説明

光導波路用組成物およびその製造方法、ならびにそれを用いた光導波路、光導波路の製造方法

【課題】ハロゲン原子を含まず、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない、光導波路用組成物および製造方法を提供する。
【解決手段】酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)および光酸発生剤(B)を含有する光導波路用組成物である。この光導波路用組成物は、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、酸化ジルコニウム微粒子表面へのシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を調製する。ついで、この酸化ジルコニウム微粒子(A)に、光酸発生剤(B)を配合することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の構成部分形成材料として用いられる光導波路用組成物ならびにそれを用いた光導波路に関するものである。詳しくは、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない光導波路用組成物およびその製造方法、ならびにそれを用いた光導波路、光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスに組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。光導波路は、通常、光の通路であるコアが所定パターンに形成され、そのコアを覆うように、アンダークラッド層とオーバークラッド層とが形成されている。
【0003】
これらコア部,アンダークラッド層およびオーバークラッド層を所定パターンに形成する場合、通常、各種光導波路形成材料が用いられている。現在、このような光導波路形成材料としては、感光性を付与した、ポリイミド,エポキシ樹脂,アクリレート樹脂等を主成分とするものが用いられている。このような有機ポリマーを耐熱性や線膨張係数等が求められる中で、主骨格を構成する主鎖および側鎖を改良することによって種々の特徴を有する材料が開発され提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平8−41323号公報
【特許文献2】特開2002−201231号公報
【特許文献3】特開2003−89779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら有機ポリマーは、屈折率の制御を図る目的から、芳香環等を導入する必要がある。その結果、可視〜近赤外領域に対して、上記有機成分由来の伸縮振動や変角振動に由来する顕著な光吸収帯を有している。このような問題を解決するために、有機ポリマーに対しては、その主骨格をフッ素等の含ハロゲン構造とすることが提案されているが、上記手法により得られた有機ポリマーは、高コストであり、また環境に対する負荷が大きいという問題を有している。このようなことから、上記ハロゲン原子を含有しない、広い波長領域において高い透明性を有する新規な材料が要望されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ハロゲン原子を含まず、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない、光導波路用組成物およびその製造方法、ならびにそれを用いた光導波路、光導波路の製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)および(B)を含有する光導波路用組成物を第1の要旨とする。
(A)酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子。
(B)光酸発生剤。
【0007】
また、本発明は、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)に、光酸発生剤(B)を配合する光導波路用組成物の製造方法を第2の要旨とする。
【0008】
さらに、本発明は、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記クラッド層およびコア部の少なくとも一方が、上記第1の要旨の光導波路用組成物によって形成されている光導波路を第3の要旨とする。
【0009】
そして、本発明は、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)を調製する工程と、
酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、クラッド層形成に用いられる光導波路用組成物(β)を調製する工程と、
基板上に上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりアンダークラッド層を形成する工程と、
上記アンダークラッド層上に、上記光導波路用組成物(α)を塗工し所定パターンに露光した後、未露光部分を現像,除去してコア部を形成する工程と、
上記所定パターンのコア部が形成されたアンダークラッド層上に、コア部を包含するよう、上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりオーバークラッド層を形成する工程、
とを備えた光導波路の製造方法を第4の要旨とする。
【0010】
