した照射線(紫外線)の照射には、通常、超高圧水銀灯や高圧水銀灯等が使用される。しかしながら、これらの光源は、単独の波長ではなく、g線,h線,i線など複数の波長を数多く含んでいる。一方、感光性樹脂のタイプによっては、これら複数の波長を含むブロード光よりも、波長域を限定して照射した方が、解像性・画像形成性の点で向上することが知られている。特に、光カチオン重合を利用したエポキシ系材料,オキセタン系材料や、光ラジカル重合を利用したアクリル系材料では、上記ブロード光を照射すると、膜表面近傍が優先的に硬化しパターン断面の上部が幅広となる、いわゆる「Tトップ」と呼ばれる現象が見られる。このTトップ現象は、光導波路の断面形状を観察した場合、その下側(基板側)の幅が狭く、上側(表層側)の幅が広くなるため、光導波路の全幅が不均一となる。
【0034】
そのため、本発明において、上記のように、フォトマスクを介して照射線(紫外線)を照射する場合は、コアパターンの解像性の観点から、形成材料の種類に応じて、目的とする露光用の照射線のみが照射されるように、バンドパスフィルターと称される露光フィルターを用いることが好ましい。なお、その形成材料によっては、硬化収縮など体積の収縮や、照射線(紫外線)の散乱等のプロセス上の理由により、フォトマスクの設計値よりも、実際のパターンが太くなったり細くなったりするケースがある。したがって、最終的に必要とされる範囲の寸法にコアパターンを仕上げるために、上記フォトマスクのサイズに補正率を掛ける等の対策を講じることが望ましい。
【0035】
上記未露光部分を除去する際に用いられるアルカリ現像液としては、有機系あるいは無機系のアルカリ性水溶液や、このアルカリ性水溶液と1種類以上の有機溶剤からなるアルカリ性準水系現像液等が用いられる。このような現像液および現像条件は、現像対象となる樹脂組成物の組成等によって、適宜選択される。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩、四ホウ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のナトリウム塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアンモニウム塩、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の有機塩基等があげられる。また、上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エリレングリコール、プロピレングリコールジエチレングリコール等のアルコール等があげられる。
【0036】
また、上記のようにして得られる光導波路は、上記基板1を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることも可能である。このような構成にした場合、より一層可撓性に優れたものが得られる。
【0037】
このようにして得られた光導波路は、例えば、携帯電話等のモバイル機器のヒンジ部の配線回路用の光導波路として用いることができる。
【実施例】
【0038】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
アクリレート基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基を同一分子内に有するアルカリ可溶性樹脂60重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶液〔固形分酸価:31.9mgKOH/g、式(1)中、m:0.3、n:0.4、p:0.3、R1〜R3全てメチル基であり、R5およびR6は水素原子である〕(カガワケミカル社製、ENC)100重量部と、光重合開始剤として、IRGACURE184(BASF社製)3.6重量部とIRGACURE819(BASF社製)1.2重量部とからなる各構成成分をハイブリッドミキサー(キーエンス社製、HM−500)にて、30分間の撹拌を行なって混合することによりコア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0040】
〔実施例2〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
実施例1のアルカリ可溶性樹脂60重量%PGMAC溶液に代えて、アクリレート基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基を同一分子内に有するアルカリ可溶性樹脂60重量%PGMAC溶液〔固形分酸価:55.7mgKOH/g、式(1)中、m:0.3、n:0.1、p:0.6、R1〜R3全てメチル基であり、R5およびR6は水素原子である〕(カガワケミカル社製、ENC)を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0041】
〔実施例3〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
実施例1のアルカリ可溶性樹脂60重量%PGMAC溶液に代えて、アクリレート基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基を同一分子内に有するアルカリ可溶性樹脂60重量%PGMAC溶液〔固形分酸価:22.9mgKOH/g、式(1)中、m:0.4、n:0.4、p:0.2、R1〜R3全てメチル基であり、R5およびR6は水素原子である〕(カガワケミカル社製、ENC)を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0042】
〔比較例1〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
成分1:カルボン酸無水物変性エポキシメタクリレート樹脂60%PGMAC溶液(固形分酸価:80mgKOH/g)(新中村化学社製、EA−7440)86重量部