本発明者らは、光導波路の構成部分の形成材料に用いられる、高い透明性を備えた組成物を求め、鋭意検討を重ねた。そして、特殊な構造を有する様々な化合物を合成し、実験を重ねた結果、上記酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を光導波路用組成物の構成成分として用いると、ハロゲン原子を含まず、しかも可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない、高い透明性を備えた光導波路形成材料が得られることを突き止め、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を作製するものである。このように、上記酸化ジルコニウム微粒子表面にてシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が修飾反応して結合すると、形成材料中、上記酸化ジルコニウム微粒子が安定して分散され、高い屈折率とともに、高い透明性を有するため、充分満足のいく光導波路が得られることを見出し本発明に到達したのである。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明は、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)と、光酸発生剤(B)とを含有する光導波路用組成物である。このため、この光導波路用組成物は、ハロゲン原子を含まないものであり、光導波路形成材料として用いることにより、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない透明性に優れた光導波路を形成することができ、例えば、光損失が抑制され信頼性に優れた光導波路の形成材料として有用である。
【0013】
また、上記光導波路用組成物は、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を調製する。ついで、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)に、光酸発生剤(B)を配合することにより製造することができる。
【0014】
そして、本発明は、上記製造方法により、シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)を調製する。一方、上記製造方法により、シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、クラッド層形成に用いられる光導波路用組成物(β)を調製する。ついで、基板上に上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりアンダークラッド層を形成した後、このアンダークラッド層上に、上記光導波路用組成物(α)を塗工し所定パターンに露光した後、未露光部分を現像,除去してコア部を形成する。つぎに、上記所定パターンのコア部が形成されたアンダークラッド層上に、コア部を包含するよう、上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりオーバークラッド層を形成することにより光導波路を製造する。このため、得られる光導波路は、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない優れた透明性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
〔光導波路用組成物〕
本発明の光導波路用組成物は、外周面にシリコーンオリゴマー重合体が結合した特殊な酸化ジルコニウム微粒子(A)と、光酸発生剤(B)とを用いて得られるものである。
【0017】
上記特殊な酸化ジルコニウム微粒子(A)は、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーの重合体が結合したものである。そして、上記酸化ジルコニウム微粒子は、ZrO2 で表される金属酸化物である。上記酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、優れた透明性が得られるという観点から、例えば、1〜100nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmである。上記酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱法での粒子分散液の粒子径測定あるいは透過型電子顕微鏡による直接観察により測定することができる。
【0018】
本発明で用いる特殊な酸化ジルコニウム微粒子(A)は、例えば、つぎのようにして作製される。すなわち、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液を準備し、有機溶媒を加えた後、系全体を酸性領域に調整する。ついで、シリコーンオリゴマーを添加することにより、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応を生起させてシリコーンオリゴマー重合体を生成するとともに、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への、上記シリコーンオリゴマーおよび上記シリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を作製する。ついで、有機溶媒を留去することにより、酸化ジルコニウム微粒子を含有する粘性液体である透明性のシリコーン樹脂前駆体(Aステージ状)といえる化合物が製造される。
【0019】
上記酸化ジルコニウム微粒子の水分散液における固形分濃度としては、効率的に酸化ジルコニウム微粒子表面において反応を行なうという観点から、例えば、10〜40重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは30〜40重量%である。
【0020】
そして、このような酸化ジルコニウム微粒子の水分散液としては、具体的には、第一希元素化学工業社製のZSLシリーズ、住友大阪セメント社製のNZDシリーズ(NZD−3007等)、日産化学社製のナノユースシリーズ等が用いられる。
【0021】
上記シリコーンオリゴマーとしては、例えば、分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルアルコキシシラン誘導体、分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体、分子の両末端に反応性のシラノール基を有するジシラノール誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。具体的には、下記の構造式(1)で表されるシリコーンオリゴマーがあげられる。
【0022】
【化1】

【0023】
上記式(1)において、繰り返し数nとしては、好ましくは0〜20、特に好ましくは1〜7である。また、式(1)中のRとしては、特に好ましくは−CH3 である。
【0024】
より具体的には、上記分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体としては、例えば、信越化学社製の、KC89、KR500、X−40−9246、X−40−9225等があげられる。
【0025】
上記シリコーンオリゴマーの使用量は、前述の酸化ジルコニウム微粒子の濃度に応じて適宜設定されるものである。
【0026】
そして、上記シリコーンオリゴマーの添加方法としては、酸化ジルコニウム微粒子の水分散液を準備し、これに有機溶媒を加え、系全体を酸性領域に調整した後に、適宜の滴下速度にて滴下する方法があげられる。
【0027】
上記有機溶媒としては、例えば、合成反応時に使用されるメタノール、イソプロピルアルコール(IPA)や、脱水時に使用される2−メトキシメタノール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記有機溶媒の配合量は、例えば、合成反応時に使用する有機溶媒の場合、シリコーンオリゴマーと有機溶媒とが、重量比で、約1:1となるよう設定することが好ましい。
【0028】
上記酸性領域とは、例えば、pH2〜4の範囲であることが好ましく、特に好ましくはpH2〜3.5の範囲である。そして、上記系全体を酸性領域に調整する方法としては、例えば、濃塩酸、濃硫酸、濃硝酸等を適宜添加することにより調整する方法があげられる。
【0029】
さらに、上記反応条件としては、例えば、温度20〜80、より好ましくは40〜60℃にて、1〜6時間、より好ましくは1〜4時間の条件とすることが好ましい。
【0030】
上記シリコーンオリゴマーの重合反応により形成されるシリコーンオリゴマー重合体としては、例えば、25℃における粘度が0.1〜10Pa・sの範囲であることが好ましい。特に好ましくは0.4〜4Pa・sである。このような範囲のシリコーンオリゴマー重合体が得られることにより、フィルム塗工時の操作の容易性および塗工膜の均一性、厚膜形成性という効果を奏するのである。なお、上記粘度は、例えば、ブルックフィールド社製の粘度計(例えば、HDBV−I+CP)により測定される。
【0031】
つぎに、上記光酸発生剤(B)は、光導波路用組成物に紫外線硬化性を付与するために用いられるものである。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物、鉄アレーン系化合物等があげられる。その中でも、光硬化性、接着性等の観点から、芳香族スルフォニウム塩を用いることが好ましい。また、上記光酸発生剤(B)以外に、光増感剤や酸増殖剤等の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。上記光酸発生剤(B)の含有量は、上記特殊な酸化ジルコニウム微粒子(A)100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲に設定することが好ましい。
【0032】
本発明の光導波路用組成物には、上記A成分およびB成分以外に、必要に応じて、例えば、接着性を高めるためにシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、オレフィン系オリゴマーやノルボルネン系ポリマー等のシクロオレフィン系オリゴマーやポリマー、合成ゴム、シリコーン化合物等の可撓性付与剤等の化合物、あるいは酸化防止剤、消泡剤等があげられる。これら添加剤は、本発明における効果を阻害しない範囲内にて適宜に配合される。
【0033】
そして、上記光導波路用組成物においては、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記成分に加えて溶媒を配合し、溶解混合することにより、ワニスとして調製し塗布することが行われる。上記溶媒としては、例えば、メタノール、2−メトキシエタノール、2−プロパノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチル等があげられる。これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用して、塗布に好適な粘度が得られるように、適量用いられる。
【0034】
本発明の光導波路用組成物は、例えば、つぎのようにして製造される。すなわち、先に述べた方法に従って、有機溶媒の下、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を作製する。ついで、有機溶媒を留去することにより、酸化ジルコニウム微粒子を含有する粘性液体である透明性のシリコーン樹脂前駆体(Aステージ状)といえる化合物を製造する。つぎに、これに光酸発生剤(B)を配合することにより光導波路用組成物が製造される。
【0035】
本発明の光導波路用組成物では、光導波路を形成する際の使用部分(コア部、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の両クラッド層)に応じて、つぎのように設定することが好ましい。すなわち、光導波路用組成物をコア部形成材料として用いる場合〔後述の光導波路用組成物(α)に相当〕は、光導波路用組成物中の酸化ジルコニウム微粒子の含有量を組成物全体の0重量%を超えて40重量%以下の範囲に設定することが好ましい。一方、光導波路用組成物を両クラッド層形成材料として用いる場合〔後述の光導波路用組成物(β)に相当〕は、光導波路用組成物中の酸化ジルコニウム微粒子の含有量を、上記コア部形成に用いられる光導波路用組成物中の、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量より少なく設定される。すなわち、上記のように、コア部形成材料とクラッド層形成材料とを比較して、上記酸化ジルコニウム微粒子の含有量を、クラッド層形成材料の方が少なくなるように設定することにより、形成されるコア部と両クラッド層との屈折率の差を適正な範囲(具体的には、マルチモード用光導波路では0.5以上、シングルモード用光導波路では0.05以上0.5未満)に設定することが容易となり好ましい。
【0036】
そして、このようなコア部形成材料(例えば、コア部用ワニス)、両クラッド層形成材料(例えば、両クラッド層用ワニス)の粘度は、例えば、つぎのように設定することが好ましい。すなわち、コア部形成材料の粘度としては、好ましくは500〜5000mPa・s(25℃)、より好ましくは1000〜3000mPa・s(25℃)である。一方、両クラッド層形成材料の粘度としては、好ましくは200〜5000mPa・s(25℃)、より好ましくは300〜1000mPa・s(25℃)である。なお、上記各形成材料の粘度は、例えば、ブルックフィールド社製の粘度計(DV−I+)を用いて測定される。