成分2:ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂(三菱化学社製、エピコート828)14重量部
重合開始剤:IRGACURE184(BASF社製)3.0重量部およびIRGACURE819(BASF社製)1.0重量部
上記各構成成分をハイブリッドミキサー(キーエンス社製、HM−500)にて10分間の撹拌を行なって混合し、コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0043】
〔比較例2〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
成分1:カルボン酸無水物変性エポキシメタクリレート樹脂60%PGMAC溶液(酸価:80mgKOH/g)(新中村化学社製、EA−7440)86重量部
成分2:1官能エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−145)14重量部
重合開始剤:IRGACURE184(BASF社製)3.0重量部およびIRGACURE819(BASF社製)1.0重量部
上記各構成成分をハイブリッドミキサー(キーエンス社製、HM−500)にて10分間の撹拌を行なって混合し、コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0044】
〔比較例3〕
〈コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)〉
成分1:カルボン酸無水物変性エポキシメタクリレート樹脂60%PGMAC溶液(酸価:80mgKOH/g)(新中村化学社製 EA−7440)86重量部
成分2:1官能エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−146)14重量部
重合開始剤:IRGACURE184(BASF社製)3.0重量部およびIRGACURE819(BASF社製)1.0重量部
上記各構成成分をハイブリッドミキサー(キーエンス社製、HM−500)にて10分間の撹拌を行なって混合し、コア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を調製した。
【0045】
このようにして得られたコア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)を用いて、下記に示す評価方法に従いその特性を評価した。その結果を後記の表1〜表2に示す。
【0046】
〔評価方法〕
得られた各コア形成材料を長さ12cmのガラス基板に厚み約50μmとなるようスピンコートで塗布した後、100℃で10分間加熱することにより材料中の有機溶剤を除去し、硬化前の樹脂組成物膜が形成されたガラス基板を作製した。そして、上記硬化前の樹脂組成物膜について、アルカリ現像性の確認の評価をつぎのようにして行なった。
【0047】
約35℃に加温した100g水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.38重量%(日本ゼオン社製ZTMA100)とアルコール〔日本アルコール販売社製、エキネンF−6(エタノールとメタノールの混合物:エタノール/メタノール(重量比)=89/11)〕の50/50(重量比)混合液に、硬化前コア樹脂組成物膜が形成されたガラス基板を4分間浸漬し、(1)現像液の色目の変化、(2)硬化前コア樹脂組成物膜の現像可否、について目視により確認した。さらに、同一の現像液に、繰り返し硬化前コア樹脂組成物膜が形成されたガラス基板を浸漬し、現像枚数を重ねた際(1枚目現像〜5枚目現像まで)の現像液の色目の変化、および、硬化前コア樹脂組成物膜の現像可否についても目視により確認し、下記の基準に基づき評価した。
〈現像液の色目評価〉
○:現像液が透明であった。
×:現像液が白濁した。
〈硬化前コア樹脂組成物膜の現像の可否評価〉
○:硬化前コア樹脂組成物膜が全て溶解した。
×:硬化前コア樹脂組成物膜が完全に溶解せず膜が残存した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
上記の結果から、特殊な構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂を用いた実施例品は、2枚目以降の現像評価においても、現像液は白濁せず透明が維持された。また、5枚目の現像においても、硬化前コア樹脂組成物膜が残存せず全て溶解した。これに対して、カルボン酸無水物変性エポキシアクリレート樹脂とエポキシ樹脂を併用した比較例品のうち、比較例3品では1枚目から、また比較例1,2品では2枚目以降の現像評価において、全ての現像液が白濁してしまった。さらに、比較例1品では、4枚目の現像において、硬化前コア樹脂組成物膜が溶解せず残存してしまった。
【0051】
〈光導波路の作製〉
上記実施例1品のコア部形成材料(光導波路用樹脂組成物)および下記に示すアンダークラッド層およびオーバークラッド層形成材料を調製、準備した。そして、これら形成材料を用いて、下記に示す工程(図2参照)を経由して光導波路を作製した(図1参照)。
【0052】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
アクリレート基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基を同一分子内に有するアルカリ可溶性樹脂60重量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)溶液〔固形分酸価:31.9mgKOH/g、式(1)中、m:0.3、n:0.4、:p:0.3、R1〜R3は全てメチル基であり、R5およびR6は水素原子である〕(カガワケミカル社製、ENC)50重量部と多官能ポリエステルアクリレート(東亜合成社製、M−9050)50重量部、光重合開始剤としてBASF社製のIRGACURE907を1.5重量部配合し、上記各構成成分をハイブリッドミキサー(キーエンス社製、HM−500)にて、30分間の撹拌を行って混合し、クラッド形成材料(光導波路樹脂組成物)を調整した。