【0037】
〔光導波路〕
つぎに、本発明の光導波路用組成物を用いた光導波路について説明する。
【0038】
本発明の光導波路は、例えば、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備えており、上記クラッド層中に、光信号を伝搬する、所定パターンのコア部が形成されている。詳しくは、図1に示すように、基板1と、その基板1上に形成されたクラッド層2(アンダークラッド層2aとオーバークラッド層2bからなる)とを備え、上記クラッド層2中に、所定パターンで、光信号を伝搬するコア部3が形成されてなる光導波路において、上記クラッド層2およびコア部3の少なくとも一方を、前述の特殊な酸化ジルコニウム微粒子(A)および光酸発生剤(B)を含有する光導波路用組成物によって形成されている。特に、可視〜近赤外領域に吸収帯をもたない、透明性の高い構造を備えた光導波路を製造するという点から、酸化ジルコニウム微粒子の含有量が異なる2種類の光導波路用組成物を、それぞれ、コア部3形成材料およびクラッド層2形成材料として用いることが好ましい。なお、本発明の光導波路では、上記クラッド層2は、コア部3よりも屈折率が小さくなるよう形成する必要がある。
【0039】
本発明において、光導波路は、例えば、図2に示すような工程を経由することにより製造することができる。すなわち、図2の(a)に示すように、まず基板1を準備し、(b)に示すように、その基板1面に、上記酸化ジルコニウム微粒子含有の光導波路用組成物(β)を塗布した後、紫外線照射等の活性エネルギー線照射を行ない、さらに加熱処理を行なうことにより、アンダークラッド層2a(クラッド層2の下方部分)を形成する。ついで、(c)に示すように、上記アンダークラッド層2a上にコア部3形成用の、上記酸化ジルコニウム微粒子含有量が好適には0重量%を超えて40重量%以下の光導波路用組成物(α)を塗布することにより組成物(α)層3’を形成する。そして、(d)に示すように、この組成物(α)層3’面上に、所定パターン(光導波路パターン)を露光させるためのフォトマスク9を配設し、このフォトマスク9を介して紫外線等の活性エネルギー線照射を行ない、さらに加熱処理を行う。その後、上記組成物(α)層3’の未露光部分を現像液を用いて溶解除去し、(e)に示すようにコア部3を形成する。そして、(f)に示すように、上記コア部3上に、上記酸化ジルコニウム微粒子含有の光導波路用組成物(β)を塗布した後、紫外線照射等の活性エネルギー線照射を行ない、さらに加熱処理を行なうことにより、オーバークラッド層2b(クラッド層2の上方部分)を形成する。これにより、目的とする光導波路を得ることができる。なお、先に述べたように、上記酸化ジルコニウム微粒子含有の光導波路用組成物(β)中の酸化ジルコニウム微粒子の含有量は、クラッド層の屈折率に応じて適宜設定されるが、上記コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)中の、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量より少なく設定される。
【0040】
上記活性エネルギー線としては、上記紫外線以外に、例えば、遠紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等があげられる。上記紫外線照射の場合、その紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられる。また、上記紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは50〜5000mJ/cm2 、より好ましくは500〜3000mJ/cm2 程度があげられる。
【0041】
そして、上記紫外線照射等の活性エネルギー線照射による露光後、光反応による架橋反応を完結させ完全に硬化させる目的から、前述のように好ましくは加熱処理が行なわれる。上記加熱処理条件としては、光導波路用組成物の組成に応じて適宜設定されるが、通常、80〜250℃、好ましくは、100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行なわれる。
【0042】
上記基板1形成材料としては、例えば、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、上記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0043】
なお、上記基板1上の各層での形成材料を用いての塗布方法としては、例えば、スピンコーター、コーター、円コーター、バーコーター等の塗工による方法や、スクリーン印刷、スペーサを用いてギャップを形成し、そのなかに毛細管現象により注入する方法、マルチコーター等の塗工機によりロール・トゥ・ロール(roll to roll)で連続的に塗工する方法等を用いることができる。また、上記光導波路は、上記基板1を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることも可能である。このような構成とした場合、より一層可撓性に優れたものが得られる。
【0044】
このようにして得られた光導波路は、例えば、直線光導波路、曲がり光導波路、交差光導波路、Y分岐光導波路、スラブ光導波路、マッハツェンダー型光導波路、AWG型光導波路、グレーティング、光導波路レンズ等として用いることができる。また、これら光導波路を用いた光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器、さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した、光伝送モジュール等があげられる。
【実施例】
【0045】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0046】
まず、実施例となる光導波路の作製に先立ち、コア部形成用ワニスおよびクラッド層形成用ワニスをそれぞれ下記のようにして合成した。
【0047】
〔コア部用ワニスの合成〕
還流器、滴下ロートを備えた反応容器に、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)9.3g、メタノール9.3g、2−メトキシエタノール9.3gを加えた。ついで、濃塩酸を加え、系全体のpHを2.5〜3.3の範囲に調整した。これに、2−プロパノール37.5gに溶解した分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン化合物(信越化学社製、X−40−9225)37.5gを滴下ロートを用いて添加した。すなわち、60℃の系中に1時間かけて上記ポリメチルシルセスキオキサン化合物溶液を半量滴下した後、室温(25℃)まで冷却し、残りのポリメチルシルセスキオキサン化合物溶液を一度に添加し、反応を生起させた。ついで、反応終了後、溶媒を留去することにより、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度2.0Pa・s)である透明のコア部用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度10重量%)を作製した。
【0048】
〔クラッド層用ワニス〕
還流器、滴下ロートを備えた反応容器に、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)5.9g、メタノール5.9g、2−メトキシエタノール5.9gを加えた。ついで、濃塩酸を加え、系全体のpHを2.5〜3.3の範囲に調整した。これに、2−プロパノール112.5gに溶解した分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリメチルシルセスキオキサン化合物(信越化学社製、X−40−9225)112.5gを滴下ロートを用いて添加した。すなわち、60℃の系中に1.5時間かけて上記ポリメチルシルセスキオキサン化合物溶液を全量滴下した後、室温(25℃)まで冷却し反応を生起させた。ついで、反応終了後、溶媒を留去することにより、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度0.5Pa・s)である透明のクラッド層用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度2重量%)を作製した。
【0049】
〔屈折率の評価〕
シリコーンウェハ上に、上記作製した各ワニス(コア部形成用ワニスおよびクラッド層形成用ワニス)を、膜厚10μmとなるようにスピンコートを用いて塗工し、それぞれ150℃で1時間加熱した。ついで、上記各膜の屈折率を、プリズムカップラー(SAIRON社製、SPA4000)を用いて測定したところ、波長830nmにおけるクラッド層形成用ワニスを用いた膜の屈折率nは1.42、波長830nmにおけるコア部形成用ワニスを用いた膜の屈折率nは1.43であり、その屈折率差は約1%であった。
【0050】
〔実施例1〕
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびオーバークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行なった。
【0051】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、上記合成したクラッド層用ワニスに、光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加してクラッド層形成用ワニス(ワニスA)を調製した。
【0052】
つぎに、ガラス基板(180mm×180mm×厚み1.2mm)を準備し、その表面に、上記ワニスAをスピンコーターにより塗工した。ついで、マスクアライナーを用いて混線(フィルターレスの光源からの活性エネルギー線)1000mJ/cm2 の照射量にて全面に照射(露光)し、引き続きホットプレート上にて80℃にて1時間加熱処理することにより完全硬化させ、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、5μmであった。また、上記アンダークラッド層の屈折率は波長830nmにおいて1.433であった。
【0053】
〔コア部の形成〕
つぎに、上記合成したコア部用ワニスに、光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加してコア部形成用ワニス(ワニスB)を調製した。
【0054】
そして、スピンコーターにより、上記ワニスBを前記作製したアンダークラッド層上に塗工した。ついで、この塗布層を80℃で10分間プレベーク行なうことによりコア部前躯体層を形成した(図2(c)参照)。さらに、その上に、80μm幅の帯状光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて8000mJ/cm2 の照射量のI線(365nm付近の波長光のみ)を照射(露光)した。露光後、さらに80℃にて10分間加熱処理を行なった。その後、2−プロパノール(現像液)に3分間浸漬して、未照射部(未露光部)を完全に除去(現像)した後、残存するコア部分をホットプレート上にて150℃で1時間加熱して完全硬化させることにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。SEMによりコア形状を測定したところ、幅80μm、高さ6μmの断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長830nmにおいて1.417であった。
【0055】
〔オーバークラッド層の形成〕
上記コアパターンを形成した後、上記アンダークラッド層形成時に調製したワニスAと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコーターにより塗工した。つぎに、上記アンダークラッド層形成時と同様、1000mJ/cm2 の照射量にて全面にI線(365nm付近の波長光のみ)を照射(露光)し、引き続きホットプレート上にて80℃にて2時間加熱処理することにより完全硬化させ、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1%のマルチモード光導波路を作製した。