【0053】
〔アンダークラッド層の作製〕
まず、ガラス基板(セントラルガラス社製、厚み1.1mm、120mm角)の表面に上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコート(ミカサ社製、1X−DX2)法により塗布した後、130℃×5分間の乾燥処理を行った。4000mJ/cm2の混線照射〔露光機(ミカサ社製、MA−60F)、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、USH−250D)〕による露光を行った。
【0054】
〔コア部の作製〕
つぎに、上記アンダークラッド層の表面に、コアの形成材料をスピンコート(ミカサ社製、1X−DX2)法により塗布した後、130℃×5分間の乾燥処理を行った。ついで、長手方向に沿った12条のストレート形状の開口パターン(L/S=50μm/200μm)のガラスフォトマスクを介してその上から2000mJ/cm2の365nm線照射〔露光機(ミカサ社製、MA−60F)、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、USH−250D)〕による露光を行った。つぎに、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.38重量%水溶液(日本ゼオン社製、ZTMA100)とアルコール〔日本アルコール販売社製、エキネンF−6(エタノールとメタノールの混合物:エタノール/メタノール(重量比)=89/11)〕の50/50(重量比)混合液を約35℃まで加温し、揺動現像することで、未露光部分を溶解除去した。その後、0.5重量%の硫酸水、イオン交換水にてリンスし、150℃×30分の加熱処理を行うことにより、コア層を形成した。形成した各コア層の断面寸法は、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製、VHX−200)で測定したところ、幅50μm×高さ50μmであった。
【0055】
〔オーバークラッド層の作製〕
つぎに、その上に、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布して、各コアを被覆するとともに、上記アンダークラッド層を長手方向に沿う左右両側部(幅方向の両端部)を含む全体を被覆した。なお、このときオーバークラッド層は、コアおよびアンダークラッドの長手方向端面も被覆した状態であった。その後、100℃×10分間の乾燥処理を行った。ついで、4000mJ/cm2の365nm線照射〔露光機(ミカサ社製、MA−60F)、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、USH−250D)〕による露光を行うことにより、オーバークラッド層を形成した。このようにして、光導波路を作製した。
【0056】
〔光導波路の端面出し〕
上記作製した光導波路をガラス基板より剥離し、フィルム化した光導波路をダイシングテープ(日東電工社製、UE−111AJ)に貼り付けた。オーバークラッド長手方向端部近傍を、ダイシング〔ダイシング装置(ディスコ製、DAD522)、ディスコ社製ブレード(NBC−Z2050、50.6×0.025×40mm、カット速度0.3mm/秒)〕により、コアおよびアンダークラッドごと切断して、光導波路の長さ(全長)を50mmに調節し、上記角コアの長手方向端面(光接続面)を露出させた。
【0057】
〔光導波路の全損失値評価〕
三喜製850nmVCSEL光源OP250から発振された光をマルチモードファイバー〔三喜製FFP−G120−0500(50μmφMMF、NA=0.2)〕にて集光し、上記サンプルに入射した。そして、サンプルから出射された光をレンズ〔清和光学製作所製FH14−11(倍率20、NA=0.4)〕で集光し、光計測システム(アドバンテスト社製オプティカルマルチパワーメータQ8221)にて12チャンネルを評価した。その評価結果は、全損失平均値:1.3dB/5cm(n=12)であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光導波路用樹脂組成物は、光導波路の構成部分であるコア形成材料として有用である。そして、得られる光導波路としては、例えば、開閉型携帯電話等のモバイル機器のヒンジ部やスライド部の信号伝達回路に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
1 基板
2 クラッド層
3 コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分を主成分とし、その硬化用に下記の(B)成分を含有することを特徴とする光導波路用樹脂組成物。
(A)下記の一般式(1)で表される構造単位を備えたアルカリ可溶性樹脂。
【化1】

(B)光重合開始剤。
【請求項2】
上記(B)成分の含有量が、光導波路用樹脂組成物(溶剤を除く固形分)に対して0.1〜20重量%である請求項1記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項3】
基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記コア部が、請求項1または2記載の光導波路用樹脂組成物によって形成されていることを特徴とする光導波路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−98665(P2012−98665A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248502(P2010−248502)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】