【0056】
〔実施例2〕
コア部用ワニスにおいて、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)56.3gを用いた。それ以外は前記コア部用ワニスの合成と同様にして、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度3.2Pa・s)である透明のコア部用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度37.5重量%)を作製した。
つぎに、上記コア部用ワニスに光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加することによりコア部形成用ワニスを調製した。
【0057】
一方、クラッド層用ワニスにおいて、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)24.7gを用いた。それ以外は前記クラッド層用ワニスの合成と同様にして、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度2.8Pa・s)である透明のクラッド層用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度20.8重量%)を作製した。
つぎに、上記クラッド層用ワニスに光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加することによりコア部形成用ワニスを調製した。
【0058】
それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。なお、形成された両クラッド層およびコア部の屈折率は波長830nmにおいてクラッド層:1.46、コア部:1.51であった。また、作製された光導波路の比屈折率Δは3%であった。
【0059】
〔実施例3〕
コア部用ワニスにおいて、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)16.1gを用いた。それ以外は前記コア部用ワニスの合成と同様にして、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度2.3Pa・s)である透明のコア部用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度14.7重量%)を作製した。
つぎに、上記コア部用ワニスに光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加することによりコア部形成用ワニスを調製した。
【0060】
一方、クラッド層用ワニスにおいて、平均粒径4nmの酸化ジルコニウム(二酸化ジルコニウム)の水分散液(住友大阪セメント社製、NZD−3007、固形分濃度40重量%)4.1gを用いた。それ以外は前記クラッド層用ワニスの合成と同様にして、酸化ジルコニウム微粒子を含有した粘性液体(Aステージ状:25℃における粘度0.8Pa・s)である透明のクラッド層用ワニス(酸化ジルコニウム微粒子濃度4.2重量%)を作製した。
つぎに、上記クラッド層用ワニスに光酸発生剤(サンアプロ社製、K−1)をその含有量が全体の1重量%となるように添加することによりコア部形成用ワニスを調製した。
【0061】
それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。なお、形成された両クラッド層の屈折率は波長830nmにおいてコア部:1.445、クラッド層:1.423であった。また、作製された光導波路の比屈折率Δは1.5%であった。
【0062】
〔比較例〕
〔両クラッド層形成材料〕
ビスフェノキシエタノールフルオレンジクリシジルエーテル35重量部、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート40重量部、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)25重量部、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液(光酸発生剤)1重量部を混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の両クラッド層形成材料(粘度1000mPa・s)を調製した。
【0063】
〔コア部形成材料〕
上記ビスフェノキシエタノールフルオレンジクリシジルエーテル70重量部、1,3,3−トリス{4−〔2−(3−オキセタニル)〕ブトキシフェニル}ブタン:30重量部、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液(光酸発生剤)0.5重量部を乳酸エチル28重量部に溶解することにより、コア部形成材料を調製した。
【0064】
上記クラッド層形成材料およびコア部形成材料を用い、それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。なお、形成された両クラッド層の屈折率は波長830nmにおいてコア部:1.59、クラッド層:1.54であった。また、作製された光導波路の比屈折率Δは3.2%であった。
【0065】
このようにして作製した光導波路の特性である伝播損失の波長依存性について、下記の方法に従って測定・評価した。
【0066】
〔伝播損失の波長依存性〕
上記光導波路を用い、伝播損失の波長依存性を、スペクトルアナライザー(ANDO社製、AQ6315A)を用いて測定評価した。その結果を、図3に示す。図3において、曲線aは実施例1、曲線bは比較例を示す。この結果、比較例の光導波路は、波長1150〜1200nm近傍と1400〜1500nm近傍の2箇所の領域において吸収帯を有しているが、実施例1の光導波路は、比較例に比べて顕著な吸収帯を有していないことが明らかである。さらに、実施例2〜3についても実施例1と同様の測定を行なったところ、実施例1と略同様の測定結果が得られ、同じく比較例に比べて顕著な吸収帯を有さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の光導波路用組成物は、各種光導波路の構成部分の形成材料に有用である。このような光導波路としては、例えば、直線光導波路、曲がり光導波路、交差光導波路、Y分岐光導波路、スラブ光導波路、マッハツェンダー型光導波路、AWG型光導波路、グレーティング、光導波路レンズ等があげられる。そして、上記光導波路を用いてなる光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器、さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した、光伝送モジュール等があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の光導波路の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の光導波路の製造工程を示す説明図である。
【図3】伝播損失の波長依存性を評価した、伝播損失値−波長の関係を示すチャート図である。
【符号の説明】
【0069】
1 基板
2 クラッド層
3 コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)を含有することを特徴とする光導波路用組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子。
(B)光酸発生剤。
【請求項2】
コア部形成に用いる際の光導波路用組成物において、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量が組成物全体の0重量%を超えて40重量%以下であり、かつクラッド層形成に用いる際の光導波路用組成物における、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量が、上記コア部形成用である光導波路用組成物中の、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量より少なく設定されている請求項1記載の光導波路用組成物。
【請求項3】
酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子(A)に、光酸発生剤(B)を配合することを特徴とする光導波路用組成物の製造方法。
【請求項4】
酸性領域が、pH2〜4の範囲である請求項3記載の光導波路用組成物の製造方法。
【請求項5】
基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記クラッド層およびコア部の少なくとも一方が、請求項1または2記載の光導波路用組成物によって形成されていることを特徴とする光導波路。
【請求項6】
酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)を調製する工程と、
酸化ジルコニウム微粒子の水分散液に、シリコーンオリゴマーを混合し、酸性領域下、上記シリコーンオリゴマー同士の重合反応、および、上記酸化ジルコニウム微粒子表面への上記シリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の修飾反応によるシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体の結合反応を生起させて、酸化ジルコニウム微粒子の外周面に、修飾反応によりシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子を調製し、このシリコーンオリゴマーおよびシリコーンオリゴマー重合体が結合してなる酸化ジルコニウム微粒子に、光酸発生剤を配合し、クラッド層形成に用いられる光導波路用組成物(β)を調製する工程と、
基板上に上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりアンダークラッド層を形成する工程と、
上記アンダークラッド層上に、上記光導波路用組成物(α)を塗工し所定パターンに露光した後、未露光部分を現像,除去してコア部を形成する工程と、
上記所定パターンのコア部が形成されたアンダークラッド層上に、コア部を包含するよう、上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光することによりオーバークラッド層を形成する工程、
とを備えたことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項7】
上記コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量が組成物(α)全体の0重量%を超えて40重量%以下であり、かつ上記クラッド層形成に用いられる光導波路用組成物(β)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量が、上記コア部形成に用いられる光導波路用組成物(α)中の、(A)の酸化ジルコニウム微粒子の含有量より少なく設定されている請求項6記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
基板上に上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光した後、さらに加熱することによりアンダークラッド層を形成する請求項6または7記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
上記光導波路用組成物(α)を塗工し所定パターンに露光した後、未露光部分を現像,除去し、さらに加熱することによりコア部を形成する請求項6〜8のいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
上記所定パターンのコア部が形成されたアンダークラッド層上に、コア部を包含するよう、上記光導波路用組成物(β)を塗工して露光した後、さらに加熱することによりオーバークラッド層を形成する請求項6〜9のいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−102106(P2010−102106A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273222(P2008−273222)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】